説明

加熱膨張性不織布

【課題】本発明の課題は、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材などに利用可能な、より軽量で、特に剛性の高い加熱膨張性不織布を提供することである。
【解決手段】少なくともガラス繊維を含有してなる湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該ガラス繊維が平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成され、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、さらに、該不織布中に加熱膨張性粒子を含有することを特徴とする加熱膨張性不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材などに利用可能な低密度不織布を得るための加熱膨張性不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート中に空隙が多い低密度の不織布は、軽量で、加工性が良好なことから、断熱材、吸音材、フィルター材として使われている。さらに樹脂を含浸、補強するなどの方法により、軽量で強度のある構造材への応用が試みられている。
【0003】
不織布の製造方法は、大きく乾式法と湿式法に分類される。乾式法で製造される不織布は、低密度のものが得やすいが、繊維の種類や繊維長が限定されることが多いため、機能のバリエーションが制限されてしまうデメリットがある。一方、湿式法では様々な繊維を用いることができ、かつ生産性が高いメリットがあるが、得られた不織布は高密度になりやすいという特徴がある。
【0004】
これを解決する手段として、湿式法にて捲縮繊維を配合し、嵩高くするという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、捲縮繊維のみの効果では、密度が0.5g/cm程度であり、低密度不織布としては不十分である。
【0005】
さらに、より低密度な不織布を得る目的で、繊維を加熱膨張性物質と共に抄造して加熱膨張性物質を含有する不織布を作製し、さらに、加熱により該加熱膨張性物質を膨張させて低密度不織布を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、上記捲縮繊維を配合する方法に比べて高い膨張性が得られるものの、より低密度な不織布を得ようとすると、不織布を構成する繊維の間隔が広くなるため、加熱膨張性物質の膨張が十分に繊維を押し広げることができなくなり、より大量の加熱膨張性物質を含有させる必要が生じる。より大量の加熱膨張性物質を含有させると、繊維間の空隙が膨張した加熱膨張性物質で埋められてしまうため、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材などに使用する場合に、十分な機能が得られないなどの問題がある。
【0006】
また、不織布を構成する繊維の間隔を狭くする目的で、繊維の直径を細くした場合には、繊維自体は加熱膨張性カプセルの膨張力を受けやすくなるものの、繊維同士の接触点の増加に伴い、不織布自体を膨張させるのにより強い力が必要になる他、繊維一本一本の剛性が低下し、加熱膨張性カプセルの膨張力が吸収されてしまうため、不織布が非常に膨張し難くなる。また、不織布の剛性も非常に低くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−273096号公報
【特許文献2】特開2006−342437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材などに利用可能な、より軽量で、特に剛性の高い加熱膨張性不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこれらの課題を解決すべく検討した結果、下記の発明により上記の課題が解決されることを見出した。
【0010】
少なくともガラス繊維を含有してなる湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該ガラス繊維が平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成され、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、さらに、該不織布中に加熱膨張性粒子を含有することを特徴とする加熱膨張性不織布である。
【0011】
平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比が2.0倍以上10.0倍以下であるとより好ましい。
【0012】
加熱膨張性粒子が、アクリロニトリル系共重合体を壁材とし、炭化水素を内包するマイクロカプセルであると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加熱膨張性不織布は、少なくともガラス繊維を含有してなる湿式法で抄造された不織布であり、ガラス繊維は、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維で構成され、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下である。このようなガラス繊維の構成にすることにより、より少ない加熱膨張性粒子の含有量で高い加熱膨張性が得られ、繊維間の空隙容積が大きな不織布膨張体を得ることができる。また、本発明の加熱膨張性不織布を加熱して得られる不織布膨張体をフィルター、構造材などに加工、利用した場合、より機械的強度に優れたフィルター、構造材などを得ることができる。
【0014】
また、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比を、2.0倍以上10.0倍以下にすることにより、特に加熱膨張性と剛性のバランスが良好な加熱膨張性不織布を得ることができる。
【0015】
