説明

力検出装置、自動ねじ締め装置および把持装置

【課題】 離れた距離の対象物から力センサに入力される外力を減衰することができる力検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 外力を検出する力センサと、力センサに外力を減衰させて入力する減衰機構を備えた力検出装置であって、減衰機構は、力センサの入力部に設けられた伝達部材と、一端が力センサの固定部に設けられた支持部材と、支持部材の他端に枢動可能に支持された可倒軸とを備え、可倒軸は伝達部材に屈曲可能に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力検出装置、自動ねじ締め装置および把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業用ロボットのロボットアームやロボットハンドには、手先部の作業動作を制御するための力センサが組み込まれている。
【0003】
図5に、従来の力センサ(特許文献1)を示す。特許文献1の力センサ500は、受力体510を備える外側箱状構造体500に、天板および側面に電極E1〜E9を配置した内側箱状構造体570を収容して、外側箱状構造体500と内側箱状構造体570の間に容量素子を形成し、受力体510に作用した外力を外側箱状構造体500に伝達させ、外側箱状構造体500の変位を静電容量値に基づいて検出するものである。
【0004】
また、図6に、力センサを用いた自動ねじ締め装置(特許文献2)を示す。特許文献2の自動ねじ締め装置600は、ロボットアーム先端605に取り付けられ、これに作用する外力を検出する力センサ612と、力センサ612に取り付けられ、螺合部品601を把持し軸心を中心に回転駆動する把持回転装置614と、力センサ612で検出した軸方向の外力が設定した押付力となるようにロボットアーム先端605を力制御する力制御装置616とを備える。
【0005】
また、図7に、力センサを用いた把持装置(特許文献3)を示す。特許文献3の把持装置700は、物体を把持するための弾性体740を備えた2本のフィンガ738と、2本のフィンガ738を互いに接近させて物体を把待させるモータ714と、フィンガ738に設けられ、フィンガ738で物体を杷持する力を検出する力センサ736と、物体が弾性体に近接し又は接触したことを検出する接触センサ742と、接触センサ742による検出に応答して、力センサ736の出力が設定値になるようにモータ714を制御するモータ制御手段726とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−301731号公報(平成16年10月28日公開)
【特許文献2】特開2010−264514号公報(平成22年11月25日公開)
【特許文献3】特開平4−275892号公報(平成4年10月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の力センサ500は、受力体510に過度の外力が作用すると、元の形状に復帰できなくなったり、構造体に亀裂が発生するなど、機械的な損傷を被る問題があった。
【0008】
また、特許文献2の自動ねじ締め装置600は、力センサ612と螺合部品601の間に把持回転装置614が介在し、力センサ612と螺合部品601の距離Lが長くなるため、螺合部品601の傾きなどにより先端に横方向の外力が働くと、力センサ612には、てこの作用により外力が増幅されて作用するため、力センサ612の損傷がより生じやすくなる問題があった。
【0009】
また、特許文献3の把持装置700も、把持する物体からの反力がフィンガ738を介して力センサ736に伝達されるため、力センサ736の損傷がより生じやすくなる問題があった。
【0010】
本発明は、離れた対象物から力センサに加わる横からの外力を減衰して測定することができる力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
外力を検出する力センサと、力センサに外力を減衰させて入力する減衰機構を備えた力検出装置であって、減衰機構は、力センサの入力部に設けられた伝達部材と、一端が力センサの固定部に設けられた支持部材と、支持部材の他端に枢動可能に支持された可倒軸とを備え、可倒軸は伝達部材に屈曲可能に接続されていることを特徴する。
【発明の効果】
【0012】
離れた距離の対象物から力センサに入力される外力を減衰して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の力検出装置の正面図である。
【図2】本発明の力検出装置に外力が加わったときの正面図である。
【図3】本発明の力検出装置を用いた自動ねじ締め装置の正面図である。
【図4】本発明の力検出装置を用いた把持装置の正面図である。
【図5】従来の力センサの断面図である。
【図6】従来の自動ねじ締め装置の構成図である。
