説明

割り出し機構

【課題】 高精度かつ高速で駆動可能な割り出し機構を提供する。
【解決手段】 被動歯車として機能する1つのウォームホイールに駆動軸として機能する2本のウォーム軸が係合するようにする。ウォームホイールの両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸のみが1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達し、一方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側のウォームホイールの歯面に接触し、他方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側のウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成しており、回転方向が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレを極めて少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームホイールとウォーム軸を有する割り出し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の割り出し機構は、1つのウォームホイールに対し1本のウォーム軸を係合させて駆動力が伝達されていた。
【0003】
特許文献1には、ウォームとウォームホイールを1つずつ用いたロータリーテーブル装置が示されている。
【特許文献1】特開平8−155768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の割り出し機構は、1本のウォーム軸が1つのウォームホイールに係合して駆動力が伝達されているので、ウォームホイールとウォーム軸の間に生じるバックラッシュにより、所望の高い割り出し精度を得ることができなかった。
【0005】
更に、近年の割り出し機構においては、割り出し作業の高速化が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、高精度かつ高速で駆動可能な割り出し機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0008】
(1) ウォームホイールとウォーム軸を有する割り出し機構において、被動歯車として機能する1つのウォームホイール(16)に、駆動軸として機能する2本のウォーム軸(18、20)が、選択的に複数の係合態様で係合することを特徴とする割り出し機構。
【0009】
(2) ウォームホイール(16)の両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸(18)のみが1つのウォームホイール(16)に回転駆動力を伝達し、1つの係合態様で、一方のウォーム軸(18)の歯面(18d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16b)に接触し、他方のウォーム軸(20)の歯面(20d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16d)に接触せず、隙間を形成しており、他の係合態様になったとき、すなわち、ウォームホイール(16)の回転方向(X)が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレをゼロか、極めて少なくすることを特徴とする先述の割り出し機構。
【0010】
(3) 2本のウォーム軸(18、20)の少なくとも1本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20d)が、少なくとも3つの係合態様で1つのウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)と選択的に係合し、
1つの係合態様では、2本のウォーム軸(18、20)が1つのウォームホイール(16)に回転駆動力を伝達し、2本のウォーム軸(18、20)のいずれも、ウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側の歯面(18d、20d)がウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に接触し、ウォームホイール(16)の回転方向(X)の後方側の歯面(18c、20c)がウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に接触せず、隙間を形成し、
他の1つの係合態様では、一方のウォーム軸(18)の歯面(18d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16b)に接触し、他方のウォーム軸(20)の歯面(20d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16d)に接触せず、隙間を形成しており、
更に他の係合態様になったとき、すなわち、ウォームホイール(16)の回転方向(X)が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレをゼロか、極めて少なくすることを特徴とする先述の割り出し機構。
【0011】
(4) 2本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20d)が、ウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に、それぞれウォームホイール(16)の回転方向(X)に関して同一方向で接触するように駆動されることを特徴とする先述の割り出し機構。
【0012】
