説明

加熱調理器

【課題】負荷量が少ない場合でも湿度センサの検出精度が悪化しない加熱調理器を提供すること。
【解決手段】マイクロ波発生手段1と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室2と、加熱室2内に空気を送るファン3と、加熱室2内の蒸気量を測定する湿度センサ4と、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサ5と、赤外線センサ5の温度から加熱室2内の負荷の量を判定する負荷量判定手段6と、ファン3の回転数を制御する制御手段7とを有し、制御手段7は負荷量判定手段6の判定した負荷量にあわせてファン3の回転数を制御し、加熱室2内に送る空気の量を変更することにより、負荷量が少ない場合でも湿度センサ4の検出精度を高めることが可能となり、どのような負荷量であっても過加熱になることなく加熱を停止させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、レストラン及びオフィスなどで使用される加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、赤外線センサを利用する場合と湿度センサ利用する場合とでファンの回転数を変更することによって、それぞれのセンサでの検知がしやすいように加熱室内の蒸気を排出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−149732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、食品から発生する蒸気の量は負荷量に依存するため、負荷量が少ない場合には湿度センサの検出精度が悪くなるという課題を有していた。
【0005】
また、食品から蒸気が発生する前に乾燥した空気を多量に送ると、食品が乾燥して仕上がりが悪くなることが知られている(例えば、特開2006−46714号公報)。
【0006】
本発明は、負荷量が変わっても食品が乾燥することなく使用者が選択した仕上がりを実現し、少量の負荷を加熱したような場合であっても過加熱になることなく加熱を自動で停止させることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱調理器は、マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内に空気を送るファンと、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの温度から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記ファンの回転数を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて前記ファンの回転数を制御し、前記加熱室内に送る空気の量を変更するものである。
【0008】
これによって、負荷の量が少ないために発生する蒸気量が少ない場合であっても、湿度センサの検出精度が落ちないようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器は、負荷量が少ない場合でも湿度センサの検出精度を高めることが可能となり、どのような負荷量であっても過加熱になることなく加熱を停止させることが可能であり、加熱の仕上がりが良い加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1における加熱調理器の断面図
【図2】本発明の実施形態1における加熱調理器の湿度センサの変化を示すグラフ
【図3】本発明の実施形態1における加熱調理器の被加熱物の温度変化を示すグラフ
【図4】本発明の実施形態1における加熱調理器の温度分布を示すグラフ
【図5】本発明の実施形態1における加熱調理器の湿度センサの検出結果を示す図
【図6】本発明の実施形態3における加熱調理器のファンの回転状態と湿度センサの検出値を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内に空気を送るファンと、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの温度から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記ファンの回転数を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて前記ファンの回転数を制御し、前記加熱室内に送る空気の量を変更するものである。
【0012】