【図7】従来のロボットハンド機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1の力検出装置100の正面図である。力検出装置100は、作業対象のワークWから外力を検出するための力センサ10と、力センサ10に外力を減衰させて入力する減衰機構20を備えている。
【0016】
力センサ10は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対して、各軸方向に与えられる力(Fx、Fy、Fz)と、各軸の回転方向に与えられるモーメント(Mx、My、Mz)の6成分を測定する6軸力センサや、これらのうち3成分を測定する3軸力センサなどである。
【0017】
力センサ10は、減衰された外力が入力される入力部10aと、基幹装置に固定される固定部10bを有し、外力によって入力部10aと固定部10bの間に生じる歪みを電気信号に変換して出力する。
【0018】
減衰機構20は、外力が印加されることにより傾倒する可倒軸21と、可倒軸21で減衰された外力を力センサ10の入力部10bに伝達する伝達部材22と、可倒軸21を支持する支持部材23を備えている。これらの可倒軸21、伝達部材22、支持部材23は、剛性を有する部材で形成されている。
【0019】
可倒軸21は、外力が印加される先端21aから後端21bまで、一本の軸状に形成されたものである。また、伝達部材22は、可倒軸21を接続する軸部22aが面部22bの中心に一体形成されたものである。
【0020】
そして、可倒軸21の後端21bと伝達部材22の軸部22aがユニバーサルジョイント25を介して屈曲可能に接続されており、伝達部材22の面部22bと力センサ10の入力部10bが全面で固定されている。
【0021】
支持部材23は、力センサ10の固定部10bに固定される基部23aと、基部23aから力センサ10の入力部10b下方に延びる腕部と、腕部先端に形成された支持部23bとからなる。支持部23bは、可倒軸21がぐらつかないように可倒軸21の先端21aと後端21bの間を支持するものであり、可倒軸21をx軸およびy軸周りに傾倒可能にするピロボール26と、可倒軸3をz軸で枢動可能にするロータリーブッシュ27が組み込まれている。
【0022】
上記の構成により、減衰機構20は、外力が印加されない状態で、可倒軸21が支持部23bにより伝達部材22の軸部22aと真直ぐになるように支持されており、先端21aに外力が印加されると、可倒軸21が支持部23bを中心に軸部22aに対して、x軸、y軸周りに傾倒するようになっている。
【0023】
図2は、外力が印加されたときの減衰機構20の動作を説明するための正面図である。図2に示すように、可倒軸21の先端21aに横方向の外力Fxが印加されると、可倒軸21は支持部23bが支点となって、可倒軸21の後端21bが外力Fxと反対方向に移動するため、可倒軸21と伝達部材22がユニバーサルジョイント25で屈曲して、可倒軸21が軸部22aに対して、x軸、y軸周りに傾倒した状態となる。
【0024】
図1の構成において、可倒軸21の先端21aから支持部23bまでの長さをL1とし、支持部23bからユニバーサルジョイント25までの長さをL2とし、ユニバーサルジョイント25から力センサ10の中心までの長さをL3とする。
【0025】
可倒軸21が傾倒しない従来の力センサの場合、先端21aに横方向の外力Fxが働いたとき、力センサ10に伝わるモーメントMは、モーメントM=Fx・(L1+L2+L3)となり、対象物から力センサ10までの距離(L1+L2+L3)が離れるほど、力センサ10に外力Fxが増幅されて入力される。
【0026】
一方、本発明の減衰機構20を備えた力検出装置100は、てこの原理により、M=Fx・(L1/L2)・L3に減衰させることができ、また、L1〜L3の長さを変えることにより、減衰量を調整することができる。
【0027】
したがって、本発明の力検出装置100によれば、力センサ10に入力される力を減衰する減衰機構20を備えているので、対象物から力センサ10までの距離(L1+L2+L3)が離れ、可倒軸21の先端に横方向の外力Fxが印加された場合でも、減衰機構20のてこの作用により力センサ10に入力される外力を仕様の範囲内に抑えて測定することができる。
【0028】
なお、支持部23bは、ユニバーサルジョイント25から先端21aまでの重心位置を支持するのが望ましい。重心位置を支持している構造では、力検出装置100が横に動いたとき、可倒軸21の慣性力を支持部23bが完全に受け止めるため可倒軸21が支持部23bを中心に回ろうとする回転モーメントを発生せず、したがって慣性力が力センサ10に伝わらないので、力センサ10に慣性によるノイズが印加されず、先端21aに受けた外力だけを高感度で測定することができる。
【実施例2】
【0029】
図3は、本発明の力検出装置100を用いた自動ねじ締め装置200の正面図である。自動ねじ締め装置200は、可倒軸21を回転させるためのモータ30と、プーリ31、32と、ベルト33とを備えている。
【0030】
