説明

加速度しきい値の自己適応計算のアルゴリズムを使用する歩数計装置および歩数検出方法

【課題】加速度しきい値の自己適応計算のアルゴリズムを使用する歩数計装置および歩数検出方法を提供する。
【解決手段】歩数計装置1 において、ユーザの歩行の歩行ステップを検出し、計数するために、加速度センサ2 は歩行ステップ中に発生された垂直加速度を検出する。処理装置3 は加速度センサ2 に接続され、歩行ステップの発生を検出する加速度Aに関係する加速度信号CalAccを処理し、特に加速度信号CalAccを第1の基準しきい値S+ と比較する。処理装置3 は、加速度信号CalAccの関数として第1の基準しきい値S+ を自動的に適合させる。特に処理装置3 は加速度信号の振幅のエンベロープEnv+ の関数として第1の基準しきい値S+ を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩数計装置および加速度しきい値の自己適応計算のためのアルゴリズムを使用する歩数検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歩数計算装置(一般的に歩数計と呼ばれている)は知られており、そりはユーザによって携帯され、歩数の測定、移動した距離の計算ならびに例えば平均速度またはカロリー消費量のような付加的な情報の提供を可能にする。
【0003】
歩数計は人間に対して適用される慣性航行システム(いわゆる推測航法システム)で使用されるのに有効である。このようなシステムは、汎地球測位システム(GPS)の使用にたよることなく、或いはGPSに対する援助として、既知のスタート地点からスタートした人の移動を識別して測定することによってユーザの動きを追跡する。前記のシステムにおいては、コンパスが移動の方向に関する情報を供給し、歩数計が移動量に関する情報を供給する。歩数計はまた臨床分野(例えばリハビリテイション)および一般的な健康管理の分野(例えば物理的な活性度を監視するための器具として)で広い応用範囲で使用されている。
【0004】
歩数計では、歩行ステップの検出のためにMEM(マイクロ・電子機械システム)型の集積された加速度計を使用することが知られている。特に、そのような歩数計は、コンパクトな寸法であり、移動電話、Mp3リーダ、カムコーダ等のようなポータブルな装置内に集積されることができる。
【0005】
前述の歩数計は足と地面との接触による歩行ステップの種々の位相中に発生される垂直加速度のパターンの解析に基づいて歩行ステップ検出方法を実行し、それはユーザの身体に固定されている加速度計によって検出される。これに関連して、この明細書では“垂直加速度”とはユーザの身体の垂直方向の加速度を意味している。特に、歩行ステップの発生は加速度信号中に現れる加速度ピークを識別することにより決定され、このピークは加速度信号を予め設定された値を有する所定の基準しきい値と比較することによって検出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら加速度信号が各歩行ステップで反復可能なプロフィールを有していても、そのパターン(および特にその振幅および一時的な広がり)は踏む表面、履いている靴の形式(堅い靴底か、柔軟な靴底か等)および歩行速度(ゆっくりした歩行、速い歩行、駆け足等)のような歩行に影響する多数の要因によって広範囲に変化する。さらに、個々のユーザは他のユーザとは異なった足取りで歩行する。
【0007】
その結果、加速度ピークの検出のための予め設定された値を有する基準しきい値と加速度信号の値との比較に基づいた歩行ステップの検出は、エラーの発生を含んでおり、そのエラーは歩行ステップの計数および歩行距離の測定に顕著に影響する。特に、しきい値が低過ぎた場合には疑似信号、リバウンド、或いは一般的に雑音が歩行ステップとして計数され、反対に、しきい値が高過ぎた場合には幾つかの歩行ステップが検出されない可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、前述のような欠点および問題を克服することのできる歩行ステップの検出および計数を行う歩数計装置および計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による歩数計装置および歩行ステップ検出方法は請求項1および12にそれぞれ規定されているように提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明をさらによく理解するために、発明を限定するものではない、純粋な例示として好ましい実施形態について添付図面を参照にして説明する。
図1は、線形タイプであり、垂直検出軸zを有する加速度計2 と、この加速度計2 に接続された処理装置3 とを備えている歩数計装置1 の概略図である。加速度計2 と処理装置3 は歩数計装置1 の容器(図示せず)内に収容された同じ印刷配線回路板上に取付けられると便利である。この歩数計装置1 はユーザによって携帯され、例えばユーザのベルトまたはショルダーに取付けられてそれによりユーザの身体に固定され、足の地面との接触による衝撃により生じた歩行ステップ中に発生する垂直加速度を感知することができる。
