説明

加水分解耐性ポリアミド−エラストマー混合物、それから製造される成形品及びそれらの使用

本発明は改良された加水分解耐性を有するポリアミド−エラストマー混合物に関する。この目的を達成するために、エラストマーは特にミクロゲルの形態で存在する。本発明のポリアミド−エラストマー混合物は、自動車産業において、例えば特に媒体を伝達する配管として使用される成形品に加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、改良された加水分解耐性をもつポリアミド−エラストマー混合物に関する。この場合、エラストマーは特にミクロゲルの形態で存在する。本発明のポリアミド−エラストマー混合物は、例えば自動車産業において、特に媒体伝達導管として使用される成形品に加工することができる。
【0002】
自動車産業では媒体伝達導管を製造するために、中等度〜高度の柔軟性を有する材料が要求される。任意の軟化剤を一切含有しない柔軟性ポリマーは、基本的に、種々の方法で調製することができる。
【0003】
柔軟なポリアミドを製造するための第1の方法は、ポリエーテルセグメント又はポリエステルセグメントの組み込みに基づく。
【0004】
第2の方法は、エチレン/プロピレンコポリマー又はエチレン/ブチレンコポリマーを加えることにより、ポリアミドが柔軟になるように調節される、配合方法に基づく。
【0005】
いずれの方法、すなわち重合方法も配合方法も、生成物は耐薬品性が低く、燃料及びオイル中で増大した膨潤を示すという点で不利である。そのうえ、これらの製品には、高温での加水分解耐性が低いという短所もある。
【0006】
もう一つの方法では架橋エラストマー相の柔軟化効果を利用する。例えばDE10345043A1には、熱可塑性材料と高エネルギー放射線による架橋を受けていないミクロゲルとの組成物が記載されており、これはオイル中で小さな膨潤を示す。本明細書で使用されるミクロゲルは、混合に先だって別途製造され、すなわち架橋も行われる。架橋は、好適なモノマーを選択することによって重合中に直接行われるか、又は重合後にペルオキシドを使って行われる。
【0007】
これらを踏まえて、本発明の目的は、良好な柔軟性を有すると同時に、加水分解耐性及びオイル膨潤についても良好な性質を有する、ポリアミド系材料を提供することだった。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有するポリアミド−エラストマー混合物、及びそこから製造される請求項25の特徴を有する成形品によって達成される。他の従属請求項は有利な実施態様を例示している。本発明による使用は、請求項32、33及び34に明記する。
【0009】
本発明によれば、
a)1.75以上の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有する、30〜95重量%の少なくとも1つの部分結晶性ポリアミド、
b)乳化重合の後、乳化重合中に得られたラテックスの噴霧乾燥を行うことによって調製される、5〜50重量%の少なくとも1つのエラストマー、
c)場合により、1.75未満の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有する、0〜20重量%の1つ以上のポリアミド、
(重量%の上記表示は構成要素(a)〜(c)の総量に基づく)と、
100重量部の構成要素(a)〜(c)に対して0〜100重量部の1つ以上の添加剤と
を含有するポリアミド−エラストマー混合物が提供される。
【0010】
乳化重合中に得られるラテックスを噴霧乾燥することによって製造されるエラストマーb)は、好ましくは、2μm〜300μmの範囲、好ましくは2μm〜200μm、特に5〜150μmの範囲の平均粒径を有する。この場合、平均粒径は、例えば粒度分布から、レーザー回折によって(特にラテックス中でも、例えばMastersizer2000を使って)決定されるd50値として、決定することができる。特に好ましくは、全ての粒子の直径が、2μm〜300μmの範囲内、好ましくは2μm〜200μm、特に5〜150μmの範囲内にある。これは、例えば電子顕微鏡像を鑑定することなどによって、決定することができる。
【0011】
驚いたことに、本発明のポリアミド−エラストマー混合物は高い加水分解耐性を有することを実証することができた。これは、135℃の水/グリコール(60:40)混合物中、貯蔵時間500時間の時点で、(初期値に対して)少なくとも20%の破断点伸び残存率を示す、ポリアミド−エラストマー混合物から作製された引張試験ロッドによって証明することができた。
【0012】
好ましくは、部分結晶性ポリアミド(a)は、ポリアミドPA46、PA6、PA66、PA69、PA610、PA612、PA614、PA616、PA618、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA1212、PA MXD6、PA MXD6/MXDI、PA9T、PA10T、PA12T、PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/10T、それらのコポリアミド、及び、ポリエステル、ポリエーテル、ポリシロキサン又はポリオレフィン系のソフトセグメントをもつポリアミドブロックコポリマーであって、ポリアミドブロックコポリマーのポリアミド含有量が少なくとも40重量%であるもの、並びに、それらの配合物からなる群より選択される。
【0013】
特に部分結晶性ポリアミド(a)は、ラクタム含有ホモポリアミドPA6及びPA12、及び、コポリアミドPA6/12、PAX/66、PAX/69、PAX/610、PAX/612、PAX/614、PAX/618、PA6T/X、PA6T/6I/X、PA6T/66/Xであって、コポリアミドのラクタム含有量が少なくとも20重量%であり、X=6又は12であるもの、及び、ポリエステル、ポリエーテル、ポリシロキサン又はポリオレフィン系のソフトセグメントをもつポリアミドブロックコポリマーであって、ポリアミドブロックコポリマーのラクタム含有量が少なくとも40重量%であるもの、並びにそれらの配合物の群から選択される。
【0014】
本発明によれば、ポリアミド−エラストマー混合物は、構成要素(a)〜(c)の和に対して、好ましくは40〜85重量%、特に好ましくは50〜78重量%の構成要素(a)を含有する。
【0015】
ポリアミド(a)との関連で「部分結晶性」という用語は、本明細書においては、非晶質領域と結晶質領域とを同時に有するポリマーを意味する(例えばHans Batzer「Polymere Werkstoffe in drei Baenden」第1巻第4章253頁以降参照及び第5章227頁以降参照)。
【0016】
ポリアミド(a)は、好ましくは、20〜120μeq/g、好ましくは30〜100μeq/gの範囲の末端アミノ基濃度を有する。ポリアミド(a)の末端カルボキシル基濃度は、好ましくは、最大30μeq/g、特に好ましくは最大20μeq/gである。
【0017】
本発明に従って含有されるポリアミド(a)は、好ましくは、1.75〜2.4の範囲、特に1.8〜2.3の範囲の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有する。
【0018】
ミクロゲルとも呼ばれるエラストマーb)は、乳化重合によって製造される。本発明によれば「エラストマー」という用語は、特に、それが、好ましくは10℃未満、好ましくは0℃未満のガラス転移温度を有する、架橋された、又は部分的に架橋された、すなわち分岐したポリマー材料であることを表す。
【0019】
エラストマーb)は、好ましくは、
b1)≧55重量%の少なくとも1つの共役ジエン、
b2)5〜45重量%のアクリロニトリル、
b3)場合により、0〜5重量%の1つ以上の多官能性ラジカル重合性モノマー、及び
b4)場合により、0〜20重量%の、b1)〜b3)とは異なる1つ以上のラジカル重合性モノマー、
の乳化重合によって製造される(重量%の上記表示は構成要素b1)〜b4)の総量に基づく)。
【0020】
好ましくは、ブタジエン、イソプレン、2−クロロブタジエン及び2,3−ジクロロブタジエンからなる群からのモノマーが、共役ジエン(b1)として使用される。ブタジエンは特に好ましい。
【0021】
好ましい実施態様では、構成要素b2)としてのアクリロニトリルの量が、構成要素b1)〜b4)の総量に対して、10〜40重量%の範囲、特に好ましくは28〜40重量%の範囲にある。
【0022】
多官能性ラジカル重合性モノマー(b3)は、好ましくは、2つ以上のラジカル重合性官能基を含むモノマー、例えばジ不飽和又はポリ不飽和ラジカル重合性モノマー、特に、好ましくは2、3又は4個の重合性C=C二重結合をもつ化合物、例えば特に、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トルイレンビス(マレイミド)、トリアリルトリメリテート、及び、C−〜C10−ポリアルコール(特にエチレングリコール、プロパンジオール−1,2、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール、2〜20(特に2〜8)個のオキシエチレン単位をもつポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール−A、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール)の多官能性アクリレート及びメタクリレート、脂肪族ジオール及び脂肪族ポリオールから得られる不飽和ポリエステル、並びに、それらの混合物から選択される。
