説明

創傷閉鎖手段として有効な単量体組成物

【課題】 創傷閉鎖手段として有効な単量体組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 生物適合性単量体組成物は、次のものを含んでなる。A.医療上許容できる重合体を形成する、少なくとも1種の単量体;B.前記組成物の0.5重量%〜9重量%の量で、前記組成物中に存在する少なくとも1種の可塑化物質;およびC.少なくとも1種の酸性の安定化物質。前記フィルムは、次の方法によって作られる。(a)少なくとも2つの組織面を共に保持して接触組織面を形成すること、(b)前記組成物を、前記接触組織面を横切るようにして適用すること;および(c)前記組成物を重合させ次いで前記フィルムを前記接触組織面上に形成すること。前記フィルムは0.1mm又はそれより厚い厚さを有しかつ前記フィルムはより一層厚さの薄いフィルムよりも高いフィルム強度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学的接着剤およびシーラントを形成するのに有用な単量体および重合体の組成物に関するものである。特に、本発明は、創傷閉鎖用の単量体および重合体の組成物、および医療、外科およびその他の生体において適用するためのこれらの組成物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
創傷閉鎖に主に使用される製品は、外科用縫合材およびステープルである。縫合材は、適当な創傷支持を提供すると認められる。しかし、縫合材は、創傷部位に追加の外傷を生じさせ(これは、針および縫合材を組織に通す必要があり、また針を使用して創傷区域に麻酔をかける必要があるからである)かつ所定の位置に位置させるのに時間がかかり、また皮膚レベルにおいて見映のよくない創傷閉鎖痕跡を生じることがある。外科用ステープルは、創傷の付着を促進し、かつ美容の面で改善された結果を与えるために開発されてきた。しかし、外科用ステープルも、追加の外傷を負わせ、またステープルを位置決めおよび適用するために高価であることの多い補助手段を使用する必要がある。縫合材およびステープルは、両者とも、患者が強い恐怖応答を示し、かつこれらを所定の位置に位置させることに協力するのを拒絶することがある小児科の患者、および皮膚組織が比較的弱く、裂け易い老人の患者では、特に問題になる。
【0003】
あるいはまた、創傷閉鎖手段として接着剤が提案されている。このような接着剤の1つの群は単量体形態のα−シアノアクリレートである。
【0004】
例えば、ルング(Leung)等の米国特許第5,328,687号;ヴィカー等の同第3,527,841号;ロバートソン等の同第3,722,599号;クロネンタール等の同第3,995,641号およびオーバーフルツ等の同第3,940,362号の明細書を参照のこと。これらの米国特許明細書は外科用接着剤として有用なα−シアノアクリレートを開示している。上述の文献をすべて参考としてここに加入する。
【0005】
代表的な例では、このシアノアクリレート外科用接着剤は、創傷または創傷内部を含む切開の片方また両方の表面に適用され、この際過剰の接着剤を結合表面から迅速に除去する。その後、創傷の端縁を、これらが接着するまで一緒に保持する。クーバー・ジュニア等の米国特許第3,559,652号明細書を参照のこと。創傷表面に接着剤を2回塗布することがある。しかし、このような適用方法は、外科用接着剤が創傷部位に捕捉されるために、有意なレベルの組織毒性を生じる。
【0006】
シアノアクリレート外科用接着剤を創傷または切開に適用する他の方法は、創傷部位をまたがる架橋を形成することを含む。ハルパーンの米国特許第3,667,472号明細書に記載されているように、シアノアクリレート接着剤を切開の上に塗布し、結合を発現させるのに必要な時間が与えられるまで、切れた組織を一緒に保持し、固定された関係に維持する。過剰の接着剤は切開から除去する。しかし、この方法で使用される組成物は、不適当なフィルム強度および可撓性を生じるほか、創傷部位における組織毒性が大きい。
【0007】
一般的に、組織接着剤を適用するこれらの従来方法は好ましい特定の方法を規定しておらず、また創傷の上に最小量より多い量の接着剤を被着させることについても言及されていない。従来の適用技術は、組織毒性の点から、創傷に対する過剰量の組織接着剤の適用を減らすよう努めている。
【0008】
商業的に入手可能な局所用組織接着剤は、ドイツ国のベー・ブラウン・メルスンゲン・アーゲー(B. Braun Melsungen AG)から入手できるヒストアクリル(Histoacryl,登録商標)である。製造業者は、この接着剤を、小さい皮膚の創傷を閉鎖するためにのみ使用することを推奨しており、内部に使用するためには推奨していない。さらに、製造業者は接着剤を控えめに使用すること、すなわち薄いフィルムとして使用することを推奨しており、これは厚いフィルムがフィルム強度を大きくせず、また発熱反応のために周囲組織の壊死を招くことがあるからである。しかも、この接着剤から生成するフィルムは脆弱であって、ひどい創傷離開を生じることがある。
【0009】
従来、シアノアクリレート外科用接着剤には可塑剤が添加されている。例えば、クーバー・ジュニア等の米国特許第3,759,264号、ハルパーンの同第3,667,472号、およびバニットの同第3,559,652号の明細書を参照のこと。これらの米国特許明細書の内容をここに参考として加入する。しかし、このような組成物に可塑剤を組み込むと、重合した材料のフィルム強度の低下を招く。従って、このような組成物は創傷部位のなかにのみ使用され、架橋として創傷部位をまたがるようには使用されていない。
【0010】
シアノアクリレート外科用接着剤には、接着剤の硬化速度および貯蔵寿命を変えるために、他の添加剤が使用されている。例えば、二酸化硫黄、酸化窒素、三弗化ホウ素、およびヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノン、ニトロヒドロキノン、カテコールおよびヒドロキノンモノエチルエーテルを包含する他の酸性物質のようなシアノアクリレート重合抑制剤またはルイス酸を包含する安定剤がある。例えば、バニットの米国特許第3,559,652号明細書を参照のこと。その内容をここに参考として加入する。これらの組成物は有意量の不純物を含有しているので、単量体の早期重合を抑制するために実質的な量の安定剤を必要とする。
【0011】
他の添加剤としては可塑剤および安定剤の両者がある。例えば、グレフ等の米国特許第5,480,935号明細書には、可塑剤および重合抑制剤を含有する組織接着剤が記載されている。しかし、この米国特許明細書に記載されている可塑剤(すなわち、アルキルフタレート)は毒性が大きく、生物適合性医療用接着剤に使用するのに適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、後述の単量体を可塑化物質および酸性の安定化物質と組み合わせると、創傷または切開に適用した後に重合して創傷または切開部位の上に強い可撓性の結合を形成する外科用接着剤組成物が得られる、ことを見い出したことに基づく。
【0013】
さらに、本発明は、創傷または切開部位の上に重合した組成物を適用する従来技術より予期できない程優れた結合強度を生じる架橋構造として、外科用接着剤組成物を適用する方法を提供する。この方法は、このような単量体および重合体の生体内適用における効果を増大する。
【0014】
