加熱炉の熱効率改善方法及び加熱炉の熱効率改善装置
【課題】既設の加熱炉の排気口内に設置して、排気ガスにより加熱された布部材の輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口から流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善方法及び熱効率改善装置を提供する。
【解決手段】加熱炉の排気口12内に設置し、排気口12から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置10であって、排気口12内に、排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材15、16と、布部材15、16を排気口12に固定する支持部材13、14、17、18、19とを有し、加熱された布部材15、16からの輻射熱を加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させる。
【解決手段】加熱炉の排気口12内に設置し、排気口12から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置10であって、排気口12内に、排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材15、16と、布部材15、16を排気口12に固定する支持部材13、14、17、18、19とを有し、加熱された布部材15、16からの輻射熱を加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、加熱炉の排気口(排気口道を含む)の入口に取付け、排気口を通過する排気ガスで加熱されて、加熱炉内からの輻射熱を加熱炉内に反射して戻すことにより排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善方法及び加熱炉の熱効率改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉における最も顕著な熱損失は、排気口を通過して外部に放出される高温排気ガスが持ち出す熱損失である。そこで、炉内壁に熱輻射効率の高い物質を設けること(例えば、特許文献1参照)や、炭化ケイ素系の不織布マット(以下、単にマットという)を炉内天井に設けた排気口に熱フィルタとして貼り付け、更に、炉内の天井並びに側壁に熱反射体としても貼り付けて、高温排気ガスの顕熱を炉内で回収する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−210782号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鈴木謙爾、外3名、「Si−C−(M)−O系繊維不織布マットによるガス燃焼加熱炉の省エネルギー化ならびに高性能化」、工業加熱、社団法人日本工業炉協会、2007年7月15日、第44巻、第4号、p.17−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、柔軟体であるマットを、炉内の天井や側壁に貼り付けるには、セラミック接着剤を用いて接着する方法が一般的である。しかし、炉内温度が、例えば1000℃以上の高温で、高温排気ガスが高速で流転する炉内で、マットをセラミック接着剤による接着だけで長期に亘って安定して炉内の天井や側壁に付着させることは困難で、使用中にマットが剥がれて落下する可能性が高い。また、柔軟体であるマット自体が、高温排気ガスによる機械的衝撃や磨耗に長期間に亘り耐えることができるかという問題もある。更に、柔軟体であるマットは保形性(形状保持性)が極端に低いため貼り付け作業が非常に煩雑になると共に、マット同士を組合わせて互いに支えあわせて一体化するような使用ができないため、炉内の天井や側壁に貼り付けたマットの一部に剥離が生じると、その剥離は容易にマット全体に拡がって、マットが落下するという問題がある。そして、一旦マットが落下すると、落下の影響は周囲のマットに拡がり、マットの落下が連鎖して発生するという問題も生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、既設の加熱炉の排気口内に設置して、排気ガスにより加熱された布部材の輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口から流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善方法及び熱効率改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法は、1又は複数の耐熱性の布部材を、支持部材を介して加熱炉の排気口内に該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置し、該排気口を通過する排気ガスで前記布部材を加熱し、加熱された前記布部材からの輻射熱を該加熱炉内に入れて、該排気口から外部に流出する熱を減少させる。
【0008】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複数設置され、しかも、該複数の布部材は平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成していることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、2枚の前記布部材で形成され、該布部材間の交差角度は10°以上90°以下とすることができる。
ここで、布部材間の交差角度が10°未満では、布部材の内側を流れる排気ガス流量と、布部材の外側を流れる排気ガス流量に差が生じるため、布部材の均一加熱が困難となり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、170°未満の集合体は、布部材間の交差角度が10°以上90°以下の場合の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0010】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、3枚以上の前記布部材で形成され、隣接する該布部材間の各交差角度は等しく、5°以上とすることが好ましい。
ここで、交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、n枚の布部材で集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度を等しくすると、交差角度は360°/2nとなる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、60°である。
【0011】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることが好ましい。
ここで、第1の布部材群の2枚の布部材の間隔が5mm未満では、第1の布部材群を構成する布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を5℃、上限を90°とした。
【0013】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差していることが好ましい。
ここで、第1、第2の布部材群をそれぞれ構成する布部材の間隔が5mm未満では、布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0014】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることが好ましい。
【0015】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製することができる。
また、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製してもよい。
更に、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成してもよい。
ここで、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることができる。
【0016】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複合化無機繊維で構成され、該複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0017】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することができる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
そして、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成してもよい。
あるいは、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成することも可能である。
【0018】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成してもよい。
そして、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0019】
前記目的に沿う第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置は、加熱炉の排気口内に設置し、該排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置であって、
前記排気口内に、該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、該排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材と、
前記布部材を前記排気口に固定する支持部材とを有し、
加熱された前記布部材からの輻射熱を前記加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させている。
【0020】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、前記布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることが好ましい。
ここで、布部材間の交差角度が10°未満では、布部材の内側を流れる排気ガス流量と、布部材の外側を流れる排気ガス流量に差が生じるため、布部材の均一加熱が困難となり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、170°未満の集合体は、布部材間の交差角度が10°以上90°以下の場合の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0021】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する前記布部材間の各交差角度は等しく、5°以上であることが好ましい。
ここで、交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、n枚の布部材で集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度を等しくすると、交差角度は360°/2nとなる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、交差角度は60°である。
【0022】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることが好ましい。
【0023】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有する構成とすることができる。
また、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上の交差角度で交差している構成とすることもできる。
ここで、第1、第2の布部材群をそれぞれ構成する布部材の間隔が5mm未満では、布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を5°、上限を90°とした。
【0024】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることが好ましい。
【0025】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製することができる。
また、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製してもよい。
更に、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成してもよい。
ここで、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることができる。
【0026】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記支持部材は、前記布部材が装着されるスリットを有する筒体と、前記筒体を前記排気口の内壁内に、前記排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有する構成とすることができる。
ここで、前記筒体は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることが好ましい。
また、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなり、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0027】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が前記筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が該排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有することが好ましい。
また、前記締結部材は、前記排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトであることが好ましい。なお、締結部材は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
ここで、前記締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0028】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記排気口に該排気口の内壁とは隙間を有して配置された前記筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が該排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有することが好ましい。
また、前記第2の締結部材は、セラミックボルトと、該セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなることが好ましい。なお、第2の締結部材は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
ここで、前記第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0029】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、前記筒体の外周面に巻き付けられて前記排気口に挿入された際に該筒体と該排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有してもよい。
ここで、前記充填部材は前記筒体の排ガス入口側及び前記筒体の排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けることができる。
そして、前記帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成することができる。
また、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質とすることができる。
【0030】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることが好ましい。
【0031】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は複合化無機繊維であって、該複合化無機繊維の外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0032】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることが好ましい。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することができる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
そして、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成してもよい。
あるいは、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成することも可能である。
【0033】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することができる。
また、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成してもよい。
そして、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0034】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記帯状布シートは、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成されていることが好ましい。
ここで、帯状布シートを形成する無機繊維又は複合化無機繊維は、布部材を形成する無機繊維又は複合化無機繊維と同一の構成とすることができる。
【発明の効果】
【0035】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法おいては、1又は複数の耐熱性の布部材を、加熱炉の排気口内に、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置するので、排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。これにより、排気ガスで布部材が効率的に加熱され、排気口内の温度を下げると共に排気ガスの温度を下げる。その結果、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口から外部に流出する熱を減少させることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる。また、加熱炉内の温度分布を均一にすることができる。
そして、排気口内に布部材を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もないため、既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。
【0036】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が複数設置され、しかも、複数の布部材が平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成している場合、複数の布部材を用いても排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。
【0037】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、集合体が、2枚の布部材で形成され、布部材間の交差角度が10°以上90°以下である場合、布部材の内側と外側をそれぞれ通過する排気ガスの流れを同一にすることができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、3枚以上の布部材で形成され、隣接する布部材間の各交差角度は等しく5°以上である場合、布部材間を排気ガスは一様に通過することができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0038】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が3枚以上あって、布部材は平面視して2点以上で交差して、排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成している場合、排気口内を通過する排気ガスの熱を効率的に利用することができる。
ここで、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の布部材を有している場合、排気口内を通過する排気ガスで3枚の布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差している場合、排気口内を通過する排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0039】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材の幅方向の両側端部が、排気口の内壁に当接している場合、排気ガスは必ず布部材に沿って通過するので、布部材の加熱を効率的に行うことができる。
【0040】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されている場合、また、布部材が、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されている場合、排気ガスが布部材を通過することができ、布部材をより効率的にかつ均一に加熱することができる。
更に、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成される場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。
ここで、織物が、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である場合、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を作製できる。
【0041】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が複合化無機繊維で構成され、複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、
Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である場合、布部材に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0042】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる
【0043】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0044】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、(1)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(3)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、加熱された際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、布部材を酸化雰囲気中で使用できる。
【0045】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置においては、排気口内に、1又は複数の耐熱性の布部材が、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置されるので、排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができ、排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉に入れて、排気口から外部に流出する熱を減少させることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる。
そして、排気口内に布部材を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もないため、既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。
【0046】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、布部材間の交差角度は10°以上90°以下である場合、複数の布部材を用いても排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。
【0047】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度は等しく、5°以上である場合、布部材間を排気ガスは一様に通過することができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0048】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が3枚以上あって、布部材は平面視して2点以上で交差して、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成している場合、排気口内を通過する排気ガスの熱を効率的に利用することができる。
ここで、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の布部材を有している場合、排気口内を通過する排気ガスで3枚の布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材は5°以上の交差角度で交差している場合、排気口内を通過する排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0049】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材の幅方向の両側端部が、排気口の内壁に当接している場合、排気ガスは必ず布部材の間を通過するので、布部材の加熱を効率的に行うことができる。
【0050】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製される場合、また、布部材が、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製される場合、布部材をより効率的にかつ均一に加熱することができる。