(5) 2本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20c)が、ウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に、それぞれウォームホイール(16)の回転方向(X)に関して反対方向で接触するように駆動されることを特徴とする先述の割り出し機構。
【0013】
(6) 2本のウォーム軸(18、20)が、ウォームホイール(16)の両側にかつ平行に配置されていることを特徴とする先述の割り出し機構。
【0014】
(7) 2本のウォーム軸(18、20)が、互いに独立した別々のモーター(26、28)によって駆動されることを特徴とする先述の割り出し機構。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高精度かつ高速で駆動可能な割り出し機構を提供できる。
【0016】
とくに、2本のウォーム軸の少なくとも1本のウォーム軸の歯面が、少なくとも3つの係合態様で1つのウォームホイールの歯面と選択的に係合し、1つの係合態様では、2本のウォーム軸が1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達し、2本のウォーム軸のいずれも、ウォームホイールの回転方向の前方側の歯面がウォームホイールの歯面に接触し、ウォームホイールの回転方向の後方側の歯面がウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成し、他の2つの係合態様では、ウォームホイールの両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸のみが1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達し、一方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触し、他方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成しており、ウォームホイールの回転方向が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレを極めて少なくすると、ウォームホイールとウォーム軸の駆動時のズレを適切に調整できる。例えば、2本のウォーム軸に取付けた2個のモーターの位相のズレ量を調整することにより、ウォームホイールとウォーム軸の間のバックラッシュにより生じるズレを調整して高精度な割り出しを行うことが可能である。
【0017】
とくに、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して同一方向で接触するように駆動されると、ウォームホイールを2本のウォーム軸で押圧して駆動できるため、例えば2本のウォーム軸をそれぞれ通常の2分の1の出力のモーターで駆動することができる。また、ウォームホイールが2本のウォーム軸で保持できるので、1本のウォーム軸で保持される場合と比較して2倍の強度が得られる。更に、ウォームホイールとウォーム軸の歯型を小さくしてウォーム軸を細くでき、ウォーム軸歯面の周速を同じと考えた場合にウォーム軸を高速に回転させることができる。この場合、とくに高速な割り出しを行うことが可能である。
【0018】
とくに、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して反対方向で接触するように駆動されると、例えば一方のウォーム軸でウォームホイールを所定の方向に押圧して移動させた後すぐに他方のウォーム軸でウォームホイールを反対方向に押圧して移動させることができ、ウォーム軸とウォームホイールの間のバックラッシュにより生じるズレを極めて少なくすることができる。この場合、とくに高精度な割り出しが可能である。
【0019】
とくに、2本のウォーム軸が、ウォームホイールの両側にかつ平行に配置されていると、ウォーム軸の駆動力をウォームホイールに無駄なく伝達できる。
【0020】
とくに、2本のウォーム軸が、互いに独立した別々のモーターによって駆動されると、2本のウォーム軸を制御しやすく、より高精度な割り出しが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の1つの最良の形態による割り出し機構は、ウォームホイールとウォーム軸を有する割り出し機構において、被動歯車として機能する1つのウォームホイールに、駆動軸として機能する2本のウォーム軸が、選択的に少なくとも3つの係合態様で係合するものである。
【0022】
好ましい割り出し機構は、ウォームホイールの両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸のみが1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達する。
【0023】
1つの係合態様において、一方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触し、他方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成している。
【0024】
他の係合態様に変化したとき、つまり、ウォームホイールの回転方向が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレは、ゼロか、極めて少ない。
【0025】
より好ましくは、2本のウォーム軸の少なくとも1本のウォーム軸の歯面が1つのウォームホイールの歯面と選択的に少なくとも3つの態様で係合する。
【0026】
その場合、1つの態様では、2本のウォーム軸が1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達し、2本のウォーム軸のいずれも、ウォームホイールの回転方向の前方側の歯面がウォームホイールの歯面に接触し、ウォームホイールの回転方向の後方側の歯面がウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成する。