加熱膨張性粒子が、アクリロニトリル系共重合体を壁材とし、炭化水素を内包するマイクロカプセルであると、他の種類の加熱膨張性粒子を用いた場合に比べて、より高い加熱膨張性が得られるとともに、不織布膨張体をフィルター、構造材などに加工、利用した場合、より機械的強度に優れたフィルター、構造材などを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の加熱膨張性不織布について詳細に説明する。本発明の加熱膨張性不織布は、少なくともガラス繊維を含有してなる。ガラス繊維は、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成される。全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率は、10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。本発明において平均繊維径は、繊維を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維径を測定した値の平均値を示す。平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の上限は特に限定されないが、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の好ましい範囲は4.0μm以上30.0μm以下であり、さらに好ましくは5.0μm以上20.0μm以下である。また、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径の下限は特に限定されないが、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径の好ましい範囲は0.2μm以上4.0μm未満であり、さらに好ましくは0.5μm以上3.5μm未満である。
【0017】
平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維は、加熱膨張性不織布、または、これの不織布膨張体の骨格をなす成分であり、機械的強度、特に剛性を発現させる役割を担っている。一方、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維は、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の隙間を埋めて、繊維間の目開きを細かくし、加熱膨張性粒子が膨張したときの力を効率よく受け止めて、不織布の膨張を効率よく行う役割を担う。平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維は、他の材質の繊維に比べて高い剛性を持っており、加熱膨張性粒子の膨張力を効率的に不織布全体に伝達することができる。全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であるとき、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維が剛性を発現させる効果と、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維により膨張性が向上する効果がバランス良く発揮され、加熱膨張性及び剛性が高い加熱膨張性不織布を得ることができる。
【0018】
平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の代わりに平均繊維径4.0μm未満の各種有機繊維を用いたのでは、ガラス繊維に比べて剛性が低いため、ガラス繊維ほどの高い膨張性及び剛性を得ることができない。また、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の代わりに平均繊維径4.0μm以上の各種有機繊維を用いた場合は、ガラス繊維を用いた場合に比べて大幅に剛性が低くなる。
【0019】
平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比は、2.0倍以上10.0倍以下であるとより好ましく、3.0倍以上6.0倍以下であるとさらに好ましい。平均繊維径の比が2.0倍以上であると、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維と平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の役割分担が十分に発揮され、特に高い膨張性と剛性をバランス良く得ることができる。また、平均繊維径の比が10.0倍を超えると平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の数が少なくなり、不織布中での分布が不均一になり剛性が低下するとともに、平均繊維径4.0μm未満の繊維の繊維径が相対的に小さくなりすぎるため、加熱膨張性粒子の膨張力を十分に受け止めることが出来なくなる場合があり、膨張性も低下することがある。
【0020】
平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維及び平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維長は特に限定されないが、3mm以上20mm未満が好ましい。平均繊維長が3mm未満であると、加熱膨張性不織布及び不織布膨張体の機械的強度が不十分となる場合がある。また、平均繊維長が20mm以上であると、湿式法による抄造時の地合いが悪くなって、厚さが不均一な不織布となる場合がある。本発明において平均繊維長は、繊維を顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維長を測定した値の平均値を示す。
【0021】
不織布を構成する繊維としては、ガラス繊維以外に各種の無機または有機繊維も含有させることができる。これらの繊維を含有させることにより、加熱膨張性不織布及びその膨張体の剛性、しなやかさなどを調節できる。また、各種繊維特有の性質を付加することも可能である。繊維の具体例としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン、アセチルセルロース、再生セルロース、木材及び非木材パルプ、綿、麻、ケナフ、羊毛、絹、石綿、ロックウール、カーボン等の有機または無機の繊維から選ばれる1種以上の繊維からなるものであり、これらの繊維は1種のみを用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0022】