【0023】
より好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマー(b3)は、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール−1,4−ジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物から選択される。
【0024】
上述の多官能性ラジカル重合性モノマー(b3)は、特に、エラストマー(b)を調製する際の架橋に役立つ。
【0025】
しかし、エラストマー(b)の架橋は、ラジカル開始剤の存在下で、構成要素b1)及びb2)の乳化重合とそれに続くの架橋とによって、構成要素b3)を使用せずに行うこともできる。好適なラジカル開始剤は、この場合、有機ペルオキシド、特に、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス−(t−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、di−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン−3,2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、並びに、有機アゾ化合物、特にアゾ−ビス−イソブチロニトリル及びアゾ−ビス−シクロヘキサンニトリル、並びに、ジメルカプト化合物及びポリメルカプト化合物、特にジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジン及びメルカプト末端ポリスルフィドゴム、特にビス−クロロエチルホルマールとナトリウムポリスルフィドとのメルカプト末端反応生成物などから選択される。
【0026】
重合後の架橋については、特にEP1307504を参照されたい。
【0027】
更に、高い内部転化率値をもつ重合によるモノマー供給プロセスで、あるいは、高い転化率値に達するまで、特に使用したモノマー混合物の総量に対して≧70モル%、好ましくは≧80モル%の転化率値に達するまで、好ましくは≧10℃、より好ましくは≧20℃の温度で重合を続けることにより上述の多官能性ラジカル重合性モノマーb3)を添加することなく、エラストマーb)の調製中に架橋を行うこともできる。
【0028】
もう一つの方法として、調節剤の非存在下及び/又は高温(特に、≧10℃の温度)で、重合を行うことも考えられる。これらの条件下では、重合物(b)中にジエンもモノマーとして使用される場合に、残っている二重結合が、架橋反応にも利用されることができる。
【0029】
場合により、本発明により使用されるエラストマー(b)は、構成要素b1)〜b3)とは異なる0〜20重量%のラジカル重合性モノマーb4)を、更に含有することができる。好ましくは、ラジカル重合性モノマーb4)は、スチレン、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、例えばエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロペン、及び、二重結合含有カルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アミン官能化(メタ)アクリレート、例えば1級アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート及びアミノブチル(メタ)アクリレート、2級アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル、特にtert−ブチルアミノ(C2−C4)アルキル(メタ)アクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニル−ピリジン、4−ビニル−ピリジン、N−アリル−尿素及びN−アリル−チオ尿素、(メタ)アクリルアミド類、例えば(メタ)アクリルアミド、一重又は二重N−置換(メタ)アクリルアミド、並びにそれらの混合物から選択される。
【0030】
好ましくは、エラストマーb)はニトリルゴム(NBR)からなり、乳化重合によって調製され、その場合、架橋は重合中に起こる。乳化重合の終了時に、ニトリルゴムは架橋粒子の形態をとり、これをNBRミクロゲルともいう。
【0031】
本発明において好ましいNBRミクロゲルは、一般に、少なくとも1つのα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1つの共役ジエン、及び場合により、1つ以上の更なる共重合性モノマーの繰返し単位を有する。
【0032】
共役ジエンは、任意の種類のものであることができる。(C−C)−共役ジエンを、使用することが好ましい。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン又はそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエン及びイソプレン、又は、それらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンは、特に最も好ましい。
【0033】
任意の周知のα,β−不飽和ニトリルを、α,β−不飽和ニトリルとして使用することができ、(C−C)−α,β−不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−クロロアクリロニトリル、エタクリロニトリル又はそれらの混合物)が、好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0034】
従って、特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリル及び1,3−ブタジエンのコポリマーである。
【0035】
共役ジエン及びα,β−不飽和ニトリルの他にも、1つ以上の更なる共重合性モノマー(例えば、α,β−不飽和モノカルボン酸又はα,β−不飽和ジカルボン酸、それらのエステル又はアミド)を使用することができる。
【0036】
フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイタコン酸を、α,β−不飽和モノカルボン酸又はα,β−不飽和ジカルボン酸として使用することができる。この場合は、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸が好ましい。そのようなニトリルゴムは、一般に、カルボキシル化ニトリルゴムとも呼ばれ、又は「XNBR」と略記される。
【0037】
アルキルエステル、アルコキシアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル又はそれらの混合物を、α,β−不飽和カルボン酸のエステルとして使用する。
【0038】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートを挙げることができる。特に、n−ブチルアクリレートが使用される。
【0039】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシエチル(メタ)アクリレートである。特に、メトキシエチルアクリレートが使用される。
【0040】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシ(ブチル(メタ)アクリレートである。
【0041】
更に、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートを、α,β−不飽和カルボン酸のエステルとして使用する。
【0042】
その他の考え得るモノマーは、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルピリジン)である。
【0043】
本発明により好ましく使用されるニトリルゴム中の共役ジエン及びα,β−不飽和ニトリルの含有量は、広範囲にわたって変動することができる。共役ジエンの含有量又は和は、全ポリマー量に対して、通常は20〜95重量%の範囲、好ましくは40〜90重量%の範囲、特に好ましくは60〜85重量%の範囲にある。α,β−不飽和ニトリルの含有量又は和は、全ポリマー量に対して、通常は5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。モノマーの含有量は、いずれの場合も、合計すると100重量%になる。
【0044】
追加のモノマーは、全ポリマー量に対して、0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で、存在することができる。その場合、対応する共役ジエン及び/又はα,β−不飽和ニトリルの含有量は、これら追加のモノマーの含有量で置き換えられ、いずれの場合も、全てのモノマーの含有量を合計すると100重量%になる。
【0045】
(メタ)アクリル酸のエステルを追加のモノマーとして使用する場合には、通常、1〜25重量%の量で行われる。
【0046】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はα,β−不飽和ジカルボン酸を追加のモノマーとして使用する場合には、通常、10重量%未満の量で行われる。