【0011】
歩数計装置1 はさらに、処理装置3 の出力に接続された表示スクリーン4 と、処理装置3 の入力に接続されたインターフェース5 とを備えている。表示スクリーン4 は歩数、歩行距離等のような歩数計装置1 から出力される情報を表示する。インターフェース5 は例えば押ボタン、文字数字キーパッド、通信ポート等を含み、ユーザが(例えばデータ入力により)処理装置3 と通信することを可能にする。
【0012】
加速度計2 は既知の形式のMEM技術を使用して形成された半導体材料の集積されたセンサであることが有効であり、既知の形式であるからここでは詳細な説明は省略する。使用において加速度計2 は歩行ステップ中に発生したz軸方向の垂直の加速度成分を検出して対応する加速度信号Aを生成する。
【0013】
図2に示されるように、時間tにおける加速度信号Aのパターン(直流成分は濾波されて除去されている)は所定の加速度プロフィールを有し、それは各歩行ステップ(破線の方形によって示されている)で反復される。詳しく説明すると、加速度プロフィールは、足と地面接触とそれに続く衝撃による正の(すなわち上方を向いている)加速度ピークが生じる正位相と、正の加速度ピークよりも小さい絶対値を有するリバウンドによる負の (すなわち下方を向いている)加速度ピークが生じる負位相とを連続して含んでいる。
【0014】
マイクロプロセッサ回路(例えばマイクロ制御装置またはDSP)により構成された処理装置3 は加速度計2 により発生された加速度信号Aの予め設定されたインターバルのサンプルを捕捉して歩行ステップ数を数えて歩行距離を測定するための適当な処理動作を行う。以下、詳細に説明するように、処理装置3 は加速度信号Aの値(直流成分は濾波されて除去されている)を正の基準しきい値S+ および負の基準しきい値S- と比較してそれぞれ歩行ステップの正の位相(正の加速度ピーク)と負の位相(負の加速度ピーク)とを識別する。
【0015】
本発明の特徴によれば、正および負の基準しきい値S+ およびS- の値は固定されておらず、所定の予め設定された値に等しいが、自己適応的な方法で(すなわちユーザからの何等の外部介入なしに適応させる方法で)変化し、処理装置3 によって検出された加速度の有する値に基づいて計算される。特に、以下明らかにされるように、正および負の基準しきい値S+ およびS- の値は、加速度信号Aの新しいサンプルの各捕捉において、加速度信号の正および負の振幅エンベロープの値の関数として基準しきい値が前記エンベロープに近似的に追従して時間的に変化するような方法で変更される。したがって、歩数計装置1 は検出条件の変化に(および、特に振幅および期間に関して加速度信号の異なったプロフィールに)に適応し、例えば地域の異なった形式により、または歩行速度の増加により変化するのに適応する。
【0016】
実行のために処理装置3 により行なわれるアルゴリズム、特に歩数の計数および歩行距離測定の動作について図3を参照にして以下説明する。前記アルゴリズムは、正の位相の発生から予め設定された時間インターバル内に負の位相が後続するような歩行ステップの正の位相を探すために加速度信号Aの解析を行う。前記シーケンスが発生する場合(それは歩行ステップの発生を示している場合)、歩行ステップの計数と全体の歩行距離の測定は更新され、それでなければアルゴリズムは歩行ステップの新しい正の位相を探す最初の状態に戻る。特に、予め設定された時間インターバル内に発生する正の加速度ピークはアルゴリズムにより無効にされる(衝撃、異例のリバウンド等のような雑音現象にもとづくものと認められる限り)。
【0017】
詳しく説明すると、アルゴリズムは初期化により開始する。ブロック10で正の最小値S1 と負の最小値S2 とにおいてそれぞれ正の基準しきい値S+ および負の基準しきい値S- の値が初期化され、それにおいて負の最小値S2 は絶対値が正の最小値S1 よりも小さい。後述するように、前記最小値は基準しきい値がそれより低下することを許されない限界値を表している。さらに、加速度信号Aの正のエンベロープEnv+ の値および負のエンベロープEnv- の値(それらは次に基準しきい値の変更のために使用される)がそれぞれ正の最小値S1 および負の最小値S2 において初期化される。
【0018】
次に、ブロック11において第1の加速度データCalAccが決定され、その結果、基準しきい値の値が変更される(以下図4および5を参照にして詳述する)。
【0019】
その後、アルゴリズムはブロック12に進み、歩行ステップの正の位相のサーチが行なわれ、加速度データCalAccの値を正の基準しきい値S+ と比較することによって加速度信号Aの正の加速度ピークが検出される。
【0020】
