説明

加熱調理器

【課題】撹拌機能付き加熱調理器において、複数の食品を同時にムラなく加熱し時間やエネルギーを節約する。
【解決手段】食品を収納する加熱室3と、加熱室内を加熱する加熱手段として少なくともマグネトロン40を有し、内部に回転可能な撹拌羽根31を設けた調理容器30と、加熱室3の下方に、加熱室内にマイクロ波を照射する回転アンテナ41と、回転アンテナ41を回転駆動するアンテナモータ43と、撹拌羽根31を回転駆動できる撹拌モータ35とを備え、回転アンテナ41の回転軸と、撹拌羽根31の回転軸との2つの軸が平行で、かつ加熱室底面に略垂直に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱する加熱手段として、マイクロ波を発生するマグネトロンを備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱調理装置として、ターンテーブルを回転させる機構を流用して、食品を捏ねたり、掻き混ぜたり、細かく切り刻んだりする機能を付加したものがある。
【0003】
例えば、特許文献1の高周波加熱調理装置では、加熱室底面の略中央に設けられたターンテーブル駆動機構の駆動軸に、これと同軸のジョイント機構を装着し、このジョイント機構の突出軸を付属鍋(食品を入れる容器)の底部に貫通させ、そこに装着した羽根部材を回転させることによって、付属鍋内の食品を捏ねたりすることができる。
【0004】
また、他の従来の高周波加熱装置として、加熱室内のマイクロ波分布を食品の数や位置に応じて適切に制御することで、複数の食品を同時に加熱調理することが可能なものがある。
【0005】
例えば、特許文献2の高周波加熱調理装置では、重量検出手段と、マイクロ波エネルギーの放射方向をコントロールする回転アンテナと、回転アンテナの位置を検出するアンテナ位置検出手段を備えることによって、加熱時の温度の異なる複数の食品を同時に加熱し、1回の調理でそれぞれの食味に適した温度に仕上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−211098号公報
【特許文献2】特開2009−257634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、加熱室の略中央に設けられたターンテーブル駆動機構の駆動軸の回転を羽根部材の動力として用いるため、ターンテーブルと付属鍋を同時に使用することはできず、ターンテーブルを用いたマイクロ波加熱調理と付属鍋を用いた捏ね調理を行いたい場合は、これらを順番に行う必要があり、調理に要する時間やエネルギーの面で不利益があった。
【0008】
また、特許文献1の構成では、加熱室へマイクロ波を供給する給電口が加熱室の壁面に設置されており、加熱室内におけるマイクロ波定在波の強弱は場所によって大きく異なる。このため、付属鍋を使用した調理を行うとともに、加熱室の底面に食品を載置して調理しようとしても、各々の食品に与えられるエネルギーにムラが生じ、結果的に各々の食品に加熱ムラが生じることになる。つまり、加熱室の側面に給電口がある構造では、ターンテーブル上に載置しない食品の加熱制御が不可能であり、ターンテーブルを使わずに、複数の食品を同時に加熱することはできない。同様に、個々の食品に応じて吸収されるマイクロ波量を調整することができないため、複数の食品を加熱する場合に食品をそれぞれの食味に適した温度に仕上げることが困難であり、特に、初期温度や量の異なる複数の食品は、同時に仕上げるように加熱することができない。
【0009】
なお、ターンテーブル式の調理器で給電口を加熱室の下方に設けない理由は、加熱室の底面にマイクロ波を発生するマグネトロンや伝送する導波管を設けると、食品を撹拌するための駆動軸が導波管を貫通し、マイクロ波が通過する導波管と加熱室内が駆動軸を介して連通するため、食品かすや蒸気などが導波管に流入した場合、導波管内でスパークや異常加熱が発生しやすくなるためである。また、駆動軸の貫通部分を介して機械室と加熱室が常時連通していることから、加熱室内で発生した蒸気が機械室内に漏洩して結露して部品の故障を招くことがあり、加熱室内に大量の蒸気を供給する加熱調理が困難になるためである。さらに、ターンテーブルの駆動軸部分は常時加熱室に露出しており、加熱調理中に発生する食品かすなどが詰まり、詰まった食品かすが原因となってスパークが生じる恐れがあるためである。
