説明

加工指示図自動作成装置及び方法

【課題】製品の3Dモデルの持つ形状情報と加工工程の情報を活用して、加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成装置及び方法を提供する。
【解決手段】製品モデル10を用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成装置30であって、前記製品モデル10の保有情報16を取り込んで、当該保有情報16と予め格納された製品の加工工程情報22とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報が加工工程毎に整理された加工工程情報データベース20と、当該加工工程情報データベース20より前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得した前記統合された情報を格納する情報格納手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3DCADにより作成された製品の3Dモデルが有する形状情報及び加工工程の情報を活用して加工指示図を自動作成することができる加工指示図自動作成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種組み立て製品を開発するにあたり、製品の形状設計のみならず、その製品を生産するための設計が必要となる。すなわち、各種製品は複数の加工工程を経て生産される。そのため、例えば、ケース類等の加工(穴加工、面削り)において、製品図に記載されている最終形状を元に各工程や各部位ごとに、加工内容として荒加工・仕上加工等加工形状を記載した加工指示図の作成が必要である。また、製品の3Dモデルを使用した設計が進む中、製品図が作成されるのは、3Dモデルの完成後となり、製品の開発(試作)期間の短縮を考えると、3Dモデルを活用した加工指示図の作成を行うことで、試作の準備を前出し、リードタイムを短縮することが重要な課題となる。
【0003】
従来から行われている加工指示図を作成する技術としては、図10に示すように製品モデル(3D)から作成される製品図(2D)に対して、荒加工形状(中間形状)を作図し、これに加工公差情報と工程情報を付加して、加工指示図を作成するものがある。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、製品モデルに対して細工をし、3D上で荒加工形状(中間形状)のモデル(中間段階モデル)を加工工程順序に合わせて複数作成し、そのモデルに対して必要部位の断面図を作成して、当該断面図に寸法情報を記入することで、荒加工形状作図の作業(図10に示す(1)の部分)を実施するという加工指示図を作成する技術は公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−186512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術においては、3Dモデルから2Dの加工指示図を作成するのに、断面図の作成や寸法・公差記入等に相当な工数が必要である。すなわち、設計者が定義した製品モデルに対して、その都度追加修正した形状を作成、かつ寸法記入する工数が必要となる。これは、3Dモデル上への、寸法・公差(幾何公差含む)の記入方法の規格(JIS、ISO等)が確立されていないことが原因のひとつである。加えて、加工指示図を図示する際に、製品形状または加工工程中の中間形状をCAD上で忠実に再現させようとしているためによる工数増加も原因となる。
【0007】
そして、いずれの従来技術の場合でも、製品モデル完成後に作図・寸法記入作業が必要となる(リードタイムが必要)。前者の従来技術の場合は、製品図面が出来上がるまで、加工指示図作成に着手することができない。一方、後者の従来技術の場合は、製品モデルに細工する工数、そのモデルから2Dの指示図を作成し、寸法記入する工数が膨大なものとなる。
【0008】
また、類似製品の加工指示図を作成する場合においても、毎回、作図・寸法記入が必要になる。これは、個々の3DCADの機能で3D上に寸法等付加しても、後工程のインフラによっては、その情報を正しく継承できないからである。また、情報を正しく継承するためにインフラを末端の工程まで整備すると膨大な費用がかかってしまう。
【0009】
また、3DCADの2D機能で加工指示図を作成しても、3D上の形状が変更になった場合、2D上で作成した加工指示図の寸法定義の関連付けが消失し、再度寸法等付加のやり直しが発生する。
【0010】
また、3DCADと別の2DCADで加工指示図を作成した場合、3D⇔2Dでのデータ連携が途切れるので2D上の加工指示図に対して形状変更を反映させる等の工程が発生する。この形状変更を反映させる際には、人に依存することになる。
【0011】