ブロック13で歩行ステップの正の位相が発見されるまで、アルゴリズムはブロック11で新しい加速度データCalAcc(および対応する基準しきい値の変更)の捕捉動作を行い、前記新しい加速度データを正の基準しきい値S+ と比較する。
【0021】
加速度データが正の基準しきい値S+ を越え、その後、正の基準しきい値より下に降下するとき正の位相が検出され、その正の位相の検出の瞬間は加速度データが再び正の基準しきい値S+ より下に降下した瞬間に対応している。この瞬間に、処理装置3 は正の基準しきい値S+ により想定される値を記憶し、それは最大値S+maxである。
【0022】
正の位相の検出後、アルゴリズムはブロック14の歩行ステップの負の位相、すなわち負の加速度ピークのサーチへ進み、加速度データCalAccの値を負の基準しきい値S- と比較する。特に歩行ステップの負の位相のサーチは、正の位相の検出から最大の時間インターバルMax Maskよりも小さくなければならないある値の時間インターバルMask内で実行されなければならない(それは、加速度データのサンプリングレートの関数として決定されるあるサンプル数に対応している)。
【0023】
ブロック15で負の加速度ピークが検出されるまで、ブロック16で最大の時間インターバルMax Maskよりも短い時間インターバルMaskである間は、アルゴリズムは歩行ステップの負の位相に対するサーチを実行する。詳しく説明すると、時間インターバルMaskはブロック17でインクリメントされ、新しい加速度データCalAccが獲得され(およびそれに応じて基準しきい値の値が変更され)、ブロック18(それはブロック11と等価である)でアルゴリズムはブロック14に戻る。歩行ステップの負の位相が識別されない場合には、ブロック16で最大の時間インターバルMax Maskの終了後、新しい歩行ステップの正の位相を発見するためにアルゴリズムはブロック11に戻る。
【0024】
反対に、最大時間インターバルMax Mask内に負の位相が識別された場合(すなわち加速度データが負の基準しきい値S- より下に降下する場合)には、処理装置3 は歩行ステップの発生を決定し、ブロック20で検出された歩行ステップのカウントをインクリメントする。さらに、歩行距離の算定は現在の歩行ステップ長LPSの評価値を前の値に付加することによって更新される。
【0025】
詳しく説明すると、本発明の特徴によればブロック21で、処理装置3 は、歩行ステップの正の位相中に正の基準しきい値S+ に到達した最大値S+maxの関数として現在の歩行ステップ長LPSの評価された長さの値を計算し、それは正の加速度ピークの値の指示を与える。歩行ステップの実際の長さはユーザの物理的な特性に基づいて、歩行ステップの速度、またはそれと等価な発生された加速度の振幅にしたがって決定された標準的な値に関して変化する。結果として、現在の歩行ステップ長LPSの評価値は次の式により計算される。
LPS=LP・f(S+max)
ここで、LPはユーザの背丈の0.4乃至0.5倍に対応する歩行ステップの標準的な長さであり、f(S+max)は例えば最大値S+maxに基づいた線形関数のような補正関数である。この補正関数f(S+max)は実験に基づいて表にされることができ、それは歩行ステップLPの標準の長さに対して行なわれる適切な補正の所定の最大値S+maxに関連させることができる。特に、この関数f(S+max)は処理装置3 中に記憶しておくと便利である。
【0026】
その後、アルゴリズムはブロック22に進み、前に計算された現在の歩行ステップLPSの長さの算定に基づいて歩行距離を増加する。さらに、ブロック23で、歩数計装置1 からの出力に供給されているカロリー数のような変数が更新され(また、この場合に歩行ステップ当たりのカロリーの平均消費量を加算することにより前のカウントが更新される)、ここでは詳細な説明は省略するが、既知の方法によって歩行速度の平均値および瞬時値が計算される。
次にアルゴリズムは、歩行ステップの発生を示す新しい加速度プロフィールを検出するためにブロック11へ戻る。
【0027】
図4を参照にして詳細に説明すると、アルゴリズムは処理装置3 によって実行され、新しい加速度データCalAccの決定と、その結果による正および負の基準しきい値S+ およびS- の値の更新が行われ、それは前述の値が加速度信号の正および負のエンベロープにほぼ追従するように行なわれる。
【0028】
簡単に説明すると、前記アルゴリズムは、新しい加速度データに対して正のエンベロープEnv+ および負のエンベロープEnv- の値の計算と、その正のエンベロープEnv+ および負のエンベロープEnv- の関数として正および負の基準しきい値S+ およびS- の値の修正とをそれぞれ行う。
【0029】
詳しく説明すると、最初のブロック30で、処理装置3 は加速度計2 から加速度Aの新しい加速度サンプルAccを獲得する。その後、ブロック31で前記加速度値の直流成分(実質的に重力の加速度により)が消去されて、平均値がゼロの加速度データCalAccが決定され、それは次にアルゴリズムにおいて使用される。詳しく説明すると、加速度サンプルAccの平均値Accm は次の式により計算され、
