加熱装置
【課題】簡易な構造で、熱効率を飛躍的に向上させる加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱対象が投入される釜体2と、釜体2の側面及び底面を囲うとともに釜体2を支持する筐体3と、釜体2と筐体3との間に設けられ釜体2を加熱するバーナー4とを備えた加熱装置において、筐体3内に水を供給する手段を設ける。この加熱装置において、バーナー4の発熱の一部を利用して供給した水を水蒸気に気化させ、バーナー4による加熱とともに水蒸気によって釜体2を加熱する。
【解決手段】加熱対象が投入される釜体2と、釜体2の側面及び底面を囲うとともに釜体2を支持する筐体3と、釜体2と筐体3との間に設けられ釜体2を加熱するバーナー4とを備えた加熱装置において、筐体3内に水を供給する手段を設ける。この加熱装置において、バーナー4の発熱の一部を利用して供給した水を水蒸気に気化させ、バーナー4による加熱とともに水蒸気によって釜体2を加熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象を釜体に投入して加熱を行う加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として比較的大型なものに、金属溶融炉、ボイラー等の工業炉がある。
このような工業炉では、バーナー等により直接釜を加熱し固体の熱伝導により釜全体を加熱することが一般的である。しかし、このような加熱方式では熱効率が35%程度であるため、従来から熱効率の向上が望まれていた。
【0003】
直接釜を加熱する方式において熱効率が35%程度と低く留まる理由としては、バーナー等の加熱時に生じる排気ガスが熱を持ち去ることが挙げられる。そこで、この点に着目し、排熱を回収することで熱効率の向上を図る技術が従来から種々提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、排熱回収型バーナーを備えた溶融炉が開示されており、この溶融炉では、回収した排熱による熱をバーナーの燃焼空気の予熱に利用し、熱効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−18828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるような排熱を回収して熱効率の向上を図る装置は、間接的に熱効率を向上させるものが多く、直接的に釜に対する熱効率を向上させるものではないため、熱効率の向上効果として十分なものとは言い難く、また、装置が複雑化及び大型化してしまうという問題もある。
【0007】
本発明は係る実情に鑑みて、簡易な構造で、熱効率を飛躍的に向上させることが可能な加熱装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、加熱対象が投入される釜体と、前記釜体の側面及び底面を囲うとともに前記釜体を支持する筐体と、前記釜体と前記筐体との間に設けられ前記釜体を加熱する加熱手段とを備えた加熱装置であって、前記筐体内に水を供給する水供給手段を備え、前記加熱手段の発熱の一部を利用して前記水供給手段によって供給された水を水蒸気に気化させ、前記加熱手段による加熱とともに水蒸気によって前記釜体を加熱することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記加熱手段の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記加熱手段が前記釜体の底部に近接又は当接して配置され、前記排気口が前記筐体の前記釜体の底部よりも上方に位置する部位に設けられ、前記釜体の側面と前記筐体との間に螺旋状の流路が設けられており、前記加熱手段の加熱によって気化させた水蒸気を、前記螺旋状の流路によって前記釜体の側面を回流させ、前記ガス廃棄物とともに前記排気口から排出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記水供給手段が、前記筐体内に設けられ水を吸水する吸水性を有する吸水体と、前記吸水体に水を供給する水供給部とで構成され、前記吸水体を前記加熱手段によって加熱することで、水蒸気を発生させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記吸水体が多孔質体であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記加熱手段の加熱によって気化させる水蒸気には、100度以上の高温水蒸気が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,6に記載の発明によれば、加熱手段による固体伝熱に加え、水蒸気による対流及びふく射による釜体への伝熱により、熱効率を飛躍的に向上させることができる。また、熱効率の向上によるエネルギー消費量の削減により、二酸化炭素等の排出量を低減することができ、環境にやさしい加熱装置を実現できる。
また、水蒸気により釜体全体に渡って加熱が行われるため、釜体内部の温度分布を均一化でき、加熱対象を均一に加熱でき、特に材料製造等の際に材料密度の均一化を図れる。
また、加熱手段が設けられた筐体内に水を供給する簡易な構成であるため、装置を大型化及び複雑化することがない。さらには、既存設備に容易に構築できる構造であるため、製造コストを抑えて熱効率の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、排気口による排気作用によって対流を促進することができる。
請求項3に記載の発明によれば、水蒸気による熱伝熱を釜体側面に対して十分に行うことができる。
請求項4、5に記載の発明によれば、筐体内に供給する水の量を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る加熱装置の構成を示した縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る加熱装置の構成を示した縦断面図である。
【図3】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(対流解析)における解析モデルを示した図である。
【図4】対流解析に用いた計算メッシュを示した図である。
【図5】対流解析における計算メッシュの詳細仕様を説明する表を示した図である。
【図6】対流解析におけるコンロ入口の流速の時間変化を示した図である。
【図7】対流解析における所定時間の鍋底温度の解析結果を示した図である。
【図8】対流解析における時間推移と鍋底温度との関係の解析結果を示した図である。
【図9】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(ふく射解析)における解析モデルを示した図である。
【図10】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(ふく射解析)における解析モデルをより具体的に示した図である。
【図11】ふく射解析において用いる都市ガスの単色放射能の波長分布を示した図である。
【図12】ふく射解析における時間推移と鍋底温度との関係の解析結果を示した図である。
【図13】ふく射解析における時間推移と鍋底の吸収熱流束との関係の解析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る加熱装置1の概略構成を示した縦断面図である。加熱装置1は、水、金属等の加熱対象が投入される釜体2と、釜体2の側面及び底面を囲うとともに釜体2を支持する筐体3と、釜体2と筐体3との間に設けられ釜体2を加熱するバーナー4とを備えている。
【0019】
釜体2は有底円筒状の金属製容器であり、上部開口周囲に形成されたフランジ5を筐体3の上部に形成された支持孔6の周縁に当接させ、その側面及び底面を筐体3内に収容させた状態で筐体3に支持されている。釜体2と筐体3の間には一定空間が形成されている。バーナー4は釜体2の底部7の下方に設けられている。
【0020】
バーナー4は筐体2の側壁部に支持され、釜体2の底部7に近接して配置されている。バーナー4は筐体3外部に引き出された燃料供給管8から燃料を供給され、釜体2の底部7を主に加熱する。燃料供給管8から供給される燃料は本実施形態ではガスが用いられる。
【0021】
筐体3の側壁部の上側部分には、バーナー4の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口9が形成され、排気口9は釜体2の底部7よりも上方において一端を開口し、一端側の開口から水平に延出した後、上方に折曲して他端を外部に臨ませる。排気口9は煙突形状を呈している。
【0022】
筐体2内には、水を吸水する吸水性を有した多孔質体10が設けられ、多孔質体10は具体的には軽石である。多孔質体10は、筐体2の底部上面に設けられ、上方で燃焼するバーナー4の燃焼炎Fによって加熱される。多孔質体10は、筐体3の底部から外部に引き出された水供給管11から水を供給される。
【0023】
バーナー4は多孔質体10に吸水された水を蒸発させ、水蒸気、好ましくは100度以上の高温水蒸気に気化させる。水供給管11から多孔質体10に対して供給される水の供給量は、バーナー4の燃焼炎Fの発熱量に応じて制御可能とされている。
【0024】
上記構成を備えた加熱装置1では、バーナー4の燃焼炎の発熱の一部を利用して多孔質体10に吸水させた水を水蒸気に気化させ、バーナー4による加熱とともに気化させた水蒸気によって釜体2を加熱する。
【0025】
この加熱装置1では、バーナー4による固体伝熱に、水蒸気による対流及びふく射による伝熱を加えることにより、熱効率を飛躍的に向上させることができる。また、熱効率の向上によるエネルギー消費量の削減により、二酸化炭素等の排出量を低減することができ、環境にやさしい加熱装置を実現できる。
【0026】