更に、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成される場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。
ここで、織物が、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である場合、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を得ることができる。
【0051】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、支持部材が、布部材が装着されるスリットを有する筒体と、筒体を排気口の内壁内に、排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有する場合、排気口内に布部材を、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って容易に配置することができる。
【0052】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、筒体が、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
また、筒体が高耐熱性非酸化物からなり、筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0053】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有する場合、筒体を排気口内に簡便に取付けることができる。
ここで、締結部材が、排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトである場合、筒体の排気口内への取付け、取外しが容易になる。
そして、締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、締結部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0054】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、排気口に排気口の内壁とは隙間を有して配置された筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有する場合、排気口内に取付けた筒体の軸心方向を排気口の軸心方向に向くように容易に調整することができる。
ここで、第2の締結部材が、セラミックボルトと、セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなっている場合、セラミックナットによって筒体の位置決め及び締結を容易に行うことができる。
また、第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、第2の締結部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0055】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、筒体の外周面に巻き付けられて排気口に挿入された際に筒体と排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有する場合、排気口の内寸法に合った外寸法を有する筒体を使用する必要がなくなるので、熱効率改善装置を、既設の加熱炉の排気口に容易に設置することができる。
そして、充填部材が筒体の排ガス入口側と排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けられている場合、筒体の排気口内への固定力を高めることができる。
ここで、帯状布シートが、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成されている場合、帯状布シートに耐熱性無機接着剤を容易に練り込むことができると共に、帯状布シートを筒体の外周面に巻き付ける回数を変えることで充填部材の厚みを容易に調整できる。
また、耐熱性無機接着剤が、アルミナ質である場合、高温下で安定した接着強度を維持することができ、筒体を排気口内に充填部材を介して確実に固定することができる。
【0056】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されている場合、使用環境に応じて、布部材の寿命及びコストをそれぞれ調整することができる。
【0057】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が複合化無機繊維であって、複合化無機繊維の外殻構造が、Al、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、b、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さが、0.2μm以上10μm以下である場合、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
ここで、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0058】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0059】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が無機繊維であって、(1)無機繊維が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(3)無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、布部材を高温の酸化雰囲気中で使用できる。
【0060】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、帯状布シートが、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されている場合、使用環境に応じて、充填部材の寿命及びコストをそれぞれ調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図2】同熱効率改善装置の布部材で形成される集合体の説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、同熱効率改善装置の集合体の作製方法を示す説明図である。
【図4】同熱効率改善装置の円筒体の説明図である。
【図5】円筒体に集合体を取付けた状態の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図8】同熱効率改善装置の布部材で形成される集合体の説明図である。
【図9】(A)、(B)は、同熱効率改善装置の集合体の作製方法を示す説明図である。
【図10】同熱効率改善装置の円筒体の説明図である。
【図11】円筒体に集合体を取付けた状態の説明図である。
【図12】変形例に係る集合体に使用する布部材の説明図である。
【図13】変形例に係る集合体取付け方法の説明図である。
【図14】別の変形例に係る集合体取付け方法の説明図である。
【図15】実施例1の加熱炉の熱効率改善装置を取付ける電気炉の説明図である。
【図16】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置に使用する集合体の説明図である。
【図17】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置に使用する円筒体の説明図である。
【図18】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図19】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置に使用する集合体の説明図である。
【図20】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置に使用する円筒体の説明図である。
【図21】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置(以下、単に熱効率改善装置という)10は、加熱炉の、例えば天井部11を垂直に貫通して設けられた断面円形の排気口12内に設置され、排気口12から外部に流出する熱を減少させる作用を有するものである。
【0063】
そして、熱効率改善装置10は、排気口12内に、排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、排気ガスによって加熱される2枚の耐熱性の布部材15、16と、布部材15、16が装着されるスリット23、24、25、26(図4参照)を有する耐熱性の円筒体13(支持部材を構成する筒体の一例)と、円筒体13の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が円筒体13に固定され、半径方向外側端部が排気口12の内壁に螺入して、円筒体13を排気口12の内壁内に、排気ガスの流れ沿って取付ける耐熱性の複数(図1では4本)の頭付きボルト14(支持部材を構成する固定手段としての締結部材の一部)とを有する。また、熱効率改善装置10は、排気口12に排気口12の内壁とは隙間を有して配置された円筒体13の排ガス出口側を貫通し、両端部が排気口12の内壁内に取付けられる1本の耐熱性のセラミックボルト17及びセラミックボルト17に螺合するセラミックナット18、19(支持部材を構成する固定手段に設けられた第2の締結部材の一例)を有する。以下、詳細に説明する。
【0064】
円筒体13は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)及び高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、円筒体13の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、円筒体13を高耐熱性非酸化物で形成することで、円筒体13の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した円筒体13は、高温下の酸化性雰囲気中では、円筒体13の表面が徐々に酸化するので、円筒体13の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、円筒体13の表面の酸化を防止する。これによって、円筒体13の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0065】
セラミックからなる頭付きボルト14(セラミックボルト17及びセラミックナット18、19も同様)は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、頭付きボルト14の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、頭付きボルト14を高耐熱性非酸化物で形成することで、頭付きボルト14の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した頭付きボルト14は、高温下の酸化性雰囲気中では、頭付きボルト14の表面が徐々に酸化するので、頭付きボルト14の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、頭付きボルト14の表面の酸化を防止する。これによって、頭付きボルト14の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。更に、円筒体13の排ガス出口側の側部の周方向の対向する位置には、円筒体13を貫通し、両端部が排気口12の内周面を押圧するセラミックボルト17が設けられているので、円筒体13の排気口12内への位置決めと固定を更に強化できる。なお、セラミックボルト17の円筒体13に対する固定は、セラミックボルト17の両端部からねじ込んだセラミックナット18、19で円筒体13を両側から押圧することにより行う。
【0066】
図2に示すように、布部材15、16は、平面視して1点(布部材15、16の幅方向の中央部)で交差して、布部材15、16間の交差角度が10°以上90°以下、ここでは90°となった放射状の集合体20を形成している。そして、集合体20は、その長手方向(布部材15、16の長手方向)を円筒体13の軸心方向に向けて円筒体13内に挿入されている。なお、集合体20が挿入された円筒体13を排気口12に取付けた場合、円筒体13の外側に突出している布部材15、16の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスは、布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるようになる。
【0067】
集合体20は、図3(A)に示すように、布部材15、16の幅方向中央部に、長手方向に沿って布部材15、16の長さLの半分の長さの切込み21、22をそれぞれ形成し、図3(B)に示すように、布部材15、16の切込み21、22が同軸上で対向すると共に布部材15、16が直交するように配置して、図3(C)に示すように、布部材15、16の切込み21、22を、他方の切込み22、21内に切込み21、22に沿って挿入して組合わせることにより形成する。そして、図4に示すように、円筒体13の基端(排ガス出口側端部)の周方向4等分位置に、それぞれ円筒体13の軸方向に沿って布部材15、16の長さLより長い長さSのスリット23、24、25、26を形成し、集合体20の布部材15、16の長手方向に沿った両側部がそれぞれスリット23〜26を挿通するように集合体20を円筒体13内に挿入する。これにより、図5に示すように、集合体20を、布部材15、16間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体13内に配置することができる。なお、図4において、符号27、28はセラミックボルト17が挿通する取付け孔、符号29、29a、30、30aは頭付きボルト14が挿通する取付け孔である。
【0068】
第1の実施の形態では、集合体20を布部材15、16で形成したが、3枚以上の布部材を、平面視して1点(布部材の幅方向の中央部)で交差させて、隣接する布部材間の各交差角度が等しくなるように集合体を形成してもよい。ここで、隣接する布部材間の各交差角度は、5°以上とする。交差角度を5°以上とすることで、排気ガスが布部材間を通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、60°である。
【0069】
布部材15、16は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布から形成された布材を裁断して作製される。ここで、織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である。これにより、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を得ることができる。
なお、布部材を、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせた布材積層物から形成することもできる。
【0070】
布部材15、16は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で構成されている布材を裁断して作製する。ここで、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1から構成されている(すなわち、内殻構造は、炭化ケイ素系素材で構成されている)。
【0071】
一方、外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、
Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。これによって、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0072】
なお、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる。これにより、固溶体酸化物(すなわち、外殻構造)の耐熱性及び耐食性が高まる。
【0073】
布部材15、16は、布部材15、16の素になる耐熱性の基材(耐熱性の無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して作製)を構成している無機繊維の外側に外殻構造を設けて、無機繊維を内殻構造と外殻構造を有する複合化無機繊維に変えることにより、作製することができる。ここで、無機繊維で構成された織物の厚みは0.2〜10mm、開口率は30%以下であり、無機繊維で構成された不織布の厚みは1〜10mm、体積空隙率は50〜97%である。以下、基材から布部材15、16を作製する方法について説明する。
【0074】
無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている。そして、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。したがって、無機繊維が(1)〜(3)の無機物質で構成されている場合、無機繊維は、複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となるので、この無機繊維の外側に外殻構造を設けて複合化無機繊維から構成される布部材は、布部材15、16と同一の特性を示す。
【0075】
布部材15、16の作製方法は、無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して基材を作製する第1工程と、基材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、次いで基材を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を基材を構成する無機繊維の表面に付着させて処理基材を得る第2工程と、処理基材を分散溶液中から取り出し乾燥させて、水及び/又は有機溶媒を除去する第3工程と、乾燥した処理基材を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して粉末を無機繊維に固着させ、無機繊維を内殻構造と外殻構造を持つ複合化無機繊維に変える第4工程とを有している。
【0076】
無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して、予め設定された寸法を有する正方形状又は長方形状の基材を作製する。ここで、基材を作製するのに使用した布材に、化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合、あるいは布材にサイジング剤が施されている場合は、基材を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解除去、又は一部を分解除去し残部を炭化させることができ、サイジング剤を完全に除去できる。その結果、基材は、完全に無機物化する(以上、第1工程)。
【0077】
そして、完全に無機物化した基材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、又はノルマルヘプタンのいずれか1である。また、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上とする。
【0078】
続いて、基材を陰極側にして、直流安定化電源から50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を基材を構成する無機繊維の外側に付着させて処理基材を形成する。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、基材はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網に抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第2工程)。
【0079】
処理基材の形成が完了すると、処理基材を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第3工程)。
【0080】
乾燥が完了した処理基材を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、無機繊維の外側に付着している粉末が焼結して無機繊維に固着し、無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ複合化無機繊維に変わり(以上、第4工程)、布部材15、16が形成される。なお、外殻構造は、材料Aで形成され、内殻構造は、無機繊維を構成している無機物質で形成される。
【0081】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の熱効率改善方法について説明する。
加熱炉の熱効率改善装置10を加熱炉の排気口12内に設置することで、排気ガスは、加熱炉の熱効率改善装置10の円筒体13内及び円筒体13の外周面と排気口12の内周面との隙間を通過して外部に排出されることになる。ここで、円筒体13内には、布部材15、16が、平面視して1点で交差して放射状となった集合体20が、その長手方向(布部材15、16の長手方向)を円筒体13の軸心方向(排気ガスの流れ方向)に向けて挿入されている。また、円筒体13の外周面と排気口12の内周面との隙間には、円筒体13の外側に突出している布部材15、16の幅方向の両端部が、その長手方向を排気口12の軸心方向(円筒体13の軸心方向)に沿って配置され、しかも布部材15、16の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスを、確実に布部材15、16に沿って通過させることができる。
【0082】
これにより、排気ガスは、布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるようになり、排気ガスで布部材15、16を効率的に加熱され、加熱された布部材15、16によって、排気口12の入口端部(すなわち、加熱炉との境界)の温度を上昇させると共に、加熱された布部材15、16から放射される輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口12から外部に流出する熱を減少させることができる。更に、排気口12内の温度を下げ、排気口12の出口から排出される排気ガスの温度を450〜550℃下げることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる(なお、他の実施の形態においても同じ)。
そして、排気ガスが布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるので、排気口12内に円筒体13及び布部材15、16を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口12内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、加熱炉の熱効率改善装置10を既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。更に、加熱炉の熱効率改善装置10の排気口12への取付け、取外しは、円筒体13の排気口12への取付け、取外しを行うことによりできるので、加熱炉の熱効率改善装置10の保守管理が容易になる。
【0083】
ここで、集合体20を形成する布部材15、16間の交差角度が10°以上90°以下、例えば90°であるので、布部材15、16の内側と外側をそれぞれ通過する排気ガスの流れを同一にすることができ、布部材15、16を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材15、16からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0084】
なお、集合体を、3枚以上の布部材で形成する場合は、布部材が平面視して2点以上で交差して、排気口12内を排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成する。例えば、集合体を、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の布部材で構成することができる。また、集合体を、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材が5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差するように構成することもできる。これらの集合体でも、排気口内を通過する排気ガスで、集合体を形成する布部材を効率的に加熱することができ、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0085】
布部材15、16が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から、又は厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されているので、排気ガスは布部材15、16を通過(透過)することができ、布部材15、16をより効率的にかつ均一に加熱することができる。なお、布部材を、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成する場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。ここで、織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることで、目的(強度、剛性、弾力性、厚み、長さ、コスト等)に応じた最適な布部材15、16が作製できる。
【0086】
布部材15、16が複合化無機繊維で構成され、複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、
Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、
Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である場合、布部材に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。その結果、複合化無機繊維が高温の酸化雰囲気中に存在しても、内殻構造が酸素と反応すること(内殻構造の酸化)を防止でき、内殻構造の材質変化に伴う特性の低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が抑制される。
【0087】
ここで、固溶体酸化物を、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、
及びREAlO3のいずれか1又は2以上から構成すると、固溶体酸化物の(すなわち、外殻構造の)耐熱性及び耐食性を高めることができるので、酸化に伴う内殻構造の材質変化を防止でき、複合化無機繊維の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。
【0088】
