説明

加熱体、それを用いた加熱方法並びに加熱体を備えた加熱装置

【課題】加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体、それを用いた加熱方法並びに加熱体を備えた加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】セラミック3aと炭素3bとで加熱体3を形成する。炭素3bは、マイクロ波を炭化ケイ素よりも良く吸収し、耐熱温度も十分であり、マイクロ波用加熱体として最適である。一方、セラミック3aは、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好である。また、セラミック3aは、その加工性において容易であり、コストも炭化ケイ素よりも低く抑えられ、入手も簡単である。したがって、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミック3aと炭素3bとで形成された加熱体3を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体3を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波加熱に用いられる加熱体、それを用いた加熱方法並びに加熱体を備えた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波の加熱応用が近年広まっている。中でも、加熱処理物を断熱素材で覆い、放熱を防止した状態でのマイクロ波加熱は効率が良く、高温まで使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような目的で使われる加熱体の特性としては、比較的低温から高温までマイクロ波を効率良く吸収し、マイクロ波を熱に換えることが要求され、しかも高温での耐熱性等から、炭化ケイ素(SiC)が考えられる(特許文献1のサセプタを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−535172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱用途での加熱体としては、設計の自由性、低コスト、耐寿命などが要求され、炭化ケイ素製のものでは素材が非常に高硬度であり、難加工性である。そのため、コストも非常に高い物となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体、それを用いた加熱方法並びに加熱体を備えた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る加熱体は、マイクロ波加熱に用いられる加熱体であって、前記加熱体は、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成されることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]本発明に係る加熱体によれば、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで加熱体を形成する。大きさによるが、炭素(例えば炭素粉、発砲状の炭素素材、炭素を使ったスポンジ状の加工物、炭素繊維、炭素製のフェルト)は、マイクロ波を炭化ケイ素よりも良く吸収し、耐熱温度も十分であり、マイクロ波用加熱体として最適である。炭素化合物の場合も炭素と同等の効果が得られる。一方、セラミックや石英は、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好である。また、セラミックや石英は、その加工性において容易であり、コストも炭化ケイ素よりも低く抑えられ、入手も簡単である。したがって、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体を実現することができる。
【0009】
また、本発明に係る加熱方法は、本発明に係る加熱体を用いた加熱方法であって、前記加熱体を用いて前記マイクロ波加熱を行うことを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]本発明に係る加熱方法によれば、本発明に係る加熱体を用いてマイクロ波加熱を行うことで、マイクロ波を効率良く吸収し、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好な加熱体を用いてマイクロ波加熱を行うことができる。
【0011】
本発明に係る加熱方法において、加熱対象物の一例として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体がある。加熱対象物が、マイクロ波を吸収する物体であれば、加熱体を使用せずともマイクロ波加熱を行うことができるが、加熱対象物が、マイクロ波を吸収せずに透過する物体の場合には、加熱体を使用した状態でマイクロ波加熱を行うことになる。したがって、マイクロ波を吸収せずに透過する物体が加熱対象物であっても、本発明に係る加熱体を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。
【0012】
