説明

加工装置

【課題】簡易な構成で加工ツールの姿勢にかかわりなく、フローティング作用を効率的に発揮することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置10は、ワークW1に接触するヘミングローラ62を有するヘミングユニット38と、ヘミングローラ62の回転軸AXと直交する方向にスライド可能な状態でヘミングユニット38を支持するロボットヘッド36と、ロボットヘッド36を移動するロボットアーム34と、ロボットヘッド36に設けられた第1シリンダ90の流体圧の作用下にヘミングユニット38をそのスライド方向に付勢可能な第1シリンダ機構86と、ロボットヘッド36に設けられた第2シリンダ100の流体圧の作用下に第1シリンダ機構86の付勢方向とは反対方向の付勢力をヘミングユニット38に付勢可能な第2シリンダ機構88と、第1及び第2シリンダ90、100の流体圧を制御するコントローラ42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工するための加工ツールを所定前後方向にスライド可能に支持するツール支持手段を備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットヘッド(ツール支持手段)に設けられた加工ツールに対してフローティング機構を取り付けた加工装置が広汎に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボットの先端に設けられたヘミングユニット(加工ツール)に対してばねを利用したフローティング機構を取り付けることにより、ロボットの移動軌跡とティーチング軌跡とのずれをキャンセル(吸収)するヘミング加工装置が開示されている。この文献には、前記ヘミングユニットを待機位置から加工位置まで移動する際に、シリンダを利用したロック機構によって前記ばねの振動を抑える点についても記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、サーボモータを利用してイコライズ機構(フローティング機構)のスプリングに加わるガンユニットの重量を相殺する溶接ガンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−152391号公報
【特許文献2】特開2002−219577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の装置では、ヘミングユニットの重量を加味してばねを選定する必要がある。具体的には、一方(ヘミングユニットの自重がかかる方)のばねの弾発力を他方のばねの弾発力よりも大きくする必要がある。このような場合、前記ヘミングユニットを上下逆にした状態で使用すると、前記他方のばねに該ヘミングユニットの自重がかかり、該他方のばねを充分に収縮させることができなくなるので、フローティング作用を効率的に発揮することができないことがある。また、フローティング機構とロック機構とを別々に設けているため、装置全体が大型化することがある。
【0007】
一方、特許文献2の装置では、サーボモータを利用しているのでフローティング機構の構成が複雑になる。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、簡易な構成で加工ツールの姿勢にかかわりなく、フローティング作用を効率的に発揮することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 本発明に係る加工装置は、ワークを加工するための加工ツールと、前記加工ツールを所定前後方向にスライド可能に支持するツール支持手段と、前記ツール支持手段を搬送する搬送手段と、前記ツール支持手段に設けられて流体を収容する第1シリンダを有し、且つ前記第1シリンダの流体圧の作用下に、前記所定前後方向に前記加工ツールを付勢可能な第1付勢手段と、前記ツール支持手段に設けられて流体を収容する第2シリンダを有し、且つ前記第2シリンダの流体圧の作用下に、前記第1付勢手段の付勢方向とは反対方向に前記加工ツールを付勢可能な第2付勢手段と、前記第1及び第2シリンダの流体圧を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、ワークの加工時に、ツール支持手段に対して加工ツールを所定前後方向にスライド可能な状態とすることにより、フローティング作用を発揮することができる。
【0011】
また、例えば、ワークの加工中に、加工ツールの姿勢が第1付勢手段に加工ツールの自重がかかるような状態(第1姿勢)である場合には、制御手段にて第1シリンダの流体圧を第2シリンダの流体圧よりも大きく設定する(第1付勢手段の付勢力を第2付勢手段の付勢力よりも大きくする)ことによって、該加工ツールの自重を相殺させることができるので、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【0012】
一方、前記加工ツールの姿勢が前記第2付勢手段に前記加工ツールの自重がかかるような状態(第2姿勢)である場合には、制御手段にて第2シリンダの流体圧を第1シリンダの流体圧よりも大きく設定する(第2付勢手段の付勢力を第1付勢手段の付勢力よりも大きくする)ことによって、フローティング作用を効率的に発揮することができる。これにより、加工ツールの姿勢にかかわりなく、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【0013】
また、制御手段にて第1及び第2シリンダの流体圧を、フローティング作用を発揮させているときの流体圧よりも大きく設定することにより、前記加工ツールのスライド動作をロックする(フローティング作用を停止させる)ことができる。これにより、搬送手段にて加工ツールを待機位置から加工位置に搬送する際に、該加工ツールの揺れを抑えることができるので、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。さらに、フローティング作用を停止する機構を新たに設ける必要がないので、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0014】
なお、本発明に係る加工装置は、サーボモータではなく、シリンダを利用しているので、装置を簡易な構成にすることができる。
