説明

加湿器

【課題】本発明は、蒸気通路で発生した結露水を還流するための還流通路を介して蒸気が漏れ、還流通路以外の場所に結露水が発生することを防止することにより、蓋体の開放時の結露水の飛散を防止することのできる加湿器を提供すること。
【解決手段】蓋体2に備えた蒸気流路13で、蒸気流路13を構成する側壁の一部に、蓋体を開放位置に回動させた状態で、蒸気流路13内に残留する結露水を貯留する貯留凹部と、そこに貯留された結露水が、蒸気孔カバー23の蒸気孔へと流動することを防止する突出壁とが形成されている。また、蒸気孔カバー23は、蒸気流路13を覆うように蓋体に装着された状態で、突出壁と直交又はほぼ直交し、貯留凹部を回動中心側でガイドするストッパ壁が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加湿器として、蓋体の開放時、蓋体に形成した蒸気流路に残留する結露水を内容器に還流させるために、ヒンジ部に還流通路を備えた構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の加湿器では、蒸気を発生させる際、前記還流通路へと流動し、この還流通路で結露することがある。還流通路で発生した結露水は、蓋体を開放する際、外部に飛散する等の不具合を発生させる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−286483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蒸気通路で発生した結露水を還流するための還流通路を介して蒸気が漏れ、還流通路以外の場所に結露水が発生することを防止することにより、蓋体の開放時の結露水の飛散を防止することのできる加湿器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
液体を収容する内容器を備えた胴体と、
前記内容器の開口を閉鎖する閉鎖位置と、開放する開放位置とにそれぞれ回動可能な蓋体と、
前記内容器を加熱する加熱手段と、
を備えた加湿器であって、
前記蓋体は、
胴体に回動可能に支持されるヒンジ部と、
前記内容器で発生した蒸気を噴出する蒸気噴出ノズルと、
前記蒸気噴出ノズルから噴出された蒸気が流動する蒸気流路と、
前記蒸気流路を覆う、蒸気孔を形成された蒸気孔カバーと、
を備え、
前記蒸気流路を構成する側壁の一部に、
前記蓋体を開放位置に回動させた状態で、蒸気流路内に残留する結露水を貯留する貯留凹部と、
前記貯留凹部に貯留された結露水が、蒸気孔カバーの蒸気孔へと流動することを防止する突出壁と、
を形成し、
前記蒸気孔カバーは、前記蒸気流路を覆うように蓋体に装着された状態で、前記突出壁と直交又はほぼ直交し、前記貯留凹部を回動中心側でガイドするストッパ壁を形成されたものである。
【0007】
この構成により、蒸気流路内に結露水が残留した状態で、蓋体を開放位置に開放したとしても、貯留凹部と突出壁とによって結露水が貯留され、蒸気孔カバーの蒸気孔から外部に流出するといったことがない。また、突出壁のみならずストッパ壁によっても貯留凹部に貯留した結露水の流出を防止可能とすることができるので、貯留される結露水の容量が多くても十分に対処することが可能となる。
【0008】
前記ヒンジ部は、蓋体の開放時、蒸気流路に残留する結露水を内容器へと還流可能な溝状の還流通路を形成され、
前記蒸気流路を構成する壁面は、前記ヒンジ部の還流通路に連通する貫通孔を形成され、
前記ストッパ壁は、前記貯留凹部に貯留された結露水を前記貫通孔へと流動可能とする切欠部を備えるのが好ましい。
【0009】
この構成により、貯留凹部に貯留された結露水を、切欠部に位置を制限しながら貫通孔からヒンジ部の還流通路を介して内容器へと還流させることができる。
【0010】
前記蒸気孔カバーは、前記蓋体の回動中心に対して平行に形成される複数の第1リブと、該第1リブと直交する複数の第2リブとで格子状とした蒸気孔を形成され、
前記複数の第1リブは、前記蓋体を開放位置に位置決めした状態で、平面視で互いに重なり合い、かつ、結露水を蒸気流路側へと流下させる傾斜面を備えるのが好ましい。
【0011】
