創外固定器
【課題】部品数が少なく構造が簡単でありながら、関節を離間させて関節軟骨損傷の治療を行うことができる、創外固定器を提供する。
【解決手段】 創外固定器10は、骨部Bに取り付けられるピン12aと、骨部Cに取り付けられるピン12b,12cとを含む。第1永久磁石20を含む第1磁石部14がピン12aに取り付けられる。第2永久磁石28を含む第2磁石部16がピン12b,12cに取り付けられる。第1磁石部14は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部14aを有し、第2磁石部16は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部16aを有する。第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向するように配置されている。
【解決手段】 創外固定器10は、骨部Bに取り付けられるピン12aと、骨部Cに取り付けられるピン12b,12cとを含む。第1永久磁石20を含む第1磁石部14がピン12aに取り付けられる。第2永久磁石28を含む第2磁石部16がピン12b,12cに取り付けられる。第1磁石部14は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部14aを有し、第2磁石部16は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部16aを有する。第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は創外固定器に関し、より特定的には、関節軟骨損傷の治療に用いられる創外固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な関節軟骨損傷の治療は、欠損部にドリルやオウルで小さな穴をあけ、骨髄からの出血を促し、骨髄間葉系幹細胞を関節内に誘導する方法が一般的であるが、術後早期から損傷部へ荷重を加えることは幼弱な組織に損傷を与える可能性がある。
【0003】
このような関節軟骨損傷の治療に用いられる創外固定器の一例が、特許文献1において開示されている。この創外固定器は、ボールジョイントやギアボックスを備え、損傷部を保護するために、関節を挟んで関節の両側を機械的に固定して関節を離間させ、損傷部への荷重を軽減する。そして、この創外固定器を装着した状態で関節を運動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−345837
【特許文献2】特開2005−245470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された創外固定器は、部品数が多く構造が複雑である。
【0006】
また、特許文献2において、磁石を含む創外固定器が開示されている。しかし、この創外固定器は、第1の骨部と第2の骨部とに固定される一対の磁性体部が互いに引き合うように装着されており、関節を離間させて関節軟骨損傷の治療を行う場合に用いることはできない。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、部品数が少なく構造が簡単でありながら、関節を離間させて関節軟骨損傷の治療を行うことができる、創外固定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の創外固定器は、関節両側の第1骨部と第2骨部とを固定する創外固定器であって、第1骨部に取り付けられる第1ピンと、第2骨部に取り付けられる第2ピンと、第1永久磁石を含みかつ第1ピンに取り付けられる第1磁石部と、第2永久磁石を含みかつ第2ピンに取り付けられる第2磁石部とを備え、第1磁石部は、第1ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部を有し、第2磁石部は、第2ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部を有し、第1磁石部と第2磁石部とは、凸部と凹部とが対向しかつ第1永久磁石および第2永久磁石の同極が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の創外固定器は、請求項1に記載の創外固定器において、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できるように第1磁石部と第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の創外固定器は、請求項2に記載の創外固定器において、連結部材は、円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体と、第1磁石部に対して連結部本体を相対的に揺動できるように第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、第2磁石部に対して連結部本体を相対的に進退できるように第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の創外固定器は、請求項3に記載の創外固定器において、連結部本体は略Y字状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の創外固定器は、請求項3に記載の創外固定器において、連結部本体は、第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、第3孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の創外固定器は、請求項5に記載の創外固定器において、連結部本体は略扇状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の創外固定器は、請求項1に記載の創外固定器において、第1磁石部の凸部はさらに、第1ピンの長手方向の断面が凸状に形成され、第2磁石部の凹部はさらに、第2ピンの長手方向の断面が凹状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の創外固定器は、請求項7に記載の創外固定器において、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できるように第1磁石部と第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の創外固定器は、請求項8に記載の創外固定器において、連結部材は、円弧状の第1孔を有する第1連結部と、直線状の第2孔を有しかつ第1連結部に接続される第2連結部と、第1磁石部に対して第1連結部を相対的に揺動できるように第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、第2磁石部に対して第2連結部を相対的に進退できるように第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含み、第1連結部に対して第2連結部を相対的に揺動できるように第1連結部と第2連結部とは接続されていることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の創外固定器では、第1ピンに取り付けられる第1磁石部と第2ピンに取り付けられる第2磁石部とは、第1永久磁石および第2永久磁石の同極が対向するように配置されているので、相互に反発し合い、第1骨部と第2骨部、すなわち関節の軟骨部分を離間させることができる。また、第1磁石部と第2磁石部とは、凸部と凹部とが対向するように配置されているので、相互に干渉することなく、相互間の変位が円滑になる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、関節を円滑に運動させることができ、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる。また、第1永久磁石と第2永久磁石との反発力を利用することによって、創外固定器を少ない部品点数で簡単に構成できる。
【0018】
請求項2に記載の創外固定器では、第1磁石部と第2磁石部とを連結部材で連結することによって、第1磁石部および第2磁石部の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できる。したがって、創外固定器を関節に安定して装着でき、かつ関節を円滑に運動でき創外固定器を良好に使用できる。
【0019】
請求項3に記載の創外固定器では、連結部本体は円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有し、第1磁石部に対して連結部本体を相対的に揺動できるように第1取付部材は第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられ、第2磁石部に対して連結部本体を相対的に進退できるように第2取付部材は第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる。これにより、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に進退および揺動できる。すなわち、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できる構成を、容易に得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の創外固定器では、連結部本体を略Y字状に形成することによって、円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体を、軽量かつコンパクトに構成することができる。
【0021】
請求項5に記載の創外固定器では、連結部本体は、第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、第3孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含む。これによって、第1磁石部に対する連結部本体の相対的な揺動を妨げることなく、連結部本体を第1磁石部により安定して取り付けることができる。
【0022】
請求項6に記載の創外固定器では、連結部本体を略扇状に形成することによって、第1孔〜第3孔を有する強固な連結部本体を容易に得ることができる。
【0023】
請求項7に記載の創外固定器では、第1磁石部の凸部は、第1ピンの長手方向の断面および当該長手方向に直交する断面がともに凸状に形成され、第2磁石部の凹部は、第2ピンの長手方向の断面および当該長手方向に直交する断面がともに凹状に形成されている。このような凸部と凹部とが対向するように第1磁石部と第2磁石部とを配置すると、第1磁石部と第2磁石部とは、相互に干渉することなく相互間の3次元的変位が可能となる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、関節の自由な動きが可能となり関節をさらに円滑に運動させることができる。
【0024】
請求項8に記載の創外固定器では、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できるように構成されている連結部材によって、第1磁石部と第2磁石部とが連結される。これによって、第1磁石部および第2磁石部の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できる。
【0025】
請求項9に記載の創外固定器では、第1磁石部に対して第1連結部を相対的に揺動できるように第1取付部材が円弧状の第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられ、第2磁石部に対して第2連結部を相対的に進退できるように第2取付部材が直線状の第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる。さらに、第1連結部に対して第2連結部を相対的に揺動できるように第1連結部と第2連結部とは接続される。これにより、簡単な構成で、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できる。すなわち、第1磁石部に対して第2磁石部を、相対的に進退できるとともに上下方向および左右方向に揺動できる構成を、容易に得ることができる。
【0026】
なお、2次元変位とは、2次元的(平面的)に位置を変えることをいう。
【0027】