【0015】
[2] 本発明において、前記制御手段は、前記搬送手段にて前記加工ツールを待機位置から加工位置に搬送する際に、前記第1及び第2シリンダの流体圧を制御して、前記加工ツールが該加工ツールのスライド可能範囲の中間に位置した状態で該加工ツールのスライド動作をロックすることを特徴とする。これにより、ロック解除時に、加工ツールを所定前後方向(加工ツールのスライド方向)の両側にスライドさせることができる。
【0016】
[3] 本発明において、前記第1付勢手段は、前記第1シリンダに移動可能に挿入された状態で前記加工ツールに接続する第1ピストン部材を有し、且つ前記加工ツールのスライド動作のロック時に、前記第1ピストン部材が該第1ピストン部材の移動可能範囲の中間に位置するように形成されており、前記第2付勢手段は、前記第2シリンダに移動可能に挿入された状態で前記加工ツールに接続する第2ピストン部材を有し、且つ前記加工ツールのスライド動作のロック時に、前記第2ピストン部材が該第2ピストン部材の移動可能範囲の中間に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、ロック解除時に、所定前後方向の両側に第1及び第2ピストン部材を移動させることができるので、フローティング作用を一層効率的に発揮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御部にて加工ツールの自重がかかる方のシリンダの圧力を該加工ヘッドの自重がかからない方のシリンダの圧力よりも大きくすることができるので、簡易な構成で加工ツールの姿勢にかかわらず、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加工装置を示したブロック図である。
【図2】ヘミングユニットの側面詳細図である。
【図3】前記第1実施形態に係る加工装置を用いた第1フランジに対するヘミング加工の手順を示したフローチャートである。
【図4】第1フランジに対して第1回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【図5】第1フランジに対して第2回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【図6】第2フランジに対して第1回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【図7】第2フランジに対して第2回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【図8】前記第1実施形態に係る加工装置の変形例を示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る加工装置を示したブロック図である。
【図10】前記第2実施形態に係る加工装置のヘミングユニットの上面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】前記第2実施形態に係る加工装置を用いた第1フランジに対するヘミング加工の手順を示したフローチャートである。
【図13】前記第2実施形態に係る加工装置を用いて第1フランジに対して第2回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【図14】第2フランジに対してヘミング加工を行う際の、ヘミングユニットの待機状態を説明するための図である。
【図15】前記第2実施形態に係る加工装置を用いて第2フランジに対して第2回目のヘミング加工を行っている状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る加工装置について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、添付の図面中、矢印Gは重力方向を示す。
【0021】
(第1実施形態)
先ず、本実施形態に係る加工装置10について図1〜図8を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態に係る加工装置10は、ワークW1の縁部に対してローラヘミング加工(ヘミング加工)を行うヘミング加工装置として構成されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態で用いられるワークW1は、断面コ字状に形成された金型Mの上面に位置する第1部材12と、金型Mの下面に位置する第2部材14とを有している。
【0024】
第1部材12は、金型Mの上面に接触する第1アウタパネル16と、第1アウタパネル16の上面に設けられた第1インナパネル18とを有している。第1アウタパネル16の縁部には、上方に略90°屈曲するようにして形成された第1フランジ20が形成されている。
【0025】
第2部材14は、金型Mの下面に接触する第2アウタパネル22と、第2アウタパネル22の下面に設けられた第2インナパネル24とを有している。第2アウタパネル22の縁部には、下方に略90°屈曲するようにして形成された第2フランジ26が形成されている。
【0026】
また、金型Mには、後述するガイドローラ64が係合可能な第1溝28と第2溝30が形成されている。第1溝28は、第1フランジ20に対応しており、第1フランジ20の延在方向に沿って延びている。第2溝30は、第2フランジ26に対応しており、第2フランジ26の延在方向に沿って延びている。
【0027】
加工装置10は、工場等の床面に載置されるロボット基部32と、ロボット基部32に接続された搬送手段としてのロボットアーム34と、ロボットアーム34の先端に設けられたツール支持手段としてのロボットヘッド36と、ロボットヘッド36に設けられた加工ツールとしてのヘミングユニット38と、ロボットヘッド36に設けられたフローティングロック機構40(図2参照)と、コントローラ42とを備えている。
【0028】
ロボットアーム34は、ロボット基部32に接続された第1アーム34aと、第1アーム34aに接続された第2アーム34bと、第2アーム34bに接続された第3アーム34cと、第3アーム34cの先端に設けられてロボットヘッド36を回転自在に支持する回転支持部34dとを有している。
【0029】