また、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材15、16の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0089】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置31は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10と比較して、排気口12に挿入された円筒体32(支持部材を構成する筒体の一例)を排気口12の内壁内に取付ける固定手段(筒体と共に、支持部材を構成)として、更に、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、円筒体32の炉内側外周部(円筒体32の排ガス入口側外周部)に巻き付けられて排気口12内に挿入された際に円筒体32と排気口12との隙間を塞ぐ充填部材33を有することが特徴となっている。なお、加熱炉の熱効率改善装置31では、円筒体32の内側から円筒体32及び円筒体32の外側にある充填部材33をそれぞれ貫通し、その先部が排気口12の内周面に捩じ込まれる複数(第2の実施の形態では4本)の耐熱性の頭付きボルト34(固定手段である締結部材の一部)が設けられていることが特徴となっている。このため、充填部材33についてのみ説明し、加熱炉の熱効率改善装置10と同一の構成部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
また、第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置31を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法と同一なので、説明は省略する。
【0090】
円筒体32、頭付きボルト34には、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10で使用した円筒体13、頭付きボルト14とそれぞれ同様の構成とすることができる。
また、耐熱性の帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物(平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1)、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成される。そして、帯状布シートは、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維(第1の実施の形態の加熱炉の熱効率改善装置10で使用している布部材15、16を形成している複合化無機繊維と同一の構成)で形成されている。なお、耐熱性無機接着剤は、アルミナ質である。
【0091】
ここで、帯状布シートへの耐熱性無機接着剤の練り込みは、例えば、帯状布シートの表裏両面にそれぞれ耐熱性無機接着剤を塗り付け、塗り付けた耐熱性無機接着剤をローラで加圧することにより行う。そして、充填部材33は、帯状布シートを円筒体32の外周面に巻き付けて形成するので、帯状布シートの巻き付け回数を変えることで、充填部材33の厚みを容易に調整でき、円筒体32の外周面から排気口12の内周面まで隙間の距離に対応した最適厚みにして排気口12内に挿入可能であって、しかも、円筒体32と排気口12の隙間を充填するのに十分な厚みの充填部材33を、簡便に円筒体32の外側に設けることができる。
【0092】
充填部材33を構成している帯状布シートには、連通した空孔が存在し、空孔内には未硬化の耐熱性無機接着剤が充填されている。そのため、外側に充填部材33が設けられた円筒体32を排気口12内に挿入する際、充填部材33を隙間の形状に合わせて容易に変形させることができ、円筒体32の外周面と排気口12の内周面との隙間を確実に充填することができる。そして、円筒体32が充填部材33を介して排気口12内に挿入された後、帯状布シートの空孔内に充填されている耐熱性無機接着剤が硬化すると、充填部材33を隙間の形状に合わせた形で固定することができ、隙間を安定して塞ぐことができる。更に、円筒体32が充填部材33を介して排気口12内に挿入された場合、耐熱性無機接着剤を介して、円筒体32と充填部材33及び充填部材33と排気口12の内周面とが接合され、円筒体32を排気口12内に強固に固定することができる。ここで、円筒体32の先側(排ガス入口側)の側部には複数のセラミックからなる頭付きボルト34が設けられているので、頭付きボルト4の先端部で排気口12の内周面を押圧することで、円筒体32の排気口12内への固定を更に強化できる。
なお、充填部材は、円筒体32の炉外側外周部(円筒体32の排ガス出口側外周部)に設けても、円筒体32の炉内側外周部及び炉外側外周部にそれぞれ設けてもよい。
【0093】
図7に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置35は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10と比較して、円筒体36の形状と円筒体36内に配置される集合体37の形状がそれぞれ異なっていることが特徴となっている。
このため、円筒体36及び集合体37についてのみ説明し、加熱炉の熱効率改善装置10と同一の構成部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
また、第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置35を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法と同一なので、説明は省略する。
【0094】
図8に示すように、集合体37は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材38、39を備えた第1の布部材群40と、第1の布部材群40を構成する布部材38、39に90°の交差角度で交差する1枚の布部材41を有している。なお、布部材38、39、41は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10で使用した布部材15、16と同様の構成とすることができる。
【0095】
ここで、集合体37の形成は、以下のようにして行った。先ず、図9(A)に示すように、布部材41の幅方向の長さを3等分する部位に、長手方向に沿って布部材41の長さLの半分の長さの切込み42、43をそれぞれ形成する。一方、布部材38、39には、布部材38、39の幅方向中央部に、長手方向に沿って布部材38、39の長さLの半分の長さの切込み44、45をそれぞれ形成する。次いで、布部材41の切込み42と布部材38の切込み44が同軸上で対向し、布部材41の切込み43と布部材39の切込み45が同軸上で対向すると共に布部材41に対して布部材38、39がそれぞれ直交するように配置する。そして、図9(B)に示すように、布部材41の切込み42と布部材38の切込み44を互いに切込み42、44に沿って挿入して組合わせ、布部材41の切込み43と布部材39の切込み45を互いに切込み43、45に沿って挿入して組合わせる。
【0096】
図10に示すように、円筒体36の基端(排ガス出口側端部)において、円筒体36の中心を通る直線と基端との交差部をF、Gとし、交差部F、Gを結ぶ線分に直交し、円筒体36の中心を間にして布部材41の幅長さの1/3の長さの距離の間隔を有して配置される直線と基端とのそれぞれの交差部をH、I、J、Kとし、F、G、H、I、J、Kの位置に、それぞれ円筒体36の軸方向に沿って布部材38、39、41の長さLより長い長さRのスリット46、47、48、49、50、51を形成し、集合体37の布部材38、39、41の長手方向に沿った両側部がそれぞれスリット46〜51を挿通するように集合体37を円筒体36内に挿入する。これにより、図11に示すように、平行に配置された布部材38、39が布部材41に平面視して異なる2点で直交した状態となって円筒体36内に配置することができる。その結果、円筒体36内は、集合体37により、円筒体36内を通過する(排気口12内を通過する)排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割される。
【0097】
なお、図10、図11において、符号52、53はセラミックボルト17が挿通する取付け孔、符号54、55、56、57は頭付きボルト14が挿通する取付け孔である。
また、集合体37が挿入された円筒体36を排気口12に取付けた場合、円筒体36の外側に突出している布部材38、39、41の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスは、布部材38、39、41及び円筒体36の側部に沿って流れるようになる。
【0098】
第3の実施の形態では、集合体37を、布部材41に対して、平行配置された布部材38、39が、直交するように形成したが、1枚の布部材に対して、平行配置された2枚の布部材が、5°以上90°未満の角度で交差するように配置してもよい。更に、4枚以上の布部材を使用する場合は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材が5°以上の交差角度で交差するように集合体を形成してもよい。布部材間の交差角度を5°以上とすることで、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度が90°を超えた集合体は、平面視して、交差角度が90°未満の集合体と線対称の関係にあるため、交差角度の上限は90°である。
【0099】
なお、布部材及び充填部材を構成している帯状布シートは、耐熱性の無機繊維で形成された織物や不織布から形成された布材を裁断して、作製することもできる。ここで、耐熱性の無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質(無機物質1)、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質(無機物質2)、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質(無機物質3)、あるいは(4)Al、Si、及びOからなる非晶質の無機物質(無機物質4)で構成されている。なお、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質1には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質2には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0100】
無機繊維が無機物質1〜無機物質3のいずれかで構成されている場合、無機繊維は、複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となるので、この無機繊維から構成された布部材も、第1、第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10、31の布部材15、16と同様の作用を有する。なお、無機繊維は炭化ケイ素系素材であるため、高温の酸化雰囲気中では徐々に酸化して材質が変化し、特性低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が生じる。このため、加熱炉の熱効率改善装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性の場合は、無機繊維の酸化速度は遅いので、加熱炉の熱効率改善装置の布部材は、長期間に亘って破損することなく、高い輻射熱の反射効率を維持することができる。また、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な布部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、その交換を前提に布部材を使用することができる。
【0101】
また、無機繊維が、無機物質4で構成されている場合、複合化無機繊維の内殻構造及び無機物質1〜無機物質3で構成された無機繊維と比較して、比熱が大きく、熱放射率が小さくなる。このため、複合化無機繊維、又は無機物質1〜無機物質3で構成された無機繊維で形成した布部材と比較して、無機物質4で構成された無機繊維で形成した布部材の作用は低下する。更に、無機物質4で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため(粒成長が生じるため)無機繊維が脆くなる。従って、布部材を形成している無機繊維が、無機物質4で構成されている場合、布部材を長期間に亘って使用することができない。
【0102】
第1〜第3の実施の形態では、布部材で集合体を形成する場合、布部材に切込みを設け、切込み同士が互いに挿入するように布部材を組合わせたが、切込みを形成した枠体に布部材を取付け、布部材が取付けられた枠体同士を組合わせて集合体を形成してもよい。布部材を枠体に取付けることで、布部材の変形を防止することができ、布部材を排気口(円筒体)内に安定して設置することができる。
【0103】
例えば、2枚の布部材を枠体に取付け、平面視して枠体の幅方向の中央部で互いに直交する集合体を形成する場合、図12に示すように、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み58を形成した布部材59と、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み60を形成した布部材61をそれぞれ準備する。また、図13に示すように、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなり、幅方向中央部に縦桟62、63をそれぞれ有し布部材59、61の取付けが可能な寸法の枠体64、65と、布部材59、61が取付けられた枠体64、65の縦桟62、63の両側部にそれぞれ取付けられて布部材59、61を枠体64、65と共に挟持する4つの小枠体66、67、68、69を準備する。なお、縦桟62には、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み70が形成され、縦桟63には、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み71が形成されている。
【0104】
次いで、枠体64に布部材59を切込み58、70同士の位置が一致するように載置し、布部材59の上に小枠体66、67が縦桟62の両側部に配置されるように載置して、布部材59を枠体64と小枠体66、67で挟持する。同様に、枠体65に布部材61を切込み60、71同士の位置が一致するように載置し、布部材61の上に小枠体68、69が縦桟63の両側部に配置されるように載置して、布部材61を枠体65と小枠体68、69で挟持する。続いて、小枠体66〜69の四隅に設けられた各取付け孔72から、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)のピン(図示せず)を差し込み先部を枠体64、65に予め形成されている各取付け孔73に挿入し、耐熱性の無機接着剤(例えばアルミナ質)で固定する。そして、枠体64の縦桟62に形成した切込み70に枠体65の縦桟63に形成した切込み71を挿入することにより、集合体が形成される。
なお、ピンの代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなるボルトを使用してもよい。
【0105】
第1〜第3の実施の形態では、集合体を排気口内に設置する場合、円筒体を排気口の内壁との間に隙間を設けて挿入したが、排気口の内壁に当接させて挿入してもよい。
また、第1〜第3の実施の形態では、集合体を排気口内に設置する場合1個の円筒体を使用したが、図14に示すように、例えば、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材74、75を備えた第1の布部材群76と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材77、78を備えた第2の布部材群79を、第1の布部材群76の布部材74、75と第2の布部材群79の布部材77、78を90°の交差角度で交差させて形成した集合体80を排気口81内に設置する場合、同心に配置した2個の円筒体82、83を使用してもよい。二重円筒体とすることで、集合体80をより安定して排気口81内に設置することができる。更に、排気口の内径が大きい場合、3個以上の円筒体を同心に配置した多重円筒体を使用することもできる。
なお、排気口の断面形状を円形として、筒体に円筒体を用いたが、排気口の断面形状が四角形の場合は、筒体に角筒体を使用する。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維径が11μm、繊維目付が240g/m2、体積空隙率が95%、化学繊維の一例であるレ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、厚さが5mm、長さが10mのロール巻き)を裁断して、縦500mm、横500mmの基材を作製した。そして、基材を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、基材(不織布)に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、基材に施されているサイジング剤(有機物)の除去を行った(以上、第1工程)。
【0107】
続いて、熱処理された基材をアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網で抱き合わせ、第1群から選択されたSi、Zrの元素からなる固溶体酸化物であるジルコン(ジルコニウムモノシリケートともいう、ZrSiO4)の粉末がエタノ−ルと水の混合溶媒中に均一分散した分散溶液を貯留している浴槽中に距離を設けて対向配置したC/Cコンポジット製の2枚のカソ−ド電極の間に配置した。そして、直流安定化電源より120Vの直流電圧を5分間印加して、基材を形成している不織布を構成する無機繊維の外側にジルコンの粉末を電気泳動により付着させた(第2工程)。
【0108】
次いで、基材を分散溶液中から取り出し、液切り、2時間の風乾、大気雰囲気中40℃で6時間の熱風乾燥を行った(第3工程)後、アルゴンガス雰囲気中0.5MPaの微加圧下において、1500℃で0.5時間熱処理を行って、無機繊維の外側に付着させたジルコン粉末を焼結させて無機繊維に固着させることにより、無機繊維を内殻構造(Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で構成されている)と外殻構造(厚さ2μmのジルコン)を持つ複合化無機繊維に変えて(第4工程)、縦500mm、厚さ5mmの複合化無機繊維かで構成された不織布を作製した。
【0109】
複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を2枚切出した。そして、2枚の布部材を用いて、図3(A)、(B)、(C)の手順に従って、2枚の布部材を、平面視して1点(各布部材の幅方向の中央部)で互いに交差させて、図2に示すように、布部材間の交差角度が90°となった放射状の集合体を形成した。次いで、図4に示すように、円筒体の基端の周方向4等分位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿って形成したスリット内に、集合体を構成している布部材の長手方向に沿った両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体13内に挿入した。これにより、図5に示すように、集合体を、布部材間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト、アルミナ製の頭付きボルトをセットして、加熱炉の熱効率改善装置を作製した。
【0110】
図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された内径60mmの排気口の入口側(炉内側)より、加熱炉の熱効率改善装置の円筒体を基側(排ガス出口側)から挿入し、円筒体の先側(排ガス入口側)の側部の周方向に4等分する位置(周方向0°、90°、180°及び270°位置)に対向する排気口の内周面に予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通するアルミナ製の頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。そして、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置する。以上によって、図1に示すように、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0111】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置により輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を確認するため、電気炉を常時1300℃に保持(電気炉中央部の温度で制御)し、電気炉の炉床中央部に形成した空気送入口より1リットル/分の流量で空気を300時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力W1の削減率を調べた。ここで、消費電力W1の削減率は、電気炉の排気口内に熱効率改善装置を設置しない状態で、炉床中央部の空気送入口より1リットル/分の流量で空気を電気炉内に流通させながら、電気炉を常時1300℃一定に保持する際に必要な消費電力量をW0とした場合、100×(W0−W1)/W0により求めた。
【0112】
また、電気炉の排気口に取付けた熱効率改善装置の布部材の先端面(炉内側表面)に取付けた熱電対で測定した熱効率改善装置の先端部温度(布部材下温度)と、熱効率改善装置の布部材の基端面(炉外側表面)に取付けた熱電対で測定した熱効率改善装置の基端部温度(布部材上温度)との差から、熱効率改善装置による熱遮蔽効果を調べた。なお、1300℃で300時間試験した後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、布部材を回収して、布部材を構成する複合化無機繊維の高温酸化による劣化の有無を観察した。
【0113】
熱効率改善装置を設置する場合は、設置しない場合に比べ消費電力削減率は32%の高い値を示し、この削減率は300時間中変わることなく一定で、布部材で形成した集合体が優れた輻射熱放射作用を有することが確認でき、電気炉運転の省エネルギ−に大きく寄与すること、結果的にはCO2の発生低減に大きく寄与することが示唆された。また、熱効率改善装置の上下で850℃の温度差が発生しており、この温度差は300時間に亘って常時一定であった。このことから、布部材が優れた熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。
【0114】
なお、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したところ、高温酸化による複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められず、この布部材が1300℃の高温でも、長期に亘って一定した性能を保持し得るものであることが確認できた。
【0115】
同様の方法で別の熱効率改善装置を作製し、同一の電気炉の排気口内に設置して、電気炉を900℃、300℃にそれぞれ保持した際の電気炉の消費電力の削減率及び集合体(布部材)の上下の温度差を求めた。その結果、電気炉を900℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は28%、温度差は430℃、電気炉を300℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は25%、温度差は150℃であった。これらのことから、300℃のような輻射熱の寄与が顕著でない温度域、900℃のような輻射熱の寄与が現れ始める温度域においても、布部材で形成した集合体は輻射熱放射作用を有し、布部材は熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。また、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したが、複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められなかった。
【0116】
(実施例2)
実施例1で作製した複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を2枚切出し、実施例1と同様の手順で、図16に示すように、布部材間の最小の交差角度が45°となった放射状の集合体を形成した。また、図17に示すように、円筒体の基端の周方向に0°、45°、180°、及び225°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に沿って4等分する位置にアルミナ製の頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にアルミナ製のセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、集合体を構成している布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体内に挿入した。これにより、図18に示すように、集合体を、布部材間の最小交差角度を45°(したがって、布部材間の最大交差角度は135°)に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0117】
次いで、実施例1で使用した電気炉の排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向する排気口の内周面に予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通するアルミナ製ボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。そして、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置する。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0118】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
熱効率改善装置を設置した場合、設置しない場合に比べ消費電力削減率は37%の値を示し、熱効率改善装置(布部材)の上下での温度差は880℃であり、この削減率、温度差ともに300時間一定であることから、布部材間の最小交差角度を45°とした集合体は、布部材間の交差角度を90°とした実施例1の集合体に比べて、更に優れた輻射熱放射作用並びに熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)、すなわち、更に優れた省エネルギー効果、CO2削減効果を有することが確認できた。なお、当然のことながら、この集合体を形成している布材の1300℃での耐久性(長期安定性)も確認された。
【0119】
(実施例3)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維径が11μm、繊維目付が240g/m2、体積空隙率が95%、レ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、厚さが5mm、長さが10mのロール巻き)を裁断して、縦500mm、横500mmの基材を作製した。そして、基材を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、基材(不織布)に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、基材に施されているサイジング剤の除去を行った。次に、熱処理して得られた基材から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの不織布試験片を2枚切り出した。また、Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が260g/m2、開口率が29%、幅が400mm、厚さが0.25mm、長さが10mのロール巻)を裁断して、幅が60mm、横130mm、厚さが0.25mmの平織物試験片を4枚切り出した。