3次元変位とは、3次元的(立体的)に位置を変えることをいう。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、部品点数が少なく構造が簡単でありながら、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる、創外固定器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)はこの発明の一実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図2】図1の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図3】第1磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は第1磁石部に含まれるホルダを示す平面図、(b)はその縦断面図、(c)はその底面図である。
【図5】第2磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図6】(a)は第2磁石部に含まれるホルダを示す平面図、(b)はその側面図、(c)はその底面図である。
【図7】膝を曲げるときの膝関節と創外固定器とを示す図解図であり、(a)は膝を曲げていない状態、(b)は膝を90°曲げた状態、(c)は膝を120°曲げた状態である。
【図8】(a)はこの発明の他の実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図9】図8の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図10】図8の創外固定器に含まれる第2磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図11】(a)はこの発明のその他の実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図12】図11の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図13】図11の創外固定器における第1磁石部と第2磁石部との位置関係を示す断面図解図である。
【図14】図11の創外固定器に含まれる第1磁石部を示す斜視図である。
【図15】図11の創外固定器に含まれるホルダを示す前方斜視図である。
【図16】(a)は図11の創外固定器に含まれる第2磁石を示す前方斜視図であり、(b)はその後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1および図2を参照して、創外固定器10は、ピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12a〜12cはそれぞれ棒状に形成されている。ピン12a〜12cは、生体適合性に優れたチタンを含むことが好ましい。ピン12aには、第1磁石部14が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部16が取り付けられている。
【0031】
図2に示すように、第1磁石部14は、円柱状に形成されており、その側面が横断面円弧状の凸部14aとなる。すなわち、第1磁石部14は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部14aを有する。
【0032】
図3を参照して、第1磁石部14は、ホルダ18と、第1永久磁石20と、蓋22とを含む。図4をも参照して、ホルダ18は、好ましくはアルミニウムなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空円筒状に形成され、外筒部18aと内筒部18bとを有する。外筒部18aと内筒部18bとは同心上に形成され、内筒部18bには軸方向に延びる貫通孔18cが形成されている。外筒部18aには、蓋22を取り付けるための4つのねじ孔18dが形成されている。ホルダ18の内部空間18eは、第1永久磁石20と略同形状に形成されている。第1永久磁石20は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第1永久磁石20は、円柱状に形成されている。したがって、第1永久磁石20の側面は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部20aを有する。第1永久磁石20は、その中央に軸方向に貫通する中空部20bを有する。第1永久磁石20は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ18に収納される。第1永久磁石20が収納されたホルダ18の上面には、蓋22が取り付けられる。蓋22は、好ましくはSUS304からなり、円板状に形成されている。蓋22の中央に貫通孔22aが形成され、蓋22の縁には4つのねじ孔22bが形成されている。また、蓋22には、固定部材40a,40b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔22cと、取付部材38a(後述)を取り付けるためのねじ孔22dとが形成されている。4つのねじ24をそれぞれ、対応するねじ孔22bおよび18dに螺入することによって、ホルダ18に蓋22が固定される。このような第1磁石部14の貫通孔18cおよび22aに、ピン12aが挿通されて、第1磁石部14にピン12aが取り付けられる。
【0033】
図2に示すように、第2磁石部16は、横断面円弧状の凹部16aを有する。すなわち、第2磁石部16は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部16aを有する。
【0034】
図5を参照して、第2磁石部16は、ホルダ26と、第2永久磁石28と、蓋30とを含む。図6をも参照して、ホルダ26は、好ましくはアルミニウムなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空状に形成されている。ホルダ26は、外壁部26aを有し、外壁部26aには、蓋30を取り付けるための4つのねじ孔26bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔26cとが形成されている。ホルダ26の内部空間26dは、第2永久磁石28と略同形状に形成されている。第2永久磁石28は、略U字状に形成されている。第2永久磁石28は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部28aを有する。第2永久磁石28は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第2永久磁石28は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ26に収納される。第2永久磁石28が収納されたホルダ26の上面には、蓋30が取り付けられる。蓋30は、好ましくはSUS304からなり、板状に形成されている。蓋30の縁には4つのねじ孔30aが形成されている。また、蓋30には、固定部材40a,40bを取り付けるための2つのねじ孔30bと、取付部材38b(後述)を取り付けるためのねじ孔30cと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔30dとが形成されている。4つのねじ32をそれぞれ、対応するねじ孔30aおよび26bに螺入することによって、ホルダ26に蓋30が取り付けられる。このような第2磁石部16の貫通孔26c,30dに、対応するピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部16に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0035】
図1に戻って、第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材34によって連結されている。
【0036】
図2に示すように、連結部材34は、連結部本体36と2つの取付部材38a,38bとを含む。連結部本体36は、略Y字状に形成され、湾曲部36aと直線部36bとを有し、湾曲部36aに円弧状の長孔36cが形成され、直線部36bに直線状の長孔36dが形成されている。取付部材38a,38bはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなる。第1磁石部14ひいては第1永久磁石20に対して連結部本体36を相対的に揺動できるように、取付部材38aが長孔36cに挿通されて蓋22に取り付けられる。第2磁石部16ひいては第2永久磁石28に対して連結部本体36を相対的に進退できるように、取付部材38bが長孔36dに挿通されて蓋30に取り付けられる。このとき、取付部材38aは蓋22の上面から突出し、取付部材38bは蓋30の上面から突出している。図1(a)に示すように、第1磁石部14に対して連結部本体36を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部16に対して連結部本体36を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、連結部材34は、第1磁石部14および第2磁石部16の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0037】
また、第1磁石部14と第2磁石部16とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す2つの固定部材40a,40bによって連結されている。各固定部材40a,40bは、たとえば金属からなり短冊状に形成されている。固定部材40aは、2つのねじ孔42aを有し、固定部材40bは、2つのねじ孔42bを有する。ねじ44を一方のねじ孔42aとねじ孔22cとに螺入することによって、固定部材40aが蓋22に取り付けられ、ねじ44を他方のねじ孔42aとねじ孔30bとに螺入することによって、固定部材40aが蓋30に取り付けられる。また、ねじ44を一方のねじ孔42bとねじ孔22cとに螺入することによって、固定部材40bが蓋22に取り付けられ、ねじ44を他方のねじ孔42bとねじ孔30bとに螺入することによって、固定部材40bが蓋30に取り付けられる。
【0038】
このような創外固定器10は、次のようにして関節に装着される。
ここでは、創外固定器10を、膝関節Aの両側の骨部BとCとに取り付け、骨部BとCとを固定する場合について説明する(図7参照)。
【0039】
まず、大腿部側の骨部Bに1つの貫通孔が、下腿部側の骨部Cに2つの貫通孔が、それぞれたとえばドリルによってあけられる。これらの貫通孔は、創外固定器10のピン12a〜12cに対応する位置に、かつ相互に平行に形成される。骨部Bにあけられる貫通孔は、膝関節Aの回転中心となる位置に形成される。
【0040】
ついで、創外固定器10が組み立てられた状態で、骨部Bの貫通孔にピン12aが挿通されて骨部Bにピン12aが取り付けられ、骨部Cの2つの貫通孔にピン12b,12cが挿通されて骨部Cにピン12b,12cが取り付けられる。ピン12aが骨部Bに、ピン12b,12cが骨部Cに、それぞれ確実に固定されたことを確認した後、4つのねじ44が取り外されて、2つの固定部材40a,40bが蓋22および30から取り外される。すると、創外固定器10は、第1磁石部14と第2磁石部16とが連結部材34によって連結された状態で、膝関節Aに装着された状態となる。膝関節Aに装着された創外固定器10では、たとえば患者が直立した状態で第1磁石部14と第2磁石部16との間に略7kgの反発力が働く。
【0041】
このようにして創外固定器10を装着した状態で膝を曲げていく場合について、図7(a)〜(c)を参照して説明する。
図7(a)に示すように膝を曲げていない状態では、骨部B側に位置する取付部材38aは、連結部本体36の円弧状の長孔36cの一端(図7(a)では右端)に位置し、骨部C側に位置する取付部材38bは、連結部本体36の直線状の長孔36dの一端(図7(a)では上端)に位置する。
【0042】
ついで、図7(b)に示すように膝を90°曲げた状態では、取付部材38aは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36cの他端に向かって移動し、取付部材38bは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36dの他端に向かって移動する。すなわち、図7でいえば、湾曲部36aが蓋22の外周に沿って反時計回りに移動するように、連結部本体36および第2磁石部16がピン12aを中心として反時計回りに揺動し、湾曲部36aと取付部材38aとの位置関係が変化する。それとともに、取付部材38bが直線部36bの長孔36dの他端に向かって移動するように、第2磁石部16が第1磁石部14から離れていく。
【0043】