ロボット基部32と第1アーム34aの接続部には、ロボット基部32に対する第1アーム34aの軸角度に対応した信号を出力する第1軸角度検出部44が、第1アーム34aと第2アーム34bの接続部には、第1アーム34aに対する第2アーム34bの軸角度に対応した信号を出力する第2軸角度検出部46が、第2アーム34bと第3アーム34cの接続部には、第2アーム34bに対する第3アーム34cの軸角度に対応した信号を出力する第3軸角度検出部48がそれぞれ設けられている。
【0030】
また、回転支持部34dには、ロボットアーム34に対するロボットヘッド36の回転角度に対応した信号を出力する回転角度検出部50が設けられている。
【0031】
図2に示すように、ロボットヘッド36は、断面コ字状に形成されており、回転支持部34dに固定される第1平板52と、第1平板52の両端から立設する一対の第1側板54a、54bとを有している。第1平板52の略中央には、一方向(X方向)に延びた第1ガイドレール56が設けられ、第1ガイドレール56には、その延在方向に沿ってヘミングユニット38を案内する第1スライダ58が設けられている。つまり、ヘミングユニット38は、X方向(所定前後方向)に変位自在な状態(スライド可能な状態)でロボットヘッド36に設けられている。
【0032】
ヘミングユニット38は、断面コ字状に形成された支持部材60と、ワークW1の第1及び第2フランジ20、26(図1参照)に接触するヘミングローラ62と、ワークW1の第1及び第2溝28、30に係合可能なガイドローラ64と、ヘミングローラ62を支持するヘミングローラ支持部66と、ガイドローラ64を支持するガイドローラ支持部68とを有している。
【0033】
支持部材60は、ロボットヘッド36の内側に位置しており、第1スライダ58が固定される第2平板70と、第2平板70の両端に立設する一対の第2側板72a、72bを含んでいる。
【0034】
ヘミングローラ62は、先端側に設けられたテーパローラ62aと、テーパローラ62aと一体構造で基端側に設けられた円筒ローラ62bとを含んでいる。テーパローラ62aは、側面視で45°に傾斜した先細り形状に形成されている。つまり、テーパローラ62aは、円錐台に形成されている。円筒ローラ62bは、テーパローラ62aの基端部最大径部よりもやや大径の円筒形状に形成されている。ガイドローラ64は、周囲が狭幅に設定された円板形状に形成されており、ワークW1の第1及び第2溝28、30に係合可能である。
【0035】
ヘミングローラ支持部66は、円筒ローラ62bを回転自在に支持するヘミングローラ支軸74と、ヘミングローラ支軸74をその延在方向(Y方向)に進退する駆動部76と、第2平板70に固定されてX方向に延びた第2ガイドレール78と、X方向にスライド可能な状態で第2ガイドレール78に設けられ、且つ駆動部76に接続する第2スライダ80とを有している。つまり、ヘミングローラ62は、X方向にスライド自在な状態で支持部材60に設けられている。
【0036】
ガイドローラ支持部68は、第2平板70に接続されており、ガイドローラ64を回転自在に支持するガイドローラ支軸82を有している。
【0037】
また、支持部材60には、第2スライダ80をX方向に移動する加圧用シリンダ部材84が設けられている。
【0038】
フローティングロック機構40は、第1付勢手段としての第1シリンダ機構86と、第2付勢手段としての第2シリンダ機構88とを有している。
【0039】
第1シリンダ機構86には、第1側板54aの内面に固定された第1シリンダ90と、第1シリンダ90に摺動可能に収容された第1ピストン92と、第1ピストン92から延びて第2側板72aの外面に接続する第1ロッド94と、第1シリンダ90内に流体を供給するための第1流体供給部96と、第1流体供給部96と第1シリンダ90とを結ぶ第1流路98とが設けられている。
【0040】
また、第1シリンダ機構86は、第1ガイドレール56の中央に第1スライダ58が位置したときに、第1ピストン92が第1シリンダ90の中央に位置するように設定されている。
【0041】
第2シリンダ機構88には、第1側板54bの内面に固定された第2シリンダ100と、第2シリンダ100に摺動可能に収容された第2ピストン102と、第2ピストン102から延びて第2側板72bの外面に接続する第2ロッド104と、第2シリンダ100内に流体を供給するための第2流体供給部106と、第2流体供給部106と第2シリンダ100とを結ぶ第2流路108とが設けられている。
【0042】
また、第2シリンダ機構88は、第1ガイドレール56の中央に第1スライダ58が位置したときに、第2ピストン102が第2シリンダ100の中央に位置するように設定されている。
【0043】
なお、第1及び第2シリンダ90、100内に供給される流体は、任意に選択してよいが、例えば、エアー等を利用すればよい。
【0044】
コントローラ42は、ロボット制御部110、ヘミングローラ位置制御部112、加圧制御部114、記憶部116、算出部118、第1シリンダ圧制御部120、及び第2シリンダ圧制御部122を有している。
【0045】
ロボット制御部110は、第1〜第3軸角度検出部44、46、48の出力信号(軸角度信号)及び回転角度検出部50の出力信号(回転角度信号)に基づいてロボットアーム34を制御してロボットヘッド36を移動すると共に、その姿勢を変更する。
【0046】
ヘミングローラ位置制御部112は、駆動部76を制御してヘミングローラ支軸74をY方向に進退する。加圧制御部114は、加圧用シリンダ部材84を制御してヘミングローラ62をX方向に移動する。
【0047】
記憶部116には、ヘミングユニット38の重量と、ロック流体圧とが予め記憶されている。ロック流体圧としては、ロボットヘッド36に対してヘミングユニット38がX方向にスライド(相対変位)できないような第1及び第2シリンダ90、100内の流体圧(以下、第1シリンダ圧、第2シリンダ圧と称することがある。)が設定されている。
【0048】
算出部118は、ヘミング加工時における第1シリンダ圧の設定値(第1設定圧)と第2シリンダ圧の設定値(第2設定圧)を算出する。具体的には、ロボットヘッド36の姿勢とヘミングユニット38の重量に基づいて、該姿勢の時の第1及び第2ロッド94、104にかかるヘミングユニット38の自重成分を算出し、該自重を相殺するような第1及び第2シリンダ圧を算出する。なお、ロボットヘッド36の姿勢は、前記軸角度信号及び前記回転角度信号に基づいて算出すればよい。また、ヘミングユニット38の重量は、記憶部116から読み出せばよい。
