説明

加熱処理済み食材及び加熱処理済み食材の製造方法

【課題】封入される加熱処理済みの食材本体の保存性が良好であるとともに、陳列性、積
載性にも優れた加熱処理済み食材及び加熱処理済み食材の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る加熱処理済み食材1は、加熱処理された食材本体11を、合成
樹脂13からなる所定の立体的形状の成形体12の内部に密封状態で封入することにより
構成され、熱殺菌された食材本体11は比較的厚肉の成形体で密封され、周囲には空気が存在しなくなるため、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性が良好であり、長期の保存が可能で、例えば災害用の保存食等として使用することができるとともに、成形体12により食材本体11を包装することにより、陳列性や積載性に優れることになる。また、フィルム等で包装された通常の包装状態の食材と比較しても、包装された状態の機械的強度に優れ、かつ、視覚性や携帯性が良好な加熱処理済み食材1となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理済み食材及び加熱処理済み食材の製造方法に関する。更に詳しくは、加熱処理された野菜類、果物類、肉類等の食材本体が合成樹脂からなる成形体に密封状態で封入された加熱処理済み食材及び加熱処理済み食材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材の長期保存方法としては、一般的に加熱処理が用いられている。特に低酸性食材の場合は、芽胞菌の殺滅を目的とし、100℃を超える加圧加熱処理(いわゆるレトルト殺菌)が主となっており、加熱処理手段として種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、加熱処理済みの食材の包装状態は、食材の種類や形状によりまちまちであるが、バリアー性を備えた合成樹脂製のフィルムや容器で密封包装されているのが一般的である(例えば、特許文献2を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−125641号公報([請求項3]、[0019])
【特許文献2】特開2004−331117号公報([請求項1]、[図1])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルムや容器等で包装がなされた加熱処理済みの食材は、陳列が困難であり、販売時に展示するためには穴明け等所定の加工が必要となる場合もあった。また、食材の形状はまちまちであることから嵩張ることが多く、流通や販売においては積載や陳列に支障が生ずることがあり、改善が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、封入される加熱処理済みの
食材本体の保存性が良好であるとともに、陳列性、積載性にも優れた加熱処理済み食材及
び加熱処理済み食材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る加熱処理済み食材は、加熱処理
された食材本体と、合成樹脂からなり、内部に前記食材本体を密封状態で封入する成形体
からなることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る加熱処理済み食材は、前記請求項1において、前記成形体の形
状が球、直方体、立方体、円柱、角柱、錘よりなる群から選ばれる1種であることを特徴
とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る加熱処理済み食材は、前記請求項1において、前記加熱処理された食材本体を、当該食材本体の輪郭が現れるように厚さ0.5〜5.0mmの前記合成樹脂からなる前記成形体が包み込んでいることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る加熱処理済み食材は、前記請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記成形体が透明であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る加熱処理済み食材は、前記請求項1ないし請求項4のいずれか
において、前記食材本体が野菜類、野菜類の加工品、山菜類、穀物、豆、植物の加工品、
肉類、果物類、魚介類、頭足類・甲殻類、鳥の卵、魚の卵、海藻、海産物の加工品、及び
これらの2種以上を混合して加工した加工品よりなる群から選ばれる少なくとも1種であ
ることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係る加熱処理済み食材の製造方法は、所定の空間に食材本体を配置
し、前記空間に溶融状態の合成樹脂を流し込み、当該合成樹脂を冷却固化させて、前記合
成樹脂からなる成形体の内部に前記食材本体を封入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る加熱処理済み食材は、加熱処理された食材本体を、合成樹脂か
らなる所定の立体的形状からなる成形体の内部に密封状態で封入することにより構成され