本発明の加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維の平均繊維径は特に限定されないが、0.5μm以上25.0μm未満が好ましい。平均繊維径が25.0μm以上であると、不織布の地合いが悪化し剛性が低下する場合がある。また、平均繊維径0.5μm未満であると、加熱膨張性が低下する場合がある。
【0023】
本発明の加熱膨張性不織布に含有するガラス繊維以外の繊維の平均繊維長は特に限定されないが、3mm以上20mm未満が好ましい。平均繊維長が3mm未満であると、加熱膨張性不織布及び不織布膨張体の機械的強度が不十分となる場合がある。また、平均繊維長が20mm以上であると、湿式法による抄造時の地合いが悪くなって、厚さが不均一な不織布となる場合がある。
【0024】
本発明の加熱膨張性不織布を構成するガラス繊維の含有率は特に限定されないが、加熱膨張性不織布を構成する全繊維に対して40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。ガラス繊維の含有率が40質量%未満であると、本発明の効果が不十分になる場合がある。
【0025】
また、加熱膨張性不織布及びその膨張体の強度を発現させる目的でバインダー繊維を含有させることができる。バインダー繊維は、加熱により接着性を発現する芯鞘構造のポリエチレンテレフタレート(PET)繊維や、熱と水分で接着性を発現するアセタール化ポリビニルアルコール繊維、水素結合により結着するパルプなど、特に限定されずに用いることができる。これらバインダー繊維は、不織布の強度を発現させる効果があるが、大量に配合すると加熱膨張性が低下するので、目的に応じて適宜繊維の種類及び配合量を調節することが好ましい。バインダー繊維を含有させる場合、不織布を構成するバインダー繊維を含む全繊維に対して、5〜40質量%のバインダー繊維を添加するのが好ましい。
【0026】
また、加熱膨張性不織布には、バインダー樹脂を含有させることができる。バインダー樹脂は、特に限定されるものではないが、本発明の不織布の加熱膨張性を阻害しにくいものが好ましい。バインダー樹脂の具体例としては、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、セルロースエーテル類、アクリルアミド系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などの水溶性樹脂、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、その他単重合系ラテックス及び共重合系ラテックスなどの合成樹脂ラテックスが挙げられる。これらのバインダー樹脂は1種のみを用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0027】
本発明の加熱膨張性不織布に、バインダー樹脂を含有させる方法としては、抄造時に繊維と共に添加する方法、或いは、加熱膨張性不織布基材抄造後、バインダー樹脂を含む塗液を含浸させる方法で含有させることができる。
【0028】
次に、本発明に用いる加熱膨張性粒子について説明する。本発明では、加熱膨張性粒子として、膨張開始温度が100℃から250℃程度のものが好ましく用いられる。このような加熱膨張性粒子としては、加熱膨張性マイクロカプセル、膨張黒鉛などが挙げられる。加熱膨張性粒子の平均粒子径は、加熱膨張前で5μm以上200μm未満であることが好ましく、より好ましくは10μm以上100μm未満である。膨張前の平均粒子径が5μm未満であると、十分に膨張しにくい場合がある。一方、200μm以上であると、不織布中に含有させるのが困難になる場合がある。加熱膨張性粒子の膨張後の平均粒子径は10μm以上となるものが好ましく、より好ましくは20μm以上である。膨張後の加熱膨張性粒子の平均粒子径が小さすぎると、不織布を膨張させるのに必要な加熱膨張性粒子の量(数)が多量となる場合がある。なお、上記膨張前の加熱膨張性粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて50個程度の粒子を観察し、直径を平均した値のことである。また、膨張後の平均粒子径は、膨張させた不織布中の加熱膨張性粒子を、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡を用いて50個程度の粒子を観察し、直径を平均した値のことである。
【0029】
本発明に用いる加熱膨張性粒子は、膨張開始温度の選択の自由度が大きいこと、粒子径、加熱膨張性などの点で、加熱膨張性マイクロカプセルが好ましく、熱可塑性樹脂の軟化点よりも低沸点の内包物をガスバリア性を有する熱可塑性樹脂からなるシェルで内包したコアシェル型の加熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。内包物としては、例えば、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の沸点が150℃以下の炭化水素類やエーテル類を挙げることができる。また、シェルを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂、アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。好ましいものとしては、内包物がイソブタン、ペンタン、ヘキサン等の液状の炭化水素からなり、シェルがアクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂からなる加熱膨張性マイクロカプセルがあり、特に好ましいのはシェルがアクリロニトリル共重合体の加熱膨張性マイクロカプセルである。
【0030】
加熱膨張性マイクロカプセルは、ある温度以上に加熱されると、軟化したシェルがコアの気化膨張する圧力によって膨張を開始する。また、膨張黒鉛は、インターカレートしている層間物がある温度以上でガスを発生し、その結果、黒鉛が膨張する。本発明では、この温度を膨張開始温度と言い、加熱膨張性粒子を10℃/分で昇温したときに、加熱膨張性粒子の膨張倍率が、最大膨張倍率の15%に達する温度で定義する。本発明が用いる加熱膨張性粒子は、膨張開始温度は120℃以上のものが好ましく、130〜200℃のものがより好ましい。膨張開始温度が120℃未満では、加熱膨張性粒子自体の耐熱性に劣ることがあり、また、抄造した湿潤状態の不織布基材の乾燥温度を極端に低くする必要があり、乾燥に長時間を要するため好ましくない。一方、膨張開始温度が230℃を超えると、膨張させるための加熱温度が高温となりすぎ、不織布を構成する成分の劣化を招く可能性がある。
