加湿装置
【課題】水中に放出された殺菌性成分が水没部材等の表面に付着するのを防止することにより、水中の殺菌性成分の濃度の低下を防止して、水中における微生物の繁殖を抑制するようにした加湿装置を提供することを目的としたものである。
【解決手段】水を溜める水槽と、水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、気化加湿エレメントは、駆動機構によって水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、送風機は、流入口から流入した風によって気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を吐出口から放出するものである。
【解決手段】水を溜める水槽と、水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、気化加湿エレメントは、駆動機構によって水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、送風機は、流入口から流入した風によって気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を吐出口から放出するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中における微生物の繁殖を抑制することのできる加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形品の表面にシリカなどの組成物をコーティングして親水性皮膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、水槽の貯水部分の水中に殺菌性成分を溶出して、水中の微生物の繁殖を抑制する制菌装置を備えた加湿装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−67827号公報(第2−4頁)
【特許文献2】特開昭55−8545号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の発明においては、水中に溶出した殺菌性成分は電荷を帯びており、かつ、装置部材の水没している部分の表面が、殺菌性成分と逆極性の電荷を帯びている場合、殺菌性成分が装置部材に吸着されて水中から除去されるため、水中の殺菌性成分の濃度が低下し、水中における微生物の繁殖を抑制する効果が失なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、水中に放出された殺菌性成分が水没部材等の表面に付着するのを防止することにより、水中の殺菌性成分の濃度の低下を防止して、水中における微生物の繁殖を抑制するようにした加湿装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加湿装置は、水を溜める水槽と、水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、気化加湿エレメントは、駆動機構によって水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、送風機は、流入口から流入した風によって気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を吐出口から放出するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加湿装置によれば、水中に放出された殺菌性成分(物質)が接水部分や水没部材に付着するのを抑制することができるので、長期にわたって水中の殺菌性成分濃度が低下するのを防止することができ、これにより、水中における微生物の繁殖を抑制することができ、清浄な加湿空気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水除菌装置の説明図である。
【図2】図1の作用説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る水除菌装置の一部を省略した説明図である。
【図4】図3の作用説明図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る水除菌装置の要部の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る水除菌装置の要部の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る水除菌装置の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る加湿装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る水除菌装置の説明図、図2はその作用説明図である。
水の流入口2、流出口3を有する水槽1内には水4が入れられており、この水4内には水中に殺菌性成分を放出(溶出)する殺菌性成分放出部10が設けられている。12は一部が水4中に没した部材(以下、水没部材という)である。なお、以下の説明では、水槽1の水4に接する部分(流入口2、流出口3及び底部や周壁の一部などで、図には太線で示してある)を、接水部分5という。
【0010】
そして、接水部分5の内壁面及び水没部材12の少なくとも水4に接する部分には、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分と同じ殺菌性成分があらかじめ塗布されている。ここで、殺菌性成分としては、例えば、4級アンモニウム塩、銀イオン、グアニジン類などが用いられる。