この構成により、蓋体を開放位置に回動させることにより、蒸気流路内に残留している結露水が蒸気孔に落下等した場合であっても、そこでは第1リブが平面視が互いに重なり合った状態となっているので、結露水が外部へと流出することがない。しかも、各第1リブは、傾斜面を備えているので、落下等した結露水を蒸気流路側へと流下させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸気流路内に結露水が残留した状態で、蓋体を開放位置に開放したとしても、貯留凹部と突出壁とによって結露水が貯留され、蒸気孔カバーの蒸気孔から外部に流出するといったことがない。また、突出壁のみならずストッパ壁によっても貯留凹部に貯留した結露水の流出を防止可能とすることができるので、貯留される結露水の容量が多くても十分に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る加湿器の斜視図である。
【図2】図1の蓋体の蒸気孔カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図1の断面図である。
【図5】図1の蓋体を開放した状態を示す断面図である。
【図6】他の実施形態に係る加湿器の蒸気孔カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】図6の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る加湿器を示す。この加湿器は、胴体1と、蓋体2とを備える。なお、以下の説明では、便宜上、蓋体2を開閉可能に支持するヒンジ構造が形成される側を後方、その反対側を前方と記載する。
【0016】
胴体1は、図2及び図4に示すように、筒状の外装体3の上方開口部に肩部材4を装着し、肩部材4の上方から、その中心穴に内容器5を挿入してぶら下げ、外装体3の下方開口部に配設した底部材6から内容器5の底面側を固定したものである。内容器5の底面にはヒータ7が設けられ、内容器5内に収容した水を沸騰させて蒸気を発生させることができるようになっている。胴体1の前方面には、操作表示パネル8が取り付けられ、そこには起動や動作モードを選択するための各種スイッチ等が設けられている。
【0017】
蓋体2は、下面に内蓋9を着脱可能としたもので、胴体1にヒンジ部10を中心として回動可能に取り付けられている。
【0018】
ヒンジ部10は、図5に示すように、溝状に形成され、蓋体2を開放させた際、後述する蒸気流路13からの結露水を胴体1内の内容器5へと還流させるための通路を構成する。
【0019】
蓋体2の上面には、図2及び図3に示すように、前半部に、開閉用レバー11と、胴体1に対して蓋体2を閉鎖状態に維持するロックノブ12とが設けられている。また、蓋体2の後半部(ヒンジ部側の半部)には蒸気流路13が形成されている。
【0020】
蒸気流路13は、平面視略半円状の凹部で、底面のほぼ中央部分に還流部14が形成されている。蒸気流路13の底面は、ノズル装着部15を除いて還流部14に向かって徐々に傾斜するように形成されている。還流部14は、詳細については図示しないが、還流孔を還流弁によって開閉するようにしたものである。還流弁は、内圧が高いとき、すなわち内容器5が加熱されて収容された水が沸騰して内圧が上昇するときには還流孔を閉鎖する。一方、ヒータ7への通電が停止され、内圧が低下すれば、自重により下方に移動して還流孔を開放する。
【0021】
蒸気流路13の一端側には、上方に向かってドーム状に突出するノズル装着部15が形成されている。ノズル装着部15の上面にはガイド部16が形成され、そこには可撓性を有するチューブからなる蒸気噴出ノズル17が位置決めされている。蒸気噴出ノズル17は中間部分を屈曲され、ノズル装着部15に装着した状態では、先端部分が他端側に向かい、蒸気流路13の底面側へと徐々に接近している。
【0022】
蒸気流路13の他端側には、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気を分散させるための蒸気分散壁として、衝突壁18が形成されている。衝突壁18は、蒸気が衝突することにより、強制的にその流動方向を変換させ、分散させ、その温度を低下させる。
【0023】
蒸気流路13を構成する一端側の側壁には、蒸気噴出ノズル17の噴出方向とは反対側の位置に格子状の吸引口19が形成されている。吸引口19は、蒸気噴出ノズル17から蒸気が噴出される際、外部の空気を吸引し、蒸気がスムーズに流動できるようにする。
【0024】
