説明

加熱調理器

【課題】本体ケーシングの側壁の温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくできる加熱調理器を提供する。
【解決手段】本体ケーシング1と、本体ケーシング1内に配置された加熱室2と、本体ケーシング1内かつ加熱室2の右側部に配置された電装品部(マグネトロン61,インバータ部62)と、その電装品部と本体ケーシング1の右側壁1aとの間に間隔をあけて配置された取付板56と、本体ケーシング1内かつ電装品部の後方に配置され、電装品部に向かって前方に冷却風を吹き出す冷却ファン53とを備える。上記冷却ファン53は、取付板56と本体ケーシング1の右側壁1aとの間に形成された空間に冷却風の一部を吹き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器としては、本体ケーシング内に配置された電装品部および表示基板等の部品を冷却するのに、本体ケーシング内に配置された冷却ファンから供給された冷却風を用いて行うものがある(例えば、特開2000−240948号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記加熱調理器では、本体ケーシングの後部に配置された冷却ファンが前方に向かって冷却風を吹き出すことにより、電装品部を冷却している。
【0004】
しかしながら、上記加熱調理器では、電装品部を通った冷却風は、各電装品との間で熱交換して温度が上がった状態となるため、加熱調理器の本体ケーシングの側壁の温度が上昇し、それによって加熱調理器の設置のときに、加熱調理器の側部に十分なスペースを空けて設置する必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−240948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、本体ケーシングの側壁の温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくできる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、
本体ケーシングと、
上記本体ケーシング内に配置された加熱室と、
上記本体ケーシング内かつ上記加熱室の周囲に配置された電装品部と、
上記本体ケーシングの側壁との間に間隔をあけて配置された側板と、
上記本体ケーシング内かつ上記電装品部の近傍に配置され、上記電装品部に向かって冷却風を吹き出す冷却ファンと
を備え、
上記冷却ファンは、上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に上記冷却風の一部を吹き出すように配置されており、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記側板と対向する上記本体ケーシングの側壁とは異なる上記本体ケーシングの側壁に配置された排気口から排出されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、電装品部の近傍に配置された冷却ファンからの冷却風の一部が、側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に吹き出すから、本体ケーシングの電装品部が配置された側の側壁の温度を低温に保つことができる。これにより、本体ケーシングの側壁の温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくでき、設置の自由度が向上する。
【0009】
また、冷却ファンからの冷却風の一部が、側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に吹き出すから、それらの冷却風は、加熱室の側部に配置された電装品部を通らずに前面側の表示部に到達するために、電装品部を通って表示部に到達する冷却風よりも低温に保つことができ、表示部の冷却を効率的に行うことができる。
【0010】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記本体ケーシングの上記電装品部の前面側に表示部を備え、
上記表示部は、
バックライトと、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記バックライトの前面側を通過するように案内するバックライト用冷却風通路と
を有する。
【0011】
上記実施形態によれば、冷却ファンからの冷却風の一部が電装品部の側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通り、バックライト用冷却風通路を介して表示部のバックライトの前面側に到達するから、電装品部の間を通った冷却風よりも低温のままに保つことができ、バックライトの冷却を効率的に行うことができる。