【0011】
上記のように構成した本実施の形態においては、図2に示すように、殺菌性成分放出部10から水中に殺菌性成分11が放出されるが、接水部分5及び水没部材12にはあらかじめこれと同じ殺菌性成分11が塗布されているため、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11が、接水部分5や水没部材12に付着しにくくなる。
これにより、殺菌性成分11が水中から除去されるのを抑制することができるので、水中の殺菌性成分11の濃度が、設計段階で想定された濃度と消費速度に基いた濃度より低下するのを防止することができる。
【0012】
上記の説明では、水槽1の接水部分5及び水没部材12の少なくとも水に接する部分に、殺菌性成分11を塗布した場合を示したが、これらの一部に殺菌性成分11を塗布してもよく、あるいは水没部材11のみに殺菌性成分11を塗布してもよい。
本実施の形態によれば、水槽1内の水4は長期にわたって殺菌性を有するため、水中における微生物の繁殖を抑制することができる。
【0013】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2に係る一部を省略した水除菌装置の説明図、図4はその作用説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態の構成は、実施の形態1の場合とほぼ同様であるが、水没部材12の表面には、実施の形態1の殺菌性成分11とは異なる塗布成分13があらかじめ塗布されている。
【0014】
すなわち、図4に示すように、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11に、例えば正(プラス)の電荷が帯電された物質を用いた場合、塗布成分13にも正の電荷が帯電されている物質を用いたものである。
このように構成したことにより、静電的反発作用により、殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを防止することができる。なお、上記説明では、水没部材12に塗布成分13を塗布した場合を示したが、必要に応じて接水部分5(図1参照)の全部又は一部にも塗布成分13を塗布してもよい。
【0015】
上記の説明では、殺菌性成分11と塗布成分13に、共に正の電荷が帯電する物質を用いた場合を示したが、両者に負(マイナス)の電荷が帯電する物質を用いてもよく、この場合も同様に静電的反発作用を生じるので、殺菌性成分11が水没部材12等に付着するのを防止することができる。
【0016】
ここで、塗布成分13としては、正の電荷が帯電する物質として、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、銀イオンなどの金属陽イオン、4級アンモニウム塩、グアニジン類などの有機イオンなどが用いられる。また、負の電荷が帯電する物質として、ヨウ素イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、脂肪酸、メタクリル酸などの有機イオンを用いることができる。なお、これらの物質は、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11との間で静電的反発を生じるものであれば、どのような物質でもよいが、それ自身が殺菌性を有する物質であることが望ましい。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0017】
[実施の形態3]
図5は本発明の実施の形態3に係る水除菌装置の要部の説明図である。
本実施の形態における水没部材12には、等電点がpH7以上である物質14が内包されており、この物質14は、中性の水中では正に帯電する性質を備えている。このため、実施の形態2の塗布成分13と異なり、塗膜が物理的に剥れたりするおそれがなく、また、正に帯電された殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを抑制することができる。なお、必要に応じて、接水部分5(図1参照)にも上記物質14を内包させてもよく、あるいは、接水部分5及び水没部材12の全部又は一部の表面に、上記物質14を塗布してもよい。
【0018】
ここで、等電点がpH7以上の物質14としては、マグネシア、酸化カルシウム、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミナなどの酸化物が挙げられる。また、ムライトなどの複合酸化物、Na処理をしたアルミナなどの2種以上の金属イオンを含む酸化物でもよい。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0019】
[実施の形態4]
図6は本発明の実施の形態4に係る水除菌装置の要部の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、水没部材12の表面又は内部に、正又は負に帯電された帯電成分16を保持する多孔性物質(担体)15を含むものである。なお、必要に応じて、接水部分5(図1参照)にも上記の多孔性物質15を含ませてもよく、あるいは、接水部分5及び水没部材12の全部又は一部の表面に、上記多孔性物質15を塗布してもよい。
【0020】
ここで、多孔性物質15には、メソポーラスシリカ、シリカゲル、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイトなど、結晶やアモルファス、一次元から三次元に連通した細孔、層状構造などの種類にかかわらず用いることができる。