また、水蒸気により釜体2全体に渡って加熱が行われるため、釜体2内部の温度分布を均一化でき、加熱対象を均一に加熱でき、特に材料製造等の際に材料密度の均一化を図れる。また、バーナー4が設けられた筐体3内に水を供給する簡易な構成であるため、装置を大型化及び複雑化することがない。さらには、既存設備に容易に構築できる構造であるため、製造コストを抑えて熱効率の向上を図ることができる。
【0027】
また、加熱装置1では筐体3に排気口9を設けているが、この場合、排気口9による排気作用によって対流を促進することができる。また、加熱装置1では、軽石である多孔質体10に水を吸水させ、これを加熱することで水蒸気を発生させるが、この場合には、所望の水蒸気量を発生させる際に供給する水の量を好適に制御できる。また、軽石のような鉱物である場合、熱の吸収性が高いため水蒸気を効率的に発生させることができる。
【0028】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。図2には、本実施形態に係る加熱装置20の概略構成が示されている。なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号で示し、説明は省略する。
【0029】
本実施形態に係る加熱装置20では、釜体2の側面と筐体3との間に螺旋状の流路21が設けられている。流路21は、釜体2の側面に一体的に設けられる態様でも、筐体3側壁内周面に一体的に設けられる態様でも構わない。
【0030】
この加熱装置20では、バーナー4の加熱によって蒸発された水蒸気が、螺旋状の流路21によって釜体2の側面を回流し、バーナー4の発熱によって生じるガス廃棄物とともに排気口9から排出される。このような構成によれば、水蒸気による熱伝熱を釜体2側面に対して十分に行うことができるため、熱効率をより向上させることができる。
【0031】
以上で本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものはない。例えば、上記第1、第2の実施形態に係る加熱装置では、加熱手段として気体燃料(ガス)を用いるバーナーを用いたが、ガソリンのような液体燃料を用いるバーナーを用いてもよい。
【0032】
また、バーナーに代えて、電気ヒータ、電磁誘導ヒータ(所謂IH)を加熱手段としてもよい。なお、加熱手段を電気ヒータ、電磁誘導ヒータ(所謂IH)とした場合は、多孔質体10を加熱手段に当接させて加熱する態様とする。
【0033】
また、上記実施形態では、多孔質体10を筐体3内に配置して、バーナー4による加熱する態様を説明したが、例えば単に水を貯留する容器を筐体3内に設ける態様としてもよい。また、渦巻状の管(所謂スパイラル管)に水を充填しておき、管を加熱することで蒸発した水蒸気を放出するような態様であっても構わない。さらには、筐体3内にインジェクターのような水噴射装置を備える構成としても構わない。
【0034】
また、ふく射伝熱による効果を向上させようとする場合には、釜体に対して赤外線吸収構造を設けてもよい。このような構造としては、幾何学構造等が考えられる。
【0035】
なお、上記実施形態は、本発明の加熱装置を比較的小規模な炉に適用した場合を説明したものであるが、本発明は種々の産業分野で適用可能なものである。比較的大規模なものであれば、管式加熱炉、金属加熱炉、窯業焼成炉、ガス溶融炉、ガス化溶融炉、ボイラー等の工業炉において適用できる。また、家庭用や業務用の調理用品分野等でも適用可能であり、具体的には、鍋、ポット、ホットプレート等においても好適に用いることができる。
【0036】
<本発明の効果の検証>
以下では、本発明の上記実施形態に構成の近い家庭用コンロをモデル化し、具体的な条件を付与して本発明の効果を検証した解析結果を説明するものとする。
【0037】
(対流による熱効率向上効果について)
高温水蒸気発生により流体の体積が膨張すると、流速が増加することが考えられる。流速が大きくなれば、(強制)対流熱伝達率は大きくなる。これが、本発明における対流による熱効率向上の効果である。以下で説明する解析結果は、流速の増加が対流熱伝達促進にどれほど寄与するのか検証したものである。
【0038】
1.解析モデル
解析モデルとしては、図3に示すような2次元軸対称系を採用した。上記実施形態の構成を想定し、釜体2(鍋)に相当するアルミニウム金属に燃焼ガスを想定した高温空気を真下から流入させ、温めるものとした。
【0039】
図4に解析に用いた計算メッシュを示し、図5に計算メッシュの詳細な仕様について示す。計算格子は3角形要素とした。
【0040】
2.解析条件
図3の解析モデル上において、解析領域上部A、および側部Bは解放境界とした。解析領域底部のコンロに相当する部分を除いた領域Cは断熱境界条件とした。空間を満たす空気の初期温度は300Kとし、鍋を想定したアルミニウムの初期温度も300Kに設定した。バーナー(以下、コンロ)に相当する部分(D)での熱源においては熱流束境界条件を設定し、ガスの流入速度は圧力境界条件として与え、鍋を加熱するものとした。なお、鍋の底の半径Rは7cm、鍋の深さhは12cm、鍋の開口の半径rは10cmである。鍋底とコンロとの距離dは4cm、コンロの半径bは5cm、領域Cの幅Wは25cm、側部Bの高さは40cmとした。
【0041】
3.熱源となる熱流速
使用する燃焼ガスは、都市ガスとして一般的に用いられているプロパンを仮定した。プロパンの標準熱量は45(MJ/m3)=12.5(kW/m3)=4.17(kW)であり、ここで、ガスの消費量を4.2(kW/h)とし、この場合、1時間当たりのガスの消費量は4.2(kW/h)÷12.5(kW/m3)=0.336(m3/h)である。プロパンの密度は、0.1MPa、21℃において1.87(kg/m3)であるから、0.336(m3/h)×1.87(kg/m3)=0.63(kg/h)の質量流量を燃焼させる。このとき、コンロ部の面積を実際のガスコンロから概算すると、0.785×10−2(m2)であることから、水を付与せず、燃焼ガスのみを流入する場合の熱流束は、q=4.17(kW)÷0.785×10−2(m2)=531210(W/m2)となる。
【0042】
一方、上記燃焼ガスに水蒸気を付与する場合、30(cc/min)=0.5(g/s)の水分を与えて過熱度200℃の過熱水蒸気を生成したと仮定すると、過熱水蒸気生成までに熱量を必要とする。
【0043】
飽和水を想定し、20℃の飽和水を100℃の飽和水とするための熱量は、
Q1=mct=0.5(g/s)×4.2(J/g・K)×80(K)=168(J/s)=0.168(kW)、
100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気にするための熱量は、
Q2=2.26(MJ/kg)×0.5/1000(kg/s)=1.13(kW)、
100℃の飽和水蒸気を200℃の過熱水蒸気(高温水蒸気)にするための熱量は、
Q3=mc’t=0.5(g/s)×2.1(J/g・K)×200(K)=210(J/s)=0.210(kW)である。
【0044】
したがって、水を付与したことによって失う熱量(ロス)は、Q1+Q2+Q3=1.51(kW)となる。水を付与した際に燃焼ガスが持つ熱量は、4.17(kW)−1.51(kW)=2.66(kW)となるため、水分を付与した燃焼ガスを流入させる場合の熱流束は、q’=2.66(kW)÷0.785×10−2(m2)=338853(W/m2)となる。
【0045】
4.流速
家庭用コンロの燃焼ガスの流速を実測すると、およそu=0.33(m/s)である。
一方、水を付与した場合、飽和水蒸気から過熱水蒸気を生成する過程で体積膨張する。水の付与量は30(cc/min)=0.5(g/s)=0.5×10−6(m3)/S)であり、液体での体積変化は小さいと仮定する。
1秒間を考えると、100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気に変化させた場合、体積は1673倍になり、(0.5×10−6(m3)×1673=0.8365×10−3(m3))、100℃の飽和水蒸気を、200℃の過熱水蒸気に変化させた場合、表1より1.56倍となる(0.8365×10−3(m3)×1.56=1.30×10−3(m3))。なお、表1は、日本機械学会蒸気表(1999)を抜粋した。
【0046】
【表1】
【0047】
したがって、コンロの火口部分で過熱水蒸気(高温水蒸気)が生成されたと仮定すると、水を付与した際の燃焼ガスの流速は、u’=u+V/S=0.33+1.30×10−3(m3/s)÷0.785×10−2(m2)=0.50(m/s)となる。
【0048】
図6は、圧力境界条件を設定し計算したコンロ入口の流速の時間変化を示したものである。図6において、実線L1が水を付与した場合を示し、破線L2が水を付与しない場合を示している。上述の計算結果とほぼ等しい流速設定となっていることがわかる。
【0049】
5.支配方程式
数値解析に用いた支配方程式を以下に示す。
【0050】
6.連続方程式
質量保存方程式(連続方程式)は、次式(1)のように表すことができる。
【0051】
【数1】
【0052】
上記数式(1)は、質量保存方程式の一般形を示し、非圧縮性及び圧縮性流れに対して有効である。ソースSmは、分散した(即ち、液滴の蒸発による)第2相と他のユーザ定義によるソースから、連続相に加えられた質量である。ここでは、Sm=0である。
【0053】
7.運動量保存式
慣性(非加速)基準座標における運動量保存式は、次式(2)のように表すことができる。
【0054】
【数2】
【0055】
ここで、上記数式(2)において、pは静圧、τ<=>は応力テンソル、ρg<→>とF<→>は夫々引力体積および外的体積力である。F<→>は多孔質媒体など、他のモデル依存のソース項を含む。なお、ここで、明細書文中内においては、数式(2)で係数(例えばτ)の上部に標記された記号を形式的に<>内に示すものとした(以下でも同様とする)。そして、τ<=>は、次式(3)で表される。