また、蒸気流路13を構成する円弧状の側壁には、外側に向かって窪んだ貯留凹部20が形成されている。貯留凹部20の上方には、これを覆うように突出壁21が形成されている。貯留凹部20は、蓋体2を開放した際、蒸気流路13内に残留する結露水が蒸気孔24から流出しないように貯留するためのものであり、突出壁21がその貯留量を増大させる役割を果たしている。突出壁21の下方近傍には貫通孔22が形成されている。貫通孔22は、貯留凹部20に貯留された結露水をヒンジ部10へと流動させ、内容器5側へと還流させる。但し、貫通孔の開口面積は、蒸気流路13内で流動する蒸気が流出する量を極力抑えることができるように小さくなっている。
【0025】
蓋体2には、蒸気流路13を覆う蒸気孔カバー23が着脱可能となっている。蒸気孔カバー23は、十字に設けたリブによって格子状の蒸気孔24が形成されている。リブは、幅方向(図3中左右方向)に延びる第1リブ25と、縦方向(図3中、上下方向)に延びる第2リブ26とで格子状となっている。
【0026】
第1リブ25は、厚み方向の所定の幅寸法を有し、蓋体2を開放した状態(図5参照)で、上下方向に位置するそれぞれが平面視で互いに重なるように形成されている。しかも、各第1リブ25は、蓋体2の開放位置で、蒸気流路13側へと傾斜するように形成されている。これにより、蒸気流路13内に結露水が残留した状態で蓋体2が開放されたとしても、第1リブ25によって蓋体2からの流出が防止されることになる。
【0027】
一方、第2リブ26は、蒸気孔カバー23で蒸気流路13を覆った状態で、第1リブ25に比べて蒸気流路13内に突出するように設計されている。これにより、第2リブ26は、蒸気噴射ノズル17から噴射されて広がった蒸気が衝突可能となっている。したがって、第2リブ26に衝突した蒸気のみが強制的に方向変換されることになる。
【0028】
蒸気孔カバー23には、蓋体2の下面縁部には蒸気通路の開口縁部に係合する係合壁27が形成されている。係合壁27の一部は、ヒンジ部10側で突出寸法が大きくなったストッパ壁28となっており、蒸気流路13に形成した突出壁21と共に、蓋体2の開放時、貯留凹部20に貯留された結露水が蒸気孔24を介して流出することを防止する。但し、中央部分には切欠部29が形成されている。切欠部29を介して貯留した結露水がヒンジ部10を介して内容器5側へと還流される。
【0029】
また、蒸気孔カバー23には、蒸気通路への装着状態で、吸引口19の前方に所定間隔で位置するガイドリブ30が形成されている。ガイドリブ30は、吸引口19の前方に位置することにより、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気が誤って吸引口19から排出されることを防止する。これにより、蒸気孔24以外の場所から蒸気が排出されるといった不具合を適切に防止することが可能となる。
【0030】
次に、前記構成からなる加湿器の動作について説明する。
【0031】
図示しないスイッチ操作によりヒータ7への通電を開始し、内容器5内に収容した水を加熱して蒸気を発生させる。発生した蒸気は、蒸気噴出ノズル17を介して蒸気通路内に若干の広がり角度を持って噴出される。このため、噴出された蒸気は、一部が蓋体2に形成した各第2リブ26に衝突して異なる方向へと放出され、一部が蒸気通路の底面で反射して、あるいは、直接、衝突壁18へと衝突する。衝突壁18は、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気がほぼ垂直に衝突するように形成されている。このため、衝突壁18では、若干の広がり角度を持って噴出された蒸気の反射方向がランダムとなって分散する。また、衝突壁18で反射した蒸気が、衝突壁18に向かう蒸気と衝突する。この結果、蒸気は、第2リブ26や衝突壁18で分散される際に温度が低下する。したがって、蒸気孔24を介して周囲に放出される際には蒸気温度は十分に低下したものとなり、使用中にユーザが誤って直接蓋体2を触ったとしても火傷等の不具合の発生を確実に防止することが可能となる。
【0032】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、前記実施形態では、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気がほぼ垂直に衝突する衝突壁18を設けるようにしたが、これに代えて、図6及び図7に示す迂回壁31を設けるようにしてもよい。なお、図6及び図7に示す加湿器の構成のうち、前記実施形態と同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