この場合、多孔性物質15は帯電成分16を保持する機能を持たせることから、その細孔サイズが帯電成分16より大きいものを選択することが必要で、例えば、高分子量のイオン種を帯電成分16として用いた場合は、シリカゲルやメソポーラスシリカなどの細孔サイズの大きい多孔性物質15を用いればよい。
【0021】
上記のように構成した本実施の形態においては、帯電成分16の分子量が小さく水溶性が高い場合には、帯電成分16が水中に溶出して水中の殺菌性成分11が消失するのを防止することができる。また、帯電成分16に耐熱性の低い有機物を用いれば、熱可塑性の水没部材12に内添して成形加工する場合に、帯電成分16の分子構造が損われるのを防止することができる。
【0022】
さらに、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11と同じ極性の帯電成分16を内包する多孔性物質15を用いれば、静電的反作用により殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを防止できるので、水中の殺菌性成分11の濃度の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0023】
[実施の形態5]
図7は本発明の実施の形態5に係る水除菌装置の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態に係る水除菌装置は、実施の形態1〜4の水没部材12に代えて、水槽1内に、一部に殺菌性成分放出部10が設けられた回転体17を、水中にほぼ半没状態にして設置したものである。18はこの回転体17を、連続的若しくは間欠的又は正逆方向に回転駆動する駆動機構である(図には、駆動機構を水槽1内に設けた場合を示したが、水槽1外に設けてもよい)。そして、回転体17には、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11と同じ物質か、又は殺菌性成分11と同極性に帯電された物質が塗布されている。
【0024】
本実施の形態においては、回転体17を回転させて殺菌性成分放出部10を水中に移動(浸漬)させて、殺菌性成分11を水中に放出させ、不要の際には回転体17を回転させて殺菌性成分放出部10を空中に移動させることにより、殺菌性成分11が過剰に水中に溶出されて消費されるのを防止することができる。
また、回転体17の回転速度を増減し、あるいは回転体17を正逆方向に回転させることにより、水中の殺菌性成分11の濃度を制御することができる。
さらに、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11が、静電的反発作用により回転体17に付着するのを抑制することができる。
【0025】
本実施の形態において、回転体17の近傍に送風機(図示せず)により送風することにより、回転体17の表面に付着した水を気化させれば空気を加湿することができるので、これを水槽1外に放出することにより、加湿装置として使用することができる。
【0026】
[実施の形態6]
図8は本発明の実施の形態6に係る加湿装置の説明図である。なお、実施の形態1と同一又は同じ機能の部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
水槽1の水4中には殺菌性成分放出部10が設けられており、また、水槽1内には一部が水4に浸漬され、駆動機構(図示せず)により連続的若しくは間欠的又は正逆方向に回転駆動される気化加湿エレメント19が設置されている。なお、6は水槽1の上部の一方の側に設けられて、送風機(図示せず)からの風が流入する流入口、7は他方の側に設けられて、加湿空気が吐出する吐出口である。
【0027】
気化加湿エレメント19は、基材としては耐水性を有する素材であれば、特に限定しないが、例えば、アルミニウム板などの金属板、水中で容易に分解しないように強固に結着されたセラミック板、水中で容易に軟化して変形しないように加工された紙や不織布、あるいはプラスチック板などが用いられる。そして、気化加湿エレメント19は、円板状又は中空円板状とすることで、回転させる場合のスペース効率に優れたエレメントとすることができる。
【0028】
上記のような円板状又は中空円板状のエレメントを積層することにより、水と空気との接触面積を増加することができて、所定の加湿量を得ることができる。
この場合、積層する板の間隔が広いとスペース効率が悪く、狭いと板間の空間で水が表面張力によって架橋するおそれがある。このため、エレメントの板の表面を親水性に加工すると共に、板の間隔を1〜4mm程度とすることが望ましく、また、エレメントの表面に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性の電荷を有する物質を塗布することが望ましい。
【0029】
エレメントの表面に親水性を付与するためには、例えば、表面に細かい凹凸を設ければよい。また、エレメントの表面に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性を持たせるためには、エレメントの表面に、例えば、表面水酸基を有するシリカやアルミナなどの酸化物や、イオン性をもつポリアクリル酸樹脂などを塗布することが望ましい。
【0030】
本実施の形態に係る加湿装置によれば、気化加湿エレメント19は、駆動機構によって同方向又は正逆方向(往復回転)に回転駆動され、水から引上げられた部分の表面に水を保持しているので、流入口6からの送風によってこの水が蒸発し、空気が加湿されて吐出口7から放出され、室内等を加湿する。
また、水中に設けた殺菌性成分放出部11から溶出された殺菌性成分11により、水4中の微生物の繁殖を抑制することができる。