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、上記数式(3)において、μは分子粘度、Iは単位テンソルで、右辺の第2項は体積膨張の効果を表す。
【0058】
8.エネルギー方程式
エネルギー方程式を次式(4)で計算するものとした。
【0059】
【数4】
【0060】
ここで、数式(4)において、kは有効熱伝導率(=k+kt,ktは乱流熱伝導率)で、J<→>jは、は化学種「j」の拡散流束である。数式(4)の右辺の第3項までは、それぞれ伝導と化学種の拡散、粘性散逸によるエネルギー輸送を表している。また、Shは、化学反応による生成熱や体積熱源を含む熱源が含まれる。
【0061】
また、数式(4)において、Eは次式(5)で表される。
【0062】
【数5】
【0063】
ここで、上記数式(5)において、hは顕熱エンタルピーであり、理想気体に対しては、次式(6)で定義される。
【0064】
【数6】
【0065】
上記数式(6)において、Yjは化学種「j」の質量分率、hjは次式(7)で表される。
【0066】
【数7】
【0067】
上記数式(7)において、Tは300Kである。
【0068】
9.乱流モデル
(標準k−εモデル)
標準k−εモデルは、乱流運動エネルギー(k)とその散逸率(ε)の輸送方程式に対する半経験的モデルである。kのモデル輸送方程式は厳密な方程式から導かれるのに対し、εのモデル輸送方程式は、物理的な推理によって得られたものであり、数学的に厳密な輸送方程式とはほとんど似たところがない。
【0069】
標準k−εモデルの導出に当たっては、流れは完全に乱流であり、分子粘性の影響は無視できるものと仮定されている。したがって、標準k−εモデルが使用できるのは、完全な乱流の場合である。
【0070】
(標準k−εモデルの輸送方程式)
乱流運動エネルギーk、その散逸率εは次式(8)の輸送方程式から得られる。
【0071】
【数8】
【0072】
【数9】
【0073】
上記数式(8),(9)において、Gkは平均速度勾配による乱流運動エネルギーの生成を表す。Gbは浮力による乱流エネルギーの生成である。YMは、圧縮性乱流における膨張変動の散逸率への寄与を表す。C1ε、C2ε、C3εはモデル定数、σk、σεは、それぞれkとεに対する乱流プラントル数である。Sk、Sεは、ユーザ定義ソース項である。
【0074】
(乱流粘性係数のモデル化)
渦粘性係数または乱流粘性係数μtは、kとεから次式(10)のように計算される。
【0075】
【数10】
【0076】
(モデル定数)
モデル定数C1ε、C2ε、C3ε、σk、σεは、次のデフォルト値を設定した。
【0077】
C1ε=1.44、C2ε=1.92、C3ε=0.09、σk=1.0、σε=1.3
【0078】
これらのデフォルト値は、基本的せん断乱流に対して、空気または水を用いた実験から求めたものである。実験対象は、一様せん断流、等方性格子乱流の減衰などである。これらのモデル定数値は、壁に囲まれた流れや、自由せん断流など、広い範囲の流れに対して、かなり良い結果を出すことが知られている。
【0079】
(kとεの決定)
kとεを明示的に指定する代わりに、乱流強度I、代表長さLを用いて、kとεを次式(11),(12)より導いた。
【0080】
【数11】
【0081】
【数12】
【0082】
なお、数式(11)において、uavgは平均流速である。また、数式(12)において、Cμは、乱流モデルで使用される経験値(約0.09)である。
【0083】
10.解析結果
上述の条件である場合、付与した水を高温水蒸気にするためには、上述のように熱源のエネルギーの36%をロスし、この影響で、コンロ入口の温度は1362Kから1043Kへと減少する結果となる。しかしながら、高温水蒸気の発生に伴い体積が膨張し流速が増すことで、効率的な燃焼が行われることがわかる。
【0084】
すなわち、図7には、上述の条件で解析による鍋底温度比較の結果を示しており、図7において実線L3が水を付与した場合を示しており、破線L4が水なしの場合を示している。同図を参照すると、通常の燃焼に比べ、水を付与することで鍋底の温度は全体的に14℃程度高くなっていることが分かる。また、図7は加熱開始から1800秒後の鍋底の温度解析結果であり、横軸は鍋底の半径方向における鍋底中心からの距離を示している。
【0085】
上記水付与の場合と水なしの場合との差は、解析上、加熱を開始してすぐに顕著に現われ、次第に開きは一定値となる結果であった。この結果が図8に示されている。図8において、実線L5が水付与の場合を示し、破線L6が水なしの場合を示している。
【0086】
また、図8には、直接比較するには体系が異なるが、検証実験における燃焼ガス量および付与する水分量を合わせて示している(実線L7:水あり、破線L8:水なし、本解析とは条件は異なる)。この実験結果でも、水付与の効果が見られた。
実験値と今回の解析結果は開きがあるが、これは実験では炉が断熱材に囲まれていたために、外に逃げる熱がなかった事が影響していると考えられる。
このように水蒸気生成により熱量を消費するものの、流速の増加が対流熱伝達促進に寄与することが解析によっても確認でき、本発明における対流による熱効率向上の効果が確認された。
【0087】
(ふく射による熱効率向上効果について)
次に、ふく射による熱効率向上効果の検証をした解析結果を説明する。
水蒸気は温暖化ガスとして知られ、温度が高いほど、ふく射の吸収・再放射が大きくなる。したがって、燃焼場のような高温下で水蒸気量が変化した場合、熱移動に変化が予想される。高温場での水蒸気のふく射物性を波長ごとに導入し、水蒸気量変化に対するふく射伝熱の変化を、実験場を模擬して評価したものが本解析である。
【0088】
1.解析手法
(光線追跡法によるふく射要素法)
本解析では、図9に示すような多面体で構成される任意形状のふく射要素を考える。位置ベクトルr<→>における方向ベクトルs<^>の単色ふく射強度をIλとすると、微小距離Sを通過する際のふく射エネルギーバランスは、次式(13)のように表される。なお、<>内の記号は、係数の上部に表記されるものであるが、ここでは上述と同様に形式的<>内に示すものとした。
【0089】
【数13】
【0090】
ここで、kλとσs,λは、それぞれ単色吸収係数と単色散乱係数である。
Фλ(s<^>’→s<^>)は、方向ベクトルs<^>’からs<^>への位相関数、ωは立体角である。
【0091】
単色減衰係数βλおよび散乱アルベドΩλをそれぞれ、βλ=kλ+σs,λ,、Ωλ=σs,λ/βλとすると、次式(14)が得られる。
【0092】
【数14】
【0093】
ここで取り扱う燃焼場では、鉛直方向の厚さと比較して水平方向の広がりが十分大きな媒体を考え、状態量や物性値の鉛直軸方向以外の変化が鉛直軸方向の変化に比べて近似的に無視できる1次元平行平板系を考える。解析モデルも平行平板系のもとで構築するが、3次元ふく射伝熱解析と原理的には等しいので、ここでは3次元ふく射伝熱解析について述べる。
ふく射要素法では、媒体を有限の要素に分割し、それぞれの要素i内において以下の仮定を満たすものとする。
【0094】
・各ふく射要素内では温度、屈折率、単位体積当たりの発熱量は一定である。
・ふく射性媒体中での散乱は等方性である。
・散乱されるふく射強度はその要素内では一様である。
【0095】
非等方性散乱媒体に対しては、上記数式(14)の右辺第3項の位相関数は複雑となり、この式を直接解くことは困難であるが、今回煤などの分散媒体は考慮しないため、右辺第3項は省略した。
【0096】
数式(14)において、図9のような系で外部からの入射ふく射がない場合、光路長Sに沿って積分すると、次式(15)を得る。
【0097】
【数15】
【0098】
ふく射性媒体における散乱成分と透過成分に対して、固体面における拡散反射成分と鏡面反射成分を対応させて考えると、ふく射性媒体と固体面を統一的に一つの式で扱うことができる。そこで、上記数式(15)の散乱アルベドを拡散反射率も含む量ΩDとして再定義し、鏡面反射率ΩSを導入する。さらに計算を簡略化するために平均厚さS<−>=V/A(s<^>)を導入すると、要素iからs<^>方向に放射・散乱されるふく射エネルギーdQj,i,λが、次式(16)で近似される。
【0099】
【数16】
【0100】
ここで、Ai(s<^>)はs<^>方向から見た要素の投影面積である。上記数式(16)を全立体角方向に積分することで、要素iから放射され要素iの外部へ出て行くふく射エネルギーは次式(17)で表される。
【0101】
【数17】
【0102】
さらに、次式(18)のふく射有効面積AiRを導入する。ふく射有効面積は、固体平面ふく射要素の場合その表面積と一致する。AiRは、次式(18)で表される。
【0103】
【数18】
【0104】
ふく射有効面積AiRを用いると、上記数式(17)は、次式(19)と表される。
【0105】
【数19】
【0106】
ただし、上記数式(19)において、εi,λ=1−ΩDi,λ−ΩSi,λ、単色黒体放射能Eb,i,λ=πIb,i,λ、外来照射量GI,λ=πIDi,λである。また、Qj,i,λは拡散面および鏡面に対して定義された拡散ふく射伝熱量である。
【0107】
要素iにおける福射バランスから、正味のふく射伝熱量QX,i,λは、次式(20)で表わされる。
【0108】
【数20】
【0109】
外来照射伝熱量QG,i,λおよび放射ふく射伝熱量QT,i,λは、次式(21),(22)のように定義する。
【0110】
【数21】
【0111】
【数22】
【0112】
N個からなる体積要素または面要素の解析系を考えたとき、上記数式(21)、(22)はそれぞれ次式(23)、(24)のように表わされる。
【0113】
【数23】
【0114】
【数24】
【0115】
ここで、FDj,iとFAj,tはそれぞれ、要素jからiへの散乱形態係数および吸収形態係数であり、減衰形態係数FEj,iと次式(25)、(26)の関係がある。
【0116】
【数25】
【0117】
【数26】