【0010】
また、特許文献2は、食品を撹拌する機構を備えていないため、食品を撹拌しながら複数の食品を同時に加熱することはできない。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決し、撹拌を伴う調理と通常のマイクロ波調理を同時に行うことで複数の食品を同時に加熱できるようできるとともに、撹拌機構に起因する不利益を回避した、安全で使い易い加熱調理器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の加熱調理器は上記の課題を解決するためになされるものであり、食品を収納する加熱室と、該加熱室の底面に着脱自在に取り付けられる調理容器と、前記加熱室の下方に設けられ、前記調理容器の内部の撹拌羽根を回転駆動する撹拌モータと、該撹拌モータの動力を前記調理容器に伝達する撹拌駆動軸と、前記加熱室の下方に設けられ、マイクロ波を供給するマグネトロンと、前記加熱室の下方に設けられ、前記マイクロ波を照射する回転アンテナと、前記加熱室の下方に設けられ、前記回転アンテナを回転駆動するアンテナモータと、を備え、前記撹拌駆動軸と前記アンテナモータの回転軸が前記加熱室の底面と略垂直になるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱室の下方に設けた撹拌調理機構が加熱室の下方に設けたマイクロ波調理機構に影響を与えることが無い。また、回転アンテナにより加熱室内のマイクロ波分布を制御し、撹拌調理を同時に行う場合であっても、複数の食品を同時にムラなく加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の調理容器を取り付けた加熱調理器を手前上方から見た分解斜視図である。
【図2】実施例1の加熱調理器で調理容器内の食品を加熱調理する場合の前面断面図である。
【図3】実施例1の加熱調理器で調理容器を取り付けない場合の前面断面図である。
【図4】実施例1の調理容器の連結部の拡大断面図である。
【図5】実施例2の加熱調理器を手前上方から見た分解斜視図である。
【図6】実施例2の加熱調理器で調理容器内の食品を加熱調理する場合の前面断面図である。
【図7】実施例2の加熱調理器の前面断面図である。
【図8】実施例3の加熱調理器を手前上方から見た分解斜視図である。
【図9】実施例3の加熱調理器で調理容器内の食品を加熱調理する場合の前面断面図である。
【図10】実施例3の加熱調理器の前面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、マグネトロンによるマイクロ波加熱機能と、ヒータによるオーブン加熱機能を備えた加熱調理器を例にとって説明する。なお、本発明の適用対象となる加熱調理器は、マイクロ波加熱機能を備える限り、オーブン加熱機能を持たなくても良く、また、過熱水蒸気加熱機能を持っていても良い。
【実施例1】
【0016】
図1から図4を用いて、実施例1の加熱調理器について説明する。なお、図1は実施例1の加熱調理器に調理容器30を取り付け、手前上方から見た分解斜視図である。図2は実施例1の加熱調理器に調理容器30を取り付けて食品6A、6Bを加熱調理する場合の前面から見た断面図、図3は実施例1の加熱調理器から調理容器30を取り外した場合の前面から見た断面図、図4は実施例1の調理容器30の連結部の拡大断面図である。
【0017】