【0120】
次いで、1枚の不織布試験片の両側をそれぞれ1枚の平織物試験片で覆って、布材積層物を2個作製した。布材積層物を形成することで、例えば、実施例1で使用した不織布で構成された布部材の集合体を工業加熱炉で使用する場合、加熱炉内取付け時や加熱炉での大流量排気ガス発生時に、不織布からの短繊維脱落、それに伴う短繊維の加熱炉内浮遊、及び不織布毛羽立ちによる不織布の損傷等の不具合を回避することができる。
そして、2個の布材積層物を用いて、実施例1に示した手順にしたがって、2個の布材積層物が交差角度90°で交差した集合体を作製し、この集合体を、実施例1と同様に円筒体に挿入し、セラミックボルト及び頭付きボルトをセットして熱効率改善装置を組み立て、電気炉の排気口に取付けた。
【0121】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。その結果、布材積層物で形成した集合体を挿入しても、150時間までは消費電力削減率は30%で実施例1とほぼ同等の値を示し、布材積層物で形成した集合体が優れた輻射熱放射作用を有することが確認できた。また、集合体(布材積層物)の上下の温度差は850℃で、実施例1と同等の熱遮蔽作用を示した。更に、不織布で構成された布部材で形成された集合体を工業加熱炉で実使用に供する際に、不織布からの短繊維脱落、それに伴う短繊維の加熱炉内浮遊、及び不織布毛羽立ちによる不織布の損傷等の問題がある場合、不織布の布材と平織物の布材を組合わせた布材積層物で形成された集合体を採用することで、問題発生を回避できることが確認できた。
【0122】
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、集合体を形成している布材積層物を回収した。そして、布材積層物を形成している不織布及び平織物のそれぞれの無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、この集合体を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0123】
(実施例4)
Si、C、及びOを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が289g/m2、幅が500mm、厚さ0.33mm、長さが5mのロール巻)から、たて60mm、横130mm、厚さ0.33mmの布部材1枚を切り出した。また、円筒体の基端の周方向に0°及び180°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように布部材を円筒体内に挿入した。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0124】
次いで、図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向して予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通する頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。更に、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置した。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0125】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
その結果、150時間までは消費電力削減率は10%を示し、1枚の平織物からなる布部材を使用しても、輻射熱放射作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、布部材の上下の温度差は380℃で、熱遮蔽作用も有することが分かった。
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、布部材を回収した。そして、布部材を形成している平織物の無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、この布部材を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0126】
(実施例5)
Al、Si、及びOを含有する非晶質無機物質(Al2O3換算相当分が約30%、SiO2換算相当分が約70%)で構成された無機繊維(Al−Si−O系無機繊維)で形成された不織布(縦500mm、横500mm、厚さ5mm、体積空隙率80%)を裁断して、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を3枚作製した。
得られた布部材3枚を用いて、実施例1と同様の手順で、図19に示すように、布部材間の交差角度が60°となった放射状の集合体を形成した。また、図20に示すように、円筒体の基端の周方向に0°、60°、120°、180°、240°、及び300°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、集合体を構成している布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体内に挿入した。これにより、図21に示すように、集合体を、布部材間の交差角度を60°に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0127】
次いで、図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向して予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通する頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。更に、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置した。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0128】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
その結果、熱効率改善装置を排気口に取付けることにより、150時間までは消費電力削減率は13%を示し、実施例1〜3の結果と比較して消費電力削減率は相対的に劣るものの、輻射熱放射作用を有することが確認できた。また、集合体(布部材)の上下の温度差は530℃で、集合体が高い熱遮蔽効果をもつことが分かった。
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、集合体を形成している布部材を回収した。そして、布部材を形成している不織布の無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で、無機繊維中には高温による結晶粒子が出現し、粒成長が生じているため、無機繊維が著しく劣化して脆くなっていることが確認された。したがって、この集合体を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用することが不可欠である。
【0129】
(実施例6)
実施例1で作製した複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を3枚切出し、図9(A)、(B)に示す手順に従って、図11の平面図に示すように、平面視して1枚の布部材に、2枚の布部材が、1枚の布部材の幅方向を3等分する2点でそれぞれ直交するように配置して集合体を形成した。次いで、図10に示すように、円筒体の基端から円筒体の軸方向に沿って形成したスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)内に、集合体を形成している布部材の長手方向に沿った両端部がそれぞれ挿通するように集合体を挿入した。これにより、円筒体内を、図11に示すように、円筒体内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。次いで、実施例1で使用した電気炉の排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、実施例1と同様の方法で熱効率改善装置を排気口内に取付けた。
【0130】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。電気炉を1000℃に保持した際の電気炉の消費電力の削減率及び集合体(布部材)の上下の温度差を求めた。その結果、電気炉を1000℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は30%、温度差は510℃であり、この削減率、温度差共に、300時間変わることなく一定で、布部材で形成した集合体は輻射熱放射作用を有し、布部材は熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。また、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したが、複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められなかった。
【0131】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
また、排気口内に設置する布部材(集合体)の幅は、排気口の内寸法に合わせて決定すればよいが、布部材(集合体)の長さは、加熱炉の排気口の構造、加熱炉内の温度、及び排気口内を通過する排ガス流量によって適宜決定する必要があるが、例えば、排気口の断面が円形の場合、排気口の内径をDとすると、布部材(集合体)の長さXは、0.05D〜5D、好ましくは、0.1D〜4Dとなる。
【符号の説明】
【0132】
10:加熱炉の熱効率改善装置、11:天井部、12:排気口、13:円筒体、14:頭付きボルト、15、16:布部材、17:セラミックボルト、18、19:セラミックナット、20:集合体、21、22:切込み、23、24、25、26:スリット、27、28、29、29a、30、30a:取付け孔、31:加熱炉、32:円筒体、33:充填部材、34:セラミックボルト、35:加熱炉、36:円筒体、37:集合体、38、39:布部材、40:第1の布部材群、41:布部材、42、43、44、45:切込み、46、47、48、49、50、51:スリット、52、53、54、55、56、57:取付け孔、58:切込み、59:布部材、60:切込み、61:布部材、62、63:縦桟、64、65:枠体、66、67、68、69:小枠体、70、71:切込み、72、73:取付け孔、74、75:布部材、76:第1の布部材群、77、78:布部材、79:第2の布部材群、80:集合体、81:排気口、82、83:円筒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、加熱炉の排気口(排気口道を含む)の入口に取付け、排気口を通過する排気ガスで加熱されて、加熱炉内からの輻射熱を加熱炉内に反射して戻すことにより排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善方法及び加熱炉の熱効率改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼加熱炉あるいは雰囲気制御加熱炉における最も顕著な熱損失は、排気口を通過して外部に放出される高温排気ガスが持ち出す熱損失である。そこで、炉内壁に熱輻射効率の高い物質を設けること(例えば、特許文献1参照)や、炭化ケイ素系の不織布マット(以下、単にマットという)を炉内天井に設けた排気口に熱フィルタとして貼り付け、更に、炉内の天井並びに側壁に熱反射体としても貼り付けて、高温排気ガスの顕熱を炉内で回収する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−210782号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鈴木謙爾、外3名、「Si−C−(M)−O系繊維不織布マットによるガス燃焼加熱炉の省エネルギー化ならびに高性能化」、工業加熱、社団法人日本工業炉協会、2007年7月15日、第44巻、第4号、p.17−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、柔軟体であるマットを、炉内の天井や側壁に貼り付けるには、セラミック接着剤を用いて接着する方法が一般的である。しかし、炉内温度が、例えば1000℃以上の高温で、高温排気ガスが高速で流転する炉内で、マットをセラミック接着剤による接着だけで長期に亘って安定して炉内の天井や側壁に付着させることは困難で、使用中にマットが剥がれて落下する可能性が高い。また、柔軟体であるマット自体が、高温排気ガスによる機械的衝撃や磨耗に長期間に亘り耐えることができるかという問題もある。更に、柔軟体であるマットは保形性(形状保持性)が極端に低いため貼り付け作業が非常に煩雑になると共に、マット同士を組合わせて互いに支えあわせて一体化するような使用ができないため、炉内の天井や側壁に貼り付けたマットの一部に剥離が生じると、その剥離は容易にマット全体に拡がって、マットが落下するという問題がある。そして、一旦マットが落下すると、落下の影響は周囲のマットに拡がり、マットの落下が連鎖して発生するという問題も生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、既設の加熱炉の排気口内に設置して、排気ガスにより加熱された布部材の輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口から流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善方法及び熱効率改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法は、1又は複数の耐熱性の布部材を、支持部材を介して加熱炉の排気口内に該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置し、該排気口を通過する排気ガスで前記布部材を加熱し、加熱された前記布部材からの輻射熱を該加熱炉内に入れて、該排気口から外部に流出する熱を減少させる。
【0008】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複数設置され、しかも、該複数の布部材は平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成していることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、2枚の前記布部材で形成され、該布部材間の交差角度は10°以上90°以下とすることができる。
ここで、布部材間の交差角度が10°未満では、布部材の内側を流れる排気ガス流量と、布部材の外側を流れる排気ガス流量に差が生じるため、布部材の均一加熱が困難となり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、170°未満の集合体は、布部材間の交差角度が10°以上90°以下の場合の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0010】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、3枚以上の前記布部材で形成され、隣接する該布部材間の各交差角度は等しく、5°以上とすることが好ましい。
ここで、交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、n枚の布部材で集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度を等しくすると、交差角度は360°/2nとなる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、60°である。
【0011】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることが好ましい。
ここで、第1の布部材群の2枚の布部材の間隔が5mm未満では、第1の布部材群を構成する布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を5℃、上限を90°とした。
【0013】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差していることが好ましい。
ここで、第1、第2の布部材群をそれぞれ構成する布部材の間隔が5mm未満では、布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0014】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることが好ましい。
【0015】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製することができる。
また、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製してもよい。
更に、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成してもよい。
ここで、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることができる。
【0016】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複合化無機繊維で構成され、該複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
ここで、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0017】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することができる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
そして、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成してもよい。
あるいは、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成することも可能である。
【0018】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することが好ましい。
また、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成してもよい。
そして、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0019】
前記目的に沿う第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置は、加熱炉の排気口内に設置し、該排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置であって、
前記排気口内に、該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、該排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材と、
前記布部材を前記排気口に固定する支持部材とを有し、
加熱された前記布部材からの輻射熱を前記加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させている。
【0020】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、前記布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることが好ましい。
ここで、布部材間の交差角度が10°未満では、布部材の内側を流れる排気ガス流量と、布部材の外側を流れる排気ガス流量に差が生じるため、布部材の均一加熱が困難となり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、170°未満の集合体は、布部材間の交差角度が10°以上90°以下の場合の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を10℃、上限を90°とした。
【0021】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する前記布部材間の各交差角度は等しく、5°以上であることが好ましい。
ここで、交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、n枚の布部材で集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度を等しくすると、交差角度は360°/2nとなる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、交差角度は60°である。
【0022】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることが好ましい。
【0023】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有する構成とすることができる。
また、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上の交差角度で交差している構成とすることもできる。
ここで、第1、第2の布部材群をそれぞれ構成する布部材の間隔が5mm未満では、布部材間を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。また、布部材間の交差角度が5°未満では、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗が大きくなり好ましくない。一方、布部材間の交差角度が90°を超え、175°未満の集合体は、布部材間の交差角度が5°以上90°未満の集合体と、排気ガスの流れによる作用は同一になる。このため、交差角度の下限を5°、上限を90°とした。
【0024】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることが好ましい。
【0025】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製することができる。
また、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製してもよい。
更に、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成してもよい。
ここで、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることができる。
【0026】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記支持部材は、前記布部材が装着されるスリットを有する筒体と、前記筒体を前記排気口の内壁内に、前記排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有する構成とすることができる。
ここで、前記筒体は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることが好ましい。
また、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなり、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0027】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が前記筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が該排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有することが好ましい。
また、前記締結部材は、前記排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトであることが好ましい。なお、締結部材は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
ここで、前記締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0028】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記排気口に該排気口の内壁とは隙間を有して配置された前記筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が該排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有することが好ましい。
また、前記第2の締結部材は、セラミックボルトと、該セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなることが好ましい。なお、第2の締結部材は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1から構成することができる。
ここで、前記第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0029】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、前記筒体の外周面に巻き付けられて前記排気口に挿入された際に該筒体と該排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有してもよい。
ここで、前記充填部材は前記筒体の排ガス入口側及び前記筒体の排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けることができる。
そして、前記帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成することができる。
また、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質とすることができる。
【0030】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることが好ましい。
【0031】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は複合化無機繊維であって、該複合化無機繊維の外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなることが好ましい。
【0032】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることが好ましい。
また、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、