【0118】
また、減衰形態係数FEj,iは、ある要素iから出たふく射が要素jにおいて減衰される割合として定義され、上記数式(16),(17)より、次式(27)で表される。
【0119】
【数27】
【0120】
ここで、fi,jは、要素iから放射されたふく射が要素jに到達する割合、すなわち幾何学的な形態係数を表わす。したがって、外来照射伝熱量QG,i,λと減衰形態係数FEj,iは、次式(28)のような関係がある。
【0121】
【数28】
【0122】
Fj,iおよびQiをそれぞれN元の行列Fと列ベクトルQとすると、上記数式(25)、(26)からQJを消去することによって、QX=FXQTとなる。ただし、FX=I−FA(I−FD)−1である。
【0123】
したがって、各要素の温度が与えられると、各要素の単色放射ふく射伝熱量QT,i,λが求められ、上記各行列式より、各要素の正味の単色ふく射伝熱量QX,i,λを求めることができる。これを波長に対して積分すると、各要素の単位体積当たりの発熱量が次式(29)、(30)で計算される。
【0124】
【数29】
【0125】
【数30】
【0126】
(一次元非定常熱伝導)
次に、解析モデルに成立する、1次元非定常熱伝導方程式は次式(31)で表される。
【0127】
【数31】
【0128】
上記数式(31)において、左辺は温度の時間変化による非定常項,右辺第1項は熱伝導による発熱項、および右辺第2項はその他の熱源による内部発熱項である。数式(31)はモデル内における単位体積、単位時間当たりのエネルギーバランスを示している。ここでは数式(31)の内部発熱項にふく射による発熱量を代入することで、ふく射と熱伝導の複合伝熱解析を行う。ふく射熱流束の発散qXは正の値をもつときは放熱を、負の値をもつときは吸熱を意味する。よって、上記数式(30)より、次式(32)となる。
【0129】
【数32】
【0130】
ここで、qX,iは、数式(30)より与えられる単位体積当たりの発熱量である。Tiは、時間tにおける位置xiでの要素iにおける温度を表す。
ふく射・伝導複合伝熱解析においては、有限体積法により上記数式(32)を離散化し、各時間における温度分布を完全陰解法により解くものとした。
【0131】
2.解析モデル・解析条件
解析モデルには、図10に示す一次元解析モデルを用いた。ガスコンロにおける水の入った鍋の加熱を考え、空気層を4cm、鍋底としてアルミニウム層を0.3cm、鍋の中の水として水層を5cmとした。鍋底上面、水面においては自然対流が起こるものとした。初期温度は全要素300Kとし、水の上の空気は初期温度のまま一定とした。また、アルミニウムの放射率は、金属の一般的な値である0.1とした。
【0132】
3.熱流速
ガスコンロの燃料には都市ガス(プロパン)を用いた。都市ガスのふく射強度は、波長2.02μmにおいて相対強度0.02、波長3.07μmにおいて相対強度0.13、波長4.4μmにおいて相対強度1.0である。波長λにおいて単色放射能が最大値を示す黒体放射温度は、次式(33)で表される。
【0133】
【数33】
【0134】
これより、各波長において単色放射能が最大値を示す黒体放射温度を求めた。また、黒体の単色放射能Eb,λ[W/(m2・μm)]は、次式(34)で表される。
【0135】
【数34】
【0136】
そして、各波長、温度における黒体単色放射能を求めた。そして、それぞれに相対強度を乗じ、それらを足し合わせたものを、都市ガスの単色放射能とした。この単色放射能の波長分布を図11に示す。なお、全波長域で積分した熱流束は37394.551W/m2となる。
【0137】
ここで、水の噴射量をx[cc/min]とすると、m[g/s]=x/60となる。噴射する水の温度を20℃とすると、その水が水蒸気となる過程で消費する熱量は以下のようにした。
【0138】
H20(飽和水)20℃→H20(飽和水)100℃の過程で消費する熱量は、
Q1[J/s]=mct=m[g/s]×4.1868[J/g・K]×80[K]、
H20(飽和水)100℃→H20(水蒸気)の過程で消費する熱量は、
Q2[MJ/s]=2.26[MJ/kg]×m/1000[kg/s]。
【0139】
よって、水の噴射量に合わせてこれらの熱量を先ほどの都市ガスの熱流束から差し引いた値を計算に用いた。
【0140】
4.解析結果
水の噴射無しの場合と、噴射量1cc/min、2cc/min、3cc/min、4cc/min、5cc/minの場合とで解析を行った。ふく射伝熱と非定常熱伝導との複合伝熱解析を行い、1秒ごとにふく射の計算を更新しながら600秒(10分)間計算を行った。
【0141】
空気に関しては、水の噴射量を増やしていくと、ある程度の量までは、空気中の水蒸気量が増えることで、その水蒸気のふく射性ガスとしての働きにより空気の吸収熱流束は増えることが確認できた。そして空気の温度は高くなった。しかし、ある量を超えて噴射量を増やすと、水蒸気生成過程の潜熱等による熱消費の影響の方が強くなり、空気の吸収熱流束、温度共に低下した。
【0142】
そして、図12に鍋底の温度の時間推移結果が示され、図13には鍋底の吸収熱流束の時間推移結果が示されている。図12において横軸は時間、縦軸は温度(K)を示している。図13において横軸は時間、縦軸は吸収熱流束(W/m2)を示している。また、図12においてS1は水噴射なしの結果、S2は噴射量1cc/minの結果、S3は噴射量2cc/minの結果、S4は噴射量3cc/minの結果、S5は噴射量4cc/minの結果、S6は噴射量5cc/minの結果を示している(S3とS4は略同一結果であり、重なって示されている)。図13において、S7は水噴射なしの結果、S8は噴射量1cc/minの結果、S9は噴射量2cc/minの結果、S10は噴射量3cc/minの結果、S11は噴射量4cc/minの結果、S12は噴射量5cc/minの結果を示している。
【0143】
鍋底に関しては、水の噴射量を増やしていくと、熱源との間の水蒸気が熱を吸収してしまうことと、水蒸気生成過程の潜熱等による熱消費とにより、図13に示すように鍋底の吸収熱流束は低下した結果となった。しかしながら、上述と同様に、ある程度の量までの噴射であれば、空気の温度が上昇するため、図12に示すように、高温となった空気の蓄熱・保温効果が働き鍋底の温度は結果として高くなる結果となった。そして当然、そのある量を超えて噴射量を増やすと、水蒸気の吸収や潜熱等の熱消費といったマイナスの効果が支配的となり、鍋底の温度も低下した。
【0144】
上述の結果より、水を噴射することで潜熱等のマイナスの要因は働くが、ある程度の量までであれば、ふく射性ガスとしての蓄熱・保温効果の方がそれらよりも支配的であり、加熱の効率化に寄与し得ることが確認できた。
【0145】
また、以上で説明した対流及びふく射による熱効率の向上効果の解析結果から、水蒸気発生により熱効率向上することが確認できるが、供給する水の量によっては所望の結果が得られない場合もあることも確認され、このため水の供給量には好適な範囲があると考えられた。ここで、対流の解析上で用いた、プロパンガスの単位体積あたりの発熱量:4.5×107(J/m2)、100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気にするための熱量:2.26×106(J/m3)を用いて考察する。
【0146】
上述したこの条件での解析では、プロパンガスの投入量0.336m3/Hr、水の投入量0.5g/sec=1.8kg/Hrで熱効率向上の効果が認められている。ここで、プロパンガスの単位時間当たりの発熱量Wpは、Wp=4.5×107×0.336=1.52×107(J/Hr)となる。水の単位時間当たりの潜熱量Wwは、Ww=2.26×106×1.8=4.10×106(J/Hr)となる。そして、これらの比率Ww/Wp=0.27である。この数値と合わせて、加熱装置の側壁部分の断熱構造や伝熱特性(上記対流とふく射の解析での条件の違い等)を考慮すると、好適な範囲にはある程度の幅があることが推測される。水の供給量としては、熱源の発熱量に対して、水の蒸発潜熱に消費される熱量が5%〜50%程度とすることが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0147】
1,20 加熱装置
2 釜体
3 筐体
4 バーナー(加熱手段)
9 排気口
10 多孔質体(吸水体、水供給手段)
11 水供給管(水供給部、水供給手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象を釜体に投入して加熱を行う加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として比較的大型なものに、金属溶融炉、ボイラー等の工業炉がある。
このような工業炉では、バーナー等により直接釜を加熱し固体の熱伝導により釜全体を加熱することが一般的である。しかし、このような加熱方式では熱効率が35%程度であるため、従来から熱効率の向上が望まれていた。
【0003】
直接釜を加熱する方式において熱効率が35%程度と低く留まる理由としては、バーナー等の加熱時に生じる排気ガスが熱を持ち去ることが挙げられる。そこで、この点に着目し、排熱を回収することで熱効率の向上を図る技術が従来から種々提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、排熱回収型バーナーを備えた溶融炉が開示されており、この溶融炉では、回収した排熱による熱をバーナーの燃焼空気の予熱に利用し、熱効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−18828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるような排熱を回収して熱効率の向上を図る装置は、間接的に熱効率を向上させるものが多く、直接的に釜に対する熱効率を向上させるものではないため、熱効率の向上効果として十分なものとは言い難く、また、装置が複雑化及び大型化してしまうという問題もある。