まず、図1を用いて、加熱調理器の本体1の構造について説明する。本体1は前方が開口した加熱室3を備えている。加熱室3の開口には開動可能なドア2が備えられ、加熱室3の下方には機械室4が設けられる。機械室4を加熱室3の下方に設けることによって、機械室を加熱室の側方に設けた場合に比べ加熱室の横幅を大きくすること、つまり、加熱室の容量を大きくすることが容易となる。機械室4の側方にはマイクロ波を生成するマグネトロン40が設けられ、略中央には回転アンテナ41が設けられている。マグネトロン40で生成され回転アンテナ41から照射されたマイクロ波が、低損失の誘電体素材(マイカなど)で構成された仕切り板36を通過して加熱室3に供給されることでマイクロ波加熱を実現する。また、加熱室3の上方には上ヒータ50が、背面には高温の熱風を供給する熱風ユニット(図示せず)および熱風噴出口51が設けられており、これらを用いることでオーブン加熱を実現する。そして、加熱室3および機械室4をキャビネット10で囲うことで本体1が構成される。さらに、加熱室3の底面の壁面付近には、調理容器30が着脱自在に取り付けられている。調理容器30は、本実施例の加熱調理器専用の容器であり、耐熱性が高く、熱伝導性の良い金属製の容器を例に説明するが、耐熱性が高ければガラスやセラミックなどで構成されていても良い。
【0018】
次に、図2を用いて本体1の構造を詳細に説明する。ここに示すように、加熱室3の底面に取り付けた調理容器30には食品6Aが入れられており、底面に載置した皿には食品6Bが載せられている。なお、加熱室3の上部には、食品からの赤外線を観測し食品の表面温度を検知する温度センサ52が設けられているが、この詳細については後で説明を行うこととする。
【0019】
まず、皿に載せられた食品6Bをマイクロ波加熱するための構成を説明する。図2に示すように、マグネトロン40と回転アンテナ41の間には導波管42が設けられており、マグネトロン40で生成されたマイクロ波は導波管42を伝送し回転アンテナ41に供給される。導波管42の下方にはアンテナモータ43が設けられており、導波管42を略垂直に貫通するアンテナ回転軸44に取り付けられた回転アンテナ41を回転駆動させる。回転アンテナ41は、仕切り板36下方のアンテナ収納部45内で回転し、導波管42を介してマグネトロン40から供給されたマイクロ波を任意の方向に照射することで、加熱室3内のマイクロ波分布を変動させることができる。なお、以下では、マグネトロン40、回転アンテナ41、導波管42、アンテナモータ43、アンテナ回転軸44、アンテナ収納部45を包括して給電部4Aと称することとする。
【0020】
このように、加熱室3とアンテナ収納部45の間に仕切り板36を設けたことによって、アンテナ収納部45や導波管42に食品かすや蒸気が進入するのを防止することができる。なお、食品かすとは、パンくずやご飯つぶなどの食品6の破片の微細なくずや、食品6から飛び散った水分や油分、吹きこぼれた調味料などを示す。これらの食品かすは、マイクロ波が集中しやすいため異常加熱を誘発したり、カビやさびなど汚れの原因となったりするが、本実施例の加熱調理器では、食品かすがアンテナ収納部45などに侵入することが無いため、アンテナ収納部45や導波管42内での異常加熱、カビ、さびなどを抑制することができる。
【0021】
次に、調理容器30内の食品6Aを捏ね調理するための構成を説明する。図2に示すように、調理容器30の底面には連結回転部301が回転可能に取り付けられており、連結回転部301とともに回転する着脱可能な撹拌羽根31によって調理容器30内部の食品6Aを撹拌、混練することができる。なお、連結回転部301は液体を封止でき、調理容器30内部に液体を入れても漏れない構造になっている。機械室4のマグネトロン40の反対側には、撹拌モータ35、撹拌駆動軸33、および、撹拌モータ35の動力を撹拌駆動軸33に伝達する伝動装置34が設けられており、加熱室3の底面の壁面付近には、撹拌駆動軸33が略垂直に突出している。この撹拌駆動軸33の上端が調理容器30の連結回転部301と連結することによって、撹拌モータ35の動力で撹拌羽根31を回転駆動させることができる。
【0022】
図2からも明らかなように、撹拌駆動軸33は給電部4Aの外側に配置されており、導波管42やアンテナ収納部45を貫通することはない。このため、撹拌駆動軸33近傍からマイクロ波が漏洩することがなく、撹拌駆動軸33近傍に落ちた食品かすが原因となって異常加熱が発生したり、スパークが発生したりすることがない。また、撹拌駆動軸33が回転アンテナ41の回転を阻害することもない。