【0031】
加熱膨張性マイクロカプセルは、膨張開始温度が異なるものを2種以上併用することも可能である。この場合、膨張開始温度がより低い加熱膨張性マイクロカプセルのみ膨張するように加熱することにより、最大膨張厚さより薄い中間的な厚さに膨張させることができる。その後、最も膨張開始温度が高い加熱膨張性マイクロカプセルが膨張する温度まで再加熱することにより、最大膨張厚さまで膨張させることができる。
【0032】
また、加熱膨張性マイクロカプセルは、平均粒子径が異なるものを2種以上併用することも可能である。この場合、単一粒子径の加熱膨張性マイクロカプセルを単独で使用する場合より、加熱膨張性マイクロカプセル充填率をアップさせることができ、不織布膨張体の強度を向上させるなどの効果を得ることができる。
【0033】
本発明の加熱膨張性不織布を構成する繊維、加熱膨張性粒子の配合率は、繊維の構成、加熱膨張性粒子の粒子径、加熱膨張性によっても異なるが、繊維/加熱膨張性粒子の質量比が97/3〜80/20の範囲であることが好ましく、95/5〜85/15の範囲であることがより好ましい。繊維/加熱膨張性粒子の質量比が97/3より大きくなると、十分な加熱膨張性が得られない場合がある。また、質量比が80/20より小さくなると、加熱膨潤性不織布を構成する繊維同士の絡み合いが少なくなり、強度が大幅に低下する場合がある。
【0034】
本発明の加熱膨張性不織布は、ガラス繊維、その他の各種繊維、加熱膨張性粒子の他に、酸化防止剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラック、VOC吸着剤、VOC分解剤、消臭剤などの添加剤や着色剤、有機結合剤等を要求に応じて含有させることができる。また、上記の添加剤や着色剤は、例えば、繊維に予めコーティングしておいたり、混合時に配合したり、不織布にスプレーなどで噴霧して添加することによって含有させてもよい。
【0035】
次に、本発明の加熱膨張性不織布の製造方法について説明する。本発明の加熱膨張性不織布基材は湿式法にて抄造され、これに、加熱膨張性粒子を適当な方法で含有させることにより製造される。加熱膨張性不織布基材を湿式法により抄造する方法は、特に限定されない。湿式抄造装置の具体例としては、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機などが挙げられ、これらの装置を組み合わせた多層抄造装置を用いて多層抄造を行うこともできる。また、加熱膨張性粒子は、抄造時に繊維と共に添加する方法、あるいは、加熱膨張性不織布基材抄造後、加熱膨張性粒子を含む含浸液を含浸させる方法で含有させることができる。
【0036】
抄造された加熱膨潤性不織布基材に、加熱膨張性粒子を含有する含浸液を含浸させる方法は、特に限定されない。含浸装置の具体例としては、ディッピング装置、ロールコーター、カーテンコーター、吸引式サチュレーターなどが挙げられる。
【0037】
加熱膨張性粒子を含有させた未膨張の加熱膨潤性不織布は、加熱膨張性粒子の膨張開始温度未満の温度まで加熱して水だけ蒸発させて乾燥した後、常温まで降温して保管後、加熱膨張性粒子の膨張開始温度以上に再加熱して膨張させることができる。また、湿潤状態のまま加熱して、加熱膨張性粒子の膨張開始温度以上まで昇温し、乾燥と膨張を同時に行うこともできる。乾燥と膨張を同時に行った方が、加熱膨張性及び製造効率がよく経済的である。
【0038】
抄造工程または加熱膨張性粒子を含浸する工程で、湿潤状態の不織布を乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥方法の具体例としては、熱風乾燥、熱ドラム乾燥、赤外線乾燥、誘電乾燥、誘導乾燥などが挙げられる。乾燥装置の具体例としては、上記乾燥を実施できる、熱風ドライヤー、シリンダードライヤー、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ加熱装置などが挙げられる。
【0039】
未膨張の加熱膨張性不織布を加熱・膨張させる方法は、特に限定されない。加熱・膨張させる装置の具体例としては、上記乾燥装置と同様のものが使用できる。また、加熱・膨張は、自由膨張させることも、加熱した金型などの中で形状を制限して膨張させることもできる。また、加熱して自由膨張させた加熱膨張性不織布を、熱いまま低温の金型などに入れ、成型することもできる。
【0040】
本発明の加熱膨張性不織布を加熱・膨張させて得られる不織布膨張体は、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材用として、そのままの形態で用いる以外に、樹脂などを含浸して不織布膨張体の樹脂補強物として用いることもできる。不織布膨張体に含浸する樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル類などの水溶性樹脂、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、ウレタン樹脂エマルジョンなど合成樹脂ラテックス、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどの有機溶剤溶解性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱架橋性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの活性エネルギー線硬化樹脂などが挙げられ、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数、百分率は、特にことわりのない限り、質量基準である。
【0042】