【0012】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記本体ケーシングの前面側に配置され、下端側の辺を略中心に回動して上記加熱室の開口部を開閉する扉と、
上記加熱室内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生装置と
を備え、
上記加熱室の開口部の側方または上方に、上記扉を開いた状態で上記加熱室の開口部を横切るように上記冷却ファンの冷却風の一部を吹き出す冷却風吹出口を設けた。
【0013】
上記実施形態によれば、扉を開いた状態で、開口部の側方または上方に設けた冷却風吹出口から加熱室の開口部を横切るように吹き出す冷却風によって、蒸気を用いた調理終了後、使用者が扉を開けたときに、加熱室内に充満している蒸気が冷却風により側方に拡散されるので、使用者が蒸気にさらされるのを防ぐことができる。また、表示部を冷却した後の空気を冷却風吹出口から吹き出すようにすることで、表示部の冷却と加熱室の開口部への吹き出しとを兼ねた機構を実現でき、構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0014】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器によれば、本体ケーシングの側壁の温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくできる加熱調理器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の加熱調理器を前面側から見た正面図である。
【図2】図2は上記加熱調理器の扉を開いた状態の正面図である。
【図3】図3は上記加熱調理器の右側方から見た縦断面の模式図である。
【図4】図4は上記加熱調理器の正面から見た縦断面図である。
【図5】図5は上記加熱調理器の右側面から見た縦断面図である。
【図6】図6は上記加熱調理器の右側面から見た縦断面図である。
【図7】図7は上記加熱調理器の上面から見た横断面図である。
【図8A】図8Aは上記加熱調理器の上面から見た要部の横断面の模式図である。
【図8B】図8Bは上記加熱調理器の他の例を上面から見た要部の横断面の模式図である。
【図9】図9は上記加熱調理器の斜め上方から正面側を見た斜視図である。
【図10】図10は上記加熱調理器の斜め下方から裏面側を見た斜視図である。
【図11】図11はこの発明の第2実施形態の加熱調理器の液晶表示部に用いられるバックライト基板の正面図である。
【図12】図12は上記液晶表示部の要部の縦断面模式図である。
【図13】図13は他の例の液晶表示部の要部の縦断面模式図である。
【図14】図14は他の例の液晶表示部に用いられるバックライト基板の正面図である。
【図15】図15は他の例の液晶表示部の要部の縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の加熱調理器を前面側から見た正面図を示しており、図2は扉を開いた状態の加熱調理器の正面図を示している。
【0018】
この第1実施形態の加熱調理器は、図1に示すように、直方体形状の本体ケーシング1と、本体ケーシング1内に設けられた加熱室2(図2に示す)と、本体ケーシング1の前面側に回動自在に取り付けられた扉3とを備えている。
【0019】
上記扉3は、下端部を中心に回動し、加熱室2の開口部2aを開閉する。この扉3の上部にはハンドル4が取り付けられている。また、扉3の略中央部には耐熱ガラス5が配置されており、ユーザは耐熱ガラス5を通して加熱室2内の状態を視認することができる。また、扉3の後面には、耐熱ガラス5を取り囲むように耐熱樹脂製のパッキン40(図2に示す)が固着されている。このパッキン40は、扉3を閉じると、加熱室2の開口部2aの周縁部に強く密着するようになっている。これにより、扉3と加熱室2の開口部2aの周縁部との間から、加熱室2内の水蒸気などが漏れ出るのを防ぐことができる。
【0020】
上記本体ケーシング1の上面かつ裏面側に、希釈排気口28を有する排気ダクト30を配置している。この排気ダクト30の一端は、図2に示す加熱室2に設けられた排気口19に排気口カバー24を介して接続されている。
【0021】
上記本体ケーシング1の前面の右側には操作パネル6を設けている。この操作パネル6は、表示基板の一例としての液晶表示部7、ダイヤル8および複数のボタン9を有している。また、ダイヤル8の下側には水タンク10を収納している。この水タンク10は、本体ケーシング1に対して着脱可能となっており、本体ケーシング1の前面側から本体ケーシング1に装着したり、本体ケーシング1から取り外したりする。
【0022】