【0027】
他の2つの係合態様では、ウォームホイールの両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸のみが1つのウォームホイールに回転駆動力を伝達する。この場合、1つの係合態様で、一方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触し、他方のウォーム軸の歯面がウォームホイールの回転方向の前方側でウォームホイールの歯面に接触せず、隙間を形成する。この1つの係合態様から他の係合態様に変化したとき、つまり、ウォームホイールの回転方向が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレは、ゼロか、極めて少ない。
【0028】
なお、1本のウォーム軸の歯面が1つのウォームホイールの歯面と係合している場合は、他方のウォーム軸の歯面は、ウォームホイールの回転方向の後方側でウォームホイールの歯面に接触している場合(つまり、隙間のない場合)と、ウォームホイールの歯面に接触せず、小さな隙間を形成している場合がある。その隙間が小さいほど、バックラッシュによるズレは少ない。
【0029】
また、別の実施形態においては、好ましくは、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して同一方向で接触するように駆動される。なお、このように駆動された後、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して反対方向で接触するように駆動される構成にすることもできる。この場合、ウォームホイールを高速に移動させた後、ウォーム軸とウォームホイールの間にズレを極めて少なくしてすぐに割り出しを行うことができ、作業を更に高速化できる。
【0030】
また、更に別の実施形態においては、好ましくは、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して反対方向で接触するように駆動される。例えば、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に、それぞれウォームホイールの回転方向に関して反対方向で積極的な押圧を行うことにより接触するようにしてもよい。この場合、ウォーム軸とウォームホイールの間のズレを極めて少なくすることができ、とくに高精度な割り出しが可能である。
【0031】
好ましくは、2本のウォーム軸が、ウォームホイールの両側にかつ平行に配置されている。
【0032】
好ましくは、2本のウォーム軸が、互いに独立した別々のモーターによって駆動される。
【実施例1】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0034】
図1は、本発明の割り出し機構の一例を示す概略部分断面図である。図2は、図1の割り出し機構のA−A断面図である。なお、図2において、ウォームホイールの線影は見やすくするため省略されている。
【0035】
割り出し機構10は、基部12を有している。基部12には、回転体14が軸芯Cを中心に回転可能に設定されている。
【0036】
基部12は、被動歯車として機能する1つのウォームホイール16と駆動軸として機能する2本のウォーム軸としての第1ウォーム軸18及び第2ウォーム軸20を有している。第1ウォーム軸18及び第2ウォーム軸20は、後に詳述されるように、ウォームホイール16に選択的に係合するものである。
【0037】
第1ウォーム軸18と第2ウォーム軸20は、それぞれ第1ベアリング22と第2ベアリング24を介して基部12に対して回転可能に支持されている。
【0038】
第1ウォーム軸18と第2ウォーム軸20は、それぞれ第1モーター26と第2モーター28の出力軸に連結されている。第1モーター26と第2モーター28は、制御装置30に接続されており、完全に同期させて駆動可能であり、それぞれの位相のズレ量を調整して駆動可能である。
【0039】
第1ウォーム軸18と第2ウォーム軸20の少なくとも一方を用いて、回転体14がウォームホイール16と共に軸芯Cを中心にして回転するようになっている。
【0040】
次に、図3及び図4を参照して、ウォームホイールと第1、第2ウォーム軸の間の係合態様の一例を説明する。
【0041】
図3は、第1ウォーム軸の歯面とウォームホイールの歯面付近の状態の一例を示す説明図である。図4は、第2ウォーム軸の歯面とウォームホイールの歯面付近の状態の一例を示す説明図である。
【0042】
図3においては、ウォームホイール16の歯16aと、その両隣にある第1ウォーム軸18の歯18a及び18bが示されている。ウォームホイール16の回転方向Xに関して、第1ウォーム軸18の歯18aが後方の(後方を向いた)歯18aであり、歯18bが前方の(前方を向いた)歯である。
【0043】
図4においては、図3に示されたウォームホイール16の歯16aと軸芯Cに関して反対側にある別の歯16cと、その両隣にある第2ウォーム軸20の歯20a及び20bが示されている。ウォームホイール16の回転方向Xに関して、第2ウォーム軸20の歯20aが後方の(後方を向いた)歯20aであり、歯20bが前方の(前方を向いた)歯である。
【0044】
第1ウォーム軸のみがウォームホイールに回転駆動力を伝達する場合
第1ウォーム軸18のみがウォームホイール16に回転駆動力を伝達している場合を説明する。
【0045】
この場合、第1ウォーム軸18の歯面18dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16bに接触し、後方側の歯面18cは、ウォームホイール16の歯面16bに接触せず、隙間Pを形成する(図3参照)。第2ウォーム軸20の歯面20dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16dに接触しない。このとき、第2ウォーム軸20の歯面20cは、ウォームホイール16の回転方向Xの後方側でウォームホイール16の歯面16dに接触する場合と(図4参照)、接触せずに隙間を形成する場合がある(図示省略)。