さらに、図7(c)に示すように膝を120°曲げた状態では、取付部材38aは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36cの他端まで移動し、取付部材38bは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36dの他端まで移動する。すなわち、図7でいえば、湾曲部36aが蓋22の外周に沿って反時計回りにさらに移動するように、連結部本体36および第2磁石部16がピン12aを中心として反時計回りにさらに揺動し、取付部材38aが長孔36cの他端に係合する。それとともに、取付部材38bが長孔36dの他端に係合されるまで、第2磁石部16が第1磁石部14から離れる。
【0044】
このように膝を0°から120°まで曲げるとき、骨部Bと骨部Cとが離れた状態を保つように、第1磁石部14と第2磁石部16との間隔が調整される。
【0045】
創外固定器10によれば、ピン12aに取り付けられる第1磁石部14とピン12b,12cに取り付けられる第2磁石部16とは、第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向するように配置されているので、相互に反発し合い、骨部BとC、すなわち膝関節Aの軟骨部分を離間させることができる。また、第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向するように配置されているので、相互に干渉することなく、相互間の変位が円滑になる。したがって、損傷部である軟骨再生部への荷重を軽減した状態で、膝関節Aを円滑に運動させることができ、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる。また、第1永久磁石20と第2永久磁石28との反発力を利用することによって、創外固定器10を少ない部品点数で簡単に構成できる。
【0046】
創外固定器10のように、凸部14aと凹部16a、ひいては凸部20aと凹部28aとの対向面積を大きくすることによって、第1磁石部14と第2磁石部16との反発力を大きくできる。したがって、第1磁石部14および第2磁石部16が小さくても十分な反発力を得ることができ、創外固定器10を小さく形成できる。また、膝の屈伸等によって膝関節Aを運動させた場合にも大きな反発力を得ることができ、膝関節Aの自由な動きに対応することができる。
【0047】
第1磁石部14と第2磁石部16とを連結部材34で連結することによって、第1磁石部14および第2磁石部16の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できる。したがって、創外固定器10を膝関節Aに安定して装着でき、かつ膝関節Aを円滑に運動でき創外固定器10を良好に使用できる。
【0048】
連結部本体36は円弧状の長孔36cおよび直線状の長孔36dを有し、第1磁石部14に対して連結部本体36を相対的に揺動できるように取付部材38aは長孔36cに挿通されて第1磁石部14に取り付けられる。また、第2磁石部16に対して連結部本体36を相対的に進退できるように取付部材38bは長孔36dに挿通されて第2磁石部16に取り付けられる。これにより、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に進退および揺動できる。すなわち、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できる構成を、容易に得ることができる。
【0049】
連結部本体36を略Y字状に形成することによって、円弧状の長孔36cおよび直線状の長孔36dを有する連結部本体36を、軽量かつコンパクトに構成することができる。
【0050】
ついで、図8に、この発明の他の実施形態に係る創外固定器10aを示す。なお、創外固定器10と同様の構成要素については重複する説明は省略する。
【0051】
創外固定器10aは、創外固定器10と同様のピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12aには、創外固定器10と同様の第1磁石部14が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部50が取り付けられている。なお、創外固定器10aでは、第1磁石部14に含まれる蓋22の貫通孔22cは、取付部材38c(後述)を取り付けるための孔となる。
【0052】
図9に示すように、第2磁石部50は、横断面円弧状の凹部50aを有する。すなわち、第2磁石部50は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部50aを有する。
【0053】
図10を参照して、第2磁石部50は、ホルダ56と、創外固定器10と同様の第2永久磁石28と、蓋60とを含む。ホルダ56の外形は、ホルダ26の外形より大きく形成されている。ホルダ56は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空状に形成されている。ホルダ56は、外壁部56aを有し、外壁部56aには、蓋60を取り付けるための4つのねじ孔56bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つのねじ孔56cとが形成されている。ホルダ56の内部空間56dは、第2永久磁石28と略同形状に形成されている。第2永久磁石28は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ56に収納される。第2永久磁石28が収納されたホルダ56の上面には、蓋60が取り付けられる。蓋60は、蓋30より大きく形成されている。蓋60は、好ましくはSUS304からなり、板状に形成されている。蓋60の縁には4つのねじ孔60aが形成されている。また、蓋60には、取付部材38bを取り付けるためのねじ孔60bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔60cとが形成されている。4つのねじ32をそれぞれ、対応するねじ孔60aおよび56bに螺入することによって、ホルダ56に蓋60が取り付けられる。このような第2磁石部50の貫通孔56c,60cに、対応するピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部50に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0054】
第1磁石部14と第2磁石部50とは、凸部14aと凹部50aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材62によって連結されている。
【0055】
図9に示すように、連結部材62は、連結部本体64と3つの取付部材38a,38bおよび38cとを含む。
【0056】
連結部本体64は、略扇状に形成され、一方側に2つの円弧状の長孔64a,64bが形成され、他方側に直線状の長孔64cが形成されている。長孔64aと64bとは、同一円弧上に位置し、かつ相互に逆方向に湾曲している。取付部材38a〜38cはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなる。第1磁石部14ひいては第1永久磁石20に対して連結部本体64を相対的に揺動できるように、取付部材38aが長孔64bに挿通されて蓋22に取り付けられ、取付部材38cが長孔64aに挿通されて蓋22に取り付けられる。また、第2磁石部50ひいては第2永久磁石28に対して連結部本体64を相対的に進退できるように、取付部材38bが長孔64cに挿通されて蓋60に取り付けられる。このとき、取付部材38a,38cは蓋22の上面から突出し、取付部材38cは蓋60の上面から突出している。図8(a)に示すように、第1磁石部14に対して連結部本体64を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部50に対して連結部本体64を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、連結部材62は、第1磁石部14および第2磁石部50の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部14に対して第2磁石部50を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0057】
また、図8を参照して、第1磁石部14と第2磁石部50とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す4つの固定部材66a,66b,66cおよび66dによって保持されている。各固定部材66a〜66dは、たとえばステンレスなどの非磁性金属からなり短冊状に形成されている。固定部材66a〜66dを枠状に組み立てて、4つのピン66eによって相互に連結し、第1磁石部14および第2磁石部50を四方から挟みつける。これによって、第1磁石部14と第2磁石部50とが相互に離れる方向に移動することを防止できる。そして、創外固定器10aを膝関節Aに装着した後、ピン66eをはずして固定部材66a〜66を取り外すと、反発力によって第1磁石部14と第2磁石部50とが相互に離れる方向に移動する。
【0058】
このような創外固定器10aによれば、連結部本体64は、長孔64bと同一円弧上に位置する円弧状の長孔64aと、長孔64aに挿通されて第1磁石部14に取り付けられる取付部材38cとをさらに含む。これによって、第1磁石部14に対する連結部本体64の相対的な揺動を妨げることなく、連結部本体64を第1磁石部14により安定して取り付けることができる。
【0059】
連結部本体64を略扇状に形成することによって、長孔64a,64bおよび64cを有する強固な連結部本体64を容易に得ることができる。
【0060】
なお、創外固定器10aに含まれる連結部本体64において、長孔64aと64bとは、同一円弧上に位置する場合に限定されず、同心上に位置していてもよい。
【0061】
さらに、図11に、この発明のその他の実施形態に係る創外固定器10bを示す。
創外固定器10bは、創外固定器10と同様のピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12aには、第1磁石部70が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部72が取り付けられている。
【0062】
図12および図13に示すように、第1磁石部70は、その上下両外周縁が面取りされ、略円柱状に形成されている。第1磁石部70の側面が、横断面円弧状かつ縦断面凸状の凸部70aとなる。すなわち、第1磁石部70は凸部70aを有し、凸部70aは、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状で、ピン12aの長手方向の断面が凸状に形成されている。
【0063】
第1磁石部70は、ホルダ74と、第1永久磁石76とを含む。
【0064】
ホルダ74は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、中空円筒状に形成され、ホルダ部74aと74bとを含む2分割構造に形成されている。ホルダ部74aの中央およびホルダ部74bの中央にはそれぞれ、軸方向に延びる貫通孔74cおよび74dが形成されている。また、ホルダ部74aの上面には、固定部材94a,94b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔74eと、取付部材88a(後述)を取り付けるためのねじ孔74fとが形成されている。ホルダ74の内部空間は、第1永久磁石76と略同形状に形成されている。
【0065】
第1永久磁石76は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。図13および図14を参照して、第1永久磁石76は、その両端外周縁が面取りされ、略円柱状に形成されている。したがって、第1永久磁石76の側面には、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部76aが形成されている。さらに、凸部76aは、ピン12aの長手方向の断面が凸状に形成されている。第1永久磁石76は、その中央に軸方向に貫通する中空部76bを有する。第1永久磁石76は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ74に収納される。このような第1磁石部70の貫通孔74cおよび中空部76bに、ピン12aが挿通されて、第1磁石部70にピン12aが取り付けられる。
【0066】
図13および図15に示すように、第2磁石部72は、横断面および縦断面がともに円弧状の凹部72aを有する。すなわち、第2磁石部72は凹部72aを有し、凹部72aは、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状で、ピン12aの長手方向の断面が凹状に形成されている。
