説明

加圧加熱密封充填法

【課題】内容物と容器とを同時に短時間に効率的に加熱殺菌することができる加圧加熱密封充填法を提供すること。
【解決手段】内容物をその飽和蒸気圧以上の加圧状態で加熱し、飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気下に容器を置いて充填するようにする。
これにより、飽和蒸気圧以上の加圧状態で超高温に加熱したままの内容液を蒸発させたり、沸騰させることなく充填でき、これを密封することで、その超高温状態の内容液の熱量を利用して内容物の殺菌と容器の殺菌が同時にでき、準無菌室を設置することなく効率的に加熱殺菌することができるとともに、内容物の品質への影響を極力回避するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加圧加熱密封充填法に関し、飲料などの容器詰食品を充填製造する場合に、超高温(内容物を大気圧以上に加圧した場合にその飽和温度以上の温度をいう、以下同じ)に加熱した内容物を冷却せずに充填密封し、内容物の持つ熱量を利用して内容物および容器内の加熱殺菌ができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
飲料などの容器詰食品は、充填された内容物の腐敗を防止するため殺菌処理が行われており、通常、加熱殺菌が行われるが、高温状態による味や香り、色などの変化を防止するよう種々の加熱殺菌法が提案されている(特許文献1〜4)。
【0003】
このような加熱殺菌法には、大別して3つの方法があり、その一つにレトルト殺菌法があり、図7に概略工程を示すように、内容物を熱交換器で85℃程度まで加熱し、容器である缶に充填して密封し、密封後レトルト殺菌装置内で100℃を越える温度で一定時間加熱することで、内容物と容器である缶内とを同時に殺菌した後、冷却して製品とするものである。
【0004】
また、二つ目の方法としてホットパック法があり、図8に概略工程を示すように、内容物を加圧状態にできる熱交換器で、例えば135℃以上まで加熱し、短時間に殺菌した後、85℃程度まで冷却し、80℃以上の高温状態を保持したまま、容器である缶に充填して密封し、密封後その温度を保持することで缶内を加熱殺菌した後、缶詰を冷却するものである。
【0005】
さらに、三つ目の方法としてアセプティック法があり、図9に概略工程を示すように、内容物を加熱状態にできる熱交換器で135℃程度まで加熱し、一定時間ホールディングした後、常温まで冷却し、予め殺菌した容器に無菌室内で充填し、密封するものである。
【特許文献1】特開昭59−115216号公報
【特許文献2】特開昭60−153783号公報
【特許文献3】特開平10−167225号公報
【特許文献4】特開平11−289983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、このような3つのいずれかの加熱殺菌法で、例えばPHが4.6以上の容器詰低酸性食品や飲料を内容物として加熱殺菌する場合には、次のような問題がある。
【0007】
これら加熱殺菌法の一つであるレトルト殺菌法によれば、容器への充填および密封を行うために無菌室を必要としないというメリットはあるものの、殺菌・冷却に時間がかかり、その分だけ内容物の味や香り、色などの変化を招きやすいという問題がある。
【0008】
また、二つ目のホットパック法では、内容物は、加圧状態で加熱するので、例えば135℃の超高温で殺菌することができ、短時間に殺菌できるものの、容器である缶に対しては、85℃程度まで冷却した後充填することから、容器内の殺菌は内容物に比べて時間がかかり、その分だけ内容物の味や香り、色などの変化を招きやすいという問題がある。
【0009】
さらに、三つ目のアセプティック法では、内容物に加える熱量が少なく熱履歴が少なく品質の良い状態を保持して殺菌できるものの、予め容器を殺菌する必要があるとともに、充填室を無菌化する必要があるという問題がある。
【0010】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、内容物と容器とを同時に短時間に効率的に加熱殺菌することができる加圧加熱密封充填法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の有する課題を解決するため、鋭意検討を重ねたところ、内容物の容器への充填の際、加圧状態で維持された温度のまま充填しようとすると、容器が置かれる雰囲気の大気圧下では、内容物液面からの蒸発や内部からの沸騰が生じて充填することができず、このため大気圧下での内容物の飽和温度以下まで、冷却する必要がある。
【0012】
このことは逆に、雰囲気圧力を飽和蒸気圧より高くすることで、液面からの蒸発や液内部の沸騰を抑えることができ、内容物の飽和蒸気圧より高くした加圧雰囲気下の容器に充填・密封することで、超高温に加熱された内容物を冷却せずにその熱量をそのまま利用して内容物と容器とを同時に加熱殺菌できることを見出しこの発明を完成したものである。