これによって、負荷の量が少ないために発生する蒸気量が少ない場合であっても、湿度センサの検出精度が落ちないようにすることができ、自動調理加熱時の仕上がりが良い加熱料理器を提供することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、赤外線センサを可動させて加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部を有し、負荷量判定手段は赤外線センサの温度と測定位置の情報から加熱室内の負荷の量を判定することにより、温度上昇の範囲から負荷の大きさを推定することができ、より負荷量の判定精度を高めることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、負荷量判定手段の判定した負荷量が大の時よりも小の時の方がファンの回転数を高くすることにより、負荷量が少ない場合に加熱室内の空気を湿度センサの方に多く流れるようにすることによって湿度センサの検出精度を高めることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1の発明において、負荷量判定手段の判定した負荷量が小と判定された場合、マイクロ波発生手段の出力を低下させることにより、負荷量が少ない場合に過加熱になりやすくなることを防止することができる。
【0016】
第5の発明は、特に、第1の発明において、負荷量判定手段の判定した負荷量が小の時、制御手段はファンの回転と停止を断続的に繰り返すようにしたことにより、ファンの回転を止めることによって蒸気を加熱室内に貯め、その後ファンを回転させて湿度センサに流れる空気内の蒸気量を増やすことによって湿度センサの検出精度を高めることができる。
【0017】
第6の発明は、特に、第1の発明の負荷量判定手段は、ファンの回転数を変更する前と変更した後の湿度センサの出力から負荷量の判定を修正し、その結果に応じて制御手段はファンの回転数をさらに変更することにより、ファンの回転数による湿度センサの出力に与える影響度合いから負荷量を推定し、赤外線センサの情報から判定した負荷量判定の結果と合算させることによってより負荷量を正確に判定することができ、より負荷量に最適なファンの回転数に変更することによって湿度センサの検出精度を高めることができる。
【0018】
第7の発明は、特に、第1の発明の負荷量判定手段は、加熱開始時の負荷温度から負荷が冷凍保存されていたものであるか否かを判別し、冷凍保存されていたものであると判定した場合、制御手段は冷凍保存されていたものと判定されなかった場合よりもファンの回転数を高くすることにより、蒸気の発生しにくい冷凍保存された負荷であっても湿度センサの検出精度が落ちないようにして、負荷の温度を最適な状態に自動で加熱することのできる加熱調理器を実現することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態における加熱調理器の断面図を示す。
【0021】
図1において、本実施形態の加熱調理器は、マイクロ波発生手段1と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室2と、加熱室2内に空気を送るファン3と、加熱室2内の蒸気量を測定する湿度センサ4と、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサ5と、赤外線センサ5の温度から加熱室2内の負荷の量を判定する負荷量判定手段6と、ファン3の回転数を制御する制御手段7とで構成している。
【0022】
マイクロ波発生手段1は、通常マグネトロンを使用する場合が多いが、半導体式などであっても良い。
【0023】
マイクロ波発生手段1には、制御手段7からの指示に基づいて図示していないインバータ回路などから電力を供給することによってマイクロ波を発生させる。発生させるマイクロ波は、通常2450MHzであるがそれに限定するものではない。
【0024】
マイクロ波は図示していない導波管及びアンテナを介して加熱室2内に導入されるが、アンテナを固定して負荷を回転させるように回転台を設ける構成と、負荷は同じ位置に載置してアンテナを回転させるように構成する場合などがある。
【0025】
加熱室2は、アルミやSUSなどの金属で構成され、加熱室2内に負荷を載置し、マイクロ波発生手段1によって発生したマイクロ波を加熱室2内に導入することによって負荷は加熱される。
【0026】
加熱室2内にはマイクロ波が存在することになるが、負荷だけがマイクロ波によって加熱されるのが理想である。そのため、加熱室2を例えばガラスなどで構成した場合にはガラスがマイクロ波によって発熱してしまうため、加熱ロスとなる。したがって、加熱ロスを減らすためにはマイクロ波によって発熱せず、マイクロ波を反射するような金属であることが望ましい。但し、マイクロ波発生手段1から発生させたマイクロ波を加熱室2内に導入する必要があるため、通常はその部分のみを他の材質に変更している。
【0027】
ファン3は、加熱調理器外の空気を吸気口8を経由して加熱室2内に送るものである。ファン3は制御手段7によって回転、停止、及び回転数の制御などが行われる。さらに、ファン3によって加熱室2内に送り込まれる空気は、マイクロ波発生手段1や図示していないインバータ回路などを冷却した後に加熱室2内に送るように構成しても良い。
【0028】
湿度センサ4は、負荷から発生した蒸気(湿気)を検出するものである。湿度センサ4は加熱室2内に設置すると耐熱やノイズの発生といった問題が生じるため、排気口9内に設置される。湿度センサ4には相対湿度センサと絶対湿度センサがあるが、どちらであっても構わない。
【0029】
排気口9は、加熱室2内で発生した蒸気や臭気などを加熱室2外に放出するためのものであり、加熱室2には排気口9以外から蒸気などが漏れにくい構成となっている。さらに、ファン3より加熱室2内に空気を送り込むことによって、負荷から発生した蒸気を早く確実に湿度センサ4で検出できるように構成されている。