【0067】
第2磁石部72は、ホルダ78と、第2永久磁石80とを含む。
【0068】
ホルダ78は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、中空状に形成され、ホルダ部78aと78bとを含む2分割構造に形成されている。ホルダ部78bには、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔78cが形成されている。2つの貫通孔78cは軸方向に延びている。また、ホルダ部78bの上面には、取付部材88b(後述)を取り付けるためのねじ孔78dが形成されている。ホルダ部78aの上面には、固定部材94a,94b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔78eが形成されている。ホルダ78の内部空間は、第2永久磁石80と略同形状に形成されている。
【0069】
図16を参照して、第2永久磁石80は、略U字状に形成されている。第2永久磁石80は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部80aを有する。さらに、凹部80aは、ピン12b,12cの長手方向の断面が凹状に形成されている。第2永久磁石80は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第2永久磁石80は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ78に収納される。このような第2磁石部80の2つの貫通孔78cに、ピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部80に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0070】
図11に戻って、第1磁石部70と第2磁石部72とは、凸部70aと凹部72aとが対向しかつ第1永久磁石76および第2永久磁石80の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材82によって連結されている。
【0071】
図12に示すように、連結部材82は、第1連結部84と第2連結部86と2つの取付部材88a,88bとを含む。
【0072】
第1連結部84は、平面視略Y字状に形成され、湾曲部84aと湾曲部84aから延びる直線部84bとを有する。湾曲部84aに円弧状の長孔84cが形成され、直線部84bの端部にボール部84dが形成されている。第2連結部86は、略L字状に形成され、直線部90と直線部90に接続される保持部92とを有する。直線部90には、直線状の長孔90aが形成されている。保持部92は、第1部92aと第2部92bとを含む2分割構造に形成され、ボール部84dを受ける凹部92cを有する(図11参照)。この実施形態では、ボール部84dと、凹部92cを有する保持部92とによって、ボールジョイントが形成されている。すなわち、第1連結部84と第2連結部86とはボールジョイントによって接続されている。
【0073】
取付部材88a,88bはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなり、取付部材88aは取付部材88bより長く形成されている。第1磁石部70ひいては第1永久磁石76に対して第1連結部84を相対的に揺動できるように、取付部材88aが長孔84cに挿通されてホルダ部74aに取り付けられる。第2磁石部72ひいては第2永久磁石80に対して第2連結部86を相対的に進退できるように、取付部材88bが長孔90aに挿通されてホルダ部78bに取り付けられる。このとき、取付部材88aはホルダ部74aの上面から突出し、取付部材88bはホルダ部78bの上面から突出している。図11(a)に示すように、第1磁石部70に対して第1連結部84を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部72に対して第2連結部86を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、第1連結部84および第2連結部86は、第1磁石部70および第2磁石部72の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0074】
さらに、第1連結部84と第2連結部86とはボールジョイントによって接続されているので、第1連結部84に対して第2連結部86は、任意の方向に揺動できる。したがって、第1連結部84に対して前記第2連結部は、少なくとも図11(b)に示す矢印Z方向に相対的に揺動できる。したがって、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。
【0075】
また、第1磁石部70と第2磁石部72とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す2つの固定部材94a,94bによって連結されている。各固定部材94a,94bは、たとえば金属からなり短冊状に形成されている。2つのねじ44によって固定部材94aがホルダ部74aとホルダ部78aとに取り付けられ、第1磁石部70と第2磁石部72とが固定部材94aによって連結される。また、2つのねじ44によって固定部材94bがホルダ部74aとホルダ部78aとに取り付けられ、第1磁石部70と第2磁石部72とが固定部材94bによって連結される。
【0076】
このような創外固定器10bによれば、第1磁石部70の凸部70aは、ピン12aの長手方向の断面およびピン12aの長手方向に直交する断面がともに凸状に形成されている。また、第2磁石部72の凹部72aは、ピン12b,12cの長手方向の断面およびピン12b,12cの長手方向に直交する断面がともに凹状に形成されている。このような凸部70aと凹部72aとが対向するように第1磁石部70と第2磁石部72とを配置すると、第1磁石部70と第2磁石部72とは、相互に干渉することなく相互間の3次元的変位が可能となる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、膝関節Aの自由な動きが可能となり膝関節Aをさらに円滑に運動させることができ、たとえば膝のひねりにも対応できる。
【0077】
第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できるように構成されている連結部材82によって、第1磁石部70と第2磁石部72とが連結される。これによって、第1磁石部70および第2磁石部72の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。
【0078】
第1磁石部70に対して第1連結部84を相対的に揺動できるように取付部材88aが円弧状の長孔84cに挿通されて第1磁石部70に取り付けられ、第2磁石部72に対して第2連結部86を相対的に進退できるように取付部材88bが直線状の長孔90aに挿通されて第2磁石部72に取り付けられる。さらに、第1連結部84に対して第2連結部86を相対的に揺動できるように第1連結部84と第2連結部86とは接続される。これにより、簡単な構成で、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。すなわち、第1磁石部70に対して第2磁石部72を、相対的に進退できるとともに上下方向および左右方向に揺動できる構成を、容易に得ることができる。
【0079】
上述に実施形態において、第1磁石部および第1永久磁石は、半円柱状や球形に形成されてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、第1磁石部は第1永久磁石とホルダとを含んで構成されていたが、これに限定されない。第1磁石部は第1永久磁石に樹脂モールドを施したものであってもよい。また、第2磁石部は第2永久磁石とホルダとを含んで構成されていたが、これに限定されない。第2磁石部は第2永久磁石に樹脂モールドを施したものであってもよい。この場合、第1永久磁石および第2永久磁石の表面が傷つかず、錆びることなく保護される。また、第1永久磁石の周囲に漏洩する磁界を低減するために、第1磁石部は第1永久磁石の周囲に磁気シールドを形成したものであってもよい。第2永久磁石の周囲に漏洩する磁界を低減するために、第2磁石部は第2永久磁石の周囲に磁気シールドを形成したものであってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のN極同士が対向しS極同士が対向するように配置されたが、これに限定されない。第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のN極同士が内側で対向し、それぞれのS極が外側にくるように配置されてもよい。また、第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のS極同士が内側で対向し、それぞれのN極が外側にくるように配置されてもよい。
【0082】
第2磁石部に第2ピンを挿通するための貫通孔は、1つでもよい。この場合、第2磁石部には1つの第2ピンが取り付けられる。
【0083】
この発明は、膝関節だけではなく、足関節、股関節、手関節、肘関節などの任意の関節に適用できる。
【0084】
直線状の第2孔は、連結部本体や第2連結部に2つ以上形成されてもよい。この場合、複数の第2孔はたとえば並置するように形成される。
【0085】
この発明に係る創外固定器は、関節の両側に装着されてもよい。
【0086】
取付部材などの可動部分を除く創外固定器の全体を、樹脂などのカバーによって覆うようにしてもよい。この場合、創外固定器を埃などから保護し、創外固定器が汚れることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0087】
10,10a,10b 創外固定器
12a,12b,12c ピン
14,70 第1磁石部
14a,20a,70a,76a 凸部
16,50,72 第2磁石部
16a,28a,50a,72a,80a 凹部
18,26,56,74,78 ホルダ
20,76 第1永久磁石
22,30,60 蓋
28,80 第2永久磁石
34,62,82 連結部材
36,64 連結部本体
36c,36d,64a,64b,64c,84c,90a 長孔
38a,38b,38c,88a,88b 取付部材
40a,40b,66a,66b,66c,66d,94a,94b 固定部材
84 第1連結部
84d ボール部
86 第2連結部
92 保持部
A 膝関節
B,C 骨部
【技術分野】
【0001】
この発明は創外固定器に関し、より特定的には、関節軟骨損傷の治療に用いられる創外固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な関節軟骨損傷の治療は、欠損部にドリルやオウルで小さな穴をあけ、骨髄からの出血を促し、骨髄間葉系幹細胞を関節内に誘導する方法が一般的であるが、術後早期から損傷部へ荷重を加えることは幼弱な組織に損傷を与える可能性がある。
【0003】
このような関節軟骨損傷の治療に用いられる創外固定器の一例が、特許文献1において開示されている。この創外固定器は、ボールジョイントやギアボックスを備え、損傷部を保護するために、関節を挟んで関節の両側を機械的に固定して関節を離間させ、損傷部への荷重を軽減する。そして、この創外固定器を装着した状態で関節を運動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−345837
【特許文献2】特開2005−245470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された創外固定器は、部品数が多く構造が複雑である。
【0006】