ている。よって、熱殺菌された食材本体は比較的厚肉の成形体で密封され、周囲には空気
が存在しなくなるため、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性が良好であり、長期の保存が可能で、例えば災害用の保存食等として使用することができるとともに、所定形状の成形体により食材本体を包装することにより、陳列性や積載性に優れることになる。また、フィルム等で包装された通常の包装状態の食材と比較しても、包装された状態の機械的強度に優れ、かつ、視覚性や携帯性が良好な加熱処理済み食材となる。
【0013】
本発明の請求項2に係る加熱処理済み食材は、食材本体を封入する成形体の形状が球、
直方体、立方体、円柱、角柱、錘よりなる群から選ばれる1種であるので、形状が定形状
となるため整理等が容易となり、陳列性や積載性が向上することになり、また、視覚性や
携帯性もさらに良好となる。
【0014】
本発明の請求項3に係る加熱処理済み食材は、加熱処理された食材本体を、食材本体の輪郭が現れるように所定の厚さの合成樹脂からなる成形体が包み込んでいる構成としているので、内部に密封封入される食材本体の形状が視認しやすくなる。
【0015】
本発明の請求項4に係る加熱処理済み食材は、当該加熱処理済み食材を構成する成形体
が着色されず透明であるので、成形体の内部に封入される食材本体を視認ないし識別しや
すくなる。
【0016】
本発明の請求項5に係る加熱処理済み食材は、成形体の内部に封入される食材本体とし
て所定の食材を選択しているので、これらの食材について前記の効果を好適に奏する加熱
処理済み食材を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項6に係る加熱処理済み食材の製造方法は、所定の空間に食材本体を配置し、かかる空間に溶融状態の合成樹脂を流し込み、合成樹脂を冷却固化させることにより、合成樹脂からなる成形体の内部に食材本体を封入するようにして加熱処理済み食材を得るようにしている。このような方法を用いることにより、食材本体に対して簡便な手段で加熱処理と包装を同時に実施し、低いコストで加熱処理済み食材を製造できる。また、加熱処理された食材本体は比較的厚肉の成形体で密封され、周囲には空気が存在せず真空状態となるため、保存性も良好で、長期の保存が可能となり、災害用の保存食等として使用することができる。
【0018】
そして、かかる本発明の製造方法によれば、加熱処理済み食材を製造するために、食材本体の加熱処理条件として使用される温度及び合成樹脂の融点等により決定される、成形温度及び所定の空間における合成樹脂の滞留時間といった成形条件を利用して食材本体に加熱処理を施すようにしており、また、かかる条件は食材本体に対して加熱殺菌処理のための条件(加熱殺菌条件)としても作用すると考えられる。さらに、このようにして食材本体に対して加熱処理ないしは加熱殺菌処理が施されるため、食材本体の旨味成分を閉じこめることができ、得られる食材本体の風味も独特なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加熱処理済み食材の一態様を示した斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本実施形態に係る加熱処理済み食材を製造する金型を示した図であり、金型を開いた状態を示す図である。
【図4】本実施形態に係る加熱処理済み食材を製造する金型を示した図であり、金型を閉じて金型の内部に合成樹脂を流し込んだ状態を示した概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る加熱処理済み食材の一態様を示した斜視図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】本実施形態に係る加熱処理済み食材を製造する金型を示した図であり、金型を開いた状態を示す図である。
【図8】本実施形態に係る加熱処理済み食材を製造する金型を示した図であり、金型を閉じて合成樹脂を流し始めた状態を示す図である。
【図9】本実施形態に係る加熱処理済み食材を製造する金型を示した図であり、金型の内部に合成樹脂を流し込み、完全に充填した状態を示す図である。
【図10】本発明の加熱処理済み食材を製造する金型の内部を示した概略図である。
【図11】本発明の加熱処理済み食材を製造する金型の内部を示した概略図である。
【図12】本発明の加熱処理済み食材を製造する金型の内部を示した概略図である。
【図13】実施例1に係る加熱処理済み食材の外観写真を示した図である。
【図14】実施例2に係る加熱処理済み食材の外観写真を示した図である。
【図15】実施例3に係る加熱処理済み食材の外観写真を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A)第1実施形態:
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0021】
(I)本実施形態に係る加熱処理済み食材1の構成:
