創傷閉鎖材料
【課題】既存の創傷閉鎖方法と一緒に使用して創傷の封止を増強するための材料を提供すること。
【解決手段】配向を有さないか、または多方向配向を有する物品が提供される。このような物品は、フィルム、リボン、シート、および/またはテープの形態であり得、そして外科手術用ステープル留め装置と共にバットレスとして利用され得るか、または縫合線のための補強手段として利用され得る。これらの物品は、物品の表面の少なくとも一部分のエッチングを用いて製造され得る。
【解決手段】配向を有さないか、または多方向配向を有する物品が提供される。このような物品は、フィルム、リボン、シート、および/またはテープの形態であり得、そして外科手術用ステープル留め装置と共にバットレスとして利用され得るか、または縫合線のための補強手段として利用され得る。これらの物品は、物品の表面の少なくとも一部分のエッチングを用いて製造され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テープ、リボン、シート、および/またはフィルムの構成のポリマー材料の物品に関する。これらのポリマー材料は、配向を有さないように形成され得るか、または多方向配向を有するように形成され得、これによって、これらのポリマー材料は、多方向の力が付与される場合にこのポリマー材料の一体性を増強し得る。本開示のポリマー材料は、多数の用途(ある実施形態において、外科手術用バットレス、またはステープル線もしくは縫合線のための補強テープとしての用途が挙げられる)において利用され得る。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料から作製されるフィルム、リボン、シート、テープなどは、当業者の知識の範囲内である。このような材料は、ポリマー材料を融解し、この材料をダイに通して押し出し、次いで得られた材料を冷却することにより、製造され得る。このプロセスは、フィラメントまたはフィルムを形成するために利用される方法と非常に類似し得る。得られる材料は、引き続いて、一連の延伸ステーションを通して種々の延伸比で延伸され得る。これらの延伸ステーションは、種々の構成の加熱オーブンまたは類似の手段と結合される。このプロセスは、組み合わせられても組み合わせられなくてもよい。得られる延伸材料(これは、フィルム、リボン、シート、テープなどの形態であり得る)は、通常、一方向に高度に配向している。すなわち、この材料は、その長さ(延伸された方向)に直線状に沿った一方向配向を有する。
【0003】
これらの材料の直線引っ張り張力特性は、通常、これらの配向と同じ方向で測定される。従って、このような材料は、引っ張り力がこの材料の長さに沿って付与される場合に、大きい強度を有し得る。この一方向配向は、特定の用途(例えば、類似の押し出し、紡績および延伸の方法が利用されて、縫合糸、フィラメントなどの繊維を製造する場合)のためには望ましくあり得るが、テープ、リボン、シート、フィルムなどを製造するためのこのような方法は、所望通りではないかもしれない。このことは、この材料の一方向配向に対して垂直な力が付与される場合に、特に事実であり得る。このような力は、このポリマー材料に、穿孔、断裂、または切断を生じ得る。いくつかの場合において、これらの断裂は、小さい力の付与により起こり得、このことは、望ましくないかもしれない。
【0004】
外科手術用ステープル留めデバイスは、身体組織が接合または除去される外科手術において、広い用途を見出している。バットレスが、ステープル留めデバイスまたは縫合糸と組み合わせて使用されて、創傷の封止を増強し得るが、上記のような一方向配向を有する材料は、少量の力の付与により、割れたり裂けたりし得る。さらに、これらの材料がステープルまたは針により穿孔される場合に、この一方向配向に対して平行に進行する断裂が形成され得、このポリマーの配向に対して垂直に力が付与される場合に、尚早な材料破壊をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、既存の創傷閉鎖方法と一緒に使用して創傷の封止を増強するための材料を提供することが有利である。このような材料は、外科手術用ステープル留めデバイス、ならびに縫合糸および他の創傷閉鎖方法と組み合わせて利用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
バットレスを構成する補強材料であって、該バットレスがエッチングされた部分を含む、補強材料。
(項目2)
前記エッチングされた部分が、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるエッチングされたパターンを作製する、上記項目に記載の補強材料。
(項目3)
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目4)
前記エッチングされた部分が、少なくとも一方向での前記物品の拡張を可能にする、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目5)
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤の収容のためのレザバを作製する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目6)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の分解プロフィールを変更する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目7)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも一方向の柔軟性を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目8)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の表面積を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目9)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも1つの表面上にパターンを作製する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目10)
表面にエッチングされたパターンを有するポリマー材料を備える物品であって、
該物品が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される、
物品。
(項目11)
前記パターンがレーザーエッチングによって作製されている、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目12)
前記パターンが、前記ポリマー材料の表面積を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目13)
前記パターンが、前記ポリマー材料の少なくとも一方向での柔軟性を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目14)
前記パターンが、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目15)
前記パターンが、前記物品の分解プロフィールを変更する、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目16)
グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料を得る工程;
該ポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;
該物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびに
表面にエッチングされた部分を有する該物品を回収する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約60重量%〜約75重量%の量のグリコリド、およびコポリマーの約25重量%〜約40重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約55重量%〜約65重量%の量のグリコリド、コポリマーの約10重量%〜約18重量%の量のジオキサノン、およびコポリマーの約17重量%〜約35重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約14重量%〜約20重量%の量のカプロラクトン、コポリマーの約4重量%〜約10重量%の量のラクチド、コポリマーの約4重量%〜約10重量%のトリメチレンカーボネート、およびコポリマーの約60重量%〜約78重量%の量のグリコリドを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記ポリマー材料を物品に形成する工程が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される物品を形成することを包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記物品が、約0.0005インチ(約0.0013cm)〜約0.014インチ(約0.036cm)の厚さを有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記物品が、約0.002インチ(約0.0051cm)〜約0.005インチ(約0.013cm)の厚さを有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、外科出用ステープラーバットレス。
(項目24)
少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;
ステープル形成表面を有するアンビル;および
該アンビルまたは該カートリッジに隣接して配置されたバットレスであって、該バットレスは、上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス、
を備える、外科手術用ステープル留め装置。
(項目25)
外科手術用ステープル留め装置であって、間に組織を挟むように構成されたカートリッジおよびアンビルを備える、外科手術用ステープル留め装置、
該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接して配置されるように構成されたバットレスであって、該バットレスが、上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス;ならびに
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定するための手段、
を備える、創傷を封止するためのシステム。
(項目26)
外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間に組織を挟む工程であって、該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接してバットレスが配置されており、該バットレスが、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、工程;および
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定する工程、
を包含する、創傷を封止する方法。
【0007】
(摘要)
配向を有さないか、または多方向配向を有する物品が提供される。このような物品は、フィルム、リボン、シート、および/またはテープの形態であり得、そして外科手術用ステープル留め装置と共にバットレスとして利用され得るか、または縫合線のための補強手段として利用され得る。これらの物品は、物品の表面の少なくとも一部分のエッチングを用いて製造され得る。
【0008】
(要旨)
本開示は、エッチングされた部分を有し得る補強材料(例えば、バットレス)を提供する。ある実施形態において、エッチングされた部分は、エッチングされたパターン(例えば、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせ)を作製し得る。いくつかの実施形態において、エッチングされた部分はまた、生物活性薬剤を含み得る。これらのエッチングされた部分は、その物品が少なくとも一方向に拡張することを可能にし得る。これらのエッチングされた部分はまた、この補強材料の分解プロフィールを変更し得る。
【0009】
他の実施形態において、本開示は、エッチングされたパターンを表面に有するポリマー材料を含む物品を提供し、ここでこの物品は、リボン、テープ、シート、および/またはフィルムを含む。このパターンは、ある実施形態において、レーザーエッチングにより作製され得る。このパターンは、このポリマー材料の表面積を増加させ得る。このパターンはまた、この物品の分解を変更し得る。
【0010】
このような物品を形成する方法もまた提供される。ある実施形態において、本開示の方法は、ポリマー材料(例えば、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせ)を得る工程;このポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;この物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびにエッチングされた部分を表面に有する物品を回収する工程を包含し得る。
【0011】
本開示のバットレスを利用する外科手術用ステープル留め装置もまた、提供される。このような装置は、少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;ステープル形成表面を有するアンビル;およびこのアンビルまたはこのカートリッジに隣接して配置された本開示のバットレスを備え得る。
【0012】
このような装置を用いて創傷を閉鎖する方法もまた提供される。このような方法は、外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間(このカートリッジまたはアンビルのうちの一方に隣接して、本開示のバットレスが配置されている)に組織を挟む工程;およびこのカートリッジからこのバットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、このバットレスをこの組織に固定する工程を包含し得る。
【0013】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら以下に記載される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、既存の創傷閉鎖方法と一緒に使用して創傷の封止を増強するための材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、水平方向の拡張のための谷を備える、本開示のエッチングされたバットレスの1つの実施形態の上面図である。
【図1B】図1Bは、垂直方向の拡張のための谷を備える、本開示のエッチングされたバットレスの別の実施形態の上面図である。
【図2A】図2Aは、バットレスの片面にパターンを備える、本開示のエッチングされたバットレスの代替の実施形態の側面図である。
【図2B】図2Bは、バットレスの両面にパターンを有する、本開示のエッチングされたバットレスの別の実施形態の側面図である。
【図3A】図3Aは、表面に円形のウェルを有する、本開示のバットレスの代替の実施形態の上面図である。
【図3B】図3Bは、円形のウェルが部分的に吸収されている、表面上の円形ウェルを図示する図3Aの側面図である。
【図4】図4は、2つの表面上の谷およびこれらの谷の間のステープルを備える、本開示のバットレスのなお別の実施形態の斜視図である。
【図5A】図5Aは、円形ウェルを備え、これらのウェル内に生物活性薬剤を有する、本開示のポリマーコートされたバットレスの上面図である。
【図5B】図5Bは、ウェル内に生物活性薬剤を有する円形ウェルを図示する、図5Aの側面図である。
【図5C】図5Cは、部分的に分解されたポリマーコーティング、および円形ウェルのうちのいくつかからの生物活性薬剤の放出を図示する、図5Bの側面図である。
【図6A】図6Aは、本開示による物品の側面図である。
【図6B】図6Bは、エッチングに応答しての、物品を形成するために利用される材料の変位を示す、図6Aの物品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一方向に高度に配向していない(すなわち、配向を有さないか、または多方向配向を有し得る)材料から作製された、テープ、リボン、シート、フィルムなどの形態のポリマー物品が、本開示により提供される。これらの材料が多方向配向を有する場合、これらの材料は、1つの方向においてより高度に配向し、異なる方向(ある実施形態においては、垂直方向)においては少しの配向を有し得るか、またはこれらの材料は、全方向配向を有し得る(すなわち、全ての方向に配向する)。ある実施形態において、これらのポリマー材料は、創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープラーおよび縫合糸)と組み合わせて使用して創傷閉鎖を増強するための、バットレスまたは類似の材料を形成するために利用され得る。用語「バットレス」は、本明細書中で使用される場合、縫合線またはステープル線およびまた周囲の組織に対する支持(すなわち、機械的支持)を提供するデバイス(例えば、外科用綿撒糸)を包含する。
【0017】
ポリマーのテープ、リボン、シート、およびフィルムを形成する際に使用するために適切な材料としては、任意の生体適合性材料が挙げられ得る。従って、これらのポリマー物品は、天然材料から形成されても合成材料から形成されてもよい。このポリマー物品は、生体吸収性であっても非生体吸収性であってもよい。天然材料、合成材料、生体吸収性材料および/または非生体吸収性材料の任意の組み合わせが使用され得ることが、当然理解されるべきである。本開示の物品を形成するために使用され得る材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンドおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