【0030】
赤外線センサ5は、非接触で負荷の温度を検出するものであって、熱型のサーモパイルやボロメータ、あるいは量子型のフォトダイオードやフォトトランジスタなどがあるが、
どのようなものであっても良い。
【0031】
特に、サーモパイルでは一つのパッケージ内に複数の素子を持ち、それぞれの素子が異なる位置の温度を検出することができるものも存在する。通常、そのような素子ではそれぞれの素子の温度を順番に取り出して利用される場合が多いがそれに限定するものではない。
【0032】
可動部10は、赤外線センサ5が取り付けられ、可動部10が可動することによって加熱室2内の異なる位置を赤外線センサ5によって測定することができるようにするものである。
【0033】
可動部10はステッピングモータを使用すると測定位置が定まるために適しているが、リニアモータ等であっても良い。また、位置決めのためにロータリーエンコーダー等を使用しても良い。
【0034】
なお、可動部10は1次元的に赤外線センサ5を可動させても良いし、2次元的に可動させても良い。なお、可動部10は省略しても良く、その場合には赤外線センサ5の視野角を広く設計することが多いが、それに限定するものではない。
【0035】
負荷量判定手段6は、加熱室2内の負荷の量を判定し、その結果は制御手段7に送信され、制御手段7はその負荷量に応じて制御方法を変更するものである。負荷量判定手段6と制御手段7は同一のものであっても良い。また、負荷量判定手段6の判定した負荷量は、加熱時間を決定する演算に使用しても良い。
【0036】
制御手段7にはファン3が接続され、ファン3の回転及び停止、更に回転数の制御などを行う。さらに、制御手段7はマイクロ波発生手段1、湿度センサ4、赤外線センサ5、負荷量判定手段6、可動部10等が接続されても良い。
【0037】
図示していない操作部によって使用者が加熱方法や時間などを設定すると、制御手段7は図示していないインバータ回路を動作させてマイクロ波発生手段1に電力を供給し、マイクロ波発生手段1からマイクロ波を発生させる。
【0038】
制御手段7は可動部10を可動させ、赤外線センサ5によって加熱室2内に置かれた負荷の温度を測定し、さらにファン3を制御して湿度センサ4によって加熱室2内の蒸気量あるいは湿度を測定し、それらの結果に応じてマイクロ波発生手段1の動作状態を変更し、負荷を使用者が望む状態(例えば、温度)まで加熱した後にマイクロ波発生手段1の動作を停止させる等の制御を行う。
【0039】
制御手段7はマイコンやDSPやカスタムICなどが利用される場合が多いが、それに限定するものではない。
【0040】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0041】
使用者は図示していないドアを開け、加熱室2内に負荷を載置する。図1では、マイクロ波発生手段1によって発生したマイクロ波は回転するアンテナから加熱室2内に導入される。
【0042】
アンテナが回転するため、加熱室2内のマイクロ波は分布が時々刻々と変わり、加熱室2内のどこに負荷を載置しても加熱される。したがって、このような構成の加熱調理器では使用者は加熱室2内のどこに負荷を載置しても良いが、アンテナは固定して負荷を回転
させる場合には、負荷を回転させるための回転台が存在するために、使用者は負荷を回転台上に載置する必要があるが、どちらの構成であっても構わない。
【0043】
使用者は図示していない操作部によって加熱方法を決定する。通常このような加熱調理器の場合、マイクロ波加熱、光ヒーター加熱、オーブン加熱、過熱蒸気加熱などのいくつかの加熱方法が選択できる場合が多い。本実施の形態では、マイクロ波で加熱する場合について説明する。
【0044】
また、出力(加熱パワー)や時間を使用者が設定して加熱する手動モードと、調理内容を選択するだけで自動で加熱を停止する自動モードなどが存在する。それらを使用者が選択し、ドアが閉じられていると加熱を開始させることができる。
【0045】
加熱が開始されると、制御手段7は可動部10によって赤外線センサ5を可動させ、赤外線センサ5は加熱室2内の温度を測定し、制御手段7がその温度情報を受けて制御内容を変更する。
【0046】
また、制御手段7はファン3を制御して湿度センサ4によって加熱室2内の蒸気量あるいは湿度を測定し、その湿度情報を受けて制御内容を変更する。
【0047】
制御内容は、例えばあたためを自動で行うコースを選択した場合、設定された温度になるまで加熱を継続し、設定された温度になるとマイクロ波発生手段1の動作を停止して加熱を終了する。
【0048】
その際、赤外線センサ5の出力が設定された温度相当になることを検知して加熱を停止しても良いし、初期温度と負荷量から加熱時間を演算しても良い。
【0049】
ここで図2を用いて、湿度センサ4について説明する。図2は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の湿度センサの変化を示すグラフである。図2において、マイクロ波発生手段1を駆動して負荷を加熱すると、負荷に含まれる水分が加熱されることによって蒸気となって放出される。
【0050】