また、加工指示図においては、必ず加工基準を寸法基準とするため、製品図上に記載されている製品の寸法と、それを達成するための加工工程中における加工内容を指示するための寸法とは、寸法基準が異なるので、必ず加工基準を寸法基準とした寸法を加工指示書に再記入する必要があるため、できれば加工基準を寸法基準とした寸法を加工指示書に記入する工数も減らしたい。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、製品の3Dモデルの持つ形状情報と加工工程の情報を活用して、加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成装置及び方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1においては、
製品モデルを用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成装置であって、
前記製品モデルから前記製品モデルが有する情報を取り込んで、当該製品モデルが有する情報と予め格納された製品の加工工程情報とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報が加工工程毎に整理された加工工程情報データベースと、
当該加工工程情報データベースより前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得した前記統合された情報を格納する情報格納手段と、
を有するものである。
【0015】
請求項2においては、
前記加工指示図は、
加工指示に必要なテンプレート化された図示を有し、当該図示上に所定の形状を加工する上で必要な属性情報が格納可能であり、当該格納される属性情報が所定の識別子により制御可能である格納領域を有するテンプレートにより構成されるものである。
【0016】
請求項3においては、
前記部位名称毎に公差情報が整理された公差情報一覧を備え、当該公差情報は前記格納手段に格納する際の識別子を有するものである。
【0017】
請求項4においては、
製品モデルを用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成方法であって、
前記製品の加工工程情報が予め格納された加工工程情報データベースを用いて、
当該加工工程情報データベースに前記製品モデルから前記製品モデルが有する情報を取り込んで、当該製品モデルが有する情報と予め格納された製品の加工工程情報とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報を前記加工工程情報データベースより出力する出力工程と、
前記出力工程より前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程により取得した前記統合された情報を格納する情報格納工程と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2D図(製品図)を作図することなく、製品モデルの有する情報と加工工程情報とを統合し、これらを活用して加工指示図を自動作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る加工指示図自動作成システムの概略構成を示す図。
【図2】加工指示図自動作成方法のフローを示す図。
【図3】加工形状テンプレートから加工形状モデル(穴加工のモデル)を構成する例を示す説明図。
【図4】取得情報格納領域を示す図。
【図5】データム基準情報格納領域を示す図。
【図6】公差情報一覧を示す図。
【図7】工程毎の情報格納領域を示す図。
【図8】指示図記載情報制御手段を示す図。
【図9】指示図作成領域(加工指示図テンプレート)を示す図。
【図10】従来技術を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1に示す加工指示図自動作成システムは、製品等を加工する際に各加工工程で用いられる加工指示図を自動で作成することができるシステムである。加工指示図自動作成システムは、3DCADと、加工工程情報データベース20と、加工指示図自動作成装置30と、を主に備える。
【0021】
3DCADは、製品の形状や加工属性などを規定した電子的なデータである製品モデル(3Dモデル)10を記憶した記憶手段、所定の演算処理を行う演算手段、3DCADプログラムを格納するプログラム格納手段等を有するコンピュータである。3DCADは、前記プログラム格納手段に格納された所定の3DCADプログラムを実行して、製品モデル10を作成することが可能である。
【0022】
製品モデル10は、製品の形状情報だけではなく、製品形状各部の加工内容やそれら各部の加工順序などの情報を有する。具体的には、製品モデル10は、粗材モデル12と加工形状モデル14とを有する。つまり、製品モデル10とは、粗材モデル12に対して加工形状モデル14により定義される加工形状を形成する加工工程後のモデルである。
【0023】