【0013】
すなわち、上記従来技術の課題を解決する具体的な発明は、以下の通りであり、この発明の請求項1記載の加圧加熱密封充填法は、内容物をその飽和蒸気圧以上の加圧状態で加熱し、前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気下の容器内に前記内容物を充填密封して当該内容物の熱量で内容物および容器内を加熱殺菌した後、冷却するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項2記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1記載の構成に加え、前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器を横置きまたは反転状態で行うようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
さらに、この発明の請求項3記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器の最遅加熱点の温度に基づき殺菌値F0を満たすようにして行うことを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項4記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記容器の最遅加熱点を、前記容器の口部最上部として殺菌値F0を満たすようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、この発明の請求項5記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気を、不活性ガスにより形成するようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項6記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記冷却を、前記加圧雰囲気下での前記飽和温度以下までの冷却とその後の常圧雰囲気下での冷却とを組み合わせて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
さらに、この発明の請求項7記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記冷却を、振動を与えて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項8記載の加圧加熱密封充填法は、請求項1〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記加圧雰囲気下の圧力を調整するとともに、前記容器の内容物の未充填スペースを調整して密封冷却後の容器内圧を調整可能としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明の請求項1記載の加圧加熱密封充填法によれば、内容物をその飽和蒸気圧以上の加圧状態で加熱し、前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気下に容器を置いて充填するようにしたので、飽和蒸気圧以上の加圧状態で超高温に加熱したままの内容液を蒸発させたり、沸騰させることなく充填でき、これを密封することで、その超高温状態の内容液の熱量を利用して内容物の殺菌と容器の殺菌が同時にできるようにしている。
【0022】
すなわち、これまでのレトルト殺菌法に比べ、予め容器を無菌化したり、容器への充填のための無菌室を必要とせず、簡単に内容物の殺菌と容器の殺菌が同時にでき、内容物の品質への影響を極力回避することができるようになる。
【0023】
また、これまでのホットパック法に比べ、準無菌室を設置することなく効率的に加熱殺菌することができるとともに、内容物の品質への影響を極力回避することができる。
【0024】
さらに、これまでのアセプティック法に比べ、予め容器を殺菌したり、充填室を無菌化する必要もなく、簡単に内容物の殺菌と容器の殺菌が同時にでき、内容物の品質への影響を極力回避することができるようになる。
【0025】
また、この発明の請求項2記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器を横置きまたは反転状態で行うようにしたので、内容物の未充填部分(デッドスペース)などの影響を受けることなく、容器各部の温度差を小さくして容器全体の加熱殺菌をすることができる。
【0026】
さらに、この発明の請求項3記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器の最遅加熱点の温度に基づき殺菌値F0を満たすようにしたので、容器の加熱の最も遅い部分を基準として殺菌値F0を満足させることで、容器および内容物の必要十分な加熱殺菌をすることができる。