β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成することができる。
更に、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
そして、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成してもよい。
あるいは、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成することも可能である。
【0033】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成することができる。
また、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成することもできる。
更に、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成してもよい。
そして、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成することも可能である。
【0034】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、前記帯状布シートは、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維又は無機繊維で形成されていることが好ましい。
ここで、帯状布シートを形成する無機繊維又は複合化無機繊維は、布部材を形成する無機繊維又は複合化無機繊維と同一の構成とすることができる。
【発明の効果】
【0035】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法おいては、1又は複数の耐熱性の布部材を、加熱炉の排気口内に、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置するので、排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。これにより、排気ガスで布部材が効率的に加熱され、排気口内の温度を下げると共に排気ガスの温度を下げる。その結果、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口から外部に流出する熱を減少させることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる。また、加熱炉内の温度分布を均一にすることができる。
そして、排気口内に布部材を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もないため、既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。
【0036】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が複数設置され、しかも、複数の布部材が平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成している場合、複数の布部材を用いても排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。
【0037】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、集合体が、2枚の布部材で形成され、布部材間の交差角度が10°以上90°以下である場合、布部材の内側と外側をそれぞれ通過する排気ガスの流れを同一にすることができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、3枚以上の布部材で形成され、隣接する布部材間の各交差角度は等しく5°以上である場合、布部材間を排気ガスは一様に通過することができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0038】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が3枚以上あって、布部材は平面視して2点以上で交差して、排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成している場合、排気口内を通過する排気ガスの熱を効率的に利用することができる。
ここで、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の布部材を有している場合、排気口内を通過する排気ガスで3枚の布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差している場合、排気口内を通過する排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0039】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材の幅方向の両側端部が、排気口の内壁に当接している場合、排気ガスは必ず布部材に沿って通過するので、布部材の加熱を効率的に行うことができる。
【0040】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されている場合、また、布部材が、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されている場合、排気ガスが布部材を通過することができ、布部材をより効率的にかつ均一に加熱することができる。
更に、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成される場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。
ここで、織物が、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である場合、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を作製できる。
【0041】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、布部材が複合化無機繊維で構成され、複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、
Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造は、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である場合、布部材に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0042】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる
【0043】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0044】
第1の発明に係る加熱炉の熱効率改善方法において、(1)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(3)布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、加熱された際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、布部材が無機繊維で構成され、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、布部材を酸化雰囲気中で使用できる。
【0045】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置においては、排気口内に、1又は複数の耐熱性の布部材が、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置されるので、排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができ、排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉に入れて、排気口から外部に流出する熱を減少させることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる。
そして、排気口内に布部材を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もないため、既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。
【0046】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、布部材間の交差角度は10°以上90°以下である場合、複数の布部材を用いても排気ガスの通過を妨げることなく、しかも排気ガスとの接触を十分に行うことができる。
【0047】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する布部材間の各交差角度は等しく、5°以上である場合、布部材間を排気ガスは一様に通過することができ、布部材を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0048】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が3枚以上あって、布部材は平面視して2点以上で交差して、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成している場合、排気口内を通過する排気ガスの熱を効率的に利用することができる。
ここで、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の布部材を有している場合、排気口内を通過する排気ガスで3枚の布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
また、集合体が、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材は5°以上の交差角度で交差している場合、排気口内を通過する排気ガスで布部材を効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0049】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材の幅方向の両側端部が、排気口の内壁に当接している場合、排気ガスは必ず布部材の間を通過するので、布部材の加熱を効率的に行うことができる。
【0050】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製される場合、また、布部材が、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製される場合、布部材をより効率的にかつ均一に加熱することができる。
更に、布部材が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成される場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。
ここで、織物が、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である場合、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を得ることができる。
【0051】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、支持部材が、布部材が装着されるスリットを有する筒体と、筒体を排気口の内壁内に、排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有する場合、排気口内に布部材を、排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って容易に配置することができる。
【0052】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、筒体が、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなる場合、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
また、筒体が高耐熱性非酸化物からなり、筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、筒体を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0053】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有する場合、筒体を排気口内に簡便に取付けることができる。
ここで、締結部材が、排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトである場合、筒体の排気口内への取付け、取外しが容易になる。
そして、締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、締結部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0054】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、排気口に排気口の内壁とは隙間を有して配置された筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有する場合、排気口内に取付けた筒体の軸心方向を排気口の軸心方向に向くように容易に調整することができる。
ここで、第2の締結部材が、セラミックボルトと、セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなっている場合、セラミックナットによって筒体の位置決め及び締結を容易に行うことができる。
また、第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されている場合、加熱炉内で温度変動が発生しても、第2の締結部材を高温下で長期間に亘って安定して使用することができる。
【0055】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、固定手段が、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、筒体の外周面に巻き付けられて排気口に挿入された際に筒体と排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有する場合、排気口の内寸法に合った外寸法を有する筒体を使用する必要がなくなるので、熱効率改善装置を、既設の加熱炉の排気口に容易に設置することができる。
そして、充填部材が筒体の排ガス入口側と排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けられている場合、筒体の排気口内への固定力を高めることができる。
ここで、帯状布シートが、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成されている場合、帯状布シートに耐熱性無機接着剤を容易に練り込むことができると共に、帯状布シートを筒体の外周面に巻き付ける回数を変えることで充填部材の厚みを容易に調整できる。
また、耐熱性無機接着剤が、アルミナ質である場合、高温下で安定した接着強度を維持することができ、筒体を排気口内に充填部材を介して確実に固定することができる。
【0056】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されている場合、使用環境に応じて、布部材の寿命及びコストをそれぞれ調整することができる。
【0057】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が複合化無機繊維であって、複合化無機繊維の外殻構造が、Al、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、b、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値が、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さが、0.2μm以上10μm以下である場合、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
ここで、固溶体酸化物が、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなる場合、固溶体酸化物の耐熱性及び耐食性を高めることができる。
【0058】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0059】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、布部材が無機繊維であって、(1)無機繊維が、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)無機繊維が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(3)無機繊維が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
また、無機繊維が、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されている場合、布部材を高温の酸化雰囲気中で使用できる。
【0060】
第2の発明に係る加熱炉の熱効率改善装置において、帯状布シートが、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されている場合、使用環境に応じて、充填部材の寿命及びコストをそれぞれ調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図2】同熱効率改善装置の布部材で形成される集合体の説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、同熱効率改善装置の集合体の作製方法を示す説明図である。
【図4】同熱効率改善装置の円筒体の説明図である。
【図5】円筒体に集合体を取付けた状態の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図8】同熱効率改善装置の布部材で形成される集合体の説明図である。
【図9】(A)、(B)は、同熱効率改善装置の集合体の作製方法を示す説明図である。
【図10】同熱効率改善装置の円筒体の説明図である。
【図11】円筒体に集合体を取付けた状態の説明図である。
【図12】変形例に係る集合体に使用する布部材の説明図である。
【図13】変形例に係る集合体取付け方法の説明図である。
【図14】別の変形例に係る集合体取付け方法の説明図である。
【図15】実施例1の加熱炉の熱効率改善装置を取付ける電気炉の説明図である。
【図16】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置に使用する集合体の説明図である。
【図17】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置に使用する円筒体の説明図である。
【図18】実施例2の加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【図19】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置に使用する集合体の説明図である。
【図20】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置に使用する円筒体の説明図である。
【図21】実施例5の加熱炉の熱効率改善装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置(以下、単に熱効率改善装置という)10は、加熱炉の、例えば天井部11を垂直に貫通して設けられた断面円形の排気口12内に設置され、排気口12から外部に流出する熱を減少させる作用を有するものである。
【0063】
そして、熱効率改善装置10は、排気口12内に、排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、排気ガスによって加熱される2枚の耐熱性の布部材15、16と、布部材15、16が装着されるスリット23、24、25、26(図4参照)を有する耐熱性の円筒体13(支持部材を構成する筒体の一例)と、円筒体13の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が円筒体13に固定され、半径方向外側端部が排気口12の内壁に螺入して、円筒体13を排気口12の内壁内に、排気ガスの流れ沿って取付ける耐熱性の複数(図1では4本)の頭付きボルト14(支持部材を構成する固定手段としての締結部材の一部)とを有する。また、熱効率改善装置10は、排気口12に排気口12の内壁とは隙間を有して配置された円筒体13の排ガス出口側を貫通し、両端部が排気口12の内壁内に取付けられる1本の耐熱性のセラミックボルト17及びセラミックボルト17に螺合するセラミックナット18、19(支持部材を構成する固定手段に設けられた第2の締結部材の一例)を有する。以下、詳細に説明する。
【0064】
円筒体13は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)及び高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、円筒体13の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、円筒体13を高耐熱性非酸化物で形成することで、円筒体13の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した円筒体13は、高温下の酸化性雰囲気中では、円筒体13の表面が徐々に酸化するので、円筒体13の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、円筒体13の表面の酸化を防止する。これによって、円筒体13の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。
【0065】
セラミックからなる頭付きボルト14(セラミックボルト17及びセラミックナット18、19も同様)は、高耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は高耐熱性非酸化物(例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン)のいずれか1からなる。これによって、頭付きボルト14の高温下での変形や破損を防止して、長期間に亘って安定して使用することができる。加熱炉内で運転中に温度変動がある場合、頭付きボルト14を高耐熱性非酸化物で形成することで、頭付きボルト14の温度変化に伴う破損を更に防止できる。なお、高耐熱性非酸化物で形成した頭付きボルト14は、高温下の酸化性雰囲気中では、頭付きボルト14の表面が徐々に酸化するので、頭付きボルト14の表面には、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱酸化物のスラリーを塗布して被覆層を形成し、頭付きボルト14の表面の酸化を防止する。これによって、頭付きボルト14の高温特性(例えば、強度、熱衝撃抵抗)の低下を防いで、長期間に亘って安定して使用することができる。更に、円筒体13の排ガス出口側の側部の周方向の対向する位置には、円筒体13を貫通し、両端部が排気口12の内周面を押圧するセラミックボルト17が設けられているので、円筒体13の排気口12内への位置決めと固定を更に強化できる。なお、セラミックボルト17の円筒体13に対する固定は、セラミックボルト17の両端部からねじ込んだセラミックナット18、19で円筒体13を両側から押圧することにより行う。
【0066】
図2に示すように、布部材15、16は、平面視して1点(布部材15、16の幅方向の中央部)で交差して、布部材15、16間の交差角度が10°以上90°以下、ここでは90°となった放射状の集合体20を形成している。そして、集合体20は、その長手方向(布部材15、16の長手方向)を円筒体13の軸心方向に向けて円筒体13内に挿入されている。なお、集合体20が挿入された円筒体13を排気口12に取付けた場合、円筒体13の外側に突出している布部材15、16の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスは、布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるようになる。
【0067】
集合体20は、図3(A)に示すように、布部材15、16の幅方向中央部に、長手方向に沿って布部材15、16の長さLの半分の長さの切込み21、22をそれぞれ形成し、図3(B)に示すように、布部材15、16の切込み21、22が同軸上で対向すると共に布部材15、16が直交するように配置して、図3(C)に示すように、布部材15、16の切込み21、22を、他方の切込み22、21内に切込み21、22に沿って挿入して組合わせることにより形成する。そして、図4に示すように、円筒体13の基端(排ガス出口側端部)の周方向4等分位置に、それぞれ円筒体13の軸方向に沿って布部材15、16の長さLより長い長さSのスリット23、24、25、26を形成し、集合体20の布部材15、16の長手方向に沿った両側部がそれぞれスリット23〜26を挿通するように集合体20を円筒体13内に挿入する。これにより、図5に示すように、集合体20を、布部材15、16間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体13内に配置することができる。なお、図4において、符号27、28はセラミックボルト17が挿通する取付け孔、符号29、29a、30、30aは頭付きボルト14が挿通する取付け孔である。
【0068】
第1の実施の形態では、集合体20を布部材15、16で形成したが、3枚以上の布部材を、平面視して1点(布部材の幅方向の中央部)で交差させて、隣接する布部材間の各交差角度が等しくなるように集合体を形成してもよい。ここで、隣接する布部材間の各交差角度は、5°以上とする。交差角度を5°以上とすることで、排気ガスが布部材間を通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度の上限は、3枚の布部材を有する場合で、60°である。
【0069】
布部材15、16は、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布から形成された布材を裁断して作製される。ここで、織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1である。これにより、織物の種類を選択することで、目的に応じた最適な布部材を得ることができる。
なお、布部材を、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせた布材積層物から形成することもできる。
【0070】