【0031】
さらに、気化加湿エレメント19の表面、及び必要に応じて接水部分に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性の電荷を有する物質を塗布することにより、水中の殺菌性成分11がこれらに付着するのを長期に亘って抑制することができるので、水4中の殺菌性成分11の濃度の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る水除菌装置及び加湿装置について説明したが、実施の形態1〜4に係る水除菌装置は、加湿装置にも実施することができる。
また、水が貯留され、微生物の繁殖によって不具合が生じるおそれがある空気調和機のドレインパンや手指乾燥機のドレインパン、あるいは除湿機のドレインパンなどにも本発明を実施することができる。
さらに、魚類などの水槽の衛生性の維持や水を含む土砂の衛生性の維持などにも本発明を応用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 水槽、4 水、5 接水部分、10 殺菌性成分放出部、11 殺菌性成分、12 水没部材、13 塗布成分、14 等電点がpH7以上の物質、15 多孔性物質(担体)、16 帯電成分、17 回転体、18 回転体の駆動機構、19 気化加湿エレメント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中における微生物の繁殖を抑制することのできる加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形品の表面にシリカなどの組成物をコーティングして親水性皮膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、水槽の貯水部分の水中に殺菌性成分を溶出して、水中の微生物の繁殖を抑制する制菌装置を備えた加湿装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−67827号公報(第2−4頁)
【特許文献2】特開昭55−8545号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の発明においては、水中に溶出した殺菌性成分は電荷を帯びており、かつ、装置部材の水没している部分の表面が、殺菌性成分と逆極性の電荷を帯びている場合、殺菌性成分が装置部材に吸着されて水中から除去されるため、水中の殺菌性成分の濃度が低下し、水中における微生物の繁殖を抑制する効果が失なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、水中に放出された殺菌性成分が水没部材等の表面に付着するのを防止することにより、水中の殺菌性成分の濃度の低下を防止して、水中における微生物の繁殖を抑制するようにした加湿装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加湿装置は、水を溜める水槽と、水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、気化加湿エレメントは、駆動機構によって水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、送風機は、流入口から流入した風によって気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を吐出口から放出するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る加湿装置によれば、水中に放出された殺菌性成分(物質)が接水部分や水没部材に付着するのを抑制することができるので、長期にわたって水中の殺菌性成分濃度が低下するのを防止することができ、これにより、水中における微生物の繁殖を抑制することができ、清浄な加湿空気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水除菌装置の説明図である。
【図2】図1の作用説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る水除菌装置の一部を省略した説明図である。
【図4】図3の作用説明図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る水除菌装置の要部の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る水除菌装置の要部の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る水除菌装置の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る加湿装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る水除菌装置の説明図、図2はその作用説明図である。
水の流入口2、流出口3を有する水槽1内には水4が入れられており、この水4内には水中に殺菌性成分を放出(溶出)する殺菌性成分放出部10が設けられている。12は一部が水4中に没した部材(以下、水没部材という)である。なお、以下の説明では、水槽1の水4に接する部分(流入口2、流出口3及び底部や周壁の一部などで、図には太線で示してある)を、接水部分5という。
【0010】
そして、接水部分5の内壁面及び水没部材12の少なくとも水4に接する部分には、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分と同じ殺菌性成分があらかじめ塗布されている。ここで、殺菌性成分としては、例えば、4級アンモニウム塩、銀イオン、グアニジン類などが用いられる。