Accm =Y・Accm +(1−Y)・CalAcc
ここでYは0と1との間の、例えば0.95に等しい定数であり、Accm とCalAccはそれぞれ前の獲得において計算された加速度データの平均値と加速度データである。新しい加速度データCalAccは次の式 CalAcc=Acc−Accm により計算される。
【0030】
その後、アルゴリズムは新しい正のエンベロープEnv+ および負のエンベロープEnv- の値の決定に進行する。詳しく説明すると、ブロック32で。加速度データCalAccの値が正のエンベロープEnv+ の値(前の獲得で計算された)よりも大きいならば、正のエンベロープEnv+ の新しい値はブロック33で加速度データCalAccの値に等しく設定される。それでなければ、ブロック34で正のエンベロープEnv+ の値は前の値の適当な分数に等しく設定される。すなわち、前の値は例えばα1 =0.9458のような第1の定数α1 (α1 <1)により乗算される。このようにしてエンベロープの値は、加速度データの値が前のエンベロープの値よりも大きい場合には実質的に加速度データの値と一致し、そうでない場合には、前の値に関して減少される(とくに、ほとんど指数関数的に)。
【0031】
同様にブロック35において加速度データCalAccの値が負のエンベロープEnv- の値(前の獲得で計算された値)よりも小さいならば、負のエンベロープEnv- の新しい値はブロック36で加速度データCalAccの値に等しく設定される。それでなければ、ブロック37で負のエンベロープEnv- の値は前のエンベロープの値の適当な分数に等しく設定される。すなわち、前の値は例えばα2 =0.9438のような第2の定数α2 (α2 <1)により乗算される。特に第1の定数α1 と第2の定数α2 との異なった値は正および負の加速度の異なった値によるものであり、前記負の加速度の方が小さい値であり、それは歩行ステップの負の位相は正の位相のリバウンドであるからであることに注意すべきである。
【0032】
アルゴリズムはその後進行して前に計算されたエンベロープ値の関数として基準しきい値の値を更新する。詳しく説明すると、ブロック38で、正の基準しきい値S+ の値は正のエンベロープEnv+ の値の適当な分数に等しく設定される。特に、例えばβ=0.65のような第3の定数β(β<1)により乗算された正のエンベロープEnv+ の値に等しく設定される。しかしながら、ブロック39で計算された値が正の最小値S1 よりも小さい場合には、ブロック40で正の基準しきい値S+ の値は前記正の最小値S1 に設定される。
【0033】
同様にブロック41で負の基準しきい値S- の値は負のエンベロープの値の適当な分数に等しく設定される。特に、この値もまた第3の定数βにより乗算される。しかしながら、再びこのようにしてブロック42で計算された値が負の最小値S2 よりも小さい場合には、ブロック43で負の基準しきい値S- の値は負の最小値S2 に設定される。
【0034】
このようにして計算された新しいしきい値の値は、その後、前述のように歩行ステップの正および負の位相の検出に使用される。
【0035】
図5および6は前述したアルゴリズムを使用して計算された正および負の基準しきい値S+ およびS- と正および負のエンベロープの値Env+ およびEnv- の曲線と、加速度データCalAccのパターン(加速度データCalAccのシーケンスにより構成される)を示している。基準しきい値は実質的に加速度信号のエンベロープに追従している(それは加速度信号のピークに追従している)ことは明らかである。
【0036】
詳しく説明すると、正の加速度の基準しきい値S+ は最初は正の最小値S1 に等しい大きさであり(特に図6参照)、加速度データCalAccが正の基準しきい値S+ よりも小さい状態である限り一定である。加速度データCalAccが正の基準しきい値S+ を越えた瞬間からスタートして、加速度データCalAccが増加しているあいだは、“制動”された方法で加速度データCalAccの増加に追従する(特に図5参照)。次に、加速度データCalAccが減少を開始すると、それと共に正の加速度基準しきい値S+ は加速度データCalAccが減少しているあいだは、減少パターンをとる(しかしながら正の最小値S1 より下に低下しない)。特に、歩行ステップの正の位相の終わりにおいて、最大値S+maxが記憶される。正の基準しきい値S+ は、ユーザが停止するとき正の最小値S1 に戻る。同様のパターン(絶対値における)は負の加速度の基準しきい値S- によって示されており、負の加速度の基準しきい値S- の減少(絶対値における)は特に速くなっている点で相違している。この相違は負の加速度ピークの異なった形態によるものであり、それは正の加速度ピークと比較して振幅が小さく期間が長く、そのために過度に長い減少時間がピークの検出されない結果を生じる可能性がある。正の最小値S1 と負の最小値S2 との絶対値における差は同じ理由によるものである。