(実施例1)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部、及び熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFN−105D、膨張開始温度120〜135℃、壁材:アクリロニトリル系共重合体、炭化水素内包)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例1の加熱膨張性不織布を作製した。
【0043】
(実施例2)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)180部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)20部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例2の加熱膨張性不織布を作製した。
【0044】
(実施例3)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)100部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)100部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例3の加熱膨張性不織布を作製した。
【0045】
(実施例4)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径3.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例4の加熱膨張性不織布を作製した。
【0046】
(実施例5)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径10.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例5の加熱膨張性不織布を作製した。
【0047】
(実施例6)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径18.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径3.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例6の加熱膨張性不織布を作製した。
【0048】
(実施例7)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径4.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径0.8μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例7の加熱膨張性不織布を作製した。
【0049】
(実施例8)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径5.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径3.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例8の加熱膨張性不織布を作製した。
【0050】
(実施例9)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径0.8μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの実施例9の加熱膨張性不織布を作製した。
【0051】
(実施例10)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)56部、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)24部、ポリエチレンテレフタレート繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長5mm)120部、及び熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFN−105D、膨張開始温度120〜135℃、壁材:アクリロニトリル系共重合体、炭化水素内包)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例10の加熱膨張性不織布を作製した。
【0052】
(実施例11)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)98部、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)42部、ポリエチレンテレフタレート繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長5mm)60部、及び熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFN−105D、膨張開始温度120〜135℃、壁材:アクリロニトリル系共重合体、炭化水素内包)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例11の加熱膨張性不織布を作製した。
【0053】
(実施例12)
膨張黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、商品名:9950200、膨張開始温度150℃)を、高速回転衝撃式粉砕機で乾式粉砕し、平均粒子径150μmの膨張黒鉛粒子を作製した。次に、水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部、及び上記で作製した膨張黒鉛粒子20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例12の加熱膨張性不織布を作製した。
【0054】