この外科用接着剤は創傷または切開の上に可撓性である強い結合を形成する。しかも、外科用接着剤を創傷または切開に適用する本発明の方法は、強い可撓性生物適合性結合を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様は、
A)医療上許容できる創傷閉鎖用重合体を形成する少なくとも1種の単量体;
B)少なくとも1種の可塑化物質;および
C)少なくとも1種の酸性の安定化物質
を含有することを特徴とする創傷閉鎖用単量体組成物を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、上述の単量体、および該単量体を生体医学的目的に使用する方法に向けられている。
【0017】
このような1つの態様では、創傷または切開の端縁を一緒に保持し、過剰量の上述の外科用接着剤組成物を、既につままれている、すなわち接触している対向する創傷端縁に、好ましくは1回より多い塗布ストロークを使用して、塗布する。この方法により、接触する対向する創傷端縁の上に、可撓性で、高引張強度を有する架橋を形成する。接触する対向する創傷端縁上に被着している過剰量の接着剤は、その上に厚いフィルムを形成し、フィルム強度を予期できない程増大させる。
【0018】
例えば、本発明は、接触組織表面を横切る生物適合性フィルムを形成するに当り、(a)少なくとも2つの組織表面を一緒に保持して接触組織表面を形成し、(b)該接触組織表面を横切るように接着性生物適合性単量体組成物を塗布し、(c)該単量体組成物を重合させ、前記接触組織表面の上に、創傷不全を誘発させるのに必要な少なくとも70mmHgの真空圧、普通創傷不全を誘発させるのに必要な70mmHg〜400mmHgの真空圧、好ましくは創傷不全を誘発させるのに必要な90mmHg〜400mmHgの真空圧、一層好ましくは創傷不全を誘発させるのに必要な100mmHg〜400mmHgの真空圧の強度を有する生体フィルム強度を有する生物適合性フィルムを形成する。
【0019】
前記単量体は、α−シアノアクリレートであるのが好ましい。本発明の単量体組成物およびこれから生成する重合体は、組織接着剤、および出血防止用または開放創傷被覆用のシーラントとして有用であり、また他の生物医学的適用分野において有用である。本発明の単量体組成物およびこれから生成する重合体は、例えば、外科により切開した組織または外傷により裂けた組織を付着させるため;骨折した骨構造体を整復するため;創傷からの血液の流れを遅延させるため;および生組織の修復および再成長を助けるために使用される。
【0020】
上述のように、従来の外科用接着剤組成物は、フィルム強度を低下させるという悪影響を及ぼす可塑剤を含有している。本発明においては、従来信じられていたこととは反対に、フィルム強度(すなわち、強靱性)が、ある条件下では、比較的多量の可塑化物質を添加しても低下するという悪影響を受けない、ことを見い出した。接着剤組成物に使用する特定の酸性の安定化物質および単量体純度によっては、比較的多量の可塑化物質を添加すると、この結果創傷の上に形成する結合の強靱性が増大することがある。本発明においては、弱酸性の安定化物質が本発明の単量体組成物中の単量体の重合に有意な影響を及ぼさず、また可塑化物質量の増加に伴なってフィルム強度を大きくする、ことを見い出した。
【0021】
本発明において使用することができる単量体は、重合性、例えば、陰イオン重合性または遊離基重合性であって、重合体を生成する。このような単量体は重合体を生成する単量体を包含し、該重合体は生物分解性であってもよいが、必ずしも生物分解する必要はない。例えば、参考としてここに加入する米国特許第5,328,687号明細書を参照のこと。ここに、「組織毒性」とは、組織中に有毒物質が存在するために生ずる炎症のような不都合な組織応答を意味するものとする。
【0022】
有用な1,1−二置換エチレン系単量体には、次式
(I) CHR=CXY
(式中のXおよびYは、それぞれ強力な電子求引基であり、そしてRはH,−CH=CH2であるかまたは、XおよびYが共にシアノ基である場合には、C1〜C4アルキル基である)で表される単量体が含まれるが、これらには限定されない。
【0023】
式(I)の範囲内の単量体の例には、式CH2=CX’Y’(式中のX’は、−SO2R’または−SO3R’であり、Y’は−CN,−COOR’,−COCH3,−SO2R’または−SO3R’であり、そしてR’はHまたはヒドロカルビル基である)で表される、α−シアノアクリレート、ビニリデンシアニド、ビニリデンシアニドのC1〜C4アルキル同族体、マロン酸ジアルキルメチレン、アシルアクリルニトリル、スルフィン酸ビニルおよびスルホン酸ビニルが含まれる。
【0024】
本発明において用いるのに好ましい式(I)で表される単量体は、α−シアノアクリレートである。これらの単量体は、業界において知られており、次式
【0025】
【化1】

{式中のR2は、水素原子であり、そしてR3は、ヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基であり;式−R4−O−R5−O−R6(式中のR4は、2〜4個の炭素原子を有する1,2−アルキレン基であり、R5は2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R6は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)で表される原子団であるか;または式
【0026】
【化2】

(式中のR7
【0027】
【化3】

または−C(CH32−であり、R8は有機基である)で表される原子団である}で表される。
【0028】
好適なヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基の例には、1〜16個の炭素原子を有する直鎖状または枝分れ状アルキル基;アシルオキシ基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはハロアルキル基で置換された直鎖状または枝分れ状C1〜C16アルキル基;2〜16個の炭素原子を有する直鎖状または枝分れ状アルケニル基;2〜12個の炭素原子を有する直鎖状または枝分れ状アルキニル基;シクロアルキル基;アラルキル基;アルキルアリール基;およびアリール基が含まれる。
【0029】
有機基R8は、置換されているかまたは未置換であることができ、直鎖状、枝分れ状または環式、飽和、不飽和または芳香族とすることができる。このような有機基の例には、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C12環式脂肪族基、フェニル基および置換フェニル基等のアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基およびフェニルエチル基等のアラルキル基が含まれる。他の有機基には、置換炭化水素基、例えばハロ置換炭化水素基(例えば、クロロ、フルオロおよびブロモ置換炭化水素基)およびオキシ置換炭化水素基(例えばアルコキシ置換炭化水素基)が含まれる。好ましい有機基は、1〜約8個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基並びにそのハロ置換誘導体である。特に好ましいのは、4〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0030】