蒸気流路13には、一端側のノズル装着部15に対して、中央部には内側に断面半円状に迫り出す迂回壁31が形成されている。また、ノズル装着部15に装着した蒸気噴出ノズル17の噴出方向は、迂回壁31には直接交差しない位置としている。また、蓋体2には、第2リブ26の一部に突出寸法を大きく形成された衝突リブ32が形成されている。衝突リブ32には、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気の一部が衝突し、強制的に流動方向を変更することにより分散させる。
【0035】
この構成により、蒸気噴出ノズル17から噴出された蒸気は、広がった一部が直接迂回壁に衝突して強制的に方向変換されるほか、迂回壁31に沿って迂回して流動する。迂回壁31に沿って迂回する蒸気は、迂回壁31の表面からの距離によって相違する。これにより、蒸気は分散され、蓋体2の蒸気孔24の広い範囲から外部へと流出する。この結果、外部に流出する蒸気の温度が十分に低下することになる。
【符号の説明】
【0036】
1…胴体
2…蓋体
3…外装体
4…肩部材
5…内容器
6…底部材
7…ヒータ
8…操作表示パネル
9…内蓋
10…ヒンジ部
11…開閉用レバー
12…ロックノブ
13…蒸気流路
14…還流部
15…ノズル装着部
16…ガイド部
17…蒸気噴出ノズル
18…衝突壁
19…吸引口
20…貯留凹部
21…突出壁
22…貫通孔
23…蒸気孔カバー
24…蒸気孔
25…第1リブ
26…第2リブ
27…係合壁
28…ストッパ壁
29…切欠部
30…ガイドリブ
31…迂回壁
32…衝突リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する内容器を備えた胴体と、
前記内容器の開口を閉鎖する閉鎖位置と、開放する開放位置とにそれぞれ回動可能な蓋体と、
前記内容器を加熱する加熱手段と、
を備えた加湿器であって、
前記蓋体は、
胴体に回動可能に支持されるヒンジ部と、
前記内容器で発生した蒸気を噴出する蒸気噴出ノズルと、
前記蒸気噴出ノズルから噴出された蒸気が流動する蒸気流路と、
前記蒸気流路を覆う、蒸気孔を形成された蒸気孔カバーと、
を備え、
前記蒸気流路を構成する側壁の一部に、
前記蓋体を開放位置に回動させた状態で、蒸気流路内に残留する結露水を貯留する貯留凹部と、
前記貯留凹部に貯留された結露水が、蒸気孔カバーの蒸気孔へと流動することを防止する突出壁と、
を形成し、
前記蒸気孔カバーは、前記蒸気流路を覆うように蓋体に装着された状態で、前記突出壁と直交又はほぼ直交し、前記貯留凹部を回動中心側でガイドするストッパ壁を形成されたことを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記ヒンジ部は、蓋体の開放時、蒸気流路に残留する結露水を内容器へと還流可能な溝状の還流通路を形成され、
前記蒸気流路を構成する壁面は、前記ヒンジ部の還流通路に連通する貫通孔を形成され、
前記ストッパ壁は、前記貯留凹部に貯留された結露水を前記貫通孔へと流動可能とする切欠部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記蒸気孔カバーは、前記蓋体の回動中心に対して平行に形成される複数の第1リブと、該第1リブと直交する複数の第2リブとで格子状とした蒸気孔を形成され、
前記複数の第1リブは、前記蓋体を開放位置に位置決めした状態で、平面視で互いに重なり合い、かつ、結露水を蒸気流路側へと流下させる傾斜面を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233687(P2012−233687A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168781(P2012−168781)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2009−123222(P2009−123222)の分割
【原出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】