また、加熱対象物の一例として粉体がある。粉体を形成する物質や粉体の粒径にもよるが、粉体の場合にはマイクロ波を吸収せずに透過することが多いので、難加熱な場合(加熱が難しい場合)が多い。難加熱性の粉体が加熱対象物であっても、本発明に係る加熱体を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。もちろん、形態に限定されず、例えば塊を加熱対象物として用いてもよい。
【0013】
また、加熱対象物の一例として流体がある。流体のように移送される物体が加熱対象物であっても、マイクロ波加熱を行うことができる。もちろん、流体に限定されず、移送されずに固定された物体が加熱対象物であってもよい。
【0014】
また、セラミックあるいは石英で形成された容器内に加熱対象物を収容してマイクロ波加熱を行ってもよい。上述したように、セラミックや石英は、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好であるので、セラミックあるいは石英で形成された容器を介して加熱対象物に対して間接的に熱を伝え、加熱を行うことができる。
【0015】
また、減圧中でマイクロ波加熱を行うことで、断熱した状態でマイクロ波加熱を効率良く行うことができる。特に大気圧下で減圧して、還元ガス(例えば窒素ガス)を注入して還元雰囲気中でマイクロ波加熱を行うことで、酸化を防止した状態で加熱を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る加熱装置は、本発明に係る加熱体を備えた加熱装置であって、加熱対象物を収容して前記マイクロ波加熱を行う加熱処理部を備えることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]本発明に係る加熱装置によれば、本発明に係る加熱体の他に、加熱対象物を収容してマイクロ波加熱を行う加熱処理部を備えることで、加熱体はマイクロ波を熱に換えて、加熱処理部に収容された加熱対象物に対してマイクロ波加熱を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る加熱体、それを用いた加熱方法並びに加熱体を備えた加熱装置によれば、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る加熱装置の概略断面図、(a)は正面視した断面図、(b)は側面視した断面図である。
【図2】(a)は実施例2に係る加熱装置の概略断面図、(b)は(a)とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図である。
【図3】(a)は図2とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図、(b)は(a)の加熱体の概略斜視図である。
【図4】(a)は図2および図3とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図、(b)は(a)の加熱体の概略斜視図である。
【図5】(a)、(b)は、図2〜図4とは別の実施形態の実施例2に係る概略断面図である。
【図6】実施例3に係る加熱装置の概略断面図である。
【図7】図6とは別の実施形態の実施例3に係る加熱装置の概略断面図である。
【図8】実施例4に係る加熱装置の概略断面図である。
【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る加熱装置の概略断面図である。後述する実施例2〜4も含めて、本実施例1では、加熱対象物として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体を例に採って説明する。
【0021】
本実施例1では、加熱装置は、図1に示すように、加熱対象物1を収容してマイクロ波加熱を行う炉体2と、マイクロ波を熱に変える加熱体3とを備えている。炉体2は断熱材で形成され、放熱を防止する。図1(a)の正面視した断面図に示すように、炉体2には、マイクロ波を伝送する導波管4を設けており、導波管4を通して炉体2内にマイクロ波を供給する。炉体2は、本発明における加熱処理部に相当し、加熱体3は、本発明における加熱体に相当する。
【0022】
加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されている。後述する実施例2〜4も含めて、本実施例1では、炭素3bは、炭素粉で形成されており、セラミック3a内に炭素粉で形成された炭素3bを収容している。マイクロ波の吸収特性から炭素粉の粒径は300μm〜1000μm程度の範囲が好ましい。
【0023】
加熱体3については、セラミック3aの替わりに石英であってもよいし、セラミックと石英とを両方用いてもよい。炭素3bについても、炭素粉以外に、発砲状の炭素素材、炭素を使ったスポンジ状の加工物、炭素繊維、炭素製のフェルトあるいはそれらの組み合わせなどのようにマイクロ波を良く吸収するものであれば、形態については特に限定されない。また、炭素3bの替わりに炭素化合物(例えば炭化ケイ素の粉体)であってもよいし、炭素と炭素化合物とを両方用いてもよい。
【0024】