図1及び図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る加熱処理済み食材の一態様の構成を説明する。図1は本発明の加熱処理済み食材の一態様を示した斜視図、図2は図1のII−II断面図、をそれぞれ示す。ここで、1は加熱処理済み食材、11は食材本体、12は成形体、13は合成樹脂、を示す。
【0022】
本発明の第1実施形態に係る加熱処理済み食材1は、食材本体11を、合成樹脂13からなる成形体12の内部に密封状態で封入することにより構成される。なお、図1及び図2にあっては、立方体の成形体12の内部に、食材本体11の具体例としてリンゴを封入した態様を示している。
【0023】
加熱処理された状態で封入される食材本体11としては、特に制限はなく、例えば、野菜類、野菜類の加工品(ミックスベジタブル等)、山菜類、穀物、豆、植物の加工品、肉類、果物類、魚介類、頭足類・甲殻類、鳥の卵、魚の卵、海藻、海産物の加工品等の食材が挙げられる。具体的には、例えば、トウモロコシ(例えば、軸付きコーン)、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ニンジン、大豆、空豆、エンドウ豆、カブ、ゴボウ等の野菜類、リンゴ、バナナ等の果物類、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の肉類、その他の食材が挙げられる。また、前記した食材の2種以上を混合して加工した加工品、例えば、ハンバーグ、コロッケ、ソーセージ、餃子、焼売等の加工品を食材本体11として成形体12の内部に封入するようにしてもよい。
【0024】
次に、内部に食材本体11を密封状態で封入する成形体12を構成する合成樹脂13としては、内部に封入される食材本体11の種類等により、従来公知の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の中から適宜選択して決定すればよい。本発明の加熱処理済み食材1は、合成樹脂13の融点(溶融温度)付近の温度を食材本体11の殺菌温度として利用するので、食材本体11の加熱処理条件として使用される温度と、合成樹脂13の融点を比較考量して、使用する合成樹脂13を決定するようにしてもよい。
【0025】
使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂[炭素数が2〜10のオレフィンの単独または共重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリメチルペンテン−1、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体等)、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等)、置換基(アルキル基、エステル基等)を有していてもよい環状オレフィンの単独または共重合体(例えば、ポリビシクロペンタジエン等のポリビないしトリシクロアルカジエン、ポリノルボルネン等のポリビ/トリシクロアルケン等の環状オレフィンの単独重合体:ビ/トリシクロアルカジエン及びビ/トリシクロアルケンから選択された環状オレフィンと、エチレン等の炭素数が2〜4のオレフィンとの共重合体等)、変性ポリオレフィン等]、スチレン系樹脂[ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン−ブタジエン共重合体(SB樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ABS樹脂)、ブタジエンに代えて各種ゴムXを用いたAXS樹脂等]、ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアルキレンナフタレート等のポリアルキレンアリレートまたはこれらのコポリエステル(例えば、アルキレンアリレート単位の含有量が80mol%以上のコポリエステル、ジオール成分及び/または芳香族ジカルボン酸成分の一部が置換されたポリアルキレンアリレートコポリエステル等)、脂肪族ポリエステル、液晶性芳香族ポリエステル、ポリアリレート樹脂等]、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネート等)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等)、ビニル系樹脂(アイオノマー、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール系樹脂等のビニル系単量体の単独または共重合体等)、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体等の塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体等のフッ素含有ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系樹脂等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂等)、ポリアセタール系樹脂(ポリオキシメチレン等)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等)、ポリフェニレン系樹脂(ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド等)、セルロース系樹脂(セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類等)等が挙げられる。