そして、この加熱調理器は、本体ケーシング1の下側かつ前面側に着脱可能に取り付けられた露受容器50(図1に示す)を備えている。この露受容器50は、扉3の内面および本体ケーシング1の前面を伝って落下する水滴を受ける。
【0023】
この加熱調理器は、図1に示すように、加熱室2の側面、底面および天面にステンレス鋼製の遮熱板18(図3に示す)が設けられている。加熱室2の周囲および扉3の内側に断熱材(図示せず)が配置されており、加熱室2内と外部とが断熱されている。
【0024】
上記加熱室2内の両側面内側に、上下2段構造の上側トレイ受部43,44と下側トレイ受45,46とを設けている。
【0025】
図3は上記加熱調理器の右側方から見た縦断面の模式図であり、図1,図2と同一の構成部には同一参照番号を付している。図3において、10は蒸気用の水を貯める水タンク、11は水タンク10内の水位を検知する水位センサ、12は水タンク10から蒸気発生装置20へ水を供給する給水ポンプ、13は給水パイプ、14は上ヒータ、15は上ヒータカバー、16は被加熱物90を載せるステンレス製のトレイ、17は下ヒータ、18は遮熱板、19は加熱室2の後面下部に設けられた排気口、20は蒸気発生装置、21は蒸気発生装置20からの蒸気を吹き出す蒸気吹出口、24は排気口カバー、25は排気サーモセンサ、27は冷気経路、28は希釈排気口、30は排気ダクト、31は冷気導入用開口部、50は露受容器である。水タンク10の下側に設けられた接続部(図示せず)に給水パイプ13の一端を接続し、給水パイプ13の他端を蒸気発生装置20に接続している。
【0026】
上記給水ポンプ12は、水タンク10内の水を吸い込み、その水を給水パイプ13を介して蒸気発生装置20に供給する。この蒸気発生装置20は、給水ポンプ12からの水を加熱して水蒸気を発生させ、発生した水蒸気を蒸気吹出口21を介して加熱室2内に供給したり、その水蒸気を過熱して過熱水蒸気にして加熱室2内に供給したりすることができる。ここで、上記過熱水蒸気とは、100℃以上の過熱状態にまで加熱された水蒸気を意味する。
【0027】
被加熱物90は、蒸気発生装置20からの水蒸気や過熱水蒸気で加熱可能であり、上ヒータ14および下ヒータ17の輻射熱でも加熱可能である。また、上ヒータ14下には加熱室2の天井壁が設けられ、下ヒータ17上には加熱室2の底壁が設けられている。上ヒータ14および下ヒータ17は加熱室2内に露出していない。
【0028】
また、加熱室2の右側上部には、加熱室2内の雰囲気の温度を検出する庫内温度センサ(図示せず)を配置している。
【0029】
図4は上記加熱調理器の正面から見た縦断面図を示しており、図5は上記加熱調理器の右側面から見た縦断面図を示している。図4,図5において、図1〜図3と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0030】
図4,図5に示すように、本体ケーシング1内に配置された加熱室2の右側に、電装品を配置した電装品室Sを形成している。この電装品室Sは、裏面側が仕切板41により仕切られている。この仕切板41に、裏面側から電装品室Sに冷却空気を送り込む冷却ファン53を配置している。また、本体ケーシング1の裏面側に、冷却ファン53を駆動する冷却ファン用モータ54を取り付けている。また、電装品室S内の冷却ファン53の風下側に、本体ケーシング1に取り付けられた電装品部の一例としてのマグネトロン61,インバータ部62を配置している。このインバータ部62は、側板の一例としての取付板56を用いて本体ケーシング1に取り付けられている。
【0031】
そして、冷却ファン53は、本体ケーシング1の裏面に形成された複数の吸気口55(図5に示す)から外気を取り入れ、取り入れた外気を冷却空気として前方に向かって吹き出すようになっている。また、冷却ファン53は、側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間に冷却風の一部を吹き出すように配置されている。
【0032】
また、加熱室2の下部には、回転アンテナ51(図5に示す)と、その回転アンテナ51を駆動する回転アンテナ用モータ(図示せず)とが配置されている。そして、マグネトロン61で発生したマイクロ波は、導波管60(図4に示す)によって加熱室2の下部中央に導かれ、回転アンテナ用モータによって駆動される回転アンテナ51によって回転されながら加熱室2内の上方に向かって放射されて被加熱物90を加熱するようになっている。
【0033】
図6は上記加熱調理器の取付板56を外した状態の右側面から見た縦断面図を示している。図5と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
【0034】
また、図7は上記加熱調理器の上面から見た横断面図を示している。図7では、インバータ部62を省略している。
【0035】