粗材モデル12は、加工の対象となる粗材の形状(加工を施す前の形状)を表すモデルである。粗材モデル12には、粗材の形状の他に、その粗材の属性情報(例えば材質など)を含めることもできる。粗材モデル12は、例えば、3次元のソリッドモデルで表現される。
【0024】
加工形状モデル14は、製品モデル10上の加工部位の部位名称を識別子として有し、加工寸法等がパラメータ制御された加工形状のテンプレート(図3参照)を複数組合わせて構成されるものである。すなわち、3DCADは、予め3DCAD内の記憶装置に格納されている加工形状テンプレートを用いて製品モデル10の加工形状モデル14を適宜作成可能である。加工形状モデル14は、当該加工形状モデル14の内部情報として所定の保有情報16を有する。ここで、保有情報16とは、加工形状モデル14が有する加工形状に関するテキスト情報であり、例えば、部位名称、配置情報、寸法情報等が挙げられる。また、3DCADは、上記のように複数の加工形状のテンプレートにより構成された加工形状モデル14から保有情報16を抽出して、加工工程情報データベース20に出力可能である。
【0025】
配置情報は、部位名称で示す加工部位が製品モデル10を定義する空間内でどのように配置されるかを示す情報である。配置情報は、例えば、所定空間内のxyz座標系や加工部位が配置される位置及び向き等で表すことができる。
【0026】
寸法情報は、所定の加工部位における加工工具による加工の際の寸法を示す情報である。
【0027】
加工工程情報データベース20は、前記製品モデル10から前記製品モデル10が有する情報である保有情報16を取り込んで、当該保有情報16と予め格納された製品の加工工程情報22とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報(以下、統合加工工程情報24という)が加工工程毎に整理されたデータベースである。また、加工工程情報データベース20は、3DCADの記憶装置から出力された保有情報16を取込可能である。
【0028】
すなわち、加工工程情報データベース20は、加工部位の部位名称を識別子として加工工程情報22と保有情報16とを統合して統合加工工程情報24を構成し、当該統合加工工程情報24が、図1に示すように、加工工程順序に従って上から下へと並べられ、一連の加工工程情報として構成される。換言すると、統合加工工程情報24は、予め格納されている加工工程情報22と、3DCADの記憶装置に記憶されている製品モデル10の加工形状モデル14から取り込まれる保有情報16とからなる。つまり、加工工程情報データベース20は、所定の加工工程情報22が有する部位名称と、前述した保有情報16が有する部位名称とをひとつのキーとして紐付けして統合し、加工工程順序毎のデータとして自動的に整理することが可能である。また、加工工程情報データベース20は、統合加工工程情報24を加工工程情報データベース20より加工指示図自動作成装置30に出力可能である。
なお、加工工程情報データベース20は、特に設置場所を限定するものではなく、例えば、所定のサーバー上に加工工程情報データベースを設置して、利用者がインターネットやLAN回線を介して、遠距離間においても格納されたデータを利用可能に構成すると良い。また、加工工程情報データベースと加工指示図自動作成装置とを一体的に構成することも可能である。
【0029】
加工工程情報22は、具体的には、所定の加工部位を加工する際に必要な情報であり、図1に示すように、部位名称、加工方法、加工姿勢、加工条件等から構成される。加工工程情報22は、例えば、所定の加工部位において、1つの加工機で1つの加工工具を用いて加工する際に、その加工方法、加工姿勢、加工条件等を具体的に表す情報である。この加工工程情報22を適用することで、所定の加工部位において所定の加工形状が形成される。
【0030】
加工指示図自動作成装置30は、製品モデル10を用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する装置である。本実施形態における加工指示図自動作成装置30は、記憶手段、所定の演算処理を行う演算手段、表計算プログラム等を格納するプログラム格納手段等を有するコンピュータである。
【0031】
加工指示図自動作成装置30は、情報取得機能及び情報格納機能を有する情報取得格納手段40を有する。すなわち、情報取得格納手段40は、当該加工工程情報データベース20より前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報である統合加工工程情報24を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得した前記統合加工工程情報24を格納する情報格納手段と、を備えるものである。
なお、本実施形態においては、表計算プログラムが具備する識別子による情報取得機能を前記情報取得手段として用いるともに識別子による情報格納機能を前記情報格納手段として用いている。
【0032】
情報取得格納手段40は、前記情報取得機能により取得した前記統合加工工程情報24を情報格納機能により所定の領域に格納する手段である。すなわち、情報取得格納手段40は、所定の情報(データ)を格納するため複数の格納領域を有するとともに、当該複数の格納領域間や外部データベース等との間において情報制御(情報の取得、格納、変換、移動及び演算等)を行うことができる情報制御領域1を有する。情報制御領域1は、図1に示すように、取得情報格納領域1−1(図4参照)、配置情報変換制御領域1−2、工程毎の情報格納領域1−4(図7参照)、データム基準情報格納領域1−5(図5参照)を主に有する。より具体的には、情報制御領域1とは、本実施形態においては、加工指示図自動作成装置30のプログラム格納手段内に格納された表計算プログラムによる表計算シート(ワークシート)上において展開される所定の情報を格納する領域や上記情報制御を行うことができる領域のことである。また、情報制御領域1における前記各領域間は情報制御を行うための制御指令等(例えば、関数処理の指令やマクロ等の制御プログラム)により情報の授受や計算等を自動で行うように予め設定されている。
【0033】
取得情報格納領域1−1は、加工工程情報データベース20より出力された統合加工工程情報24を取得して格納することができる。すなわち、取得情報格納領域1−1は、図4に示すように、統合加工工程情報24が有する各情報として、工程順序、部位名称、加工方法等、加工形状の配置情報(xyz各座標系)、加工形状の寸法情報等を格納するための領域を有しており、各情報の識別子が予め決められている。また、加工指示図自動作成装置30は、統合加工工程情報24を取得情報格納領域1−1に取り込む際に、取込元である加工工程情報データベース20の識別子と取得情報格納領域1−1に設定されている識別子とを照合して、取得情報格納領域1−1の一覧の上から下の順に所定の前記各情報(工程順序、部位名称、加工方法等、加工形状の配置情報、加工形状の寸法情報等)を格納することができる。
以下に、加工指示図自動作成装置30が有する情報制御領域1についてさらに詳細な構成について説明する。
【0034】
情報制御領域1は、各加工形状の配置情報を加工指示図に必要な加工基準を基準とした配置情報に変換する制御情報変換手段である配置情報変換制御領域1−2を有する(図1参照)。すなわち、保有情報16が有する配置情報は加工を意図した情報でないため、加工工具を用いてワークを加工する際の基準となる加工基準を求める必要がある。そこで、配置情報変換制御領域1−2は、各加工形状の配置情報を加工基準を基準とした配置情報に変換するものである。配置情報変換制御領域1−2は、配置情報を加工基準に変換して加工指示図上必要な加工基準寸法を自動取得することが可能である。
【0035】
情報制御領域1は、製品モデル10が保有しない公差の情報を、部位名称毎に一覧に整理された公差情報一覧3−1(図6参照)より取得する取得手段であるとともに当該取得した公差の情報を格納するデータ格納領域である工程毎の情報格納領域1−4(図7参照)を有する。すなわち、工程毎の情報格納領域1−4においては、公差情報一覧3−1より取得した公差情報を図6に示すように工程毎の情報格納領域1−4の所定の領域に格納することができる。これにより、製品図に依存することなく、工程毎の情報格納領域1−4を介して、加工指示図に公差の情報を付加することが可能となる。
ここで、公差情報一覧3−1は、図6に示すように、部位名称毎に公差情報を一覧としてまとめた情報である。また、公差情報一覧3−1は、部位名称毎に整理された公差情報を、工程毎の情報格納領域1−4が有する公差情報格納部分に格納する際の識別子を有する。これにより、公差情報一覧3−1は、加工指示図自動作成装置30(工程毎の情報格納領域1−4)へ工程単位で必要な情報を受け渡すことが可能となる。公差情報一覧3−1は、部位名称とともに加工部位の2Dテンプレートが格納され、当該加工部位に対応する形状寸法の識別子と加工部位の各寸法の公差が格納される。
なお、公差情報一覧3−1は、特に限定するものではないが、外部のデータベース上に格納するか、もしくは加工指示図自動作成装置30の記憶装置内に格納することが可能である。
【0036】
また、工程毎の情報格納領域1−4は、取得した情報を識別子で格納先を指示できる。工程毎の情報格納領域1−4は、図7に示すように、表題欄、公差情報、工具・加工条件情報、位置情報(xyz座標系)、基準・データム面位置情報、形状寸法情報を格納する領域が1つの工程の情報として設けられている。表題欄、工具・加工条件、基準・データム面位置情報、形状寸法情報は、取得情報格納領域1−1の対応する領域より識別子の照合により取得可能である。また、位置情報は、取得情報格納領域1−1及び取得情報格納領域1−1を後述する配置情報変換制御領域1−2により変換した情報より識別子の照合により取得可能である。公差情報は、前述したように公差情報一覧3−1の対応する領域より識別子の照合により取得可能である。工程毎の情報格納領域1−4により、後述する加工指示図テンプレート(指示図作成領域)50へ工程単位で必要な情報を受け渡すことが可能となる。
なお、図7に示す工程毎の情報格納領域1−4は、1つの加工工程(加工動作)についての情報をまとめたものであり、同様にして必要工程分を適宜作成することができる。
【0037】
情報制御領域1は、取得情報格納領域1−1、工程毎の情報格納領域1−4、データム基準情報格納領域1−5に格納した情報を識別子として利用して工程毎の情報格納領域1−4へ格納すると同時に取得情報格納領域1−1の一部にある配置情報を同格納領域の一部にある加工基準の情報を識別子とし、配置情報変換制御領域1−2にある制御情報(例えば、マクロによる制御情報等)と照合し、配置情報を変換して工程毎の情報格納領域1−4に格納する手段を有する。
【0038】
データム基準情報格納領域1−5は、加工工程の際に各工程共通で使用する加工基準位置情報(設定されているデータム基準位置等)を指定・格納できる領域である。データム基準情報格納領域1−5は、図5に示すように、基準名称、座標系名、座標値等を格納する欄が設けられている。データム基準情報格納領域1−5では、座標系名が各加工基準の配置情報の識別子となっており、当該配置情報の識別子により、配置情報を取得情報格納領域1−1より取得し、データム基準情報格納領域1−5の取得情報格納領域(図5に示す座標値(デフォルト座標系)部分)に格納可能である。つまり、座標系名だけを配置情報の識別子として入力されることで、配置情報が取得情報格納領域1−1より取得可能である。以上により、加工指示図上必要な加工基準寸法(加工基準位置情報)を自動取得することが可能となる。
【0039】
情報制御領域1は、工程毎の情報格納領域1−4に最終的に格納されたデータを、部位名称を識別子として後述する加工指示図テンプレート50の名称と照合し、該当する加工指示図テンプレート50の工程情報格納領域2−3(図1参照)に必要情報を書き込み可能な手段を有する。これにより、工程毎の情報格納領域1−4から加工指示図テンプレートへ工程単位で必要な情報を受け渡す(一工程分の情報を切出す)ことが可能となる。
【0040】
次に、加工指示図テンプレートについて具体的に説明する。
加工指示図テンプレート50は、指示図作成領域2−1、指示図記載情報制御手段2−2、及び工程情報格納領域2−3を有する。
【0041】
指示図作成領域2−1は、加工指示に必要なテンプレート化された図示を有し、当該図示上に所定の形状を加工する上で必要な属性情報(寸法・公差等)が格納可能であり、当該格納される属性情報が所定の識別子により制御可能である格納領域を有する。すなわち、本実施形態でいう加工指示図とは、指示図作成領域2−1のことである。また、指示図作成領域2−1上の図示(図9参照)は、図示上に記入される寸法・公差等を所定の識別子により制御可能である。
【0042】
指示図記載情報制御手段2−2は、上記の識別子により指示図作成領域2−1上におけるデータ格納領域及び図示を制御するために、図8に示すように、情報の取得領域・文字列操作領域・数値計算処理領域・出力情報の格納領域を有する。指示図記載情報制御手段2−2は、工程情報格納領域2−3より取得した情報を所定の制御、すなわち文字列操作・計算処理等を行って、出力用識別子により指示図作成領域2−1へ出力可能である。また、指示図記載情報制御手段2−2は、所定のライブラリより指示図作成領域2−1に図示する図示用2D図を取り込むことが可能である。
【0043】
工程情報格納領域2−3は、加工指示図自動作成装置30により加工工程毎に整理された工程情報一覧から、該当する加工指示図(指示図作成領域2−1)に記載する工程の情報のみを格納する領域を有する。これにより、加工指示図自動作成装置30(工程毎の情報格納領域1−4)より一工程分のみの情報を切出して工程単位で必要な情報を受け取ることが可能となる。
【0044】
情報制御領域1は、工程情報格納領域2−3に工程単位で必要な情報を格納した後、出力情報の格納領域(指示図記載情報制御手段2−2が有する格納領域)が有する情報を寸法・公差等の情報格納領域である指示図作成領域2−1に格納する制御を行うことができる。
【0045】
次に、前述した加工指示図自動作成システムに適用する加工指示図自動作成方法について説明する。
【0046】
加工指示図自動作成方法は、製品モデル10を用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成方法であって、前記製品の加工工程情報が予め格納された加工工程情報データベース20を用いて、当該加工工程情報データベース20に前記製品モデル10から前記製品モデル10が有する情報である保有情報16を取り込んで、当該保有情報16と予め格納された製品の加工工程情報22とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報である統合加工工程情報24を前記加工工程情報データベース20より出力する出力工程と、前記出力工程より前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合加工工程情報24を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得工程と、前記情報取得工程により取得した前記統合加工工程情報24を格納する格納工程と、を有するものである。
以下、加工指示図自動作成方法について、より詳細に図2を用いて説明する。
【0047】
加工形状モデル作成工程S100は、3DCADにおいて加工形状テンプレートを用いて製品モデル10の加工形状モデル14を作成する工程である(図3参照)。すなわち、加工形状モデル作成工程S100では、部位名称を識別子とし、前述したようにパラメータ制御された加工形状のテンプレートを複数組合わせて構成する。
【0048】
保有情報出力工程S110は、加工形状モデル作成工程S100において作成された加工形状モデル14から保有情報16を出力する工程である。
【0049】
保有情報取込工程S120は、保有情報出力工程S110にて出力された保有情報16を加工工程情報データベース20に取り込む工程である。
【0050】
紐付け工程S130は、予め加工工程情報データベース20内に格納されている加工工程情報22と加工工程情報データベース20に取り込まれた保有情報16とを部位名称を1つのキーとして紐付けして統合する工程である。すなわち、紐付け工程S130では、加工部位の部位名称を識別子として加工工程情報22と保有情報16とを統合して統合加工工程情報24を構成し、当該統合加工工程情報24が、図1に示すように、加工工程順序に従って上から下へと並べられ、一連の加工工程情報として構成される。
【0051】
統合加工工程情報出力工程S140は、紐付け工程S130にて紐付けされ統合された統合加工工程情報24を加工工程情報データベース20より出力する工程である。
【0052】
統合加工工程情報取込工程S150は、加工工程情報データベース20より出力された統合加工工程情報24を加工指示図自動作成装置30が有する取得情報格納領域1−1(図4参照)に取り込む工程である。取得情報格納領域1−1への取り込みにおいては、その識別子に従って、統合加工工程情報24が有する、工程順序、部位名称、加工方法等、加工形状の配置情報(xyz各座標系)、加工形状の寸法情報等が取得され、当該取得された各情報が取得情報格納領域1−1の対応する領域に数字、記号、文字等で格納されていく。
すなわち、統合加工工程情報取込工程S150では、統合加工工程情報24を取得情報格納領域1−1に取り込む際に、取込元の識別子と当該取得情報格納領域1−1に設定されている識別子とを照合して、取得情報格納領域1−1の一覧の上から下に順に情報を格納する。図4に示す取得情報格納領域1−1においては、各情報の識別子が予め決められており、その識別子に従って、工程順序、部位名称、加工方法等、加工形状の配置情報(xyz各座標系)、加工形状の寸法情報等が格納されていく。
【0053】
配置情報付加工程S160は、補足情報としてデータム基準の配置情報をデータム基準情報格納領域1−5に付加する工程である。
すなわち、配置情報付加工程S160では、配置情報の識別子により、配置情報を取得情報格納領域1−1より取得する。取得された配置情報は、データム基準情報格納領域1−5における取得情報格納領域(座標値(デフォルト座標系))に格納される。
【0054】
工程毎情報格納工程S170は、工程毎の情報格納領域1−4へ取得情報格納領域1−1に格納した情報とデータム基準情報格納領域に格納した情報とを格納すると同時に配置変換制御領域1−2に格納されている情報を元に加工基準を基準にした配置情報に変換し、その変換された配置情報を格納する工程である。
すなわち、工程毎情報格納工程S170では、工程毎の情報格納領域1−4において、図7に示すように、表題欄、工具・加工条件情報、形状寸法情報及び基準・データム面位置情報が取得情報格納領域1−1より取得される。また、位置情報は、取得情報格納領域1−1及び取得情報格納領域1−1を配置情報変換制御領域1−2により変換した情報より識別子の照合により取得される。図6に示す工程毎の情報格納領域1−4は1つの工程分の領域であり、必要な工程分は同様にして作成される。
【0055】
公差情報格納工程S180は、公差情報一覧3−1より工程ごとに公差情報を取得し、工程毎の情報格納領域1−4の公差情報欄に格納する工程である。
【0056】
指示図作成工程S190は、情報制御領域1から制御指令により作成する加工指示図のテンプレート50を所定の加工指示図テンプレートのライブラリから抽出し、指示図記載情報制御手段2−2の制御情報と合わせて加工指示図を作成する工程である。
すなわち、指示図作成工程S190では、抽出された加工指示図テンプレート50を抽出するとともに、加工指示図テンプレート50が有する指示図記載情報制御手段2−2において、工程情報格納領域2−3より取得した情報に対して所定の制御、すなわち文字列操作・計算処理等が行われて、出力用識別子により指示図作成領域2−1へ出力される。この出力された情報は、加工指示図テンプレート2−1に格納される。具体的には、図9に示すカウンタベアリング穴加工を指示するための指示図作成領域2−1において、表題は表題欄情報より取得され(図8においては工程No:10−4、工程名:カウンタベアリング圧入穴−荒削り、品名:ハウジングトランスアクスル)、加工部位の指示図である部位指示図は所定の部位指示図のライブラリより自動取得され、位置情報は配置情報変換制御領域1−2により、保有情報16が有する配置情報が、例えば加工基準としてノック基準に変換されて自動取得される。形状寸法・公差情報についても配置情報変換制御領域1−2を介して自動取得され、寸法・公差等はテンプレート化された図示上に記載される。
【0057】
上述した加工指示図の作成においては、汎用簡単なプログラム制御ができるビジネスソフトを使用して、加工指示図の自動作成を実現しているが、図示を画像扱いしているため、形状変更を行った場合、図示(断面図)自体は変更されず、寸法値のみを製品モデル10から正しく取得する方法をとっている。上記を回避したい場合は、パラメータ制御ができる2DCADを用いて指示図作成領域2−1に相当するテンプレートを用意することで断面形状自体も寸法変化に追従して表現することが可能になる。
【0058】
以上のように、本発明によれば、2D図(製品図)の作成状況に依存することなく加工指示図の作成を自動にて可能にする。また、製品モデルの変更に対して、情報の再取り込み作業を実施することでデータ連携の維持を可能とする。
【0059】
また、本発明は、製品モデルが保有する情報のうち、寸法情報等の形状情報と加工工程の情報を利用するため、従来技術のように3Dモデルが必要でないため、CADに依存せず、汎用のパソコン用ビジネスソフトを活用して加工指示図を自動作成することできる。
【符号の説明】
【0060】
10 製品モデル
14 加工形状モデル
16 保有情報
20 加工工程情報データベース
22 加工工程情報
24 統合加工工程情報
30 加工指示図自動作成装置
40 情報取得格納手段
50 加工指示図テンプレート
1−1 取得情報格納領域
3−1 公差情報一覧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品モデルを用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成装置であって、
前記製品モデルから前記製品モデルが有する情報を取り込んで、当該製品モデルが有する情報と予め格納された製品の加工工程情報とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報が加工工程毎に整理された加工工程情報データベースと、
当該加工工程情報データベースより前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得した前記統合された情報を格納する情報格納手段と、
を有することを特徴とする加工指示図自動作成装置。
【請求項2】
前記加工指示図は、
加工指示に必要なテンプレート化された図示を有し、当該図示上に所定の形状を加工する上で必要な属性情報が格納可能であり、当該格納される属性情報が所定の識別子により制御可能である格納領域を有するテンプレートにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の加工指示図自動作成装置。
【請求項3】
前記部位名称毎に公差情報が整理された公差情報一覧を備え、当該公差情報は前記格納手段に格納する際の識別子を有することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の加工指示図自動作成装置。
【請求項4】
製品モデルを用いて製品の加工工程毎の加工内容を示す加工指示図を自動作成する加工指示図自動作成方法であって、
前記製品の加工工程情報が予め格納された加工工程情報データベースを用いて、
当該加工工程情報データベースに前記製品モデルから前記製品モデルが有する情報を取り込んで、当該製品モデルが有する情報と予め格納された製品の加工工程情報とを、各々の情報が有する加工部位の部位名称をキーとして紐付けして統合され、当該統合された情報を前記加工工程情報データベースより出力する出力工程と、
前記出力工程より前記加工指示図に必要な情報として出力された前記統合された情報を、所定の識別子をキーとして取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程により取得した前記統合された情報を格納する情報格納工程と、
を有することを特徴とする加工指示図自動作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−3507(P2012−3507A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137755(P2010−137755)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】