また、特許文献2において、磁石を含む創外固定器が開示されている。しかし、この創外固定器は、第1の骨部と第2の骨部とに固定される一対の磁性体部が互いに引き合うように装着されており、関節を離間させて関節軟骨損傷の治療を行う場合に用いることはできない。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、部品数が少なく構造が簡単でありながら、関節を離間させて関節軟骨損傷の治療を行うことができる、創外固定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の創外固定器は、関節両側の第1骨部と第2骨部とを固定する創外固定器であって、第1骨部に取り付けられる第1ピンと、第2骨部に取り付けられる第2ピンと、第1永久磁石を含みかつ第1ピンに取り付けられる第1磁石部と、第2永久磁石を含みかつ第2ピンに取り付けられる第2磁石部とを備え、第1磁石部は、第1ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部を有し、第2磁石部は、第2ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部を有し、第1磁石部と第2磁石部とは、凸部と凹部とが対向しかつ第1永久磁石および第2永久磁石の同極が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の創外固定器は、請求項1に記載の創外固定器において、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できるように第1磁石部と第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の創外固定器は、請求項2に記載の創外固定器において、連結部材は、円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体と、第1磁石部に対して連結部本体を相対的に揺動できるように第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、第2磁石部に対して連結部本体を相対的に進退できるように第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の創外固定器は、請求項3に記載の創外固定器において、連結部本体は略Y字状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の創外固定器は、請求項3に記載の創外固定器において、連結部本体は、第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、第3孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の創外固定器は、請求項5に記載の創外固定器において、連結部本体は略扇状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の創外固定器は、請求項1に記載の創外固定器において、第1磁石部の凸部はさらに、第1ピンの長手方向の断面が凸状に形成され、第2磁石部の凹部はさらに、第2ピンの長手方向の断面が凹状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の創外固定器は、請求項7に記載の創外固定器において、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できるように第1磁石部と第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の創外固定器は、請求項8に記載の創外固定器において、連結部材は、円弧状の第1孔を有する第1連結部と、直線状の第2孔を有しかつ第1連結部に接続される第2連結部と、第1磁石部に対して第1連結部を相対的に揺動できるように第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、第2磁石部に対して第2連結部を相対的に進退できるように第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含み、第1連結部に対して第2連結部を相対的に揺動できるように第1連結部と第2連結部とは接続されていることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の創外固定器では、第1ピンに取り付けられる第1磁石部と第2ピンに取り付けられる第2磁石部とは、第1永久磁石および第2永久磁石の同極が対向するように配置されているので、相互に反発し合い、第1骨部と第2骨部、すなわち関節の軟骨部分を離間させることができる。また、第1磁石部と第2磁石部とは、凸部と凹部とが対向するように配置されているので、相互に干渉することなく、相互間の変位が円滑になる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、関節を円滑に運動させることができ、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる。また、第1永久磁石と第2永久磁石との反発力を利用することによって、創外固定器を少ない部品点数で簡単に構成できる。
【0018】
請求項2に記載の創外固定器では、第1磁石部と第2磁石部とを連結部材で連結することによって、第1磁石部および第2磁石部の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できる。したがって、創外固定器を関節に安定して装着でき、かつ関節を円滑に運動でき創外固定器を良好に使用できる。
【0019】
請求項3に記載の創外固定器では、連結部本体は円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有し、第1磁石部に対して連結部本体を相対的に揺動できるように第1取付部材は第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられ、第2磁石部に対して連結部本体を相対的に進退できるように第2取付部材は第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる。これにより、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に進退および揺動できる。すなわち、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に2次元変位できる構成を、容易に得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の創外固定器では、連結部本体を略Y字状に形成することによって、円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体を、軽量かつコンパクトに構成することができる。
【0021】
請求項5に記載の創外固定器では、連結部本体は、第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、第3孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含む。これによって、第1磁石部に対する連結部本体の相対的な揺動を妨げることなく、連結部本体を第1磁石部により安定して取り付けることができる。
【0022】
請求項6に記載の創外固定器では、連結部本体を略扇状に形成することによって、第1孔〜第3孔を有する強固な連結部本体を容易に得ることができる。
【0023】
請求項7に記載の創外固定器では、第1磁石部の凸部は、第1ピンの長手方向の断面および当該長手方向に直交する断面がともに凸状に形成され、第2磁石部の凹部は、第2ピンの長手方向の断面および当該長手方向に直交する断面がともに凹状に形成されている。このような凸部と凹部とが対向するように第1磁石部と第2磁石部とを配置すると、第1磁石部と第2磁石部とは、相互に干渉することなく相互間の3次元的変位が可能となる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、関節の自由な動きが可能となり関節をさらに円滑に運動させることができる。
【0024】
請求項8に記載の創外固定器では、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できるように構成されている連結部材によって、第1磁石部と第2磁石部とが連結される。これによって、第1磁石部および第2磁石部の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できる。
【0025】
請求項9に記載の創外固定器では、第1磁石部に対して第1連結部を相対的に揺動できるように第1取付部材が円弧状の第1孔に挿通されて第1磁石部に取り付けられ、第2磁石部に対して第2連結部を相対的に進退できるように第2取付部材が直線状の第2孔に挿通されて第2磁石部に取り付けられる。さらに、第1連結部に対して第2連結部を相対的に揺動できるように第1連結部と第2連結部とは接続される。これにより、簡単な構成で、第1磁石部に対して第2磁石部を相対的に3次元変位できる。すなわち、第1磁石部に対して第2磁石部を、相対的に進退できるとともに上下方向および左右方向に揺動できる構成を、容易に得ることができる。
【0026】
なお、2次元変位とは、2次元的(平面的)に位置を変えることをいう。
【0027】
3次元変位とは、3次元的(立体的)に位置を変えることをいう。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、部品点数が少なく構造が簡単でありながら、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる、創外固定器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)はこの発明の一実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図2】図1の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図3】第1磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は第1磁石部に含まれるホルダを示す平面図、(b)はその縦断面図、(c)はその底面図である。
【図5】第2磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図6】(a)は第2磁石部に含まれるホルダを示す平面図、(b)はその側面図、(c)はその底面図である。
【図7】膝を曲げるときの膝関節と創外固定器とを示す図解図であり、(a)は膝を曲げていない状態、(b)は膝を90°曲げた状態、(c)は膝を120°曲げた状態である。
【図8】(a)はこの発明の他の実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図9】図8の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図10】図8の創外固定器に含まれる第2磁石部の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図11】(a)はこの発明のその他の実施形態に係る創外固定器を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【図12】図11の創外固定器の主な構成要素を示す分解斜視図である。
【図13】図11の創外固定器における第1磁石部と第2磁石部との位置関係を示す断面図解図である。
【図14】図11の創外固定器に含まれる第1磁石部を示す斜視図である。
【図15】図11の創外固定器に含まれるホルダを示す前方斜視図である。
【図16】(a)は図11の創外固定器に含まれる第2磁石を示す前方斜視図であり、(b)はその後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1および図2を参照して、創外固定器10は、ピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12a〜12cはそれぞれ棒状に形成されている。ピン12a〜12cは、生体適合性に優れたチタンを含むことが好ましい。ピン12aには、第1磁石部14が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部16が取り付けられている。
【0031】
図2に示すように、第1磁石部14は、円柱状に形成されており、その側面が横断面円弧状の凸部14aとなる。すなわち、第1磁石部14は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部14aを有する。
【0032】