【0023】
次に、図3と図4を用いて、調理容器30内の撹拌羽根31を駆動する構成を詳細に説明する。図3は、調理容器30を取り外した場合の本体1の断面図である。加熱室3底面の撹拌駆動軸33の近傍には、棒状の連結突起32が略垂直に設置されている。図4は、調理容器30を取り付けた場合の調理容器30底面近傍の断面図である。連結回転部301の上面接続部には撹拌羽根31が接続され、下面接続部には撹拌駆動軸33が接続される。この構成により、撹拌駆動軸33を回転駆動させると、連結回転部301と撹拌羽根31が連動して回転する。また、調理容器30の下部フランジの連結孔302に加熱室3底面の連結突起32を貫通させ調理容器30を固定しているので、連結回転部301を回転させる力によって調理容器30が回転することはない。
【0024】
なお、撹拌駆動軸33の近傍には調理容器検知センサ(図示せず)を備えており、調理容器30を加熱室3底面に固定したことを検知することができる。調理容器検知センサとしては、例えばマイクロスイッチのような接触式センサや、調理容器30の導電性を電気の流れで検知する導電センサ、ホール素子など、調理容器30以外の物体が撹拌駆動軸33上に載置されても反応せず、調理容器30の固定の有無を判別できるセンサであれば何でも良い。調理容器検知センサを用いて調理容器30の有無を識別することによって、調理容器30を取り付けていない場合に撹拌駆動軸33を駆動するなどの危険な動作を防止でき、加熱調理器の安全性を高めることができる。
【0025】
次に、本実施例の加熱調理器の特徴的な構成を説明する。
【0026】
本実施例では、加熱室3の右側に調理容器30を取り付けたので、調理容器30を取り付けた後も、加熱室3の左側には他の容器を載置するスペースが残されている。従って、加熱室3右側で食品6Aの捏ね調理または掻き混ぜ調理を行いつつ、加熱室3左側で食品6Bのマイクロ波加熱を行うことができる。これにより、食品6A、6Bを順番に調理する場合に比べ、調理に要する時間とエネルギーを低減することができる。また、加熱室3左側に複数の食品を載置した場合であっても、回転アンテナ41を略一定速度で回転させながらマイクロ波を供給することで、加熱室3左側に載置された複数の食品に加熱ムラが生じるのを抑制することができる。
【0027】
また、回転アンテナ41の回転を適切に制御することで、食品6A、6Bのそれぞれに所望のエネルギーを供給することができ、食品6A、6Bのメニューに応じた仕上がりを実現することができる。例えば、食品6Aが食品6Bに比べて加熱されにくい食品である場合には、食品6Aが優先的に加熱されるように回転アンテナ41を適切に制御してマイクロ波の分布を変動させ、食品温度を推定しながら加熱調理を行うことで、食品6Aと食品6Bを同時に食味に適した温度に仕上げることが可能である。
【0028】
また、加熱室3上部の温度センサ52を用いて、食品の表面温度を計測しながら加熱することで、調理温度に応じた加熱調理を行うこともできる。例えば、加熱調理中に温度センサ52を用いて食品表面の温度を計測し、食品6Aに比べて食品6Bの温度が低い場合には回転アンテナ41を制御して食品6Bを重点的に加熱し、食品6Aと食品6Bの温度を揃えて加熱調理を仕上げることが可能である。なお、温度センサ52を側面上方に設置した場合を例として示したが、他にも上面や奥面の上方など、食品の表面温度が検知できる場所であれば温度センサ52はどこに設置しても良い。
【0029】
次に、本実施例の加熱調理器を用いて、調理容器30内の食品6Aと、調理容器30外の食品6Bを同時に加熱調理する場合の加熱調理の流れについて説明する。
【0030】