【0046】
従って、例えばウォームホイール16の回転方向Xが逆方向になったとき、第2ウォーム軸20の回転駆動力をウォームホイール16に適切なタイミングで伝達でき、第1ウォーム軸18及び第2ウォーム軸20とウォームホイール16の間のバックラッシュにより生じるズレがゼロか、極めて少ない。
【0047】
第2ウォーム軸のみがウォームホイールに回転駆動力を伝達する場合
第2ウォーム軸20のみがウォームホイール16回転駆動力を伝達している場合について説明する。
【0048】
第2ウォーム軸20の歯面20dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16dに接触し、後方側の歯面20cは、ウォームホイール16の歯面16dに接触せず、隙間を形成する(図示省略)。第1ウォーム軸18の歯面18dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16dに接触しない(図示省略)。このとき、第1ウォーム軸18の歯面18cは、ウォームホイール16の回転方向Xの後方側でウォームホイール16の歯面16dに接触する場合と、接触せずに隙間を形成する場合がある(図示省略)。
【0049】
従って、例えばウォームホイール16の回転方向Xが逆方向になったとき、第1ウォーム軸18の回転駆動力をウォームホイール16に適切なタイミングで伝達でき、第1ウォーム軸18及び第2ウォーム軸20とウォームホイール16の間のバックラッシュにより生じるズレがゼロか、極めて少ない。
【0050】
2本のウォーム軸がウォームホイールに回転駆動力を伝達する場合
第1ウォーム軸18の歯面18dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16bに接触し、後方側の歯面18cは、ウォームホイール16の歯面16bに接触せず、隙間Pを形成する(図3参照)。第2ウォーム軸20の歯面20dは、ウォームホイール16の回転方向Xの前方側でウォームホイール16の歯面16dに接触し、後方側の歯面20cは、ウォームホイール16の歯面16dに接触せず、隙間Qを形成する(図4参照)。
【0051】
第1ウォーム軸18と第2ウォーム軸20がウォームホイール16に回転駆動力を伝達することで、より高速な割り出しを行うことが可能である。
【実施例2】
【0052】
次に、図3及び図4を参照して、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に向けて、それぞれウォームホイールの回転方向に関して反対方向で接触するように駆動される例を説明する。なお、既に説明された部材と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、第1ウォーム軸18の後方の歯18aの歯面18cは、ウォームホイール16の歯16aの歯面16bとの間に隙間Pを有している。第1ウォーム軸18の前方の歯18bの歯面18dは、ウォームホイール16の歯16aの歯面16bと接触している。この場合、第1ウォーム軸18の前方の歯18bの歯面18dは、ウォームホイール16の歯16aの歯面16bを回転方向Xに向けて押圧して移動させている。第1ウォーム軸18の後方の歯18aの歯面18cと、ウォームホイール16の歯16aの歯面16bとの間の隙間Pの幅は、歯面18cと歯面16bの間のバックラッシュに相当する。
【0054】
図4においては、第2ウォーム軸20の後方の歯20aの歯面20cは、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dと接触している。第2ウォーム軸20の前方の歯20bの歯面20dは、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dとの間に隙間Qを有している。この場合、第2ウォーム軸20の前方の歯20bの歯面20dは、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dを回転方向Xに向けて押圧していない。第2ウォーム軸20の前方の歯20bの歯面20dと、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dとの間の隙間Qの幅は、図3の隙間Pの幅に等しい。
【0055】
第2ウォーム軸20の後方の歯20aの歯面20cを、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dと接触させるために、第2ウォーム軸20を第1ウォーム軸18に対して隙間Qの幅すなわちバックラッシュ分だけずらして回転させて駆動する。
【0056】
従って、例えばウォームホイール16を図3及び図4に示された状態から回転方向Xと反対方向に移動させる場合、第2ウォーム軸20の後方の歯20aの歯面20cが既にウォームホイール16の歯16cの歯面16dと接触しているため、第2ウォーム軸20の歯20aの歯面20cによりウォームホイール16の歯16cの歯面16dをすぐに押圧して移動させることができる。こうして第1ウォーム軸18及び第2ウォーム軸20とウォームホイール16の間のバックラッシュにより生じるズレがゼロか、極めて少ない。
【実施例3】
【0057】
次に、図3及び図4を参照して、2本のウォーム軸の歯面が、ウォームホイールの歯面に向けて、それぞれウォームホイールの回転方向に関して同一方向で接触するように駆動される例を説明する。なお、既に説明された部材と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
第1ウォーム軸18の後方の歯18bの歯面18dと、ウォームホイール16の歯16aの歯面16bを接触させるとともに(図3参照)、第2ウォーム軸20の後方の歯20bの歯面20dと、ウォームホイール16の歯16cの歯面16dを接触させる(図示省略)。
【0059】