本実施例1では、加熱体3は、ヒータをも兼用しており、図1では上部および下部にそれぞれ複数ずつ備えている。また、下部に備えられた各々の加熱体3は、図1(b)の側面視した断面図に示すように、加熱対象物1を移送するセラミックローラをも兼用している。すなわち、下部に備えられた各々の加熱体3は、ヒータ機能付セラミックローラである。図1の矢印の方向に下部に備えられた各々の加熱体3(ヒータ機能付セラミックローラ)を回転させることで、加熱体3(ヒータ機能付セラミックローラ)に載置された加熱対象物1を、図1(b)の矢印の方向に平行に移送する。
【0025】
なお、加熱体3については、必ずしもヒータやセラミックローラを兼用する必要はなく、別々にヒータ(加熱部)やローラ(移送部)を備えてもよい。また、必ずしもヒータ(加熱部)やローラ(移送部)を設ける必要もない。
【0026】
加熱対象物1は、上述したようにマイクロ波を吸収せずに透過する物体である。後述する実施例2、3のように粉体(例えば酸化物の粉体や無機物の粉体)を、マイクロ波を吸収せずに透過する加熱対象物として、それを収容した容器5(図2〜図5を参照)ごとローラによって移送してもよいし、実施例3のように液体や気体を、マイクロ波を吸収せずに透過する加熱対象物として、それを密封した容器(図示省略)ごとローラによって移送してもよい。加熱対象物1を収容あるいは密封する容器については、実施例2のようにセラミックあるいは石英で形成してもよい。
【0027】
本実施例1に係る加熱体3によれば、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで加熱体を形成する。大きさによるが、炭素(例えば炭素粉、発砲状の炭素素材、炭素を使ったスポンジ状の加工物、炭素繊維、炭素製のフェルト)は、マイクロ波を炭化ケイ素よりも良く吸収し、耐熱温度も十分であり、マイクロ波用加熱体として最適である。炭素化合物の場合も炭素と同等の効果が得られる。一方、セラミックや石英は、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好である。また、セラミックや石英は、その加工性において容易であり、コストも炭化ケイ素よりも低く抑えられ、入手も簡単である。したがって、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体3を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体3を実現することができる。
【0028】
また、本実施例1に係る加熱方法によれば、本実施例1に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことで、マイクロ波を効率良く吸収し、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好な加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことができる。
【0029】
本実施例1では、加熱対象物1として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体がある。加熱対象物が、マイクロ波を吸収する物体であれば、加熱体を使用せずともマイクロ波加熱を行うことができるが、本実施例1のように、加熱対象物1が、マイクロ波を吸収せずに透過する物体の場合には、加熱体3を使用した状態でマイクロ波加熱を行うことになる。したがって、マイクロ波を吸収せずに透過する物体が加熱対象物1であっても、本実施例1に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。
【0030】
また、本実施例1に係る加熱装置によれば、本実施例1に係る加熱体3の他に、加熱対象物1を収容してマイクロ波加熱を行う加熱処理部(本実施例1では炉体2)を備えることで、加熱体3はマイクロ波を熱に換えて、加熱処理部(炉体2)に収容された加熱対象物1に対してマイクロ波加熱を行うことができる。
【実施例2】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
図2(a)は、実施例2に係る加熱装置の概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図であり、図3(a)は、図2とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図であり、図3(b)は、図3(a)の加熱体の概略斜視図であり、図4(a)は、図2および図3とは別の実施形態の実施例2に係る加熱装置の概略断面図であり、図4(b)は、図4(a)の加熱体の概略斜視図であり、図5は、図2〜図4とは別の実施形態の実施例2に係る概略断面図である。本実施例2では、加熱対象物として粉体を例に採って説明する。なお、上述した実施例1と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0032】
上述した実施例1と同様に、加熱装置は、図2〜図5に示すように、加熱対象物1(本実施例2では粉体)を収容してマイクロ波加熱を行う炉体2と、マイクロ波を熱に変える加熱体3と、マイクロ波を伝送して炉体2内に供給する導波管4とを備えている。本実施例2では、セラミックで形成された容器5内に加熱対象物1である粉体を収容してマイクロ波加熱を行う。加熱対象物としては、例えば酸化物の粉体や無機物の粉体がある。容器5は、本発明における容器に相当する。