【0047】
本発明により好ましく使用されるニトリルゴムミクロゲルでは、ケルダール法によるDIN53625に従って、窒素含有量が決定される。架橋のために、ニトリルゴムミクロゲルは、20℃のメチルエチルケトンに、≧85重量%不溶である。
【0048】
架橋されたニトリルゴム又はニトリルゴムミクロゲルのガラス転移温度は、通常は、−70℃〜+10℃の範囲、好ましくは−60℃〜0℃の範囲にある。
【0049】
好ましくは、本発明により使用されるエラストマーb)は、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、及び場合により、1つ以上の他の共重合性モノマーの繰返し単位を有するニトリルゴムである。アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、及び1つ以上のα,β−不飽和モノカルボン酸又はα,β−不飽和ジカルボン酸、それらのエステル又はアミドの繰返し単位、特に、α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰返し単位、特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート又はラウリル(メタ)アクリレートの繰返し単位を有するニトリルゴムも好ましい。
【0050】
本発明により使用される構成要素b)として好ましいエラストマー又はニトリルゴムミクロゲルの調製は、本発明の方法における乳化重合を利用して行われる。
【0051】
乳化重合は、一般に、乳化剤を使って行われる。この目的には、広範囲にわたる乳化剤が知られており、当業者はそれらを利用することができる。例えば、アニオン性乳化剤を、又は、中性乳化剤をも乳化剤として使用することができる。アニオン性乳化剤が使用されることが好ましく、特に好ましくは、水溶性塩の形態で使用する。
【0052】
アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸を含有する樹脂酸混合物の二量化、不均化、水素化及び修飾によって得られる変性樹脂酸は、アニオン性乳化剤として使用することができる。特に好ましい変性樹脂酸は、不均化樹脂酸である(「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」第6版、第31巻、345〜355頁)。
【0053】
脂肪酸もアニオン性乳化剤として使用することができる。これらは1分子あたり6〜22個のC原子を含有する。これらは完全に飽和していてもよいし、あるいは、その分子中に1つ以上の二重結合を含有することもできる。脂肪酸は、起源特異的な油脂(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などがある。これらのカルボン酸は、通常、ヒマシ油、綿実油、ラッカセイ油、アマニ油、ヤシ脂、パーム核油、オリーブ油、ナタネ油、ダイズ油、魚油及び牛脂など)系のものである(「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」第6版、第13巻、75〜108頁)。好ましいカルボン酸は、ヤシ脂肪酸及び牛脂に由来し、部分的又は完全に水素化される。
【0054】
変性樹脂酸又は脂肪酸系の前記カルボン酸は、水溶性のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩の形態で使用される。
【0055】
ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。
【0056】
更なるアニオン性乳化剤は、有機残基に結合したスルホネート、サルフェート、及びホスフェートである。考え得る有機残基としては、脂肪族化合物、芳香族化合物、アルキル化芳香族化合物、縮合芳香族化合物、並びにメチレン架橋芳香族化合物を挙げることができ、ここでメチレン架橋芳香族化合物及び縮合芳香族化合物は、更にアルキル化されることができる。アルキル鎖の長さはC原子数6〜25である。芳香族化合物に結合するアルキル鎖の長さはC原子数3〜12である。
【0057】
サルフェート、スルホネート、及びホスフェートは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩の形態で使用される。ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩が好ましい。
【0058】
前記スルホネート、サルフェート及びホスフェートの例としては、Na−ラウリルサルフェート、Na−アルキルスルホネート、Na−アルキルアリールスルホネート、メチレン架橋アリールスルホネートのNa塩、アルキル化ナフタレンスルホネートのNa塩、並びにメチレン架橋ナフタレンスルホネートのNa塩を挙げることができ、これらはオリゴマー化されることがあり、その場合のオリゴマー化度は2〜20である。通常、アルキル化ナフタレンスルホン酸及びメチレン架橋(かつ場合によりアルキル化)ナフタレンスルホン酸は、その分子内に2つ以上のスルホン酸基(2〜3個のスルホン酸基)を含有することもできる異性体混合物として存在する。Na−ラウリルサルフェート、12〜18個のC原子をもつNa−アルキルスルホネート混合物、Na−アルキルアリールスルホネート、Na−ジイソブチレンナフタレンスルホネート、メチレン架橋ポリナフタレンスルホネート混合物、並びにメチレン架橋アリールスルホネート混合物が、特に好ましい。
【0059】
中性乳化剤は、十分に酸性な水素をもつ化合物へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加生成物から由来する。これには、例えば、フェノール、アルキル化フェノール、及びアルキル化アミンが含まれる。エポキシドの平均重合度は2〜20である。中性乳化剤の例は、8個、10個及び12個のエチレンオキシド単位をもつエトキシル化ノニルフェノールである。中性乳化剤は、通常、単独で使用されることはなく、アニオン性乳化剤と組み合わせて使用される。
【0060】
不均化アビエチン酸及び部分水素化獣脂脂肪酸のNa塩及びK塩、並びにそれらの混合物、ラウリル硫酸ナトリウム、Na−アルキルスルホネート、ナトリウムアルキルベンゼンスルホネート、並びにアルキル化及びメチレン架橋ナフタレンスルホン酸が好ましい。
【0061】
乳化剤は、100重量部のモノマー混合物に対して0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜12.5重量部、特に好ましくは1.0〜10重量部の量で使用される。
【0062】
乳化重合は、一般に、上述の乳化剤を使用して行われる。重合の完了後に、多少不安定であるがゆえに、早すぎる自己凝固を起こす傾向を有するラテックスが得られる場合は、ラテックスの後安定化のために上述の乳化剤を加えることもできる。これは、水蒸気処理によって未反応モノマーを除去する前に、及び、ラテックスの貯蔵又は噴霧乾燥を実行する前に、必要になることがある。
【0063】
分子量調節剤:
好ましくは、特に、本発明において好ましいニトリルゴムが重合中に架橋を起こすような形で、乳化重合を行う。従ってこの場合、一般的には、分子量調節剤の使用は必要ない。しかしそれでもなお、決定的な性質を持たない分子量調節剤を使用することがある。その場合、調節剤は、通常、100重量部のモノマー混合物に対して、0.01〜3.5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部の量で使用される。例えば、メルカプタン含有カルボン酸、メルカプタン含有アルコール、キサントゲンジスルフィド、チウラムジスルフィド、ハロゲン化炭化水素、分岐芳香族又は脂肪族炭化水素、並びに直鎖又は分岐メルカプタンを、分子量調節剤として使用することができる。これらの化合物は通常、1〜20個の炭素原子を含む(Rubber Chemistry and Technology(1976),49(3),610-49(Uraneck,C.A.):「Molecular weight control of elastomers prepared by emulsion polymerization」及びD.C.Blackley「Emulsion Polymerization,Theory and Practice」Applied Science Publishers Ltd(London)1975, 329〜381頁を参照されたい)。
【0064】
メルカプタン含有アルコール及びメルカプタン含有カルボン酸の例としては、モノチオエチレングリコール、及びメルカプトプロピオン酸が挙げられる。
【0065】
キサントゲンジスルフィドの例としては、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、及びジイソプロピルキサントゲンジスルフィドが挙げられる。
【0066】
チウラムジスルフィドの例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、及びテトラブチルチウラムジスルフィドが挙げられる。
【0067】
ハロゲン化炭化水素の例としては、テトラクロロ炭化水素、クロロホルム、ヨウ化メチル、ジヨードメタン、ジフルオロジヨードメタン、1,4−ジヨードブタン、1,6−ジヨードヘキサン、臭化エチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン、ブロモトリフルオロエテン、ブロモジフルオロエテンが挙げられる。