【0011】
上記のように構成した本実施の形態においては、図2に示すように、殺菌性成分放出部10から水中に殺菌性成分11が放出されるが、接水部分5及び水没部材12にはあらかじめこれと同じ殺菌性成分11が塗布されているため、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11が、接水部分5や水没部材12に付着しにくくなる。
これにより、殺菌性成分11が水中から除去されるのを抑制することができるので、水中の殺菌性成分11の濃度が、設計段階で想定された濃度と消費速度に基いた濃度より低下するのを防止することができる。
【0012】
上記の説明では、水槽1の接水部分5及び水没部材12の少なくとも水に接する部分に、殺菌性成分11を塗布した場合を示したが、これらの一部に殺菌性成分11を塗布してもよく、あるいは水没部材11のみに殺菌性成分11を塗布してもよい。
本実施の形態によれば、水槽1内の水4は長期にわたって殺菌性を有するため、水中における微生物の繁殖を抑制することができる。
【0013】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2に係る一部を省略した水除菌装置の説明図、図4はその作用説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態の構成は、実施の形態1の場合とほぼ同様であるが、水没部材12の表面には、実施の形態1の殺菌性成分11とは異なる塗布成分13があらかじめ塗布されている。
【0014】
すなわち、図4に示すように、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11に、例えば正(プラス)の電荷が帯電された物質を用いた場合、塗布成分13にも正の電荷が帯電されている物質を用いたものである。
このように構成したことにより、静電的反発作用により、殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを防止することができる。なお、上記説明では、水没部材12に塗布成分13を塗布した場合を示したが、必要に応じて接水部分5(図1参照)の全部又は一部にも塗布成分13を塗布してもよい。
【0015】
上記の説明では、殺菌性成分11と塗布成分13に、共に正の電荷が帯電する物質を用いた場合を示したが、両者に負(マイナス)の電荷が帯電する物質を用いてもよく、この場合も同様に静電的反発作用を生じるので、殺菌性成分11が水没部材12等に付着するのを防止することができる。
【0016】
ここで、塗布成分13としては、正の電荷が帯電する物質として、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、銀イオンなどの金属陽イオン、4級アンモニウム塩、グアニジン類などの有機イオンなどが用いられる。また、負の電荷が帯電する物質として、ヨウ素イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、脂肪酸、メタクリル酸などの有機イオンを用いることができる。なお、これらの物質は、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11との間で静電的反発を生じるものであれば、どのような物質でもよいが、それ自身が殺菌性を有する物質であることが望ましい。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0017】
[実施の形態3]
図5は本発明の実施の形態3に係る水除菌装置の要部の説明図である。
本実施の形態における水没部材12には、等電点がpH7以上である物質14が内包されており、この物質14は、中性の水中では正に帯電する性質を備えている。このため、実施の形態2の塗布成分13と異なり、塗膜が物理的に剥れたりするおそれがなく、また、正に帯電された殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを抑制することができる。なお、必要に応じて、接水部分5(図1参照)にも上記物質14を内包させてもよく、あるいは、接水部分5及び水没部材12の全部又は一部の表面に、上記物質14を塗布してもよい。
【0018】
ここで、等電点がpH7以上の物質14としては、マグネシア、酸化カルシウム、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミナなどの酸化物が挙げられる。また、ムライトなどの複合酸化物、Na処理をしたアルミナなどの2種以上の金属イオンを含む酸化物でもよい。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0019】
[実施の形態4]
図6は本発明の実施の形態4に係る水除菌装置の要部の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、水没部材12の表面又は内部に、正又は負に帯電された帯電成分16を保持する多孔性物質(担体)15を含むものである。なお、必要に応じて、接水部分5(図1参照)にも上記の多孔性物質15を含ませてもよく、あるいは、接水部分5及び水没部材12の全部又は一部の表面に、上記多孔性物質15を塗布してもよい。
【0020】
ここで、多孔性物質15には、メソポーラスシリカ、シリカゲル、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイトなど、結晶やアモルファス、一次元から三次元に連通した細孔、層状構造などの種類にかかわらず用いることができる。