まず、取り外された調理容器30の内部に撹拌羽根31を取り付けた後、食品6Aを入れる。次に、ドア2を開けて調理容器30の連結回転部301を撹拌駆動軸33に、連結孔302を連結突起32に嵌合するように取り付けると、調理容器30は加熱室3底面に固定され、撹拌羽根31は撹拌モータ35により駆動可能になる。食品6Aは、スープのような液体の食品と固体の食品の混合物や、小麦粉などの粉末と水を合わせたものなど、複数の材料が混合されているものであれば何でも良いが、ここでは一例として、一口大に切った野菜と固形スープや水を入れて野菜スープを加熱調理する場合を想定して説明する。調理容器30底面の連結回転部301は液体が漏れないように封止されていることから、前述したように先に食品6Aを調理容器30内部に入れてから、この調理容器30を加熱室3に取り付けるが、調理容器30を加熱室3底面に取り付けてから調理容器30の内部に食品6Aを入れても良く、どちらの方法でも使用可能である。
【0031】
調理容器30を加熱室3の底面に固定したら、調理容器30の左側の空間に食品6Bを載置する。食品6Bは、加熱調理器で加熱調理を行うものであれば何でも良いが、ここでは一例として、生野菜を皿に盛り、温野菜を加熱調理する場合を想定して説明する。
【0032】
こうして、加熱室3の右側に食品6Aを、加熱室3の左側に食品6Bをそれぞれ載置したらドア2を閉め、操作パネル(図示せず)を用いて野菜スープと温野菜の加熱調理を指示する。
【0033】
調理を指示された本体1は、まず、マグネトロン40とアンテナモータ43を駆動する。マグネトロン40で発生したマイクロ波は導波管42により伝送され、回転アンテナ41によって加熱室3内に拡散しながら照射され、食品6Aと食品6Bは、加熱室3内に照射されるマイクロ波のエネルギーを吸収することによって加熱される。
【0034】
加熱室3内に照射されるマイクロ波は回転アンテナ41の回転によって拡散し、加熱室3内のマイクロ波分布は回転アンテナ41の回転に応じて変動するため、マイクロ波が食品の一部分や、どちらか片方の食品に集中することなく、食品6Aと食品6Bの全体をムラなく加熱することが可能である。
【0035】
また、食品6Aまたは食品6Bの一方の食品により多くのマイクロ波エネルギーが必要な場合には、回転アンテナ41を制御することによって片側の食品を重点的に加熱するようにマイクロ波分布を適切に制御することで、食品6Aと食品6Bを同等に加熱調理することができる。
【0036】
また、食品6Aや食品6Bの近傍である加熱室3の底面からマイクロ波が照射できることから、マイクロ波エネルギーの減衰が小さいため、遠方からマイクロ波を照射する場合に比べて効率良く加熱することができる。
【0037】
ここで、撹拌モータ35を駆動させると、撹拌羽根31が回転駆動する。これによって、調理容器30内の食品6Aは撹拌され、沈みやすい野菜や調味液も外力を加えられることで液体内を移動するため、固形スープなどの調味料が溶けやすく、野菜同士のくっつきや、味のムラの発生も防止できる。
【0038】
加熱調理中は、温度センサ52により食品の温度を検知するか、または調理時間やメニューに応じて食品の温度を推定しており、食品の温度が仕上がり温度になったと判断すると、加熱調理を自動的に終了する。このようにして、本実施例の加熱調理器では、食品6Aを撹拌しながら、食品6Bと同時に加熱調理を行う。
【0039】
ここでは撹拌羽根31により食品6Aを撹拌しながら加熱調理する例を示したが、撹拌羽根31の形状や性能を変えることによって、様々な調理が可能となる。例えば鋭利な刃物を備えた撹拌羽根31を採用することによって、調理容器30内部で食品6Aを粉砕しながら撹拌することができるため、材料を入れるだけでなめらかな液体状に加工することができる。例えば、調理容器30内に野菜や牛乳などの材料を入れることでポタージュスープなどのなめらかなスープを、肉や野菜などの材料を入れることでソース類を、自動で加工しながら加熱調理を行うことができる。
【0040】
また、撹拌羽根31を捏ねに適した形状にすることによって、粉と水を合わせて生地を捏ねることができるので、パンやうどん、パスタやそばなどの生地を作ることもできる。
【0041】
ここで、小麦粉やバター、イースト、砂糖、塩、牛乳などのパン生地の材料を調理容器30に入れることで、パン生地の混練を行うことができ、また本体1にはマグネトロン40や上ヒータ50といった加熱手段を備えているため、調理容器30内のパン生地をそのまま発酵させ、焼成することも可能である。
【0042】
パン生地の発酵は、30〜40℃程度の低温に生地を放置しておくことで生地を膨らませる工程であり、生地がマイクロ波を吸収することからマイクロ波を利用して加熱しても、上ヒータ50からの伝熱を利用して加熱してもどちらでも良い。また、加熱室3内に蒸気を供給する機能がついた加熱調理器であれば、同時に蒸気を供給することで生地の乾燥を防ぎ発酵を促進することができる。
【0043】
パン生地の焼成は、180〜250℃程度の高温で生地を焼成して焼き色を付ける工程であり、調理容器30と内部のパン生地を、上ヒータ50や熱風ユニット(図示せず)を用いて熱風噴出口51から噴出する熱風を用いて加熱することで、パン生地を焼成することができる。調理容器30にマイクロ波を吸収する発熱体を貼り付けることで、マイクロ波を用いて調理容器30を加熱して焼成することも可能であるが、パン生地がマイクロ波を吸収してパン生地内部が乾燥することがあるため、適度にヒータでの加熱と組み合わせることがより望ましい。ここで、熱伝導の良い金属製の調理容器30を用いて、熱風噴出口51から加熱室3内部に熱風を噴出するコンベクション加熱とその対流伝熱により調理容器30を加熱することで、加熱ムラを抑制して加熱時間を短縮した焼成調理が可能となる。また、加熱室3背面から熱風を噴出してコンベクション加熱を行うことにより、調理容器30を加熱室3の底面の中央に配置しない場合でも、調理容器30と内部のパン生地をムラなく加熱することが可能である。
【0044】
よって、パン生地の材料を調理容器30に入れるだけで、パン生地の混練から焼成まで一連の動作を行うことができるため、自動でパンを焼成調理することが可能である。
【0045】
このように、本実施例による加熱調理器は他の様々な種類の食品6Aや食品6Bや、これらの組みわ合せにも対応しており、多くのメニューの加熱調理性能を向上できる。
【0046】
例えば食品6Aとしてカレーやシチューのように、粘度があり対流しにくい液体を加熱する場合でも、撹拌羽根31によって撹拌することで強制的に対流させながら加熱調理を行うことができるので、固まりやすいルーなどをきれいに溶かすとともに、こげつきや加熱ムラなく調理を行うことができ、かつ食品6Bとして水と米をキャセロールなどの容器に入れて載置することでカレーの調理と同時にご飯を炊くことができるので、カレーライスを一度に調理することができる。
【0047】
また、食品6Aとして野菜と肉と、調味料として塩コショウ類を調理容器30に入れ、食品6Bとしてパスタと水を容器に入れて載置することで、ミートソースを作りながら、同時にパスタを茹でることができる。
【0048】
また、食品6Aとして小麦粉やバター、水などを調理容器30に入れ、食品6Bとして肉類をセットすることで、生地を捏ねるところから自動的にパンを焼成しながら、同時にローストビーフやソテーなどのおかずを調理することができる。
【0049】
他にも、様々な食品を複数同時に加熱することが可能であり、特に加熱調理に要する時間やエネルギー、加熱パターンが近い2種類の食品を同時に加熱することに適していることから、マイクロ波加熱とヒータ加熱を組み合わせて焼き菓子とコンフィチュールを同時に調理したり、ヒータ加熱を用いてスペアリブなどのおかずとソースを同時に調理したり、マイクロ波加熱を用いてホワイトソースと具の下ごしらえを同時に行いグラタンを作る手間を軽減したりすることなどが可能である。
【0050】
以上のように、本実施例の加熱調理器を用いることで、食品を混ぜる、つぶす、捏ねるといった、従来では事前に手作業で行う必要のあった作業を自動で行いながら加熱調理しつつ、同時に別の加熱調理を行うことができる。つまり、従来よりも短時間で、かつ、少ないエネルギーで加熱ムラの小さい加熱調理を行うことができ、使い勝手の良い加熱調理器を提供できる。
【0051】
なお、以上の実施例では、撹拌モータ35の動力を撹拌駆動軸33を介して調理容器30の連結回転部301に伝える構成を説明したが、撹拌駆動軸33を省略して撹拌モータ35の動力を調理容器30の連結回転部301に直接伝える構成としても良い。
【実施例2】
【0052】