【0026】
また、使用できる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性樹脂エラストマー等の硬質相と軟質相から構成される熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0027】
これらの熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーは、1種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、複数の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーで構成されたいわゆるブレンドポリマーとしてもよい。
【0028】
なお、これらの合成樹脂13には、本発明の目的、効果、及び内部に封入する食材本体11の安全性や味覚等を損なわない範囲内において、添加剤を適宜添加するようにしてもよい。使用できる添加剤としては、例えば、分散剤、安定化剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0029】
合成樹脂13からなる立体的形状の成形体12は、合成樹脂13を着色せず成形体12を透明とした場合には、成形体12の内部に封入される食材本体11を視認ないし識別しやすくなり、一方、合成樹脂13を着色した場合には、紫外線等を遮断するバリアー効果を得ることができる。成形体12を透明とするか着色するかは、内部に封入する食材本体11の種類や、求められる特性等により適宜決定すればよく、成形体12を着色する場合には、成形体12を構成する合成樹脂13に所望の色のカラーバッチを添加して着色するようにすればよい。また、成形体12に適当な装飾を施すようにしてもよく、かかる装飾により、需要者の購買意欲を刺激することができる
【0030】
成形体12の形状は、本実施形態にあっては、図1及び図2に示すように立方体とした態様を示しており、かかる立方体のほかの立体的形状、例えば、球、直方体、円柱、角柱、錘等の公知の定形状とすることができる。本発明の加熱処理済み食材1は、外部に現れる成形体12を前記のような定形状とすることにより、陳列や積載がし易くなり陳列性や積載性が向上し、また、視覚性や携帯性もさらに良好となる。
【0031】
(II)本実施形態に係る加熱処理済み食材1の製造方法:
本発明の加熱処理済み食材1を得るには、所定の空間に食材本体11を配置し、かかる空間に溶融状態の合成樹脂13を流し込み、合成樹脂13を冷却固化させるようにすればよい。このようにすることにより、合成樹脂13からなる成形体12の内部に食材本体11を封入した加熱処理済み食材を得ることができる。例えば、射出成形法を用いて、所定の空間となる金型2の内部に食材本体11を固定した状態で配置した後、当該金型2の内部に合成樹脂13を射出して流し込み、合成樹脂13を冷却固化させる射出成形法を用いて製造することができる。
【0032】
図3及び図4は、本実施形態に係る加熱処理済み食材1を製造する金型2を示した図であり、図3は金型2を開いた状態、図4は金型2を閉じて金型2の内部に合成樹脂13を流し込んだ状態を示した概略図である。ここで、金型2において、金型21は固定される金型(固定金型21)、また、金型22は移動する金型(移動金型22)、をそれぞれ示す。なお、これらの食材本体11は、そのまま(生のもの)を使用してもよく、あらかじめ茹でる、焼く、揚げる等したものを使用してもよい。
【0033】
図3に示すように、固定金型21の内部において、使用する合成樹脂13で形成される支持材23で加熱処理を施す前の食材本体11を固定した状態で、図4に示すようにして移動金型22を図3の矢印の方向に移動して金型2を閉じ、シリンダー24から金型2の内部に溶融状態の合成樹脂13を射出して流し込む。金型2の内部に充填された溶融状態の合成樹脂13は、その成形条件(溶融温度(成形温度)及び溶融状態の合成樹脂13の滞留時間)を用いて食材本体11に加熱処理を施すことになる。また、金型2の内部に充填後、溶融状態の合成樹脂13は冷却されて、支持材23は当該合成樹脂13と同化して固化されることになる。
【0034】
そして、固化された合成樹脂13は、加熱処理された食材本体11を内部に封入した成形物となり、当該成形物をそのまま、あるいは所定の立体的形状(本実施形態にあっては立方体)に二次加工することにより、加熱処理された食材本体11を、合成樹脂13からなる成形体12の内部に密封状態で封入した本実施形態に係る加熱処理済み食材1を得ることができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る加熱処理済み食材1は、簡便な手段で食材本体11の加熱処理と包装を同時に実施し、低コストで加熱処理済み食材1を製造することができる。また、加熱処理された食材本体11は比較的厚肉(例えば、0.5〜3.0cm程度)の成形体12で密封され、周囲には空気が存在しなくなるため(真空状態となるため)、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性も良好となり、長期の保存が可能となる。