【0049】
第1シリンダ圧制御部120は、算出部118の算出結果に基づいて第1流体供給部96を制御して第1シリンダ圧を調整する。第2シリンダ圧制御部122は、算出部118の算出結果に基づいて第2流体供給部106を制御して第2シリンダ圧を調整する。
【0050】
次に、本実施形態に係る加工装置10を用いて第1部位12の第1フランジ20に対してヘミング加工を行う例について図1〜図5を参照しながら説明する。
【0051】
先ず、ロボット制御部110は、ロボットアーム34を制御してヘミングユニット38を待機状態にする(図3のステップS1)。ここで、待機状態とは、図1に示すように、ヘミングローラ62の回転軸が水平に位置すると共に、ヘミングローラ62の鉛直下方にガイドローラ64が位置する状態のことをいう。
【0052】
そして、図2に示すように、第2シリンダ圧制御部122は、第2流体供給部106を制御して、第2シリンダ圧を調整することにより、第1ガイドレール56の中央(第1スライダ58のスライド可能範囲の中間)に第1スライダ58を配置する(ステップS2)。これにより、第1スライダ58が第1側板54aに向かう方向(X1方向)の第1スライダ58のストロークと、第1スライダ58が第1側板54bに向かう方向(X2方向)の第1スライダ58のストロークとが同一になる。
【0053】
また、このとき、第1ピストン92は、第1シリンダ90の中央(第1ピストンの移動可能範囲の中間)に位置すると共に、第2ピストン102は、第2シリンダ100の中央(第2ピストン102の移動可能範囲の中間)に位置する。これにより、第1ピストン92のX1方向のストロークと第1ピストン92のX2方向のストロークとが同一になると共に、第2ピストン102のX1方向のストロークと第2ピストン102のX2方向のストロークとが同一になる。
【0054】
次に、コントローラ42は、ヘミングユニット38のスライド動作(X方向の変位)をロックする(ステップS3)。具体的には、第1シリンダ圧制御部120は、第1シリンダ圧をロック流体圧にすると共に、第2シリンダ圧制御部122は、第2シリンダ圧をロック流体圧にする。
【0055】
続いて、ロボット制御部110は、ロボットアーム34を制御して、ガイドローラを第1溝28に係合させる(ステップS4)。このとき、ヘミングユニット38のスライド動作はロックされているので、フローティングロック機構40のフローティング作用によってヘミングユニット38がX方向に振れることはない。これにより、ヘミングユニット38の揺れが停止するまでの待ち時間がなくなるので、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
【0056】
その後、加圧制御部114は、加圧用シリンダ部材84を制御して、ヘミングローラ62をガイドローラ64に接近させる(ステップS5)。これにより、図4に示すように、円筒ローラ62bが金型Mの上面に接触すると共に、テーパローラ62aの錐面に押された第1フランジ20が内側に45°屈曲することになる。
【0057】
また、コントローラ42は、ヘミングユニット38のスライド動作のロックを解除する(ステップS6)。具体的には、第1シリンダ圧制御部120は、第1シリンダ圧を第1設定圧にすると共に、第2シリンダ圧制御部122は、第2シリンダ圧を第2設定圧にする。
【0058】
なお、このとき、本実施形態では、ヘミングローラ62の回転軸が水平方向に延びているので、ヘミングユニット38の自重は第2ロッド104にかかる。そのため、例えば、第1設定圧は第2設定圧よりも低圧に設定され、第2設定圧はヘミングユニット38の自重を相殺するのに必要な圧力に設定されている。但し、第2ロッド104にかかる荷重を増やさないようにするために、第1設定圧は0に設定するのが好ましい。
【0059】
次に、ロボット制御部110は、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動する(ステップS7)。これにより、ガイドローラ64が第1溝28を転動すると共に、ヘミングローラ62が第1フランジ20を連続的に内側に45°屈曲することとなる。
【0060】
このとき、ティーチングデータの軌跡(ティーチング軌跡)とロボットヘッド36の移動位置とにずれが生じた場合であっても、ロボットヘッド36に対してヘミングユニット38がX方向にスライド可能となっているので、ガイドローラ64を第1溝28に追従させることができると共に、ヘミングローラ62を第1フランジ20に対して正確に追従させることができる。
【0061】
具体的には、例えば、ロボットヘッド36の移動位置がティーチング軌跡に対してX1方向にずれた場合、ヘミングユニット38は、ロボットヘッド36に対してX2方向にスライドする。このとき、第1及び第2ピストン92、102もX2方向に移動するので、ヘミングユニット38には、X1方向(ロボットヘッド36の変位方向と直交する方向)の付勢力が作用することとなる。そして、ロボットヘッド36の移動位置がティーチング軌跡に戻ったときに、前記付勢力の作用によってヘミングユニット38がX1方向にスライドし、第1スライダ58が第1ガイドレール56の中央に位置することとなる。なお、ロボットヘッド36の移動位置がティーチング軌跡に対してX2方向にずれた場合についての動作原理は同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0062】
また、ヘミングユニット38のスライド動作のロック解除時に、第1スライダ58が第1ガイドレール56の中央に配置されているので、ロボットヘッド36に対してヘミングユニット38をX1方向とX2方向のいずれの方向にもスライドさせることができる。
【0063】
さらに、前記ロック解除時に、第1ピストン92が第1シリンダ90の中央に位置すると共に、第2ピストン102が第2シリンダ100の中央に位置しているので、第1及び第2ピストン92、102をX1方向とX2方向のいずれの方向にも移動させることができる。これにより、フローティング作用を好適に発揮することができる。
【0064】
ロボットヘッド36の移動開始と共に、以下のステップS8〜S10の処理を行う。すなわち、算出部118は、第2設定圧を算出する(ステップS8)。具体的には、算出部118は、軸角度信号と回転角度信号に基づいて鉛直方向に対するヘミングユニット38の傾きを算出し、その傾きと記憶部116に記憶されているヘミングユニット38の重量とから第2ロッド104に作用するヘミングユニット38の自重成分を算出する。さらに、算出部118は、その自重成分を相殺するような第2シリンダ圧を算出し、その値を第2設定圧とする。
【0065】
そして、第2シリンダ圧制御部122は、第2流体供給部106を制御して、第2シリンダ圧を算出された第2設定圧にする(ステップS9)。これにより、ヘミングユニット38の姿勢に応じて変化する第2ロッド104にかかるヘミングユニット38の自重成分を第2シリンダ圧で相殺させることができるので、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【0066】
その後、コントローラ42は、第1フランジ20に対する第1回目のヘミング加工が終了したか否かを判断する(ステップS10)。第1回目のヘミング加工が終了していないとコントローラ42にて判断された場合(ステップS10:No)、ステップS8に進み、該ステップS8以降の処理を行う。
【0067】
一方、第1回目のヘミング加工が終了したとコントローラ42にて判断された場合(ステップS10:Yes)、加圧制御部114は、ヘミングローラ62をガイドローラ64から遠ざけて金型Mから離間させる(ステップS11)。
【0068】
次に、一旦、ガイドローラ64を第1溝28から離間させた状態で、ヘミングローラ位置制御部112は、駆動部76を制御してヘミングローラ支軸74をヘミングローラ62側に移動する(ステップS12)。続いて、ロボット制御部110は、ガイドローラ64を第1溝28に係合させる(ステップS13)。
【0069】
その後、加圧制御部114は、ヘミングローラ62をガイドローラ64に接近させて第1フランジ20をさらに45°屈曲させる(ステップS14)。これにより、図5に示すように、第1フランジ20は内側に90°屈曲することとなる。
【0070】
続いて、ロボット制御部110は、ティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動して第1フランジ20に対して第2回目のヘミング加工を行う(ステップS15)。これにより、ガイドローラ64が第1溝28を転動すると共に、ヘミングローラ62が第1フランジ20を連続的に内側に更に45°屈曲することとなる。なお、このステップ15では、上述したステップS8〜S10のルーチンと対応したルーチンを行うとよい。
【0071】
第2回目のヘミング加工が終了すると、ヘミングローラ62及びガイドローラ64を金型Mから離間させた後に、ロボット制御部110は、ロボットヘッド36を待機位置まで移動させる(ステップS16)。この段階で、本実施形態に係る加工装置10を用いた第1フランジ20に対するヘミング加工の手順は終了する。
【0072】
次に、本実施形態に係る加工装置10を用いて第2部材14の第2フランジ26に対してヘミング加工を行う例について図1、図6及び図7を参照しながら説明する。なお、基本的な手順は、図3のフローチャートと同じであるので、その図示と詳細な説明は省略する。
【0073】
図1から諒解されるように、第2部材14は、第1部位12を上下反転させた形状を有している。そのため、第2フランジ26を加工する際のヘミングユニット38の待機状態は、上述した待機状態を上下逆にした状態(ロボットヘッド36を180°回転した状態)となる。つまり、待機状態において、ガイドローラ64の鉛直下方にヘミングローラ62が位置することとなる。
【0074】
そして、図6に示すように、第2フランジ26に対して第1回目のヘミング加工を行う際には、ガイドローラ64を第2溝30に係合させた状態でヘミングローラ62をガイドローラ64に接近させて第2フランジ26を内側に45°屈曲させた後に、ロボット制御部110は、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動する。
【0075】
また、算出部118は、第1設定圧を算出し、第1シリンダ圧制御部120が、第1シリンダ圧を算出された第1設定圧にすることにより、ヘミングユニット38の姿勢に応じてヘミングユニット38の自重成分を第1シリンダ圧で相殺させることができるので、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【0076】
なお、第2フランジ26に対して第2回目のヘミング加工を行う際には、図7に示すように、ヘミングローラ支軸74をヘミングローラ62側に移動した上で、ガイドローラ64を第2溝30に係合させた状態でヘミングローラ62をガイドローラ64に接近させて第2フランジ26を内側にさらに45°屈曲させた後に、ロボット制御部110が、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動すればよい。
【0077】
本実施形態に係る加工装置10は、第1及び第2シリンダ機構86、88を設けているので、例えば、ヘミングユニット38の姿勢を上下逆にした状態であっても、ヘミングユニット38の自重成分を相殺させた状態でフローティング作用を発揮することができる。
【0078】
また、本実施形態では、サーボモータではなく、第1及び第2シリンダ90、100を利用しているので、加工装置10を簡易な構成にすることができる。
【0079】
本実施形態に係る加工装置10は、上述した構成に限定されない。例えば、ロボットヘッド36の待機状態において、図8に示すように、第1スライダ58を第1ガイドレール56のX1方向の端部に配置し、第1ピストン92を第1シリンダ90のX1方向の端部に配置すると共に、第2ピストン102を第2シリンダ100のX1方向の端部に配置してもよい。
【0080】
この場合には、第1スライダ58、第1ピストン92、及び第2ピストン102のX2方向のストロークを大きくすることができるので、例えば、ヘミングローラ62の移動位置がティーチング軌跡に対してX1方向にずれた場合に、フローティング作用を好適に発揮することができる。
【0081】