この場合、多孔性物質15は帯電成分16を保持する機能を持たせることから、その細孔サイズが帯電成分16より大きいものを選択することが必要で、例えば、高分子量のイオン種を帯電成分16として用いた場合は、シリカゲルやメソポーラスシリカなどの細孔サイズの大きい多孔性物質15を用いればよい。
【0021】
上記のように構成した本実施の形態においては、帯電成分16の分子量が小さく水溶性が高い場合には、帯電成分16が水中に溶出して水中の殺菌性成分11が消失するのを防止することができる。また、帯電成分16に耐熱性の低い有機物を用いれば、熱可塑性の水没部材12に内添して成形加工する場合に、帯電成分16の分子構造が損われるのを防止することができる。
【0022】
さらに、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11と同じ極性の帯電成分16を内包する多孔性物質15を用いれば、静電的反作用により殺菌性成分11が水没部材12に付着するのを防止できるので、水中の殺菌性成分11の濃度の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0023】
[実施の形態5]
図7は本発明の実施の形態5に係る水除菌装置の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態に係る水除菌装置は、実施の形態1〜4の水没部材12に代えて、水槽1内に、一部に殺菌性成分放出部10が設けられた回転体17を、水中にほぼ半没状態にして設置したものである。18はこの回転体17を、連続的若しくは間欠的又は正逆方向に回転駆動する駆動機構である(図には、駆動機構を水槽1内に設けた場合を示したが、水槽1外に設けてもよい)。そして、回転体17には、殺菌性成分放出部10から放出される殺菌性成分11と同じ物質か、又は殺菌性成分11と同極性に帯電された物質が塗布されている。
【0024】
本実施の形態においては、回転体17を回転させて殺菌性成分放出部10を水中に移動(浸漬)させて、殺菌性成分11を水中に放出させ、不要の際には回転体17を回転させて殺菌性成分放出部10を空中に移動させることにより、殺菌性成分11が過剰に水中に溶出されて消費されるのを防止することができる。
また、回転体17の回転速度を増減し、あるいは回転体17を正逆方向に回転させることにより、水中の殺菌性成分11の濃度を制御することができる。
さらに、殺菌性成分放出部10から放出された殺菌性成分11が、静電的反発作用により回転体17に付着するのを抑制することができる。
【0025】
本実施の形態において、回転体17の近傍に送風機(図示せず)により送風することにより、回転体17の表面に付着した水を気化させれば空気を加湿することができるので、これを水槽1外に放出することにより、加湿装置として使用することができる。
【0026】
[実施の形態6]
図8は本発明の実施の形態6に係る加湿装置の説明図である。なお、実施の形態1と同一又は同じ機能の部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
水槽1の水4中には殺菌性成分放出部10が設けられており、また、水槽1内には一部が水4に浸漬され、駆動機構(図示せず)により連続的若しくは間欠的又は正逆方向に回転駆動される気化加湿エレメント19が設置されている。なお、6は水槽1の上部の一方の側に設けられて、送風機(図示せず)からの風が流入する流入口、7は他方の側に設けられて、加湿空気が吐出する吐出口である。
【0027】
気化加湿エレメント19は、基材としては耐水性を有する素材であれば、特に限定しないが、例えば、アルミニウム板などの金属板、水中で容易に分解しないように強固に結着されたセラミック板、水中で容易に軟化して変形しないように加工された紙や不織布、あるいはプラスチック板などが用いられる。そして、気化加湿エレメント19は、円板状又は中空円板状とすることで、回転させる場合のスペース効率に優れたエレメントとすることができる。
【0028】
上記のような円板状又は中空円板状のエレメントを積層することにより、水と空気との接触面積を増加することができて、所定の加湿量を得ることができる。
この場合、積層する板の間隔が広いとスペース効率が悪く、狭いと板間の空間で水が表面張力によって架橋するおそれがある。このため、エレメントの板の表面を親水性に加工すると共に、板の間隔を1〜4mm程度とすることが望ましく、また、エレメントの表面に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性の電荷を有する物質を塗布することが望ましい。
【0029】
エレメントの表面に親水性を付与するためには、例えば、表面に細かい凹凸を設ければよい。また、エレメントの表面に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性を持たせるためには、エレメントの表面に、例えば、表面水酸基を有するシリカやアルミナなどの酸化物や、イオン性をもつポリアクリル酸樹脂などを塗布することが望ましい。
【0030】
本実施の形態に係る加湿装置によれば、気化加湿エレメント19は、駆動機構によって同方向又は正逆方向(往復回転)に回転駆動され、水から引上げられた部分の表面に水を保持しているので、流入口6からの送風によってこの水が蒸発し、空気が加湿されて吐出口7から放出され、室内等を加湿する。
また、水中に設けた殺菌性成分放出部11から溶出された殺菌性成分11により、水4中の微生物の繁殖を抑制することができる。
【0031】