【0036】
なお、本実施形態にあっては、加熱処理済み食材1を製造する際の成形条件(成形温度及び金型2の内部における合成樹脂13の滞留時間)を利用して食材本体11に加熱処理を施すようにしているので、成形条件は、食材本体11の加熱処理条件として使用される温度と、合成樹脂13の融点等により決定される。一方、合成樹脂13の溶融温度は通常150℃以上、金型2の内部における合成樹脂13の滞留時間等を考慮すれば、食材本体11の加熱処理ないしは加熱殺菌処理として必要とされる条件としても問題はない。また、食材本体11にも、このようなかたちで加熱処理ないしは加熱殺菌処理が施されるため、食材本体11の旨味成分を閉じこめることができ、得られる食材本体11の風味も独特なものとなる。
【0037】
得られた本実施形態に係る加熱処理済み食材1は、常温で、あるいは必要により冷蔵ないし冷凍されて流通、保存される。そして、食する際には、成形体12を破壊し内部に封入された食材本体11を取り出すようにすればよい。
【0038】
(III)本発明の効果:
以上説明した本実施形態に係る加熱処理済み食材1は、加熱処理された食材本体11が、合成樹脂13からなる所定形状の成形体12の内部に密封状態で封入することにより構成されているので、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性が良好で、長期の保存が可能で、例えば災害用の保存食等として使用することができるとともに、所定形状の成形体12により食材本体11を包装することにより、陳列性や積載性に優れることになる。また、フィルム等で包装された通常の包装状態の食材と比較しても、包装された状態の機械的強度に優れ、かつ、視覚性や携帯性が良好な加熱処理済み食材1となる。
【0039】
(B)第2実施形態:
以下、図5ないし図9を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、前記した第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0040】
前記した第1実施形態に係る加熱処理済み食材1では、かかる加熱処理済み食材1を構成する成形体12の形状として、図1及び図2に示すように立方体とした態様を示し、また、かかる立方体のほかの立体的形状、例えば、球、直方体、円柱、角柱、錘等の公知の定形状とすることができるとした。一方、加熱処理済み食材1は、加熱処理された食材本体11を、食材本体11の輪郭が現れるように厚さ0.5〜5.0mmの合成樹脂13からなる成形体12が包み込むようにして形成されてもよい。
【0041】
(I)本実施形態に係る加熱処理済み食材1の構成:
図5は、本発明の第2実施形態に係る加熱処理済み食材1の一態様を示した斜視図であり、図6は、図5のVI−VI断面図である。本実施形態に係る加熱処理済み食材1は、食材本体11を、合成樹脂13からなる成形体12の内部に密封状態で封入することによりなるが、加熱処理された食材本体11を、食材本体11の輪郭が現れるように所定の厚さの合成樹脂13からなる成形体12が包み込んでいるようにして構成される。このような構成によれば、内部に密封封入される食材本体11の形状が視認しやすくなる。なお、図5及び図6にあっては、立方体の成形体12の内部に、食材本体11の具体例として卵を封入した態様を示している。
【0042】
合成樹脂13の厚さは、0.5〜5.0mmの範囲内で、封入される食材本体11の種類や大きさで適宜決定することができ、1.0〜4.0mmの範囲内とすることが好ましく、1.5〜3.0mmとすることがさらに好ましく、2.0〜3.0mmとすることが特に好ましい。例えば、図5及び図6のように、封入される食材本体11が卵である場合には、1.5〜3.0mm程度とすればよい。
【0043】
加熱処理された状態で封入される食材本体11や、内部に食材本体11を密封状態で封入する成形体12を構成する合成樹脂13としては、前記した第1実施形態で挙げた食材本体11や合成樹脂13を適宜選択して使用することができる。特に、合成樹脂としては、熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましく、例えば、セプトン、LAB550(ともに(株)クラレ製)等を使用することが好ましい。
【0044】
(II)本実施形態に係る加熱処理済み食材1の製造方法:
図7ないし図9は、本実施形態に係る加熱処理済み食材1を製造する金型2を示した図であり、図7は金型2を開いた状態、図8は金型2を閉じて合成樹脂13を流し始めた状態、図9は金型2の内部に合成樹脂13を流し込み、完全に充填した状態を示した概略図、である。ここで、金型2においては、第1実施形態と同様、金型21は固定される金型(固定金型21)、また、金型22は移動する金型(移動金型22)、をそれぞれ示す。
【0045】