ある実施形態において、本開示の物品(例えば、テープ、リボン、シート、フィルムなど)を形成するために利用され得る適切な材料としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの種々の組み合わせを含む、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが利用され得る。このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。グリコリドとトリメチレンカーボネートとの適切なコポリマーは、このコポリマーの約60重量%〜約75重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約65重量%〜約70重量%の量のグリコリドを有し得、トリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約25重量%〜約40重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約30重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0019】
本開示の物品を形成するために適切な他の材料としては、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられる。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約55重量%〜約65重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約58重量%〜約62重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約60重量%の量のグリコリド;このコポリマーの約10重量%〜約18重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約12重量%〜約16重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約14重量%の量のジオキサノン;およびこのコポリマーの約17重量%〜約35重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約22重量%〜約30重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約26重量%の量のトリメチレンカーボネートを有するコポリマーが挙げられ得る。
【0020】
他の実施形態において、グリコリドと、ラクチドと、トリメチレンカーボネートと、ε−カプロラクトンとのコポリマーが、本開示の物品を形成するために利用され得る。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約14重量%〜約20重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約16重量%〜約18重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約17重量%の量のカプロラクトン;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約7重量%の量のラクチド;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約7重量%の量のトリメチレンカーボネート;およびこのコポリマーの約60重量%〜約78重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約66重量%〜約72重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約69重量%の量のグリコリドを有するランダムコポリマーが挙げられ得る。
【0021】
このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。ある実施形態において、個々のモノマーが、開始剤(例えば、ジエチレングリコール)および触媒(例えば、オクタン酸スズ)の存在下で合わせられ得る。これらの材料は、約4時間〜約8時間、ある実施形態においては、約5時間〜約7時間、他の実施形態においては、約6時間という適切な時間にわたって、合わせられ得る。いくつかの場合において、この混合物は、不活性雰囲気下(例えば、窒素ガス下)で保持され得る。次いで、この混合物は、約80℃〜約120℃、ある実施形態においては、約90℃〜約110℃、いくつかの場合には、約100℃の温度に、約5分間〜約30分間、ある実施形態においては、約10分間〜約20分間、他の実施形態においては、約15分間という適切な時間にわたって、加熱され得る。次いで、この反応混合物は、約130℃〜約170℃、ある実施形態においては、約140℃〜約160℃、ある実施形態においては、約150℃の温度に、約5分間〜約30分間、ある実施形態においては、約10分間〜約20分間、他の実施形態においては、約15分間という適切な時間にわたって、加熱され得る。次いで、この混合物は、約170℃〜約190℃、ある実施形態においては、約180℃の温度まで加熱され得、そして約14時間〜約24時間、ある実施形態においては、約16時間〜約20時間、いくつかの実施形態においては、約18時間という時間にわたって、重合させられ得る。
【0022】
一旦、ポリマー材料が得られたら、これらの材料からリボン、テープ、シート、および/またはフィルムなどの物品を形成するための方法としては、圧縮ローラの使用、輪郭付きローラの使用、熱プレス、インフレートフィルム法、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
圧縮ローラシステムにおいて、ポリマーが融解され、そして適切な厚さのダイから押し出される。このポリマー融解物が押し出し機のダイから出るにつれて、この材料は、互いに対向する2つのローラに通るように供給され得、これらのローラは、互いおよびこれらのローラの間を通る任意のフィルムを、これらの材料を所望の厚さに圧縮するために充分な圧力で押す。これらのローラの両方が冷却され、両方が加熱され得るか、または一方が冷却されて一方が加熱され得る。当業者の知識の範囲内である任意の方法を利用して、ローラを加熱および/または冷却し得る。このような方法としては、例えば、誘導、ジャケット、空気加熱、空気冷却、オーブンまたは冷蔵庫に入れることなどが挙げられる。ポリマー融解物における一方向配向を減少させるために、圧縮ローラは、このシステムを通して材料を前進させるために使用される収集ローラとおよそ同じ速度、またはほぼ同じ速度で回転させられ得、そしてダイを出る材料の押し出しの速度と一致し得る。圧縮ローラシステムを通過した後に、得られた物品は、テープ、リボン、シート、フィルム、または類似の構成であり得る。
【0024】
他の実施形態において、輪郭付きローラが、圧縮ローラの代わりに利用されて、本開示の物品を形成し得る。現行の延伸ステーションローラは、円筒形であり得、そして押し出し機を出るスピンドローされたポリマー材料を一方向に延伸して、得られるフィルムの一方向配向をもたらす。延伸ステーション間での、横方向に配向した非円筒形(例えば、球状、フットボール型、楕円形)のローラの使用は、このフィルムがこの延伸プロセスを通って移動する際に、このフィルムを横方向に伸ばし得、従って、得られるフィルムの長手軸方向の配向と横方向の配向との両方を生じる。多方向での伸びおよび得られる多方向配向は、得られる材料における破断面の形成を最小にし得るか、または回避し得る。
【0025】
なお他の実施形態において、本開示の物品(フィルムが挙げられる)は、熱プレス機(本明細書中で時々、加熱液圧プレス機と称される)を利用して形成され得る。適切な熱プレス機は、市販されており、そして例えば、Model #HPB−10プレス機(Greenerd Press and Machine Co.,Inc.(Nashua,NH)製)が挙げられる。ポリマー材料は、プレス機に入れられるときに、任意の形態(ペレット、予め形成されたシートなどが挙げられる)であり得る。このプレス機は、約95℃〜約230℃、ある実施形態においては、約130℃〜約225℃の温度まで加熱され得る。ポリマー材料がペレット形態である場合、これらのペレットは融解させられ得、そしてこのプレス機のプレート上に広げられ得る。適切な圧力が、このポリマー融解物に付与されて、所望の厚さを有する本開示による物品を形成し得る。適切な圧力は、1平方インチあたり約1ポンド〜約2500ポンド(psi)(約6.9×103Pa〜約1.7×107Pa)、ある実施形態においては、約10psi〜約100psi(約6.9×104Pa〜約6.9×105Pa)であり得る。ポリマー材料は、本開示の物品を形成するために充分な時間にわたって、この圧力および温度に供され得る。この時間は、ある実施形態において、約5秒間〜約10分間、他の実施形態においては、約15秒間〜約3分間である。本明細書中に記載されるように熱プレス機を利用してポリマー材料のペレットから形成される物品は、多方向配向を有し得、従って、このように形成されるフィルムにおける破断面を排除する。
【0026】
他の実施形態において、予め形成されたシートからフィルムを形成するために、熱プレス機が利用され得る。例えば、ポリマーは、汎用押し出し機から、スリットダイを通して押し出され得る。このスリットの厚さは、約0.1ミリメートル〜約25.4ミリメートルで変動し得、いくつかの実施形態においては、約0.5ミリメートルであり得る。得られるテープ様の材料は、特定の用途(外科手術用ステープラーと組み合わせられるバットレス材料、または縫合線のための支持材料として使用するためが挙げられる)のためには厚すぎるかもしれない。従って、得られたテープは、上に記載されたような加熱液圧プレス機のプレート上に置かれ得、そして約95℃〜約230℃、ある実施形態においては、約108℃〜約115℃の温度まで加熱され得る。次いで、約25psi〜約2000psi(約1.7×105Pa〜約1.4×107Pa)、ある実施形態においては、約50psi〜約100psi(約3.4×105Pa〜約6.9×105Pa)の圧力が付与され得る。押し出されたシートは、ある実施形態において、ペレットから形成されたフィルムより低い結晶性を有し得るので、押し出されたシートから適切なフィルムを形成するために必要とされる熱および圧力は、より低くあり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、シムまたは類似のスペーサーデバイスが、熱プレス機のプレート上に配置されて、得られる物品(例えば、フィルム)が所望の厚さを有することを確実にし得る。さらに、所望の最終製品(例えば、ステープルバットレスまたは縫合補強線として)の一般的な構成を有するダイを、熱プレス機において利用することが望ましくあり得る。ポリマーがこの熱プレス機で処理された後に、得られる物品は、所望の最終製品の構成を有し得、従って、さらなる加工が必要であっても、ほとんど必要としない。
【0028】
なお他の実施形態において、インフレートフィルムプロセスが、本開示の物品を形成するために利用され得る。スクリュー/バレル構成を有し、ポリマーを融解することを補助するための外部加熱要素を取り付けたジャケットを備える押し出し機に、ポリマーが導入され得る。当業者により容易に理解されるように、このバレルが加熱され得る温度は、利用されるポリマーに依存して変動し得る。ある実施形態において、このバレルは、約150℃〜約270℃、ある実施形態においては、約185℃〜約250℃の温度まで加熱され得る。他の実施形態において、バレルの異なる領域またはセクションが、異なる温度に加熱され得る。
【0029】
ポリマーが融解され得、そしてスクリューによってダイに移動させられ得、このダイから、このポリマーは、円形スリットを通して押し出されて、初期直径D1を有する管状フィルムを形成する。この管状フィルムは、圧縮空気または圧縮ガス(例えば、窒素)により膨張させられ得る。この圧縮空気または圧縮ガスは、ダイ入口ポートを通ってこのシステムに入り、この管状フィルムの内側に入り、この管状フィルムの直径を直径D2まで膨張させる効果を有する。いくつかの実施形態において、D1は、約1インチ〜約2インチ(約2.5cm〜約5.1cm)、いくつかの実施形態において、約1.25インチ〜約1.75インチ(約3.12cm〜約4.44cm)であり得、そしてD2は、約2インチ〜約6インチ(約5.1cm〜約15cm)、いくつかの実施形態においては、約3インチ〜約5インチ(約7.6cm〜約13cm)であり得る。空冷環などの手段もまた、押し出された管状フィルムの外側の周りに空気を方向付けるために提供されて、この管の迅速かつ効果的な冷却および安定化を提供し得る。いくつかの実施形態において、加熱されたマンドレルもしくは冷却用マンドレル、または類似のデバイスが、この管状フィルムを加熱/冷却するために使用され得、これは、結晶化速度を制御するために使用され得る。フィルムが完全に冷却され硬化させられる短時間の経過後、このフィルムは、被動ニップローラシステムによりつぶされる。このシステムは、この材料を、二重の厚さの1枚のフィルムに平坦化する。このシートは、ある実施形態において、2枚のフィルムに分離され得る。次いで、これらのフィルムは、切断され得るかまたは同様に処理されて、所望の寸法を有するフィルムを形成する。種々の厚さのフィルム(約0.001インチ〜約0.014インチ(約0.0025cm〜約0.036cm)、ある実施形態においては、約0.002インチ〜約0.005インチ(約0.0051cm〜約0.013cm)の厚さを有するフィルムが挙げられる)が製造され得る。
【0030】
ある実施形態において、得られるフィルムは、窒素などの気体下で、約12時間〜約24時間、ある実施形態においては、約14時間〜約22時間、ある実施形態においては、約18時間にわたって、アニーリングプロセスの開始時の約40±5℃〜アニーリングプロセスの最後の約6時間についての約125℃±5℃の温度でアニーリングされて、バットレスとして使用するために適切であり得るフィルムを提供し得る。上記アニーリング処理の後に、このフィルムは、室温まで、ある実施形態においては、約21±5℃まで、約1時間〜約10時間、ある実施形態においては、約2時間〜約8時間という適切な時間にわたって、冷却され得る。上記加熱および冷却は、利用されるポリマーに依存して変動し得る。例えば、上記アニーリング処理は、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられるコポリマー、およびグリコール酸とトリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられるコポリマーから作製されたフィルムについて、適切であり得る。
【0031】
しかし、他の材料は、他の処理に供され得る。例えば、グリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとのコポリマーを含むフィルムは、約40±5℃〜約90±5℃の温度で、約9時間〜約12時間、ある実施形態においては、約9.25時間〜約11時間にわたって加熱し、そして加熱の最後の8時間については約90±5℃の温度で加熱することによって、アニーリングされ得る。上記アニーリング処理の後に、このフィルムは、室温まで、ある実施形態においては、約21±5℃まで、約4時間〜約8時間にわたって冷却され得る。
【0032】
ある実施形態において、本開示の物品にテクスチャー加工された表面を提供することが望ましくあり得る。例えば、上記のような加熱液圧プレス機のプレートは、テクスチャーを有し得、このテクスチャーが次に、この加熱液圧プレス機を用いて製造される物品(例えば、フィルム)に、テクスチャー加工された表面を提供する。他の実施形態において、テクスチャー加工された構成を有する別の材料(例えば、メッシュ)が、プレートの表面に配置され得、そしてポリマーが、加熱液圧プレス機でプレスされ、その結果、このメッシュの存在が、得られる物品にテクスチャー加工された表面を付与する。他の実施形態において、上記のようなローラが、同様にテクスチャー加工されて、本開示の物品にテクスチャー加工された表面を付与し得る。別のエンボス加工ローラ、プレート、または類似のデバイスが、いくつかの実施形態において利用されて、本開示の物品の表面にテクスチャーを提供し得る。
【0033】
このようなテクスチャーは、物品がすでに形成された後に、この形成された物品を、テクスチャーを付与するための手段を有するプレス機に入れるか、またはこの形成された物品を、このようなテクスチャーを有するローラに通すことによって、付与され得る。他の実施形態において、この物品は、物品自体の形成中にテクスチャーが物品に付与される方法を利用して、形成され得る。従って、例えば、テクスチャー加工された表面を有するプラテンを有する熱プレス機が、テープ、リボン、シート、またはフィルムを製造するために利用され得、そしてテクスチャー加工された表面を、この物品に一工程で提供し得る。物品を形成し、そしてこの物品の表面にテクスチャーを提供するための、一工程の使用は、いくつかの状況において望ましくあり得る。
【0034】
このように製造された、テクスチャー加工された表面を有する物品は、所望の物理特性(摩擦係数の増加が挙げられる)、およびこの物品表面の一般的な外観の改善を有し得る。適切なテクスチャーパターンとしては、無作為配向の線または他の幾何学的形状、単語、絵、ロゴ、商標、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
ある実施形態において、本開示の物品に、テクスチャー加工された表面をエッチングにより提供することが望ましくあり得る。本明細書中で使用される場合、「エッチング」は、物品の表面にテクスチャーを付与するための、当業者の知識の範囲内である任意のプロセスまたは手段を包含し得る。ある実施形態において、エッチングは、何らかの形状を物品の表面上へまたは表面に切り込み、刻印し、そして/または押し付けることを包含し得る。いくつかの実施形態において、エッチングは、材料を除去し得るかまたは変位させ得、一方で、他の実施形態において、エッチングは、材料を除去することなく、テクスチャーまたはパターンを、移植物の表面に付与し得る。この物品の表面の一部分は、この物品に特定の形状またはパターンをエッチングし得る任意の手段によって、エッチングされ得る。エッチング道具の例としては、例えば、酸、紫外(UV)光の使用、レーザー、これらの組み合わせなどが挙げられる。適切なレーザー彫刻機は、市販されており、そして例えば、Epilog Legend 32× レーザープリンター(Epilog Laser(Golden,CO)から入手可能)が挙げられる。
【0036】
レーザー彫刻機(いくつかの実施形態においてはレーザープリンター)、または他のエッチング道具は、物品の表面に、例えば、谷、ウェル、チャネル、交差印、図形、これらの組み合わせなどをエッチングするために使用され得る。エッチングされた部分は、例えば、直線状であり得、曲線状であり得、パターン付けされ得、そして/または無作為であり得る。
【0037】