その放出される蒸気の量は、低い温度では極少量(B−A)であるが、ある温度(約60℃前後)からその量は増加し、やがて沸騰に至り多量の蒸気を放出する(C−A)。このとき発生する蒸気の量(B−A、あるいは、C−A)は、負荷の量に依存する。
【0051】
そのため、湿度センサ4がB−Aの蒸気量を検出した場合に加熱を停止したとすると、負荷量によって仕上がり温度が異なる。したがって、湿度センサ4を用いて負荷量に依らず同じ仕上がり温度にするためには、負荷量の違いに対応する必要がある。
【0052】
ここで、負荷量の判定方法について説明する。図3は本発明の第1の実施形態における加熱調理器の被加熱物の温度変化を示すグラフである。図3のように、同じ負荷で量の異なるものを同じ電力のマイクロ波で加熱した場合、温度Aから温度Bまで加熱するのにかかる時間は、少量の場合はTaであるのに対して、多量の場合はTbとなり、Ta<Tbである。
【0053】
また、TaとTbの関係は、ほぼその負荷量に比例する。したがって、ある所定の時間経過後の負荷の温度が所定温度以上の場合には少量の負荷であると負荷量判定手段6が検出する。
【0054】
ここで所定の時間は、赤外線センサ5を可動させる場合には可動にかかる時間以下に設
定することはできないが、少量負荷であっても過加熱にならない時間である必要がある(例えば、15秒)。
【0055】
また、判定に必要な所定温度は、過加熱になる前の温度で、加熱の目標温度以下であることが望ましいが、負荷によって最適な温度が異なるため、例えば50℃などに設定する。
【0056】
あるいは、所定温度(例えば、50℃)に到達するまでにかかる時間から負荷量を算出しても良い。また、加熱するマイクロ波の電力が異なる場合や一定でない場合には、時間の要素の代わりに積算電力を使用しても良い。
【0057】
図4は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱開始から所定時間経過後の赤外線センサ5の検出した温度の分布を示すグラフである。負荷がある位置は温度が大きく上昇する(b〜c)のに対し、負荷がない位置(a〜b、c〜d)は温度があまり上昇しないため、負荷の大きさを検出することができる。これらの結果から、負荷量判定手段6は負荷の量を判定することができる。
【0058】
負荷量の判定方法としては、他にも負荷を載置する載置部の下部に重量センサを設置し、載置部と負荷の重量を検出する方法もある。しかし、このようにして測定された重量データには、載置部や負荷である食品を載せる容器などの重さも含まれるため、正確な負荷の重量とは言えない。
【0059】
したがって、本実施の形態では、赤外線センサ5によって実際に加熱される負荷の温度上昇から負荷量を判定するため、負荷の初期温度が変わっても正確に負荷量を判定することができる。
【0060】
このような構成の加熱調理器において、ファン3の影響について説明する。図1において、加熱室2内への空気の流入口は吸気口8の1カ所であり、空気の排出口は排気口9の1カ所である。
【0061】
ファン3を制御手段7によって回転させると加熱室2内に空気が送り込まれ、排気口9からは空気が出て行くこととなる。
【0062】
ここで、ファン3を停止させたとすると、加熱室2内に空気が流入しなくなると同時に、排気口9から出て行く空気もほとんどなくなる。そのため、負荷を加熱することによって発生した蒸気は加熱室2内にとどまり、湿度センサ4の出力は変化しない。
【0063】
つまり、湿度の変化をとらえるためには排気口9から加熱室2内の空気が排出される必要があり、そのためにはファン3を回転させることによって加熱室2内に空気を送り込む必要がある。
【0064】
図5は、本発明の第1の実施形態における加熱調理器の湿度センサの検出結果を示し、ある条件下における湿度センサ4の検出結果である。負荷である水の量を変えてマグカップに入れ、同じ加熱電力で加熱し、沸騰時の湿度センサ4の出力を示している。また、そのときのファンの速度を、強と中にして測定した。
【0065】
図5から、同じ沸騰時であっても負荷量が変わると発生する蒸気量が異なるため、負荷量が多い方が湿度センサ4の出力は大となる。
【0066】
また、ファン3の回転が強い方が湿度センサ4の出力が大となっていることがわかる。
また、ファン3の回転を強から中に落とすことによって、負荷が多量の時は約30%出力が低下し、負荷が少量の時は約70%も出力が低下する。
【0067】
つまり、負荷量が少ないときは湿度センサ4の出力が小さいだけでなく、ファン3の回転数への依存度が高いことがわかる。そのため、負荷が少量の時は湿度センサ4の出力が小さくなるためにノイズ等の影響を受けやすくなり、湿度センサ4の検出精度に課題があった。
【0068】
本実施の形態では、制御手段7は負荷量判定手段6の判定した負荷量にあわせてファン3の回転数を制御し、加熱室2内に送る空気の量を変更する加熱調理器としたものである。
【0069】
負荷量判定手段6によって負荷が少量であると判定した場合は、多量であると判定した場合よりもファン3の回転数を上げることによって湿度センサ4の出力が大となるようにして、湿度センサ4の検出精度を高めることができる。
【0070】
そうすることによって、食品をあたためた際の仕上がり温度のバラツキを押さえ、使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
