説明

加熱調理器

【課題】照射ムラを防ぎながら被加熱物に紫外光を効率良く照射し、加熱調理後の被加熱物を高品位に仕上げること。
【解決手段】加熱室14と、被加熱物12に紫外光を照射する複数配置の光照射手段16と、載置台18と、被加熱物12の形状を検知する形状検知手段21と、制御手段24を備え、制御手段24は、形状検知手段21の検知信号に基づき、被加熱物12の形状に応じて、光照射手段16の点灯状態を制御し、調理した被加熱物12を高品位に仕上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理後に高品位な被加熱物を提供する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器には、加熱室内の被加熱物に対し波長300nm以下の紫外線を照射する紫外線照射装置を備えた加熱調理器(例えば、特許文献1参照)が示されている。
【特許文献1】特開2007−292353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の構成は、紫外線を被加熱物に照射する際に、照射強度が一定であるため、厚みのある被加熱物と薄い被加熱物では、照射強度が異なる。また、紫外線照射手段と被加熱物の距離は一定であり、照射面積が変化しないため、被加熱物が大きい場合は、紫外線が照射されない部分ができ照射ムラが生じ、被加熱物が小さい場合は、被加熱物の載置されていない加熱室の場所にも紫外線が照射されて、非効率であるという課題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、紫外線を照射する光照射手段を複数配置し、被加熱物の大きさに応じて光照射手段の点灯状態を制御して、被加熱物に効率良く紫外光を照射したり、照射ムラを防ぎながら被加熱物を高品位に仕上げたりできる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、被加熱物を加熱調理する加熱調理器において、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記被加熱物の大きさを検知する形状検知手段と、前記被加熱物を載置する載置台と、前記光照射手段を制御する制御手段を備え、前記光照射手段は、前記加熱室の上方に複数個配設するものである。
【0006】
これによって、複数の光照射手段は、すべてを動作させることで、被加熱物の収納可能な面積にくまなく紫外線を照射することができるとともに、動作させる光照射手段を選択することで、特定の領域のみを照射させることができ、被加熱物の大きさに応じて光照射手段の点灯状態を制御することにより、被加熱物に効率良く紫外光を照射して、被加熱物を高品位に仕上げたり、不要なエネルギーを省いたりできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器は、紫外線を照射する光照射手段を複数配置し、被加熱物の大きさに応じて光照射手段の点灯状態を制御することにより、被加熱物に効率良く紫外光を照射して被加熱物を高品位に仕上げたり、不要なエネルギーを省いたりできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を加熱調理する加熱調理器において、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記被加熱物の大きさを検知する形状検知手段と、前記被加熱物を載置する載置台と、前記光照射手段を制御する制御手段を備え、前記光照射手段は、前記加熱室の上方に複数個配設するものである。
【0009】
これにより、複数の光照射手段は、すべてを動作させることで、被加熱物の収納可能な面積にくまなく紫外線を照射することができるとともに、動作させる光照射手段を選択することで特定の領域のみを照射させることができる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明の制御手段は、前記形状検知手段の信号に基づいて、前記光照射手段の点灯数を可変することを特徴とするものである。
【0011】
これにより、被加熱物の大きさに応じて、光照射手段の点灯状態を制御することにより、被加熱物に効率良く紫外光を照射して、被加熱物を高品位に仕上げたり、不要なエネルギーを省いたりできる。
【0012】
第3の発明は、特に第1の発明の制御手段は、前記形状検知手段の信号に基づいて前記光照射手段の点灯時間を可変制御することを特徴とするものである。
【0013】
これにより、光照射手段と被加熱物との距離に応じて、紫外光の照射時間を調節することができるので、不要なエネルギーを省きながら被加熱物を高品位に仕上げることができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1の発明の制御手段は、前記形状検知手段の信号に基づいて、前記光照射手段を点滅制御することを特徴とするものである。
【0015】
これにより、被加熱物の大きさや光照射手段と被加熱物との距離に応じて、紫外光の照射条件を可変制御することができるので、不要なエネルギーを省きながら被加熱物を高品位に仕上げることができる。
【0016】
第5の発明は、特に第1の発明の光照射手段は、300〜400nmの分光波長を発光するものである。
【0017】
これにより、品質劣化を防ぎつつ、被加熱物の有効成分を増加させることができる。
【0018】
第6の発明は、特に第1〜第5のいずれか1つの発明の加熱調理器は、前記加熱室内に被加熱物を加熱する加熱手段を備え、前記制御手段は、前記光照射手段の動作中、あるいは動作後に前記加熱手段を動作させるものである。
【0019】
これにより、加熱調理中に被加熱物の有効成分を効率良く増加させることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略図、図2は本発明の実施の形態1における中央断面図、図3は本発明の実施の形態1における主要部の部分拡大図、図4は本実施の形態1における主要部の配置図、図5は本発明の実施の形態1における光照射手段の点灯消灯動作の一例を示す配置図である。