図3を参照して、第1磁石部14は、ホルダ18と、第1永久磁石20と、蓋22とを含む。図4をも参照して、ホルダ18は、好ましくはアルミニウムなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空円筒状に形成され、外筒部18aと内筒部18bとを有する。外筒部18aと内筒部18bとは同心上に形成され、内筒部18bには軸方向に延びる貫通孔18cが形成されている。外筒部18aには、蓋22を取り付けるための4つのねじ孔18dが形成されている。ホルダ18の内部空間18eは、第1永久磁石20と略同形状に形成されている。第1永久磁石20は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第1永久磁石20は、円柱状に形成されている。したがって、第1永久磁石20の側面は、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部20aを有する。第1永久磁石20は、その中央に軸方向に貫通する中空部20bを有する。第1永久磁石20は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ18に収納される。第1永久磁石20が収納されたホルダ18の上面には、蓋22が取り付けられる。蓋22は、好ましくはSUS304からなり、円板状に形成されている。蓋22の中央に貫通孔22aが形成され、蓋22の縁には4つのねじ孔22bが形成されている。また、蓋22には、固定部材40a,40b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔22cと、取付部材38a(後述)を取り付けるためのねじ孔22dとが形成されている。4つのねじ24をそれぞれ、対応するねじ孔22bおよび18dに螺入することによって、ホルダ18に蓋22が固定される。このような第1磁石部14の貫通孔18cおよび22aに、ピン12aが挿通されて、第1磁石部14にピン12aが取り付けられる。
【0033】
図2に示すように、第2磁石部16は、横断面円弧状の凹部16aを有する。すなわち、第2磁石部16は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部16aを有する。
【0034】
図5を参照して、第2磁石部16は、ホルダ26と、第2永久磁石28と、蓋30とを含む。図6をも参照して、ホルダ26は、好ましくはアルミニウムなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空状に形成されている。ホルダ26は、外壁部26aを有し、外壁部26aには、蓋30を取り付けるための4つのねじ孔26bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔26cとが形成されている。ホルダ26の内部空間26dは、第2永久磁石28と略同形状に形成されている。第2永久磁石28は、略U字状に形成されている。第2永久磁石28は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部28aを有する。第2永久磁石28は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第2永久磁石28は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ26に収納される。第2永久磁石28が収納されたホルダ26の上面には、蓋30が取り付けられる。蓋30は、好ましくはSUS304からなり、板状に形成されている。蓋30の縁には4つのねじ孔30aが形成されている。また、蓋30には、固定部材40a,40bを取り付けるための2つのねじ孔30bと、取付部材38b(後述)を取り付けるためのねじ孔30cと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔30dとが形成されている。4つのねじ32をそれぞれ、対応するねじ孔30aおよび26bに螺入することによって、ホルダ26に蓋30が取り付けられる。このような第2磁石部16の貫通孔26c,30dに、対応するピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部16に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0035】
図1に戻って、第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材34によって連結されている。
【0036】
図2に示すように、連結部材34は、連結部本体36と2つの取付部材38a,38bとを含む。連結部本体36は、略Y字状に形成され、湾曲部36aと直線部36bとを有し、湾曲部36aに円弧状の長孔36cが形成され、直線部36bに直線状の長孔36dが形成されている。取付部材38a,38bはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなる。第1磁石部14ひいては第1永久磁石20に対して連結部本体36を相対的に揺動できるように、取付部材38aが長孔36cに挿通されて蓋22に取り付けられる。第2磁石部16ひいては第2永久磁石28に対して連結部本体36を相対的に進退できるように、取付部材38bが長孔36dに挿通されて蓋30に取り付けられる。このとき、取付部材38aは蓋22の上面から突出し、取付部材38bは蓋30の上面から突出している。図1(a)に示すように、第1磁石部14に対して連結部本体36を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部16に対して連結部本体36を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、連結部材34は、第1磁石部14および第2磁石部16の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0037】
また、第1磁石部14と第2磁石部16とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す2つの固定部材40a,40bによって連結されている。各固定部材40a,40bは、たとえば金属からなり短冊状に形成されている。固定部材40aは、2つのねじ孔42aを有し、固定部材40bは、2つのねじ孔42bを有する。ねじ44を一方のねじ孔42aとねじ孔22cとに螺入することによって、固定部材40aが蓋22に取り付けられ、ねじ44を他方のねじ孔42aとねじ孔30bとに螺入することによって、固定部材40aが蓋30に取り付けられる。また、ねじ44を一方のねじ孔42bとねじ孔22cとに螺入することによって、固定部材40bが蓋22に取り付けられ、ねじ44を他方のねじ孔42bとねじ孔30bとに螺入することによって、固定部材40bが蓋30に取り付けられる。
【0038】
このような創外固定器10は、次のようにして関節に装着される。
ここでは、創外固定器10を、膝関節Aの両側の骨部BとCとに取り付け、骨部BとCとを固定する場合について説明する(図7参照)。
【0039】
まず、大腿部側の骨部Bに1つの貫通孔が、下腿部側の骨部Cに2つの貫通孔が、それぞれたとえばドリルによってあけられる。これらの貫通孔は、創外固定器10のピン12a〜12cに対応する位置に、かつ相互に平行に形成される。骨部Bにあけられる貫通孔は、膝関節Aの回転中心となる位置に形成される。
【0040】
ついで、創外固定器10が組み立てられた状態で、骨部Bの貫通孔にピン12aが挿通されて骨部Bにピン12aが取り付けられ、骨部Cの2つの貫通孔にピン12b,12cが挿通されて骨部Cにピン12b,12cが取り付けられる。ピン12aが骨部Bに、ピン12b,12cが骨部Cに、それぞれ確実に固定されたことを確認した後、4つのねじ44が取り外されて、2つの固定部材40a,40bが蓋22および30から取り外される。すると、創外固定器10は、第1磁石部14と第2磁石部16とが連結部材34によって連結された状態で、膝関節Aに装着された状態となる。膝関節Aに装着された創外固定器10では、たとえば患者が直立した状態で第1磁石部14と第2磁石部16との間に略7kgの反発力が働く。
【0041】
このようにして創外固定器10を装着した状態で膝を曲げていく場合について、図7(a)〜(c)を参照して説明する。
図7(a)に示すように膝を曲げていない状態では、骨部B側に位置する取付部材38aは、連結部本体36の円弧状の長孔36cの一端(図7(a)では右端)に位置し、骨部C側に位置する取付部材38bは、連結部本体36の直線状の長孔36dの一端(図7(a)では上端)に位置する。
【0042】
ついで、図7(b)に示すように膝を90°曲げた状態では、取付部材38aは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36cの他端に向かって移動し、取付部材38bは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36dの他端に向かって移動する。すなわち、図7でいえば、湾曲部36aが蓋22の外周に沿って反時計回りに移動するように、連結部本体36および第2磁石部16がピン12aを中心として反時計回りに揺動し、湾曲部36aと取付部材38aとの位置関係が変化する。それとともに、取付部材38bが直線部36bの長孔36dの他端に向かって移動するように、第2磁石部16が第1磁石部14から離れていく。
【0043】
さらに、図7(c)に示すように膝を120°曲げた状態では、取付部材38aは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36cの他端まで移動し、取付部材38bは、連結部本体36に対して相対的に、長孔36dの他端まで移動する。すなわち、図7でいえば、湾曲部36aが蓋22の外周に沿って反時計回りにさらに移動するように、連結部本体36および第2磁石部16がピン12aを中心として反時計回りにさらに揺動し、取付部材38aが長孔36cの他端に係合する。それとともに、取付部材38bが長孔36dの他端に係合されるまで、第2磁石部16が第1磁石部14から離れる。
【0044】
このように膝を0°から120°まで曲げるとき、骨部Bと骨部Cとが離れた状態を保つように、第1磁石部14と第2磁石部16との間隔が調整される。
【0045】
創外固定器10によれば、ピン12aに取り付けられる第1磁石部14とピン12b,12cに取り付けられる第2磁石部16とは、第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向するように配置されているので、相互に反発し合い、骨部BとC、すなわち膝関節Aの軟骨部分を離間させることができる。また、第1磁石部14と第2磁石部16とは、凸部14aと凹部16aとが対向するように配置されているので、相互に干渉することなく、相互間の変位が円滑になる。したがって、損傷部である軟骨再生部への荷重を軽減した状態で、膝関節Aを円滑に運動させることができ、広範な関節軟骨損傷の治療に用いることができる。また、第1永久磁石20と第2永久磁石28との反発力を利用することによって、創外固定器10を少ない部品点数で簡単に構成できる。
【0046】
創外固定器10のように、凸部14aと凹部16a、ひいては凸部20aと凹部28aとの対向面積を大きくすることによって、第1磁石部14と第2磁石部16との反発力を大きくできる。したがって、第1磁石部14および第2磁石部16が小さくても十分な反発力を得ることができ、創外固定器10を小さく形成できる。また、膝の屈伸等によって膝関節Aを運動させた場合にも大きな反発力を得ることができ、膝関節Aの自由な動きに対応することができる。
【0047】
第1磁石部14と第2磁石部16とを連結部材34で連結することによって、第1磁石部14および第2磁石部16の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できる。したがって、創外固定器10を膝関節Aに安定して装着でき、かつ膝関節Aを円滑に運動でき創外固定器10を良好に使用できる。
【0048】
連結部本体36は円弧状の長孔36cおよび直線状の長孔36dを有し、第1磁石部14に対して連結部本体36を相対的に揺動できるように取付部材38aは長孔36cに挿通されて第1磁石部14に取り付けられる。また、第2磁石部16に対して連結部本体36を相対的に進退できるように取付部材38bは長孔36dに挿通されて第2磁石部16に取り付けられる。これにより、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に進退および揺動できる。すなわち、第1磁石部14に対して第2磁石部16を相対的に2次元変位できる構成を、容易に得ることができる。
【0049】
連結部本体36を略Y字状に形成することによって、円弧状の長孔36cおよび直線状の長孔36dを有する連結部本体36を、軽量かつコンパクトに構成することができる。
【0050】
ついで、図8に、この発明の他の実施形態に係る創外固定器10aを示す。なお、創外固定器10と同様の構成要素については重複する説明は省略する。
【0051】
創外固定器10aは、創外固定器10と同様のピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12aには、創外固定器10と同様の第1磁石部14が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部50が取り付けられている。なお、創外固定器10aでは、第1磁石部14に含まれる蓋22の貫通孔22cは、取付部材38c(後述)を取り付けるための孔となる。