【0068】
分岐炭化水素の例としては、Hラジカルが容易に脱離し得るものが含まれる。その例としては、トルエン、エチルベンゼン、クメン(Cumol)、ペンタフェニルエタン、トリフェニルメタン、2,4−ジフェニル、4−メチル−1−ペンテン、ジペンテン、並びにテルペン類、例えばリモネン、α−ピネン、β−ピネン、α−カロテン及びβ−カロテンなどがある。
【0069】
直鎖又は分岐メルカプタンの例としては、12〜16個の炭素原子と少なくとも3個の3級炭素原子とを含有し、それらの3級炭素原子の一つに硫黄が結合しているメルカプタン、又は、n−ヘキシルメルカプタンが挙げられる。これらのメルカプタンは単独で使用するか、混合物として使用することができる。例えば、プロペンオリゴマー(特に、プロペン四量体)に硫化水素が付加した化合物、又はイソブテンオリゴマー(特に、イソブテン三量体)に硫化水素が付加した化合物は、文献ではしばしば3級ドデシルメルカプタン(「t−DDM」)と呼ばれ、好適である。
【0070】
そのようなアルキルチオール又はアルキルチオールの(異性体)混合物は、市販されているか、当業者により、十分な文献記載のあるプロセスに従って調製されることができる(例えば、JP07−316126、JP07−316127及びJP07−316128並びにGB823,823及びGB823,824を参照されたい)。
【0071】
個々のアルキルチオール又はその混合物は、通常、100重量部のモノマー混合物に対して、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部の量で使用される。
【0072】
分子量調節剤又は分子量調節剤の混合物の計量投入は、重合の開始時に行われるか、重合の過程において少しずつ(portionsweise)行われ、重合の間に調整剤混合物の全構成要素又は個々の構成要素を少しずつ添加することが好ましい。
【0073】
典型的には、崩壊してラジカルを生じる重合開始剤(ラジカル重合開始剤)が、乳化重合を開始させるために使用される。これには、−O−O−単位(ペルオキソ化合物)又はN=N−単位(アゾ化合物)を含有する化合物が含まれる。
【0074】
ペルオキソ化合物には、過酸化水素、ペルオキソジサルフェート、ペルオキソジホスフェート、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、過酸無水物、及び2つの有機残基をもつ過酸化物が含まれる。ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩は、ペルオキソ二硫酸及びペルオキソ二リン酸の好適な塩である。好適なヒドロペルオキシドとしては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド(cumolhydroperoxid)及びp−メンタンヒドロペルオキシドなどが挙げられる。2つの有機残基をもつ好適なペルオキシドとしては、ジベンゾイルペルオキシド、2,4,−ジクロロベンゾイルペルオキシド、di−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルアセテートなどが挙げられる。好適なアゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、及びアゾビスシクロヘキサンニトリルが挙げられる。
【0075】
過酸化水素、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、ペルオキソジサルフェート及びペルオキソジホスフェートは、還元剤との組合せでも使用される。好適な還元剤としては、スルフェナート(Sulfenate)、スルフィナート(Sulfinate)、スルホキシレート、ジチオナイト、サルファイト、メタビサルファイト、ジサルファイト、糖、尿素、チオ尿素、キサントゲナート(Xanthogenate)、チオキサントゲナート、ヒドラジニウム塩、アミン及びアミン誘導体(例えば、アニリン、ジメチルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン)を挙げることができる。酸化剤及び還元剤からなる開始剤系は、酸化還元系と呼ばれる。酸化還元系を使用する場合は、鉄、コバルト、ニッケルの遷移金属化合物の塩が、好適な錯生成剤(例えば、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、ナトリウムニトリロトリアセテート及びトリナトリウムホスフェート又はテトラカリウムジホスフェート)と組み合わされて、しばしば追加的に使用される。
【0076】
好ましい酸化還元系としては、例えば、1)トリエタノールアミンと組み合わされるペルオキソ二硫酸カリウム、2)メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)と組み合わされるペルオキソ二リン酸アンモニウム、3)Fe−II−サルフェート(FeSO・7HO)と、ナトリウムエチレンジアミノアセテートと、トリナトリウムホスフェートと組み合わされるp−メンタンヒドロペルオキシド/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート;4)Fe−II−サルフェート(FeSO・7HO)と、ナトリウムエチレンジアミノアセテートと、二リン酸四カリウムと組み合わされるクモールヒドロペルオキシド/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどがある。
【0077】
酸化剤の量は、好ましくは、100重量部のモノマーに対して0.001〜1重量部である。還元剤のモル量は、使用する酸化剤のモル量に対して50%〜500%である。
【0078】
錯生成剤のモル量は、使用する遷移金属の量に依存し、通常はそれと等モルである。
【0079】
重合を行うには、開始剤系の全構成要素又は個々の構成要素を、重合の開始時に、又は重合の過程において、計量的に重合に加える。
【0080】
重合の間に活性化剤系の全構成要素又は個々の構成要素を少しずつ加えることが好ましい。反応速度は逐次的添加によって制御することができる。
【0081】
重合時間は、一般的には、5時間〜30時間の範囲にあり、モノマー混合物のアクリロニトリル含有量と、活性化剤系と、重合温度とに、実質的に依存する。
【0082】
重合温度は、一般的には、0〜100℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲にある。
【0083】
転化率が50〜100%の範囲、好ましくは85%を超える範囲に到達する場合、一般的には、重合を停止させる。
【0084】
重合の間では、ニトリルゴムを架橋するために、可能な限り高い転化率を目指す。そのために、停止剤の使用を省略することができる。それでもなお停止剤を使用する場合は、例えば、ジメチルジチオカルバメ−ト、亜硝酸Na、ジメチルジチオカルバメ−トと亜硝酸Naとの混合物、ヒドラジン及びヒドロキシルアミン、並びにそれらに由来する塩、例えば、硫酸ヒドラジニウム及び硫酸ヒドロキシルアンモニウム、ジエチルヒドロキシルアミン、ジイソプロピルヒドロキシルアミン、ヒドロキノンの水溶性塩、ナトリウムジチオナイト、フェニル−α−ナフチルアミン及び芳香族フェノール、例えばtert−ブチルカテコール、又はフェノチアジンが好適である。
【0085】
乳化重合に使用する水の量は、100重量部のモノマー混合物に対して、70〜300重量部の範囲、好ましくは80〜250重量部の範囲、特に好ましくは90〜200重量部の範囲にある。
【0086】
乳化重合中の水相には、重合中の粘度を低下させるため、pHを調節するため、そしてpH緩衝剤として、塩を加えることができる。典型的な塩は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの形態の一価金属の塩である。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び塩化カリウムが好ましい。これらの電解質の量は、100重量部のモノマー混合物に対して、0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部の範囲にある。
【0087】
重合は、一連の撹拌タンク反応器で連続的に行うか、又は、不連続に行うこともできる。
【0088】
均一な重合プロセスを達成するために、重合の開始には開始剤系の一部だけを使用し、残りはその後、重合中に、計量的に加える。通常、重合は開始剤の総量の10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%で開始される。その後に、開始剤系の個々の構成要素を、計量的に添加することも、可能である。
【0089】
化学的に均一な生成物を製造したい場合は、組成物がブタジエン/アクリロニトリルのアゼオトロープ比を外れた場合に、アクリロニトリル又はブタジエンを計量的に後添加する。好ましくは、後添加は、アクリロニトリル含有量が10〜34重量%のNBRタイプ並びに40〜50重量%アクリロニトリルのタイプで行われる(W.Hofmann,Rubber Chem,Technol.36(1963)1)。計量的後添加は、DD154702に明記されているように、好ましくはコンピュータプログラムに基づくコンピュータ制御によって行われる。
【0090】