式(II)で表されるシアノアクリレート単量体において、R3は、好ましくは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であるかまたは式−AOR9(式中のAは、2〜8個の炭素原子を有する2価の直鎖状または枝分れ状アルキレン基またはオキシアルキレン基であり、R9は1〜8個の炭素原子を有する直鎖状または枝分れ状アルキル基である)で表される原子団である。
【0031】
式−AOR9で表される原子団の例には、1−メトキシ−2−プロピル、2−ブトキシエチル、イソプロポキシエチル、2−メトキシエチルおよび2−エトキシエチルが含まれる。
【0032】
本発明において用いる好ましいα−シアノアクリレート単量体は、2−オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレートまたは1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレートである。
【0033】
式(II)で表されるα−シアノアクリレートを、業界において知られている方法により製造することができる。例えば、米国特許第2,721,858号および同第3,254,111号明細書を参照し、これら各々の出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。例えば、α−シアノアクリレートを、シアノ酢酸アルキルとホルムアルデヒドとを非水有機溶媒中で塩基性触媒の存在下で反応させ、次に無水中間重合体を重合開始剤の存在下で熱分解することにより、製造することができる。低水分で、および実質的に不純物の不存在において製造したα−シアノアクリレート単量体が、生物医学的に用いるのに好ましい。
【0034】
3が式−R4−O−R5−O−R6で表される原子団である、式(II)で表されるα−シアノアクリレートを、Kimura等による米国特許第4,364,876号明細書に開示された方法により製造することができ、この出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。Kimura等による方法において、α−シアノアクリレートを製造するには、シアノ酢酸をアルコールでエステル化するかまたはシアノ酢酸アルキルとアルコールとをエステル交換反応させることにより、シアノアセテートを得;シアノアセテートとホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとを触媒の存在下で0.5〜1.5対1、好ましくは0.8〜1.2対1のモル比で縮合させて、縮合物を得;縮合反応混合物を、直接、または縮合触媒を除去した後に解重合して、粗製のシアノアクリレートを得;粗製のシアノアクリレートを蒸留して高純度のシアノアクリレートを生成する。
【0035】
3が、式
【0036】
【化4】

で表される原子団である、式(II)で表されるα−シアノアクリレートを、Kronenthal等による米国特許第3,995,641号明細書に開示された方法により製造することができ、この出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。Kronenthal等による方法において、このようなα−シアノアクリレート単量体を製造するには、α−シアノアクリル酸のアルキルエステルと環式1,3−ジエンとを反応させて、ディールス−アルダー付加物を生成し、これを次にアルカリで加水分解し、その後酸性化して、対応するα−シアノアクリル酸付加物を生成する。α−シアノアクリル酸付加物を、ブロモ酢酸アルキルによりエステル化して、対応するカルバルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物を得るのが好ましい。あるいはまた、このα−シアノアクリル酸付加物を、塩化チオニルとの反応により、ハロゲン化α−シアノアクリリル付加物に転化することができる。次に、このハロゲン化α−シアノアクリリル付加物を、ヒドロキシ酢酸アルキルまたはメチル置換ヒドロキシ酢酸アルキルと反応させて、それぞれ対応するカルバルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物またはカルバルコキシアルキルα−シアノアクリレート付加物を得る。最後に、環式1,3−ジエン保護基を除去し、カルバルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物またはカルバルコキシアルキルα−シアノアクリレート付加物を、対応するカルバルコキシアルキルα−シアノアクリレートに、付加物をわずかな不足量の無水マレイン酸の存在下で加熱することにより、転化する。
【0037】
式(II)で表される単量体の例には、シアノペンタジエノエートおよび次式
【0038】
【化5】

(式中のZは−CH=CH2であり、R3は前述の通りである)で表されるα−シアノアクリレートが含まれる。R3が1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である、式(III) で表される単量体、即ち2−シアノペンタ−2,4−ジエノン酸エステルを、適切な2−シアノアセテートとアクロレインとを、触媒、例えば塩化亜鉛の存在下で反応させることにより、製造することができる。2−シアノペンタ−2,4−ジエノン酸エステルを製造するこの方法は、例えば米国特許第3,554,990号明細書に開示されており、同出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。
【0039】
好ましい単量体はアルキルα−シアノアクリレートであり、さらに好ましくはオクチルα−シアノアクリレート、特に2−オクチルα−シアノアクリレートである。本発明において用いる単量体は、極めて純粋でなければならず、不純物をほとんど含んでいてはならない(例えば外科手術向けのグレード)。
【0040】
本発明の組成物の成分B)は、創傷または切開上に形成した、重合した単量体に、可撓性を付与する、少なくとも1種の可塑化物質である。可塑化物質は、水分をほとんど含まないかまたは全く含まないのが好ましく、単量体の重合に顕著に影響してはならない。
【0041】
好適な可塑化物質の例には、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(p−クレシル)、トリ酢酸グリセリル、トリブチル酸グリセリル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、トリメリット酸トリオクチル、グルタル酸ジオクチルおよびこれらの混合物が含まれる。好ましい可塑化物質はクエン酸トリブチルおよびクエン酸アセチルトリブチルである。
【0042】
本発明の組成物の成分C)は、重合を阻害する少なくとも1種の酸性の安定化物質である。このような安定化物質はまた、陰イオン系安定化物質とラジカル安定化物質との混合物を含むことができる。
【0043】
好適な陰イオン系安定化物質の例には、二酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、有機酸、硫酸アルキル、亜硫酸アルキル、3−スルホレン、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、メルカプタンおよび硫化アルキル並びにこれらの混合物が含まれる。好ましい陰イオン系安定化物質は、有機酸、例えば酢酸またはリン酸の酸性の安定化物質であり、酢酸が比較的好ましい酸性安定化物質である。接着剤組成物中に存在する二酸化硫黄の最大量は、50ppm未満、好ましくは30ppm未満でなければならない。
【0044】
好適なラジカル安定化物質の例には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびt−ブチルヒドロキノンが含まれる。
【0045】
好適な酸性の安定化物質には、約0〜約7、好ましくは約1〜約6、一層好ましくは約2〜約5.5のイオン化定数pKaを有する安定化物質が含まれる。例えば、好適な酸性の安定化物質には、次のものが含まれる:硫化水素(pKa7.0)、炭酸(pKa6.4)、トリアセチルメタン(pKa5.9)、酢酸(pKa4.8)、安息香酸(pKa 4.2)、2,4−ジニトロフェノール(pKa4.0)、ギ酸(pKa3.7)、亜硝酸(pKa3.3)、フッ化水素酸(pKa3.2)、クロロ酢酸(pKa2.9)、リン酸(pKa2.2)、ジクロロ酢酸(pKa1.3)、トリクロロ酢酸(pKa0.7)、2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)(pKa0.3)、トリフルオロ酢酸(pKa0.2)およびこれらの混合物。
【0046】
前述の弱酸性の安定化物質を接着剤組成物に加える際に、可塑化物質を0.5〜16重量%、好ましくは3〜9重量%、一層好ましくは5〜7重量%の範囲内の量で加えると、重合した単量体のフィルム強度(例えば靱性)が、可塑化物質および酸性の安定化物質の量が前述の範囲外である重合した単量体よりも、増大することが見いだされた。
【0047】
用いる酸性の安定化物質の濃度を、酸の強度に依存して変化させることができる。例えば、酢酸を用いる際には、80〜200ppm(重量/重量)、好ましくは90〜180ppm(重量/重量)、一層好ましくは100〜150ppm(重量/重量)の濃度を用いることができる。一層強い酸、例えばリン酸を用いる際には、20〜80ppm(重量/重量)、好ましくは30〜70ppm(重量/重量)、一層好ましくは40〜60ppm(重量/重量)の範囲内の濃度を用いることができる。
【0048】
本発明の組成物はまた、重合体の生体生分解中に生成する活性ホルムアルデヒド濃度レベルを低下させるのに有効な少なくとも1種の生物適合性物質(またここでは「ホルムアルデヒド濃度低下物質」と呼ぶ)を含むことができる。好ましくは、この成分は、ホルムアルデヒドスカベンジャー化合物である。本発明において有用なホルムアルデヒドスカベンジャー化合物の例には、亜硫酸塩;亜硫酸水素塩;亜硫酸塩と亜硫酸水素塩との混合物;亜硫酸アンモニウム塩;アミン;アミド;イミド;ニトリル;カルバメート;アルコール;メルカプタン;タンパク質;アミンとアミドとタンパク質との混合物;活性メチレン化合物、例えば環式ケトンおよびβ−ジカルボニル基を有する化合物;並びにカルボニル基を有せず、NH基を有する複素環式化合物であって、環が窒素原子または炭素原子で構成され、環が不飽和であるか、またはフェニル基と縮合している際には、不飽和であるかまたは飽和であり、NH基が炭素原子または窒素原子に結合しており、この原子は他の炭素原子または窒素原子に二重結合により直接結合している複素環式化合物が含まれる。
【0049】
本発明においてホルムアルデヒドスカベンジャー化合物として有用な亜硫酸水素塩および亜硫酸塩は、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、並びにアンモニウム塩、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム等が含まれる。
【0050】
本発明において有用なアミンの例には、脂肪族アミンおよび芳香族アミン、例えばアニリン、ベンジジン、アミノピリミジン、トルエンジアミン、トリエチレンジアミン、ジフェニルアミン、ジアミノジフェニルアミン、ヒドラジンおよびヒドラジドが含まれる。
【0051】
好適なタンパク質には、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク質、植物タンパク質、ケラチンおよびにかわが含まれる。本発明において用いるのに好ましいタンパク質はカゼインである。
【0052】
本発明において用いるのに好適なアミドには、尿素、シアナミド、アクリルアミド、ベンズアミドおよびアセトアミドが含まれる。尿素が好ましいアミドである。
【0053】
好適なアルコールには、フェノール、1,4−ブタンジオール、d−ソルビトールおよびポリビニルアルコールが含まれる。
【0054】
β−ジカルボニル基を有する好適な化合物の例には、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトン、アセテート、マロンアミド、マロン酸ジエチルまたは他のマロン酸エステルが含まれる。
【0055】
本発明において用いるのに好ましい環式ケトンには、シクロヘキサノンまたはシクロペンタノンが含まれる。
【0056】
本発明においてホルムアルデヒドスカベンジャーとして用いるのに好適な複素環式化合物の例は、例えば、米国特許第4,127,382号明細書(Perry) に開示されており、同出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。このような複素環式化合物には、例えば、ベンゾイミダゾール、5−メチルベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、インドール、ピロール、1,2,4−トリアゾール、インドリン、ベンゾトリアゾール、インドリン等が含まれる。
【0057】
本発明において用いるのに好ましいホルムアルデヒドスカベンジャーは、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0058】
本発明を実施するにあたり、ホルムアルデヒド濃度低下物質、例えばホルムアルデヒドスカベンジャー化合物を、有効な量で、シアノアクリレートに加える。「有効な量」は、重合したシアノアクリレートのその後の生体生分解中に発生するホルムアルデヒドの量を低下させるのに十分な量である。この量は、活性ホルムアルデヒド濃度低下物質の種類に依存し、当業者が過度な実験をせずに容易に決定することができる。
【0059】
ホルムアルデヒド濃度低下物質を、本発明において、遊離形態またはマイクロカプセル封入された形態のいずれかで用いることができる。
【0060】
マイクロカプセル封入する際には、ホルムアルデヒド濃度低下物質は、マイクロカプセルから、シアノアクリレート重合体の生体生分解中に、長期間にわたり連続的に放出される。
【0061】
本発明の目的のために、マイクロカプセル封入された形態のホルムアルデヒド濃度低下物質が好ましい。その理由は、この例では、シアノアクリレート単量体の重合が、ホルムアルデヒド濃度低下物質により防止されるかまたは顕著に低下し、これにより、貯蔵寿命が増大し、使用中の単量体組成物の取扱が容易になるからである。
【0062】
ホルムアルデヒドスカベンジャーのマイクロカプセル封入を、多くの既知のマイクロカプセル封入手法により達成することができる。例えば、マイクロカプセル封入を、コーティング重合体を揮発性溶媒、例えば塩化メチレンに、重合体濃度が約6重量%となるように溶解し;ホルムアルデヒドスカベンジャー化合物を粒状の形態でコーティング重合体/溶媒溶液にかきまぜながら加えて、18重量%のスカベンジャー濃度を得;界面活性剤含有鉱油溶液を重合体溶液に急速にかきまぜながら緩徐に加え;かきまぜながら揮発性溶媒を放置して蒸発させ;かきまぜ器を取り除き;固体を鉱油から分離し;微粒子を洗浄し、乾燥することにより、実施することができる。微粒子の大きさは、約0.001〜約1000ミクロンの範囲内である。
【0063】
ホルムアルデヒド濃度低下物質をマイクロカプセル封入するためのコーティング重合体は、好ましくは単量体により形成したシアノアクリレート重合体と同様であるかまたはこれより高い速度で、生体で生物腐食を受ける重合体でなければならず、低い固有含水量を有しなければならない。このような「生物腐食」は、封入物質の物理的または化学的分解の結果、例えば体液の存在下での封入物質の固体から溶質への移行、または体中に存在する物質による封入物質の生分解により、生じうる。
【0064】
ホルムアルデヒド濃度低下物質をマイクロカプセル封入するのに用いることができるコーティング物質の例には、ポリエステル、例えばポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸とポリ乳酸との共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ−β−ヒドロキシブチレート、ε−カプロラクトンとδ−バレロラクトンとの共重合体、ε−カプロラクトンとDL−ジラクチドとの共重合体およびポリエステルヒドロゲル;ポリビニルピロリドン;ポリアミド;ゼラチン;アルブミン;タンパク質;コラーゲン;ポリ(オルトエステル);ポリ(無水物);ポリ(アルキル−2−シアノアクリレート);ポリ(ジヒドロピラン);ポリ(アセタール);ポリ(ホスファゼン);ポリ(ウレタン);ポリ(ジオキシノン);セルロース;およびデンプンが含まれる。
【0065】
鉱油に加えることができる界面活性剤の例には、トリトン(Triton) x-100、トウィーン(Tween) 20およびトウィーン80の呼称の下に市場で入手できるものが含まれる。
【0066】
本発明の組成物は、さらに、1種または2種以上の補助剤物質、例えば増粘剤、薬剤等を含んで、特定の医療的用途の単量体の医療的有用性を改善することができる。
【0067】
好適な増粘剤には、例えば、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−3−ヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルアクリレート、アルキルアクリレートと酢酸ビニルとの共重合体、ポリアルキルメタクリレート、およびアルキルメタクリレートとブタジエンとの共重合体が含まれる。
【0068】
本発明の組成物から形成した接着剤の凝集強さを改善するために、二官能価単量体架橋剤を、本発明の単量体組成物に加えることができる。このような架橋剤は知られている。例えばOverhults の米国特許第3,940,362号明細書を参照し、同出願の内容を参照のために本明細書中に加入する。好適な架橋剤の例には、アルキルビス(2−シアノアクリレート)、トリアリルイソシアヌレート、アルキレンジアクリレート、アルキレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびアルキルビス(2−シアノアクリレート)が含まれる。触媒量のアミンで活性化された遊離基開始剤を加えて、シアノアクリレート単量体/架橋剤配合物の重合を開始する。
【0069】
本発明の組成物はさらに、繊維状強化材および着色剤、即ち染料および顔料を含むことができる。好適な繊維状強化材の例には、PGAミクロフィブリル、コラーゲンミクロフィブリル、セルロース系ミクロフィブリルおよびオレフィン系ミクロフィブリルが含まれる。好適な着色剤の例には、1−ヒドロキシ−4−[4−メチルフェニルアミノ]−9,10−アントラセンジオン(D+C バイオレットNo.2);6−ヒドロキシ−5−[(4−スルホフェニル)アクソ]−2−ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD+C イエローNo.6);9−(o−カルボキシフェニル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラヨード−3H−キサンテン−3−オン二ナトリウム塩一水和物(FD+C レッドNo.3);2−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1H−インドール−5−スルホン酸二ナトリウム塩(FD+C ブルーNo.2);および[フタロシアニナト(2−)]銅が含まれる。
【0070】
本発明の組成物を用いて、2つの表面を、結合される相対する創傷表面に本発明の組成物を適用することにより、接合することができる。使用者の特定の要求に依存して、本発明の接着組成物を、既知の手段、例えばガラスかきまぜ棒、無菌ブラシまたは薬物滴びんにより、適用することができる。しかし、多くの状況において、加圧エーロゾル分配パッケージが好ましく、ここでは接着剤組成物は、相溶性無水発泡剤を含む溶液である。
【0071】
1つの態様において、本発明は、生体の2つの表面を接合する方法であって、(a)創傷または切開の組織表面を結合させて、接触組織表面を形成し;(b)前述の接触組織表面に本発明の組成物、例えば1)医療上許容できる重合体を形成する少なくとも1種の単量体(例えば式(I)で表される単量体)、2)可塑化物質および3)好適な酸性の安定化物質を含む組成物を適用し;(b)これらの表面を、前述の組成物が重合するまで接触させて保持することを含んでなる方法に関する。
【0072】
前述のように、従来の外科手術用接着剤組成物は、創傷表面に、該表面を接触させる前に極めて小量で適用され、この際過剰の接着剤を除去するように注意が払われていた。創傷表面上に形成した厚いフィルムは、過去には、創傷を受けた組織の組織毒性を増大し、フィルムの脆さを増大し、フィルム強度を増大しなかった。
【0073】
しかし、本発明は、生体の2つの組織表面を、創傷または切開のすでに接触させた組織表面に、本発明の組成物を、好ましくは接触組織表面上への1回以上の適用または塗布で適用することにより、接合する方法に関する。接触組織表面上に直接塗布されたか、あるいは創傷または切開のすぐ近くに適用された過剰の接着剤は、除去しないのが好ましいが、創傷領域付近ではない周囲の組織に過剰に適用された接着剤は、除去してもよい。
【0074】
次のコーティングを、前のコーティングを適用した直後または前のコーティングが完全に重合した後に適用することができる。好ましくは、接触組織表面に適用された単量体組成物を放置して、その後追加の単量体組成物を塗布するかまたは適用する前に、少なくとも部分的に重合させる。最初のまたは前のコーティングの単量体とは異なる単量体を有する本発明の接着剤組成物のコーティングを、第2のまたは次のコーティングとして適用することができる。可塑化物質および酸性の安定化物質を加えたために、接触組織表面上に形成した重合体は、顕著に大きいフィルムの厚さまたはコーティングの厚さにおいても十分な接着強さおよび可撓性を有する。好適なフィルムの厚さは、0.1mmから2.0mmまでか3.0mmまでかまたはそれより厚い、好ましくは0.2mmから1.5mmまで、より一層好ましくは0.4から0.8mmまでの範囲内である。
【0075】
他の例において、本発明は、生体の2つの組織表面を、本発明の接着剤組成物を種々の塗布器を用いて適用することにより接合する方法に関する。このような塗布器には、破壊可能なスワブ塗布器、種々の分配ノズルまたはチップを有する注射器またはガラスびんが含まれる。
【0076】
例えば、塗布器チップは、重合性および/または架橋性物質を保持する塗布器容器から取り外し可能であることができる。このような塗布器チップを、塗布器容器に、使用前に取り付け、使用後に塗布器容器から取り外して、塗布器容器中の未だ適用されていない物質の時期尚早の重合または架橋を防止することができる。この時点において、塗布器チップを廃棄し、新たな塗布器チップを後の使用のために塗布器容器に取り付けるか、またはこの塗布器チップを再使用することができる。
【0077】
更に、本発明に係る塗布器チップは、多数の部品から構成することが可能で、少なくとも一部品は開始剤を有することができる。例えば、開始剤を含んでなる成分は他の塗布器チップの他の成分(1以上)から分離して製造し、塗布器容器の取付け前に組み立てることができる。
【0078】
塗布器チップは液体状の重合性及び/又は架橋性物質を霧化する為のノズルの形とすることもできる。円錐形ノズル、平坦形ノズル又は凝縮流ノズルが好適である。
【0079】
本発明に係る塗布器チップは、種々の装置に利用できる。例えば、手操作的適用方法は、注射器、接着剤押出し器、ピペット、点滴器等の手持ち装置の利用を含むことができる。
【0080】
塗布器チップと塗布器容器は、一体のユニットとすることもできる。一体のユニットは単独の部材として予備成形し、重合性及び/又は架橋性物質を装填することができる。塗布器容器から重合性及び/又は架橋性物質を適用した後、一体のユニットを廃棄することことができる。また、そのような塗布器チップと塗布器容器の一体のユニットは、多数回使用装置として新たな物質を再充填できる能力を有するように構成することができる。
【0081】
塗布器チップは、プラスチックス等の重合物質、発泡体、ゴム、熱硬化性樹脂、フィルム又は薄膜等の種々の物質の何れからも構成することができる。また、塗布器チップは、金属、ガラス、紙、セラミックス、ボール紙等の物質から構成することができる。塗布器チップ物質は、塗布器チップ上又は塗布器チップ内部への開始剤の積載を高め且つ容易にするように、多孔質、吸着性又は吸収性とすることができる。例えば、塗布器チップは、無作為な多孔を有する物質、ハニカム状物質、織成パターンを有する物質等から構成することができる。空隙率の度合は使用する物質によって異なる。
【0082】
本発明に係る塗布器チップは、塗布器容器に接触するところでは、細長い管状部分を有することができ、この管状部分から混合した重合性及び/又は架橋性物質を外方に排出することができる。塗布器容器の直下流の塗布器チップ部分は、急激な圧力降下を避け確実に一定の混合比プロフィールを保つように、多孔質であると有利である。このような構造は、塗布器容器内部の多数の成分を分離する為に用いた全ての障害物又は物質を好適に捕集することができる。かくて、全てのそのような障害物は装置を閉塞しない。
【0083】
重合性及び/又は架橋性物質の重合及び/又は架橋を開始する開始剤は、塗布器チップの内部及び外部を含めて塗布器チップの全表面又は一表面部分に適用することができる。或いは又、開始剤は塗布器チップの内部表面上にのみ被覆することができる。塗布器チップの内部の一部分のみを開始剤で被覆すると好適である。
【0084】
塗布器チップ上の開始剤は、粉末又は固体フィルム等の固体状であって良く、或いは粘性物質又はペースト状物質等の液体状であって良い。開始剤は種々の添加剤、例えば界面活性剤又は乳化剤を含有することもできる。好ましくは、開始剤は、重合性物質及び/又は架橋性物質に可溶性であり、及び/又は少なくとも一種類の界面活性剤を含んでなるか又は該界面活性剤を同伴し、そしてその界面活性剤は実施態様では、開始剤が重合性物質及び/又は架橋性物質と共溶出することを助ける。実施態様では、界面活性剤は開始剤が重合性物質及び/又は架橋性物質中に溶解するのを助けることができる。
【0085】
特定のシステム用の特定の開始剤は、不当な実験の必要無く当業技術者により容易に選択することができる。好適な開始剤は清浄剤組成物、界面活性剤例えば非イオン性界面活性剤例えばポリソルベート20(例えばTween20(登録商標))、ポリソルベート80(例えばTween80(登録商標))及びポロキサマー、陽イオン性界面活性剤例えばベンザルコニウムクロリド及びテトラブチルアンモニウムブロミド、陰イオン性界面活性剤例えばテトラデシル硫酸ナトリウム、及び両性又は双極性界面活性剤例えばドデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、分子内塩、アミン、イミン及びアミド例えばイミダゾール、トリプタアミン、尿素、アルギニン及びポビドン、ホスフィン、ホスファイト及びホスホニウム塩例えばトリフェニルホスフィン及びトリエチルホスファイト、アルコール例えばエチレングリコール、没食子酸メチル、アスコルビン酸、タンニン及びタンニン酸、無機塩基及び塩例えば亜硫酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム及びケイ酸ナトリウム、硫黄化合物例えばチオ尿素及びポリスルフィド、重合体の環状エーテル例えばモネンシン、ノナクチン、クラウンエーテル、カリクスアーレン及び重合体のエポキシド、環状及び非環状カーボネート例えばジエチルカーボネート、相間移動触媒例えばアリコート(Aliquat) 336、有機金属例えばナフテン酸コバルト及びアセチルアセト酢酸マンガン、及び遊離基開始剤及び遊離基例えばジ−t−ブチルペルオキシド及びアゾビスイソブチロニトリルであるが、これ等に限定されるものではない。重合性物質及び/又は架橋性物質は、塗布器チップ中の触媒又は促進剤(本発明で用いる「開始剤」の語の範囲内に含まれるもの)により活性化される迄不活性である開始剤をも含有することができる。熱及び/又は光(例えは紫外光又は可視光)等の刺激により活性化される開始剤も、塗布器チップ及び/又は塗布器が適当にそのような刺激に曝されるならば好適である。
【0086】
開始剤は塗布器チップの表面に適用するか、又は塗布器チップの母体部分又は内部部分中に含浸又は導入することができる。例えば、開始剤は開始剤を含有する液状媒質を塗布器チップに噴霧、浸漬又はブラシ掛けすることにより、塗布器チップに投与することができる。液状媒質には非水性溶媒例えばエーテル、アセトン、エタノール、ペンタン又はこれ等の混合物があり、又は水性溶液がある。液状媒質が低沸点溶媒であると好適である。
【0087】
本発明の接着剤を投与する為の好適な塗布器は、相応する米国特許出願第08/488411号に記載されているものであり、同出願の主題を参照の為に本出願中に導入する。好適な塗布器は、破壊可能なスワブ塗布器である。
【0088】
本発明の接着剤組成物を使用できる特定の方法には、損傷した生体組織から体液が流出するのを防止する為に、損傷した生体組織の諸末端を接触関係に一緒に保持し、接触している組織に本発明の単量体組成物を適用し、単量体組成物を重合させることにより、損傷した生体組織を修復する方法と、血管の損傷した領域を一緒に保持し、損傷した領域に本発明の単量体組成物を適用し、単量体組成物を重合させることにより、血管からの血液流を止める方法と、弱い骨又は破壊された骨の治癒を促進する為に、損傷した骨組織を一緒に保持し、損傷した組織に本発明の単量体組成物を適用し、単量体組成物を重合させることにより、骨組織を結合する方法とがある。
【0089】
(例えば出血の制御のために)損傷を受けた組織の修復は、通常、スポンジを当てて表面の体液を除去し、損傷を受けた組織の諸表面を接触関係に一緒に保持した後、露出した接触している組織に本発明の単量体組成物を適用する段階を有する。本発明の単量体組成物は接触している組織面と接触しながら重合して、薄い重合体膜となる。出血していない組織又は体液により被覆されていない組織は、最初にスポンジを当てる必要はない。単量体組成物は接触している組織面に、一回よりも多く塗布又は適用することができる。
【0090】
本発明の単量体は容易に重合して付加型重合体及び共重合体となり、これ等は通常光学的に透明である(フィルムとして)。
【0091】
本発明の組成物を用いる殆んどの結合用適用において、単量体は被着体の表面上の小量の水分により接触重合されるので、所要の組織の結合又は止血は血液及びその他の体液の存在下で良好に進行する。形成された骨は組織の普通の運動に耐えるのに適当な可撓性と強度を有する。また、自然の傷治癒が進行するときに結合強度が維持される。
【0092】
本発明に用いる組成物は、オートクレーブ又は無菌濾過技術等の常法により殺菌していると好適であり、殺菌の常法はオートクレーブ又は無菌濾過技術等に限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
例I〜VI
本発明に係る組成物は従来の混合装置を用いて調製する。例えば、調製工程は次のようにして行なう。
【0094】
丸底フラスコ内の外科等級のシアノアクリレートに、可塑剤、酸性安定剤及びこゝで記した如き他の組成成分を添加する。かくて生成した混合物を均質になるまで機械的に掻き混ぜる。
【0095】
以下、本発明を次の例によりさらに説明するが、本発明はこれ等の例にのみ限定されるものではない。
【0096】
以下の例では、本発明の接着剤組成物中に種々の量の可塑剤(即ちトリブチルクエン酸アセチル)を用いて、接着剤により生成した結合の強度に及ぼす影響を説明する。
【0097】
表Iに示すデータは次の方法を用いて作成した。
1.5 1/2インチ×5 1/2インチのラテックスシート(1/16インチ厚さ)に2インチの切開を設けた。
2.重合開始したチップを有する破壊可能なスワブを用いて、接着剤組成物(即ち2−オクチルシアノアクリレート)を切開に局所的に適用した。切開の界面はうっかりして接着剤を塗布してはならない。
3.1時間硬化した後、シートを2枚のプレキシグラス間に固定した。下側のガラス板は圧力変換器とガス送入部を有していた。上側のガラス板は中央に3
5/8インチの孔を有していた。供試体は接着剤を付けた側が3 5/8インチの孔を有する上板のプレキシグラスに面するように配置した。
4.ガス流量制御弁を開いて試験物質を押圧した。破壊する迄圧力を増加した。
5.ピーク圧力を圧力変換器により記録し、チャート記録機に記録した。一つの試験物質について10回の測定値を記録した。
結果は次の通りであった。
【0098】
【表1】

【0099】
例VII〜X
本発明に係る接着剤組成物及び適用方法により与えられる生体フィルム強度の予想されなかった優秀性を明瞭に示す為に、種々の外科的な創傷閉鎖の閉鎖装置に関する創傷閉鎖および局所投与の為の種々な方法及び物質を評価した(例 VII〜X)。生体フィルム強度は、創傷不全を誘発させるのに必要な最大圧力の量(即ち創傷を開くのに要する真空圧力の量)により客観的に定められる。この生体力学的分析は、ニュージャーシー州レオニアのディメンショナル アナリシス システムス社のディメンショナル アナリシス システムス(DAS)を用いて行なった。この技術は、直線的な切開創傷の客観的な生体内生体力学的特性決定の為に特異的に設計されたものである。以前の生体力学的分析(例えば単軸張力計)とは対照的に、DASは多軸応力を創傷に加えるもので、これは臨床的症状において経験する応力により多く類似する。また、DASは処置に先立って試験体の組織の手操作又は破壊的な切開を必要としない。従って、脆い創傷の鋭敏な信頼性と再現性の有る測定が治癒の早期相で得られる。さらに、DASは生育不能な組織試料、試料大きさの不一致な変動及び組織の切除からの割れ目端部等の切除方法により生ずる人為構造誤差及び実験的変動を全て解消する。
【0100】
雄のスプラーグ ダウレイ ラットを、その遺伝的等質性、取扱及び収容の容易性及び直線的な切開創傷モデルとしての全体的な一般性の故に、動物モデル用に選択して、他の同様な研究に対する比較データとした。このモデルは文献中に十分に記載されている切開創傷研究に広く用いられている。
【0101】
インディアナ州インディアナポリス所在のハーラン スプラーグ ダウレイ社から購入した雄のスプラーグ ダウレイ ラットを試験に用いた。全動物は食餌と挙動の安定化の為に処理前に7日間保持した。各群が創傷閉合方法及び/又は外科的接着剤が異なる4群(A〜D群)のラットを同一条件下で試験した。各試験体は直線的な切開創傷の閉合の1時間後のフィルム強度について試験した。
【0102】
例VII
A群と規定した第1群のラットには、組織接着剤の適用用に1ストローク技術を用いた。約6重量%の可塑剤と酸性安定剤(pKa=4.8)として2−オクチルα−シアノアクリレート中に溶解した酢酸とを有する本発明の接着剤を、スワブチップ(破壊可能なスワブ塗布器)を有する圧縮性アンプルを用いて適用し、対向する創傷端部に沿って局所投与のために1ストローク様式で通した。
【0103】
例VIII
B群と規定した第2群のラットは、多ストローク技術により同じ接着剤を用いて直線的切開を閉合した。接着剤は対向する創傷端部に沿って圧縮性アンプルを用いて多ストローク様式で1回よりも多く通して、接着剤の2〜3回の明瞭な適用を得た。
【0104】
例IX
C群と規定した第3群のラットは、最小の表面露出技術を用いて同じ接着剤により直線的切開を閉合した。皮膚表面に露出する接着剤の量を制限する試みの下に、接着剤は米国カリホルニア州サンタアナ所在のホライズンから入手できるUniject (登録商標)注射器を用いて約3〜4滴適用して、対向する創傷端部のみに接着剤を適用した。
【0105】
例X
グループDと称される第四群のラットにおいて、直線状の切開創傷を、例IXの適用技術を用い、ヒストアクリル (Histoacryl,登録商標)(ドイツ国のB.ブラウンメルザンゲン社から入手可能な外科用接着剤) を用いて閉じた。
【0106】
生体内生体的分析から得られた結果を、下記の表IIに示す。表IIに示すように、研究した1時間で全ての群間で著しい差異が認められる。群B、すなわち多数回動作技術は、群Aおよび群Cと比較して最終圧力の著しい増加を実証している。このデータは、以下の内容を示している;すなわち接着剤の量を増加すると、より高い生体内強度を許容する。群Dは、評価した全ての群に比較して生体内強度の非常に高い増加を明らかにしている。
【0107】
【表2】

【0108】
実施例XI
本発明に係る組織接着剤と同一の組織接着剤の効率を、これがブタモデルにおいて皮膚切り傷を閉鎖する能力について試験した。組織接着剤ヒストアクリル(Histoacryl) (登録商標)を対照として用いた。
【0109】
切り傷を、これらのブタの背中のいずれかの側に、無菌の小刀の刃を用いて、切り傷について制御された深さに生じさせた。この切り傷を、試験物質または対照物質のいずれかを用いて閉鎖した。塗布器中に導入した本発明の接着剤と同一の接着剤を、創傷の相対する接触する端部に、接着剤が重合する(即ち、接着剤が接触に対してもはや粘着性でなくなる)まで適用した。塗布器は、吸収剤ヘッド(粉砕性スワブ)を有する透明であり可撓性のプラスチックシリンダーである。このシリンダー中に、接着剤を含有するガラスびんがあり、これを、シリンダーを締めつけることにより破壊した。塗布器を逆さにした際に、接着剤をシリンダーからヘッド中に、次いで皮膚上に絞り出した。またヒストアクリル(登録商標)を、狭い首状部を有する密閉したプラスチックアンプルである塗布器を用いて適用した。このアンプルを27ゲージの皮下針に取り付けた。このアンプルを逆さにし、接着剤を、アンプルを締めつけ、小滴を針の端部から切り傷の相対する端部上に滴下することにより、適用した。針の先端が皮膚に接触しないように注意した。ヒストアクリル(登録商標)を適用する方法は、J. QuinnおよびJ. Kissickにより記載された(1994,“Tissue adhesives for laceration repair during sporting events”, Clin. J. Sport Med.,4:245−248)。