【0007】
本発明は係る実情に鑑みて、簡易な構造で、熱効率を飛躍的に向上させることが可能な加熱装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、加熱対象が投入される釜体と、前記釜体の側面及び底面を囲うとともに前記釜体を支持する筐体と、前記釜体と前記筐体との間に設けられ前記釜体を加熱する加熱手段とを備えた加熱装置であって、前記筐体内に水を供給する水供給手段を備え、前記加熱手段の発熱の一部を利用して前記水供給手段によって供給された水を水蒸気に気化させ、前記加熱手段による加熱とともに水蒸気によって前記釜体を加熱することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記加熱手段の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記加熱手段が前記釜体の底部に近接又は当接して配置され、前記排気口が前記筐体の前記釜体の底部よりも上方に位置する部位に設けられ、前記釜体の側面と前記筐体との間に螺旋状の流路が設けられており、前記加熱手段の加熱によって気化させた水蒸気を、前記螺旋状の流路によって前記釜体の側面を回流させ、前記ガス廃棄物とともに前記排気口から排出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記水供給手段が、前記筐体内に設けられ水を吸水する吸水性を有する吸水体と、前記吸水体に水を供給する水供給部とで構成され、前記吸水体を前記加熱手段によって加熱することで、水蒸気を発生させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記吸水体が多孔質体であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記加熱手段の加熱によって気化させる水蒸気には、100度以上の高温水蒸気が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,6に記載の発明によれば、加熱手段による固体伝熱に加え、水蒸気による対流及びふく射による釜体への伝熱により、熱効率を飛躍的に向上させることができる。また、熱効率の向上によるエネルギー消費量の削減により、二酸化炭素等の排出量を低減することができ、環境にやさしい加熱装置を実現できる。
また、水蒸気により釜体全体に渡って加熱が行われるため、釜体内部の温度分布を均一化でき、加熱対象を均一に加熱でき、特に材料製造等の際に材料密度の均一化を図れる。
また、加熱手段が設けられた筐体内に水を供給する簡易な構成であるため、装置を大型化及び複雑化することがない。さらには、既存設備に容易に構築できる構造であるため、製造コストを抑えて熱効率の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、排気口による排気作用によって対流を促進することができる。
請求項3に記載の発明によれば、水蒸気による熱伝熱を釜体側面に対して十分に行うことができる。
請求項4、5に記載の発明によれば、筐体内に供給する水の量を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る加熱装置の構成を示した縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る加熱装置の構成を示した縦断面図である。
【図3】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(対流解析)における解析モデルを示した図である。
【図4】対流解析に用いた計算メッシュを示した図である。
【図5】対流解析における計算メッシュの詳細仕様を説明する表を示した図である。
【図6】対流解析におけるコンロ入口の流速の時間変化を示した図である。
【図7】対流解析における所定時間の鍋底温度の解析結果を示した図である。
【図8】対流解析における時間推移と鍋底温度との関係の解析結果を示した図である。
【図9】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(ふく射解析)における解析モデルを示した図である。
【図10】本発明の熱効率向上効果を検証するための解析(ふく射解析)における解析モデルをより具体的に示した図である。
【図11】ふく射解析において用いる都市ガスの単色放射能の波長分布を示した図である。
【図12】ふく射解析における時間推移と鍋底温度との関係の解析結果を示した図である。
【図13】ふく射解析における時間推移と鍋底の吸収熱流束との関係の解析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る加熱装置1の概略構成を示した縦断面図である。加熱装置1は、水、金属等の加熱対象が投入される釜体2と、釜体2の側面及び底面を囲うとともに釜体2を支持する筐体3と、釜体2と筐体3との間に設けられ釜体2を加熱するバーナー4とを備えている。
【0019】
釜体2は有底円筒状の金属製容器であり、上部開口周囲に形成されたフランジ5を筐体3の上部に形成された支持孔6の周縁に当接させ、その側面及び底面を筐体3内に収容させた状態で筐体3に支持されている。釜体2と筐体3の間には一定空間が形成されている。バーナー4は釜体2の底部7の下方に設けられている。
【0020】
バーナー4は筐体2の側壁部に支持され、釜体2の底部7に近接して配置されている。バーナー4は筐体3外部に引き出された燃料供給管8から燃料を供給され、釜体2の底部7を主に加熱する。燃料供給管8から供給される燃料は本実施形態ではガスが用いられる。
【0021】
筐体3の側壁部の上側部分には、バーナー4の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口9が形成され、排気口9は釜体2の底部7よりも上方において一端を開口し、一端側の開口から水平に延出した後、上方に折曲して他端を外部に臨ませる。排気口9は煙突形状を呈している。
【0022】
筐体2内には、水を吸水する吸水性を有した多孔質体10が設けられ、多孔質体10は具体的には軽石である。多孔質体10は、筐体2の底部上面に設けられ、上方で燃焼するバーナー4の燃焼炎Fによって加熱される。多孔質体10は、筐体3の底部から外部に引き出された水供給管11から水を供給される。
【0023】
バーナー4は多孔質体10に吸水された水を蒸発させ、水蒸気、好ましくは100度以上の高温水蒸気に気化させる。水供給管11から多孔質体10に対して供給される水の供給量は、バーナー4の燃焼炎Fの発熱量に応じて制御可能とされている。
【0024】
上記構成を備えた加熱装置1では、バーナー4の燃焼炎の発熱の一部を利用して多孔質体10に吸水させた水を水蒸気に気化させ、バーナー4による加熱とともに気化させた水蒸気によって釜体2を加熱する。
【0025】
この加熱装置1では、バーナー4による固体伝熱に、水蒸気による対流及びふく射による伝熱を加えることにより、熱効率を飛躍的に向上させることができる。また、熱効率の向上によるエネルギー消費量の削減により、二酸化炭素等の排出量を低減することができ、環境にやさしい加熱装置を実現できる。
【0026】
また、水蒸気により釜体2全体に渡って加熱が行われるため、釜体2内部の温度分布を均一化でき、加熱対象を均一に加熱でき、特に材料製造等の際に材料密度の均一化を図れる。また、バーナー4が設けられた筐体3内に水を供給する簡易な構成であるため、装置を大型化及び複雑化することがない。さらには、既存設備に容易に構築できる構造であるため、製造コストを抑えて熱効率の向上を図ることができる。
【0027】
また、加熱装置1では筐体3に排気口9を設けているが、この場合、排気口9による排気作用によって対流を促進することができる。また、加熱装置1では、軽石である多孔質体10に水を吸水させ、これを加熱することで水蒸気を発生させるが、この場合には、所望の水蒸気量を発生させる際に供給する水の量を好適に制御できる。また、軽石のような鉱物である場合、熱の吸収性が高いため水蒸気を効率的に発生させることができる。
【0028】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。図2には、本実施形態に係る加熱装置20の概略構成が示されている。なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号で示し、説明は省略する。
【0029】
本実施形態に係る加熱装置20では、釜体2の側面と筐体3との間に螺旋状の流路21が設けられている。流路21は、釜体2の側面に一体的に設けられる態様でも、筐体3側壁内周面に一体的に設けられる態様でも構わない。
【0030】
この加熱装置20では、バーナー4の加熱によって蒸発された水蒸気が、螺旋状の流路21によって釜体2の側面を回流し、バーナー4の発熱によって生じるガス廃棄物とともに排気口9から排出される。このような構成によれば、水蒸気による熱伝熱を釜体2側面に対して十分に行うことができるため、熱効率をより向上させることができる。
【0031】
以上で本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものはない。例えば、上記第1、第2の実施形態に係る加熱装置では、加熱手段として気体燃料(ガス)を用いるバーナーを用いたが、ガソリンのような液体燃料を用いるバーナーを用いてもよい。
【0032】
また、バーナーに代えて、電気ヒータ、電磁誘導ヒータ(所謂IH)を加熱手段としてもよい。なお、加熱手段を電気ヒータ、電磁誘導ヒータ(所謂IH)とした場合は、多孔質体10を加熱手段に当接させて加熱する態様とする。
【0033】