図5から図7を用いて、実施例2の加熱調理器について説明する。図5は実施例2の加熱調理器を手前上方から見た分解斜視図である。図6は実施例2の加熱調理器に調理容器30を取り付けて食品を加熱調理する場合の前面から見た断面図、図7は実施例2の加熱調理器から調理容器30を取り外した場合の前面から見た断面図である。なお、実施例2の構成のうち、実施例1と共通する構成については説明を省略することとする。
【0053】
本実施例の加熱調理器では、実施例1の加熱調理器に加えて、加熱室3の底面に先端部が露出するように機械室4に重量センサ46が3つ設置されている。
【0054】
そのため、調理容器30を加熱室3内に取り付けて使用する場合には実施例1と同様に使用できる上に、調理容器30を取り外す場合には図6に示すように加熱室3の底面にテーブルプレート37を設置し、重量センサ46でテーブルプレート37を支持することができる。
【0055】
よって、本実施例では、調理容器30を使用しない場合、テーブルプレート37と重量センサ46を備えていることにより、テーブルプレート37上に載置された被加熱物の重量を検出することが可能である。
【0056】
重量センサ46を本実施例のように3個以上備えることで、テーブルプレート37を安定的に支持することができ、載置された被加熱物の重量に加えて、載置位置を検出することが可能である。
【0057】
テーブルプレート37はセラミックやガラス等の、マイクロ波を吸収しにくい誘電体で構成されており、マイクロ波はテーブルプレート37を通過する。
【0058】
回転アンテナ41を加熱室3の底面に備えていることから、テーブルプレート37上の被加熱物の重量と位置に応じて回転アンテナ41を適切に制御することによって、マイクロ波を被加熱物に集中させることができるため、より効率の良い加熱調理が可能である。
【0059】
テーブルプレート37を加熱室3底面の上に設置することにより、撹拌駆動軸33はテーブルプレート37によって覆われるため、撹拌駆動軸33の貫通部分から機械室4への蒸気の流入が防止できるので、加熱室3内に大量の蒸気を供給しながら加熱調理を行うことが可能となる。
【0060】
また、撹拌駆動軸33を加熱室3に露出させずに使用できることから、撹拌駆動軸33への食品かす等の付着や、撹拌駆動軸33から機械室4への食品や蒸気の侵入などを極力防止することができるため、撹拌駆動軸33が常時加熱室3内に露出している場合に比べて、食品かすに起因するスパークや、異物混入による機械室4内の汚染や損傷を防止するため、より安全に使用できる。
【0061】
同様に、連結突起32や仕切り板36が加熱室3内に露出することもないため、加熱調理中の連結突起32への食品かすの付着や、仕切り板36への食品浸透等を防止するとともに、加熱室3の底面に凹凸がない状態で加熱調理を行うことができるため、汚れた場合にも手入れがしやすく使い易い。
【0062】
また、テーブルプレート37が汚れてしまった場合は取り外して洗うことができるため、常に清潔な状態で加熱調理器を使用することができる。
【0063】
以上のように、本実施例の加熱調理器を用いることで、調理容器30を用いて食品を撹拌、紺連しながら同時に複数の食品をムラなく適切に加熱調理できるとともに、より安全で使い勝手を高めた加熱調理器を提供できる。
【実施例3】
【0064】
図8から図10を用いて、本実施例の加熱調理器について説明する。図8は実施例3の加熱調理器を手前上方から見た分解斜視図である。図9は実施例3の加熱調理器に調理容器30を取り付けて食品を加熱調理する場合の前面から見た断面図、図10は実施例3の加熱調理器から調理容器30を取り外した場合の前面から見た断面図である。なお、実施例3の構成のうち、実施例1と共通する構成については説明を省略することとする。
【0065】
本実施例の加熱調理器では、実施例1の加熱調理器構造の仕切り板36が無く、代わりに加熱室3の底面に調理容器30を取り付ける位置を除いてプレート38を固定した構造である。プレート38は、セラミックやガラスなどのマイクロ波を吸収しにくい誘電体であり、マイクロ波を通過させることができるため、回転アンテナ41から照射されたマイクロ波はプレート38を通過して加熱室3内に照射される。
【0066】
また、プレート38と同素材のプレートふた39を着脱自在に設けており、調理容器30を取り外した場合には、図8に示すようにプレート38の円形孔部分に、同じく円形のプレートふた39を取り付けることができる。プレート38にプレートふた39を取り付けることで、調理容器30を取り付ける撹拌駆動軸33が加熱室3底面に露出しなくなるため、加熱室3内から機械室4への食品かすや蒸気などの異物の侵入を防止できる。また、撹拌駆動軸33と連結突起32が加熱室3内に露出しないため、食品かすの付着を防止でき、食品かすに起因するスパークを防止し、安全に加熱調理器を使用できる。
【0067】
また、プレート38とプレートふた39は同素材で平滑な板であり、調理容器30を固定しない場合に加熱室3の底面が平面にできるため、大きな食品を入れて加熱調理する場合などにも使い易い。また、プレート38は平滑で掃除がしやすく、プレートふた39は取り外しするために表面に凹凸を備えているが、汚れた場合には取り外して洗うことが可能であるため、掃除がしやすく常に清潔に使用することができる。
【0068】
本実施例では、プレートふた39が円形で取り外し可能な場合を示したが、プレートふた39の形状は問わず、巻き取り式やスライド式などの、プレート38に一部固定されて開閉自在に稼働する形状でも撹拌駆動軸33を覆うことができる形状であれば問題ない。
【0069】
以上のように、本実施例の加熱調理器を用いることで、調理容器30を用いて食品を撹拌、混練しながら同時に複数の食品をムラなく適切に加熱調理できるとともに、より安全で使い勝手を高めた加熱調理器を提供できる。
【符号の説明】
【0070】
1 本体
2 ドア
3 加熱室
4 機械室
4A 給電部
6、6A、6B 食品
30 調理容器
31 撹拌羽根
32 連結突起
33 撹拌駆動軸
34 伝動装置
35 撹拌モータ
36 仕切り板
37 テーブルプレート
38 プレート
39 プレートふた
40 マグネトロン
41 回転アンテナ
42 導波管
43 アンテナモータ
44 アンテナ回転軸
45 アンテナ収納部
50 上ヒータ
51 熱風噴出口
52 温度センサ
301 連結回転部
302 連結孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する加熱室と、
該加熱室の底面に着脱自在に取り付けられる調理容器と、
前記加熱室の下方に設けられ、前記調理容器の内部の撹拌羽根を回転駆動する撹拌モータと、
該撹拌モータの動力を前記調理容器に伝達する撹拌駆動軸と、
前記加熱室の下方に設けられ、マイクロ波を供給するマグネトロンと、
前記加熱室の下方に設けられ、前記マイクロ波を照射する回転アンテナと、
前記加熱室の下方に設けられ、前記回転アンテナを回転駆動するアンテナモータと、
を備え、前記撹拌駆動軸と前記アンテナモータの回転軸が前記加熱室の底面と略垂直になるように配置されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱室の下方に、前記マイクロ波を伝送する導波管と、前記回転アンテナを設置するアンテナ収納部とが配置されており、
前記撹拌駆動軸は前記導波管と前記アンテナ収納部の外側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱室の底面に、前記撹拌駆動軸を覆う部材を、着脱自在又は開閉自在に設けたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記アンテナモータの回転軸は前記加熱室の底面の略中央に設けられ、前記撹拌モータの回転軸は前記加熱室の底面の壁面付近に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113518(P2013−113518A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261176(P2011−261176)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】