【0022】
図1〜図4に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、本体11は被加熱物12を出し入れするドア部13が取り付けられると共に被加熱物12を収納する加熱室14が組み込まれている。加熱手段15(加熱手段15a、15b)は、加熱室14内の被加熱物12を輻射熱あるいは対流熱で加熱する際に使用する。
【0023】
光照射手段16(光照射手段16a〜16t)は、例えばブラックライトや紫外線LEDなどが複数個集合した構造体で、加熱室14天面や壁面に配設され、覆い17を介し加熱室14内の被加熱物12に対して、300〜400nmの分光波長の光を照射する。本実施の形態では、光照射手段16は加熱室14天面に配設した状態を図示している。覆い17は、透明かつ主に紫外線波長領域を透過する材質(例えば石英ガラスなど)で構成される。また、覆い17により、光照射手段16が加熱手段15の熱による破損を防いでいる。
【0024】
図3に光照射手段16の部分拡大図、図4に加熱手段15(加熱手段15a、15b)、光照射手段16(光照射手段16a〜16t)の配置図を示す。
【0025】
載置台18は、加熱調理される被加熱物12が載置され、軸19を介してモータ20により上下方向に駆動する。
【0026】
形状検知手段21(形状検知手段21a、21b)は光電スイッチから構成され、載置台18の高さを上下方向に可変することで得られる、光電スイッチのそれぞれの信号に基づいて、載置台13上の被加熱物12の形状および大きさを判定する。
【0027】
加熱室14のドア部13の開口部付近には、安全スイッチ22が配設され、ドア部13の開扉、あるいは閉扉状態を検知する。ドア部13の加熱室14側には、例えば電磁波や紫外光を反射する材質などで構成された遮蔽手段23が、貼り付けられている。制御手段24は、形状検知手段21、安全スイッチ22の検知信号に基づいて加熱手段15や光照射手段16を制御する。
【0028】
上記構成からなる加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
加熱調理を開始すると、制御手段24は安全スイッチ22の信号に基づいてドア部13が閉扉状態であることを確認後、加熱手段15、光照射手段16、形状検知手段21の動作を開始する。ドア部13が閉扉状態の場合は、加熱室14から紫外光が洩れるのを防ぐため、制御手段24は動作を開始せず使用者に報知する。なお、報知方法は問わない。
【0030】
また、光照射手段16が動作中にドア部13が開けられた場合は、安全スイッチ22の信号により、制御手段24は、速やかに光照射手段16の動作を停止する。ドア部13には、紫外光を反射あるいは遮断あるいは吸収する材質で構成された、膜状あるいは板状の遮蔽手段23を貼り付けている。ドア部13がガラス等で構成されている場合などに、ドア部13のガラスを透過して紫外光が外部に漏れるのを防ぎ、安全性を高めることができる。なお、本実施の形態では、遮蔽手段23は加熱室14側に配設したが、ドア部13外側に配設することも可能である。
【0031】
制御手段24は、光照射手段16を所定時間動作させる。光照射手段16は、300〜400nmの分光波長の光を照射する。この波長帯より短い波長でも長い波長でもタンパク質の変性を引きおこすが、この波長帯を選択することで、紫外光による被加熱物の成分劣化を防ぎつつ、酵素を活性化させることができる。
【0032】
光照射手段16は、あらかじめ加熱調理前に設定入力された所定時間か、被加熱物12が所定温度に達するまで動作を継続する。光照射手段16が被加熱物12に紫外光を照射することで、被加熱物12に含まれる酵素が活性化し、被加熱物12に含まれるタンパク質をアミノ酸やペプチドなどの旨味に影響を及ぼす低分子成分に分解するため、旨味が増加する。よって、加熱調理後の被加熱物を高品位に仕上げることができる。
【0033】
形状検知手段21は、載置台18に載置された被加熱物12の大きさや形状を検知し、制御手段24に信号を送る。被加熱物12が、光電スイッチに到達する光を遮断する状態(条件)から、制御手段24は、載置台18上の被加熱物12の平面(奥行き)形状および厚さ(高さ)を判定する。本実施の形態では、形状検知手段21は、左右の側壁面に複数対で対向配列し、被加熱物12の奥行き方向の大きさや形状を判定する。なお本実施の形態では、図1、図2において、形状検知手段21を側壁面に一対配設した状態を図示した。
【0034】
次に、図4、図5を用いて、形状検知手段21の検知信号に基づく光照射手段16の制御方法について説明する。
【0035】
制御手段24は、モータ20を動作させて載置台18を上下方向に移動変化させ、このときに得られる形状検知手段21のそれぞれの検知信号に基づいて、被加熱物12の大きさや形状を判定すると、光照射手段16の点灯状態の制御を開始する。
【0036】
例えば、被加熱物12の大きさが大きい場合は広い面積に紫外光を照射する必要があるため、光照射手段16の点灯個数を多くする。図5(a)は、広い面積に照射する場合の点灯状態の一例を示している。白色部分は点灯状態、着色部分は消灯状態を示す。光照射手段16を構成する個々の光照射手段16a〜16tを点灯させる。つまり、光照射手段16の点灯個数を多くすることで広い面積にムラなく紫外光を照射することができるものである。
【0037】
一方、被加熱物12の大きさが小さい場合は、狭い面積に紫外光を照射して無駄なエネルギーを省くため、光照射手段16の点灯個数を少なくする、または全個数に通電させる場合は、点滅させるなどの制御を行う。つまり、光照射手段16を構成する個々の光照射手段16f、16g、16i〜16l、16n、16oを点灯させる。図5(b)は、狭い面積に照射する場合の点灯状態の一例を示している。白色部分と着色部分の区分は、上述の通りである。
【0038】
なお、本実施の形態では、紫外光を照射する場合において、光照射手段16の発光強度の制御の有無や点滅のサイクル(時間)は自由に決定することができる。
【0039】
このように、被加熱物12の大きさや形状、あるいは光照射手段16と被加熱物12との距離に応じて、光照射手段16の点灯状態を制御することにより、エネルギーの無駄を省きつつ照射ムラを防ぎながら、被加熱物12に効率良く紫外光を照射できるものである。
【0040】
制御手段24は、紫外光を被加熱物12に所定時間照射後、加熱手段15により被加熱物12を加熱する。加熱手段15は、被加熱物12を輻射熱や対流熱で加熱する。加熱の際は、加熱手段15と光照射手段16を併用することも可能である。ただし、加熱手段15と光照射手段16の使用電力の合計が、装置の使用電力の総合計を超えない範囲で制御する。併用すると、酵素や被加熱物12が熱変性を起こすまでは、加熱中も旨味成分を増加させ続けることができる。加熱時間は、あらかじめ時間や焼成温度を入力しておくか、被加熱物12が所定温度になるまでの時間とする。加熱が終了すると、制御手段24は、加熱手段15、光照射手段16の動作を停止し、表示部や報知音などを用いて、使用者に報知する。なお、報知方法は問わない。
【0041】
なお、温度検知手段を設け、加熱手段15や光照射手段16の動作開始から所定時間が経過するごとに、被加熱物12の温度を検知することで、加熱終了の制御を行うことも可能である。加熱初期は加熱室14の温度が低いため、被加熱物12の温度を判別できるが
、加熱工程の進行に伴い、加熱室14の温度が上昇し、被加熱物12と加熱室14の温度の判別が困難になると、温度検知手段は加熱室14の温度のみを測定するように切り替わる。温度検知手段が加熱室14の温度を検知すると、あらかじめ記憶された加熱室14の温度と加熱時間と被加熱物12の温度の関係から、制御手段24は被加熱物12の温度を推定する。
【0042】
なお、本実施の形態では、載置台18は可動構成としたが、載置台18を固定構成とし、形状検知手段21である光電スイッチを加熱室の上下方向に複数列配置する構成や、形状検知手段に赤外線センサ、超音波センサなどを利用する構成としても構わない。
【0043】
また、光照射手段16は覆い17により加熱手段15の熱からの破損を防いでいるが、ファンなどの冷却手段を搭載し、併用することも可能である。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、被加熱物の大きさに応じて300〜400nmの紫外光を被加熱物に照射する光照射手段の点灯状態を制御することにより、被加熱物に効率良く紫外光を照射して被加熱物を高品位に仕上げたり、不要なエネルギーを省いたりできる。
【0045】
また、光照射手段16は、球状の構成としたが、管状の構成でもかまわない。また、載置位置も限定するものではない。
【0046】
さらに、本実施の形態では記載していないが、マイクロ波を照射するマイクロ波照射手段などを搭載することも可能である。このとき、加熱手段15だけでなく、マイクロ波だけを使用して調理を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係わる加熱調理器は、紫外線を照射する光照射手段を複数配置し、被加熱物の大きさに応じて300〜400nmの紫外光を被加熱物に照射する光照射手段の点灯状態を制御して、被加熱物の旨味を増加できるので、オーブンレンジ、電子レンジ、オーブントースター、魚焼きグリルなどの加熱調理器に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略図
【図2】同加熱調理器の中央断面図
【図3】同加熱調理器の主要部の部分拡大図
【図4】同加熱調理器の主要部の配置図
【図5】同加熱調理器の点灯消灯動作の一例を示す図
【符号の説明】
【0049】
12 被加熱物
14 加熱室
15 加熱手段
16 光照射手段
18 載置台
21 形状検知手段
24 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱調理する加熱調理器において、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物に紫外光を照射する光照射手段と、前記被加熱物の大きさを検知する形状検知手段と、前記被加熱物を載置する載置台と、前記光照射手段を制御する制御手段を備え、前記光照射手段は、前記加熱室の上方に複数個配設する加熱調理器。
【請求項2】
制御手段は、形状検知手段の信号に基づいて光照射手段の点灯数を可変することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
制御手段は、形状検知手段の信号に基づいて光照射手段の点灯時間を可変制御することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
制御手段は、形状検知手段の信号に基づいて光照射手段を点滅制御することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
光照射手段は、300〜400nmの分光波長を発光する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
加熱調理器は、加熱室内に被加熱物を加熱する加熱手段を備え、制御手段は、光照射手段の動作中あるいは動作後に前記加熱手段を動作させる請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−101531(P2010−101531A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271716(P2008−271716)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】