また、上記実施形態では、多孔質体10を筐体3内に配置して、バーナー4による加熱する態様を説明したが、例えば単に水を貯留する容器を筐体3内に設ける態様としてもよい。また、渦巻状の管(所謂スパイラル管)に水を充填しておき、管を加熱することで蒸発した水蒸気を放出するような態様であっても構わない。さらには、筐体3内にインジェクターのような水噴射装置を備える構成としても構わない。
【0034】
また、ふく射伝熱による効果を向上させようとする場合には、釜体に対して赤外線吸収構造を設けてもよい。このような構造としては、幾何学構造等が考えられる。
【0035】
なお、上記実施形態は、本発明の加熱装置を比較的小規模な炉に適用した場合を説明したものであるが、本発明は種々の産業分野で適用可能なものである。比較的大規模なものであれば、管式加熱炉、金属加熱炉、窯業焼成炉、ガス溶融炉、ガス化溶融炉、ボイラー等の工業炉において適用できる。また、家庭用や業務用の調理用品分野等でも適用可能であり、具体的には、鍋、ポット、ホットプレート等においても好適に用いることができる。
【0036】
<本発明の効果の検証>
以下では、本発明の上記実施形態に構成の近い家庭用コンロをモデル化し、具体的な条件を付与して本発明の効果を検証した解析結果を説明するものとする。
【0037】
(対流による熱効率向上効果について)
高温水蒸気発生により流体の体積が膨張すると、流速が増加することが考えられる。流速が大きくなれば、(強制)対流熱伝達率は大きくなる。これが、本発明における対流による熱効率向上の効果である。以下で説明する解析結果は、流速の増加が対流熱伝達促進にどれほど寄与するのか検証したものである。
【0038】
1.解析モデル
解析モデルとしては、図3に示すような2次元軸対称系を採用した。上記実施形態の構成を想定し、釜体2(鍋)に相当するアルミニウム金属に燃焼ガスを想定した高温空気を真下から流入させ、温めるものとした。
【0039】
図4に解析に用いた計算メッシュを示し、図5に計算メッシュの詳細な仕様について示す。計算格子は3角形要素とした。
【0040】
2.解析条件
図3の解析モデル上において、解析領域上部A、および側部Bは解放境界とした。解析領域底部のコンロに相当する部分を除いた領域Cは断熱境界条件とした。空間を満たす空気の初期温度は300Kとし、鍋を想定したアルミニウムの初期温度も300Kに設定した。バーナー(以下、コンロ)に相当する部分(D)での熱源においては熱流束境界条件を設定し、ガスの流入速度は圧力境界条件として与え、鍋を加熱するものとした。なお、鍋の底の半径Rは7cm、鍋の深さhは12cm、鍋の開口の半径rは10cmである。鍋底とコンロとの距離dは4cm、コンロの半径bは5cm、領域Cの幅Wは25cm、側部Bの高さは40cmとした。
【0041】
3.熱源となる熱流速
使用する燃焼ガスは、都市ガスとして一般的に用いられているプロパンを仮定した。プロパンの標準熱量は45(MJ/m3)=12.5(kW/m3)=4.17(kW)であり、ここで、ガスの消費量を4.2(kW/h)とし、この場合、1時間当たりのガスの消費量は4.2(kW/h)÷12.5(kW/m3)=0.336(m3/h)である。プロパンの密度は、0.1MPa、21℃において1.87(kg/m3)であるから、0.336(m3/h)×1.87(kg/m3)=0.63(kg/h)の質量流量を燃焼させる。このとき、コンロ部の面積を実際のガスコンロから概算すると、0.785×10−2(m2)であることから、水を付与せず、燃焼ガスのみを流入する場合の熱流束は、q=4.17(kW)÷0.785×10−2(m2)=531210(W/m2)となる。
【0042】
一方、上記燃焼ガスに水蒸気を付与する場合、30(cc/min)=0.5(g/s)の水分を与えて過熱度200℃の過熱水蒸気を生成したと仮定すると、過熱水蒸気生成までに熱量を必要とする。
【0043】
飽和水を想定し、20℃の飽和水を100℃の飽和水とするための熱量は、
Q1=mct=0.5(g/s)×4.2(J/g・K)×80(K)=168(J/s)=0.168(kW)、
100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気にするための熱量は、
Q2=2.26(MJ/kg)×0.5/1000(kg/s)=1.13(kW)、
100℃の飽和水蒸気を200℃の過熱水蒸気(高温水蒸気)にするための熱量は、
Q3=mc’t=0.5(g/s)×2.1(J/g・K)×200(K)=210(J/s)=0.210(kW)である。
【0044】
したがって、水を付与したことによって失う熱量(ロス)は、Q1+Q2+Q3=1.51(kW)となる。水を付与した際に燃焼ガスが持つ熱量は、4.17(kW)−1.51(kW)=2.66(kW)となるため、水分を付与した燃焼ガスを流入させる場合の熱流束は、q’=2.66(kW)÷0.785×10−2(m2)=338853(W/m2)となる。
【0045】
4.流速
家庭用コンロの燃焼ガスの流速を実測すると、およそu=0.33(m/s)である。
一方、水を付与した場合、飽和水蒸気から過熱水蒸気を生成する過程で体積膨張する。水の付与量は30(cc/min)=0.5(g/s)=0.5×10−6(m3)/S)であり、液体での体積変化は小さいと仮定する。
1秒間を考えると、100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気に変化させた場合、体積は1673倍になり、(0.5×10−6(m3)×1673=0.8365×10−3(m3))、100℃の飽和水蒸気を、200℃の過熱水蒸気に変化させた場合、表1より1.56倍となる(0.8365×10−3(m3)×1.56=1.30×10−3(m3))。なお、表1は、日本機械学会蒸気表(1999)を抜粋した。
【0046】
【表1】
【0047】
したがって、コンロの火口部分で過熱水蒸気(高温水蒸気)が生成されたと仮定すると、水を付与した際の燃焼ガスの流速は、u’=u+V/S=0.33+1.30×10−3(m3/s)÷0.785×10−2(m2)=0.50(m/s)となる。
【0048】
図6は、圧力境界条件を設定し計算したコンロ入口の流速の時間変化を示したものである。図6において、実線L1が水を付与した場合を示し、破線L2が水を付与しない場合を示している。上述の計算結果とほぼ等しい流速設定となっていることがわかる。
【0049】
5.支配方程式
数値解析に用いた支配方程式を以下に示す。
【0050】
6.連続方程式
質量保存方程式(連続方程式)は、次式(1)のように表すことができる。
【0051】
【数1】
【0052】
上記数式(1)は、質量保存方程式の一般形を示し、非圧縮性及び圧縮性流れに対して有効である。ソースSmは、分散した(即ち、液滴の蒸発による)第2相と他のユーザ定義によるソースから、連続相に加えられた質量である。ここでは、Sm=0である。
【0053】
7.運動量保存式
慣性(非加速)基準座標における運動量保存式は、次式(2)のように表すことができる。
【0054】
【数2】
【0055】
ここで、上記数式(2)において、pは静圧、τ<=>は応力テンソル、ρg<→>とF<→>は夫々引力体積および外的体積力である。F<→>は多孔質媒体など、他のモデル依存のソース項を含む。なお、ここで、明細書文中内においては、数式(2)で係数(例えばτ)の上部に標記された記号を形式的に<>内に示すものとした(以下でも同様とする)。そして、τ<=>は、次式(3)で表される。
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、上記数式(3)において、μは分子粘度、Iは単位テンソルで、右辺の第2項は体積膨張の効果を表す。
【0058】
8.エネルギー方程式
エネルギー方程式を次式(4)で計算するものとした。
【0059】
【数4】
【0060】
ここで、数式(4)において、kは有効熱伝導率(=k+kt,ktは乱流熱伝導率)で、J<→>jは、は化学種「j」の拡散流束である。数式(4)の右辺の第3項までは、それぞれ伝導と化学種の拡散、粘性散逸によるエネルギー輸送を表している。また、Shは、化学反応による生成熱や体積熱源を含む熱源が含まれる。
【0061】
また、数式(4)において、Eは次式(5)で表される。
【0062】
【数5】
【0063】
ここで、上記数式(5)において、hは顕熱エンタルピーであり、理想気体に対しては、次式(6)で定義される。
【0064】
【数6】
【0065】
上記数式(6)において、Yjは化学種「j」の質量分率、hjは次式(7)で表される。
【0066】
【数7】
【0067】
上記数式(7)において、Tは300Kである。
【0068】
9.乱流モデル
(標準k−εモデル)
標準k−εモデルは、乱流運動エネルギー(k)とその散逸率(ε)の輸送方程式に対する半経験的モデルである。kのモデル輸送方程式は厳密な方程式から導かれるのに対し、εのモデル輸送方程式は、物理的な推理によって得られたものであり、数学的に厳密な輸送方程式とはほとんど似たところがない。
【0069】
標準k−εモデルの導出に当たっては、流れは完全に乱流であり、分子粘性の影響は無視できるものと仮定されている。したがって、標準k−εモデルが使用できるのは、完全な乱流の場合である。
【0070】
(標準k−εモデルの輸送方程式)
乱流運動エネルギーk、その散逸率εは次式(8)の輸送方程式から得られる。
【0071】
【数8】
【0072】
【数9】
【0073】
上記数式(8),(9)において、Gkは平均速度勾配による乱流運動エネルギーの生成を表す。Gbは浮力による乱流エネルギーの生成である。YMは、圧縮性乱流における膨張変動の散逸率への寄与を表す。C1ε、C2ε、C3εはモデル定数、σk、σεは、それぞれkとεに対する乱流プラントル数である。Sk、Sεは、ユーザ定義ソース項である。
【0074】
(乱流粘性係数のモデル化)
渦粘性係数または乱流粘性係数μtは、kとεから次式(10)のように計算される。
【0075】
【数10】
【0076】
(モデル定数)
モデル定数C1ε、C2ε、C3ε、σk、σεは、次のデフォルト値を設定した。
【0077】