(実施例13)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)98部、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)42部、ポリエチレンテレフタレート繊維(平均繊維径6.0μm、平均繊維長5mm)30部、PET系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルスTJ04CN、平均繊維径11.0μm、平均繊維長5mm)30部、及び熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFN−105D、膨張開始温度120〜135℃、壁材:アクリロニトリル系共重合体、炭化水素内包)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの実施例13の加熱膨張性不織布を作製した。
【0055】
(比較例1)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)200部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例1の加熱膨張性不織布を作製した。
【0056】
(比較例2)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)200部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例2の加熱膨張性不織布を作製した。
【0057】
(比較例3)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)185部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)15部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例3の加熱膨張性不織布を作製した。
【0058】
(比較例4)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)80部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)120部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例4の加熱膨張性不織布を作製した。
【0059】
(比較例5)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径5.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例5の加熱膨張性不織布を作製した。
【0060】
(比較例6)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径25.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径5.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例6の加熱膨張性不織布を作製した。
【0061】
(比較例7)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ガラス繊維(平均繊維径3.0μm、平均繊維長6mm)140部、及びガラス繊維(平均繊維径1.0μm、平均繊維長6mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例7の加熱膨張性不織布を作製した。
【0062】
(比較例8)
実施例1で、ガラス繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長6mm)60部を用いる代わりに、ポリエチレンテレフタレート繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長5mm)60部を用いた以外は実施例1と同一条件で、目付量200g/mの比較例8の加熱膨張性不織布を作製した。
【0063】
(比較例9)
膨張黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、商品名:9950200、膨張開始温度150℃)を、高速回転衝撃式粉砕機で乾式粉砕し、平均粒子径150μmの膨張黒鉛粒子を作製した。次に、水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)200部、及び上記で作製した膨張黒鉛粒子20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの比較例9の加熱膨張性不織布を作製した。
【0064】
(比較例10)
水100000部にガラス繊維(平均繊維径9.0μm、平均繊維長6mm)140部、ポリエチレンテレフタレート繊維(平均繊維径1.5μm、平均繊維長5mm)30部、PET系バインダー繊維(帝人ファイバー(株)製、商品名:テピルスTJ04CN、平均繊維径11.0μm、平均繊維長5mm)30部、及び熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFN−105D、膨張開始温度120〜135℃、壁材:アクリロニトリル系共重合体、炭化水素内包)20部を投入し、5分間撹拌して分散した。これに、カチオン性エポキシ樹脂(荒川化学工業(株)、商品名:アラフィックス 255LOX、固形分濃度25%)8部を加え、さらに5分間撹拌した。次いで、この液を抄造機に投入、脱水し、引き続き115℃のシリンダードライヤーで乾燥し、目付量200g/mの比較例10の加熱膨張性不織布を作製した。
【0065】
表1の含有率の欄に、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率を示した。単位は%である。また、比の欄に、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比を示した。
【0066】
試験1 膨張前の厚さ
実施例1〜13及び比較例1〜10の加熱膨張性不織布の厚さを、JIS L 1086に準拠し、0.7kPa、10秒の加圧条件で5カ所測定し、平均値の小数点第二位を四捨五入し、表1の試験1の欄に示した。数値の単位はmmである。
【0067】
試験2 加熱膨張性
実施例1〜13及び比較例1〜10の加熱膨張性不織布を180℃のオーブンに入れ2分間加熱して不織布膨張体を得た。これらの不織布膨張体の厚さを、JIS L 1086に準拠し、0.7kPa、10秒の加圧条件で5カ所測定し、平均値の小数点第一位を四捨五入し、表1の試験2の欄に示した。数値の単位はmmである。