【0071】
また、ファン3の回転数を少量負荷の場合のみ上げるため、回転数を常に上げた状態にするときと較べて食品の乾燥を防ぐことができ、さらにファン3の騒音低下、ファン3の消費電力低減を図ることもできる。
【0072】
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0073】
実施の形態1で説明したように、負荷量判定手段6は赤外線センサ5によって負荷量の温度を検知して負荷量を判定する。負荷が少ない場合には温度の上昇が早いため、赤外線センサ5や湿度センサ4の検出結果に応じて制御手段7がマイクロ波発生手段1を停止させたとしても、目標とする温度以上に加熱してしまいやすい。
【0074】
そのようなことを防止するため、本発明では、負荷量判定手段6の判定した負荷量が小と判定された場合、マイクロ波発生手段の出力を低下させる。そうすることによって、負荷の温度上昇速度が緩和され、負荷を目標温度にする精度を上げることができる。
【0075】
したがって、負荷量が変わっても食品をあたためた際の仕上がり温度のバラツキを押さえ、使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
【0076】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0077】
実施の形態1で説明したように、負荷量が少ない場合には蒸気の発生量も少なく、湿度センサ4はその微少な変化をとらえる必要があり、ノイズ等の影響を受けやすく誤差が大きくなる。
【0078】
その対策の一つとして、実施の形態1で説明したようにファン3の回転数を上げることによって湿度センサ4に十分な空気を送り込むことによって検出精度を上げるという方法を示した。
【0079】
もう一つの対策として、本発明は負荷量判定手段6の判定した負荷量が小の時、制御手段7はファン3の回転と停止を断続的に繰り返すようにした。
【0080】
ファン3の回転を停止させた場合、加熱室2内の空気は外部からの圧力がなくなるために加熱室2内にとどまり、排気口9に空気はほとんど流れることはない。そのため、湿度センサ4は加熱室2内の湿度を測定することができなくなる。
【0081】
一方、負荷はマイクロ波発生手段1によって加熱されて蒸気が発生し、発生した蒸気は加熱室2内にたまることになる。
【0082】
そして、一定期間経過後、加熱室2内には蒸気がたまっており、そこで制御手段7によってファン3を回転させると加熱室2内の空気が排気口9から排出され、湿度センサ4は加熱室2内の湿度を測定することができるようになる。そのときの様子を、図6に示す。
【0083】
図6は本発明の第3の実施形態における加熱調理器のファンの回転状態と湿度センサの検出値を示すグラフである。図6の(a)は湿度センサ4の検出値、(b)はファン3の回転をオンしているときとオフしているときのタイミングを示す。
【0084】
ファン3が回転していないときは湿度センサ4周辺の空気の流れがないため、湿度センサ4は同じ検出値を維持し続けるが、ファン3が回転すると加熱室2内に空気が送り込まれ、加熱室2内の空気が押し出されて湿度センサ4周辺に流れ込むことによって加熱室2内の湿度を測定することができるようになることがわかる。
【0085】
このように、負荷が少量のために発生する蒸気量が少ない場合であっても、ファンを一時的に停止させることによって蒸気を加熱室2内にためておくことができるため、負荷からの発生量が少ない場合であっても湿度センサの検出精度を落とさずに測定することができる。
【0086】
ここで、ファン3の回転と停止を行うタイミングは、加熱初期はほとんど蒸気を発生しないためにファン3の回転はほとんど影響がない。しかし、蒸気が発生し始めるとその量は一気に増加する。
【0087】
したがって、加熱初期はファンを停止、あるいは回転のどちらかに固定し、赤外線センサ5による負荷温度の上昇に合わせてファンの制御を行っても良い。また、ファン3の回転と停止時間は、同じ時間である必要はなく、湿度センサ4の検出精度に合わせてオフ期間、つまり、蒸気をためる期間を決定しても良い。
【0088】
さらに、ファン3のオン期間は、ファン3の回転の立ち上がり時間を考慮して決定しても良いし、一定時間(例えば、5秒回転、5秒停止)を単純に周期的に繰り返しても良い。
【0089】
制御手段7は、ファン3が回転しているときの湿度センサ4の検出結果から、マイクロ波発生手段1の出力を可変、あるいは停止させる。このような制御を行うことによって、負荷量が少ない場合であっても湿度センサ4の検出精度が落ちることがないため、食品をあたためた際の仕上がり温度のバラツキを押さえ、使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
【0090】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し
、相違点についてのみ説明する。
【0091】
実施の形態1で説明したように、湿度センサ4の出力は負荷の量とファン3の速度に大きく影響される。図5を用いて説明したように、同じ条件下であってもファン3の速度を強から中に変更することによって、負荷量が多い場合は約30%減少するのに対して、負荷量が少ない場合には約70%も減少する。