【0033】
容器5については、上述の実施例1の加熱体3と同様に、セラミックの替わりに石英であってもよいし、セラミックと石英とを両方用いてもよい。また、容器5内に収容される加熱対象物1としては、本実施例2のような粉体に限定されず、後述する実施例3のように液体や気体が加熱対象物であってもよい。あるいは、セラミックあるいは石英で形成された容器5内に加熱対象物を密封してもよい。なお、加熱対象物1が粉体である場合においても、容器5に蓋をして粉体を密封するのが好ましい。
【0034】
図2(a)の実施形態の場合には、加熱体3は、チューブ状のセラミック3a(セラミックチューブ)と炭素3bとで形成されており、セラミック3a内に炭素3bを収容している。容器5内に収容された粉体に、複数の加熱体3を挿入する。この実施形態においても、チューブ状のセラミック3a(セラミックチューブ)の替わりにチューブ状の石英(ガラスチューブ)であってもよいし、セラミックと石英とを両方用いてもよい。炭素3bについても、炭素粉、発砲状の炭素素材、炭素を使ったスポンジ状の加工物、炭素繊維、炭素製のフェルトあるいはそれらの組み合わせなどのように特に限定されない。また、炭素3bの替わりに炭素化合物(例えば炭化ケイ素の粉体)であってもよいし、炭素と炭素化合物とを両方用いてもよい。
【0035】
さらなる応用として、図2(b)の実施形態の場合には、加熱体3を撹拌棒で形成し、撹拌棒の加熱体3を、図2(b)の矢印の方向に回転させつつ、矢印の方向に昇降移動させることで、容器5内に収容された粉体を撹拌しつつマイクロ波加熱を行う。この実施形態においても、加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されている。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、図2(a)で述べたように特に限定されない。
【0036】
さらなる応用として、図3の実施形態の場合には、図2(a)の実施形態と同様に、容器5内に収容された粉体に複数の加熱体3を挿入する。図3(a)の断面図に示すように、各々の加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されており、セラミック3a内に炭素3bを収容している。各々の加熱体3は、図3(b)の斜視図に示すように、角柱状の支持部材6に水平支持されている。支持部材6については、容器5と同様に、セラミック、石英あるいはこれらの組み合わせであってもよいし、セラミックや石英以外であってもよい。角柱状の支持部材6の替わりに板状の支持部材を用いて、当該支持部材が各々の加熱体3を水平支持してもよい。また、容器5が支持部材6を兼用して、容器5が各々の加熱体3を水平支持してもよい。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、図2で述べたように特に限定されない。
【0037】
さらなる応用として、図4の実施形態の場合には、図2(a)や図3の実施形態と同様に、容器5内に収容された粉体に複数の加熱体3を挿入する。図4(a)の断面図に示すように、各々の加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されており、セラミック3a内に炭素3bを収容している。各々の加熱体3は、図4(b)の斜視図に示すように、板状に形成され、角柱状の支持部材6に吊り掛け支持されている。なお、取っ手6aを設けてもよい。また、加熱対象物1(本実施例2では粉体)を密封する容器5の蓋を支持部材6が兼用し、容器5の蓋が各々の加熱体3を吊り掛け支持してもよい。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、図2で述べたように特に限定されない。また、支持部材6を形成する物質についても、図3で述べたように特に限定されない。
【0038】
さらなる応用として、図5(a)の実施形態の場合には、容器5が加熱体3を兼用し、セラミックからなる2重構造となっており、これらのセラミックからなる2重構造の容器5a,5bの間に炭素3bを収容することで加熱体3として形成している。内側の容器5a内に粉体を収容する。加熱体3を兼用した容器5についても、セラミックの替わりに石英であってもよいし、セラミックと石英とを両方用いてもよい。また、内側の容器5aをセラミックで形成し、外側の容器5bを石英で形成してもよいし、逆に内側の容器5aを石英で形成し、外側の容器5bをセラミックで形成してもよい。
【0039】
さらなる応用として、図5(b)の実施形態の場合には、図2(a)の実施形態では容器5内に収容された粉体に、複数の加熱体3を挿入したのに対して、1つの加熱体3のみを挿入して、容器5を簡略化している。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、図2で述べたように特に限定されない。
【0040】
本実施例2に係る加熱体3によれば、上述した実施例1と同様に、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体3を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体3を実現することができる。
【0041】
また、本実施例2に係る加熱方法によれば、上述した実施例1と同様に、本実施例2に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことで、マイクロ波を効率良く吸収し、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好な加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことができる。
【0042】
本実施例2では、上述した実施例1と同様に、加熱対象物1として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(本実施例2では粉体)がある。加熱対象物が、マイクロ波を吸収する物体であれば、加熱体を使用せずともマイクロ波加熱を行うことができるが、本実施例2のように、加熱対象物1が、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(粉体)の場合には、加熱体3を使用した状態でマイクロ波加熱を行うことになる。したがって、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(粉体)が加熱対象物1であっても、本実施例2に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。
【0043】
また、本実施例2では、加熱対象物1として粉体がある。粉体を形成する物質(本実施例2では酸化物の粉体や無機物の粉体)や粉体の粒径にもよるが、粉体の場合にはマイクロ波を吸収せずに透過することが多いので、難加熱な場合(加熱が難しい場合)が多い。難加熱性の粉体が加熱対象物1であって、本実施例2に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。もちろん、形態に限定されず、例えば塊を加熱対象物として用いてもよい。
【0044】
なお、難加熱な材料例として、酸化チタンがあり、酸化チタンの誘電率や誘電正接は下記表1の通りである。また、加熱可能な材料例として、水や炭素粉があり、水や炭素粉の誘電率や誘電正接は下記表1の通りである。
【0045】
【表1】

【0046】
誘電率、誘電正接が高い方がマイクロ波の吸収率は良い。炭素粉の場合、水に近い吸収率効果があり、しかも高温(1000度)に耐える。
【0047】
また、本実施例2では、セラミックあるいは石英で形成された容器5内に加熱対象物1(本実施例2では粉体)を収容してマイクロ波加熱を行っている。上述したように、セラミックや石英は、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好であるので、セラミックあるいは石英で形成された容器5を介して加熱対象物1(粉体)に対して間接的に熱を伝え、加熱を行うことができる。
【0048】
また、本実施例2に係る加熱装置によれば、本実施例2に係る加熱体3の他に、加熱対象物1を収容してマイクロ波加熱を行う加熱処理部(本実施例2では炉体2)を備えることで、加熱体3はマイクロ波を熱に換えて、加熱処理部(炉体2)に収容された加熱対象物1に対してマイクロ波加熱を行うことができる。
【実施例3】
【0049】
次に、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。
図6は、実施例3に係る加熱装置の概略断面図であり、図7は、図6とは別の実施形態の実施例3に係る加熱装置の概略断面図である。本実施例3では、加熱対象物として流体(例えば上述の実施例2の粉体、液体あるいは気体)を例に採って説明する。なお、上述した実施例1、2と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0050】
上述した実施例1、2と同様に、加熱装置は、図6、図7に示すように、炉体2と加熱体3と導波管4とを備えている。上述したように、本実施例3では、加熱対象物1(図6、図7では図示省略)として流体を用いて、流体としては、例えば上述の実施例2の粉体、液体あるいは気体を用いる。
【0051】
図6の実施形態の場合には、円筒形状の回転炉(すなわちロータリーキルン(rotary kiln))の炉体2を採用する。炉体2には、導波管4の他に、流体を流入する流入口2aを設けており、流入口2aを通して炉体2内に流体を流入してマイクロ波加熱を行う。その他、炉体2には、流体を流出する流出口2bを設けており、流出口2bを通してマイクロ波加熱後の流体を流出する。回転炉の炉体2についても、上述した実施例1、2と同様に、断熱材で形成され、放熱を防止する。
【0052】
炉体2内にはスクリュー機構7の回転軸7aを挿入し、スクリュー機構7はセラミックで形成されている。スクリュー機構7は加熱体3を兼用し、流体を炉体2内で図6の矢印の方向に回転させて撹拌する回転軸7aと、回転軸7aに軸支された複数の加熱体3とで形成されている。加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されており、セラミック3a内に炭素3bを収容している。回転軸7aについては、必ずしもセラミックで形成される必要はない。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、実施例1、2で述べたように特に限定されない。
【0053】
なお、炉体2内に回転軸7aを挿入する関係上、炉体2は端部がそれぞれ開口となっている。したがって、流体として、粉体あるいは液体が好ましい。端部を密封するあるいは端部を流入口あるいは流出口とするのであれば、流体として気体を用いてもよい。
【0054】
さらなる応用として、図7の実施形態の場合には、加熱体3は、チューブ状のセラミック3a(セラミックチューブ)と炭素3bとで形成されている。チューブ状のセラミック3a(セラミックチューブ)は、炉体2外では、流体を流入する流入口、流体を流出する流出口を兼用しており、炉体2内では、チューブ状のセラミック3a(セラミックチューブ)の外側を炭素3bが取り囲む。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、特に限定されない。
【0055】
また、炉体2は2重構造となっており、内側の炉体2は断熱材2Aで形成され、炭素3bに接触されている。流入口を通して炉体2内に流体を流入してマイクロ波加熱を行い、流出口を通してマイクロ波加熱後の流体を流出する。外側の炉体2については特に限定されず、内側の炉体2と同様に、断熱材で形成されてもよいし、炉体2を断熱材のみで一体形成してもよい。なお、図7では、図6と相違して、炉体2の端部が開口となっていないので、流体として気体を用いてもよい。したがって、流体として、粉体、液体あるいは気体を用いる。
【0056】
本実施例3に係る加熱体3によれば、上述した実施例1、2と同様に、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体3を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体3を実現することができる。
【0057】
また、本実施例3に係る加熱方法によれば、上述した実施例1、2と同様に、本実施例3に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことで、マイクロ波を効率良く吸収し、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好な加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことができる。
【0058】
本実施例3では、上述した実施例1、2と同様に、加熱対象物1として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(本実施例3では流体)がある。加熱対象物が、マイクロ波を吸収する物体であれば、加熱体を使用せずともマイクロ波加熱を行うことができるが、本実施例3のように、加熱対象物1が、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(流体)の場合には、加熱体3を使用した状態でマイクロ波加熱を行うことになる。したがって、マイクロ波を吸収せずに透過する物体(流体)が加熱対象物1であっても、本実施例3に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。
【0059】
また、本実施例3では、加熱対象物1として流体がある。流体のように移送される物体が加熱対象物1であっても、マイクロ波加熱を行うことができる。もちろん、流体に限定されず、移送されずに固定された物体が加熱対象物であってもよい。
【0060】
また、本実施例3に係る加熱装置によれば、本実施例3に係る加熱体3の他に、加熱対象物1を収容してマイクロ波加熱を行う加熱処理部(本実施例3では炉体2)を備えることで、加熱体3はマイクロ波を熱に換えて、加熱処理部(炉体2)に収容された加熱対象物1に対してマイクロ波加熱を行うことができる。
【実施例4】
【0061】
次に、図面を参照して本発明の実施例4を説明する。
図8は、実施例4に係る加熱装置の概略断面図である。本実施例4では、上述した実施理例1と同様に、加熱対象物として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体を例に採って説明する。なお、上述した実施例1〜3と同じ構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0062】
上述した実施例1〜3と同様に、加熱装置は、図8に示すように、炉体2と加熱体3と導波管4とを備えている。本実施例4では、炉体2内を減圧するためにポンプ8を設けている。さらに、還元ガスを注入する注入管9を設けている。還元ガスについては、窒素ガスに例示されるように、酸化を防止するガス(例えば希ガス)であれば、特に限定されない。また、酸化を防止する目的以外で、マイクロ波加熱(積極的に酸化、反応ガス下で加熱しつつ化学反応)を行うのであれば、還元ガスに限定されない。
【0063】
加熱体3は、セラミック3aと炭素3bとで形成されており、セラミック3a内に炭素3bを収容している。加熱体3の形態およびそれを形成する物質については、実施例1〜3で述べたように特に限定されない。また、図8では、上述した実施例1の図1の炉体2を例に採って説明したが、各実施例2、3の図2〜図7の炉体2に適用して減圧を行ってもよい。