【0037】
本発明の特徴によれば正の最小値S1 と負の最小値S2 は歩数計装置1 の感度を変更するために、例えばインターフェース5 を通って外部から変更されることができる。特に、前記最小値が減少する場合に、(例えば特にゆっくりとした歩行または非常に剛性ではない表面により)加速度ピークが小さい振幅である場合に装置の感度を増加させて検出させることができる。しかしながら、同時に雑音(外部振動、つまずき、ユーザにより行なわれる速い移動等)により誤った正の検出が増加して歩行ステップの位相と類似した誤った検出を生じる可能性が増加する。
【0038】
本発明による歩数計装置およびそれに対応する歩行ステップ検出方法の利点は前述の説明にから明白である。
いずれにせよ、歩数計装置1 は、例えば歩行速度の増加による加速度プロフィールの変化に適応することが可能であり、それ故、歩行ステップ検出のために必要な加速度しきい値を再設定するための外部介入は必要ない。
【0039】
加速度しきい値が加速度信号のエンベロープに追従して(電子ピーク検出器に類似する)前記変化が迅速に追従する事実は、歩行ステップの損失が生じ、計数エラーが発生する危険がなく、同時に雑音に対する良好な不感応性が得られる。特に、加速度が、例えば歩行速度が増加したために増加(絶対値で)したとき、基準しきい値は急速に増加して新しい状態に迅速に適応することができる。その代りに、例えばユーザが速度を低下させたために加速度が減少するとき、基準しきい値もまた減少するが、ゆっくりであり、常に最小値よりも上に維持される。このようにして、装置は加速度値の新しい増加に緊密に追従することができる。
【0040】
最後に、特許請求の範囲に記載されている本発明の技術的範囲から逸脱することなく、ここで説明した内容に対する修正および変化が可能であることは明白である。
特に、前述のものと同じ参照符号でブロックが指定されている図7に示されている本発明の別の実施形態では、歩行ステップ検出アルゴリズムは簡単にされ、歩行ステップの正の位相の識別(すなわち、正の加速度ピークの識別)だけに基づくことができる。この場合にはアルゴリズムは単一の基準しきい値、特に、正の基準しきい値S+ を使用し、それは正のエンベロープEnv+ の値の関数として前述したものと同様の方法で変更される。この簡単にされたアルゴリズムでは、処理装置3 の計算の負担は小さいが、雑音に対する感度が増加する欠点がある。事実、正の位相の後の負の位相の存在のチェックがないので、誤検出およびカウントエラーの可能性が増加する。
【0041】
加速度計2 は複数の測定軸、例えば互いに直交する3つの測定軸を有するように、例えば、文献(B.Vigna他によるAMAA2004の“将来の自動応用のための3軸デジタル出力加速度”)に記載されているように構成されることができる。この場合に本発明の1特徴によれば、処理装置3 で行なわれるアルゴリズムは、最高平均加速度Accm (重力を考慮して)を有する検出軸として歩行ステップ検出に使用される主垂直軸を識別することを考える。例えば、主垂直軸は図4のブロック30の新しい加速度サンプルの各獲得において識別されることができ、それにより、歩数計装置1 およびその内部に配置された加速度計2 の方向の変化を考慮に入れることが可能になる。
【0042】
歩数計装置1 内に集積される代りに、加速度計2 はその容器の外部に配置されて、有線または無線により検出装置3 に接続されることができる。この場合には加速度計2 は例えば、靴、ベルト、時計等のようなユーザが身に付ける服装品やアクセサリー中に収容されると便利である。
【0043】
図8示されているように、小型にしたことにより、歩数計装置1 はポータブルな装置、特に携帯電話機50(或いはMP3 読取装置、カメラ、PDA,ゲーム機のコンソール等)の内部に収容できる利点がある。この場合、加速度計2 と処理装置3 は携帯電話機50のケース53内に固定された印刷配線板52上に取付けられる。この実施形態では、処理装置3 は前述のアルゴリズムの実行に加えて、携帯電話機50の動作を制御する。同様にケース53の外部から観察可能なように配置されていることは明らかである表示スクリーン4 は、歩数計装置1 に対応する情報と、一般的な携帯電話機50の動作に関連した情報の両者を表示する。インターフェース5 はこの場合には通信ポート(既知の形式であり、ここでは示されていない)を備えていることが好ましく、それはパーソナルコンピュータとインターフェースすることができる。それ故、インターフェース5 は歩数計装置1 により生成されたデータ(特に、少なくとも計測された歩行ステップ数)のダウンロードと、正または負の最小値S1 、S2 のような歩数計装置1 の動作パラメータの処理装置3 へのアップロードの両方に使用されることができる。
【0044】