第1、第2ウォーム軸18、20の歯面18d、20dが、いずれもウォームホイール16の歯面16b、16cに回転駆動力を伝達するようになっているため、より高速な割り出しを行うことが可能である。
【0060】
本発明は図示された実施例に限定されない。第1ウォーム軸18と第2ウォーム軸20は交換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の割り出し機構の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】図1の割り出し機構のA−A断面図である。
【図3】第1ウォーム軸の歯面とウォームホイールの歯面付近の状態の一例を示す説明図である。
【図4】第2ウォーム軸の歯面とウォームホイールの歯面付近の状態の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 割り出し機構
12 基部
14 回転体
16 ウォームホイール
16a、16c、18a、18b、20a、20b 歯
16b、16d、18c、18d、20c、20d 歯面
18 第1ウォーム軸
20 第2ウォーム軸
22 第1ベアリング
24 第2ベアリング
26 第1モーター
28 第2モーター
30 制御装置
X 回転方向
P、Q 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームホイールとウォーム軸を有する割り出し機構において、被動歯車として機能する1つのウォームホイール(16)に、駆動軸として機能する2本のウォーム軸(18、20)が、選択的に複数の係合態様で係合することを特徴とする割り出し機構。
【請求項2】
ウォームホイール(16)の両回転方向のいずれにおいても、1本のウォーム軸(18)のみが1つのウォームホイール(16)に回転駆動力を伝達し、
1つの係合態様で、一方のウォーム軸(18)の歯面(18d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16b)に接触し、他方のウォーム軸(20)の歯面(20d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16d)に接触せず、隙間を形成しており、
他の係合態様になったとき、すなわち、ウォームホイール(16)の回転方向(X)が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレをゼロか、極めて少なくすることを特徴とする請求項1に記載の割り出し機構。
【請求項3】
2本のウォーム軸(18、20)の少なくとも1本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20d)が、少なくとも3つの係合態様で1つのウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)と選択的に係合し、
1つの係合態様では、2本のウォーム軸(18、20)が1つのウォームホイール(16)に回転駆動力を伝達し、2本のウォーム軸(18、20)のいずれも、ウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側の歯面(18d、20d)がウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に接触し、ウォームホイール(16)の回転方向(X)の後方側の歯面(18c、20c)がウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に接触せず、隙間を形成し、
他の1つの係合態様では、一方のウォーム軸(18)の歯面(18d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16b)に接触し、他方のウォーム軸(20)の歯面(20d)がウォームホイール(16)の回転方向(X)の前方側でウォームホイール(16)の歯面(16d)に接触せず、隙間を形成しており、
更に他の係合態様になったとき、すなわち、ウォームホイール(16)の回転方向(X)が逆方向になったとき、バックラッシュによるズレをゼロか、極めて少なくすることを特徴とする請求項1に記載の割り出し機構。
【請求項4】
2本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20d)が、ウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に、それぞれウォームホイール(16)の回転方向(X)に関して同一方向で接触するように駆動されることを特徴とする請求項1に記載の割り出し機構。
【請求項5】
2本のウォーム軸(18、20)の歯面(18d、20c)が、ウォームホイール(16)の歯面(16b、16d)に、それぞれウォームホイール(16)の回転方向(X)に関して反対方向で接触するように駆動されることを特徴とする請求項1に記載の割り出し機構。
【請求項6】
2本のウォーム軸(18、20)が、ウォームホイール(16)の両側にかつ平行に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の割り出し機構。
【請求項7】
2本のウォーム軸(18、20)が、互いに独立した別々のモーター(26、28)によって駆動されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の割り出し機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−28866(P2009−28866A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197135(P2007−197135)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000104537)キタムラ機械株式会社 (19)
【Fターム(参考)】