布部材15、16は、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で構成されている布材を裁断して作製する。ここで、内殻構造は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物、(3)Si、C、及びOを含有する無機物質、(4)粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物、及び(5)β−SiCの微結晶からなる結晶質無機物質のいずれか1から構成されている(すなわち、内殻構造は、炭化ケイ素系素材で構成されている)。
【0071】
一方、外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、
Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成されている。そして、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である。これによって、複合化無機繊維に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。
【0072】
なお、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上からなる。これにより、固溶体酸化物(すなわち、外殻構造)の耐熱性及び耐食性が高まる。
【0073】
布部材15、16は、布部材15、16の素になる耐熱性の基材(耐熱性の無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して作製)を構成している無機繊維の外側に外殻構造を設けて、無機繊維を内殻構造と外殻構造を有する複合化無機繊維に変えることにより、作製することができる。ここで、無機繊維で構成された織物の厚みは0.2〜10mm、開口率は30%以下であり、無機繊維で構成された不織布の厚みは1〜10mm、体積空隙率は50〜97%である。以下、基材から布部材15、16を作製する方法について説明する。
【0074】
無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている。そして、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。したがって、無機繊維が(1)〜(3)の無機物質で構成されている場合、無機繊維は、複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となるので、この無機繊維の外側に外殻構造を設けて複合化無機繊維から構成される布部材は、布部材15、16と同一の特性を示す。
【0075】
布部材15、16の作製方法は、無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して基材を作製する第1工程と、基材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液中に浸漬し、次いで基材を陰極側にして50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を基材を構成する無機繊維の表面に付着させて処理基材を得る第2工程と、処理基材を分散溶液中から取り出し乾燥させて、水及び/又は有機溶媒を除去する第3工程と、乾燥した処理基材を、不活性ガス雰囲気中1300〜1700℃で、0.2〜2時間加熱処理して粉末を無機繊維に固着させ、無機繊維を内殻構造と外殻構造を持つ複合化無機繊維に変える第4工程とを有している。
【0076】
無機繊維で構成された織物又は不織布から形成された布材を裁断して、予め設定された寸法を有する正方形状又は長方形状の基材を作製する。ここで、基材を作製するのに使用した布材に、化学繊維(例えばレーヨン繊維)が含有される場合、あるいは布材にサイジング剤が施されている場合は、基材を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気)中で、800〜1200℃の温度で、0.5〜5時間加熱処理する。これによって、化学繊維を完全に分解除去、又は一部を分解除去し残部を炭化させることができ、サイジング剤を完全に除去できる。その結果、基材は、完全に無機物化する(以上、第1工程)。
【0077】
そして、完全に無機物化した基材を、材料Aの粉末が水中、有機溶媒中、あるいは水と有機溶媒の混合溶媒中に分散した分散溶液が貯留された浴槽中に浸漬する。ここで、有機溶媒は、例えば、アセトン、エタノール、又はノルマルヘプタンのいずれか1である。また、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、材料Aは、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる。なお、耐熱性及び耐食性の高い固溶体酸化物とする場合、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、更に第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとして、固溶体酸化物の組成を、一般式QE2Si2O7、
QESiO5、RE3Al5O12、及びREAlO3のいずれか1又は2以上とする。
【0078】
続いて、基材を陰極側にして、直流安定化電源から50〜150ボルトの直流電圧を2〜10分間印加して、電気泳動により、粉末を基材を構成する無機繊維の外側に付着させて処理基材を形成する。ここで、浴槽中には、例えば、C/Cコンポジット製のカソ−ド電極が距離を有して対向配置されており、基材はアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網に抱き合わされて(挟まれて)、カソ−ド電極間に配置される(以上、第2工程)。
【0079】
処理基材の形成が完了すると、処理基材を分散溶液中から取り出し、分散溶液の液切りを行った後、1〜4時間風乾して水及び/又は有機溶媒の大半を飛散除去する。次いで、大気雰囲気中、40〜80℃の温度で3〜10時間熱風乾燥して、残存する水及び/又は有機溶媒を完全に除去する(以上、第3工程)。
【0080】
乾燥が完了した処理基材を、アルゴンガス等の不活性ガス気流下、又は0.2〜1MPaの微圧力の不活性ガス雰囲気中で、1300〜1700℃の温度で0.2〜2時間加熱処理する。これによって、無機繊維の外側に付着している粉末が焼結して無機繊維に固着し、無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ複合化無機繊維に変わり(以上、第4工程)、布部材15、16が形成される。なお、外殻構造は、材料Aで形成され、内殻構造は、無機繊維を構成している無機物質で形成される。
【0081】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の熱効率改善方法について説明する。
加熱炉の熱効率改善装置10を加熱炉の排気口12内に設置することで、排気ガスは、加熱炉の熱効率改善装置10の円筒体13内及び円筒体13の外周面と排気口12の内周面との隙間を通過して外部に排出されることになる。ここで、円筒体13内には、布部材15、16が、平面視して1点で交差して放射状となった集合体20が、その長手方向(布部材15、16の長手方向)を円筒体13の軸心方向(排気ガスの流れ方向)に向けて挿入されている。また、円筒体13の外周面と排気口12の内周面との隙間には、円筒体13の外側に突出している布部材15、16の幅方向の両端部が、その長手方向を排気口12の軸心方向(円筒体13の軸心方向)に沿って配置され、しかも布部材15、16の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスを、確実に布部材15、16に沿って通過させることができる。
【0082】
これにより、排気ガスは、布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるようになり、排気ガスで布部材15、16を効率的に加熱され、加熱された布部材15、16によって、排気口12の入口端部(すなわち、加熱炉との境界)の温度を上昇させると共に、加熱された布部材15、16から放射される輻射熱を加熱炉内に入れて、排気口12から外部に流出する熱を減少させることができる。更に、排気口12内の温度を下げ、排気口12の出口から排出される排気ガスの温度を450〜550℃下げることができ、加熱炉の消費エネルギーを減少(燃料使用量を減少)することができる(なお、他の実施の形態においても同じ)。
そして、排気ガスが布部材15、16及び円筒体13の側部に沿って流れるので、排気口12内に円筒体13及び布部材15、16を設置しても排気ガスの通過が妨げられないため、加熱炉内の炉内ガスの流れを、排気口12内に布部材を設置しない場合と同一に保つことができると共に、炉内圧力の上昇の虞もなく、加熱炉の熱効率改善装置10を既存の加熱炉に対して容易に適用することができる。更に、加熱炉の熱効率改善装置10の排気口12への取付け、取外しは、円筒体13の排気口12への取付け、取外しを行うことによりできるので、加熱炉の熱効率改善装置10の保守管理が容易になる。
【0083】
ここで、集合体20を形成する布部材15、16間の交差角度が10°以上90°以下、例えば90°であるので、布部材15、16の内側と外側をそれぞれ通過する排気ガスの流れを同一にすることができ、布部材15、16を排気ガスの熱で効率的に加熱することができる。これにより、加熱された布部材15、16からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0084】
なお、集合体を、3枚以上の布部材で形成する場合は、布部材が平面視して2点以上で交差して、排気口12内を排気口12内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成する。例えば、集合体を、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材を備えた第1の布部材群と、第1の布部材群を構成する布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の布部材で構成することができる。また、集合体を、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材が5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差するように構成することもできる。これらの集合体でも、排気口内を通過する排気ガスで、集合体を形成する布部材を効率的に加熱することができ、加熱された布部材からの輻射熱を加熱炉内に効率的に入れることができる。
【0085】
布部材15、16が、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から、又は厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されているので、排気ガスは布部材15、16を通過(透過)することができ、布部材15、16をより効率的にかつ均一に加熱することができる。なお、布部材を、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成する場合、織物、不織布の枚数を変えることで、種々の厚みの布部材を容易に形成できる。ここで、織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1とすることで、目的(強度、剛性、弾力性、厚み、長さ、コスト等)に応じた最適な布部材15、16が作製できる。
【0086】
布部材15、16が複合化無機繊維で構成され、複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、
Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、
Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、外殻構造が、(1)第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)酸化物と複合酸化物、(5)酸化物と固溶体酸化物、(6)複合酸化物と固溶体酸化物、及び(7)酸化物と複合酸化物と固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下である場合、布部材に温度変動が生じても、外殻構造が内殻構造から剥離することを防止できる。その結果、複合化無機繊維が高温の酸化雰囲気中に存在しても、内殻構造が酸素と反応すること(内殻構造の酸化)を防止でき、内殻構造の材質変化に伴う特性の低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が抑制される。
【0087】
ここで、固溶体酸化物を、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、
及びREAlO3のいずれか1又は2以上から構成すると、固溶体酸化物の(すなわち、外殻構造の)耐熱性及び耐食性を高めることができるので、酸化に伴う内殻構造の材質変化を防止でき、複合化無機繊維の高温酸化雰囲気中での安定性を更に高めることができる。
【0088】
また、(1)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されている場合、(2)内殻構造が、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(3)内殻構造が、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されている場合、(4)内殻構造が、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されている場合、(5)内殻構造が、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されている場合、布部材15、16の比熱が小さくなって温度変動に容易に追従できると共に、高温になった際に輻射熱の反射効率を高めることができる。
【0089】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置31は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10と比較して、排気口12に挿入された円筒体32(支持部材を構成する筒体の一例)を排気口12の内壁内に取付ける固定手段(筒体と共に、支持部材を構成)として、更に、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、円筒体32の炉内側外周部(円筒体32の排ガス入口側外周部)に巻き付けられて排気口12内に挿入された際に円筒体32と排気口12との隙間を塞ぐ充填部材33を有することが特徴となっている。なお、加熱炉の熱効率改善装置31では、円筒体32の内側から円筒体32及び円筒体32の外側にある充填部材33をそれぞれ貫通し、その先部が排気口12の内周面に捩じ込まれる複数(第2の実施の形態では4本)の耐熱性の頭付きボルト34(固定手段である締結部材の一部)が設けられていることが特徴となっている。このため、充填部材33についてのみ説明し、加熱炉の熱効率改善装置10と同一の構成部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
また、第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置31を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法と同一なので、説明は省略する。
【0090】
円筒体32、頭付きボルト34には、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10で使用した円筒体13、頭付きボルト14とそれぞれ同様の構成とすることができる。
また、耐熱性の帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物(平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1)、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成される。そして、帯状布シートは、内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維(第1の実施の形態の加熱炉の熱効率改善装置10で使用している布部材15、16を形成している複合化無機繊維と同一の構成)で形成されている。なお、耐熱性無機接着剤は、アルミナ質である。
【0091】
ここで、帯状布シートへの耐熱性無機接着剤の練り込みは、例えば、帯状布シートの表裏両面にそれぞれ耐熱性無機接着剤を塗り付け、塗り付けた耐熱性無機接着剤をローラで加圧することにより行う。そして、充填部材33は、帯状布シートを円筒体32の外周面に巻き付けて形成するので、帯状布シートの巻き付け回数を変えることで、充填部材33の厚みを容易に調整でき、円筒体32の外周面から排気口12の内周面まで隙間の距離に対応した最適厚みにして排気口12内に挿入可能であって、しかも、円筒体32と排気口12の隙間を充填するのに十分な厚みの充填部材33を、簡便に円筒体32の外側に設けることができる。
【0092】
充填部材33を構成している帯状布シートには、連通した空孔が存在し、空孔内には未硬化の耐熱性無機接着剤が充填されている。そのため、外側に充填部材33が設けられた円筒体32を排気口12内に挿入する際、充填部材33を隙間の形状に合わせて容易に変形させることができ、円筒体32の外周面と排気口12の内周面との隙間を確実に充填することができる。そして、円筒体32が充填部材33を介して排気口12内に挿入された後、帯状布シートの空孔内に充填されている耐熱性無機接着剤が硬化すると、充填部材33を隙間の形状に合わせた形で固定することができ、隙間を安定して塞ぐことができる。更に、円筒体32が充填部材33を介して排気口12内に挿入された場合、耐熱性無機接着剤を介して、円筒体32と充填部材33及び充填部材33と排気口12の内周面とが接合され、円筒体32を排気口12内に強固に固定することができる。ここで、円筒体32の先側(排ガス入口側)の側部には複数のセラミックからなる頭付きボルト34が設けられているので、頭付きボルト4の先端部で排気口12の内周面を押圧することで、円筒体32の排気口12内への固定を更に強化できる。
なお、充填部材は、円筒体32の炉外側外周部(円筒体32の排ガス出口側外周部)に設けても、円筒体32の炉内側外周部及び炉外側外周部にそれぞれ設けてもよい。
【0093】
図7に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置35は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10と比較して、円筒体36の形状と円筒体36内に配置される集合体37の形状がそれぞれ異なっていることが特徴となっている。
このため、円筒体36及び集合体37についてのみ説明し、加熱炉の熱効率改善装置10と同一の構成部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
また、第3の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置35を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10を用いた加熱炉の輻射熱反射兼熱遮蔽方法と同一なので、説明は省略する。
【0094】
図8に示すように、集合体37は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材38、39を備えた第1の布部材群40と、第1の布部材群40を構成する布部材38、39に90°の交差角度で交差する1枚の布部材41を有している。なお、布部材38、39、41は、第1の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10で使用した布部材15、16と同様の構成とすることができる。
【0095】
ここで、集合体37の形成は、以下のようにして行った。先ず、図9(A)に示すように、布部材41の幅方向の長さを3等分する部位に、長手方向に沿って布部材41の長さLの半分の長さの切込み42、43をそれぞれ形成する。一方、布部材38、39には、布部材38、39の幅方向中央部に、長手方向に沿って布部材38、39の長さLの半分の長さの切込み44、45をそれぞれ形成する。次いで、布部材41の切込み42と布部材38の切込み44が同軸上で対向し、布部材41の切込み43と布部材39の切込み45が同軸上で対向すると共に布部材41に対して布部材38、39がそれぞれ直交するように配置する。そして、図9(B)に示すように、布部材41の切込み42と布部材38の切込み44を互いに切込み42、44に沿って挿入して組合わせ、布部材41の切込み43と布部材39の切込み45を互いに切込み43、45に沿って挿入して組合わせる。
【0096】
図10に示すように、円筒体36の基端(排ガス出口側端部)において、円筒体36の中心を通る直線と基端との交差部をF、Gとし、交差部F、Gを結ぶ線分に直交し、円筒体36の中心を間にして布部材41の幅長さの1/3の長さの距離の間隔を有して配置される直線と基端とのそれぞれの交差部をH、I、J、Kとし、F、G、H、I、J、Kの位置に、それぞれ円筒体36の軸方向に沿って布部材38、39、41の長さLより長い長さRのスリット46、47、48、49、50、51を形成し、集合体37の布部材38、39、41の長手方向に沿った両側部がそれぞれスリット46〜51を挿通するように集合体37を円筒体36内に挿入する。これにより、図11に示すように、平行に配置された布部材38、39が布部材41に平面視して異なる2点で直交した状態となって円筒体36内に配置することができる。その結果、円筒体36内は、集合体37により、円筒体36内を通過する(排気口12内を通過する)排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割される。
【0097】
なお、図10、図11において、符号52、53はセラミックボルト17が挿通する取付け孔、符号54、55、56、57は頭付きボルト14が挿通する取付け孔である。
また、集合体37が挿入された円筒体36を排気口12に取付けた場合、円筒体36の外側に突出している布部材38、39、41の幅方向の両側端部は、排気口12の内壁に当接している。これにより、排気ガスは、布部材38、39、41及び円筒体36の側部に沿って流れるようになる。
【0098】
第3の実施の形態では、集合体37を、布部材41に対して、平行配置された布部材38、39が、直交するように形成したが、1枚の布部材に対して、平行配置された2枚の布部材が、5°以上90°未満の角度で交差するように配置してもよい。更に、4枚以上の布部材を使用する場合は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の布部材を備えた第2の布部材群を有し、第1の布部材群の布部材と第2の布部材群の布部材が5°以上の交差角度で交差するように集合体を形成してもよい。布部材間の交差角度を5°以上とすることで、布部材の交差部の近傍を排気ガスが通過する際の抵抗を小さくでき、排気ガスの流れを阻害しないようにできる。なお、交差角度が90°を超えた集合体は、平面視して、交差角度が90°未満の集合体と線対称の関係にあるため、交差角度の上限は90°である。
【0099】
なお、布部材及び充填部材を構成している帯状布シートは、耐熱性の無機繊維で形成された織物や不織布から形成された布材を裁断して、作製することもできる。ここで、耐熱性の無機繊維は、(1)Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質(無機物質1)、(2)Si、C、及びOを含有する無機物質(無機物質2)、(3)β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質(無機物質3)、あるいは(4)Al、Si、及びOからなる非晶質の無機物質(無機物質4)で構成されている。なお、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質1には、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2とし、更にその炭化物をM2Cとして、β−SiC、M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。また、Si、C、及びOを含有する無機物質2には、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物が含まれる。
【0100】
無機繊維が無機物質1〜無機物質3のいずれかで構成されている場合、無機繊維は、複合化無機繊維の内殻構造と同一の組成(炭化ケイ素系素材)となるので、この無機繊維から構成された布部材も、第1、第2の実施の形態に係る加熱炉の熱効率改善装置10、31の布部材15、16と同様の作用を有する。なお、無機繊維は炭化ケイ素系素材であるため、高温の酸化雰囲気中では徐々に酸化して材質が変化し、特性低下(例えば、強度低下、熱放射率の低下等)が生じる。このため、加熱炉の熱効率改善装置を設置する加熱炉内の雰囲気が低酸化性の場合は、無機繊維の酸化速度は遅いので、加熱炉の熱効率改善装置の布部材は、長期間に亘って破損することなく、高い輻射熱の反射効率を維持することができる。また、バッチ式の加熱炉等のように、頻繁な布部材の状況確認及びメンテナンスが可能な場合は、炉内雰囲気が酸化性であっても、その交換を前提に布部材を使用することができる。
【0101】
また、無機繊維が、無機物質4で構成されている場合、複合化無機繊維の内殻構造及び無機物質1〜無機物質3で構成された無機繊維と比較して、比熱が大きく、熱放射率が小さくなる。このため、複合化無機繊維、又は無機物質1〜無機物質3で構成された無機繊維で形成した布部材と比較して、無機物質4で構成された無機繊維で形成した布部材の作用は低下する。更に、無機物質4で構成された無機繊維では、高温下において酸化性雰囲気、非酸化性雰囲気を問わず、非晶質の結晶化が進行するため(粒成長が生じるため)無機繊維が脆くなる。従って、布部材を形成している無機繊維が、無機物質4で構成されている場合、布部材を長期間に亘って使用することができない。
【0102】
第1〜第3の実施の形態では、布部材で集合体を形成する場合、布部材に切込みを設け、切込み同士が互いに挿入するように布部材を組合わせたが、切込みを形成した枠体に布部材を取付け、布部材が取付けられた枠体同士を組合わせて集合体を形成してもよい。布部材を枠体に取付けることで、布部材の変形を防止することができ、布部材を排気口(円筒体)内に安定して設置することができる。
【0103】
例えば、2枚の布部材を枠体に取付け、平面視して枠体の幅方向の中央部で互いに直交する集合体を形成する場合、図12に示すように、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み58を形成した布部材59と、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み60を形成した布部材61をそれぞれ準備する。また、図13に示すように、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなり、幅方向中央部に縦桟62、63をそれぞれ有し布部材59、61の取付けが可能な寸法の枠体64、65と、布部材59、61が取付けられた枠体64、65の縦桟62、63の両側部にそれぞれ取付けられて布部材59、61を枠体64、65と共に挟持する4つの小枠体66、67、68、69を準備する。なお、縦桟62には、長手方向一端(上端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み70が形成され、縦桟63には、長手方向他端(下端)の幅方向中央部から長手方向に沿って長さの半分の長さの切込み71が形成されている。