図7に示すように、取付板56は、本体ケーシング1の右側壁1aと所定の間隔をあけて略平行に配置されている。冷却ファン53(図4,図5に示す)からの冷却風の一部は、取付板56と本体ケーシング1の右側壁1aとの間を通過し、電装品室S内に配置された電装品などを介さずに本体ケーシング1の右側壁1aを冷却する。
【0036】
また、冷却ファン53から吹き出した冷却風の一部は、取付板56と本体ケーシング1の左側壁1aとの間を通り、本体ケーシング1の前方に到達する。取付板56と本体ケーシング1の左側壁1aとの間の空間は、本体ケーシング1の左側面外側が外気に接していることにより低温に維持されており、この空間を通った冷却風は、本体ケーシング1の右側壁1aと取付板56との間を通った冷却風よりも低温に保たれる。これによって、本体ケーシング1の前方に配置された液晶表示部7の冷却を効率的に行うことができる。
【0037】
液晶表示部7を冷却した冷却風は、その後、上ヒータ14を冷却しながら上ヒータ14と本体ケーシング1の天面の間を本体右側に向かって通流し、本体ケーシング1の左後方上部に設けられた希釈排気口28から本体ケーシング1外へと排出される。
【0038】
上記構成の加熱調理器によれば、冷却ファン53からの冷却風の一部が、本体ケーシング1と取付板56との間を通って液晶表示部7に到達することで、マグネトロン61やインバータ部62等の電装品と液晶表示部7の両方の冷却を効率的に行うことが可能となる。
【0039】
図8Aは上記加熱調理器の上面から見た要部の横断面の模式図を示しており、図8Aでは、下側が前面側、上側が裏面側を示している。
【0040】
図8Aに示すように、液晶表示部7の液晶表示基板73の背面側に、所定の間隔をあけてバックライト基板70を配置している。このバックライト基板70の前面側に複数のLED71を実装している。このバックライト基板70と液晶表示基板73との間の囲うように、LEDホルダ72を設けている。このLEDホルダ72の右側に通気口72aを設けて、LEDホルダ72の左側に排気口72bを設けている。このバックライト基板70と複数のLED71でバックライトを構成している。
【0041】
このバックライトとLEDホルダ72と液晶表示基板73で液晶表示部7を構成している。また、LEDホルダ72の右側に通気口72a,排気口72bおよびバックライト基板70と液晶表示基板73との間の空間でバックライト用冷却風通路を形成している。
【0042】
冷却ファン53(図4,図5に示す)からの冷却風の一部は、取付板56と本体ケーシング1の右側壁1aとの間を通過した後、通気口72aからLEDホルダ72内に流入して排気口72bから排気される。これにより、バックライト基板70に実装された複数のLED71を冷却すると共に、冷却ファン53からの冷却風の他の一部は、バックライト基板70の裏面側を冷却するので、複数のLED71の発熱を抑制でき、信頼性を向上できる。
【0043】
上記構成の加熱調理器によれば、バックライト基板70に実装された複数のLED71に直接冷却ファン53からの冷却風が当たることで、バックライト基板70の裏側からのみ冷却風を当てて冷却する場合よりもLED71の冷却効率を高めることができる。
【0044】
また、液晶表示基板73の前面側に、側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間を通った冷却風の一部が、液晶表示基板73の前面側を通過するように案内する表示基板用冷却風通路を設けている。
【0045】
上記液晶表示基板73と本体ケーシング1の前面との間および液晶表示基板73と本体ケーシング1の右側面との間に隙間で表示基板用冷却風通路が形成されているため、この表示基板用冷却風通路に流入した冷却風は、液晶表示基板73の前面側に回り込み、液晶表示基板73の表面全体を通過することで、液晶表示基板73の前面側に配置された電子部品を直接冷却することができる。
【0046】
上記構成の加熱調理器によれば、液晶表示部7の液晶表示基板73上に配置された電子部品に直接冷却ファン53からの冷却風が当たることで、電子部品が配置された基板裏側から冷却風を当てることにより冷却する場合よりも各部品の冷却効率を高めることができる。
【0047】
なお、図8Bに示すように、加熱室2の開口部の側方に、扉3を開いた状態で加熱室2の開口部2aを横切るように冷却ファン53の冷却風の一部を吹き出す冷却風吹出口80を設けてもよい。この場合、扉3を開いた状態で冷却風吹出口80から加熱室2の開口部2aを横切るように吹き出す冷却風によって、蒸気を用いた調理終了後、使用者が扉3を開けたときに、加熱室2内に充満している蒸気が冷却風により側方に拡散されるので、使用者が蒸気にさらされるのを防ぐことができる。また、冷却風吹出口を加熱室2の開口部2aの上方に設けてもよいが、液晶表示部7を冷却した後の空気を右側方に設けた冷却風吹出口80から吹き出すようにすることで、液晶表示部7の冷却と加熱室2の開口部2aへの吹き出しとを兼ねた機構を実現でき、構成を簡略化することができる。