なお、これと同様に、第1スライダ58を第1ガイドレール56のX2方向の端部に配置し、第1ピストン92を第1シリンダ90のX2方向の端部に配置すると共に、第2ピストン102を第2シリンダ100のX2方向の端部に配置することも当然可能である。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る加工装置200について図9〜図15を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、上述した第1実施形態と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0083】
先ず、本実施形態で用いられるワークW2は、図9に示すように、第1金型M1の上面に設けられた第1部材12と、第2金型M2の上面に設けられた第2部材202とを有している。第2部材202は、第2フランジ204が形成された第2アウタパネル206と、第2アウタパネル206の上面に設けられた第2インナパネル208を有している。なお、図9から諒解されるように、第2フランジ204は、第1フランジ20よりも大きく形成されている。第2金型M2には、後述する第2ガイドローラ248が係合可能な第2溝210が形成されている。
【0084】
図9〜図11に示すように、本実施形態に係る加工装置200は、ヘミングユニット212、フローティングロック機構214、及びコントローラ216の構成が第1実施形態と異なっている。
【0085】
具体的には、図10及び図11に示すように、第1ガイドレール56に設けられる第1スライダ58がY方向に延びており、ロボットヘッド36の外側に位置する第1スライダ58の端部にヘミングユニット212が設けられている。
【0086】
また、ヘミングユニット212は、第1スライダ58の端部に固定された支持部材215と、第1フランジ20を加工するための第1ローラユニット217と、第2フランジ204を加工するための第2ローラユニット218と、第1及び第2ローラユニット217、218が取り付けられるローラ支持部材220と、支持部材215に設けられてローラ支持部材220をスライド可能に支持するスライド機構222と、を備えている。
【0087】
支持部材215は、X方向に延びた状態で第1スライダ58に接続する第1板224と、第1板224の上端からロボットヘッド36が位置する側の反対側(Y1方向)に延びた第2板226と、第2板226の端部からX2方向に延びた第3板228とを有している。
【0088】
スライド機構222は、第2板226の下面中央に固定されてY方向に延びた第2ガイドレール230と、Y方向にスライド可能な状態で第2ガイドレール230に設けられてローラ支持部材220に接続する第2スライダ232とを有している。
【0089】
図10に示すように、ローラ支持部材220は、第2スライダ232の端部に固定された状態で第2板226から張り出すように形成されている。なお、以下の説明において、ローラ支持部材220のうち第2板226から張り出した部位を張出部220aと称することがある。
【0090】
図11に示すように、第1ローラユニット217は、張出部220aの下面に設けられており、第2ローラユニット218は、第1ローラユニット217よりもロボットヘッド36側に位置した状態で張出部220aの上面に設けられている。つまり、第1及び第2ローラユニット217、218は、Y方向にオフセットしている。これにより、ヘミング加工中に互いの第1及び第2ローラユニット217、218が邪魔になることはない。
【0091】
また、第1ローラユニット217は、第1フランジ20に接触する第1ヘミングローラ234と、第1溝28に係合可能な第1ガイドローラ236と、第1ヘミングローラ234を回転自在に支持する第1ヘミングローラ支軸238と、第1ヘミングローラ支軸238をY方向に進退する第1駆動部240と、張出部220aに接続されて第1ガイドローラ236を回転自在に支持する第1ガイドローラ支軸242とを有している。
【0092】
第1ヘミングローラ支軸238は、第1ヘミングローラ234をX方向に移動する第1加圧用シリンダ部材244を介して張出部220aに設けられている。
【0093】
第2ローラユニット218は、第2フランジ204に接触する第2ヘミングローラ246と、第2溝210に係合可能な第2ガイドローラ248と、第2ヘミングローラ246を回転自在に支持する第2ヘミングローラ支軸250と、第2ヘミングローラ支軸250をY方向に進退する第2駆動部252と、張出部220aに接続されて第2ガイドローラ248を回転自在に支持する第2ガイドローラ支軸254とを有している。
【0094】
第2ヘミングローラ支軸250は、第2ヘミングローラ246をX方向に移動する第2加圧用シリンダ部材256を介して張出部220aに設けられている。
【0095】
第1ヘミングローラ234は、第1実施形態のヘミングローラ62と同一の形状で同一の大きさに形成されている。第2ヘミングローラ246は、第1ヘミングローラ234と同一の形状を有し、第1ヘミングローラ234よりも大きく形成されている。
【0096】
第1ガイドローラ236は、第1実施形態のガイドローラ64と同一の形状で同一の大きさに形成されている。第2ガイドローラ248は、第1ガイドローラ236と同一の形状を有し、第1ガイドローラ236よりも大きく形成されている。
【0097】
フローティングロック機構214は、第1〜第4シリンダ機構86、88、258、260を有している。なお、本実施形態では、第1シリンダ機構86の第1ロッド94が第1スライダ58に接続すると共に、第2シリンダ機構88の第2ロッド104が第1スライダ58に接続している。
【0098】
第3シリンダ機構258には、第3板228に設けられた第3シリンダ262と、第3シリンダ262に摺動可能に収容された第3ピストン264と、第3ピストン264から延びて第2スライダ232に接続する第3ロッド266と、第3シリンダ262内に流体を供給するための第3流体供給部268と、第3流体供給部268と第3シリンダ262とを結ぶ第3流路270とが設けられている。
【0099】
また、第3シリンダ機構258は、第2ガイドレール230の中央に第2スライダ232が位置したときに、第3ピストン264が第3シリンダ262の中央に位置するように設定されている。
【0100】
第4シリンダ機構260には、第1板224に設けられた第4シリンダ272と、第4シリンダ272に摺動可能に収容された第4ピストン274と、第4ピストン274から延びて第2スライダ232に接続する第4ロッド276と、第4シリンダ272内に流体を供給するための第4流体供給部278と、第4流体供給部278と第4シリンダ272とを結ぶ第4流路280とが設けられている。
【0101】
また、第4シリンダ機構260は、第2ガイドレール230の中央に第2スライダ232が位置したときに、第4ピストン274が第4シリンダ272の中央に位置するように設定されている。
【0102】
コントローラ216には、第3シリンダ圧制御部284及び第4シリンダ圧制御部286が追加されている。また、第1実施形態のヘミングローラ位置制御部112が第1及び第2ヘミングローラ位置制御部288、290になり、第1実施形態の加圧制御部114が第1及び第2加圧制御部292、294になっている。
【0103】
第1ヘミングローラ位置制御部288は、第1駆動部240を制御して第1ヘミングローラ支軸238をY方向に進退する。第2ヘミングローラ位置制御部290は、第2駆動部252を制御して第2ヘミングローラ支軸250をY方向に進退する。
【0104】
第1加圧制御部292は、第1加圧用シリンダ部材244を制御して第1ヘミングローラ234をX方向に移動する。第2加圧制御部294は、第2加圧用シリンダ部材256を制御して第2ヘミングローラ246をX方向に移動する。
【0105】
記憶部296には、ヘミングユニット212の重量と、第1ロック流体圧と、第2ロック流体圧と、第3設定圧と、第4設定圧とが予め記憶されている。
【0106】
第1ロック流体圧は、第1実施形態のロック流体圧に相当する。第2ロック流体圧としては、支持部材215に対してローラ支持部材220がY方向にスライドできないような第3シリンダ圧及び第4シリンダ圧が設定されている。
【0107】
第3及び第4設定圧は、支持部材215に対してローラ支持部材220がY方向にスライド可能な程度に設定されている。
【0108】
第3シリンダ圧制御部284は、第3流体供給部268を制御して第3シリンダ圧を調整する。第4シリンダ圧制御部286は、第4流体供給部278を制御して第4シリンダ圧を調整する。
【0109】
次に、本実施形態に係る加工装置200を用いて第1部材12の第1フランジ20に対してヘミング加工を行う例について図9、図11〜図13を参照しながら説明する。なお、基本的な手順は、図3のフローチャートと同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0110】
先ず、ロボット制御部110は、ロボットアーム34を制御してヘミングユニット212を待機状態にする(ステップS21)。ここで、待機状態とは、図9に示すように、第1ヘミングローラ234の鉛直下方に第1ガイドローラ236が位置すると共に、第2ガイドローラ248の鉛直下方に第2ヘミングローラ246が位置する状態のことをいう。
【0111】
そして、図11に示すように、第2シリンダ圧制御部122は、第2シリンダ圧を調整することにより、第1ガイドレール56の中央に第1スライダ58を配置すると共に、第3及び第4シリンダ圧制御部284、286は、第3及び第4シリンダ圧を調整することにより、第2ガイドレール230の中央(第2スライダ232のスライド可能範囲の中間)に第2スライダ232を配置する(ステップS22)。これにより、第2スライダ232のY1方向のストロークと、第2スライダ232のY2方向のストロークとが同一になる。
【0112】
また、このとき、第3ピストン264は、第3シリンダ262の中央(第3ピストン264の移動可能範囲の中間)に位置すると共に、第4ピストン274は、第4シリンダ272の中央(第4ピストン274の移動可能範囲の中間)に位置する。これにより、第3ピストン264のY1方向のストロークと第3ピストン264のY2方向のストロークとが同一になると共に、第4ピストン274のY1方向のストロークと第4ピストン274のY2方向のストロークとが同一になる。
【0113】
次に、コントローラ216は、第1ローラユニット217のX方向及びY方向のスライド動作をロックする(ステップS23)。具体的には、第3シリンダ圧制御部284は、第3シリンダ圧を第2ロック流体圧にすると共に、第4シリンダ圧制御部286は、第4シリンダ圧を第2ロック流体圧にする。なお、第1及び第2シリンダ圧は、第1ロック流体圧になっている。
【0114】
続いて、ロボット制御部110は、第1ガイドローラ236を第1溝28に係合させる(ステップS24)。このとき、ロボットヘッド36に対するヘミングユニット212のスライド動作がロックされると共に、支持部材215に対するローラ支持部材220のスライド動作がロックされているので、フローティングロック機構214のフローティング作用によって第1ローラユニット217がX方向及びY方向に振れることはない。これにより、第1ローラユニット217の揺れが停止するまでの待ち時間がなくなるので、サイクルタイムの短縮化を図ることができる。
【0115】
その後、第1加圧制御部292は、第1加圧用シリンダ部材244を制御して、第1ヘミングローラ234を第1ガイドローラ236に接近させることにより、第1フランジ20を内側に45°屈曲させる(ステップS25)。
【0116】
また、コントローラ216は、第1ローラユニット217のスライド動作のロックを解除する(ステップS26)。
【0117】
具体的には、第1シリンダ圧を第1設定圧に、第2シリンダ圧を第2設定圧に、第3シリンダ圧を第3設定圧に、第4シリンダ圧を第4設定圧にする。そのため、例えば、第1、第3及び第4設定圧は、第2設定圧よりも低圧に設定され、第2設定圧はヘミングユニット212の自重を相殺するのに必要な圧力に設定されている。但し、第2ロッド104にかかる荷重を増やさないようにするために、第1設定圧は0に設定するのが好ましい。
【0118】
次に、ロボット制御部110は、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動して第1フランジ20に対して第1回目のヘミング加工を行う(ステップS27)。これにより、第1ガイドローラ236が第1溝28を転動すると共に、第1ヘミングローラ234が第1フランジ20を連続的に内側に45°屈曲することとなる。なお、このステップS27では、第1実施形態の図3のフローチャートにおけるステップS8〜S10のルーチンと同一のルーチンが行われる。
【0119】
また、本実施形態では、ティーチング軌跡とロボットヘッドの移動位置とにY方向のずれが生じた場合であっても、支持部材215に対してローラ支持部材220がY方向にスライド可能となっているので、第1ガイドローラ236を第1溝28に追従させることができると共に、第1ヘミングローラ234を第1フランジ20に対して正確に追従させることができる。つまり、第1ローラユニット217は、X方向及びY方向のずれに対応することができる。
【0120】
なお、本実施形態の加工装置200は、第3及び第4シリンダ機構258、260を備えているので、ヘミング加工中にY方向のフローティング作用を好適に発揮することができる。
【0121】
第1フランジ20に対する第1回目のヘミング加工が終了すると、図13に示すように、ロボット制御部110は、ロボットヘッド36をティーチングデータに基づいて移動して第1フランジ20に対して第2回目のヘミング加工を行う(ステップS28)。
【0122】
その後、ロボット制御部110は、ロボットヘッド36を待機位置に移動させる(ステップS29)。この段階で、本実施形態に係る加工装置200を用いた第1フランジ20に対するヘミング加工の手順は終了する。
【0123】
次に、本実施形態に係る加工装置200を用いて第2部材202の第2フランジ204に対してヘミング加工を行う例について図9、図14及び図15を参照しながら説明する。なお、基本的な手順は、図12のフローチャートと同じであるので、その図示と詳細な説明は省略する。
【0124】
図9から諒解されるように、第2部材202は、第1部材12よりも大きく形成されている。そのため、本実施形態では、ヘミング加工の効率を上げるために、第1ローラユニット217のローラよりも大きいローラを有する第2ローラユニット218が利用される。
【0125】
そして、第2部材202は、第1部材12と同じ向きに配置されているので、第2フランジ204を加工する際のヘミングユニット38の待機状態は、図14に示すように、上述した待機状態を左右反転させて上下逆にした状態となる。これにより、第2ヘミングローラ246の鉛直下方に第2ガイドローラ248が位置する。
【0126】
そして、第2フランジ204に対して第1回目のヘミング加工を行う際には、第2ガイドローラ248を第2溝210に係合させた状態で第2ヘミングローラ246を第2ガイドローラ248に接近させて第2フランジ204を内側に45°屈曲させた後に、ロボット制御部110は、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動する。
【0127】
また、算出部118は、第1設定圧を算出し、第1シリンダ圧制御部120が、第1シリンダ圧を算出された第1設定圧にすることにより、ヘミングユニット38の姿勢に応じてヘミングユニット38の自重成分を第1シリンダ圧で相殺させることができるので、フローティング作用を効率的に発揮することができる。
【0128】
なお、第2フランジ204に対して第2回目のヘミング加工を行う際には、図15に示すように、第2ヘミングローラ支軸250を第2ヘミングローラ246側に移動した上で、第2ガイドローラ248を第2溝210に係合させた状態で第2ヘミングローラ246を第2ガイドローラ248に接近させて第2フランジ204を内側にさらに45°屈曲させた後に、ロボット制御部110が、予め作成しておいたティーチングデータに基づいてロボットヘッド36を移動すればよい。
【0129】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0130】
10、200…加工装置 34…ロボットアーム(搬送手段)
36…ロボットヘッド(ツール支持手段)
38、212…ヘミングユニット(加工ツール)
40…フローティングロック機構 42、216…コントローラ
56…第1ガイドレール 58…第1スライダ
62…ヘミングローラ 64…ガイドローラ
86…第1シリンダ機構(第1付勢手段) 88…第2シリンダ機構(第2付勢手段)
90…第1シリンダ 92…第1ピストン
94…第1ロッド 100…第2シリンダ
102…第2ピストン 104…第2ロッド
110…ロボット制御部 120…第1シリンダ圧制御部
122…第2シリンダ圧制御部 M…金型
W1、W2…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するための加工ツールと、
前記加工ツールを所定前後方向にスライド可能に支持するツール支持手段と、
前記ツール支持手段を搬送する搬送手段と、
前記ツール支持手段に設けられて流体を収容する第1シリンダを有し、且つ前記第1シリンダの流体圧の作用下に、前記所定前後方向に前記加工ツールを付勢可能な第1付勢手段と、
前記ツール支持手段に設けられて流体を収容する第2シリンダを有し、且つ前記第2シリンダの流体圧の作用下に、前記第1付勢手段の付勢方向とは反対方向に前記加工ツールを付勢可能な第2付勢手段と、
前記第1及び第2シリンダの流体圧を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置において、
前記制御手段は、前記搬送手段にて前記加工ツールを待機位置から加工位置に搬送する際に、前記第1及び第2シリンダの流体圧を制御して、前記加工ツールが該加工ツールのスライド可能範囲の中間に位置した状態で該加工ツールのスライド動作をロックすることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加工装置において、
前記第1付勢手段は、前記第1シリンダに移動可能に挿入された状態で前記加工ツールに接続する第1ピストン部材を有し、且つ前記加工ツールのスライド動作のロック時に、前記第1ピストン部材が該第1ピストン部材の移動可能範囲の中間に位置するように形成されており、
前記第2付勢手段は、前記第2シリンダに移動可能に挿入された状態で前記加工ツールに接続する第2ピストン部材を有し、且つ前記加工ツールのスライド動作のロック時に、前記第2ピストン部材が該第2ピストン部材の移動可能範囲の中間に位置するように形成されていることを特徴とする加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate