説明

創薬用試料保管システム

【課題】
容器の収容容積を大きくすると共に、容器を保管ラックに収容した際に回転が規制される創薬用試料保管システムを提供すること。
【解決手段】
創薬用試料を封入する容器20及び該容器を行列状に複数本縦立収容する保管ラック10とを有する創薬用試料保管システムであって、前記容器の上部は、頭部が開放された多角筒断面形状に形成され、前記容器の下部は、回転規制する断面形状を持つ有底形状に形成され、前記保管ラックには、前記容器の下部形状に嵌合する挿通孔12が形成されていることを特徴とする創薬用試料保管システムにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究等の分野において、多数の試料を識別・保管するために使用される創薬用試料保管システムに関するものであり、さらに詳しくは、創薬用試料を封入する容器及び該容器を行列状に複数本縦立収容する保管ラックとを有する創薬用試料保管システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、創薬研究等の分野においては、試料を溶解した溶液をマイクロチューブと呼ばれる円筒状容器に封入し、このマイクロチューブを格子状に区画された保管ラックに複数本、例えば、8行12列で96個に区画された保管ラックに垂直に並び立てて収容し、保管や搬送を行っていた。また、同じ大きさの保管ラックで、より小さいマイクロチューブ、すなわち、超マイクロチューブを収容するために、16行24列で384個の総区画数を有する保管ラックも知られている。(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2004−4070号公報(第11頁第1〜20行、図6)
【特許文献2】特許第3421252号公報(第2頁第5段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の超マイクロチューブは、標準規格サイズのマイクロチューブの底面サイズをほぼ1/4に縮小した形状をしているために、収容できる試料の容量を少なくせざるを得なかった。また、保管ラックで保持される容器下部が円筒形状をしているため容器が保管ラックの中で回転してしまい、容器に貼付した識別用コードの判別が困難であった。
【0004】
また、TAP(The Automation Partnership)社製のPicoTube(商品名)のような形状、すなわち、上部は四角筒断面形状で下部は円筒断面の有底形状である容器では、保管ラックの中央部に容器を孤立して縦立収納した場合、周辺にチューブがないため回転してしまう。回転してしまうと、その容器をアクチュエータなどを使って摘み上げする(ピッキングする)とき、容器を把持する面が一定方向を向いておらず把持できなかったり、把持できたとしてもピッキング動作途中で容器が落下したり、あるいは容器の姿勢が定まらなかったり、異常な方向を向いたりするといった問題があった。さらに、容器に貼り付けられた、または印字された2次元コードなどの容器データの読み取りが可能であったり、読み取り不良であったりと不安定であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、容器の収容容積を大きくすると共に、容器を保管ラックに収容した際に回転が規制される創薬用試料保管システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、創薬用試料を封入する容器及び該容器を行列状に複数本縦立収容する保管ラックとを有する創薬用試料保管システムであって、前記容器の上部は、頭部が開放された多角筒断面形状に形成され、前記容器の下部は、回転規制する断面形状を持つ有底形状に形成され、前記保管ラックには、前記容器の下部形状に嵌合する穴が形成されている構成としたことによって、上記の課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、保管ラックに形成された穴が、貫通していると共に、容器を支持できる大きさ及び形状としたことによって、上記の課題をさらに解決するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の断面形状を、円筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状をしていることによって、上記の課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の断面形状を、四角筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状としたことによって、上記の課題を解決するものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の形状を、逆角錐状または逆偏心角錐状あるいは逆偏心円錐状としたことによって、上記の課題を解決するものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器の下方から臨める面に2次元コードを貼付または、印字したことによって、上記の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、創薬用試料を封入する容器及び該容器を行列状に複数本縦立収容する保管ラックとを有する創薬用試料保管システムであって、前記容器の上部は、頭部が開放された多角筒断面形状に形成され、前記容器の下部は、回転規制する断面形状を持つ有底形状に形成され、前記保管ラックには、前記容器の下部形状に嵌合する穴が形成されている構成としたことによって、容器の収容容積を大きくすることができると共に、容器を保管ラックに収容した際に容器の回転を規制することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、保管ラックに形成された穴が、貫通していると共に、容器を支持できる大きさ及び形状としたことによって、容器の摘み上げ(ピッキング)の際に、所望の容器のみを保管ラックに形成された穴を介して真上に突き上げることが可能になり、ピッキングの信頼性が向上する。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の断面形状を、円筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状をしていることによって、容器を保管ラックに収容した際に容器の回転規制をより確実にすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の断面形状を、四角筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状としたことによって、容器を保管ラックに収容した際に容器の回転規制をより確実にすることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器下部の形状を、逆角錐状または逆偏心角錐状あるいは逆偏心円錐状としたことによって、容器を保管ラックに収容する際に、高い位置決め精度を必要とすることなく、確実に容器を保管ラックの挿通孔に差し込むことができると共に、容器の回転規制を確実に行うことができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5に記載の創薬用試料保管システムの構成に加えて、前記容器の下方から臨める面に2次元コードを貼付または、印字したことによって、個々の容器を識別することが可能になる。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施の形態の一例について図1乃至図5に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例である創薬用試料保管システムを構成する保管ラック10に、2本の容器20を縦立収容したものの斜視図であり、図2は、その上面図を示している。図3は、図2のA部を拡大した図である。なお、図1乃至図3においては、保管ラック10の挿通孔12を3行分だけ図示し、その他については、図示を割愛している。図4は、容器20の斜視図であり、図5(a)は、図4に示した容器20の上面図であり、図5(b)は、容器20の側面図であり、図5(c)は、容器20の下面図である。
【0019】
この容器20は、図4に斜視図として示されているように、上部20aが、頭部20cが開放された四角筒断面形状を有しており、下部20bが、円筒断面形状でない、すなわち回転を規制する有底形状をしている。下部20bの形状は、具体的には、図5(c)に示したように、円筒形の一部に略90度の角を持つような形状をしている。そして、この底面20dに、正方形状のデータマトリックスと呼ばれる2次元コード30が、上部20aの四角筒断面形状と同じ向きに貼付されている。一方、保管ラック10には、図2及び図3に示したように容器20の下部20bの形状に嵌合するように挿通孔12が格子状に形成されている。前記挿通孔12は、容器20の下部20bと嵌合するとともに、下部20bよりも若干大きな形状を有する上部20aを確実に支持できる大きさ及び形状を有している。
【0020】
このような容器20を保管ラック10の挿通孔12に縦立収容させることによって、容器20の向きが一方向に規制され、且つ、回転が防止される。また、上部20aが四角円筒断面形状を有しているため、円筒断面形状の場合に比べて、十分な容量を確保することが可能になる。なお、この実施例においては、容器20の下部20b形状を円筒形の一部に略90度の角を持つような形状としたが、容器の下部形状としては、上述したもの以外にも、円筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできる形状であれば、別の断面形状等であっても構わない。
【実施例2】
【0021】
本発明の実施の別の形態の一例について図6乃至図10に基づいて説明する。図6は、本発明の別の実施例である創薬用試料保管システムを構成する保管ラック110に、2本の容器120を縦立収容したものの斜視図であり、図7は、その上面図を示している。図8は、図7のB部を拡大した図である。なお、図6乃至図8においては、保管ラック110の挿通孔112を3行分だけ図示し、その他については、図示を割愛している。図9は、容器120の斜視図であり、図10(a)は、図9に示した容器120の上面図であり、図10(b)は、容器120の側面図であり、図10(c)は、容器120の下面図である。
【0022】
この容器120は、図9に斜視図として示されているように、上部120aが、頭部120cが開放された四角筒断面形状を有しており、下部120bが、円筒断面形状でない有底形状をしている。下部120bの形状は、具体的には、図10(c)に示したように、四角筒形の四隅を切り欠いてできるような、断面多角形状をしている。そして、この底面120dに、正方形状のデータマトリックスと呼ばれる2次元コード130が、上部120aの四角筒断面形状と同じ向きに貼付されている。一方、そして、保管ラック110には、容器120の下部120bの形状に嵌合するように挿通孔112が格子状に形成されている。前記挿通孔112は、容器120の下部120bと嵌合するとともに、下部120bよりも若干大きな形状を有する上部120aを確実に支持できる大きさ及び形状を有している。
【0023】
このような容器120を保管ラック110の挿通孔112に縦立収容させることによって、容器120の向きが四方向に規制される。すなわち、容器120を保管ラック110に収容した際に、隣接する容器120の上部120aを構成する面同士が向かい合う状態で収容され、且つ、容器120を保管ラック110に収容後は、その回転が防止される。また、上部120aが四角円筒断面形状を有しているため、円筒断面形状の場合に比べて、十分な容量を確保することが可能になる。
【0024】
なお、容器の下部形状としては、上述したもの以外にも、四角筒の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けた断面形状や、四角筒の角部に丸みを形成した断面形状等であっても構わない。
【0025】
また、本実施例1、2では、2次元コードとして、データマトリックスを使用しているが、これに限られることなくQRコード等の別の2次元コードの場合であっても同様の効果が奏される。
【実施例3】
【0026】
本発明の実施の別の形態として使用される容器の形状について図11及び図12に基づいて説明する。図11は、容器220の下部220bが図11(b)及び図11(C)に示したように頂点を切断した逆角錐状をしている。図12は、容器320の下部320bが図12(b)及び図12(C)に示したように頂点を切断した逆偏心角錐状をしている。このような形状の容器とすることによって、保管ラックの挿通孔に縦立収容させた場合に、下部220bが頂点を切断した逆角錐状である容器220の場合には、その向きを四方向に規制することが可能になり、下部320bが頂点を切断した逆偏心角錐状である容器320の場合には、その向きを一方向に規制することが可能になる。さらに、容器220、320の下部220b、320bが下方に向かうにしたがって、細くなっているため、保管ラックの挿通孔に縦立収容させる際に高精度の位置決め制御が必要なくなる。なお、図示はしていないが、容器の下部を逆偏心円錐状にした場合であっても、上記と同様に向きを一方向に回転規制できると共に、高精度の位置決め制御を要することなく挿通孔に縦立収容させることが可能になる。
【0027】
上述した実施例1乃至3に示した容器は、それぞれ、その頭部が開放された形状をしている。これらの容器を保管ラックに収容して、保管又は運搬する際には、保管ラックに容器を収容したまま各容器の開口部に一度にアルミニウムの薄膜シートを溶着により貼着した後に、各容器毎にカットして封止する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1による創薬用試料保管システムの斜視図である。
【図2】図1に示した創薬用試料保管システムの上面図である。
【図3】図2に示した創薬用試料保管システムのA部の拡大図である。
【図4】図1に示した創薬用試料保管システムに使用される容器の斜視図である。
【図5】図4に示した容器の上面図、側面図、下面図である。
【図6】実施例2である創薬用試料保管システムの斜視図である。
【図7】図6に示した創薬用試料保管システムの上面図である。
【図8】図7に示した創薬用試料保管システムのB部の拡大図である。
【図9】図6に示した創薬用試料保管システムに使用される容器の斜視図である。
【図10】図9に示した容器の上面図、側面図、下面図である。
【図11】実施例3における容器の上面図、側面図、下面図である。
【図12】実施例3における別の形態の容器の上面図、側面図、下面図である。
【符号の説明】
【0029】
10、110 ・・・ 保管ラック
12、112 ・・・ 挿通孔
20、120、220、320 ・・・ 容器
20a、120a、220a、320a ・・・ 上部
20b、120b、220b、320b ・・・ 下部
20c、120c、220c、320c ・・・ 頭部
20d、120d ・・・ 底部
30、130 ・・・ 2次元コード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
創薬用試料を封入する容器及び該容器を行列状に複数本縦立収容する保管ラックとを有する創薬用試料保管システムであって、
前記容器の上部は、頭部が開放された多角筒断面形状に形成され、
前記容器の下部は、回転規制する断面形状を持つ有底形状に形成され、
前記保管ラックには、前記容器の下部形状に嵌合する穴が形成されていること
を特徴とする創薬用試料保管システム。
【請求項2】
前記保管ラックに形成された前記穴が、貫通していると共に、前記容器を支持できる大きさ及び形状であること
を特徴とする請求項1に記載の創薬用試料保管システム。
【請求項3】
前記容器下部の断面形状が、円筒形の一部に切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状をしていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の創薬用試料保管システム。
【請求項4】
前記容器下部の断面形状が、四角筒形の一部を切り欠き、かつ/または突起を設けてできるような断面形状をしていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の創薬用試料保管システム。
【請求項5】
前記容器下部の形状が、逆角錐状または逆偏心角錐状あるいは逆偏心円錐状であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の創薬用試料保管システム。
【請求項6】
前記容器の下方から臨める面に2次元コードが貼付または、印字されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の創薬用試料保管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−208142(P2006−208142A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19558(P2005−19558)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(502327481)神戸バイオロボティクス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】