【0104】
次いで、枠体64に布部材59を切込み58、70同士の位置が一致するように載置し、布部材59の上に小枠体66、67が縦桟62の両側部に配置されるように載置して、布部材59を枠体64と小枠体66、67で挟持する。同様に、枠体65に布部材61を切込み60、71同士の位置が一致するように載置し、布部材61の上に小枠体68、69が縦桟63の両側部に配置されるように載置して、布部材61を枠体65と小枠体68、69で挟持する。続いて、小枠体66〜69の四隅に設けられた各取付け孔72から、耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)のピン(図示せず)を差し込み先部を枠体64、65に予め形成されている各取付け孔73に挿入し、耐熱性の無機接着剤(例えばアルミナ質)で固定する。そして、枠体64の縦桟62に形成した切込み70に枠体65の縦桟63に形成した切込み71を挿入することにより、集合体が形成される。
なお、ピンの代わりに耐熱性酸化物(例えばアルミナ)又は耐熱性非酸化物(例えば窒化ケイ素)からなるボルトを使用してもよい。
【0105】
第1〜第3の実施の形態では、集合体を排気口内に設置する場合、円筒体を排気口の内壁との間に隙間を設けて挿入したが、排気口の内壁に当接させて挿入してもよい。
また、第1〜第3の実施の形態では、集合体を排気口内に設置する場合1個の円筒体を使用したが、図14に示すように、例えば、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材74、75を備えた第1の布部材群76と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の布部材77、78を備えた第2の布部材群79を、第1の布部材群76の布部材74、75と第2の布部材群79の布部材77、78を90°の交差角度で交差させて形成した集合体80を排気口81内に設置する場合、同心に配置した2個の円筒体82、83を使用してもよい。二重円筒体とすることで、集合体80をより安定して排気口81内に設置することができる。更に、排気口の内径が大きい場合、3個以上の円筒体を同心に配置した多重円筒体を使用することもできる。
なお、排気口の断面形状を円形として、筒体に円筒体を用いたが、排気口の断面形状が四角形の場合は、筒体に角筒体を使用する。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維径が11μm、繊維目付が240g/m2、体積空隙率が95%、化学繊維の一例であるレ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、厚さが5mm、長さが10mのロール巻き)を裁断して、縦500mm、横500mmの基材を作製した。そして、基材を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、基材(不織布)に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、基材に施されているサイジング剤(有機物)の除去を行った(以上、第1工程)。
【0107】
続いて、熱処理された基材をアノ−ド電極となる2枚のステンレス製金網で抱き合わせ、第1群から選択されたSi、Zrの元素からなる固溶体酸化物であるジルコン(ジルコニウムモノシリケートともいう、ZrSiO4)の粉末がエタノ−ルと水の混合溶媒中に均一分散した分散溶液を貯留している浴槽中に距離を設けて対向配置したC/Cコンポジット製の2枚のカソ−ド電極の間に配置した。そして、直流安定化電源より120Vの直流電圧を5分間印加して、基材を形成している不織布を構成する無機繊維の外側にジルコンの粉末を電気泳動により付着させた(第2工程)。
【0108】
次いで、基材を分散溶液中から取り出し、液切り、2時間の風乾、大気雰囲気中40℃で6時間の熱風乾燥を行った(第3工程)後、アルゴンガス雰囲気中0.5MPaの微加圧下において、1500℃で0.5時間熱処理を行って、無機繊維の外側に付着させたジルコン粉末を焼結させて無機繊維に固着させることにより、無機繊維を内殻構造(Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で構成されている)と外殻構造(厚さ2μmのジルコン)を持つ複合化無機繊維に変えて(第4工程)、縦500mm、厚さ5mmの複合化無機繊維かで構成された不織布を作製した。
【0109】
複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を2枚切出した。そして、2枚の布部材を用いて、図3(A)、(B)、(C)の手順に従って、2枚の布部材を、平面視して1点(各布部材の幅方向の中央部)で互いに交差させて、図2に示すように、布部材間の交差角度が90°となった放射状の集合体を形成した。次いで、図4に示すように、円筒体の基端の周方向4等分位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿って形成したスリット内に、集合体を構成している布部材の長手方向に沿った両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体13内に挿入した。これにより、図5に示すように、集合体を、布部材間の交差角度を90°に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト、アルミナ製の頭付きボルトをセットして、加熱炉の熱効率改善装置を作製した。
【0110】
図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された内径60mmの排気口の入口側(炉内側)より、加熱炉の熱効率改善装置の円筒体を基側(排ガス出口側)から挿入し、円筒体の先側(排ガス入口側)の側部の周方向に4等分する位置(周方向0°、90°、180°及び270°位置)に対向する排気口の内周面に予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通するアルミナ製の頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。そして、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置する。以上によって、図1に示すように、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0111】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置により輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を確認するため、電気炉を常時1300℃に保持(電気炉中央部の温度で制御)し、電気炉の炉床中央部に形成した空気送入口より1リットル/分の流量で空気を300時間電気炉内に流通させ、そのときの電気炉の消費電力W1の削減率を調べた。ここで、消費電力W1の削減率は、電気炉の排気口内に熱効率改善装置を設置しない状態で、炉床中央部の空気送入口より1リットル/分の流量で空気を電気炉内に流通させながら、電気炉を常時1300℃一定に保持する際に必要な消費電力量をW0とした場合、100×(W0−W1)/W0により求めた。
【0112】
また、電気炉の排気口に取付けた熱効率改善装置の布部材の先端面(炉内側表面)に取付けた熱電対で測定した熱効率改善装置の先端部温度(布部材下温度)と、熱効率改善装置の布部材の基端面(炉外側表面)に取付けた熱電対で測定した熱効率改善装置の基端部温度(布部材上温度)との差から、熱効率改善装置による熱遮蔽効果を調べた。なお、1300℃で300時間試験した後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、布部材を回収して、布部材を構成する複合化無機繊維の高温酸化による劣化の有無を観察した。
【0113】
熱効率改善装置を設置する場合は、設置しない場合に比べ消費電力削減率は32%の高い値を示し、この削減率は300時間中変わることなく一定で、布部材で形成した集合体が優れた輻射熱放射作用を有することが確認でき、電気炉運転の省エネルギ−に大きく寄与すること、結果的にはCO2の発生低減に大きく寄与することが示唆された。また、熱効率改善装置の上下で850℃の温度差が発生しており、この温度差は300時間に亘って常時一定であった。このことから、布部材が優れた熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。
【0114】
なお、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したところ、高温酸化による複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められず、この布部材が1300℃の高温でも、長期に亘って一定した性能を保持し得るものであることが確認できた。
【0115】
同様の方法で別の熱効率改善装置を作製し、同一の電気炉の排気口内に設置して、電気炉を900℃、300℃にそれぞれ保持した際の電気炉の消費電力の削減率及び集合体(布部材)の上下の温度差を求めた。その結果、電気炉を900℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は28%、温度差は430℃、電気炉を300℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は25%、温度差は150℃であった。これらのことから、300℃のような輻射熱の寄与が顕著でない温度域、900℃のような輻射熱の寄与が現れ始める温度域においても、布部材で形成した集合体は輻射熱放射作用を有し、布部材は熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。また、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したが、複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められなかった。
【0116】
(実施例2)
実施例1で作製した複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を2枚切出し、実施例1と同様の手順で、図16に示すように、布部材間の最小の交差角度が45°となった放射状の集合体を形成した。また、図17に示すように、円筒体の基端の周方向に0°、45°、180°、及び225°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に沿って4等分する位置にアルミナ製の頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にアルミナ製のセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、集合体を構成している布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体内に挿入した。これにより、図18に示すように、集合体を、布部材間の最小交差角度を45°(したがって、布部材間の最大交差角度は135°)に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0117】
次いで、実施例1で使用した電気炉の排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向する排気口の内周面に予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通するアルミナ製ボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。そして、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置する。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0118】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
熱効率改善装置を設置した場合、設置しない場合に比べ消費電力削減率は37%の値を示し、熱効率改善装置(布部材)の上下での温度差は880℃であり、この削減率、温度差ともに300時間一定であることから、布部材間の最小交差角度を45°とした集合体は、布部材間の交差角度を90°とした実施例1の集合体に比べて、更に優れた輻射熱放射作用並びに熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)、すなわち、更に優れた省エネルギー効果、CO2削減効果を有することが確認できた。なお、当然のことながら、この集合体を形成している布材の1300℃での耐久性(長期安定性)も確認された。
【0119】
(実施例3)
Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された不織布(繊維径が11μm、繊維目付が240g/m2、体積空隙率が95%、レ−ヨン繊維を20質量%含有し、幅が500mm、厚さが5mm、長さが10mのロール巻き)を裁断して、縦500mm、横500mmの基材を作製した。そして、基材を熱処理炉内にセットし、アルゴンガス雰囲気中、800℃で1時間熱処理して、基材(不織布)に含有されているレ−ヨン繊維の一部を分解除去して残部を炭化させると共に、基材に施されているサイジング剤の除去を行った。次に、熱処理して得られた基材から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの不織布試験片を2枚切り出した。また、Si、C、O、及びZrを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が260g/m2、開口率が29%、幅が400mm、厚さが0.25mm、長さが10mのロール巻)を裁断して、幅が60mm、横130mm、厚さが0.25mmの平織物試験片を4枚切り出した。
【0120】
次いで、1枚の不織布試験片の両側をそれぞれ1枚の平織物試験片で覆って、布材積層物を2個作製した。布材積層物を形成することで、例えば、実施例1で使用した不織布で構成された布部材の集合体を工業加熱炉で使用する場合、加熱炉内取付け時や加熱炉での大流量排気ガス発生時に、不織布からの短繊維脱落、それに伴う短繊維の加熱炉内浮遊、及び不織布毛羽立ちによる不織布の損傷等の不具合を回避することができる。
そして、2個の布材積層物を用いて、実施例1に示した手順にしたがって、2個の布材積層物が交差角度90°で交差した集合体を作製し、この集合体を、実施例1と同様に円筒体に挿入し、セラミックボルト及び頭付きボルトをセットして熱効率改善装置を組み立て、電気炉の排気口に取付けた。
【0121】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。その結果、布材積層物で形成した集合体を挿入しても、150時間までは消費電力削減率は30%で実施例1とほぼ同等の値を示し、布材積層物で形成した集合体が優れた輻射熱放射作用を有することが確認できた。また、集合体(布材積層物)の上下の温度差は850℃で、実施例1と同等の熱遮蔽作用を示した。更に、不織布で構成された布部材で形成された集合体を工業加熱炉で実使用に供する際に、不織布からの短繊維脱落、それに伴う短繊維の加熱炉内浮遊、及び不織布毛羽立ちによる不織布の損傷等の問題がある場合、不織布の布材と平織物の布材を組合わせた布材積層物で形成された集合体を採用することで、問題発生を回避できることが確認できた。
【0122】
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、集合体を形成している布材積層物を回収した。そして、布材積層物を形成している不織布及び平織物のそれぞれの無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、この集合体を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0123】
(実施例4)
Si、C、及びOを含有する無機物質で形成された無機繊維で構成された平織物(繊維目付が289g/m2、幅が500mm、厚さ0.33mm、長さが5mのロール巻)から、たて60mm、横130mm、厚さ0.33mmの布部材1枚を切り出した。また、円筒体の基端の周方向に0°及び180°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように布部材を円筒体内に挿入した。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0124】
次いで、図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向して予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通する頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。更に、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置した。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0125】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
その結果、150時間までは消費電力削減率は10%を示し、1枚の平織物からなる布部材を使用しても、輻射熱放射作用(輻射熱反射特性)を有することが確認できた。また、布部材の上下の温度差は380℃で、熱遮蔽作用も有することが分かった。
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、布部材を回収した。そして、布部材を形成している平織物の無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で既に無機繊維が著しく損傷を受けて劣化していることが認められた。したがって、この布部材を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用する必要がある。
【0126】
(実施例5)
Al、Si、及びOを含有する非晶質無機物質(Al2O3換算相当分が約30%、SiO2換算相当分が約70%)で構成された無機繊維(Al−Si−O系無機繊維)で形成された不織布(縦500mm、横500mm、厚さ5mm、体積空隙率80%)を裁断して、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を3枚作製した。
得られた布部材3枚を用いて、実施例1と同様の手順で、図19に示すように、布部材間の交差角度が60°となった放射状の集合体を形成した。また、図20に示すように、円筒体の基端の周方向に0°、60°、120°、180°、240°、及び300°の位置に、それぞれ円筒体の軸方向に沿ってスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)を形成すると共に、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に頭付きボルト用の取付け孔を、円筒体の基側の側部の対向する位置にセラミックボルトが挿通する取付け孔をそれそれ形成した。そして、円筒体に形成した各スリット内に、集合体を構成している布部材の幅方向の両側部がそれぞれ挿通するように集合体を円筒体内に挿入した。これにより、図21に示すように、集合体を、布部材間の交差角度を60°に維持した状態で、円筒体内に配置することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。
【0127】
次いで、図15に示す電気炉の天井部の中央に形成された排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、円筒体の先側の側部の周方向に4等分する位置に対向して予め作製しておいたボルト孔に円筒体の内側から貫通する頭付きボルトの先側をねじ込んだ。また、円筒体の基側の側部に一側から対向する他側に向けて貫通するようにセラミックボルトを取付け、セラミックボルトの両端部をそれぞれ排気口の内周面に当接させた。更に、円筒体の外側に突出している布部材の幅方向の両端部が排気口の内周面に当接するように排気口の長手方向に沿って配置した。以上によって、電気炉の排気口内への熱効率改善装置の取付けが完了する。
【0128】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。
その結果、熱効率改善装置を排気口に取付けることにより、150時間までは消費電力削減率は13%を示し、実施例1〜3の結果と比較して消費電力削減率は相対的に劣るものの、輻射熱放射作用を有することが確認できた。また、集合体(布部材)の上下の温度差は530℃で、集合体が高い熱遮蔽効果をもつことが分かった。
一方、150時間経過後、熱効率改善装置を電気炉の排気口から取外し、集合体を形成している布部材を回収した。そして、布部材を形成している不織布の無機繊維の状態を、走査型電子顕微鏡で調査した。その結果、1300℃の温度下で150時間を経過した時点で、無機繊維中には高温による結晶粒子が出現し、粒成長が生じているため、無機繊維が著しく劣化して脆くなっていることが確認された。したがって、この集合体を1300℃の温度で実用に供するためには、比較的短期間で取替えながら使用することが不可欠である。
【0129】
(実施例6)
実施例1で作製した複合化無機繊維で構成された不織布から、縦60mm、横130mm、厚さ5mmの布部材を3枚切出し、図9(A)、(B)に示す手順に従って、図11の平面図に示すように、平面視して1枚の布部材に、2枚の布部材が、1枚の布部材の幅方向を3等分する2点でそれぞれ直交するように配置して集合体を形成した。次いで、図10に示すように、円筒体の基端から円筒体の軸方向に沿って形成したスリット(スリットの長さは、布部材の横寸法130mmより長い)内に、集合体を形成している布部材の長手方向に沿った両端部がそれぞれ挿通するように集合体を挿入した。これにより、円筒体内を、図11に示すように、円筒体内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割することができる。そして、円筒体の基側及び先側にそれぞれセラミックボルト及び頭付きボルトをセットして、熱効率改善装置を作製した。次いで、実施例1で使用した電気炉の排気口の入口側より、熱効率改善装置の円筒体を基側から挿入し、実施例1と同様の方法で熱効率改善装置を排気口内に取付けた。
【0130】
続いて、電気炉の排気口内に設置した熱効率改善装置による輻射熱放射作用、輻射熱放射作用の持続性、及び熱効率改善装置の耐久性を、実施例1と同様に実施して確認した。電気炉を1000℃に保持した際の電気炉の消費電力の削減率及び集合体(布部材)の上下の温度差を求めた。その結果、電気炉を1000℃に保持した場合の電気炉の消費電力の削減率は30%、温度差は510℃であり、この削減率、温度差共に、300時間変わることなく一定で、布部材で形成した集合体は輻射熱放射作用を有し、布部材は熱遮蔽作用(熱遮蔽特性)を持つことが確認できた。また、試験後に回収した布部材を構成している複合化無機繊維を走査型電子顕微鏡で観察したが、複合化無機繊維の劣化、表面微細構造の変化は全く認められなかった。
【0131】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
また、排気口内に設置する布部材(集合体)の幅は、排気口の内寸法に合わせて決定すればよいが、布部材(集合体)の長さは、加熱炉の排気口の構造、加熱炉内の温度、及び排気口内を通過する排ガス流量によって適宜決定する必要があるが、例えば、排気口の断面が円形の場合、排気口の内径をDとすると、布部材(集合体)の長さXは、0.05D〜5D、好ましくは、0.1D〜4Dとなる。
【符号の説明】
【0132】
10:加熱炉の熱効率改善装置、11:天井部、12:排気口、13:円筒体、14:頭付きボルト、15、16:布部材、17:セラミックボルト、18、19:セラミックナット、20:集合体、21、22:切込み、23、24、25、26:スリット、27、28、29、29a、30、30a:取付け孔、31:加熱炉、32:円筒体、33:充填部材、34:セラミックボルト、35:加熱炉、36:円筒体、37:集合体、38、39:布部材、40:第1の布部材群、41:布部材、42、43、44、45:切込み、46、47、48、49、50、51:スリット、52、53、54、55、56、57:取付け孔、58:切込み、59:布部材、60:切込み、61:布部材、62、63:縦桟、64、65:枠体、66、67、68、69:小枠体、70、71:切込み、72、73:取付け孔、74、75:布部材、76:第1の布部材群、77、78:布部材、79:第2の布部材群、80:集合体、81:排気口、82、83:円筒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の耐熱性の布部材を、支持部材を介して加熱炉の排気口内に該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置し、該排気口を通過する排気ガスで前記布部材を加熱し、加熱された前記布部材からの輻射熱を該加熱炉内に入れて、該排気口から外部に流出する熱を減少させることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項2】
請求項1記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複数設置され、しかも、該複数の布部材は平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項3】
請求項2記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、2枚の前記布部材で形成され、該布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項4】
請求項2記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、3枚以上の前記布部材で形成され、隣接する該布部材間の各交差角度は等しく5°以上であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項5】
請求項1記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項6】
請求項5記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項7】
請求項5記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成することを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項12】
請求項9又は11記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項13】
請求項1〜12記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複合化無機繊維で構成され、該複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項14】
請求項13記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、
Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項16】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、
M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項17】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項18】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項19】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項24】
加熱炉の排気口内に設置し、該排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置であって、
前記排気口内に、該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、該排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材と、
前記布部材を前記排気口に固定する支持部材とを有し、
加熱された前記布部材からの輻射熱を前記加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項25】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、前記布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項26】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する前記布部材間の各交差角度は等しく、5°以上であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項27】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項28】
請求項27記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項29】
請求項27記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上の交差角度で交差していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項32】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項33】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項34】
請求項31又は33記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項35】
請求項24〜34のいずれか1記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記支持部材は、前記布部材が装着されるスリットを有する筒体と、前記筒体を前記排気口の内壁内に、前記排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項36】
請求項35記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記筒体は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項37】
請求項36記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなり、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項38】
請求項36又は37に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が前記筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が該排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項39】
請求項38記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記締結部材は、前記排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトであることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項40】
請求項38又は39記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項41】
請求項35〜40のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記排気口に該排気口の内壁とは隙間を有して配置された前記筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が該排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項42】
請求項41記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記第2の締結部材は、セラミックボルトと、該セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項43】
請求項41記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項44】
請求項35〜43のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、前記筒体の外周面に巻き付けられて前記排気口に挿入された際に該筒体と該排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項45】
請求項44記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記充填部材は前記筒体の排ガス入口側及び前記筒体の排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けられていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項46】
請求項44又は45記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項47】
請求項44〜46のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項48】
請求項24〜47のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項49】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は複合化無機繊維であって、該複合化無機繊維の外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項50】
請求項49記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項51】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項52】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、
M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項53】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項54】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項55】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項56】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項57】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項58】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項59】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項60】
請求項44〜47のいずれか1項に記載の加熱炉において、前記帯状布シートは、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項1】
1又は複数の耐熱性の布部材を、支持部材を介して加熱炉の排気口内に該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って設置し、該排気口を通過する排気ガスで前記布部材を加熱し、加熱された前記布部材からの輻射熱を該加熱炉内に入れて、該排気口から外部に流出する熱を減少させることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項2】
請求項1記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複数設置され、しかも、該複数の布部材は平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項3】
請求項2記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、2枚の前記布部材で形成され、該布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項4】
請求項2記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、3枚以上の前記布部材で形成され、隣接する該布部材間の各交差角度は等しく5°以上であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項5】
請求項1記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項6】
請求項5記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項7】
請求項5記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上90°未満又は90°の交差角度で交差していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成することを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項12】
請求項9又は11記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項13】
請求項1〜12記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は複合化無機繊維で構成され、該複合化無機繊維は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造を有し、
Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、
Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、
前記外殻構造は、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項14】
請求項13記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、
Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項16】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、
M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項17】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項18】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項19】
請求項13又は14記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善方法において、前記布部材は無機繊維で構成され、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善方法。
【請求項24】
加熱炉の排気口内に設置し、該排気口から外部に流出する熱を減少させる加熱炉の熱効率改善装置であって、
前記排気口内に、該排気口内を通過する排気ガスの流れに沿って配置され、該排気ガスによって加熱される1又は複数の耐熱性の布部材と、
前記布部材を前記排気口に固定する支持部材とを有し、
加熱された前記布部材からの輻射熱を前記加熱炉に入れて、外部に流出する熱を減少させることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項25】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は2枚あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、前記布部材間の交差角度は10°以上90°以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項26】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は3枚以上あって、平面視して1点で交差して放射状の集合体を形成し、隣接する前記布部材間の各交差角度は等しく、5°以上であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項27】
請求項24記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材が3枚以上あって、該布部材は平面視して2点以上で交差して、前記排気口内を通過する排気ガスの流れに沿った複数の分岐路に分割する集合体を形成していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項28】
請求項27記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚の前記布部材を備えた第1の布部材群と、該第1の布部材群を構成する前記布部材に5°以上の交差角度で交差する1枚の前記布部材を有していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項29】
請求項27記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記集合体は、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第1の布部材群と、5mm以上の間隔を有して平行配置された2枚以上の前記布部材を備えた第2の布部材群を有し、前記第1の布部材群の前記布部材と前記第2の布部材群の前記布部材は5°以上の交差角度で交差していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材の幅方向の両側端部は、前記排気口の内壁に当接していることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物から作製されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項32】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布から作製されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項33】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、厚みが0.2mm以上10mm以下、開口率が30%以下の織物及び厚みが1mm以上10mm以下、体積空隙率が50%以上97%以下の不織布のいずれか一方又は双方を重ね合わせて作製された布材積層物から形成されることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項34】
請求項31又は33記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記織物は、平織、繻子織、綾織、三次元織、及び多軸織のいずれか1であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項35】
請求項24〜34のいずれか1記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記支持部材は、前記布部材が装着されるスリットを有する筒体と、前記筒体を前記排気口の内壁内に、前記排気ガスの流れ沿って取付ける固定手段とを有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項36】
請求項35記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記筒体は、高耐熱性酸化物及び高耐熱性非酸化物のいずれか1からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項37】
請求項36記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記筒体が高耐熱性非酸化物からなり、該筒体の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項38】
請求項36又は37に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記筒体の排ガス入口側にあって、半径方向内側端部が前記筒体に当接又は固定され、半径方向外側端部が該排気口の内壁内に固定される1又は複数の耐熱性の締結部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項39】
請求項38記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記締結部材は、前記排気口の内壁に先部が螺入する頭付きボルトであることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項40】
請求項38又は39記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項41】
請求項35〜40のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、前記排気口に該排気口の内壁とは隙間を有して配置された前記筒体の排ガス出口側を貫通し、両端部が該排気口の内壁内に取付けられる1又は複数の耐熱性の第2の締結部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項42】
請求項41記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記第2の締結部材は、セラミックボルトと、該セラミックボルトに螺合するセラミックナットからなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項43】
請求項41記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記第2の締結部材が高耐熱性非酸化物からなって、該第2の締結部材の表面には耐熱酸化物の被覆層が形成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項44】
請求項35〜43のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固定手段は、耐熱性の帯状布シートに耐熱性無機接着剤を練り込んで作製され、前記筒体の外周面に巻き付けられて前記排気口に挿入された際に該筒体と該排気口との隙間を塞ぐ充填部材を有することを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項45】
請求項44記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記充填部材は前記筒体の排ガス入口側及び前記筒体の排ガス出口側のいずれか一方又は両側に設けられていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項46】
請求項44又は45記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記帯状布シートは、厚みが0.2〜10mm、開口率が30%以下である織物、又は厚みが1〜10mm、体積空隙率が50〜97%である不織布で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項47】
請求項44〜46のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記耐熱性無機接着剤は、アルミナ質であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項48】
請求項24〜47のいずれか1項に記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【請求項49】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は複合化無機繊維であって、該複合化無機繊維の外殻構造は、Al、Ti、Cr、Fe、Si、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、Re、及びOsの各元素を第1群として、(1)前記第1群から選択された1の元素の酸化物、(2)前記第1群から選択された2以上の元素からなる複合酸化物、(3)前記第1群から選択された2以上の元素の固溶体酸化物、(4)前記酸化物と前記複合酸化物、(5)前記酸化物と前記固溶体酸化物、(6)前記複合酸化物と前記固溶体酸化物、及び(7)前記酸化物と前記複合酸化物と前記固溶体酸化物のいずれか1からなる材料Aで構成され、
前記外殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値は、前記内殻構造を形成する無機物質の熱膨張係数の値の±10%の範囲内にあり、前記外殻構造の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項50】
請求項49記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記固溶体酸化物は、Y、Yb、Er、Ho、及びDyの各元素を第2群とし、Y、Yb、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Nd、及びLuの各元素を第3群として、前記第2群から選択された少なくとも1の元素をQEとし、前記第3群から選択された少なくとも1の元素をREとしたとき、一般式QE2Si2O7、QESiO5、RE3Al5O12、及び
REAlO3のいずれか1又は2以上からなることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項51】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項52】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Ti、Zr、及びAlから選択される1の金属成分をM1とし、Ti及びZrから選択される1の金属成分をM2、その炭化物をM2Cとして、β−SiC、
M2C、β−SiCとM2Cの固溶体及び/又はM2C1−x(0<x<1)からなる粒子径が700nm以下の結晶質超微粒子と、該結晶質超粒子間に存在するSi、C、O、及びM1を含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項53】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項54】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、粒子径が700nm以下であるβ−SiCの結晶質超微粒子と、該結晶質超微粒子間に存在するSi、C、及びOを含有する非晶質無機物質との集合物で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項55】
請求項49又は50記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記内殻構造は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項56】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Ti、Zr及びAlから選択される1の金属成分をM1として、Si、C、O、及びM1を含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項57】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Si、C、及びOを含有する無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項58】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、β−SiCの微結晶からなる結晶質の無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項59】
請求項48記載の加熱炉の熱効率改善装置において、前記布部材は無機繊維であって、該無機繊維は、Al、Si、及びOからなる非晶質無機物質で構成されていることを特徴とする加熱炉の熱効率改善装置。
【請求項60】
請求項44〜47のいずれか1項に記載の加熱炉において、前記帯状布シートは、無機繊維又は内殻構造と外殻構造を持つ多層構造からなる複合化無機繊維で形成されていることを特徴とする加熱炉の熱遮蔽兼熱輻射反射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−82994(P2012−82994A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227693(P2010−227693)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【特許番号】特許第4801789号(P4801789)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【特許番号】特許第4801789号(P4801789)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(594081397)株式会社超高温材料研究センター (15)
【Fターム(参考)】
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