【0048】
以下、上記構成の加熱調理器の蒸気加熱動作について、図1〜図5に従って説明する。操作パネル6の電源スイッチ(図示せず)が押圧されると電源がオンし、操作パネル6の操作によって、過熱水蒸気を用いたオーブン調理の運転が開始される。そうすると、先ず、制御装置(図示せず)は、水タンク検知部(図示せず)により水タンク10が正常に装着されているか否かを検知して、水タンク10が正常に装着されていれば、給水ポンプ12の運転を開始する。そして、給水ポンプ12によって、水タンク10から蒸気発生装置20内に給水パイプ13を介して給水される。
【0049】
次に、蒸気発生装置20内の水が沸騰すると飽和水蒸気が発生し、発生した飽和水蒸気は、蒸気発生装置20内の蒸気昇温ヒータ(図示せず)により加熱されて100℃以上(調理内容により異なる)の過熱水蒸気となって蒸気吹出口21から加熱室2内に供給される。
【0050】
このようにして、加熱室2内に過熱水蒸気を吹き出すと同時に上ヒータ14,下ヒータ17に通電し、加熱室2内の温度・湿度分布を均一に維持しつつ、トレイ16上に載置された被加熱物90を加熱する。その場合、被加熱物90の表面に接触した過熱水蒸気は、被加熱物90の表面で結露する際に潜熱を放出することによっても被加熱物90を加熱する。これにより、過熱水蒸気の大量の熱を確実に且つ速やかに被加熱物90全面に均等に与えることができる。したがって、斑がなくて仕上がりのよい加熱調理を実現することができる。
【0051】
また、上記加熱調理運転時において、時間が経過すると、加熱室2内の蒸気量が増加し、量的に余剰となった分の蒸気は、排気口19から排気口カバー24,排気ダクト30を介して希釈排気口28から外部に放出される。
【0052】
調理終了後、制御装置によって操作パネル6の液晶表示部7に調理終了のメッセージが表示され、さらに操作パネル6に設けられたブザー(図示せず)によって合図の音を鳴らす。
【0053】
これに対して、マイクロ波加熱動作の場合には、使用者によって操作パネル6が操作され、マイクロ波調理メニューが決定された後にスタートキー(図示せず)が押圧されると、マイクロ波加熱調理の運転が開始される。そうすると、制御装置は、マグネトロン61を駆動して、導波管60および回転アンテナ51を介して被加熱物90にマイクロ波を供給し、被加熱物90を加熱する。なお、その場合には、被加熱物90が載置されたマイクロ波を透過させる非金属の受皿が、例えば、加熱室2の底板上に敷設される。
【0054】
また、蒸気発生装置20のヒータへの通電と同時もしくは蒸気発生装置20のヒータの温度が上昇した後、冷却ファン用モータ54に通電する。
【0055】
図9は上記加熱調理器の斜め上方から正面側を見た斜視図を示しており、図1〜図3に示す同一構成部には、同一参照番号を付している。
【0056】
図9に示すように、冷却ファン53からの冷却空気の一部は、電装品室S内の電装品を冷却しながら、加熱室2の右側面側を通って、上ヒータカバー15,15に沿って加熱室2の上面側を左側方に向かって流れる。一方、冷却ファン53からの冷却空気の一部は、電装品室Sの電装品を冷却しながら、加熱室2の右側下方に流れて、加熱室2の底面側を通って左側方に向かって流れる。
【0057】
また、本体ケーシング1内において、冷却ファン53からの冷却風の一部が側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間を通った後、液晶表示部7を冷却しながら、加熱室2の右側面側を通って、上ヒータカバー15,15に沿って加熱室2の上面側を左側方に向かって流れる。
【0058】
また、図10は上記加熱調理器の斜め下方から裏面側を見た斜視図を示しており、図1〜図3に示す同一構成部には、同一参照番号を付している。
【0059】
図10に示すように、加熱室2の裏面側の中央に蒸気発生装置20を配置すると共に、その左側(図10中右側)に排気ダクト30を配置している。本体ケーシング1内において、冷却ファン53から電装品室Sに送り込まれた冷却空気の一部は、電装品室Sの電装品を冷却しながら、加熱室2の底面側を通って加熱室2の左側(図10中右側)および裏面側に向かって流れて、加熱室2の裏面側や左側面側(図10中右側)を通って冷気導入用開口部31から排気ダクト30内に冷却空気が合流する。
【0060】
この実施形態では、加熱調理器の冷却通路は、電装品室Sから加熱室2の上面側と左側面側を通って裏面側の冷気導入用開口部31までの経路と、電装品室Sから加熱室2の底面側と左側面側を通って裏面側の冷気導入用開口部31までの経路と、電装品室Sから加熱室2の底面側と裏面側を通って冷気導入用開口部31までの経路である。ここで、冷却ファン53から電装品室Sに送り込まれた冷却空気は、全てが冷気導入用開口部31を介して排気ダクト30により排気されるものではなく、冷却空気の一部は、本体ケーシング1の他の開口部分からも外部に排出される。
【0061】
なお、図10では、加熱室2の底面側に、加熱室2からの熱を遮ると共に、加熱室2の表面に付着した結露水を受けて露受容器50に案内する遮熱板18を配置している。そのため、本体ケーシング1内において、冷却ファン53から電装品室Sに送り込まれた冷却空気の一部が、加熱室2の底面側を通るとき、遮熱板18の下側を通る経路と、加熱室2の底面と遮熱板18との間を通る経路がある。
【0062】
上記加熱調理器では、上記冷却通路の空気流れ、すなわち、排気ダクト30内に冷却空気が合流する風経路が確保されるように、本体ケーシング1内の構造を設計する。
【0063】
上記構成の加熱調理器によれば、冷却ファン53からの冷却風の一部が、側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間に吹き出すから、本体ケーシング1の電装品室S側の側壁1aの温度を低温に保つことができる。これにより、本体ケーシング1の側壁1aの温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくでき、設置の自由度を向上させることができる。
【0064】
また、冷却ファン53からの冷却風の一部が、側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間に吹き出すから、それらの冷却風は、電装品室Sの電装品が配置された側を通らずに前面側の液晶表示部7に到達するために、電装品室Sの電装品が配置された側を通って液晶表示部7に到達する冷却風よりも低温に保つことができ、冷却を効率的に行うことができる。
【0065】
また、冷却ファン53からの冷却風の一部が、表示基板用冷却風通路を介して液晶表示基板73の前面側を通過するようにしたから、液晶表示基板73の前面側に配置された各部品の冷却を効率的に行うことができる。
【0066】
また、冷却ファン53からの冷却風の一部が側板としての取付板56と本体ケーシング1の側壁1aとの間に形成された空間を通り、バックライト用冷却風通路を介してバックライト基板170の前面側に到達するから、電装品が配置された側を通った冷却風よりも低温のままに保つことができ、バックライト(170,171)の冷却を効率的に行うことができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
図11はこの発明の第2実施形態の加熱調理器の液晶表示部7に用いられるバックライト基板170の正面図を示しており、図12は液晶表示部7の要部の断面模式図を示している。なお、この第2実施形態の加熱調理器は、液晶表示部7の構成を除いて第1実施形態の加熱調理器と同様の構成であるため、図1,図2を援用し、同一の参照番号を用いて説明する。
【0068】
図11,図12に示すように、液晶表示部7の液晶表示基板73の背面側に、所定の間隔をあけてバックライト基板170を配置している。このバックライト基板170の前面側に複数のLED171を実装している。バックライト基板170の右側かつLED171よりも下側に通気口170aを設けている。このバックライト基板170と液晶表示基板73との間の囲うように、LEDホルダ172を設けている。このLEDホルダ172の上側に、上方に向かって斜め前方に排気を案内する排気口172aを設けている。
【0069】
冷却ファン53(図4,図5に示す)からの冷却風の一部は、本体ケーシング1の右側壁1aと取付板56との間を通過した後、バックライト基板170の通気口170aからLEDホルダ172内に流入し、排気口172aから排気される。これにより、バックライト基板170に実装された複数のLED171を冷却すると共に、冷却ファン53からの冷却風の他の一部は、バックライト基板170の裏面側を冷却するので、複数のLED171およびバックライト基板170の温度上昇を抑制でき、信頼性を向上できる。
【0070】
なお、バックライト基板170と液晶表示基板73との間に冷却風を通す構造は、図11,図12に示す構造に限らない。
【0071】
例えば、図13に示すように、LEDホルダ172の上側に、上方に向かって斜め後方に排気を案内する排気口172bを設けてもよい。この場合、冷却ファン53からの冷却風の一部は、バックライト基板170の通気口170aによりLEDホルダ172内に向かって斜め上方に案内され、液晶表示基板73側に当たった後、LEDホルダ172の排気口172bからLEDホルダ172外に排気される。
【0072】