【0027】
また、この発明の請求項4記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記容器の最遅加熱点を、前記容器の口部最上部として殺菌値F0を満たすようにしたので、ボトル形状の容器などでは最遅加熱点が容器口部の最上部であることから、この部分を基準として殺菌値F0を満足させることで、ボトル形状の容器などでも容器および内容物の必要十分な加熱殺菌をすることができる。
【0028】
さらに、この発明の請求項5記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気を、不活性ガスにより形成するようにしたので、超高温での充填に必要な加圧雰囲気を作り出すと同時に、不活性ガスによる容器の未充填部分の置換をすることができる。
【0029】
また、この発明の請求項6記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記冷却を、前記加圧雰囲気下での前記飽和温度以下までの冷却とその後の常圧雰囲気下での冷却とを組み合わせて行うようにしたので、効率的に短時間で冷却することができ、内容物への影響を小さくすることができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項7記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記冷却を、振動を与えて行うようにしたので、振動を与えることで一層短時間に効率よく冷却でき、内容物への熱影響を一層抑えることができる。
【0031】
また、この発明の請求項8記載の加圧加熱密封充填法によれば、前記加圧雰囲気下の圧力を調整するとともに、前記容器の内容物の未充填スペースを調整して密封冷却後の容器内圧を調整可能としたので、容器の未充填スペースへの加圧雰囲気ガスの充填量と圧力を調整することで、製品の容器内圧を陰圧から陽圧まで簡単に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の加圧加熱密封充填法の一実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はこの発明の加圧加熱密封充填法を低酸性食品(飲料)に適用した一実施の形態にかかる工程説明図である。
【0033】
この加圧加熱密封充填法は、内容物を大気圧以上に加圧して加熱することで、超高温に加熱し、この超高温の内容物を、飽和蒸気圧より高くした加圧雰囲気下に置かれた容器にそのまま充填・密封し、この内容物の熱量で内容物および容器内を加熱殺菌した後、冷却する方法であり、超高温に加熱したまま冷却工程を経ずにそのまま容器に充填密封するものである。
【0034】
なお、超高温とは、内容物を大気圧以上に加圧した状態におけるその飽和温度以上の温度をいい、例えば水の場合には、0.25MPa(ゲージ圧、以下この明細書において同じ)以上に加圧することで135℃以上の温水に加熱した場合のこの温度をいい、大気圧状態での100℃に比べて高い135℃をここでは、超高温という。
【0035】
まず、内容物である飲料(ここでは、説明を簡単にするため、水を例にする)を、これまでのホットパック法と同様に、大気圧以上に加圧して加熱することができる熱交換器(プレート式熱交換器でなど)で、例えば圧力を0.25MPa以上に加圧することで135℃以上まで加熱して超高温とする。
【0036】
この超高温の内容物では、これまでの大気圧下の容器に充填しようとすると、この135℃に対応した内容物(水)の飽和蒸気圧があり、雰囲気圧力(例えば、大気圧)とこの飽和蒸気圧が等しくなるまで内容物の液面からの蒸発が続き、等しくなると液内部からも蒸発が起こるため沸騰状態となり、充填することができない。
【0037】
しかし、この加圧加熱密封充填法では、内容物を充填する容器を、内容物の飽和蒸気圧より高くした加圧雰囲気下におき、加圧雰囲気下で充填し、密封するようにしており、これによって超高温の内容物を蒸発・沸騰を伴わずそのまま容器に充填することができる。
【0038】
このため不活性ガス等で加圧した加圧室として加圧タンクを用い、その内部においた容器に内容物を充填するとともに、充填後、蓋を巻き締める等で直ちに密封する。
【0039】
このように、例えば135℃以上に加熱した状態の内容物であってもそのまま容器に充填し、蓋を被せて密封することから、容器や蓋は135℃以上まで加熱されるので、容器や蓋は洗浄した状態のもので良く、予め殺菌したり、準無菌状態として内容物を充填・密封する必要がなくなる。
【0040】
こうして超高温で加圧雰囲気下の容器に内容物を充填し、密封した後、内容物の持つ熱量を利用して内容物および容器内の加熱殺菌を行う。
【0041】
この内容物および容器の加熱殺菌には、充填した内容物の熱量を利用し、別に熱量を加えることなく加熱殺菌することから、容器内で最も熱履歴の小さくなる部位、すなわち最も殺菌値F0が小さくなる部位での殺菌条件が、必要な加熱殺菌条件を満たすようにする必要がある。