【0092】
つまり、負荷量によってファン3の速度による影響度合いが異なる。したがって、ファン3の速度の変更前と変更後の湿度センサ4の出力の変化率から、負荷量が判定できる。
【0093】
よって、赤外線センサ5の出力から負荷量判定手段6が判定した負荷量に対して、ファン3の速度の変更が湿度センサ4の出力に与える影響から判定した負荷量によって負荷量をより正確に判定し、その負荷量に合わせてファン3の速度を変更することによって、より高精度に湿度センサ4の検出を行うことができ、食品をあたためた際の仕上がり温度のバラツキを押さえ、使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
【0094】
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0095】
負荷が同一のものであっても、それが冷凍保存されたものであるか否かによって、それを加熱した際に発生する蒸気の量は異なる。一般的には、冷凍保存されたものは水分量が減ってしまうために、蒸気量が少なくなる。
【0096】
つまり、湿度センサ4の出力としては小さくなり検出しにくくなる。したがって、冷凍保存されたものが負荷の場合には、実施の形態1で説明したようにファン3の回転数を上げることによって湿度センサ4の出力を増加させ、検出精度の低下を防止することができる。
【0097】
負荷が冷凍保存されたものであるか否かは、赤外線センサ5の出力から検出が可能であるため、負荷が冷凍保存されたものであると判定された時点で、制御手段7は冷凍保存されたものと判定されなかったときよりもファン3の回転数を高くすることで湿度センサ4の検出精度が低下することを防止できる。
【0098】
したがって、冷凍保存された食品をあたためた際の仕上がり温度のバラツキを押さえ、使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、負荷量が少ない場合でも湿度センサの検出精度を高めることが可能となり、どのような負荷量であっても過加熱になることなく加熱を停止させることが可能であり、加熱終了時の仕上がりを良くすることができるので、一般家庭などで使用される加熱調理器に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 マイクロ波発生手段
2 加熱室
3 ファン
4 湿度センサ
5 赤外線センサ
6 負荷量判定手段
7 制御手段
8 吸気口
9 排気口
10 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内に空気を送るファンと、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの温度から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記ファンの回転数を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて前記ファンの回転数を制御し、前記加熱室内に送る空気の量を変更する加熱調理器。
【請求項2】
赤外線センサを可動させて加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部を有し、負荷量判定手段は赤外線センサの温度と測定位置の情報から加熱室内の負荷の量を判定する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
制御手段は、負荷量判定手段の判定した負荷量が大の時よりも小の時の方がファンの回転数を高くする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
負荷量判定手段の判定した負荷量が小と判定された場合、マイクロ波発生手段の出力を低下させる請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
負荷量判定手段の判定した負荷量が小の時、制御手段はファンの回転と停止を断続的に繰り返すようにした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
負荷量判定手段は、ファンの回転数を変更する前と変更した後の湿度センサの出力から負荷量の判定を修正し、その結果に応じて制御手段はファンの回転数をさらに変更する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
負荷量判定手段は、加熱開始時の負荷温度から負荷が冷凍保存されていたものであるか否かを判別し、冷凍保存されていたものであると判定した場合、制御手段は冷凍保存されていたものと判定されなかった場合よりもファンの回転数を高くする請求項1に記載の加熱調理器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−189274(P2012−189274A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54113(P2011−54113)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】