図7に示すように、固定金型21の内部において、加熱処理を施す前の食材本体11を食材本体(卵)の底部に載置されているエアシリンダー25を上昇させ、食材本体11を底上げして浮かせた状態とする。次に、図7に示すように、移動金型22を図7の矢印の方向に移動して金型2を閉じ、シリンダー24から金型2の内部に溶融状態の合成樹脂13を射出して流し込み、金型2の内部に合成樹脂13が充填されることになる(図8)。そして、合成樹脂13が食材本体11の周囲に完全に充填された時点でエアシリンダー25を下降させることにより、合成樹脂13が食材本体11の周囲を包む込むことになる(図9)。金型2の内部に充填された溶融状態の合成樹脂13は、その成形条件(溶融温度(成形温度)及び溶融状態の合成樹脂13の滞留時間)を用いて食材本体11に加熱処理を施すことになる。また、金型2の内部に充填後、溶融状態の合成樹脂13は冷却される。
【0046】
そして、固化された合成樹脂13は、加熱処理された食材本体11を内部に封入し、かかる加熱処理された食材本体11を、食材本体11の輪郭が現れるように所定の厚さの合成樹脂13からなる成形体12が包み込んでいる構成の、本実施形態に係る加熱処理済み食材1を得ることができる。本実施形態に係る加熱処理済み食材1も、簡便な手段で食材本体11の加熱処理と包装を同時に実施し、低コストで加熱処理済み食材1を製造することができ、加熱処理された食材本体11も所定の厚さの成形体12で密封され、周囲には空気が存在しなくなるため(真空状態となるため)、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性も良好となり、長期の保存が可能となる。
【0047】
なお、本実施形態にあっても、前記した第1実施形態と同様、加熱処理済み食材1を製造する際の成形条件(成形温度及び金型2の内部における合成樹脂13の滞留時間)を利用して食材本体11に加熱処理を施すようにしているので、成形条件は、食材本体11の加熱処理条件として使用される温度と、合成樹脂13の融点等により決定される。一方、合成樹脂13の溶融温度は通常150℃以上、金型2の内部における合成樹脂13の滞留時間等を考慮すれば、食材本体11の加熱処理ないしは加熱殺菌処理として必要とされる条件としても問題はない。また、食材本体11にも、このようなかたちで加熱処理ないしは加熱殺菌処理が施されるため、食材本体11の旨味成分を閉じこめることができ、得られる食材本体11の風味も独特なものとなる。
【0048】
得られた本実施形態に係る加熱処理済み食材1は、常温で、あるいは必要により冷蔵ないし冷凍されて流通、保存される。そして、食する際には、成形体12を破壊し内部に封入された食材本体11を取り出すようにすればよい。
(III)本発明の効果:
以上説明した本実施形態に係る加熱処理済み食材1も、前記した第1実施形態と同様、
加熱処理された食材本体11が、合成樹脂13からなる所定形状の成形体12の内部に密封状態で封入することにより構成されているので、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性が良好であり、長期の保存が可能で、災害用の保存食等として使用することができるとともに、所定形状の成形体12により食材本体11を包装することにより、陳列性や積載性に優れることになる。また、フィルム等で包装された通常の包装状態の食材と比較しても、包装された状態の機械的強度に優れ、かつ、視覚性や携帯性が良好な加熱処理済み食材1となる。
【0049】
(C)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
【0050】
例えば、前記した実施形態では、図1及び図2、並びに図5及び図6において、合成樹脂13からなる成形体12の内部に封入される食材本体11の例として、リンゴや卵を挙げて説明したが、これには限定されず、加熱処理が必要な任意の食材を用いることができる。
【0051】
同様に、前記した第1実施形態では、本発明の加熱処理済み食材1を製造する方法として、図3等に示した金型2(固定金型21及び移動金型22)及び使用する合成樹脂13で形成される支持材23を用いた所定の方法を用いて説明したが、これには限定されず、例えば、以下に示す方法を採用するようにしてもよい。
なお、以下の説明では、すでに前記した実施形態で説明した部分と同一あるいは略同一
である部分は、共通する符号を付して説明を省略する。
【0052】
図10ないし図12は、本発明の加熱処理済み食材1を製造する金型2の内部を示した概略図である。まず、図10に示すように、金型2を閉じた状態で、金型2の内部の底に対象となる食材本体11を配置した後にシリンダー24から所定の空間となる金型2の内部に溶融状態の合成樹脂13を射出して流し込むようにする。図11に示すように、食材本体11は合成樹脂13の充填とともに、金型2の内部の合成樹脂13の中で浮遊する。そして、図12に示すように、金型2の内部に合成樹脂13が完全に充填されると、食材本体11は合成樹脂13の中に収まり、前記した実施形態と同様、溶融状態の合成樹脂13は、その成形条件(溶融温度(成形温度)及び溶融状態の合成樹脂の滞留時間)を用いて食材本体11に加熱処理を施すことになる。その後、溶融状態の合成樹脂13は冷却されて、金型2の内部で固化されることになる。これにより、加熱処理された食材本体11と、合成樹脂13からなり、内部に食材本体11を密封状態で封入する成形体12からなる本発明の加熱処理済み食材1を得ることができる。