【0064】
本実施例4に係る加熱体3によれば、上述した実施例1〜3と同様に、従来の炭化ケイ素のみで形成された加熱体の替わりに、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成された加熱体3を用いることで、加工が容易であり、低コストで入手が簡単な加熱体3を実現することができる。
【0065】
また、本実施例4に係る加熱方法によれば、上述した実施例1〜3と同様に、本実施例4に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことで、マイクロ波を効率良く吸収し、耐熱性があり、耐摩耗性、耐腐食性などに優れ、熱伝導も良好な加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことができる。
【0066】
本実施例4では、上述した実施例1〜3と同様に、加熱対象物1として、マイクロ波を吸収せずに透過する物体がある。加熱対象物が、マイクロ波を吸収する物体であれば、加熱体を使用せずともマイクロ波加熱を行うことができるが、本実施例4のように、加熱対象物1が、マイクロ波を吸収せずに透過する物体の場合には、加熱体3を使用した状態でマイクロ波加熱を行うことになる。したがって、マイクロ波を吸収せずに透過する物体が加熱対象物1であっても、本実施例4に係る加熱体3を用いてマイクロ波加熱を行うことが可能である。
【0067】
また、本実施例4では、減圧中でマイクロ波加熱を行うことで、断熱した状態でマイクロ波加熱を効率良く行うことができる。特に大気圧下で減圧して、還元ガス(例えば窒素ガス)を注入して還元雰囲気中でマイクロ波加熱を行うことで、酸化を防止した状態で加熱を行うことができる。
【0068】
また、本実施例4に係る加熱装置によれば、本実施例4に係る加熱体3の他に、加熱対象物1を収容してマイクロ波加熱を行う加熱処理部(本実施例4では炉体2)を備えることで、加熱体3はマイクロ波を熱に換えて、加熱処理部(炉体2)に収容された加熱対象物1に対してマイクロ波加熱を行うことができる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0070】
(1)上述した実施例1では、ヒータやセラミックローラは、炭素を内部に収容していたが、上述した実施例3の図7のように炭素あるいは炭素化合物を外部に設けてもよい。
【0071】
(2)上述した実施例1のヒータやセラミックローラを、各実施例2〜4が備えてもよい。また、各実施例2〜4の加熱体がヒータあるいはセラミックローラをも兼用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 … 加熱対象物
2 … 炉体
3 … 加熱体
3a … セラミック
3b … 炭素
5 … 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波加熱に用いられる加熱体であって、
前記加熱体は、セラミックあるいは石英と、炭素あるいは炭素化合物とで形成されることを特徴とする加熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱体を用いた加熱方法であって、
前記加熱体を用いて前記マイクロ波加熱を行うことを特徴とする加熱方法。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱方法において、
加熱対象物として、前記マイクロ波を吸収せずに透過する物体を用いることを特徴とする加熱方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の加熱方法において、
加熱対象物として粉体を用いることを特徴とする加熱方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の加熱方法において、
加熱対象物として流体を用いることを特徴とする加熱方法。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載の加熱方法において、
セラミックあるいは石英で形成された容器内に加熱対象物を収容して前記マイクロ波加熱を行うことを特徴とする加熱方法。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれかに記載の加熱方法において、
減圧中で前記マイクロ波加熱を行うことを特徴とする加熱方法。
【請求項8】
請求項1に記載の加熱体を備えた加熱装置であって、
加熱対象物を収容して前記マイクロ波加熱を行う加熱処理部を備えることを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252779(P2012−252779A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122086(P2011−122086)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(593030923)株式会社ニッシン (14)
【Fターム(参考)】