ここで図面を参照し、図1Aを参照すると、エッチング道具は、物品10の表面14に線12を形成するために、物品10に対して使用され得る。線12は、物品内の谷またはチャネルであり得る。線12は、物品10の長さに対して実質的に垂直であり得る(図1A)。これらの垂直な線12は、物品10の長さ方向16での、物品10のための伸縮継手として働き得る。インサイチュで、例えば、バットレスにおいて、垂直な線12は、外科医がバットレス/ステープラー組み合わせを有する組織をより容易に把持することを可能にし得、そしてバットレスの長さに対して垂直な組織の拡張を可能にし得る。ある実施形態において、このような垂直な線12は、ステープル線に対して垂直であり得る(図示せず)。代替の実施形態において、図1Bに示されるように、線18は、物品19の長さに対して平行であり得る。平行な線18は、物品19の幅20に沿った物品10の拡張を可能にし得る。バットレスの平行な線18は、インサイチュで、クランプされたステープラーの面から組織が滑って外れることを防止し得、そしてバットレスに対して平行な組織の拡張および柔軟性を可能にし得る。
【0038】
他の実施形態において、平行な線と垂直な線との組み合わせ(図示せず)は、物品の両方向への拡張および柔軟性を提供し得る。さらに、テクスチャー加工された表面は、ステープル顎からの組織の滑り、またはステープル顎からの物品(例えば、バットレス)の滑りを防止することを補助し得る。線に関して記載されるが、任意の図形、ウェル、谷、または他の印が、物品の表面にエッチングされ得る。
【0039】
エッチングにより付与されるパターンは、物品の表面積を増加させ得、そしてまた、この物品の分解プロフィールを変更し得る。
【0040】
上記エッチングは、物品の1つ以上の表面に対してなされ得る。図2Aを参照すると、物品30は、物品30の一方の表面34にエッチングされた部分32を備え得る。図2Bは、図2Aと類似の実施形態であることが理解されるので、同じである全ての番号および説明は、プライム印で表され、そしてその違いが以下に記載される。図2Bを参照すると、物品30’は、および物品30の第一の表面34’上のエッチングされた部分32’、第二の表面38上のエッチングされた部分36を備え得る。物品の一方または両方の表面のエッチングされた部分は、柔軟性を増加させ得、そして組織の内方成長を可能にし得る。エッチングされた部分は、物品の改変されていない部分より速く分解し得る。エッチングされた部分の分解は、組織の内方成長の機会を提供し得、同時に、この物品の残りの部分は、この物品の完全な分解の前に、組織に対する継続的な支持を提供する。
【0041】
エッチングの深さは、この物品がエッチングにより完全には穿孔されないような任意の深さであり得る。例えば、エッチング深さは、物品の厚さ「t」(すなわち、図2A)の約5%〜約90%であり得る。エッチングの直径または幅も、同様に変動し得る。ある実施形態において、エッチングされた部分の深さは、エッチング道具がこの物品上を移動する速度、またはエッチング道具の力もしくは濃度を変化させることによって、制御され得る。ある実施形態において、エッチングパターンは、図形編集プログラム(例えば、Corel Draw)を使用して制御され得る。他のプログラム(例えば、Adobe WorkshopまたはMicrosoft Paint)が使用されてもよい。
【0042】
このようにエッチング表面を製造された物品は、望ましい物理特性(摩擦係数の増加が挙げられる)、および物品の表面の一般的な外観の改善を有し得る。物品の第一の表面上の印は、どちらの表面が器官または組織上に配置され、そしてどちらの表面が器官または組織から離れた方を向くかを、外科医(使用者)に示し得ることもまた想定される。あるいは、物品の表面は、穿孔を誘導して、外科医がこの物品のサイズを患者の解剖学または技術に従って変更することを可能にするように充分にエッチングされ得る。換言すれば、外科医は、使用するべき物品のサイズを、穿孔に沿って裂くことにより選択し得る。
【0043】
図3Aを参照すると、物品40は、エッチングされたウェル42を備え得る。エッチングされたウェル42は、物品40に柔軟性を提供し得る。図3Bは、部分的に分解したエッチングされたウェル42を図示し、ここでエッチングされたウェル42は、物品40の残りの部分と比較して速い速度で分解する。この分解は、組織が、ウェル42の分解により露出した領域に成長する機会を提供し得、一方で、物品40は安定なままである。エッチングされたウェル42は、特定の時間枠で分解するように、化学修飾または製造され得る。エッチング深さを変動させることは、分解時間を変動させ得ることもまた想定される。例えば、より深くエッチングされたウェルは、より浅くエッチングされたウェルと比較して速く分解し得る。
【0044】
他の実施形態において、本開示の物品(例えば、バットレス)は、本開示の物品を形成するために、さらなる層と組み合わせられ得る。
【0045】
本開示により形成されるフィルム、リボン、テープ、シート、バットレスなどは、約60マイクロメートルの厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、この材料が変位または除去される場合、この材料は、少なくとも20マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0046】
上記のように、ある実施形態において、得られるリボン、テープ、シート、および/またはフィルムは、創傷閉鎖において利用されるステープル留めデバイスのためのバットレス材料として利用され得る。同様に、得られるリボン、テープ、シート、および/またはフィルムは、縫合線の上に配置して当業者の知識の範囲内の手段(接着剤が挙げられる)を利用してそこに固定されること、あるいはリボン、テープ、シート、および/またはフィルムを創傷に隣接する組織に直接縫合して、このリボン、テープ、シート、および/またはフィルムが縫合糸により創傷を覆う適所に保持されるようにすることのいずれかによって、縫合線のための補強材(補強材料)として利用され得る。
【0047】
例えば、本開示のフィルム、リボン、シート、および/またはテープは、縫合線を補強し、そして創傷の封止を増強するために、任意の縫合糸と一緒に使用され得る。さらに、本開示のフィルム、リボン、シート、および/またはテープは、外科手術手順において利用される任意のステープラーと一緒に、バットレスとして使用され得る。このようなステープラーとしては、直線ステープラー、環状または円形のステープラー(吻合手順において利用されるものが挙げられる)などが挙げられる。利用され得る適切なステープラーの例としては、例えば、米国特許第3,490,675号、ならびに米国特許出願公開第2006/0085034号、同第2006/0135992号、および同第2005/0245965号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0048】
本明細書中に記載される物品から形成されたバットレスと一緒に利用され得るステープル留め装置の他の例としては、腹腔鏡ステープラー(例えば、米国特許第6,330,965号、および同第6,241,139号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、患者の腸間膜をステープル留めするための横断吻合型の代替のステープル留め装置(例えば、米国特許第5,964,394号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、ならびに円形のカートリッジおよびアンビルアセンブリを用いて外科手術吻合ステープル留めを実施するための端端吻合型(例えば、米国特許第5,915,616号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)が挙げられる。本開示のバットレスと一緒に利用され得る、内視鏡および/または腹腔鏡外科手術ステープル留めデバイスの他の例は、例えば、米国特許第5,040,715号(Greenら);米国特許第5,307,976号(Olsonら);米国特許第5,312,023号(Greenら);米国特許第5,318,221号(Greenら);米国特許第5,326,013号(Greenら);米国特許第5,332,142号(Robinsonら);および米国特許第6,241,139号(Millimanら)に開示されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。本開示の物品から形成されたバットレスと一緒に利用され得る市販のステープラーとしては、Tyco Healthcare Group,LP(Covidienとして事業経営中)から、Multifire ENDO GIATM 30器具およびMultifire ENDO GIATM 60器具の名称のもとで入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本開示の物品から形成されたバットレスはまた、2部品ファスナーを応用する器具と組み合わせて使用され得、ここで、この2部品ファスナーの第一の部品は、カートリッジなどの部材に格納され、そして発射されて、この2部品ファスナーの第二の部品(アンビルなどの部材内に配置されている)と適切に接合し得る。本開示を読んだ当業者は、本発明のバットレスをこのような装置と組み合わせて使用するためにどのように適合するかを容易に予測し、そしてまた、本明細書中に記載されるバットレスが一緒に使用され得る他の外科手術用装置を予測する。
【0050】
図4を参照すると、バットレス50の長さ54と平行にエッチングされた谷52を有するバットレス50は、バットレス50のエッチングされていない部分58を通して、ステープル56を利用してステープル留めされ得るか、または2部品ファスナー(図示せず)を用いて他の様式で組織に応用され得る。バットレス50の長さ56と平行な谷52は、クランプされたステープラーまたはファスナー留めデバイスの面から組織が滑って外れることを防止し得る。
【0051】
少なくとも、本明細書中に記載されるバットレスを利用する外科手術用ステープル留め装置は、少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ、ステープル形成表面を有するアンビル、およびこのアンビルまたはカートリッジに隣接して配置された本開示のバットレスを備え得る。このような装置を用いて創傷を閉鎖する方法は、当業者の知識の範囲内であり、そしてある実施形態においては、最初に、外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間に組織を収容する工程を包含し得る。本開示のバットレスは、カートリッジ、アンビル、またはこれらの両方に隣接して配置され得る。ついで、ステープルがこのカートリッジから排出されて、このバットレスを組織に固定し得る。
【0052】
外科手術用ステープラーと一緒に利用される場合、バットレス材料は、ステープル留めプロセスの前および最中にバットレスをカートリッジおよび/またはアンビルと接触させて保持し得、一方で、バットレスが外科手術用ステープルまたは他のファスナーデバイスにより穿孔された後にこのバットレスがカートリッジおよび/またはアンビルから取り外されるかまたは解放されることを可能にする任意の様式で、ステープラーのカートリッジ構成要素および/またはアンビル構成要素に取り外し可能に取り付けられ得ることが想定される。例えば、このバットレスは、接着剤、封止剤、膠、ピン、鋲、タブ、クランプ、チャネル、ストラップ、突出物およびこれらの組み合わせを使用して、カートリッジおよび/またはアンビルに取り付けられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性薬剤が、本開示のリボン、テープ、シート、および/またはフィルムで作製されたバットレス材料または縫合補強材料と組み合わせられ得る。
【0054】
ある実施形態において、物品のエッチング部分は、生物活性薬剤のためのレザバとして機能し得る。例えば、物品をエッチングした後に、生物活性薬剤がこのレザバに入れられ得、次いで、この物品がポリマー層または別の物品で覆われ得る。このポリマー層は、この物品自体よりも好都合な速度で分解する材料から作製され得る。このような実施形態において、このポリマー層は、生物活性薬剤の放出を制御し得る。ある実施形態において、エッチングされたレザバは、ポリマー層またはこのレザバを覆う物品よりも好都合な速度で分解し得る。従って、エッチングされる領域の深さが、生物活性薬剤の放出を制御するために使用され得る。
【0055】
図5Aを参照すると、物品60は、内部に生物活性薬剤64が存在し得る、エッチングされた部分62を備え得る。生物活性薬剤を堆積させる方法としては、スプレーコーティング、溶媒エバポレーション、浸漬コーティングなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。図5Bに示されるように、物品60は次いで、ポリマーコーティング66でコーティングされ得、このポリマーコーティングは、いくつかの実施形態において、障壁層として働き得る。図5Cに示されるように、ポリマーコーティング66は、物品60より速い速度で分解し得る。従って、ポリマーコーティング66の分解が、物品60からの生物活性薬剤64の放出を提供し得る。ポリマーコーティング66の分解速度は、いくつかの実施形態において、物品60からの生物活性薬剤64の放出速度を制御するために使用され得る。別の実施形態において、第二の物品が、生物学的薬剤64を含むエッチングされた部分62の上に配置され得る(図示せず)。上記のように、エッチングされた部分は、エッチングされていない部分よりも速く分解し得る。従って、生物活性薬剤の放出速度は、エッチングの深さによって制御され得る。生物活性薬剤を含む実施形態において、ポリマー障壁層は、必ずしも存在する必要はないことが留意されるべきである。
【0056】
同様に、本開示の物品が図1(A、B)、図2(A、B)、および図3(A、B)に図示されるような谷を有する場合、生物活性薬剤は、このような谷に含められ得(図示せず)、必要に応じてポリマー層がこれを覆い得る。
【0057】
他の実施形態において、上記のように、エッチングプロセスは、物品を形成するために利用される材料を変位させ得る。図6Aを参照すると、物品70は、厚さ「t」を有し得る。図6Bに示されるように、エッチングプロセスは、物品70を形成するために利用される材料を、距離「d」だけ変位させ得る。変位の量は、物品70の厚さ「t」の関数であり得る。この変位はまた、エッチングプロセスの作用であり得る。従って、例えば、物品70が約60ミクロンの厚さ「t」を有する場合、エッチングに応答する変位「d」は、約18ミクロン〜約24ミクロンであり得るが、より少ない値またはより大きい値の変位「d」が、いくつかの実施形態において得られ得ることが想定される。
【0058】
これらの実施形態において、本開示の物品は、生物活性薬剤の送達のためのビヒクルとしてもまた働き得る。用語「生物活性薬剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性薬剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくても良い(例えば、色素、香料、または封止剤)。あるいは、生物活性薬剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤であり得るか、組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物であり得るか、接着防止化合物であり得るか、封止するかもしくは接着力を提供する化合物であり得るか、生物学的作用(例えば、免疫応答)を起こし得る化合物であり得るか、または1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。生物活性薬剤は、本開示のリボン、テープ、シート、および/またはフィルムに、任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)で応用され得ることが想定される。
【0059】
本開示により利用され得る生物活性薬剤のクラスの例としては、例えば、接着防止薬剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬、凝血因子、および酵素が挙げられる。生物活性薬剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0060】
生物活性薬剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性薬剤として含有され得る。
【0061】
生物活性薬剤として含有され得る他の生物活性薬剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤、エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0062】
物品に含有され得る適切な生物活性薬剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにアナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および癌抑制因子、血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、)、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−b;タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0063】
ある実施形態において、本開示の物品に含有され得る生物活性薬剤としては、癌の処置において有用な薬剤が挙げられ得る。このような薬剤としては、抗有糸分裂剤、テロメラーゼインヒビター、抗増殖剤、抗脈管形成薬物、抗腫瘍性の合成化合物または生物学的化合物(抗生物質、ペプチド、タンパク質、成長因子、増殖因子などが挙げられる)ならびに/あるいは化学療法剤(これは、放射線治療剤を含有し得る)が挙げられる。任意のこのような化学療法剤および/または放射線治療剤は、本開示の物品に含有され得る。このような化学療法剤の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、DHA−ドセタキセル(タキソテール)、ドキセタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、アブラキサン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ミトザントロン、ロイコボリン、レバミゾール、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、アドリアマイシン、ベバシズマブ、これらの抗体プロドラッグ結合体、HER−2/neuペプチド、タンパク質、および関連するワクチン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