【0068】
試験3 不織布膨張体の樹脂補強物の強度
加熱膨張性不織布の剛性の評価として、不織布膨張体の樹脂補強物の強度を測定した。まず、試験2で得られた実施例1〜13及び比較例1〜10の不織布膨張体に、下記配合のアクリルエマルジョン含浸液を1mあたり1700gになるように含浸した。これを、2枚の金属板で挟み、2枚の金属板の間隔を5mmに保持した状態で150℃のオーブンに入れて、水分を蒸発させて厚さ5mmの不織布膨張体の樹脂補強物を作製した。
【0069】
アクリルエマルジョン含浸液(固形分濃度12.4%)
アクリル系エマルジョン
(日本ゼオン(株)製、商品名:LX857X2、固形分濃度45%)13.1 部
アニオン系界面活性剤
(日光ケミカル(株)製、
商品名:NIKKOL OTP−75、固形分濃度75%) 0.32部
水 36.6 部
【0070】
このようにして得られた不織布膨張体の樹脂補強物を幅50mm、長さ200mmに切断し、JIS K 7171に準拠して、支点間距離150mmで3点曲げ試験を行った。測定された最大荷重を表1の試験3の欄に示した。数値の単位はNである。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように、バインダー繊維を含まない実施例1〜12と比較例1〜9の比較では、不織布に含有するガラス繊維が平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成され、かつ、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下である実施例1〜12は、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維を含有しない比較例1、5、6、8及び9、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維を含有しない比較例2及び7、また、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とを含有するが、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が20質量%未満の比較例3、該含有率が50質量%を超える比較例4に比べて、加熱膨張性、不織布膨張体の樹脂補強物の強度が大幅に高かった。
【0073】
また、実施例1、4〜9の比較から、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比が2.0倍以上10.0倍以下である実施例1、4〜7は、該比が2.0倍未満の実施例8、該比が10.0倍を超える実施例9に比べて、不織布膨張体の樹脂補強物の強度が高かった。
【0074】
また、バインダー繊維を含有する実施例13においては、バインダー繊維が繊維同士の接着を強めるため、実施例1〜12に比べて加熱膨張性がやや低かったが、同様にバインダー繊維を含有する比較例10よりも加熱膨張性が良好で、バインダー繊維を含有しない比較例1〜9と比較しても同等以上加熱膨張性が得られ、さらには、高い不織布膨張体の樹脂補強物の強度が得られた。
【0075】
実施例1と比較例8の比較から、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の代わりに同様の平均繊維径の有機繊維を用いた比較例8では、高い加熱膨張性や高い不織布膨張体の樹脂補強物の強度が得られないことが明らかである。
【0076】
また、実施例1と実施例12の比較では、加熱膨張性粒子以外の組成が同一であれば、加熱膨張性マイクロカプセルを用いた実施例1の方がより良好な加熱膨張性、不織布膨張体の樹脂補強物の強度を示した。
【0077】
以上の結果より、不織布中に含有するガラス繊維が、平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成され、かつ、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下である加熱膨張性不織布により、高い加熱膨張性と、高い不織布膨張体の樹脂補強物の強度を得ることができる。
【0078】
また、平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比が2.0倍以上10.0倍以下であると、特にバランス良く、高い加熱膨張性と高い不織布膨張体の樹脂補強物の強度を得ることができる。
【0079】
また、加熱膨張性粒子として加熱膨張性マイクロカプセルを用いると、良好な加熱膨張性及び強度を示し、より特性が良好な加熱膨張性不織布が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の加熱膨張性不織布は、軽量性、強度などの特性に優れ、断熱材、吸音材、フィルター材、構造材などに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス繊維を含有してなる湿式法で抄造される加熱膨張性不織布において、該ガラス繊維が平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維と平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維とで構成され、全ガラス繊維に対する平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、さらに、該不織布中に加熱膨張性粒子を含有することを特徴とする加熱膨張性不織布。
【請求項2】
平均繊維径4.0μm未満のガラス繊維の平均繊維径に対する平均繊維径4.0μm以上のガラス繊維の平均繊維径の比が2.0倍以上10.0倍以下である請求項1記載の加熱膨張性不織布。
【請求項3】
加熱膨張性粒子が、アクリロニトリル系共重合体を壁材とし、炭化水素を内包するマイクロカプセルである請求項1記載の加熱膨張性不織布。

【公開番号】特開2011−58128(P2011−58128A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209554(P2009−209554)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】