重合停止されたラテックスは、未転化モノマー及び揮発性構成要素を除去するために、水蒸気蒸留に付される。この場合は、70℃〜150℃の範囲の温度が使用され、<100℃の温度では減圧される。
【0091】
揮発性構成要素の除去に先だって、乳化剤によるラテックスの後安定化を行うことができる。この目的には、上述の乳化剤が、100重量部のニトリルゴムに対して、0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の量で、適宜使用される。
【0092】
噴霧乾燥前又は噴霧乾燥の間に、1つ以上の老化防止剤をラテックスに加えることができる。この目的にはフェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、又はその他の老化防止剤が好適である。
【0093】
好適なフェノール系老化防止剤としては、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノール、例えば、2,6−di−tert−ブチルフェノール、2,6−di−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−di−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基含有立体障害フェノール、チオエーテル含有立体障害フェノール、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、並びに立体障害チオビスフェノールなどが挙げられる。
【0094】
ゴムの退色が顕著でない場合は、アミン系老化防止剤、例えば、ジアリール−p−フェニレンジアミンの混合物(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミン系のものなども使用される。フェニレンジアミン類の例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス−1,4−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0095】
その他の老化防止剤としては、ホスファイト(例えば、トリス−(ノニルフェニル)ホスファイト)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMQ)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール(MMBI)、亜鉛−メチル−メルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)が挙げられる。ホスファイトは、一般的にはフェノール系老化防止剤と組み合わせて使用される。TMQ、MBI及びMMBIは主として、ペルオキシド加硫されるNBRタイプに使用される。
【0096】
本発明により使用されるエラストマーb)は、一般に、高エネルギー放射線による架橋を受けていないエラストマー又はミクロゲルである。というのも、それらの使用は、ポリアミドマトリックスとの適合性に関する問題をもたらし、従って劣等な機械的性質をもたらし得るからである。
【0097】
本発明者らは、驚くべきことに、エラストマー又はミクロゲルb)の加工を乳化重合中に得られるラテックスの噴霧乾燥によって行う場合に、ポリアミド−エラストマー混合物が望ましい性質を有することを発見した。ラテックスの噴霧乾燥は一般に従来の噴霧塔で行われる。この場合は、ラテックス(好ましくは30〜100℃に加熱したもの)を噴霧塔内にポンプで供給し、塔の頭部に設けられたノズルを通して、好ましくは50〜500バール、好ましくは100〜300バールの圧力で、噴霧する。入り口温度が好ましくは100〜200℃である熱空気を向流として供給し、水を蒸発させる。粉末は底部に沈み、塔の基部から乾燥粉末を取り出す。場合によって使用される分離剤及び他の添加剤(例えば、老化防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤など)は、好ましくは、やはり塔の頭部から、乾燥粉末として吹き込まれる。噴霧塔に供給されるラテックスは、好ましくは、そのラテックスに対して、10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは30〜50重量%の固形物濃度(ISO126:2005に従って決定)を有する。
【0098】
このタイプの加工により、特に、好ましくは300μmを超えない、より好ましくは200μmを超えない、更に好ましくは100μmを超えない平均直径をもつ、球状又はほぼ球状のミクロゲル粒子凝集物が得られる(例えば、図1を参照されたい)。
【0099】
この形態でポリアミド(a)と、また場合により、更にポリアミド(c)と、また場合により、他の添加剤と混合される、本発明に従って使用されるエラストマー(b)は、こうして、好ましくは、好ましくは2〜300μmの範囲、より好ましくは2〜200μmの範囲、更に好ましくは5〜150μmの範囲、そして特に5〜100μmの範囲にある平均直径を有する、ほぼ球状の粒子からなる。ミクロゲルラテックスの他の加工方法(例えば、特に、凝固、他のラテックスポリマーとの共凝固、及びラテックスの凍結凝固、濾過、それに続くペレット洗浄、乾燥、並びにそれに続く粉砕)では、比較的粗く、不規則な形状をした、一般にはるかに大きな平均直径をもつミクロゲル粒子が得られる(図2及び図3を参照されたい)。
【0100】
好ましくは、乳化重合中に得られるラテックスを噴霧乾燥によって加工する際には、市販の分離剤を更に使用することもできる。
【0101】
好ましくは、分離剤は、ケイ酸(特に、BET法による比表面積が5m/gを超えるもの)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、タルク及び雲母)、脂肪酸塩、例えば特に、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば10個を超える炭素原子をもつ脂肪酸の塩、例えば特に、前記脂肪酸のカルシウム塩及びマグネシウム塩、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、高い(例えば60℃を超える)ガラス転移温度をもつポリマー、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン及びデンプン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド化合物、特に、ポリエチレンオキシド化合物、例えば、ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン及びセルロース誘導体、フルオロカーボンポリマー、並びに上記分離剤の混合物から選択される。
【0102】
好ましくは、エラストマーラテックスの加工中に炭酸カルシウムを分離剤として加える。
【0103】
しかし、エラストマー(b)は、別個の分離剤を加えずに所望の有利な使用形態(噴霧乾燥ミクロゲル)に変形させて、ポリアミドマトリックス中に組み込むこともできる。
【0104】
本発明によれば、ポリアミド−エラストマー混合物は、好ましくは、構成要素(a)〜(c)の和に対して5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%のエラストマー(b)を含有する。
【0105】
特に、部分結晶性(上に定義したもの)ポリアミドと、非晶質又は微晶質ポリアミドとの両方が、ポリアミド(c)として含有されることができる。
【0106】
好ましい実施態様では、ポリアミド成形材料が、構成要素(a)の他に、構成要素a)〜c)の和に対して20重量%以下、特に15重量%以下の、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族のジアミン、ジカルボン酸及び/又はアミノカルボン酸(好ましくは、6〜36個の炭素原子をもつもの)系の少なくとも1つの非晶質又は微晶質ポリアミド(構成要素(c))、並びに、そのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物も含有する。この実施態様では、成形材料が、好ましくは、構成要素a)〜c)の和に対して2〜20重量%、特に3〜15重量%の構成要素(c)を含有する。
【0107】
本発明により使用される、好ましくは非晶質又は微晶質であるポリアミド(構成要素c)及び/又はコポリアミドには、以下の系が好ましい。
【0108】
脂肪族、環式脂肪族又は芳香族のジアミン、ジカルボン酸、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸(好ましくは、6〜36個の炭素原子をもつもの)系のポリアミド、あるいは、そのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物。好ましくは、環式脂肪族ジアミンは、追加の置換基をもつ又は追加の置換基を持たない、MACM、IPD及び/又はPACMである。脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、直鎖又は分枝状に配置された2〜36個、好ましくは8〜20個の炭素原子をもつ(特に好ましくは、10、12、13、14、16又は18個の炭素原子をもつ)脂肪族ジカルボン酸である。
【0109】