【0110】
回復段階中に頻繁に観察を実施し、術後約4時間、次に毎日記録して、すべての切り傷が部分的に分離(裂開)したか、完全に分離(裂開)したか、および不都合な組織応答があったか否かを測定した。創傷が観察期間中に開放した場合には、これを再び閉鎖しなかった。
【0111】
【表3】

【0112】
ブタを創傷裂開につい10日間観察した。裂開は、本発明に係る接着剤を用いて閉鎖した切り傷においては観察されなかった。部分的な裂開または完全な裂開は、ヒストアクリル(登録商標)で閉鎖した12箇所の切り傷のうち7箇所において観察された。感染症または壊死等の合併症は、観察されなかった。
【0113】
本発明の実施態様は以下の通りである。
(1)生体組織面を共に接合するフィルムを形成するための生物適合性単量体組成物であって、次のA〜C:
A.医療上許容できる重合体を形成する、少なくとも1種の単量体;
B.前記組成物の0.5重量%〜16重量%の量で、前記組成物中に存在する少なくとも1種の可塑化物質;および
C.少なくとも1種の酸性の安定化物質
を含んでなり、前記フィルムが、次の(a)〜(c):
(a)少なくとも2つの組織面を共に保持して接触組織面を形成すること、
(b)前記組成物を、前記接触組織面を横切るようにして適用すること;および
(c)前記組成物を重合させ次いで前記フィルムを前記接触組織面上に形成すること
を含んでなる方法によって作られ、前記フィルムが0.1mm又はそれより厚い厚さを有しかつ前記フィルムがより一層厚さの薄いフィルムよりも高いフィルム強度を有することを特徴とする組成物。
(2)前記可塑化物質が、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(p−クレシル)、トリ酢酸グリセリル、トリブチル酸グリセリル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、トリメリット酸トリオクチル、グルタル酸ジオクチルおよびクエン酸トリブチルから成る群から選ばれている実施態様1記載の組成物。
(3)前記可塑化物質が、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチルおよびそれらの混合物から成る群から選ばれている実施態様1または2記載の組成物。
(4)前記単量体が、2−オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、又は1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレートである実施態様1〜3のいずれか一項記載の組成物。
(5)前記組成物が、少なくとも2種の異なる単量体を含有している実施態様1〜4のいずれか一項記載の組成物。
(6)生体組織面を共に接合するためのフィルムであって、前記フィルムが、次の(a)〜(c):
(a)少なくとも2つの組織面を共に保持して接触組織面を形成すること、
(b)組成物を、前記接触組織面を横切るようにして適用し、前記組成物が、次のA〜C:
A.医療上許容できる重合体を形成する、少なくとも1種の単量体;
B.前記組成物の0.5重量%〜16重量%の量で、前記組成物中に存在する少なくとも1種の可塑化物質;および
C.少なくとも1種の酸性の安定化物質
を含んでなること;および
(c)前記組成物を重合させ次いで前記フィルムを前記接触組織面上に形成すること
を含んでなる方法によって作られており、前記フィルムが0.1mm又はそれより厚い厚さを有しかつ前記フィルムがより一層厚さの薄いフィルムよりも高いフィルム強度を有することを特徴とするフィルム。
(7)生体組織面を共に接合するためのフィルムであって、前記フィルムが、次の(a)〜(c):
(a)少なくとも2つの組織面を共に保持して接触組織面を形成すること、
(b)組成物を、前記接触組織面を横切るようにして適用し、前記組成物が、次のA〜C:
A.医療上許容できる重合体を形成する、少なくとも1種の単量体;
B.前記組成物の0.5重量%〜16重量%の量で、前記組成物中に存在する少なくとも1種の可塑化物質;および
C.少なくとも1種の酸性の安定化物質
を含んでなること;および
(c)前記組成物を重合させ次いで前記フィルムを前記接触組織面上に形成すること
を含んでなる方法によって作られており、前記フィルムが、少なくとも70mmHgの、創傷を開くのに要する圧力に耐えるフィルム強度を有することを特徴とするフィルム。
(8)前記組成物が、前記接触組織面を横切って1回より多く適用されている実施態様6または7記載のフィルム。
(9)前記接触組織面を横切って適用される組成物が、その後の前記組成物の塗布又は適用の前に少なくとも部分的に重合されている実施態様6〜8のいずれか一項記載のフィルム。
(10)先の塗布の単量体とは異なる単量体を有する組成物が、その後の塗布として適用されている実施態様8または9記載のフィルム。
(11)前記フィルムが3.0mmまでの厚さを有している実施態様6〜10のいずれか一項記載のフィルム。
(12)前記フィルムが、少なくとも90mmHgの、創傷を開くのに要する圧力に耐える強度を有している実施態様6〜11のいずれか一項記載のフィルム。
(13)前記フィルムが、少なくとも100mmHgの、創傷を開くのに要する圧力に耐える強度を有している実施態様12記載のフィルム。
(14)前記方法が、更に前記組成物を殺菌することを含んでなる実施態様6〜13のいずれか一項記載のフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織面を共に接合するフィルムを形成するための生物適合性単量体組成物であって、次のA〜C:
A.医療上許容できる創傷閉鎖用重合体を形成する、少なくとも1種の単量体;
B.前記組成物の0.5重量%〜16重量%の量で、前記組成物中に存在する少なくとも1種の可塑化物質;および
C.約0から約7のイオン化定数pKaを有する、少なくとも1種の酸性の安定化物質
を含んでなり、前記フィルムが、次の(a)〜(c):
(a)少なくとも2つの組織面を並置して一緒に保持して、接触した組織面を形成すること、
(b)前記組成物を、前記接触した組織面を横切るようにして適用すること;および
(c)前記組成物を重合させ前記フィルムを前記接触した組織面上に形成すること
を含んでなる方法によって作られることを特徴とする組成物。

【公開番号】特開2012−106018(P2012−106018A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20651(P2012−20651)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2006−336137(P2006−336137)の分割
【原出願日】平成9年2月28日(1997.2.28)
【出願人】(500512427)クロージャー メディカル コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】