C1ε=1.44、C2ε=1.92、C3ε=0.09、σk=1.0、σε=1.3
【0078】
これらのデフォルト値は、基本的せん断乱流に対して、空気または水を用いた実験から求めたものである。実験対象は、一様せん断流、等方性格子乱流の減衰などである。これらのモデル定数値は、壁に囲まれた流れや、自由せん断流など、広い範囲の流れに対して、かなり良い結果を出すことが知られている。
【0079】
(kとεの決定)
kとεを明示的に指定する代わりに、乱流強度I、代表長さLを用いて、kとεを次式(11),(12)より導いた。
【0080】
【数11】
【0081】
【数12】
【0082】
なお、数式(11)において、uavgは平均流速である。また、数式(12)において、Cμは、乱流モデルで使用される経験値(約0.09)である。
【0083】
10.解析結果
上述の条件である場合、付与した水を高温水蒸気にするためには、上述のように熱源のエネルギーの36%をロスし、この影響で、コンロ入口の温度は1362Kから1043Kへと減少する結果となる。しかしながら、高温水蒸気の発生に伴い体積が膨張し流速が増すことで、効率的な燃焼が行われることがわかる。
【0084】
すなわち、図7には、上述の条件で解析による鍋底温度比較の結果を示しており、図7において実線L3が水を付与した場合を示しており、破線L4が水なしの場合を示している。同図を参照すると、通常の燃焼に比べ、水を付与することで鍋底の温度は全体的に14℃程度高くなっていることが分かる。また、図7は加熱開始から1800秒後の鍋底の温度解析結果であり、横軸は鍋底の半径方向における鍋底中心からの距離を示している。
【0085】
上記水付与の場合と水なしの場合との差は、解析上、加熱を開始してすぐに顕著に現われ、次第に開きは一定値となる結果であった。この結果が図8に示されている。図8において、実線L5が水付与の場合を示し、破線L6が水なしの場合を示している。
【0086】
また、図8には、直接比較するには体系が異なるが、検証実験における燃焼ガス量および付与する水分量を合わせて示している(実線L7:水あり、破線L8:水なし、本解析とは条件は異なる)。この実験結果でも、水付与の効果が見られた。
実験値と今回の解析結果は開きがあるが、これは実験では炉が断熱材に囲まれていたために、外に逃げる熱がなかった事が影響していると考えられる。
このように水蒸気生成により熱量を消費するものの、流速の増加が対流熱伝達促進に寄与することが解析によっても確認でき、本発明における対流による熱効率向上の効果が確認された。
【0087】
(ふく射による熱効率向上効果について)
次に、ふく射による熱効率向上効果の検証をした解析結果を説明する。
水蒸気は温暖化ガスとして知られ、温度が高いほど、ふく射の吸収・再放射が大きくなる。したがって、燃焼場のような高温下で水蒸気量が変化した場合、熱移動に変化が予想される。高温場での水蒸気のふく射物性を波長ごとに導入し、水蒸気量変化に対するふく射伝熱の変化を、実験場を模擬して評価したものが本解析である。
【0088】
1.解析手法
(光線追跡法によるふく射要素法)
本解析では、図9に示すような多面体で構成される任意形状のふく射要素を考える。位置ベクトルr<→>における方向ベクトルs<^>の単色ふく射強度をIλとすると、微小距離Sを通過する際のふく射エネルギーバランスは、次式(13)のように表される。なお、<>内の記号は、係数の上部に表記されるものであるが、ここでは上述と同様に形式的<>内に示すものとした。
【0089】
【数13】
【0090】
ここで、kλとσs,λは、それぞれ単色吸収係数と単色散乱係数である。
Фλ(s<^>’→s<^>)は、方向ベクトルs<^>’からs<^>への位相関数、ωは立体角である。
【0091】
単色減衰係数βλおよび散乱アルベドΩλをそれぞれ、βλ=kλ+σs,λ,、Ωλ=σs,λ/βλとすると、次式(14)が得られる。
【0092】
【数14】
【0093】
ここで取り扱う燃焼場では、鉛直方向の厚さと比較して水平方向の広がりが十分大きな媒体を考え、状態量や物性値の鉛直軸方向以外の変化が鉛直軸方向の変化に比べて近似的に無視できる1次元平行平板系を考える。解析モデルも平行平板系のもとで構築するが、3次元ふく射伝熱解析と原理的には等しいので、ここでは3次元ふく射伝熱解析について述べる。
ふく射要素法では、媒体を有限の要素に分割し、それぞれの要素i内において以下の仮定を満たすものとする。
【0094】
・各ふく射要素内では温度、屈折率、単位体積当たりの発熱量は一定である。
・ふく射性媒体中での散乱は等方性である。
・散乱されるふく射強度はその要素内では一様である。
【0095】
非等方性散乱媒体に対しては、上記数式(14)の右辺第3項の位相関数は複雑となり、この式を直接解くことは困難であるが、今回煤などの分散媒体は考慮しないため、右辺第3項は省略した。
【0096】
数式(14)において、図9のような系で外部からの入射ふく射がない場合、光路長Sに沿って積分すると、次式(15)を得る。
【0097】
【数15】
【0098】
ふく射性媒体における散乱成分と透過成分に対して、固体面における拡散反射成分と鏡面反射成分を対応させて考えると、ふく射性媒体と固体面を統一的に一つの式で扱うことができる。そこで、上記数式(15)の散乱アルベドを拡散反射率も含む量ΩDとして再定義し、鏡面反射率ΩSを導入する。さらに計算を簡略化するために平均厚さS<−>=V/A(s<^>)を導入すると、要素iからs<^>方向に放射・散乱されるふく射エネルギーdQj,i,λが、次式(16)で近似される。
【0099】
【数16】
【0100】
ここで、Ai(s<^>)はs<^>方向から見た要素の投影面積である。上記数式(16)を全立体角方向に積分することで、要素iから放射され要素iの外部へ出て行くふく射エネルギーは次式(17)で表される。
【0101】
【数17】
【0102】
さらに、次式(18)のふく射有効面積AiRを導入する。ふく射有効面積は、固体平面ふく射要素の場合その表面積と一致する。AiRは、次式(18)で表される。
【0103】
【数18】
【0104】
ふく射有効面積AiRを用いると、上記数式(17)は、次式(19)と表される。
【0105】
【数19】
【0106】
ただし、上記数式(19)において、εi,λ=1−ΩDi,λ−ΩSi,λ、単色黒体放射能Eb,i,λ=πIb,i,λ、外来照射量GI,λ=πIDi,λである。また、Qj,i,λは拡散面および鏡面に対して定義された拡散ふく射伝熱量である。
【0107】
要素iにおける福射バランスから、正味のふく射伝熱量QX,i,λは、次式(20)で表わされる。
【0108】
【数20】
【0109】
外来照射伝熱量QG,i,λおよび放射ふく射伝熱量QT,i,λは、次式(21),(22)のように定義する。
【0110】
【数21】
【0111】
【数22】
【0112】
N個からなる体積要素または面要素の解析系を考えたとき、上記数式(21)、(22)はそれぞれ次式(23)、(24)のように表わされる。
【0113】
【数23】
【0114】
【数24】
【0115】
ここで、FDj,iとFAj,tはそれぞれ、要素jからiへの散乱形態係数および吸収形態係数であり、減衰形態係数FEj,iと次式(25)、(26)の関係がある。
【0116】
【数25】
【0117】
【数26】
【0118】
また、減衰形態係数FEj,iは、ある要素iから出たふく射が要素jにおいて減衰される割合として定義され、上記数式(16),(17)より、次式(27)で表される。
【0119】
【数27】
【0120】
ここで、fi,jは、要素iから放射されたふく射が要素jに到達する割合、すなわち幾何学的な形態係数を表わす。したがって、外来照射伝熱量QG,i,λと減衰形態係数FEj,iは、次式(28)のような関係がある。
【0121】
【数28】
【0122】
Fj,iおよびQiをそれぞれN元の行列Fと列ベクトルQとすると、上記数式(25)、(26)からQJを消去することによって、QX=FXQTとなる。ただし、FX=I−FA(I−FD)−1である。
【0123】
したがって、各要素の温度が与えられると、各要素の単色放射ふく射伝熱量QT,i,λが求められ、上記各行列式より、各要素の正味の単色ふく射伝熱量QX,i,λを求めることができる。これを波長に対して積分すると、各要素の単位体積当たりの発熱量が次式(29)、(30)で計算される。
【0124】
【数29】
【0125】
【数30】
【0126】
(一次元非定常熱伝導)
次に、解析モデルに成立する、1次元非定常熱伝導方程式は次式(31)で表される。
【0127】
【数31】
【0128】
上記数式(31)において、左辺は温度の時間変化による非定常項,右辺第1項は熱伝導による発熱項、および右辺第2項はその他の熱源による内部発熱項である。数式(31)はモデル内における単位体積、単位時間当たりのエネルギーバランスを示している。ここでは数式(31)の内部発熱項にふく射による発熱量を代入することで、ふく射と熱伝導の複合伝熱解析を行う。ふく射熱流束の発散qXは正の値をもつときは放熱を、負の値をもつときは吸熱を意味する。よって、上記数式(30)より、次式(32)となる。
【0129】
【数32】
【0130】
ここで、qX,iは、数式(30)より与えられる単位体積当たりの発熱量である。Tiは、時間tにおける位置xiでの要素iにおける温度を表す。
ふく射・伝導複合伝熱解析においては、有限体積法により上記数式(32)を離散化し、各時間における温度分布を完全陰解法により解くものとした。
【0131】
2.解析モデル・解析条件
解析モデルには、図10に示す一次元解析モデルを用いた。ガスコンロにおける水の入った鍋の加熱を考え、空気層を4cm、鍋底としてアルミニウム層を0.3cm、鍋の中の水として水層を5cmとした。鍋底上面、水面においては自然対流が起こるものとした。初期温度は全要素300Kとし、水の上の空気は初期温度のまま一定とした。また、アルミニウムの放射率は、金属の一般的な値である0.1とした。