この場合、MACMは、ISO名ビス−(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)−メタンを意味し、これは、Laromin C260タイプとして3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンという商品名で市販されており(CAS番号6864−37−5)、好ましくは−10℃〜0℃の融点をもつ。この場合、例えばMACM12などにおける数字は、ジアミンMACMとの間で重縮合を起こす脂肪族直鎖C12ジカルボン酸(DDS、ドデカン二酸)を指定している。
【0110】
TPSはイソフタル酸を意味する。PACMはISO名ビス−(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタンを意味し、これは、Dicykanタイプとして4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンという商品名で市販されており(CAS番号1761−71−3)、好ましくは30℃〜45℃の融点をもつ。
【0111】
群:MACM12、MACM13、MACM14、MACM16、MACM18、PACM12、PACM13、PACM14、PACM16、PACM18から選択されるホモポリアミド、及び/又はMACM12/PACM12、MACM13/PACM13、MACM14/PACM14、MACM16/PACM16、MACM18/PACM18の群から選択されるコポリアミド。そのようなポリアミドの混合物も可能である。
【0112】
8〜18個、好ましくは8〜14個の炭素原子をもつ芳香族ジカルボン酸系のポリアミド、又はそのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物、好ましくはPXDA及び/又はMXDA系のもの、特にラクタム及び/又はアミノカルボン酸系のものであって、芳香族ジカルボン酸が、TPS、ナフタレンジカルボン酸及び/又はIPSであるものが好ましい。
【0113】
群:MACM9−18、PACM9−18、MACMI/12、MACMI/MACMT、MACMI/MACMT/12、6I6T/MACMI/MACMT/12、3−6T、6I6T、TMDT、6I/MACMI/MACMT、6I/PACMI/PACMT、6I/6T/MACMI、MACMI/MACM36、6I、12/PACMIもしくは12/MACMT、6/PACMT、6/6I、6/IPDT又はそれらの混合物から選択されるポリアミド(ここではIPSの50モル%をTPSで置き換えることができる)。
【0114】
上述の好ましくは非晶質又は微晶質であるポリアミド(構成要素c)は、好ましくは40℃を超える、より好ましくは60℃を超える、更に好ましくは90℃を超える、特に好ましくは110℃を超える、特に130℃を超える、最も好ましくは150℃を超えるガラス転移温度を有する。相対溶液粘度は、好ましくは、1.3以上〜1.75未満までの範囲(0.5重量%のm−クレゾール溶液で測定)、より好ましくは1.4〜1.70、特に1.5〜1.70の範囲にある。
【0115】
ポリアミドc)は、好ましくは、4〜40J/gの範囲、特に4〜25J/gの範囲(DSCを使って決定)の融解熱を有し、非晶質ポリアミドは4J/g未満の融解熱を有する。好ましくは、ジアミンMACM及びPACM系の微晶質ポリアミドを使用する。前記ポリアミドの例には、PA MACM9−18/PACM9−18系があり、PACM含有量が(総ジアミン量に対して)55モル%を超えるPA MACM12/PACM12は、特に、本発明に従って使用される。
【0116】
本発明のポリアミド−エラストマー組成物は、100重量部の構成要素a)〜c)に対して、0〜100重量部の1つ以上の従来の添加剤を含有することができる。これは例えば、100重量部の構成要素a)〜c)につき0重量部の従来の添加剤が存在するとすれば、その組成物は一般に100重量%の構成要素a)〜c)からなること、あるいは、例えば100重量部の構成要素a)〜c)につき100重量部の従来の添加剤が存在するとすれば、その組成物は一般に50重量%の構成要素a)〜c)からなることを意味する。
【0117】
好ましくは、本発明のポリアミド−エラストマー組成物は、構成要素a)〜c)と、場合によっては存在する従来の添加剤とからなる。これは、本発明のポリアミド−エラストマー組成物が特に、ポリアミド−エラストマー組成物の総量に対して、0〜50重量%の添加剤と、50〜100重量%の構成要素a)〜c)とを含み得ることを意味する。
【0118】
場合によって存在する添加剤は、一般的には、市販の添加剤である。それらは、特に、上述の分離剤、老化防止剤(例えば、酸化防止剤)、及び蛍光増白剤、難燃剤、光安定剤、成核剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗加水分解剤などから選択され、それらは好ましくは構成要素b)の調製時に加えられる。更に、それらは、無機又は有機充填剤(例えば、ガラス繊維)、無機又は有機顔料(例えば、カーボンブラック、又は着色剤)、帯電防止剤、粘着防止剤などの従来の添加剤であることもできる。
【0119】
原則として、上述の添加剤は、ポリアミド−エラストマー組成物に、個々の構成要素a)〜c)の製造を含むその製造の任意の段階で加えることができる。従って、既に説明したとおり、上述の分離剤は、構成要素b)の製造に際して噴霧乾燥時に適宜、加えることができ、その場合は、特に老化防止剤(例えば、酸化防止剤)も、更に加えることができる。
【0120】
また、本発明によれば、上述のポリアミド−エラストマー混合物から得ることができる成形品も提供される。
【0121】
前記成形品は、好ましくは、135℃の水/グリコール(60:40)混合物中500時間の貯蔵時間で引張試験ロッドにおいて測定した場合に、初期値に対して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の破断点伸びを有する。
【0122】
乾燥条件下で、成形品は、好ましくは、少なくとも150%の破断点伸びを有する。
【0123】
更に、成形品は高い柔軟度を示し、それは、乾燥条件下にISO試験ロッドで300〜1500Mpaという引張モジュラスから明白である。
【0124】
好ましくは、成形品は、ISO試験ロッドで測定した場合に、−30℃で少なくとも10kJ/mのノッチ衝撃強さを有する。
【0125】
成形品は、好ましくは、IRM903中、125℃の温度で4日後(nach 4d)に、最大3%のオイル膨潤を示す。
【0126】
275℃及び21.6kgの負荷でのMVR(溶融体積流量)は、好ましくは50〜200cm/10分の範囲にある。
【0127】
前記パラメータは、実施例で言及する方法又は規格に従って決定される。
【0128】
本発明のポリアミド−エラストマー混合物は、特に、水、オイル、グリコール、メタノール、エタノール及び/又は燃料を含有する液体媒体と接触する、成形品、又は平滑、波形もしくは部分波形単層もしくは多層管の製造に使用される。これには、特に、自動車産業において、クランクケース用の換気システム、負圧域及び正圧域にある単層又は多層管、並びに水及び/又はオイルと接触する冷却液管、あるいは、オイル伝達管又はオイルと接触する管が含まれる。
【0129】
以下の実施例及び図面を参照しながら、本発明をより詳しく説明するが、本発明は本明細書に示される特別な実施態様に限定されるわけではない。
【0130】
《実施例1》
下記の表1に、本発明の混合物の組成を、先行技術から知られている2つの混合物(比較例1及び2という)と比較して示す。
【表1】

混合物の製造には以下の出発材料を使用した:
ポリアミド・タイプA:ηrel=2.11、NH2:52μeq/g、COOH:15μeq/gのポリアミド12。
ポリアミド・タイプB:ηrel=1.65、NH2:105μeq/g、COOH:10μeq/gのポリアミド12。
【0131】
ミクロゲル・タイプA(本発明でない):ブタジエン:68.8%、アクリロニトリル:26.7%、HEMA:1.5%、TMPTMA:3.0%からEP1152030A2の教示に従って調製されるコポリマー;重合転化率:99%;塩化カルシウム水溶液による凝固、乾燥の後、分離剤である炭酸カルシウム(粉砕中に添加、ミクロゲルと分離剤との総質量に対して5重量%)と共に粉砕することにより後処理(図3)。
【0132】
ミクロゲルB(本発明でない)及びCは、同じラテックスから出発して製造した。ラテックスは、モノマーであるブタジエン及びアクリロニトリル(重量比:62/38)に、0.37重量部のtert−ドデシルメルカプタン(Phillips Petroleum Corp.)を添加して共重合することにより、架橋剤及び他のモノマーも添加をせずに製造した。重合は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(0.025重量部)及びトリエタノールアミン(0.018重量部)を加えることにより、30℃で開始した。重合は部分断熱的に行った。後活性化を45℃及び重合転化率90%で、0.018重量部のペルオキソ二硫酸アンモニウムを使用して行った。重合停止は、重合転化率97%で、0.08重量部のジエチルヒドロキシルアミンを加えることによって達成した。残存モノマー及び他の揮発性構成成分を水蒸気蒸留によって除去した後に、ラテックスは、48.5重量%の固形分、10.6のpH値、及び198nmの平均粒径を持ち、ゲル含有量及び膨潤指数(それぞれトルエン中で決定)は90.5重量%及び7.6だった。ガラス転移温度は−18℃、ガラス転移段階の幅は7℃だった。加工に先だって、1.15重量%の酸化防止剤Wingstay L(Eliokem社によるp−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物)をラテックスに加えた。