【0042】
そこで、ボトル状の容器でヘッドスペースを設けた場合には、キャップや蓋の内面部は、縦置き状態では、内容物と接触しないので、充填・密封後横置き状態(あるいは反転状態)とすることとし、その容器内各部位の温度と殺菌値F0の変化を調べた。
【0043】
実験では、図2に示すように、容器として内容積が247mlの市販のステンレスボトルを使用し、内容物として水を221g(135℃での体積:237ml、135℃での充填・密封時のヘッドスペース:10ml)を充填した後、大気圧下でキャップにより密封した。
【0044】
これを135℃のオイルバスで約15分間加熱して充填後の状態とした。このとき、キャップの外側には、冷却筒を設けて冷却水で冷却し、キャップの内面温度を約50℃とした状態で横置き状態にし、キャップの冷却を停止した。
【0045】
なお、測温部は、キャップ内面部角、ボトル肩内面部角、ボトル底内面部角の3ヶ所とし、それぞれ最上部と最下部で測温した。
【0046】
このような実験で、充填時間を10秒、密封時間を10秒とした後、横置き状態としたときの容器内各部位の温度変化を測定した結果を図3に示した。
【0047】
同図中、実線が横置き状態での各部位の最上部(添字:u)で、破線が横置き状態での各部位の最下部(添字:d)で、1がキャップ内面部角、2がボトル肩内面部角、3がボトル底内面部角である。
【0048】
この容器内各部位の温度変化の測定結果から、1のキャップ内面部角は充填・密封中は加熱されず横置き状態とされてから内容物と接触することで加熱が開始されるが、横置き状態とした後は、測定部位にかかわらず破線で示した横置き状態の最下部の温度低下が実線で示した最上部に比べて温度低下が大きく、容器内各部位では、ボトル底内面部角が最も温度が低下することがわかる。
【0049】
次に、このような容器内各部位の温度変化の測定結果(図3に示した)に基づき、殺菌値F0を求めた結果を図4に示した。
【0050】
この容器内角部位の殺菌値F0の変化から、殺菌値F0は、3のボトル底内面部角、2のボトル肩内面部角、1のキャップ内面部角の順に小さくなり、キャップ内面部角の最下部が最も小さくなっていることが分かる。
【0051】
一方、この加圧加熱密封充填法を、例えば容器詰低酸性食品や飲料に適用する場合、250°F(121.1℃)4分以上(殺菌値F0=4)、または日本での規格120℃4分以上(F0=3.1)の加熱殺菌、または同等以上の殺菌を必要とするが、図4から明らかなように、殺菌値F0=4を満足するのは、最も殺菌値F0が小さいキャップ内面部角の最下部でも、充填開始から31秒後、充填密封後の横置き開始から11秒後であり、このとき、他の容器内の各部位では、ボトル底内面部角で殺菌値F0=12、ボトル肩内面部角で殺菌値F0=8となる。
【0052】
したがって、この低酸性食品や飲料では、横置き状態で11秒保持(ホールディング)することで、低酸性食品や飲料として必要な殺菌条件を満足することができる。
【0053】
また、他の容器詰食品や飲料であっても、必要な殺菌条件を満たす殺菌値F0となるよう横置き状態の保持時間を設定すれば、この加圧加熱密封充填法を適用して内容物と容器内とを同時に加熱殺菌することが可能となる。
【0054】
この加圧加熱密封充填法では、こうして内容物および容器内の加熱殺菌がなされた後、冷却が行われ、製品温度まで冷却する。
【0055】
この冷却は、例えば冷却水に容器ごと浸漬することで行われる。また、冷却は、例えば、加圧室内(加圧タンク内)での一次冷却と、大気圧下での二次冷却とに分けて行い、1次冷却では、100℃まで冷却し、その後二次冷却で製品温度まで冷却するようにする。
【0056】
さらに、この冷却では、容器を振とう機によって振とうしながら冷却することが有効であり、短時間に均一に冷却することで内容物の品質の変化を極力抑えることができる。
【0057】
この加圧加熱密封充填法では、例えば冷却開始を、横置き開始から11秒後とした場合には、冷却開始時の各部位の温度は、図3に示したように、最も低い部位でも133.6℃、最も高い部位では134.7℃ある。
【0058】
そこで、最高温度(最大F0)と最低温度(最小F0)の部位の冷却温度の変化を、25℃の冷却水をオーバーフロー(約6リットル)させながら供給する冷却槽(約18リットル)に浸漬して100℃まで冷却した場合について、20回/分の振とうを加えた状態(実線)と静置状態(破線)とについて測定し、この温度変化に対する殺菌置F0とともに、その結果を図5に示した。
【0059】
同図から明らかなように、振とう冷却によって容器の各部位の温度差を小さくして均一かつ短時間に冷却することができるとともに、殺菌値(熱履歴)の差も小さくすることができることが分かる。
【0060】
また、冷却工程においても殺菌値F0を少なくとも2.70確保することができ、これを考慮することで、一層充填・密封後の横置き時間を短くすることが可能となり、内容物の熱履歴を小さくすることができる。