使用され得る適切な放射線治療剤としては、同位体(例えば、ヨウ素125、パラジウム103、イリジウム192、セシウム131、金198、イットリウム90およびリン32、これらの組み合わせなど)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、何らかの生物学的機能を付与するポリマー(例えば、ホスホリルコリンまたはフラノンを含有するポリマー)もまた利用され得る。
【0065】
ある実施形態において、放射性同位体などの生物活性薬剤は、本開示のフィルムにシードとして応用され得、従って、これらのフィルムは、近接照射療法のために利用される。
【0066】
上記のように、上記生物活性薬剤のうちのいずれかの組み合わせが、本開示のフィルムに添加され得る。
【0067】
上記のように、ある実施形態において、本開示のバットレスまたは他の医療用物品は、さらなる層を含み得る。従って、生物活性薬剤は、単層フィルムの表面に組み込まれ得るかもしくは応用され得るか、またはさらなる層が、この単層フィルムに応用され得る。例えば、フィルムおよび生物活性薬剤は、裏打ち材料に応用され得る。他の実施形態において、障壁層が、フィルムの皮膚接触表面に応用されて、このフィルムからの生物活性薬剤の放出を制御することを補助し得る。生物活性薬剤を収容するレザバもまた構築され得、任意の障壁層がこのレザバを覆う。さらに、異なる生物活性薬剤を有する1層より多くのフィルムが、任意の裏打ち層および障壁層と組み合わせられ得、従って、2つの生物活性薬剤の差示的放出を有し、皮膚から遠い方の層の薬剤の放出の前に、皮膚に近い方の層の薬剤が放出される。
【0068】
生物活性薬剤(例えば、上記化学療法剤および/または放射線治療剤)は、本開示の物品(例えば、フィルム)を形成するために利用されるポリマー材料に、当業者の知識の範囲内である任意の方法(ブレンド、混合、乳化、懸濁、層状化、分配、コーティング、融解プレス、圧縮、押し出し、成形、これらの組み合わせなどが挙げられる)によって、組み込まれ得る。他の実施形態において、生物活性薬剤は、本開示の物品(例えば、フィルム)の表面の少なくとも一部分に、当業者の知識の範囲内である任意の方法またはプロセス(浸漬、スプレー、超音波スプレー、蒸着、散布、粉末コーティング、ローラ塗布、ブラッシング、浸漬/ワイピング法、融解、融解キャスティング、静電コーティング、電子スプレー、これらの組み合わせなどが挙げられる)によりコーティングとして応用され得る。他の実施形態において、このコーティングは、マクロ粒子、微粒子、および/またはナノ粒子を含み得、必要に応じて、薬物などの成分を含む。
【0069】
薬物/ポリマーコーティングは、バットレスの1つまたは複数の表面に応用され得る。いくつかの臨床用途は、1つのみの表面(例えば、バットレスと組織との間の表面)がコーティングされることを所望し得、一方で、他の用途は、1つより多くの表面がコーティングされることを所望し得る。さらに、バットレス上のコーティングは、このバットレスと一緒に利用されるステープル(ステープラーの同じカートリッジに収容される)に応用されるコーティングと同じであり得る。
【0070】
ある実施形態において、コーティングおよび/またはコーティング内の粒子を形成するために利用されるポリマー材料としては、ラクトンポリオルトエステル、ヒドロキシブチレート、チロシンカーボネート、ポリマー薬物、酸無水物、分解性ポリウレタンおよび関連コポリマーまたは鎖長延長ポリマー、アルキレンオキシドコポリマー、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、メタクリレート、アクリレート、ビニルポリマーおよびコポリマーを含むホスホリルコリン、ビニルポリマーおよびコポリマーを含むヒドロキサメート、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、セルロースおよびその酸化バージョン、フカンなど)を含む天然ポリマー、タンパク質(例えば、コラーゲンおよびその酸化バージョン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲンなど)、脂質およびリン脂質(ある実施形態において、リポソームの形成のため)、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、コーティングとして使用するため、および/またはコーティング内の粒子の形成のための適切なポリマー材料としては、バットレス材料を形成する際に使用するために適切であると上に記載されたコポリマーが挙げられ得る。このような材料としては、例えば、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの種々の組み合わせを含む、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが利用され得る。他の適切なコーティング材料としては、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、およびゼラチン)が挙げられる。このようなコポリマーを形成する方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。
【0072】
ある実施形態において、コーティングは、連続フィルムまたは不連続フィルムの形態であり得る。コーティング/粒子はまた、1つまたは複数の層を含み得、いくつかまたはすべてが、薬物などの生物活性薬剤を含有する。ある実施形態において、意図される用途に依存して、外側層が障壁層として使用されて、薬物の放出を遅延/制御し得るか、または仕上げ層として使用されて、バットレスの表面を滑らかにし得るかもしくは粗くし得る。他の実施形態において、単一コートおよび/またはトップコートが、バットレスの取り扱い特徴(例えば、バットレスがいかに滑りやすくあり得るか、または粘着性であり得るか)を改変するために使用され得る。
【0073】
コーティングは、均質かつ相適合性であり得るか、または何らかの様式で相分離し得る。コーティング応用の様式は、形態もまた変動させ得、例えば、浸漬(dip or immersion)によりコーティングされたサンプルは、滑らかな層状コーティングを生じ得、一方で、同じ化学処方についての超音波スプレーコーティングは、テクスチャー加工された/より粗い表面を生じ得る。
【0074】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、説明のみであることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されない。また、部および百分率は、他に示されない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
フィルムを、約60重量%のグリコリド、約14重量%のジオキサノン、および約26重量%のトリメチレンカーボネートを含むポリマーから製造した。ポリマーペレットを、加熱液圧プレス機(Carver Laboratory Press,Model 2626)に入れた。このプレス機を、約125℃〜約165℃の温度まで加熱した。これらのペレットを、Teflon(登録商標)コーティングした鋼プレートの中心に置き、鋼シムを用いて、得られるフィルムの厚さを制御した。これらのペレットを融解させ、そしてこのプレートに広げ、そして約100psi(約6.9×105Pa)未満の圧力をこのポリマー融解物に付与した。この装置全体を、プレートを通る流水により衝突冷却(crash cool)した。約0.002インチ〜約0.012インチ(約0.0051cm〜約0.030cm)の厚さを有するフィルムが得られた。これらのフィルムは、多方向配向を有した。
【0076】
(実施例2)
約17重量%のカプロラクトン、約7重量%のラクチド、約7重量%のトリメチレンカーボネート、および約69重量%のグリコリドを含むランダムコポリマーを利用して、フィルムを製造した。このコポリマーを、3/4インチ(約1.9cm)の汎用押し出し機から、スリットダイを通して押し出した。厚いテープが製造された。得られたテープを、実施例1において上に記載したような液圧熱プレス機のTeflon(登録商標)コーティングした鋼プレート上に置いた。所望の厚さを有するフィルムを製造するために適切なシムを用いた。この熱プレス機を約105℃〜約120℃の温度まで加熱し、そして約100psi(約6.9×105Pa)の圧力を付与した。ペレットを利用して実施例1において製造したフィルムと同様に、この方法により製造したフィルムは、約0.002インチ〜約0.012インチ(約0.0051cm〜約0.030cm)の厚さを有した。押し出されたフィルムは、実施例1のペレットより低い結晶構造を有したので、ポリマーを流動させるために、より低い温度を使用し得た。このフィルムは、多方向配向を有した。
【0077】
(実施例3)
実施例2において上に記載されたポリマーを用いて、インフレートフィルムプロセスを使用して、フィルムを製造した。ポリマーペレットを、スクリュー/バレル構成を有し、そして外部加熱要素を取り付けたジャケットを有する押し出し機(Randcastle Extrusion System,Inc.,Cedar Grove,New Jersey)に導入した。このバレルは、3つの異なる温度に維持される3つのゾーンを有し、ゾーン1は、ポリマーペレットが導入されるバレルの部分に最も近く、ゾーン2は、バレルの中間部分であり、そしてゾーン3は、ポリマーが押し出されるバレルの端部である。このバレルの長さ/直径比は、24:1であり、3/4インチ(約1.9cm)のスクリューを、このバレルの内部に有した。約1.25インチ(約3.12cm)の直径を有するダイをこのバレルの端部に配置し、このダイに通して、ポリマー融解物を押し出した。
【0078】
バレル温度は、ゾーン1については、約344°F(約173℃)であり、ゾーン2については、約347°F〜約350°F(約175℃〜約177℃)であり、ゾーン3については、約294°F(約146℃)であり、バレルとダイとの間のアダプタについては、約345°F(約174℃)であった。スクリューのスピン速度は、1分間あたり約80.5回転(rpm)〜約81.5rpmであり、ダイの温度は、約342°F〜約346°F(約172℃〜約174℃)であった。バレル内の圧力は、約2000psi〜約2069psi(約1.4×107Pa〜約1.4×107Pa)であり、ダイにおける圧力は、約2079psi〜約2196psi(約1.4×107Pa〜約1.5×107Pa)であった。押し出し時のポリマー融解物の温度は、約297°F(約147℃)であった。
【0079】
管状フィルムを、圧縮空気により膨張させた。この圧縮空気は、入口を通ってこのシステムに入り、この管状フィルムの内側に入った。この圧縮空気を利用して、この管状フィルムの直径を約3インチ(約7.6cm)の直径まで膨張させた。空冷環を利用して、この空気をこの押し出された管状フィルムの外側の周りに方向付け、迅速かつ効果的な冷却を提供した。フィルムが冷却され硬化された短時間の経過後、このフィルムを巻き取りロールに巻き付け、この巻き取りロールは、この材料を平坦化し、次いで、ニップローラに通し、種々の厚さのフィルムを製造した。製造されたフィルムの厚さは、約0.003インチ(約0.0076cm)、0.004インチ(約0.010cm)、0.006インチ(約0.015cm)、および0.008インチ(約0.020cm)であった。このように製造されたフィルムは、多方向配向を有した。
【0080】
(実施例4)
バットレスを、グリコリド(約60%)、ジオキサノン(約14%)、およびトリメチレンカーボネート(約26%)を含む合成ポリエステルから製造する。このバットレスは、約60ミクロンの厚さを有する。約0.25mm〜約1mmの直径を有する小さい円形ウェルを、このバットレスにエッチングする。エッチングされた部分を、約0.5ワット〜約5ワットの電力、およびレーザーの最大速度の約1%〜約15%の速度で作動する、Epilog Legend 32× レーザープリンターを使用して形成する。種々の長さおよび幅を有する谷を形成する。このパターンを、図形編集プログラムを使用して決定する。
【0081】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の改変を予測する。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10、19、30、40、60、70 物品
12、18 線
14、34、表面
32、32’、36、62 エッチングされた部分
42 エッチングされたウェル
50 バットレス
52 エッチングされた谷
56 ステープル
58 エッチングされていない部分
64 生物活性薬剤
66 ポリマーコーティング
t 物品の厚さ
d 変位
【技術分野】
【0001】
本開示は、テープ、リボン、シート、および/またはフィルムの構成のポリマー材料の物品に関する。これらのポリマー材料は、配向を有さないように形成され得るか、または多方向配向を有するように形成され得、これによって、これらのポリマー材料は、多方向の力が付与される場合にこのポリマー材料の一体性を増強し得る。本開示のポリマー材料は、多数の用途(ある実施形態において、外科手術用バットレス、またはステープル線もしくは縫合線のための補強テープとしての用途が挙げられる)において利用され得る。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料から作製されるフィルム、リボン、シート、テープなどは、当業者の知識の範囲内である。このような材料は、ポリマー材料を融解し、この材料をダイに通して押し出し、次いで得られた材料を冷却することにより、製造され得る。このプロセスは、フィラメントまたはフィルムを形成するために利用される方法と非常に類似し得る。得られる材料は、引き続いて、一連の延伸ステーションを通して種々の延伸比で延伸され得る。これらの延伸ステーションは、種々の構成の加熱オーブンまたは類似の手段と結合される。このプロセスは、組み合わせられても組み合わせられなくてもよい。得られる延伸材料(これは、フィルム、リボン、シート、テープなどの形態であり得る)は、通常、一方向に高度に配向している。すなわち、この材料は、その長さ(延伸された方向)に直線状に沿った一方向配向を有する。
【0003】
これらの材料の直線引っ張り張力特性は、通常、これらの配向と同じ方向で測定される。従って、このような材料は、引っ張り力がこの材料の長さに沿って付与される場合に、大きい強度を有し得る。この一方向配向は、特定の用途(例えば、類似の押し出し、紡績および延伸の方法が利用されて、縫合糸、フィラメントなどの繊維を製造する場合)のためには望ましくあり得るが、テープ、リボン、シート、フィルムなどを製造するためのこのような方法は、所望通りではないかもしれない。このことは、この材料の一方向配向に対して垂直な力が付与される場合に、特に事実であり得る。このような力は、このポリマー材料に、穿孔、断裂、または切断を生じ得る。いくつかの場合において、これらの断裂は、小さい力の付与により起こり得、このことは、望ましくないかもしれない。
【0004】
外科手術用ステープル留めデバイスは、身体組織が接合または除去される外科手術において、広い用途を見出している。バットレスが、ステープル留めデバイスまたは縫合糸と組み合わせて使用されて、創傷の封止を増強し得るが、上記のような一方向配向を有する材料は、少量の力の付与により、割れたり裂けたりし得る。さらに、これらの材料がステープルまたは針により穿孔される場合に、この一方向配向に対して平行に進行する断裂が形成され得、このポリマーの配向に対して垂直に力が付与される場合に、尚早な材料破壊をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、既存の創傷閉鎖方法と一緒に使用して創傷の封止を増強するための材料を提供することが有利である。このような材料は、外科手術用ステープル留めデバイス、ならびに縫合糸および他の創傷閉鎖方法と組み合わせて利用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
バットレスを構成する補強材料であって、該バットレスがエッチングされた部分を含む、補強材料。
(項目2)
前記エッチングされた部分が、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるエッチングされたパターンを作製する、上記項目に記載の補強材料。
(項目3)
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目4)
前記エッチングされた部分が、少なくとも一方向での前記物品の拡張を可能にする、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目5)
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤の収容のためのレザバを作製する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目6)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の分解プロフィールを変更する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目7)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも一方向の柔軟性を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目8)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の表面積を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目9)
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも1つの表面上にパターンを作製する、上記項目のいずれか一項に記載の補強材料。
(項目10)
表面にエッチングされたパターンを有するポリマー材料を備える物品であって、
該物品が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される、
物品。
(項目11)
前記パターンがレーザーエッチングによって作製されている、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目12)
前記パターンが、前記ポリマー材料の表面積を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目13)
前記パターンが、前記ポリマー材料の少なくとも一方向での柔軟性を増加させる、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目14)
前記パターンが、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目15)
前記パターンが、前記物品の分解プロフィールを変更する、上記項目のいずれか一項に記載の物品。
(項目16)
グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料を得る工程;
該ポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;
該物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびに
表面にエッチングされた部分を有する該物品を回収する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約60重量%〜約75重量%の量のグリコリド、およびコポリマーの約25重量%〜約40重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約55重量%〜約65重量%の量のグリコリド、コポリマーの約10重量%〜約18重量%の量のジオキサノン、およびコポリマーの約17重量%〜約35重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記ポリマー材料が、コポリマーの約14重量%〜約20重量%の量のカプロラクトン、コポリマーの約4重量%〜約10重量%の量のラクチド、コポリマーの約4重量%〜約10重量%のトリメチレンカーボネート、およびコポリマーの約60重量%〜約78重量%の量のグリコリドを含むコポリマーを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記ポリマー材料を物品に形成する工程が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される物品を形成することを包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記物品が、約0.0005インチ(約0.0013cm)〜約0.014インチ(約0.036cm)の厚さを有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記物品が、約0.002インチ(約0.0051cm)〜約0.005インチ(約0.013cm)の厚さを有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、外科出用ステープラーバットレス。
(項目24)
少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;
ステープル形成表面を有するアンビル;および
該アンビルまたは該カートリッジに隣接して配置されたバットレスであって、該バットレスは、上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス、
を備える、外科手術用ステープル留め装置。
(項目25)
外科手術用ステープル留め装置であって、間に組織を挟むように構成されたカートリッジおよびアンビルを備える、外科手術用ステープル留め装置、
該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接して配置されるように構成されたバットレスであって、該バットレスが、上記項目のいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス;ならびに
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定するための手段、
を備える、創傷を封止するためのシステム。
(項目26)
外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間に組織を挟む工程であって、該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接してバットレスが配置されており、該バットレスが、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法により製造された物品を含む、工程;および
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定する工程、
を包含する、創傷を封止する方法。
【0007】
(摘要)
配向を有さないか、または多方向配向を有する物品が提供される。このような物品は、フィルム、リボン、シート、および/またはテープの形態であり得、そして外科手術用ステープル留め装置と共にバットレスとして利用され得るか、または縫合線のための補強手段として利用され得る。これらの物品は、物品の表面の少なくとも一部分のエッチングを用いて製造され得る。
【0008】
(要旨)
本開示は、エッチングされた部分を有し得る補強材料(例えば、バットレス)を提供する。ある実施形態において、エッチングされた部分は、エッチングされたパターン(例えば、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせ)を作製し得る。いくつかの実施形態において、エッチングされた部分はまた、生物活性薬剤を含み得る。これらのエッチングされた部分は、その物品が少なくとも一方向に拡張することを可能にし得る。これらのエッチングされた部分はまた、この補強材料の分解プロフィールを変更し得る。
【0009】
他の実施形態において、本開示は、エッチングされたパターンを表面に有するポリマー材料を含む物品を提供し、ここでこの物品は、リボン、テープ、シート、および/またはフィルムを含む。このパターンは、ある実施形態において、レーザーエッチングにより作製され得る。このパターンは、このポリマー材料の表面積を増加させ得る。このパターンはまた、この物品の分解を変更し得る。
【0010】
このような物品を形成する方法もまた提供される。ある実施形態において、本開示の方法は、ポリマー材料(例えば、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせ)を得る工程;このポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;この物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびにエッチングされた部分を表面に有する物品を回収する工程を包含し得る。
【0011】
本開示のバットレスを利用する外科手術用ステープル留め装置もまた、提供される。このような装置は、少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;ステープル形成表面を有するアンビル;およびこのアンビルまたはこのカートリッジに隣接して配置された本開示のバットレスを備え得る。
【0012】
このような装置を用いて創傷を閉鎖する方法もまた提供される。このような方法は、外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間(このカートリッジまたはアンビルのうちの一方に隣接して、本開示のバットレスが配置されている)に組織を挟む工程;およびこのカートリッジからこのバットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、このバットレスをこの組織に固定する工程を包含し得る。
【0013】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら以下に記載される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、既存の創傷閉鎖方法と一緒に使用して創傷の封止を増強するための材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、水平方向の拡張のための谷を備える、本開示のエッチングされたバットレスの1つの実施形態の上面図である。
【図1B】図1Bは、垂直方向の拡張のための谷を備える、本開示のエッチングされたバットレスの別の実施形態の上面図である。
【図2A】図2Aは、バットレスの片面にパターンを備える、本開示のエッチングされたバットレスの代替の実施形態の側面図である。
【図2B】図2Bは、バットレスの両面にパターンを有する、本開示のエッチングされたバットレスの別の実施形態の側面図である。
【図3A】図3Aは、表面に円形のウェルを有する、本開示のバットレスの代替の実施形態の上面図である。
【図3B】図3Bは、円形のウェルが部分的に吸収されている、表面上の円形ウェルを図示する図3Aの側面図である。
【図4】図4は、2つの表面上の谷およびこれらの谷の間のステープルを備える、本開示のバットレスのなお別の実施形態の斜視図である。
【図5A】図5Aは、円形ウェルを備え、これらのウェル内に生物活性薬剤を有する、本開示のポリマーコートされたバットレスの上面図である。
【図5B】図5Bは、ウェル内に生物活性薬剤を有する円形ウェルを図示する、図5Aの側面図である。
【図5C】図5Cは、部分的に分解されたポリマーコーティング、および円形ウェルのうちのいくつかからの生物活性薬剤の放出を図示する、図5Bの側面図である。
【図6A】図6Aは、本開示による物品の側面図である。
【図6B】図6Bは、エッチングに応答しての、物品を形成するために利用される材料の変位を示す、図6Aの物品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一方向に高度に配向していない(すなわち、配向を有さないか、または多方向配向を有し得る)材料から作製された、テープ、リボン、シート、フィルムなどの形態のポリマー物品が、本開示により提供される。これらの材料が多方向配向を有する場合、これらの材料は、1つの方向においてより高度に配向し、異なる方向(ある実施形態においては、垂直方向)においては少しの配向を有し得るか、またはこれらの材料は、全方向配向を有し得る(すなわち、全ての方向に配向する)。ある実施形態において、これらのポリマー材料は、創傷閉鎖デバイス(例えば、ステープラーおよび縫合糸)と組み合わせて使用して創傷閉鎖を増強するための、バットレスまたは類似の材料を形成するために利用され得る。用語「バットレス」は、本明細書中で使用される場合、縫合線またはステープル線およびまた周囲の組織に対する支持(すなわち、機械的支持)を提供するデバイス(例えば、外科用綿撒糸)を包含する。
【0017】
ポリマーのテープ、リボン、シート、およびフィルムを形成する際に使用するために適切な材料としては、任意の生体適合性材料が挙げられ得る。従って、これらのポリマー物品は、天然材料から形成されても合成材料から形成されてもよい。このポリマー物品は、生体吸収性であっても非生体吸収性であってもよい。天然材料、合成材料、生体吸収性材料および/または非生体吸収性材料の任意の組み合わせが使用され得ることが、当然理解されるべきである。本開示の物品を形成するために使用され得る材料のいくつかの非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンドおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
ある実施形態において、本開示の物品(例えば、テープ、リボン、シート、フィルムなど)を形成するために利用され得る適切な材料としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの種々の組み合わせを含む、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが利用され得る。このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。グリコリドとトリメチレンカーボネートとの適切なコポリマーは、このコポリマーの約60重量%〜約75重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約65重量%〜約70重量%の量のグリコリドを有し得、トリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約25重量%〜約40重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約30重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0019】
本開示の物品を形成するために適切な他の材料としては、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられる。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約55重量%〜約65重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約58重量%〜約62重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約60重量%の量のグリコリド;このコポリマーの約10重量%〜約18重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約12重量%〜約16重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約14重量%の量のジオキサノン;およびこのコポリマーの約17重量%〜約35重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約22重量%〜約30重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約26重量%の量のトリメチレンカーボネートを有するコポリマーが挙げられ得る。
【0020】
他の実施形態において、グリコリドと、ラクチドと、トリメチレンカーボネートと、ε−カプロラクトンとのコポリマーが、本開示の物品を形成するために利用され得る。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約14重量%〜約20重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約16重量%〜約18重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約17重量%の量のカプロラクトン;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態においては、このコポリマーの約7重量%の量のラクチド;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約7重量%の量のトリメチレンカーボネート;およびこのコポリマーの約60重量%〜約78重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約66重量%〜約72重量%、ある実施形態においては、このコポリマーの約69重量%の量のグリコリドを有するランダムコポリマーが挙げられ得る。
【0021】
このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。ある実施形態において、個々のモノマーが、開始剤(例えば、ジエチレングリコール)および触媒(例えば、オクタン酸スズ)の存在下で合わせられ得る。これらの材料は、約4時間〜約8時間、ある実施形態においては、約5時間〜約7時間、他の実施形態においては、約6時間という適切な時間にわたって、合わせられ得る。いくつかの場合において、この混合物は、不活性雰囲気下(例えば、窒素ガス下)で保持され得る。次いで、この混合物は、約80℃〜約120℃、ある実施形態においては、約90℃〜約110℃、いくつかの場合には、約100℃の温度に、約5分間〜約30分間、ある実施形態においては、約10分間〜約20分間、他の実施形態においては、約15分間という適切な時間にわたって、加熱され得る。次いで、この反応混合物は、約130℃〜約170℃、ある実施形態においては、約140℃〜約160℃、ある実施形態においては、約150℃の温度に、約5分間〜約30分間、ある実施形態においては、約10分間〜約20分間、他の実施形態においては、約15分間という適切な時間にわたって、加熱され得る。次いで、この混合物は、約170℃〜約190℃、ある実施形態においては、約180℃の温度まで加熱され得、そして約14時間〜約24時間、ある実施形態においては、約16時間〜約20時間、いくつかの実施形態においては、約18時間という時間にわたって、重合させられ得る。
【0022】
一旦、ポリマー材料が得られたら、これらの材料からリボン、テープ、シート、および/またはフィルムなどの物品を形成するための方法としては、圧縮ローラの使用、輪郭付きローラの使用、熱プレス、インフレートフィルム法、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
圧縮ローラシステムにおいて、ポリマーが融解され、そして適切な厚さのダイから押し出される。このポリマー融解物が押し出し機のダイから出るにつれて、この材料は、互いに対向する2つのローラに通るように供給され得、これらのローラは、互いおよびこれらのローラの間を通る任意のフィルムを、これらの材料を所望の厚さに圧縮するために充分な圧力で押す。これらのローラの両方が冷却され、両方が加熱され得るか、または一方が冷却されて一方が加熱され得る。当業者の知識の範囲内である任意の方法を利用して、ローラを加熱および/または冷却し得る。このような方法としては、例えば、誘導、ジャケット、空気加熱、空気冷却、オーブンまたは冷蔵庫に入れることなどが挙げられる。ポリマー融解物における一方向配向を減少させるために、圧縮ローラは、このシステムを通して材料を前進させるために使用される収集ローラとおよそ同じ速度、またはほぼ同じ速度で回転させられ得、そしてダイを出る材料の押し出しの速度と一致し得る。圧縮ローラシステムを通過した後に、得られた物品は、テープ、リボン、シート、フィルム、または類似の構成であり得る。
【0024】
他の実施形態において、輪郭付きローラが、圧縮ローラの代わりに利用されて、本開示の物品を形成し得る。現行の延伸ステーションローラは、円筒形であり得、そして押し出し機を出るスピンドローされたポリマー材料を一方向に延伸して、得られるフィルムの一方向配向をもたらす。延伸ステーション間での、横方向に配向した非円筒形(例えば、球状、フットボール型、楕円形)のローラの使用は、このフィルムがこの延伸プロセスを通って移動する際に、このフィルムを横方向に伸ばし得、従って、得られるフィルムの長手軸方向の配向と横方向の配向との両方を生じる。多方向での伸びおよび得られる多方向配向は、得られる材料における破断面の形成を最小にし得るか、または回避し得る。
【0025】
なお他の実施形態において、本開示の物品(フィルムが挙げられる)は、熱プレス機(本明細書中で時々、加熱液圧プレス機と称される)を利用して形成され得る。適切な熱プレス機は、市販されており、そして例えば、Model #HPB−10プレス機(Greenerd Press and Machine Co.,Inc.(Nashua,NH)製)が挙げられる。ポリマー材料は、プレス機に入れられるときに、任意の形態(ペレット、予め形成されたシートなどが挙げられる)であり得る。このプレス機は、約95℃〜約230℃、ある実施形態においては、約130℃〜約225℃の温度まで加熱され得る。ポリマー材料がペレット形態である場合、これらのペレットは融解させられ得、そしてこのプレス機のプレート上に広げられ得る。適切な圧力が、このポリマー融解物に付与されて、所望の厚さを有する本開示による物品を形成し得る。適切な圧力は、1平方インチあたり約1ポンド〜約2500ポンド(psi)(約6.9×103Pa〜約1.7×107Pa)、ある実施形態においては、約10psi〜約100psi(約6.9×104Pa〜約6.9×105Pa)であり得る。ポリマー材料は、本開示の物品を形成するために充分な時間にわたって、この圧力および温度に供され得る。この時間は、ある実施形態において、約5秒間〜約10分間、他の実施形態においては、約15秒間〜約3分間である。本明細書中に記載されるように熱プレス機を利用してポリマー材料のペレットから形成される物品は、多方向配向を有し得、従って、このように形成されるフィルムにおける破断面を排除する。
【0026】
他の実施形態において、予め形成されたシートからフィルムを形成するために、熱プレス機が利用され得る。例えば、ポリマーは、汎用押し出し機から、スリットダイを通して押し出され得る。このスリットの厚さは、約0.1ミリメートル〜約25.4ミリメートルで変動し得、いくつかの実施形態においては、約0.5ミリメートルであり得る。得られるテープ様の材料は、特定の用途(外科手術用ステープラーと組み合わせられるバットレス材料、または縫合線のための支持材料として使用するためが挙げられる)のためには厚すぎるかもしれない。従って、得られたテープは、上に記載されたような加熱液圧プレス機のプレート上に置かれ得、そして約95℃〜約230℃、ある実施形態においては、約108℃〜約115℃の温度まで加熱され得る。次いで、約25psi〜約2000psi(約1.7×105Pa〜約1.4×107Pa)、ある実施形態においては、約50psi〜約100psi(約3.4×105Pa〜約6.9×105Pa)の圧力が付与され得る。押し出されたシートは、ある実施形態において、ペレットから形成されたフィルムより低い結晶性を有し得るので、押し出されたシートから適切なフィルムを形成するために必要とされる熱および圧力は、より低くあり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、シムまたは類似のスペーサーデバイスが、熱プレス機のプレート上に配置されて、得られる物品(例えば、フィルム)が所望の厚さを有することを確実にし得る。さらに、所望の最終製品(例えば、ステープルバットレスまたは縫合補強線として)の一般的な構成を有するダイを、熱プレス機において利用することが望ましくあり得る。ポリマーがこの熱プレス機で処理された後に、得られる物品は、所望の最終製品の構成を有し得、従って、さらなる加工が必要であっても、ほとんど必要としない。
【0028】
なお他の実施形態において、インフレートフィルムプロセスが、本開示の物品を形成するために利用され得る。スクリュー/バレル構成を有し、ポリマーを融解することを補助するための外部加熱要素を取り付けたジャケットを備える押し出し機に、ポリマーが導入され得る。当業者により容易に理解されるように、このバレルが加熱され得る温度は、利用されるポリマーに依存して変動し得る。ある実施形態において、このバレルは、約150℃〜約270℃、ある実施形態においては、約185℃〜約250℃の温度まで加熱され得る。他の実施形態において、バレルの異なる領域またはセクションが、異なる温度に加熱され得る。
【0029】
ポリマーが融解され得、そしてスクリューによってダイに移動させられ得、このダイから、このポリマーは、円形スリットを通して押し出されて、初期直径D1を有する管状フィルムを形成する。この管状フィルムは、圧縮空気または圧縮ガス(例えば、窒素)により膨張させられ得る。この圧縮空気または圧縮ガスは、ダイ入口ポートを通ってこのシステムに入り、この管状フィルムの内側に入り、この管状フィルムの直径を直径D2まで膨張させる効果を有する。いくつかの実施形態において、D1は、約1インチ〜約2インチ(約2.5cm〜約5.1cm)、いくつかの実施形態において、約1.25インチ〜約1.75インチ(約3.12cm〜約4.44cm)であり得、そしてD2は、約2インチ〜約6インチ(約5.1cm〜約15cm)、いくつかの実施形態においては、約3インチ〜約5インチ(約7.6cm〜約13cm)であり得る。空冷環などの手段もまた、押し出された管状フィルムの外側の周りに空気を方向付けるために提供されて、この管の迅速かつ効果的な冷却および安定化を提供し得る。いくつかの実施形態において、加熱されたマンドレルもしくは冷却用マンドレル、または類似のデバイスが、この管状フィルムを加熱/冷却するために使用され得、これは、結晶化速度を制御するために使用され得る。フィルムが完全に冷却され硬化させられる短時間の経過後、このフィルムは、被動ニップローラシステムによりつぶされる。このシステムは、この材料を、二重の厚さの1枚のフィルムに平坦化する。このシートは、ある実施形態において、2枚のフィルムに分離され得る。次いで、これらのフィルムは、切断され得るかまたは同様に処理されて、所望の寸法を有するフィルムを形成する。種々の厚さのフィルム(約0.001インチ〜約0.014インチ(約0.0025cm〜約0.036cm)、ある実施形態においては、約0.002インチ〜約0.005インチ(約0.0051cm〜約0.013cm)の厚さを有するフィルムが挙げられる)が製造され得る。
【0030】
ある実施形態において、得られるフィルムは、窒素などの気体下で、約12時間〜約24時間、ある実施形態においては、約14時間〜約22時間、ある実施形態においては、約18時間にわたって、アニーリングプロセスの開始時の約40±5℃〜アニーリングプロセスの最後の約6時間についての約125℃±5℃の温度でアニーリングされて、バットレスとして使用するために適切であり得るフィルムを提供し得る。上記アニーリング処理の後に、このフィルムは、室温まで、ある実施形態においては、約21±5℃まで、約1時間〜約10時間、ある実施形態においては、約2時間〜約8時間という適切な時間にわたって、冷却され得る。上記加熱および冷却は、利用されるポリマーに依存して変動し得る。例えば、上記アニーリング処理は、ある実施形態において、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられるコポリマー、およびグリコール酸とトリメチレンカーボネートとのコポリマーが挙げられるコポリマーから作製されたフィルムについて、適切であり得る。
【0031】
しかし、他の材料は、他の処理に供され得る。例えば、グリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとのコポリマーを含むフィルムは、約40±5℃〜約90±5℃の温度で、約9時間〜約12時間、ある実施形態においては、約9.25時間〜約11時間にわたって加熱し、そして加熱の最後の8時間については約90±5℃の温度で加熱することによって、アニーリングされ得る。上記アニーリング処理の後に、このフィルムは、室温まで、ある実施形態においては、約21±5℃まで、約4時間〜約8時間にわたって冷却され得る。
【0032】
ある実施形態において、本開示の物品にテクスチャー加工された表面を提供することが望ましくあり得る。例えば、上記のような加熱液圧プレス機のプレートは、テクスチャーを有し得、このテクスチャーが次に、この加熱液圧プレス機を用いて製造される物品(例えば、フィルム)に、テクスチャー加工された表面を提供する。他の実施形態において、テクスチャー加工された構成を有する別の材料(例えば、メッシュ)が、プレートの表面に配置され得、そしてポリマーが、加熱液圧プレス機でプレスされ、その結果、このメッシュの存在が、得られる物品にテクスチャー加工された表面を付与する。他の実施形態において、上記のようなローラが、同様にテクスチャー加工されて、本開示の物品にテクスチャー加工された表面を付与し得る。別のエンボス加工ローラ、プレート、または類似のデバイスが、いくつかの実施形態において利用されて、本開示の物品の表面にテクスチャーを提供し得る。
【0033】
このようなテクスチャーは、物品がすでに形成された後に、この形成された物品を、テクスチャーを付与するための手段を有するプレス機に入れるか、またはこの形成された物品を、このようなテクスチャーを有するローラに通すことによって、付与され得る。他の実施形態において、この物品は、物品自体の形成中にテクスチャーが物品に付与される方法を利用して、形成され得る。従って、例えば、テクスチャー加工された表面を有するプラテンを有する熱プレス機が、テープ、リボン、シート、またはフィルムを製造するために利用され得、そしてテクスチャー加工された表面を、この物品に一工程で提供し得る。物品を形成し、そしてこの物品の表面にテクスチャーを提供するための、一工程の使用は、いくつかの状況において望ましくあり得る。
【0034】
このように製造された、テクスチャー加工された表面を有する物品は、所望の物理特性(摩擦係数の増加が挙げられる)、およびこの物品表面の一般的な外観の改善を有し得る。適切なテクスチャーパターンとしては、無作為配向の線または他の幾何学的形状、単語、絵、ロゴ、商標、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
ある実施形態において、本開示の物品に、テクスチャー加工された表面をエッチングにより提供することが望ましくあり得る。本明細書中で使用される場合、「エッチング」は、物品の表面にテクスチャーを付与するための、当業者の知識の範囲内である任意のプロセスまたは手段を包含し得る。ある実施形態において、エッチングは、何らかの形状を物品の表面上へまたは表面に切り込み、刻印し、そして/または押し付けることを包含し得る。いくつかの実施形態において、エッチングは、材料を除去し得るかまたは変位させ得、一方で、他の実施形態において、エッチングは、材料を除去することなく、テクスチャーまたはパターンを、移植物の表面に付与し得る。この物品の表面の一部分は、この物品に特定の形状またはパターンをエッチングし得る任意の手段によって、エッチングされ得る。エッチング道具の例としては、例えば、酸、紫外(UV)光の使用、レーザー、これらの組み合わせなどが挙げられる。適切なレーザー彫刻機は、市販されており、そして例えば、Epilog Legend 32× レーザープリンター(Epilog Laser(Golden,CO)から入手可能)が挙げられる。
【0036】
レーザー彫刻機(いくつかの実施形態においてはレーザープリンター)、または他のエッチング道具は、物品の表面に、例えば、谷、ウェル、チャネル、交差印、図形、これらの組み合わせなどをエッチングするために使用され得る。エッチングされた部分は、例えば、直線状であり得、曲線状であり得、パターン付けされ得、そして/または無作為であり得る。
【0037】
ここで図面を参照し、図1Aを参照すると、エッチング道具は、物品10の表面14に線12を形成するために、物品10に対して使用され得る。線12は、物品内の谷またはチャネルであり得る。線12は、物品10の長さに対して実質的に垂直であり得る(図1A)。これらの垂直な線12は、物品10の長さ方向16での、物品10のための伸縮継手として働き得る。インサイチュで、例えば、バットレスにおいて、垂直な線12は、外科医がバットレス/ステープラー組み合わせを有する組織をより容易に把持することを可能にし得、そしてバットレスの長さに対して垂直な組織の拡張を可能にし得る。ある実施形態において、このような垂直な線12は、ステープル線に対して垂直であり得る(図示せず)。代替の実施形態において、図1Bに示されるように、線18は、物品19の長さに対して平行であり得る。平行な線18は、物品19の幅20に沿った物品10の拡張を可能にし得る。バットレスの平行な線18は、インサイチュで、クランプされたステープラーの面から組織が滑って外れることを防止し得、そしてバットレスに対して平行な組織の拡張および柔軟性を可能にし得る。
【0038】
他の実施形態において、平行な線と垂直な線との組み合わせ(図示せず)は、物品の両方向への拡張および柔軟性を提供し得る。さらに、テクスチャー加工された表面は、ステープル顎からの組織の滑り、またはステープル顎からの物品(例えば、バットレス)の滑りを防止することを補助し得る。線に関して記載されるが、任意の図形、ウェル、谷、または他の印が、物品の表面にエッチングされ得る。
【0039】
エッチングにより付与されるパターンは、物品の表面積を増加させ得、そしてまた、この物品の分解プロフィールを変更し得る。
【0040】
上記エッチングは、物品の1つ以上の表面に対してなされ得る。図2Aを参照すると、物品30は、物品30の一方の表面34にエッチングされた部分32を備え得る。図2Bは、図2Aと類似の実施形態であることが理解されるので、同じである全ての番号および説明は、プライム印で表され、そしてその違いが以下に記載される。図2Bを参照すると、物品30’は、および物品30の第一の表面34’上のエッチングされた部分32’、第二の表面38上のエッチングされた部分36を備え得る。物品の一方または両方の表面のエッチングされた部分は、柔軟性を増加させ得、そして組織の内方成長を可能にし得る。エッチングされた部分は、物品の改変されていない部分より速く分解し得る。エッチングされた部分の分解は、組織の内方成長の機会を提供し得、同時に、この物品の残りの部分は、この物品の完全な分解の前に、組織に対する継続的な支持を提供する。
【0041】
エッチングの深さは、この物品がエッチングにより完全には穿孔されないような任意の深さであり得る。例えば、エッチング深さは、物品の厚さ「t」(すなわち、図2A)の約5%〜約90%であり得る。エッチングの直径または幅も、同様に変動し得る。ある実施形態において、エッチングされた部分の深さは、エッチング道具がこの物品上を移動する速度、またはエッチング道具の力もしくは濃度を変化させることによって、制御され得る。ある実施形態において、エッチングパターンは、図形編集プログラム(例えば、Corel Draw)を使用して制御され得る。他のプログラム(例えば、Adobe WorkshopまたはMicrosoft Paint)が使用されてもよい。
【0042】
このようにエッチング表面を製造された物品は、望ましい物理特性(摩擦係数の増加が挙げられる)、および物品の表面の一般的な外観の改善を有し得る。物品の第一の表面上の印は、どちらの表面が器官または組織上に配置され、そしてどちらの表面が器官または組織から離れた方を向くかを、外科医(使用者)に示し得ることもまた想定される。あるいは、物品の表面は、穿孔を誘導して、外科医がこの物品のサイズを患者の解剖学または技術に従って変更することを可能にするように充分にエッチングされ得る。換言すれば、外科医は、使用するべき物品のサイズを、穿孔に沿って裂くことにより選択し得る。
【0043】
図3Aを参照すると、物品40は、エッチングされたウェル42を備え得る。エッチングされたウェル42は、物品40に柔軟性を提供し得る。図3Bは、部分的に分解したエッチングされたウェル42を図示し、ここでエッチングされたウェル42は、物品40の残りの部分と比較して速い速度で分解する。この分解は、組織が、ウェル42の分解により露出した領域に成長する機会を提供し得、一方で、物品40は安定なままである。エッチングされたウェル42は、特定の時間枠で分解するように、化学修飾または製造され得る。エッチング深さを変動させることは、分解時間を変動させ得ることもまた想定される。例えば、より深くエッチングされたウェルは、より浅くエッチングされたウェルと比較して速く分解し得る。
【0044】
他の実施形態において、本開示の物品(例えば、バットレス)は、本開示の物品を形成するために、さらなる層と組み合わせられ得る。
【0045】
本開示により形成されるフィルム、リボン、テープ、シート、バットレスなどは、約60マイクロメートルの厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、この材料が変位または除去される場合、この材料は、少なくとも20マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0046】
上記のように、ある実施形態において、得られるリボン、テープ、シート、および/またはフィルムは、創傷閉鎖において利用されるステープル留めデバイスのためのバットレス材料として利用され得る。同様に、得られるリボン、テープ、シート、および/またはフィルムは、縫合線の上に配置して当業者の知識の範囲内の手段(接着剤が挙げられる)を利用してそこに固定されること、あるいはリボン、テープ、シート、および/またはフィルムを創傷に隣接する組織に直接縫合して、このリボン、テープ、シート、および/またはフィルムが縫合糸により創傷を覆う適所に保持されるようにすることのいずれかによって、縫合線のための補強材(補強材料)として利用され得る。
【0047】
例えば、本開示のフィルム、リボン、シート、および/またはテープは、縫合線を補強し、そして創傷の封止を増強するために、任意の縫合糸と一緒に使用され得る。さらに、本開示のフィルム、リボン、シート、および/またはテープは、外科手術手順において利用される任意のステープラーと一緒に、バットレスとして使用され得る。このようなステープラーとしては、直線ステープラー、環状または円形のステープラー(吻合手順において利用されるものが挙げられる)などが挙げられる。利用され得る適切なステープラーの例としては、例えば、米国特許第3,490,675号、ならびに米国特許出願公開第2006/0085034号、同第2006/0135992号、および同第2005/0245965号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0048】
本明細書中に記載される物品から形成されたバットレスと一緒に利用され得るステープル留め装置の他の例としては、腹腔鏡ステープラー(例えば、米国特許第6,330,965号、および同第6,241,139号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、患者の腸間膜をステープル留めするための横断吻合型の代替のステープル留め装置(例えば、米国特許第5,964,394号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)、ならびに円形のカートリッジおよびアンビルアセンブリを用いて外科手術吻合ステープル留めを実施するための端端吻合型(例えば、米国特許第5,915,616号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)が挙げられる。本開示のバットレスと一緒に利用され得る、内視鏡および/または腹腔鏡外科手術ステープル留めデバイスの他の例は、例えば、米国特許第5,040,715号(Greenら);米国特許第5,307,976号(Olsonら);米国特許第5,312,023号(Greenら);米国特許第5,318,221号(Greenら);米国特許第5,326,013号(Greenら);米国特許第5,332,142号(Robinsonら);および米国特許第6,241,139号(Millimanら)に開示されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。本開示の物品から形成されたバットレスと一緒に利用され得る市販のステープラーとしては、Tyco Healthcare Group,LP(Covidienとして事業経営中)から、Multifire ENDO GIATM 30器具およびMultifire ENDO GIATM 60器具の名称のもとで入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本開示の物品から形成されたバットレスはまた、2部品ファスナーを応用する器具と組み合わせて使用され得、ここで、この2部品ファスナーの第一の部品は、カートリッジなどの部材に格納され、そして発射されて、この2部品ファスナーの第二の部品(アンビルなどの部材内に配置されている)と適切に接合し得る。本開示を読んだ当業者は、本発明のバットレスをこのような装置と組み合わせて使用するためにどのように適合するかを容易に予測し、そしてまた、本明細書中に記載されるバットレスが一緒に使用され得る他の外科手術用装置を予測する。
【0050】
図4を参照すると、バットレス50の長さ54と平行にエッチングされた谷52を有するバットレス50は、バットレス50のエッチングされていない部分58を通して、ステープル56を利用してステープル留めされ得るか、または2部品ファスナー(図示せず)を用いて他の様式で組織に応用され得る。バットレス50の長さ56と平行な谷52は、クランプされたステープラーまたはファスナー留めデバイスの面から組織が滑って外れることを防止し得る。
【0051】
少なくとも、本明細書中に記載されるバットレスを利用する外科手術用ステープル留め装置は、少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ、ステープル形成表面を有するアンビル、およびこのアンビルまたはカートリッジに隣接して配置された本開示のバットレスを備え得る。このような装置を用いて創傷を閉鎖する方法は、当業者の知識の範囲内であり、そしてある実施形態においては、最初に、外科手術用ステープル留め装置のカートリッジとアンビルとの間に組織を収容する工程を包含し得る。本開示のバットレスは、カートリッジ、アンビル、またはこれらの両方に隣接して配置され得る。ついで、ステープルがこのカートリッジから排出されて、このバットレスを組織に固定し得る。
【0052】
外科手術用ステープラーと一緒に利用される場合、バットレス材料は、ステープル留めプロセスの前および最中にバットレスをカートリッジおよび/またはアンビルと接触させて保持し得、一方で、バットレスが外科手術用ステープルまたは他のファスナーデバイスにより穿孔された後にこのバットレスがカートリッジおよび/またはアンビルから取り外されるかまたは解放されることを可能にする任意の様式で、ステープラーのカートリッジ構成要素および/またはアンビル構成要素に取り外し可能に取り付けられ得ることが想定される。例えば、このバットレスは、接着剤、封止剤、膠、ピン、鋲、タブ、クランプ、チャネル、ストラップ、突出物およびこれらの組み合わせを使用して、カートリッジおよび/またはアンビルに取り付けられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物活性薬剤が、本開示のリボン、テープ、シート、および/またはフィルムで作製されたバットレス材料または縫合補強材料と組み合わせられ得る。
【0054】
ある実施形態において、物品のエッチング部分は、生物活性薬剤のためのレザバとして機能し得る。例えば、物品をエッチングした後に、生物活性薬剤がこのレザバに入れられ得、次いで、この物品がポリマー層または別の物品で覆われ得る。このポリマー層は、この物品自体よりも好都合な速度で分解する材料から作製され得る。このような実施形態において、このポリマー層は、生物活性薬剤の放出を制御し得る。ある実施形態において、エッチングされたレザバは、ポリマー層またはこのレザバを覆う物品よりも好都合な速度で分解し得る。従って、エッチングされる領域の深さが、生物活性薬剤の放出を制御するために使用され得る。
【0055】
図5Aを参照すると、物品60は、内部に生物活性薬剤64が存在し得る、エッチングされた部分62を備え得る。生物活性薬剤を堆積させる方法としては、スプレーコーティング、溶媒エバポレーション、浸漬コーティングなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。図5Bに示されるように、物品60は次いで、ポリマーコーティング66でコーティングされ得、このポリマーコーティングは、いくつかの実施形態において、障壁層として働き得る。図5Cに示されるように、ポリマーコーティング66は、物品60より速い速度で分解し得る。従って、ポリマーコーティング66の分解が、物品60からの生物活性薬剤64の放出を提供し得る。ポリマーコーティング66の分解速度は、いくつかの実施形態において、物品60からの生物活性薬剤64の放出速度を制御するために使用され得る。別の実施形態において、第二の物品が、生物学的薬剤64を含むエッチングされた部分62の上に配置され得る(図示せず)。上記のように、エッチングされた部分は、エッチングされていない部分よりも速く分解し得る。従って、生物活性薬剤の放出速度は、エッチングの深さによって制御され得る。生物活性薬剤を含む実施形態において、ポリマー障壁層は、必ずしも存在する必要はないことが留意されるべきである。
【0056】
同様に、本開示の物品が図1(A、B)、図2(A、B)、および図3(A、B)に図示されるような谷を有する場合、生物活性薬剤は、このような谷に含められ得(図示せず)、必要に応じてポリマー層がこれを覆い得る。
【0057】
他の実施形態において、上記のように、エッチングプロセスは、物品を形成するために利用される材料を変位させ得る。図6Aを参照すると、物品70は、厚さ「t」を有し得る。図6Bに示されるように、エッチングプロセスは、物品70を形成するために利用される材料を、距離「d」だけ変位させ得る。変位の量は、物品70の厚さ「t」の関数であり得る。この変位はまた、エッチングプロセスの作用であり得る。従って、例えば、物品70が約60ミクロンの厚さ「t」を有する場合、エッチングに応答する変位「d」は、約18ミクロン〜約24ミクロンであり得るが、より少ない値またはより大きい値の変位「d」が、いくつかの実施形態において得られ得ることが想定される。
【0058】
これらの実施形態において、本開示の物品は、生物活性薬剤の送達のためのビヒクルとしてもまた働き得る。用語「生物活性薬剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。従って、生物活性薬剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくても良い(例えば、色素、香料、または封止剤)。あるいは、生物活性薬剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤であり得るか、組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物であり得るか、接着防止化合物であり得るか、封止するかもしくは接着力を提供する化合物であり得るか、生物学的作用(例えば、免疫応答)を起こし得る化合物であり得るか、または1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る。生物活性薬剤は、本開示のリボン、テープ、シート、および/またはフィルムに、任意の適切な形態(例えば、フィルム、粉末、液体、ゲルなど)で応用され得ることが想定される。
【0059】
本開示により利用され得る生物活性薬剤のクラスの例としては、例えば、接着防止薬剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬、凝血因子、および酵素が挙げられる。生物活性薬剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0060】
生物活性薬剤として含有され得る適切な抗菌剤としては、例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、生物活性薬剤として含有され得る。
【0061】
生物活性薬剤として含有され得る他の生物活性薬剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤、エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0062】
物品に含有され得る適切な生物活性薬剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにアナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および癌抑制因子、血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、)、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−b;タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0063】
ある実施形態において、本開示の物品に含有され得る生物活性薬剤としては、癌の処置において有用な薬剤が挙げられ得る。このような薬剤としては、抗有糸分裂剤、テロメラーゼインヒビター、抗増殖剤、抗脈管形成薬物、抗腫瘍性の合成化合物または生物学的化合物(抗生物質、ペプチド、タンパク質、成長因子、増殖因子などが挙げられる)ならびに/あるいは化学療法剤(これは、放射線治療剤を含有し得る)が挙げられる。任意のこのような化学療法剤および/または放射線治療剤は、本開示の物品に含有され得る。このような化学療法剤の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、DHA−ドセタキセル(タキソテール)、ドキセタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、アブラキサン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ミトザントロン、ロイコボリン、レバミゾール、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、アドリアマイシン、ベバシズマブ、これらの抗体プロドラッグ結合体、HER−2/neuペプチド、タンパク質、および関連するワクチン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
使用され得る適切な放射線治療剤としては、同位体(例えば、ヨウ素125、パラジウム103、イリジウム192、セシウム131、金198、イットリウム90およびリン32、これらの組み合わせなど)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、何らかの生物学的機能を付与するポリマー(例えば、ホスホリルコリンまたはフラノンを含有するポリマー)もまた利用され得る。
【0065】
ある実施形態において、放射性同位体などの生物活性薬剤は、本開示のフィルムにシードとして応用され得、従って、これらのフィルムは、近接照射療法のために利用される。
【0066】
上記のように、上記生物活性薬剤のうちのいずれかの組み合わせが、本開示のフィルムに添加され得る。
【0067】
上記のように、ある実施形態において、本開示のバットレスまたは他の医療用物品は、さらなる層を含み得る。従って、生物活性薬剤は、単層フィルムの表面に組み込まれ得るかもしくは応用され得るか、またはさらなる層が、この単層フィルムに応用され得る。例えば、フィルムおよび生物活性薬剤は、裏打ち材料に応用され得る。他の実施形態において、障壁層が、フィルムの皮膚接触表面に応用されて、このフィルムからの生物活性薬剤の放出を制御することを補助し得る。生物活性薬剤を収容するレザバもまた構築され得、任意の障壁層がこのレザバを覆う。さらに、異なる生物活性薬剤を有する1層より多くのフィルムが、任意の裏打ち層および障壁層と組み合わせられ得、従って、2つの生物活性薬剤の差示的放出を有し、皮膚から遠い方の層の薬剤の放出の前に、皮膚に近い方の層の薬剤が放出される。
【0068】
生物活性薬剤(例えば、上記化学療法剤および/または放射線治療剤)は、本開示の物品(例えば、フィルム)を形成するために利用されるポリマー材料に、当業者の知識の範囲内である任意の方法(ブレンド、混合、乳化、懸濁、層状化、分配、コーティング、融解プレス、圧縮、押し出し、成形、これらの組み合わせなどが挙げられる)によって、組み込まれ得る。他の実施形態において、生物活性薬剤は、本開示の物品(例えば、フィルム)の表面の少なくとも一部分に、当業者の知識の範囲内である任意の方法またはプロセス(浸漬、スプレー、超音波スプレー、蒸着、散布、粉末コーティング、ローラ塗布、ブラッシング、浸漬/ワイピング法、融解、融解キャスティング、静電コーティング、電子スプレー、これらの組み合わせなどが挙げられる)によりコーティングとして応用され得る。他の実施形態において、このコーティングは、マクロ粒子、微粒子、および/またはナノ粒子を含み得、必要に応じて、薬物などの成分を含む。
【0069】
薬物/ポリマーコーティングは、バットレスの1つまたは複数の表面に応用され得る。いくつかの臨床用途は、1つのみの表面(例えば、バットレスと組織との間の表面)がコーティングされることを所望し得、一方で、他の用途は、1つより多くの表面がコーティングされることを所望し得る。さらに、バットレス上のコーティングは、このバットレスと一緒に利用されるステープル(ステープラーの同じカートリッジに収容される)に応用されるコーティングと同じであり得る。
【0070】
ある実施形態において、コーティングおよび/またはコーティング内の粒子を形成するために利用されるポリマー材料としては、ラクトンポリオルトエステル、ヒドロキシブチレート、チロシンカーボネート、ポリマー薬物、酸無水物、分解性ポリウレタンおよび関連コポリマーまたは鎖長延長ポリマー、アルキレンオキシドコポリマー、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、メタクリレート、アクリレート、ビニルポリマーおよびコポリマーを含むホスホリルコリン、ビニルポリマーおよびコポリマーを含むヒドロキサメート、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、セルロースおよびその酸化バージョン、フカンなど)を含む天然ポリマー、タンパク質(例えば、コラーゲンおよびその酸化バージョン、ゼラチン、エラスチン、アルブミン、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲンなど)、脂質およびリン脂質(ある実施形態において、リポソームの形成のため)、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、コーティングとして使用するため、および/またはコーティング内の粒子の形成のための適切なポリマー材料としては、バットレス材料を形成する際に使用するために適切であると上に記載されたコポリマーが挙げられ得る。このような材料としては、例えば、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの種々の組み合わせを含む、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが利用され得る。他の適切なコーティング材料としては、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、およびゼラチン)が挙げられる。このようなコポリマーを形成する方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。
【0072】
ある実施形態において、コーティングは、連続フィルムまたは不連続フィルムの形態であり得る。コーティング/粒子はまた、1つまたは複数の層を含み得、いくつかまたはすべてが、薬物などの生物活性薬剤を含有する。ある実施形態において、意図される用途に依存して、外側層が障壁層として使用されて、薬物の放出を遅延/制御し得るか、または仕上げ層として使用されて、バットレスの表面を滑らかにし得るかもしくは粗くし得る。他の実施形態において、単一コートおよび/またはトップコートが、バットレスの取り扱い特徴(例えば、バットレスがいかに滑りやすくあり得るか、または粘着性であり得るか)を改変するために使用され得る。
【0073】
コーティングは、均質かつ相適合性であり得るか、または何らかの様式で相分離し得る。コーティング応用の様式は、形態もまた変動させ得、例えば、浸漬(dip or immersion)によりコーティングされたサンプルは、滑らかな層状コーティングを生じ得、一方で、同じ化学処方についての超音波スプレーコーティングは、テクスチャー加工された/より粗い表面を生じ得る。
【0074】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、説明のみであることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されない。また、部および百分率は、他に示されない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
フィルムを、約60重量%のグリコリド、約14重量%のジオキサノン、および約26重量%のトリメチレンカーボネートを含むポリマーから製造した。ポリマーペレットを、加熱液圧プレス機(Carver Laboratory Press,Model 2626)に入れた。このプレス機を、約125℃〜約165℃の温度まで加熱した。これらのペレットを、Teflon(登録商標)コーティングした鋼プレートの中心に置き、鋼シムを用いて、得られるフィルムの厚さを制御した。これらのペレットを融解させ、そしてこのプレートに広げ、そして約100psi(約6.9×105Pa)未満の圧力をこのポリマー融解物に付与した。この装置全体を、プレートを通る流水により衝突冷却(crash cool)した。約0.002インチ〜約0.012インチ(約0.0051cm〜約0.030cm)の厚さを有するフィルムが得られた。これらのフィルムは、多方向配向を有した。
【0076】
(実施例2)
約17重量%のカプロラクトン、約7重量%のラクチド、約7重量%のトリメチレンカーボネート、および約69重量%のグリコリドを含むランダムコポリマーを利用して、フィルムを製造した。このコポリマーを、3/4インチ(約1.9cm)の汎用押し出し機から、スリットダイを通して押し出した。厚いテープが製造された。得られたテープを、実施例1において上に記載したような液圧熱プレス機のTeflon(登録商標)コーティングした鋼プレート上に置いた。所望の厚さを有するフィルムを製造するために適切なシムを用いた。この熱プレス機を約105℃〜約120℃の温度まで加熱し、そして約100psi(約6.9×105Pa)の圧力を付与した。ペレットを利用して実施例1において製造したフィルムと同様に、この方法により製造したフィルムは、約0.002インチ〜約0.012インチ(約0.0051cm〜約0.030cm)の厚さを有した。押し出されたフィルムは、実施例1のペレットより低い結晶構造を有したので、ポリマーを流動させるために、より低い温度を使用し得た。このフィルムは、多方向配向を有した。
【0077】
(実施例3)
実施例2において上に記載されたポリマーを用いて、インフレートフィルムプロセスを使用して、フィルムを製造した。ポリマーペレットを、スクリュー/バレル構成を有し、そして外部加熱要素を取り付けたジャケットを有する押し出し機(Randcastle Extrusion System,Inc.,Cedar Grove,New Jersey)に導入した。このバレルは、3つの異なる温度に維持される3つのゾーンを有し、ゾーン1は、ポリマーペレットが導入されるバレルの部分に最も近く、ゾーン2は、バレルの中間部分であり、そしてゾーン3は、ポリマーが押し出されるバレルの端部である。このバレルの長さ/直径比は、24:1であり、3/4インチ(約1.9cm)のスクリューを、このバレルの内部に有した。約1.25インチ(約3.12cm)の直径を有するダイをこのバレルの端部に配置し、このダイに通して、ポリマー融解物を押し出した。
【0078】
バレル温度は、ゾーン1については、約344°F(約173℃)であり、ゾーン2については、約347°F〜約350°F(約175℃〜約177℃)であり、ゾーン3については、約294°F(約146℃)であり、バレルとダイとの間のアダプタについては、約345°F(約174℃)であった。スクリューのスピン速度は、1分間あたり約80.5回転(rpm)〜約81.5rpmであり、ダイの温度は、約342°F〜約346°F(約172℃〜約174℃)であった。バレル内の圧力は、約2000psi〜約2069psi(約1.4×107Pa〜約1.4×107Pa)であり、ダイにおける圧力は、約2079psi〜約2196psi(約1.4×107Pa〜約1.5×107Pa)であった。押し出し時のポリマー融解物の温度は、約297°F(約147℃)であった。
【0079】
管状フィルムを、圧縮空気により膨張させた。この圧縮空気は、入口を通ってこのシステムに入り、この管状フィルムの内側に入った。この圧縮空気を利用して、この管状フィルムの直径を約3インチ(約7.6cm)の直径まで膨張させた。空冷環を利用して、この空気をこの押し出された管状フィルムの外側の周りに方向付け、迅速かつ効果的な冷却を提供した。フィルムが冷却され硬化された短時間の経過後、このフィルムを巻き取りロールに巻き付け、この巻き取りロールは、この材料を平坦化し、次いで、ニップローラに通し、種々の厚さのフィルムを製造した。製造されたフィルムの厚さは、約0.003インチ(約0.0076cm)、0.004インチ(約0.010cm)、0.006インチ(約0.015cm)、および0.008インチ(約0.020cm)であった。このように製造されたフィルムは、多方向配向を有した。
【0080】
(実施例4)
バットレスを、グリコリド(約60%)、ジオキサノン(約14%)、およびトリメチレンカーボネート(約26%)を含む合成ポリエステルから製造する。このバットレスは、約60ミクロンの厚さを有する。約0.25mm〜約1mmの直径を有する小さい円形ウェルを、このバットレスにエッチングする。エッチングされた部分を、約0.5ワット〜約5ワットの電力、およびレーザーの最大速度の約1%〜約15%の速度で作動する、Epilog Legend 32× レーザープリンターを使用して形成する。種々の長さおよび幅を有する谷を形成する。このパターンを、図形編集プログラムを使用して決定する。
【0081】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の改変を予測する。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10、19、30、40、60、70 物品
12、18 線
14、34、表面
32、32’、36、62 エッチングされた部分
42 エッチングされたウェル
50 バットレス
52 エッチングされた谷
56 ステープル
58 エッチングされていない部分
64 生物活性薬剤
66 ポリマーコーティング
t 物品の厚さ
d 変位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バットレスを構成する補強材料であって、該バットレスがエッチングされた部分を含む、補強材料。
【請求項2】
前記エッチングされた部分が、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるエッチングされたパターンを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項3】
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の補強材料。
【請求項4】
前記エッチングされた部分が、少なくとも一方向での前記物品の拡張を可能にする、請求項1に記載の補強材料。
【請求項5】
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤の収容のためのレザバを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項6】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の分解プロフィールを変更する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項7】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも一方向の柔軟性を増加させる、請求項1に記載の補強材料。
【請求項8】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の表面積を増加させる、請求項1に記載の補強材料。
【請求項9】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも1つの表面上にパターンを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項10】
表面にエッチングされたパターンを有するポリマー材料を備える物品であって、
該物品が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される、
物品。
【請求項11】
前記パターンがレーザーエッチングによって作製されている、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記パターンが、前記ポリマー材料の表面積を増加させる、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記パターンが、前記ポリマー材料の少なくとも一方向での柔軟性を増加させる、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
前記パターンが、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の物品。
【請求項15】
前記パターンが、前記物品の分解プロフィールを変更する、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料を得る工程;
該ポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;
該物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびに
表面にエッチングされた部分を有する該物品を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約60重量%〜約75重量%の量のグリコリド、およびコポリマーの約25重量%〜約40重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約55重量%〜約65重量%の量のグリコリド、コポリマーの約10重量%〜約18重量%の量のジオキサノン、およびコポリマーの約17重量%〜約35重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約14重量%〜約20重量%の量のカプロラクトン、コポリマーの約4重量%〜約10重量%の量のラクチド、コポリマーの約4重量%〜約10重量%のトリメチレンカーボネート、およびコポリマーの約60重量%〜約78重量%の量のグリコリドを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー材料を物品に形成する工程が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される物品を形成することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記物品が、約0.0005インチ(約0.0013cm)〜約0.014インチ(約0.036cm)の厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記物品が、約0.002インチ(約0.0051cm)〜約0.005インチ(約0.013cm)の厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、外科出用ステープラーバットレス。
【請求項24】
少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;
ステープル形成表面を有するアンビル;および
該アンビルまたは該カートリッジに隣接して配置されたバットレスであって、該バットレスは、請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス、
を備える、外科手術用ステープル留め装置。
【請求項25】
外科手術用ステープル留め装置であって、間に組織を挟むように構成されたカートリッジおよびアンビルを備える、外科手術用ステープル留め装置、
該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接して配置されるように構成されたバットレスであって、該バットレスが、請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス;ならびに
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定するための手段、
を備える、創傷を封止するためのシステム。
【請求項1】
バットレスを構成する補強材料であって、該バットレスがエッチングされた部分を含む、補強材料。
【請求項2】
前記エッチングされた部分が、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるエッチングされたパターンを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項3】
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の補強材料。
【請求項4】
前記エッチングされた部分が、少なくとも一方向での前記物品の拡張を可能にする、請求項1に記載の補強材料。
【請求項5】
前記エッチングされた部分が、生物活性薬剤の収容のためのレザバを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項6】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の分解プロフィールを変更する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項7】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも一方向の柔軟性を増加させる、請求項1に記載の補強材料。
【請求項8】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の表面積を増加させる、請求項1に記載の補強材料。
【請求項9】
前記エッチングされた部分が、前記補強材料の少なくとも1つの表面上にパターンを作製する、請求項1に記載の補強材料。
【請求項10】
表面にエッチングされたパターンを有するポリマー材料を備える物品であって、
該物品が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される、
物品。
【請求項11】
前記パターンがレーザーエッチングによって作製されている、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記パターンが、前記ポリマー材料の表面積を増加させる、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記パターンが、前記ポリマー材料の少なくとも一方向での柔軟性を増加させる、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
前記パターンが、線、ウェル、谷、チャネル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の物品。
【請求項15】
前記パターンが、前記物品の分解プロフィールを変更する、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマー材料を得る工程;
該ポリマー材料を、一方向に配向を有さない物品に形成する工程;
該物品の表面の少なくとも一部分にパターンをエッチングする工程;ならびに
表面にエッチングされた部分を有する該物品を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約60重量%〜約75重量%の量のグリコリド、およびコポリマーの約25重量%〜約40重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約55重量%〜約65重量%の量のグリコリド、コポリマーの約10重量%〜約18重量%の量のジオキサノン、およびコポリマーの約17重量%〜約35重量%の量のトリメチレンカーボネートを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー材料が、コポリマーの約14重量%〜約20重量%の量のカプロラクトン、コポリマーの約4重量%〜約10重量%の量のラクチド、コポリマーの約4重量%〜約10重量%のトリメチレンカーボネート、およびコポリマーの約60重量%〜約78重量%の量のグリコリドを含むコポリマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー材料を物品に形成する工程が、リボン、テープ、シート、およびフィルムからなる群より選択される物品を形成することを包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記物品が、約0.0005インチ(約0.0013cm)〜約0.014インチ(約0.036cm)の厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記物品が、約0.002インチ(約0.0051cm)〜約0.005インチ(約0.013cm)の厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、外科出用ステープラーバットレス。
【請求項24】
少なくとも1つのステープルを収容するステープルカートリッジ;
ステープル形成表面を有するアンビル;および
該アンビルまたは該カートリッジに隣接して配置されたバットレスであって、該バットレスは、請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス、
を備える、外科手術用ステープル留め装置。
【請求項25】
外科手術用ステープル留め装置であって、間に組織を挟むように構成されたカートリッジおよびアンビルを備える、外科手術用ステープル留め装置、
該カートリッジまたは該アンビルのうちの一方に隣接して配置されるように構成されたバットレスであって、該バットレスが、請求項16に記載の方法により製造された物品を含む、バットレス;ならびに
該カートリッジから該バットレスのエッチングされていない部分内へとステープルを排出して、該バットレスを該組織に固定するための手段、
を備える、創傷を封止するためのシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2011−78763(P2011−78763A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224283(P2010−224283)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】
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