【0053】
前記した実施形態では、図1及び図5の構成に示す加熱処理済み食材1について、図3及び図4、並びに図7ないし図9に示した金型2を用いて、1つの工程で製造する態様を示したが、成形体12の上半分と下半分といったように、工程を2つないしそれ以上に分けて製造するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1及び実施例2]
加熱処理済み食材の製造(1):
食材本体として卵を用いて、また、下記の製造条件に従い、本発明の第2実施形態に係る加熱処理済み食材を製造した。なお、製造条件としては実施例1と実施例2は同じ条件であり、合成樹脂として熱可塑性エラストマーであるLAB550((株)クラレ製)を使用したものを実施例1、セプトン((株)クラレ製)を使用したものを実施例2とし、合成樹脂からなる成形体の目標厚さを2mmとして実施した。得られた加熱処理済み食材の外観写真を図13及び図14に示す。
【0056】
(製造条件)
射出成形機 JT40ELIII((株)日本製鋼所製)
第1ヒータ 180℃
第2ヒータ 190℃
第3ヒータ 240℃
ノズルヒータ 260℃
射出時間 1.65秒
保圧 なし
冷却時間 15秒
射出圧力(ノズル側) 65MPa
射出速度(ホッパー側) 70MPa
射出速度(ノズル側) 15cc/秒
射出速度(ホッパー側) 18cc/秒
スクリュー回転数 45rpm及び50rpm(2本)
型締力 20トン
【0057】
前記した製造条件中、ヒータは、先端(金型側)から見て、ノズルヒータ、第3ヒータ、第2ヒータ、第1ヒータの順となる(第1ヒータが一番遠い)。また、合成樹脂の通過経路の距離(88mm)のうち40mmの位置を切り換え位置としてノズル側とホッパー側に分けて、射出速度及び射出圧力を設定した。スクリューは2本(φ25mm)使用した。
【0058】
図13及び図14に示すように、得られた加熱処理済み食材は、製造過程で溶融状態の合成樹脂により加熱処理された卵を、かかる卵の輪郭が現れるように熱可塑性エラストマーからなる成形体が包み込んでいる構成のものであった。なお、熱可塑性エラストマー(成形体)の厚さは、それぞれ1.5〜2.5mm程度であった。
【0059】
加熱処理済み食材の製造(2):
食材本体として卵の代わりにリンゴを用いた以外は、製造条件も含めて実施例1と同様にして、本発明の第2実施形態に係る加熱処理済み食材を製造した。なお、合成樹脂としてはセプトン((株)クラレ製)を使用した。得られた加熱処理済み食材の外観写真を図15に示す。
【0060】
図15に示すように、得られた加熱処理済み食材は、製造過程で溶融状態の合成樹脂により加熱処理されたリンゴを、かかるリンゴの輪郭が現れるように熱可塑性エラストマーからなる成形体が包み込んでいる構成のものであった。なお、熱可塑性エラストマー(成形体)の厚さは、1.5〜2.5mm程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、防腐剤等の食品添加物を添加しなくとも保存性が良好であるとともに、陳列性、積載性に優れた加熱処理済み食材を提供する手段として有利に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 …… 加熱処理済み食材
11…… 食材本体
12…… 成形体
13…… 合成樹脂
2 …… 金型
21…… 固定金型
22…… 移動金型
23…… 支持材
24…… シリンダー
25…… エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理された食材本体と、合成樹脂からなり、内部に前記食材本体を密封状態で封入
する成形体からなることを特徴とする加熱処理済み食材。
【請求項2】
前記成形体の形状が球、直方体、立方体、円柱、角柱、錘よりなる群から選ばれる1種
であることを特徴とする請求項1に記載の加熱処理済み食材。
【請求項3】
前記加熱処理された食材本体を、当該食材本体の輪郭が現れるように厚さ0.5〜5.0mmの前記合成樹脂からなる前記成形体が包み込んでいることを特徴とする請求項1に記載の加熱処理済み食材。
【請求項4】
前記成形体が透明であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれに記載の加熱処理済み食材。
【請求項5】
前記食材本体が野菜類、野菜類の加工品、山菜類、穀物、豆、植物の加工品、肉類、果
物類、魚介類、頭足類・甲殻類、鳥の卵、魚の卵、海藻、海産物の加工品、及びこれらの
2種以上を混合して加工した加工品よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを
特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の加熱処理済み食材。
【請求項6】
所定の空間に食材本体を配置し、前記空間に溶融状態の合成樹脂を流し込み、当該合成
樹脂を冷却固化させて、前記合成樹脂からなる成形体の内部に前記食材本体を封入するこ
とを特徴とする加熱処理済み食材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate