説明

加熱調理器

【課題】小型で、且つ精度の良い温度検出をする非接触温度検出器を搭載した加熱調理器を提供する。
【解決手段】食品から放射される赤外線の一部はケースの赤外線通過口から赤外線検出器に至る。また、周囲空気による熱はケースから金属よりなる熱伝導材を介して赤外線検出器へと、金属を介して伝わるので高速で伝導するので、赤外線検出器の内部では温度分布が起こりにくく温度検出誤差は発生しにくくなる。そうした構成の温度検出器が検出する温度を基に制御手段が加熱手段の駆動を制御するので、小型で、且つ精度の良い温度検出をする非接触温度検出器を搭載した加熱調理器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱調理する加熱調理器に関するものであり、特に自動調理を目的として食品の温度を検出する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱室で食品を加熱調理する代表的な加熱調理器であるオーブンレンジでは、各種センサを取り付けて調理の進行状態を検出して、自動的に加熱を終了させるような自動調理の機能がある。その代表的なセンサの一つとして、非接触で食品の表面温度を検出できる赤外線センサがある。
【0003】
この赤外線センサにより、食品の表面温度を検出することで加熱の進捗状況を知ることができ、所定温度に達すると加熱を停止することで自動調理とし、使用者の使い勝手を向上させている。赤外線センサをオーブンレンジの加熱室周囲に配置して、加熱室内部の食品温度を検出するには、加熱室周囲は雰囲気温度が安定しないという課題がある。
【0004】
つまり、マイクロ波で加熱する場合の加熱源となるマグネトロンは、マグネトロン自身の発熱とマグネトロンから発振されるマイクロ波による加熱室の壁面の温度上昇などで、加熱調理中は加熱室周囲の雰囲気温度は1℃/分程度で上昇し続け、一般的な加熱調理時間である数分から十数分の間で安定することはない。
【0005】
また、マグネトロンを冷却するために風を送ったり、赤外線温度センサ自身の温度を高温から保護するために風を送ったりするなど、赤外線温度センサ近辺では風が流れていることが多く、その風による雰囲気温度の変動もあり、温度が安定していることはない。
【0006】
特に、サーモパイルを赤外線検出素子として用いる赤外線温度センサは、その雰囲気温度が安定しない中で、精度よく温度を測定することが困難である。
【0007】
サーモパイルを用いた赤外線検出素子は、熱接点と冷接点の温度差でゼーベック効果での起電力を測定するものであるが、熱接点と冷接点の雰囲気温度が等しいことを前提に、熱接点にだけ対象物からの輻射光が当たる構成をとり、その輻射光による温度変化から輻射源の温度を算出する。
【0008】
従って、もともとの熱接点と冷接点の雰囲気温度が等しくないと、大きい検出誤差が生じることになる。赤外線温度センサの雰囲気温度が一定の場合は、熱接点と冷接点も雰囲気温度が等しくなるが、雰囲気温度が不安定で変動しているときには、熱接点と冷接点の雰囲気温度に温度差が生じやすく、精度よく温度を測定することは難しい。
【0009】
上記課題を解決する例を、図4を用いて説明する。図4において、赤外線検出器1は、金属ホルダー2と熱的に接触し、金属ホルダー2と共にケース3に収納されている。ケース3には通風口4と仕切板5とが設けられており、ケース3は、仕切板5により赤外線検出器1を含む側と通風口4を含む側とに仕切られる構成となっている(特許文献1参照)。
【0010】
この構成により、周囲の空気は通風口4から熱伝導性に優れた金属ホルダー2を介して、赤外線検出器1に素早く伝わる。一方、仕切板5により、周囲の空気が直接、赤外線検出器に当たることはない。従って、赤外線検出器1内部での温度差は生じにくく、温度測定の精度を上げることができている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−313554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、赤外線検出素子やレンズなどの集光器が精密加工により小型化され、電気部品も小型化されており、非接触温度検出器全体として非常に小型化されている。この小型化により、オーブンレンジなどの加熱調理器の内部における取り付け場所の選択肢を増やすことができ、また、容易に取り付けられるようになった。
【0013】
こうした小型化の流れの中で、仕切板を設けるのは小型化を困難にするものである。仮に小型化のために薄い仕切板を付けてもあまり効果がなく、仕切板を含む構成では、精度の良い温度検出が困難であるという課題を有していた。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、小型で、且つ精度の良い温度検出を行う非接触温度検出器を搭載した加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の加熱調理器は、食品を加熱する加熱手段と、前記食品の温度を検出する温度検出器と、前記温度検出器の検出温度により前記加熱手段の駆動を制御する制御手段を有し、前記温度検出器は前記食品から放射される赤外線を検出する赤外線検出器と、前記赤外線検出器を収納し一部に赤外線通過口を設けたケースと、前記赤外線検出器および前記ケースに接触する金属よりなる熱伝導材より成る構成としたものである。
【0016】
この構成により、食品から放射される赤外線はその一部はケースの赤外線通過口から赤外線検出器に至り、それ以外はケースにより遮断される。また、周囲空気による熱はケースから金属よりなる熱伝導材を介して赤外線検出器へと、金属を介して伝わるので高速で伝導するので、赤外線検出器の内部では温度分布が起こりにくく温度検出誤差は発生しにくくなる。
【0017】
このような構成の温度検出器により検出される温度を基に、制御手段が加熱手段の駆動を制御するので、小型で、且つ精度の良い温度検出をする非接触温度検出器を搭載した加熱調理器を提供することができる。
【0018】
また、本発明の加熱調理器は、赤外線検出器はサーモパイルによる赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子を封じ込めた金属によるカンを有する構成とするものである。この構成により、ケースからカンまでが金属で結合されて素早く熱伝導し、カンの内部では温度分布が起こりにくく、その中にサーモパイルよりなる赤外線検出素子を備えているから、温度検出誤差が発生しにくい。
【0019】
また、本発明の加熱調理器は、前記熱伝導材は前記ケース内部において前記赤外線通過口から前記カンに至るまでの空間をそれ以外の空間から遮断する構成とするものである。この構成により、赤外線通過口から流入する空気が直接に赤外線検出素子あるいはその近傍に至ることを熱伝導材により阻むことができるので、急激な温度変化を発生させにくくし、温度検出誤差が発生しにくい。
【0020】
また、赤外線検出器からの出力信号を電気的処理する電気部品より成る信号処理回路と、前記赤外線検出器および前記信号処理回路を搭載するプリント基板を更に有し、前記プ
リント基板は前記ケースに接触している構成としている。
【0021】
プリント基板も一般に金属のパターンが貼り巡らされていて熱伝導が良いため、この構成により、赤外線検出器全体に高速で周囲空気の熱が伝わるため、赤外線検出器内部での温度分布の偏りが更に起こりにくくなり、温度検出誤差が更に発生しにくくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、周囲空気による熱は、金属よりなる熱伝導材を介してケースから赤外線検出器へと高速に伝わるので、赤外線検出器の内部では温度分布の偏りが起こりにくくなり、温度検出誤差が発生しにくくなる。その結果、小型で、且つ精度の良い温度検出をする非接触温度検出器を搭載した加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態にかかる加熱調理器のブロック構成図
【図2】本発明の実施の形態にかかる加熱調理器の温度検出器の断面図
【図3】本発明の実施の形態にかかる加熱調理器の温度検出器の要部断面図
【図4】従来の加熱調理器の温度検出器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明にかかる代表的な加熱調理器であるオーブンレンジの構成図である。加熱室6の底部には食品7が載置され、加熱室6の外部には加熱室6内に導入するマイクロ波を発生させる加熱手段であるマグネトロン8が配設されている。温度検出器9は、加熱室6の外部上方に配置され、非接触にて食品7の表面温度に応じた電気信号を出力する。制御手段10は、温度検出器9から得られる食品7の温度に応じた電気信号より、マグネトロン8の入/切あるいはパワー制御等を行う。操作手段11は、使用者が調理開始あるいは調理モードの設定操作等を行うためのものであり、この操作情報は制御手段10に出力される。
【0026】
次に、図2を用いて温度検出器9の構成を説明する。赤外線検出器1は、金属によるカン12の内部に、赤外線検出素子であるサーモパイル13が封じ込められている。カン12の赤外線入光部分にはレンズ14が備えられており、レンズ14の焦点とサーモパイル13の位置関係からサーモパイル13の視野を規定している。赤外線検出器1の温度を検出する接触式の温度センサ15は、例えばサーミスタにより構成される。
【0027】
そして、サーモパイル13、サーミスタ15の出力は金属線16により、カン12の外部に延出し、プリント基板17に接続して、カン12と共に固定している。
【0028】
一般にサーモパイルは熱接点と冷接点を有するもので、熱接点には対象物からの赤外線が入光し、冷接点は遮光することで熱接点と冷接点の間に温度差が生じ、その温度差によりゼーベック効果で電圧が発生するもので、この発生する電圧は対象物の温度と冷接点の温度の温度差に相関を持った出力となることから、対象物の温度を非接触で検出することができる。
【0029】
ヒートシンク18は、熱伝導性がよくまた比較的熱容量を大きく持たせたもので、サーモパイル13の冷接点と接触させ、且つサーミスタ15と接触するように設けている。またサーモパイル13の熱接点はヒートシンク18の空孔部に位置するよう設けている。
【0030】
プリント基板17には電源が供給され各種電子部品より成る信号処理回路19が搭載されている。プリント基板19にはコネクタ20が搭載されていて、コネクタ20にはリード線21が接続されていて、信号処理回路19で処理された信号を制御手段10に出力する。
【0031】
これらの部品はケース22に収納され、ケース22には赤外線が通過する赤外線通過口23とリード線21を通すためのリード線孔24を設けられ、リード線孔24には隙間を塞ぐためのパッキン25が備えられている。金属製の熱伝導材26は赤外線検出器1に嵌合し、ケース22と接触している。ケース22はプリント基板17とも接触している。
【0032】
図2中のA−A’面における断面図を図3に示す。図3に示すように、熱伝導材26は赤外線検出器1のレンズ14の外側でカン12全体を囲むように構成されている。この構成により、熱伝導材25がケース22と接触し、その接触している部分の内側にケース22の赤外線通過口23が設けられるので、ケース22の外部の空気は赤外線通過口23から内部に流れ込んでも、熱伝導材25で遮断されて直接サーモパイル13の近傍まで入り込むことはない。
【0033】
この構成において、ケース22の外の雰囲気温度、即ち加熱室6の周囲温度は、ケース22またはリード線21からプリント基板17へ伝わり、カン12のプリント基板との接着部がその影響を受け、その輻射熱としてサーモパイル13の熱接点に雰囲気温度が伝わる。またプリント基板には金属のパターンが貼り巡らされているので、より高速に熱伝導する。
【0034】
一方、ケース22から熱伝導材26を介してカン12、そしてカン12と接着しているプリント基板17から金属線16、ヒートシンク18へと熱伝導することで、雰囲気温度がサーモパイル13の冷接点に伝わる。またすべて金属製の材料を介しているので、より高速に熱伝導する。
【0035】
従って、サーモパイル13の熱接点、冷接点にはどちらにも高速でほぼ同等の応答で雰囲気温度が影響することになる。更にヒートシンク18に取り付けたサーミスタ15にもサーモパイル13の熱接点、冷接点とほぼ同等の応答で高速で雰囲気温度が影響する。
【0036】
またこの構成においては、熱伝導材26により風の影響を遮っている。赤外線通過口23からケース22内部に空気が流入しても、レンズ14とカン12の一部は空気に晒されているものの、カン2の大部分や、プリント基板17が流入した空気に晒されることはない。このことで風が及ぼす測定誤差の発生を最小限に抑えている。
【0037】
こうした構成により、雰囲気温度が変動しても、サーモパイル13の熱接点と冷接点の雰囲気温度のバランスが崩れることがなくなるため、温度誤差を最小限に抑えることができる。更に、風がケース内に入り込まないようにしているので、赤外線検出器1の急激な温度変動を抑えることができ、熱接点と冷接点の温度バランスが崩れるのを抑制している。これにより、温度バランスの崩れによる温度誤差の発生を最小限に抑えることができる。
【0038】
以上の説明では、リード線孔24の隙間を塞ぐためにパッキン25を設ける構成としたが、これはリード線孔25から空気が流入することを防止するためである。ただ、リード線21の径に合わせてリード線孔24が隙間のほとんどできない寸法で構成されていれば、必ずしもパッキン25が必要というわけではない。