さらに、気化加湿エレメント19の表面、及び必要に応じて接水部分に、殺菌性成分放出部10から溶出する殺菌性成分11と同じ極性の電荷を有する物質を塗布することにより、水中の殺菌性成分11がこれらに付着するのを長期に亘って抑制することができるので、水4中の殺菌性成分11の濃度の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る水除菌装置及び加湿装置について説明したが、実施の形態1〜4に係る水除菌装置は、加湿装置にも実施することができる。
また、水が貯留され、微生物の繁殖によって不具合が生じるおそれがある空気調和機のドレインパンや手指乾燥機のドレインパン、あるいは除湿機のドレインパンなどにも本発明を実施することができる。
さらに、魚類などの水槽の衛生性の維持や水を含む土砂の衛生性の維持などにも本発明を応用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 水槽、4 水、5 接水部分、10 殺菌性成分放出部、11 殺菌性成分、12 水没部材、13 塗布成分、14 等電点がpH7以上の物質、15 多孔性物質(担体)、16 帯電成分、17 回転体、18 回転体の駆動機構、19 気化加湿エレメント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜める水槽と、
前記水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、
前記気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、
流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、
前記水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、
前記気化加湿エレメントは、
前記駆動機構によって前記水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、
前記送風機は、
前記流入口から流入した風によって前記気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を前記吐出口から放出する
ことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記気化加湿エレメントの基材は、アルミニウム板若しくはセラミック板、水中で容易に軟化して変形しないように加工された紙若しくは不織布、又はプラスチック板である
ことを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記気化加湿エレメントの表面に凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記積層された気化加湿エレメントの間隔が1〜4mmである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記殺菌性成分放出部は、
4級アンモニウム、銀イオン、グアニジン類を放出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項1】
水を溜める水槽と、
前記水槽に溜めた水に一部浸漬され、円板状又は中空円板状で耐水性を有する基材を積層した気化加湿エレメントと、
前記気化加湿エレメントを回転駆動する駆動機構と、
流入口から流入した風を吐出口から吐出する送風機と、
前記水槽に設けられ、殺菌性成分を放出して微生物の繁殖を抑制する殺菌性成分放出部とを備え、
前記気化加湿エレメントは、
前記駆動機構によって前記水槽の水から引上げられた部分の表面に水を保持し、
前記送風機は、
前記流入口から流入した風によって前記気化加湿エレメントの表面に保持された水を蒸発させ、加湿された空気を前記吐出口から放出する
ことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記気化加湿エレメントの基材は、アルミニウム板若しくはセラミック板、水中で容易に軟化して変形しないように加工された紙若しくは不織布、又はプラスチック板である
ことを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記気化加湿エレメントの表面に凹凸が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記積層された気化加湿エレメントの間隔が1〜4mmである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記殺菌性成分放出部は、
4級アンモニウム、銀イオン、グアニジン類を放出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加湿装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−57504(P2013−57504A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281041(P2012−281041)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2010−232551(P2010−232551)の分割
【原出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2010−232551(P2010−232551)の分割
【原出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
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