また、図14に示すように、バックライト基板170の右側かつLED171よりも下側に、冷却風をLEDホルダ172内に向かって斜め上方に案内する通気口170aを設け、さらに、バックライト基板170の右側かつLED171よりも上側に、後方に向かって斜め上方に排気を案内する排気口170bを設けてもよい。この場合、図15に示すように、冷却ファン53からの冷却風の一部は、バックライト基板170の通気口170aによりLEDホルダ172内に向かって斜め上方に案内され、液晶表示基板73側に当たった後、バックライト基板170の排気口170bからLEDホルダ172外に排気される。
【0073】
上記第2実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
【0074】
上記第1,第2実施形態では、本体ケーシング1内の加熱室2の右側部の電装品室S内に電装品部(マグネトロン61,インバータ部62)が配置された加熱調理器について説明したが、これに限らず、本体ケーシング内かつ加熱室の周囲(後面側を含む)に電装品部が配置された加熱調理器にこの発明を適用してもよい。
【0075】
この発明の加熱調理器としては、例えば、過熱水蒸気を使用するオーブンレンジのみならず、過熱水蒸気を使用するオーブン、過熱水蒸気を使用しないオーブンレンジ、過熱水蒸気を使用しないオーブンなどがある。
【0076】
この発明の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱水蒸気または飽和水蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、本発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱水蒸気または飽和水蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱水蒸気または飽和水蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱庫内は過熱水蒸気または飽和水蒸気が充満して低酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。ここで、低酸素状態とは、加熱室内において酸素の体積%が10%以下(例えば0.5〜3%)である状態を指す。
【0077】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0078】
この発明の加熱調理器は、
本体ケーシングと、
上記本体ケーシング内に配置された加熱室と、
上記本体ケーシング内かつ上記加熱室の周囲に配置された電装品部と、
上記電装品部の側部に配置され、上記本体ケーシングの側壁との間に間隔をあけて配置された側板と、
上記本体ケーシング内かつ上記電装品部の近傍に配置され、上記電装品部に向かって冷却風を吹き出す冷却ファンと
を備え、
上記冷却ファンは、上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に上記冷却風の一部を吹き出すように配置されており、
上記側板は、上記電装品部側に電装品が取り付けられた取付板であり、
上記電装品部は上記加熱室の側部に配置され、
上記本体ケーシングの上記電装品部の前面側に表示部を備え、
上記表示部は、
表示基板と、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記表示基板の前面側を通過するように案内する表示基板用冷却風通路と
を有することを特徴とする。
【0079】
上記構成によれば、電装品部の近傍に配置された冷却ファンからの冷却風の一部が、電装品部側に電装品が取り付けられた取付板である側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に吹き出すから、本体ケーシングの電装品部が配置された側の側壁の温度を低温に保つことができる。これにより、本体ケーシングの側壁の温度上昇を抑えて、設置時に側部に設ける空きスペースを少なくでき、設置の自由度が向上する。
【0080】
また、冷却ファンからの冷却風の一部が、側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に吹き出すから、それらの冷却風は、加熱室の側部に配置された電装品部を通らずに前面側の表示部に到達するために、電装品部を通って表示部に到達する冷却風よりも低温に保つことができ、表示部の冷却を効率的に行うことができる。
【0081】
また、冷却ファンからの冷却風の一部が、表示基板用冷却風通路を介して表示基板の前面側を通過するようにしたから、表示基板の前面側に配置された各部品の冷却を効率的に行うことができる。
【0082】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記表示部は、
バックライトと、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記バックライトの前面側を通過するように案内するバックライト用冷却風通路と
を有する。
【0083】
上記実施形態によれば、冷却ファンからの冷却風の一部が電装品部の側板と本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通り、バックライト用冷却風通路を介して表示部のバックライトの前面側に到達するから、電装品部の間を通った冷却風よりも低温のままに保つことができ、バックライトの冷却を効率的に行うことができる。
【0084】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記本体ケーシングの前面側に配置され、下端側の辺を略中心に回動して上記加熱室の開口部を開閉する扉と、
上記加熱室内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生装置と
を備え、
上記加熱室の開口部の側方または上方に、上記扉を開いた状態で上記加熱室の開口部を横切るように上記冷却ファンの冷却風の一部を吹き出す冷却風吹出口を設けた。
【0085】
上記実施形態によれば、扉を開いた状態で、開口部の側方または上方に設けた冷却風吹出口から加熱室の開口部を横切るように吹き出す冷却風によって、蒸気を用いた調理終了後、使用者が扉を開けたときに、加熱室内に充満している蒸気が冷却風により側方に拡散されるので、使用者が蒸気にさらされるのを防ぐことができる。また、表示部を冷却した後の空気を冷却風吹出口から吹き出すようにすることで、表示部の冷却と加熱室の開口部への吹き出しとを兼ねた機構を実現でき、構成を簡略化できる。
【符号の説明】
【0086】
1…本体ケーシング
2…加熱室
2a…開口部
3…扉
4…ハンドル
5…耐熱ガラス
6…操作パネル
7…液晶表示部
10…水タンク
11…水位センサ
12…給水ポンプ
13…給水パイプ
16…トレイ
19…排気口
20…蒸気発生装置
21…蒸気吹出口
24…排気口カバー
28…希釈排気口
30…排気ダクト
31…冷気導入用開口部
43,44…上側トレイ受部
45,46…下側トレイ受部
50…露受容器
51…回転アンテナ
53…冷却ファン
54…冷却ファン用モータ
55…吸気口
56…取付板
60…導波管
61…マグネトロン
62…インバータ部
70…バックライト基板
71…LED
72…LEDホルダ
73…液晶表示基板
80…冷却風吹出口
90…被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケーシングと、
上記本体ケーシング内に配置された加熱室と、
上記本体ケーシング内かつ上記加熱室の周囲に配置された電装品部と、
上記本体ケーシングの側壁との間に間隔をあけて配置された側板と、
上記本体ケーシング内かつ上記電装品部の近傍に配置され、上記電装品部に向かって冷却風を吹き出す冷却ファンと
を備え、
上記冷却ファンは、上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間に上記冷却風の一部を吹き出すように配置されており、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記側板と対向する上記本体ケーシングの側壁とは異なる上記本体ケーシングの側壁に配置された排気口から排出されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
上記本体ケーシングの上記電装品部の前面側に表示部を備え、
上記表示部は、
バックライトと、
上記側板と上記本体ケーシングの側壁との間に形成された空間を通った上記冷却風の一部が、上記バックライトの前面側を通過するように案内するバックライト用冷却風通路と
を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
上記本体ケーシングの前面側に配置され、下端側の辺を略中心に回動して上記加熱室の開口部を開閉する扉と、
上記加熱室内に供給するための蒸気を発生する蒸気発生装置と
を備え、
上記加熱室の開口部の側方または上方に、上記扉を開いた状態で上記加熱室の開口部を横切るように上記冷却ファンの冷却風の一部を吹き出す冷却風吹出口を設けたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−215381(P2012−215381A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143939(P2012−143939)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2010−261324(P2010−261324)の分割
【原出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】