【0132】
3.熱流速
ガスコンロの燃料には都市ガス(プロパン)を用いた。都市ガスのふく射強度は、波長2.02μmにおいて相対強度0.02、波長3.07μmにおいて相対強度0.13、波長4.4μmにおいて相対強度1.0である。波長λにおいて単色放射能が最大値を示す黒体放射温度は、次式(33)で表される。
【0133】
【数33】
【0134】
これより、各波長において単色放射能が最大値を示す黒体放射温度を求めた。また、黒体の単色放射能Eb,λ[W/(m2・μm)]は、次式(34)で表される。
【0135】
【数34】
【0136】
そして、各波長、温度における黒体単色放射能を求めた。そして、それぞれに相対強度を乗じ、それらを足し合わせたものを、都市ガスの単色放射能とした。この単色放射能の波長分布を図11に示す。なお、全波長域で積分した熱流束は37394.551W/m2となる。
【0137】
ここで、水の噴射量をx[cc/min]とすると、m[g/s]=x/60となる。噴射する水の温度を20℃とすると、その水が水蒸気となる過程で消費する熱量は以下のようにした。
【0138】
H20(飽和水)20℃→H20(飽和水)100℃の過程で消費する熱量は、
Q1[J/s]=mct=m[g/s]×4.1868[J/g・K]×80[K]、
H20(飽和水)100℃→H20(水蒸気)の過程で消費する熱量は、
Q2[MJ/s]=2.26[MJ/kg]×m/1000[kg/s]。
【0139】
よって、水の噴射量に合わせてこれらの熱量を先ほどの都市ガスの熱流束から差し引いた値を計算に用いた。
【0140】
4.解析結果
水の噴射無しの場合と、噴射量1cc/min、2cc/min、3cc/min、4cc/min、5cc/minの場合とで解析を行った。ふく射伝熱と非定常熱伝導との複合伝熱解析を行い、1秒ごとにふく射の計算を更新しながら600秒(10分)間計算を行った。
【0141】
空気に関しては、水の噴射量を増やしていくと、ある程度の量までは、空気中の水蒸気量が増えることで、その水蒸気のふく射性ガスとしての働きにより空気の吸収熱流束は増えることが確認できた。そして空気の温度は高くなった。しかし、ある量を超えて噴射量を増やすと、水蒸気生成過程の潜熱等による熱消費の影響の方が強くなり、空気の吸収熱流束、温度共に低下した。
【0142】
そして、図12に鍋底の温度の時間推移結果が示され、図13には鍋底の吸収熱流束の時間推移結果が示されている。図12において横軸は時間、縦軸は温度(K)を示している。図13において横軸は時間、縦軸は吸収熱流束(W/m2)を示している。また、図12においてS1は水噴射なしの結果、S2は噴射量1cc/minの結果、S3は噴射量2cc/minの結果、S4は噴射量3cc/minの結果、S5は噴射量4cc/minの結果、S6は噴射量5cc/minの結果を示している(S3とS4は略同一結果であり、重なって示されている)。図13において、S7は水噴射なしの結果、S8は噴射量1cc/minの結果、S9は噴射量2cc/minの結果、S10は噴射量3cc/minの結果、S11は噴射量4cc/minの結果、S12は噴射量5cc/minの結果を示している。
【0143】
鍋底に関しては、水の噴射量を増やしていくと、熱源との間の水蒸気が熱を吸収してしまうことと、水蒸気生成過程の潜熱等による熱消費とにより、図13に示すように鍋底の吸収熱流束は低下した結果となった。しかしながら、上述と同様に、ある程度の量までの噴射であれば、空気の温度が上昇するため、図12に示すように、高温となった空気の蓄熱・保温効果が働き鍋底の温度は結果として高くなる結果となった。そして当然、そのある量を超えて噴射量を増やすと、水蒸気の吸収や潜熱等の熱消費といったマイナスの効果が支配的となり、鍋底の温度も低下した。
【0144】
上述の結果より、水を噴射することで潜熱等のマイナスの要因は働くが、ある程度の量までであれば、ふく射性ガスとしての蓄熱・保温効果の方がそれらよりも支配的であり、加熱の効率化に寄与し得ることが確認できた。
【0145】
また、以上で説明した対流及びふく射による熱効率の向上効果の解析結果から、水蒸気発生により熱効率向上することが確認できるが、供給する水の量によっては所望の結果が得られない場合もあることも確認され、このため水の供給量には好適な範囲があると考えられた。ここで、対流の解析上で用いた、プロパンガスの単位体積あたりの発熱量:4.5×107(J/m2)、100℃の飽和水を100℃の飽和水蒸気にするための熱量:2.26×106(J/m3)を用いて考察する。
【0146】
上述したこの条件での解析では、プロパンガスの投入量0.336m3/Hr、水の投入量0.5g/sec=1.8kg/Hrで熱効率向上の効果が認められている。ここで、プロパンガスの単位時間当たりの発熱量Wpは、Wp=4.5×107×0.336=1.52×107(J/Hr)となる。水の単位時間当たりの潜熱量Wwは、Ww=2.26×106×1.8=4.10×106(J/Hr)となる。そして、これらの比率Ww/Wp=0.27である。この数値と合わせて、加熱装置の側壁部分の断熱構造や伝熱特性(上記対流とふく射の解析での条件の違い等)を考慮すると、好適な範囲にはある程度の幅があることが推測される。水の供給量としては、熱源の発熱量に対して、水の蒸発潜熱に消費される熱量が5%〜50%程度とすることが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0147】
1,20 加熱装置
2 釜体
3 筐体
4 バーナー(加熱手段)
9 排気口
10 多孔質体(吸水体、水供給手段)
11 水供給管(水供給部、水供給手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象が投入される釜体と、前記釜体の側面及び底面を囲うとともに前記釜体を支持する筐体と、前記釜体と前記筐体との間に設けられ前記釜体を加熱する加熱手段とを備えた加熱装置であって、
前記筐体内に水を供給する水供給手段を備え、
前記加熱手段の発熱の一部を利用して前記水供給手段によって供給された水を水蒸気に気化させ、前記加熱手段による加熱とともに水蒸気によって前記釜体を加熱することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱手段の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱手段が前記釜体の底部に近接又は当接して配置され、
前記排気口が前記筐体の前記釜体の底部よりも上方に位置する部位に設けられ、
前記釜体の側面と前記筐体との間に螺旋状の流路が設けられており、
前記加熱手段の加熱によって気化させた水蒸気を、前記螺旋状の流路によって前記釜体の側面を回流させ、前記ガス廃棄物とともに前記排気口から排出することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記水供給手段が、前記筐体内に設けられ水を吸水する吸水性を有する吸水体と、前記吸水体に水を供給する水供給部とで構成され、前記吸水体を前記加熱手段によって加熱することで、水蒸気を発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記吸水体が多孔質体であることを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記加熱手段の加熱によって気化させる水蒸気には、100度以上の高温水蒸気が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項1】
加熱対象が投入される釜体と、前記釜体の側面及び底面を囲うとともに前記釜体を支持する筐体と、前記釜体と前記筐体との間に設けられ前記釜体を加熱する加熱手段とを備えた加熱装置であって、
前記筐体内に水を供給する水供給手段を備え、
前記加熱手段の発熱の一部を利用して前記水供給手段によって供給された水を水蒸気に気化させ、前記加熱手段による加熱とともに水蒸気によって前記釜体を加熱することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱手段の発熱によって生じるガス廃棄物を排出する排気口を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱手段が前記釜体の底部に近接又は当接して配置され、
前記排気口が前記筐体の前記釜体の底部よりも上方に位置する部位に設けられ、
前記釜体の側面と前記筐体との間に螺旋状の流路が設けられており、
前記加熱手段の加熱によって気化させた水蒸気を、前記螺旋状の流路によって前記釜体の側面を回流させ、前記ガス廃棄物とともに前記排気口から排出することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記水供給手段が、前記筐体内に設けられ水を吸水する吸水性を有する吸水体と、前記吸水体に水を供給する水供給部とで構成され、前記吸水体を前記加熱手段によって加熱することで、水蒸気を発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記吸水体が多孔質体であることを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記加熱手段の加熱によって気化させる水蒸気には、100度以上の高温水蒸気が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−21684(P2012−21684A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158656(P2010−158656)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
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