【0133】
ミクロゲル・タイプB(本発明でない):塩化カルシウム水溶液による凝固、洗浄、乾燥の後、分離剤である炭酸カルシウム(ミクロゲルと分離剤の総質量に対して5重量%)を添加しながら粉砕することによって後処理(図2)。
【0134】
ミクロゲル・タイプC(本発明):ラテックスを、分離剤である塩化カルシウム(ミクロゲルと分離剤の総質量に対して5重量%)を添加しながら噴霧乾燥することによって後処理した(図1)(Lanxess Deutschland GmbHによる市販のミクロゲルBaymod N VPKA8641)。
【0135】
ポリアミド(a)及び(c)並びにミクロゲル(b)を、二軸スクリュー押出機(ZSK30、Coperion)の供給機構に計量投入し、200〜280℃のシリンダー温度、180r.p.m.のスクリュー速度、及び12kg/hの処理量で配合した。ノズルを出たストランドを水浴中に冷却した後、造粒した。80℃で乾燥した後、成形塊を射出成形して、成形品及び試験片を形成した。
【0136】
成形材料を次のように調べた:
MVR:ISO1133による275℃での(溶融体積流量);
SZ:ISO179/1eU(シャルピー)による衝撃強さ及びノッチ衝撃強さ;
引張モジュラス、破断強さ及び破断点伸びは、ISO試験ロッド規格ISO/CD3167タイプA1 170×20/10×4mmを使用し、23℃の温度で、ISO527に従って決定した。力学量は乾燥条件下で決定した。
【0137】
相対粘度(ηrel)は、0.5%m−クレゾール溶液を使用し、規格DIN EN ISO307に従って20℃で決定した。
【表2】

【0138】
更に、加水分解耐性を、比較例の混合物と比較した。この目的のために、混合比60対40の水−グリコール混合物において、135℃で所定の貯蔵時間、貯蔵を行った。市販の冷却液添加剤Havoline XLCをグリコールとして使用した。厚さ4mmの引張試験ロッドを貯蔵に使用した。本発明の混合物は、先行技術から知られる混合物と比較して優位に高い(初期値に対する)残留破断点伸び(verbleibende Restreissdehnung)を有することが図4からわかる。本発明により噴霧乾燥されたミクロゲルを使用することによって、加水分解試験における半減期を平均で2倍にすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】ミクロゲル・タイプCの写真である。
【図2】ミクロゲル・タイプBの写真である。
【図3】ミクロゲル・タイプAの写真である。
【図4】相対破断点伸びを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1.75以上の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有する、30〜95重量%の少なくとも1つの部分結晶性ポリアミド、
b)乳化重合の後、乳化重合中に得られたラテックスの噴霧乾燥を行うことによって製造される、5〜50重量%の少なくとも1つのエラストマー、
c)場合により、1.75未満の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有する、0〜20重量%の1つ以上のポリアミド、
(重量%の上記表示は構成要素(a)〜(c)の総量に基づく)と、
100重量部の構成要素(a)〜(c)に対して0〜100重量部の1つ以上の添加剤と
を含有するポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項2】
エラストマーb)が、
b1)≧55重量%の少なくとも1つの共役ジエン、
b2)5〜45重量%のアクリロニトリル、
b3)場合により、0〜5重量%の1つ以上の多官能性ラジカル重合性モノマー、
b4)場合により、0〜20重量%の、b1)〜b3)とは異なる1つ以上の多官能性ラジカル重合性モノマー、
(重量%の上記表示は構成要素b1)〜b4)の総量に基づく)
の乳化重合によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項3】
100重量部のエラストマーb)に対して、0〜10重量部の1つ以上の分離剤を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項4】
部分結晶性ポリアミド(a)が、ポリアミドPA46、PA6、PA66、PA69、PA610、PA612、PA614、PA616、PA618、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA1212、PA MXD6、PA MXD6/MXDI、PA9T、PA10T、PA12T、PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/10T、それらのコポリアミド、及びそれらの混合物、並びに、ポリエステル、ポリエーテル、ポリシロキサン又はポリオレフィン系のソフトセグメントをもつポリアミドブロックコポリマーであって、ポリアミドブロックコポリマーのポリアミド含有量が少なくとも40重量%であるもの、及びそれらの配合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項5】
ポリアミド(a)が、20〜120μeq/gの範囲、特に30〜100μeq/gの範囲の末端アミノ基濃度を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項6】
ポリアミド(a)が、最大30μeq/g、特に最大20μeq/gの末端カルボキシル基濃度を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項7】
部分結晶性ポリアミド(a)が、1.75〜2.4の範囲、特に1.8〜2.3の範囲の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項8】
共役ジエン(b1)がブタジエン、イソプレン、2−クロロブタジエン及び2,3−ジクロロブタジエンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項9】
b1)〜b3)とは異なるラジカル重合性モノマーb4)が、スチレン、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、例えばエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロペン、及び、二重結合含有カルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アミン官能化(メタ)アクリレート、例えば1級アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート及びアミノブチル(メタ)アクリレート、2級アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル、特にtert−ブチルアミノ(C2−C4)アルキル(メタ)アクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニル−ピリジン、4−ビニル−ピリジン、N−アリル−尿素及びN−アリル−チオ尿素、(メタ)アクリルアミド類、例えば(メタ)アクリルアミド、一重又は二重N−置換(メタ)アクリルアミド、並びにそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項10】
多官能性ラジカル重合性モノマーb3)が、ジ不飽和又はポリ不飽和ラジカル重合性モノマー、特に好ましくは2〜4個の重合性C=C二重結合をもつ化合物、例えば特に、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンマレイミド、2,4−トルイレンビス(マレイミド)、トリアリルトリメリテート、並びに、C−〜C10−ポリアルコール(特にエチレングリコール、プロパンジオール−1,2、ブタンジオール−1,4、ヘキサンジオール、2〜20(特に2〜8)個のオキシエチレン単位をもつポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール−A、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール)の多官能性アクリレート及びメタクリレート、脂肪族ジオール及び脂肪族ポリオールから得られる不飽和ポリエステル、並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2〜9のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項11】
多官能性ラジカル重合性モノマー(b3)が、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール−1,4−ジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜10に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項12】
エラストマーb)が、有機ペルオキシド、特に、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ビス−(t−ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン、di−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン−3,2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、並びに、有機アゾ化合物、特にアゾ−ビス−イソブチロニトリル及びアゾ−ビス−シクロヘキサンニトリル、並びに、ジメルカプト化合物及びポリメルカプト化合物、特にジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジン及びメルカプト末端ポリスルフィドゴム、特にビス−クロロエチルホルマールとナトリウムポリスルフィドとのメルカプト末端反応生成物からなる群より選択される1つ以上のラジカル開始剤の存在下で、乳化重合に続いて架橋を行うことによって得られることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項13】
エラストマーb)が、≧10℃の温度での重合及び使用するモノマー混合物の総量に対して≧70モル%の転化率値での重合によって、多官能性ラジカル重合性モノマーb3)を添加せずに得られることを特徴とする、請求項2〜12のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項14】
分離剤が、無機及び有機分離剤、例えばケイ酸(特に、BET法による比表面積が5m/gを超えるもの)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、タルク及び雲母)、脂肪酸塩、例えば特に、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば10個を超える炭素原子をもつ脂肪酸の塩、例えば特に、前記脂肪酸のカルシウム塩及びマグネシウム塩、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、高い(例えば60℃を超える)ガラス転移温度をもつポリマー、例えばポリエステル、ポリオレフィン及びデンプン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド化合物、特に、ポリエチレンオキシド化合物、例えば、ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン及びセルロース誘導体、フルオロカーボンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項3〜13のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項15】
エラストマーb)中のアクリロニトリルb2)の量が、構成要素b1)〜b3)の量に対して10〜40重量%の範囲、特に28〜35重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項2〜14のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項16】
5〜40重量%、特に10〜30重量%のエラストマー(b)がそこに含有されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項17】
ポリアミド(c)が、1.4以上〜1.75未満、特に1.5〜1.7の溶液粘度(0.5重量%のm−クレゾール溶液、20℃で測定)を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項18】
ポリアミド(c)が、ラクタムフリーのポリアミドであることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項19】
ポリアミド(c)が、非晶質又は多結晶質ポリアミドであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項20】
ポリアミド(c)が、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族ジアミン、ジカルボン酸及び/又はアミノカルボン酸、特に6〜36個の炭素原子をもつもの、を含むポリアミド、並びに、前記ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項21】
ポリアミド(c)が、コポリアミドMACM12/PACM12、MACM13/PACM13、MACM14/PACM14、MACM16/PACM16、MACM18/PACM18の、MACM12、MACM13、MACM14、MACM16、MACM18、PACM12、PACM13、PACM14、PACM16、PACM18、及び前記ポリアミドの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項22】
ポリアミド(c)が、110℃以上、好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項23】
ポリアミド−エラストマー混合物が、275℃及び21.6kgの負荷で、50〜200cm/10分の範囲のMVR(溶融体積流量)を有すること(DIN ISO 1133:1991)を特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項24】
ポリアミド−エラストマー混合物から得ることができる成形品が、135℃の水/グリコール(60:40)混合物中、500時間の貯蔵時間、引張試験ロッドを貯蔵した後に、初期値の少なくとも20%という残留破断点伸びを有することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物から得ることができる成形品。
【請求項26】
135℃の水/グリコール(60:40)混合物中、500時間の貯蔵時間、引張衝撃試験ロッドを貯蔵した後に、初期値の少なくとも20%という残留破断点伸びを有する、請求項25に記載の成形品。
【請求項27】
乾燥条件下で少なくとも150%の破断点伸びを有することを特徴とする、請求項25又は26のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項28】
乾燥条件下、ISO試験ロッドで、300〜1500MPaの範囲の引張モジュラスを有することを特徴とする、請求項25〜27のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項29】
ISO試験ロッドを使って測定される、−30℃で少なくとも10kJ/mのノッチ衝撃強さを有することを特徴とする、請求項25〜28のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項30】
IRM903中、125℃の温度で4日後に、最大3%のオイル膨潤を示すことを特徴とする、請求項25〜29のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項31】
クランクケースの形態、又は、平滑、波形もしくは部分波形単層もしくは多層管、例えば冷却液管の形態をした、請求項25〜30のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項32】
水、オイル、グリコール、メタノール、エタノール及び/又は燃料を含有する液体媒体と接触する自動車産業における成形品を製造するための、請求項1〜24のいずれか一項に記載のポリアミド−エラストマー混合物の使用。
【請求項33】
クランクケース用の換気システム、負圧域及び正圧域にある単層又は多層管、冷却液管、並びにオイル伝達管又はオイルと接触する管を製造するための、請求項1〜32に記載の使用。
【請求項34】
乳化重合の後、乳化重合中に得られるラテックスの噴霧乾燥を行うことによって製造されるアクリロニトリル含有エラストマーの、ポリアミド含有組成物を製造するための使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−511146(P2011−511146A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545488(P2010−545488)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051398
【国際公開番号】WO2009/098305
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(505319810)エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト (4)
【出願人】(501074227)ライン ヘミー ライナウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (15)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】