【0061】
さらに、この加圧加熱密封充填法では、内容物の充填・密封を加圧雰囲気下で行うようにしているが、この加圧雰囲気の雰囲気圧力を変えることで、容器密封時の容器のヘッドスペース(未充填スペース)に封入されるガスの量と圧力を変えることができ、これによって製品の容器内圧を調整することができ、陰圧状態から陽圧状態まで設定することができる。
【0062】
そこで、135℃の熱水を容器内に充填する場合の雰囲気圧力と、冷却後の容器内圧力との関係を調べた結果を図6に示した。
【0063】
ここでは、窒素ガスによる加圧条件を、0.25〜0.5Mpaとし、内容積273mlの容器を用い、そのヘッドスペースを変えて充填密封し、冷却後の容器内圧力を測定した。
【0064】
この実験からも明らかなように、充填密封時の雰囲気圧力および/またはヘッドスペースの調整で、容器内圧力を、陰圧から陽圧まで設定することができることが分かる。
【0065】
なお、上記実施の形態では、内容物の加熱温度を135℃とする場合で説明したが、この温度に限るものでなく、また、加圧雰囲気とする場合の加圧圧力も上記実施の形態の場合に限らず、他の加圧圧力としても良く、適宜設定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の加圧加熱密封充填法を低酸性食品(飲料)に適用した一実施の形態にかかる工程説明図である。
【図2】この発明の加圧加熱密封充填法の一実施の形態にかかる工程操作の説明図である。
【図3】この発明の加圧加熱密封充填法をボトル状容器に適用した一実施の形態にかかる容器各部位の温度変化を示すグラフである。
【図4】この発明の加圧加熱密封充填法をボトル状容器に適用した一実施の形態にかかる容器各部位の殺菌値F0の変化を示すグラフである。
【図5】この発明の加圧加熱密封充填法をボトル状容器に適用した一実施の形態にかかる容器各部位の冷却工程の温度変化を示すグラフである。
【図6】この発明の加圧加熱密封充填法をボトル状容器に適用した一実施の形態にかかる充填・密封時の雰囲気圧力と冷却後の容器内圧力の関係を示すグラフである。
【図7】従来のレトルト殺菌法の概略工程説明図である。
【図8】従来のホットバック殺菌法の概略工程説明図である。
【図9】従来のアセプティック殺菌法の概略工程説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物をその飽和蒸気圧以上の加圧状態で加熱し、前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気下の容器内に前記内容物を充填密封し、当該内容物の熱量で内容物および容器内を加熱殺菌した後、冷却するようにしたことを特徴とする加圧加熱密封充填法。
【請求項2】
前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器を横置きまたは反転状態で行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項3】
前記加熱殺菌を、前記内容物の前記容器への充填密封後、当該容器の最遅加熱点の温度に基づき殺菌値F0を満たすようにして行うことを特徴とする請求項1または2記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項4】
前記容器の最遅加熱点を、前記容器の口部最上部として殺菌値F0を満たすようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項5】
前記飽和蒸気圧以上の加圧雰囲気を、不活性ガスにより形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項6】
前記冷却を、前記加圧雰囲気下での前記飽和温度以下までの冷却とその後の常圧雰囲気下での冷却とを組み合わせて行うようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項7】
前記冷却を、振動を与えて行うようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加圧加熱密封充填法。
【請求項8】
前記加圧雰囲気下の圧力を調整するとともに、前記容器の内容物の未充填スペースを調整して密封冷却後の容器内圧を調整可能としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の加圧加熱密封充填法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−124916(P2007−124916A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318217(P2005−318217)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】