【0052】
図9に示すように、第2磁石部50は、横断面円弧状の凹部50aを有する。すなわち、第2磁石部50は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部50aを有する。
【0053】
図10を参照して、第2磁石部50は、ホルダ56と、創外固定器10と同様の第2永久磁石28と、蓋60とを含む。ホルダ56の外形は、ホルダ26の外形より大きく形成されている。ホルダ56は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、上面開口の中空状に形成されている。ホルダ56は、外壁部56aを有し、外壁部56aには、蓋60を取り付けるための4つのねじ孔56bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つのねじ孔56cとが形成されている。ホルダ56の内部空間56dは、第2永久磁石28と略同形状に形成されている。第2永久磁石28は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ56に収納される。第2永久磁石28が収納されたホルダ56の上面には、蓋60が取り付けられる。蓋60は、蓋30より大きく形成されている。蓋60は、好ましくはSUS304からなり、板状に形成されている。蓋60の縁には4つのねじ孔60aが形成されている。また、蓋60には、取付部材38bを取り付けるためのねじ孔60bと、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔60cとが形成されている。4つのねじ32をそれぞれ、対応するねじ孔60aおよび56bに螺入することによって、ホルダ56に蓋60が取り付けられる。このような第2磁石部50の貫通孔56c,60cに、対応するピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部50に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0054】
第1磁石部14と第2磁石部50とは、凸部14aと凹部50aとが対向しかつ第1永久磁石20および第2永久磁石28の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材62によって連結されている。
【0055】
図9に示すように、連結部材62は、連結部本体64と3つの取付部材38a,38bおよび38cとを含む。
【0056】
連結部本体64は、略扇状に形成され、一方側に2つの円弧状の長孔64a,64bが形成され、他方側に直線状の長孔64cが形成されている。長孔64aと64bとは、同一円弧上に位置し、かつ相互に逆方向に湾曲している。取付部材38a〜38cはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなる。第1磁石部14ひいては第1永久磁石20に対して連結部本体64を相対的に揺動できるように、取付部材38aが長孔64bに挿通されて蓋22に取り付けられ、取付部材38cが長孔64aに挿通されて蓋22に取り付けられる。また、第2磁石部50ひいては第2永久磁石28に対して連結部本体64を相対的に進退できるように、取付部材38bが長孔64cに挿通されて蓋60に取り付けられる。このとき、取付部材38a,38cは蓋22の上面から突出し、取付部材38cは蓋60の上面から突出している。図8(a)に示すように、第1磁石部14に対して連結部本体64を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部50に対して連結部本体64を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、連結部材62は、第1磁石部14および第2磁石部50の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部14に対して第2磁石部50を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0057】
また、図8を参照して、第1磁石部14と第2磁石部50とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す4つの固定部材66a,66b,66cおよび66dによって保持されている。各固定部材66a〜66dは、たとえばステンレスなどの非磁性金属からなり短冊状に形成されている。固定部材66a〜66dを枠状に組み立てて、4つのピン66eによって相互に連結し、第1磁石部14および第2磁石部50を四方から挟みつける。これによって、第1磁石部14と第2磁石部50とが相互に離れる方向に移動することを防止できる。そして、創外固定器10aを膝関節Aに装着した後、ピン66eをはずして固定部材66a〜66を取り外すと、反発力によって第1磁石部14と第2磁石部50とが相互に離れる方向に移動する。
【0058】
このような創外固定器10aによれば、連結部本体64は、長孔64bと同一円弧上に位置する円弧状の長孔64aと、長孔64aに挿通されて第1磁石部14に取り付けられる取付部材38cとをさらに含む。これによって、第1磁石部14に対する連結部本体64の相対的な揺動を妨げることなく、連結部本体64を第1磁石部14により安定して取り付けることができる。
【0059】
連結部本体64を略扇状に形成することによって、長孔64a,64bおよび64cを有する強固な連結部本体64を容易に得ることができる。
【0060】
なお、創外固定器10aに含まれる連結部本体64において、長孔64aと64bとは、同一円弧上に位置する場合に限定されず、同心上に位置していてもよい。
【0061】
さらに、図11に、この発明のその他の実施形態に係る創外固定器10bを示す。
創外固定器10bは、創外固定器10と同様のピン12a,12bおよび12cを含む。ピン12aには、第1磁石部70が取り付けられ、ピン12b,12cには、第2磁石部72が取り付けられている。
【0062】
図12および図13に示すように、第1磁石部70は、その上下両外周縁が面取りされ、略円柱状に形成されている。第1磁石部70の側面が、横断面円弧状かつ縦断面凸状の凸部70aとなる。すなわち、第1磁石部70は凸部70aを有し、凸部70aは、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状で、ピン12aの長手方向の断面が凸状に形成されている。
【0063】
第1磁石部70は、ホルダ74と、第1永久磁石76とを含む。
【0064】
ホルダ74は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、中空円筒状に形成され、ホルダ部74aと74bとを含む2分割構造に形成されている。ホルダ部74aの中央およびホルダ部74bの中央にはそれぞれ、軸方向に延びる貫通孔74cおよび74dが形成されている。また、ホルダ部74aの上面には、固定部材94a,94b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔74eと、取付部材88a(後述)を取り付けるためのねじ孔74fとが形成されている。ホルダ74の内部空間は、第1永久磁石76と略同形状に形成されている。
【0065】
第1永久磁石76は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。図13および図14を参照して、第1永久磁石76は、その両端外周縁が面取りされ、略円柱状に形成されている。したがって、第1永久磁石76の側面には、ピン12aの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部76aが形成されている。さらに、凸部76aは、ピン12aの長手方向の断面が凸状に形成されている。第1永久磁石76は、その中央に軸方向に貫通する中空部76bを有する。第1永久磁石76は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ74に収納される。このような第1磁石部70の貫通孔74cおよび中空部76bに、ピン12aが挿通されて、第1磁石部70にピン12aが取り付けられる。
【0066】
図13および図15に示すように、第2磁石部72は、横断面および縦断面がともに円弧状の凹部72aを有する。すなわち、第2磁石部72は凹部72aを有し、凹部72aは、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状で、ピン12aの長手方向の断面が凹状に形成されている。
【0067】
第2磁石部72は、ホルダ78と、第2永久磁石80とを含む。
【0068】
ホルダ78は、好ましくはアルミニウムやチタンなどの非磁性の金属部材からなり、中空状に形成され、ホルダ部78aと78bとを含む2分割構造に形成されている。ホルダ部78bには、ピン12b,12cを取り付けるための2つの貫通孔78cが形成されている。2つの貫通孔78cは軸方向に延びている。また、ホルダ部78bの上面には、取付部材88b(後述)を取り付けるためのねじ孔78dが形成されている。ホルダ部78aの上面には、固定部材94a,94b(後述)を取り付けるための2つのねじ孔78eが形成されている。ホルダ78の内部空間は、第2永久磁石80と略同形状に形成されている。
【0069】
図16を参照して、第2永久磁石80は、略U字状に形成されている。第2永久磁石80は、ピン12b,12cの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部80aを有する。さらに、凹部80aは、ピン12b,12cの長手方向の断面が凹状に形成されている。第2永久磁石80は、好ましくはR−Fe―B系焼結磁石(Rは希土類元素)である。第2永久磁石80は、上部がN極、下部がS極の状態で、ホルダ78に収納される。このような第2磁石部80の2つの貫通孔78cに、ピン12b,12cが挿通されて、第2磁石部80に2つのピン12b,12cが取り付けられる。
【0070】
図11に戻って、第1磁石部70と第2磁石部72とは、凸部70aと凹部72aとが対向しかつ第1永久磁石76および第2永久磁石80の同極が対向する(同極が同じ側に位置する)ように配置され、連結部材82によって連結されている。
【0071】
図12に示すように、連結部材82は、第1連結部84と第2連結部86と2つの取付部材88a,88bとを含む。
【0072】
第1連結部84は、平面視略Y字状に形成され、湾曲部84aと湾曲部84aから延びる直線部84bとを有する。湾曲部84aに円弧状の長孔84cが形成され、直線部84bの端部にボール部84dが形成されている。第2連結部86は、略L字状に形成され、直線部90と直線部90に接続される保持部92とを有する。直線部90には、直線状の長孔90aが形成されている。保持部92は、第1部92aと第2部92bとを含む2分割構造に形成され、ボール部84dを受ける凹部92cを有する(図11参照)。この実施形態では、ボール部84dと、凹部92cを有する保持部92とによって、ボールジョイントが形成されている。すなわち、第1連結部84と第2連結部86とはボールジョイントによって接続されている。
【0073】
取付部材88a,88bはたとえば六角穴付きボルトなどのボルトからなり、取付部材88aは取付部材88bより長く形成されている。第1磁石部70ひいては第1永久磁石76に対して第1連結部84を相対的に揺動できるように、取付部材88aが長孔84cに挿通されてホルダ部74aに取り付けられる。第2磁石部72ひいては第2永久磁石80に対して第2連結部86を相対的に進退できるように、取付部材88bが長孔90aに挿通されてホルダ部78bに取り付けられる。このとき、取付部材88aはホルダ部74aの上面から突出し、取付部材88bはホルダ部78bの上面から突出している。図11(a)に示すように、第1磁石部70に対して第1連結部84を相対的に矢印X方向に揺動でき、第2磁石部72に対して第2連結部86を相対的に矢印Y方向に進退できる。このようにして、第1連結部84および第2連結部86は、第1磁石部70および第2磁石部72の同極側の表面に取り付けられ、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に2次元変位できるように構成されている。
【0074】
さらに、第1連結部84と第2連結部86とはボールジョイントによって接続されているので、第1連結部84に対して第2連結部86は、任意の方向に揺動できる。したがって、第1連結部84に対して前記第2連結部は、少なくとも図11(b)に示す矢印Z方向に相対的に揺動できる。したがって、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。
【0075】
また、第1磁石部70と第2磁石部72とは、相互間に働く反発力によって動かないように、装着後に取り外す2つの固定部材94a,94bによって連結されている。各固定部材94a,94bは、たとえば金属からなり短冊状に形成されている。2つのねじ44によって固定部材94aがホルダ部74aとホルダ部78aとに取り付けられ、第1磁石部70と第2磁石部72とが固定部材94aによって連結される。また、2つのねじ44によって固定部材94bがホルダ部74aとホルダ部78aとに取り付けられ、第1磁石部70と第2磁石部72とが固定部材94bによって連結される。
【0076】
このような創外固定器10bによれば、第1磁石部70の凸部70aは、ピン12aの長手方向の断面およびピン12aの長手方向に直交する断面がともに凸状に形成されている。また、第2磁石部72の凹部72aは、ピン12b,12cの長手方向の断面およびピン12b,12cの長手方向に直交する断面がともに凹状に形成されている。このような凸部70aと凹部72aとが対向するように第1磁石部70と第2磁石部72とを配置すると、第1磁石部70と第2磁石部72とは、相互に干渉することなく相互間の3次元的変位が可能となる。したがって、関節軟骨損傷部(軟骨再生部)への荷重を軽減した状態で、膝関節Aの自由な動きが可能となり膝関節Aをさらに円滑に運動させることができ、たとえば膝のひねりにも対応できる。
【0077】
第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できるように構成されている連結部材82によって、第1磁石部70と第2磁石部72とが連結される。これによって、第1磁石部70および第2磁石部72の位置を所望の範囲に保ちつつ第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。
【0078】
第1磁石部70に対して第1連結部84を相対的に揺動できるように取付部材88aが円弧状の長孔84cに挿通されて第1磁石部70に取り付けられ、第2磁石部72に対して第2連結部86を相対的に進退できるように取付部材88bが直線状の長孔90aに挿通されて第2磁石部72に取り付けられる。さらに、第1連結部84に対して第2連結部86を相対的に揺動できるように第1連結部84と第2連結部86とは接続される。これにより、簡単な構成で、第1磁石部70に対して第2磁石部72を相対的に3次元変位できる。すなわち、第1磁石部70に対して第2磁石部72を、相対的に進退できるとともに上下方向および左右方向に揺動できる構成を、容易に得ることができる。
【0079】
上述に実施形態において、第1磁石部および第1永久磁石は、半円柱状や球形に形成されてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、第1磁石部は第1永久磁石とホルダとを含んで構成されていたが、これに限定されない。第1磁石部は第1永久磁石に樹脂モールドを施したものであってもよい。また、第2磁石部は第2永久磁石とホルダとを含んで構成されていたが、これに限定されない。第2磁石部は第2永久磁石に樹脂モールドを施したものであってもよい。この場合、第1永久磁石および第2永久磁石の表面が傷つかず、錆びることなく保護される。また、第1永久磁石の周囲に漏洩する磁界を低減するために、第1磁石部は第1永久磁石の周囲に磁気シールドを形成したものであってもよい。第2永久磁石の周囲に漏洩する磁界を低減するために、第2磁石部は第2永久磁石の周囲に磁気シールドを形成したものであってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のN極同士が対向しS極同士が対向するように配置されたが、これに限定されない。第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のN極同士が内側で対向し、それぞれのS極が外側にくるように配置されてもよい。また、第1永久磁石と第2永久磁石とは、相互のS極同士が内側で対向し、それぞれのN極が外側にくるように配置されてもよい。
【0082】
第2磁石部に第2ピンを挿通するための貫通孔は、1つでもよい。この場合、第2磁石部には1つの第2ピンが取り付けられる。
【0083】
この発明は、膝関節だけではなく、足関節、股関節、手関節、肘関節などの任意の関節に適用できる。
【0084】
直線状の第2孔は、連結部本体や第2連結部に2つ以上形成されてもよい。この場合、複数の第2孔はたとえば並置するように形成される。
【0085】
この発明に係る創外固定器は、関節の両側に装着されてもよい。
【0086】
取付部材などの可動部分を除く創外固定器の全体を、樹脂などのカバーによって覆うようにしてもよい。この場合、創外固定器を埃などから保護し、創外固定器が汚れることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0087】
10,10a,10b 創外固定器
12a,12b,12c ピン
14,70 第1磁石部
14a,20a,70a,76a 凸部
16,50,72 第2磁石部
16a,28a,50a,72a,80a 凹部
18,26,56,74,78 ホルダ
20,76 第1永久磁石
22,30,60 蓋
28,80 第2永久磁石
34,62,82 連結部材
36,64 連結部本体
36c,36d,64a,64b,64c,84c,90a 長孔
38a,38b,38c,88a,88b 取付部材
40a,40b,66a,66b,66c,66d,94a,94b 固定部材
84 第1連結部
84d ボール部
86 第2連結部
92 保持部
A 膝関節
B,C 骨部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節両側の第1骨部と第2骨部とを固定する創外固定器であって、
前記第1骨部に取り付けられる第1ピンと、
前記第2骨部に取り付けられる第2ピンと、
第1永久磁石を含みかつ前記第1ピンに取り付けられる第1磁石部と、
第2永久磁石を含みかつ前記第2ピンに取り付けられる第2磁石部とを備え、
前記第1磁石部は、前記第1ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部を有し、
前記第2磁石部は、前記第2ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部を有し、
前記第1磁石部と前記第2磁石部とは、前記凸部と前記凹部とが対向しかつ前記第1永久磁石および前記第2永久磁石の同極が対向するように配置されている、創外固定器。
【請求項2】
前記第1磁石部に対して前記第2磁石部を相対的に2次元変位できるように前記第1磁石部と前記第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備える、請求項1に記載の創外固定器。
【請求項3】
前記連結部材は、
円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体と、
前記第1磁石部に対して前記連結部本体を相対的に揺動できるように前記第1孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、
前記第2磁石部に対して前記連結部本体を相対的に進退できるように前記第2孔に挿通されて前記第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含む、請求項2に記載の創外固定器。
【請求項4】
前記連結部本体は略Y字状に形成されている、請求項3に記載の創外固定器。
【請求項5】
前記連結部本体は、
前記第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、
前記第3孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含む、請求項3に記載の創外固定器。
【請求項6】
前記連結部本体は略扇状に形成されている、請求項5に記載の創外固定器。
【請求項7】
前記第1磁石部の前記凸部はさらに、前記第1ピンの長手方向の断面が凸状に形成され、
前記第2磁石部の前記凹部はさらに、前記第2ピンの長手方向の断面が凹状に形成されている、請求項1に記載の創外固定器。
【請求項8】
前記第1磁石部に対して前記第2磁石部を相対的に3次元変位できるように前記第1磁石部と前記第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備える、請求項7に記載の創外固定器。
【請求項9】
前記連結部材は、
円弧状の第1孔を有する第1連結部と、
直線状の第2孔を有しかつ前記第1連結部に接続される第2連結部と、
前記第1磁石部に対して前記第1連結部を相対的に揺動できるように前記第1孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、
前記第2磁石部に対して前記第2連結部を相対的に進退できるように前記第2孔に挿通されて前記第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含み、
前記第1連結部に対して前記第2連結部を相対的に揺動できるように前記第1連結部と前記第2連結部とは接続されている、請求項8に記載の創外固定器。
【請求項1】
関節両側の第1骨部と第2骨部とを固定する創外固定器であって、
前記第1骨部に取り付けられる第1ピンと、
前記第2骨部に取り付けられる第2ピンと、
第1永久磁石を含みかつ前記第1ピンに取り付けられる第1磁石部と、
第2永久磁石を含みかつ前記第2ピンに取り付けられる第2磁石部とを備え、
前記第1磁石部は、前記第1ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凸状の凸部を有し、
前記第2磁石部は、前記第2ピンの長手方向に直交する断面が円弧かつ凹状の凹部を有し、
前記第1磁石部と前記第2磁石部とは、前記凸部と前記凹部とが対向しかつ前記第1永久磁石および前記第2永久磁石の同極が対向するように配置されている、創外固定器。
【請求項2】
前記第1磁石部に対して前記第2磁石部を相対的に2次元変位できるように前記第1磁石部と前記第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備える、請求項1に記載の創外固定器。
【請求項3】
前記連結部材は、
円弧状の第1孔および直線状の第2孔を有する連結部本体と、
前記第1磁石部に対して前記連結部本体を相対的に揺動できるように前記第1孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、
前記第2磁石部に対して前記連結部本体を相対的に進退できるように前記第2孔に挿通されて前記第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含む、請求項2に記載の創外固定器。
【請求項4】
前記連結部本体は略Y字状に形成されている、請求項3に記載の創外固定器。
【請求項5】
前記連結部本体は、
前記第1孔と同一円弧上または同心上に位置する円弧状の第3孔と、
前記第3孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第3取付部材とをさらに含む、請求項3に記載の創外固定器。
【請求項6】
前記連結部本体は略扇状に形成されている、請求項5に記載の創外固定器。
【請求項7】
前記第1磁石部の前記凸部はさらに、前記第1ピンの長手方向の断面が凸状に形成され、
前記第2磁石部の前記凹部はさらに、前記第2ピンの長手方向の断面が凹状に形成されている、請求項1に記載の創外固定器。
【請求項8】
前記第1磁石部に対して前記第2磁石部を相対的に3次元変位できるように前記第1磁石部と前記第2磁石部とを連結する連結部材をさらに備える、請求項7に記載の創外固定器。
【請求項9】
前記連結部材は、
円弧状の第1孔を有する第1連結部と、
直線状の第2孔を有しかつ前記第1連結部に接続される第2連結部と、
前記第1磁石部に対して前記第1連結部を相対的に揺動できるように前記第1孔に挿通されて前記第1磁石部に取り付けられる第1取付部材と、
前記第2磁石部に対して前記第2連結部を相対的に進退できるように前記第2孔に挿通されて前記第2磁石部に取り付けられる第2取付部材とを含み、
前記第1連結部に対して前記第2連結部を相対的に揺動できるように前記第1連結部と前記第2連結部とは接続されている、請求項8に記載の創外固定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−157377(P2012−157377A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17034(P2011−17034)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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