モータ30は、支持部材23の基部23aから腕部と反対側に延びた設置部23cに設置されており、ベルト33によって、モータ30側の回転軸に設けられた第1のプーリ31から伝達部材22の軸部22aに設けられた第2のプーリ32へ回転力が伝達される。第2のプーリ32は、軸部22aを軸として回転し、可倒軸21をユニバーサルジョイント25とともに回転させるようになっている。また、可倒軸21の先端21aには、各種のねじ35に対応したビットが取り付けられている。
【0031】
上記の構成により、本発明の自動ねじ締め装置200は、モータ30によって可倒軸21を回転させて、先端21aに設けたビットでねじ35を対象物Wにねじ締めすることができる。そして、ねじ締め中にねじ35が傾くなどにより、先端21aに横方向の外力Fxが働いたとき、可倒軸21を回転させながら軸部22aに対してx軸、y軸周りに傾倒させることができる。
【0032】
したがって、本発明の自動ねじ締め装置200によれば、ねじ締めする対象物から力センサ10までの距離が離れ、可倒軸21の先端21aに横方向の外力Fxが印加された場合でも、減衰機構20のてこの作用により力センサ10に入力される外力を減衰させ、仕様の範囲内に抑えて測定することができる。
【0033】
このため、ねじ締め中に生じる外力を検出することができ、ねじ締め作業を自動化し、ねじの傾きや締め付け力を制御することができる。
【0034】
なお、モータ30の重量が力センサ10にかからないように、モータ30が支持部材23に載置され、モータ30の回転力をベルト33を介して第1のプーリ31から第2のプーリ32に伝達させ、可倒軸21を回転させているため、モータ30の重量に関係なく、力センサ10の測定感度を維持することができる。
【実施例3】
【0035】
図4は、本発明の力検出装置100を用いた把持装置300の正面図である。把持装置300は、サーボモータ40を介して基幹装置に設置された一対の力検出装置100A、100Bを備えている。それぞれの力検出装置100A、100Bは、可倒軸21の先端21aにワークWを把持するための把持部41が設けられ、サーボモータ40により両把持部40を開閉動作できるように構成されている。
【0036】
本発明の把持装置300によれば、対象物Wを把持したときの反力Fxが把持部41から可倒軸21の先端21aの横方向に印加されるが、力検出装置100A、100Bに備えられた減衰機構20のてこの作用により、それぞれの力センサ10に入力される外力を減衰させ、仕様の範囲内に抑えられるので、力センサ10から離れた把持部41に生じる反力Fxを測定することができる。
【0037】
また、力検出装置100A、100Bの把持部41に生じる反力Fxをサーボモータ40にフィードバックすれば、対象物Wの硬さに応じて把持力を最適に調整することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 力センサ
20 減衰機構
21 可倒軸
22 伝達部材
23 支持部材
25 ユニバーサルジョイント
26 ピロボール
27 ロータリーブッシュ
30 モータ
31、32 プーリ
33 ベルト
40 サーボモータ
41 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を検出する力センサと、前記力センサに外力を減衰させて入力する減衰機構を備えた力検出装置であって、
前記減衰機構は、
前記力センサの入力部に設けられた伝達部材と、
一端が前記力センサの固定部に設けられた支持部材と、
前記支持部材の他端に枢動可能に支持された可倒軸とを備え、
前記可倒軸は前記伝達部材に屈曲可能に接続されていることを特徴する力検出装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記可倒軸の重心位置を支持することを特徴とする請求項1に記載の力検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかの力検出装置と、回転駆動部とを備えた自動ねじ締め装置であって、
前記回転駆動部の回転力を、前記回転駆動部に設けた第1のプーリから前記力検出装置の前記伝達部材に設けた第2のプーリにベルトで伝達し、
前記第2のプーリにより前記力検出装置の前記可倒軸を回転させることを特徴とする自動ねじ締め装置。
【請求項4】
一対の請求項1または請求項2のいずれかの力検出装置を備えた把持装置であって、
前記一対の力検出装置をそれぞれサーボモータに設置し、
前記一対の力検出装置の前記可倒軸の先端で物体を把持するように、前記一対の力検出装置を駆動することを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19765(P2013−19765A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153390(P2011−153390)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】