最後に、全体の説明は歩数計装置1 のデジタル構成を参照にして行なわれたが、アナログ形式(特に、エンベロープ比較装置、ピーク検出器、増幅等)の類似した形態もまた適切に周知の置換を行うことによって可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】歩数計装置のブロック図。
【図2】歩行ステップ中の加速度信号のパターンに対応するグラフ。
【図3】図1の歩数計装置の処理装置により行われる歩行ステップの検出および計数動作に対応するフローチャート。
【図4】図1の歩数計装置の処理装置により行われる加速度しきい値の自己適応変更動作に対応するフローチャート。
【図5】歩行ステップ中の加速度信号と、図3のアルゴリズムに関連する基準しきい値のパターンに対応するクラフ。
【図6】歩行ステップ中の加速度信号と、図3のアルゴリズムに関連する基準しきい値のパターンに対応するクラフ。
【図7】図3のフローチャートの可能な1変形のフローチャート。
【図8】図1の歩数計装置を含むポータブルな装置、特に携帯電話機の部分的に拡大された概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩行ステップを検出し、計数し、
歩行ステップ中に発生された加速度(A)を検出するように構成されている加速度センサ(2) と、
前記加速度センサ(2) に接続され、歩行ステップの発生を検出するために加速度(A)に関する加速度信号(CalAcc)を処理するように構成されている処理装置(3) とを具備している歩数計装置において、
前記処理装置(3) は前記加速度信号(CalAcc)を第1の基準しきい値(S+)と比較するように構成されている第1の比較手段(12)を備え、
前記処理装置(3) はさらに、前記加速度信号(CalAcc)の関数として前記第1の基準しきい値(S+)を変更するように構成されているしきい値適応手段(38)を備えていることを特徴とする歩数計装置。
【請求項2】
前記処理装置(3) はさらに、前記加速度信号(CalAcc)の振幅の第1のエンベロープの値(Env+)を計算するように構成されているエンベロープ計算手段(33, 34)を備え、前記しきい値適応手段(38)は前記第1のエンベロープの値(Env+)の関数として第1の基準しきい値(S+)を自動的に変更するように構成されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記しきい値適応手段(38)は前記第1のエンベロープの値(Env+)の分数に等しい値を前記第1の基準しきい値(S+)に割当てるように構成され、特に、前記分数は1より小さく、好ましくは0.65である請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記処理装置(3) はさらに、第1の基準しきい値(S+)の最大値(S+max)の関数として歩行ステップの各検出において評価された歩行ステップ長(LPS)を決定するように構成されている長さ評価手段(21)と、前記評価された歩行ステップ長(LPS)の関数として前記ユーザの移動した距離を計算するように構成されている距離計算手段(22)とを備えている請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第1の基準しきい値(S+)は正の値を有し、前記処理装置(3) はさらに、加速度信号(CalAcc)を負の値を有している第2の基準しきい値(S-)と比較するように構成されている第2の比較手段(14)を備え、前記しきい値適応手段(38, 41)は加速度信号(CalAcc)の関数として、特に加速度信号(CalAcc)の振幅の第2のエンベロープの値(Env-)の関数として、前記第2の基準しきい値(S-)を自動的に変更するように構成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記第1の基準しきい値(S+)および第2の基準しきい値(S-)は絶対値でそれぞれ下限の値(S1 ,S2 ) を有し、前記処理装置(3) はさらに、前記下限の値(S1 ,S2 ) を設定するように構成されている設定手段(5) を備えている請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記処理装置(3) は、加速度信号(CalAcc)が前記第1の基準しきい値(S+)と所定の関係を有し、それに続いて所定の時間インターバル(Max Mask)内に前記第2の基準しきい値(S-)と所定の関係を有しているとき歩行ステップの発生を検出するように構成されている請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記処理装置(3) はさらに、前記加速度センサ(2) によって検出された加速度(A)の直流成分(Accm)を計算し、前記加速度(A)から直流成分(Accm)を消去して加速度信号(CalAcc)を生成するように構成されている平均値計算手段(31)を備えている請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記加速度センサ(2) はMEM型であり、前記加速度は垂直軸に沿った方向の加速度である請求項1乃至8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記処理装置(3) は、前記加速度(A)が検出されるべき前記加速度センサ(2) の検出の垂直軸(z)を決定するように構成されている軸決定手段(30)を有している請求項9記載の装置。
【請求項11】
移動電話機として構成されたポータブルな電子装置である請求項1乃至10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
ユーザの歩行ステップを検出するために、
歩行ステップ中に発生された加速度(A)に関する加速度信号(CalAcc)を生成し、
この加速度信号を処理して歩行ステップの発生を検出し、その加速度信号(CalAcc)の処理は加速度信号(CalAcc)を第1の基準しきい値(S+)と比較する処理を含んでいる歩行ステップの検出方法において、
前記加速度信号の処理段階において、加速度信号(CalAcc)の関数として前記第1の基準しきい値(S+)を変更することを特徴とする歩行ステップを検出する方法。
【請求項13】
前記加速度信号の処理段階においてさらに、加速度信号(CalAcc)の振幅の第1のエンベロープ(Env+)を計算し、前記第1の基準しきい値の変更は、前記第1のエンベロープの関数として第1の基準しきい値(S+)を自動的に変更する請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記加速度信号の処理段階において、前記第1のエンベロープの値(Env+)の分数に等しい値を前記第1の基準しきい値(S+)に割当て、特に前記分数は1より小さく、好ましくは0.65である請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記加速度信号の処理過程においてさらに、第1の基準しきい値(S+)の最大値(S+max)の関数として歩行ステップの各検出において評価された歩行ステップ長(LPS)を決定し、前記評価された歩行ステップ長(LPS)の関数として前記ユーザの移動した距離を計算する請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記第1の基準しきい値(S+)は正の値を有し、前記加速度信号の処理段階においてさらに、加速度信号(CalAcc)を負の値を有している第2の基準しきい値(S-)と比較し、加速度信号(CalAcc)の関数として、特に加速度信号(CalAcc)の第2のエンベロープ(Env-)の関数として、前記第2の基準しきい値(S-)を自動的に変更する請求項12乃至15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記第1の基準しきい値(S+)および第2の基準しきい値(S-)は絶対値でそれぞれ下限の値(S1 ,S2 ) を有し、前記加速度信号の処理過程においてさらに、前記正および負の下限の値(S1 ,S2 ) を設定する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記加速度信号の処理段階において、前記加速度信号(CalAcc)が前記第1の基準しきい値(S+)と所定の関係を有し、それに続き所定の時間インターバル(Max Mask)内に前記第2の基準しきい値(S- )と所定の関係を有しているとき歩行ステップの発生を検出する請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
加速度信号(Acc)の生成においてさらに、加速度(A)の直流成分(Accm)を計算し、前記加速度(A)から直流成分(Accm)を消去して前記加速度信号(CalAcc)を生成する請求項12乃至18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記加速度信号(Acc)の生成においてさらに、前記加速度(A)が検出されるべき前記加速度センサ(2) の検出の垂直軸(z)を決定する請求項12乃至19のいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−115242(P2007−115242A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−271928(P2006−271928)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(598089672)エスティーミクロエレクトロニクス・エス・アール・エル (2)
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
【Fターム(参考)】