【0039】
サーモパイル13の出力電圧は一般に非常に微小なものであるため、信号処理回路19
がこれを増幅し検知するに十分な大きさの電圧にしてAD変換し、またサーミスタ15から得られる出力信号もAD変換して、測定対象である食品7の温度を演算する。
【0040】
サーモパイル13の出力は、一般に測定対象とサーモパイル自身の温度の温度差とに略比例するものであり、サーミスタ15の出力から得られるサーモパイル13自身の温度に、サーモパイル13の出力から得られる温度差を加算することで、食品7の温度が演算できる。そうして演算した温度を制御手段10にシリアル通信で送信する。
【0041】
赤外線検出器1の近傍で増幅し、AD変換してデジタル値をシリアル通信することは、マグネトロン8などからのノイズの影響を抑える効果があるが、必ずしもこの構成でなくてもよく、アナログ電圧をそのまま出力して、制御手段10でAD変換し温度を演算しても良い。この場合にはシリアル通信のために必要な部品を省略できて構成をシンプルにできる。
【0042】
制御手段10では、受信した食品7の温度を基にマグネトロン8を制御するが、簡単には受信した温度が予め定めた設定温度を超えるとマグネトロン8を停止して加熱を終了する。または予め定めた設定温度を超えたところから所定の追加加熱を行ったところでマグネトロン8による加熱を停止する。あるいは設定温度を超えるとすぐに停止するか、所定の追加加熱をするかを使用者が操作手段11により選択する方法もあるし、使用者が操作手段11で選択するのは加熱調理メニューであって、そのメニューから自動的にすぐに停止するか所定の追加加熱をするかを決定してマグネトロン8を制御するなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明は、周囲空気による熱はケースから金属よりなる熱伝導材を介して赤外線検出器へと、金属を介して高速に伝導するので、赤外線検出器の内部では温度分布が起こりにくいため、赤外線検出器の温度検出誤差が発生しにくくなり、小型で、且つ精度の良い温度検出をする非接触温度検出が可能となる。
【0044】
従って、マイクロ波を熱源とするオーブンレンジはもちろん、加熱調理器全般に応用できるほか、非接触で温度検出するような機器に応用でき、特に温度検出器周辺の雰囲気温度が変動しやすいような環境での温度検出には有効に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 赤外線検出器
8 加熱手段(マグネトロン)
9 温度検出器
10 制御手段
12 カン
13 サーモパイル(赤外線検出器)
17 プリント基板
19 信号処理回路
22 ケース
23 赤外線通過口
26 熱伝導材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を加熱する加熱手段と、前記食品の温度を検出する温度検出器と、前記温度検出器の検出温度により前記加熱手段の駆動を制御する制御手段を有し、前記温度検出器は前記食品から放射される赤外線を検出する赤外線検出器と、前記赤外線検出器を収納し一部に赤外線通過口を設けたケースと、前記赤外線検出器および前記ケースに接触する金属よりなる熱伝導材より成る加熱調理器。
【請求項2】
前記赤外線検出器はサーモパイルによる赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子を封じ込めた金属によるカンを有する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記熱伝導材は前記ケース内部において前記赤外線通過口から前記カンに至るまでの空間をそれ以外の空間から遮断する構成とした請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
赤外線検出器からの出力信号を電気的処理する電気部品より成る信号処理回路と、前記赤外線検出器および前記信号処理回路を搭載するプリント基板を更に有し、前記プリント基板は前記ケースに接触している請求項1記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−266115(P2010−266115A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117493(P2009−117493)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】