説明

加速度センサ

【目的】 傾斜配置による誤動作を生じない加速度センサを提供する。
【構成】 非磁性ケース1と、マグネット2と、磁気応動スイッチ3と、支持装置5とを有する。マグネット2は、非磁性ケース1内に配置され磁性流体4によって支持されて非磁性ケース1の底部101の内面上に浮上している。磁気応動スイッチ3はマグネット2の位置に応動するように、底部101の下方外部に配置されている。支持装置5は、それが傾斜したときにも非磁性ケース1が傾斜前の水平位置を保つように、非磁性ケース1を支持している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、振動等に伴う加速度を検出する加速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】この種の加速度センサに類似した従来技術としては、特開昭63ー21884号公報、特開昭63ー317712号公報、特開昭63ー26520号公報、実開昭63ー141415号公報、実開昭63ー70017号公報等で知られた傾斜センサがある。図9はその基本的な構成を示す平面図、図10は同じくその部分断面図である。図において、1は非磁性材料で構成された非磁性ケース、2はマグネット、3は磁気応動スイッチである。非磁性ケース1は、底部101と、その全周に連続して起立する側壁面102とを有する。マグネット2は非磁性ケース1の内部に配置され、磁性流体4によって支持されて底部101の内面上に浮上している。磁気応動スイッチ3は、底部101の下方外部に配置されていて、マグネット2の位置に応動する。
【0003】図10に示すように、振動等に伴う加速度を受けると、マグネット2が磁性流体4によって支持されながら移動し、磁気応動スイッチ3との相対位置が変化する。磁気応動スイッチ3は、マグネット2の位置に関して、有感領域S1と不感領域S2とを有する。有感領域S1は磁気応動スイッチ3がマグネット2の生じる磁界の作用を受けてスイッチ動作をする領域であり、不感領域S2は磁気応動スイッチ3がマグネット2の磁界の影響を実質的に受けない領域である。磁気応動スイッチ3は有感領域S1でオンとなれば不感領域S2ではオフとなる。これにより磁気応動スイッチ3がマグネット2の磁界に応動してオンまたはオフの動作をし、加速度が検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、加速度センサを取付けてある対象物が地盤沈下等、何等かの原因によって傾斜し、または対象物に対する加速度センサの取付け状態が変化したために、加速度センサが傾斜した場合、マグネット2が図11に示すように傾斜方向に移動してしまう。このため、傾斜方向では、マグネット2が小さい加速度で不感領域S2に入ってしまい、傾斜方向に対する加速度応答特性が敏感になる。これに対して、傾斜方向とは反対方向では、不感領域S2までの距離が大きくなり、マグネット2が不感領域S2内に入るのに大きな加速度を必要とするから、検出動作が鈍感になる。このため、誤動作を生じ易くなる。
【0005】そこで、本発明の課題は、上述した従来の問題点を解決し、傾斜配置による誤動作を生じない加速度センサを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述した課題解決のため、本発明は、非磁性ケースと、マグネットと、磁気応動スイッチと、支持装置とを有する加速度センサであって、前記マグネットは、前記非磁性ケース内に配置され磁性流体によって支持されて前記非磁性ケースの底部内面上に浮上しており、前記磁気応動スイッチは、前記マグネットの位置に応動するように、前記底部の下方外部に配置されており、前記支持装置は、それが傾斜したとき前記非磁性ケースが傾斜前の水平位置を保つように、前記非磁性ケースを支持していることを特徴とする。
【0007】
【作用】マグネットは、非磁性ケース内に配置され磁性流体によって支持されて底部の内面上に浮上しており、磁気応動スイッチはマグネットの位置に応動するように、非磁性ケースの底部の下方外部に配置されているから、加速度を受けた場合、マグネットが自己の慣性により、磁性流体によって支持されながら、ケースの底部内面上を移動し、磁気応動スイッチとの相対位置が変化する。これにより、磁気応動スイッチがマグネットの磁界に応動してオンまたはオフの動作をし、加速度が検出される。
【0008】支持装置は、それが傾斜したとき非磁性ケースが傾斜前の水平位置を保つように、非磁性ケースを支持しているから、加速度センサを取付けてある対象物が地盤沈下等、何等かの原因によって傾斜し、または対象物に対する加速度センサの取付け状態が変化したために、支持装置が傾斜した場合でも、非磁性ケースの内部に位置するマグネットの位置は不変であり、傾斜の影響を受けることなく加速度を検知することができる。
【0009】
【実施例】図1は本発明に係る加速度センサの平面図、図2は同じくその部分断面図である。図において、1は非磁性ケース、2はマグネット、3は磁気応動スイッチ、4は磁性流体、5は支持装置、gは重力の方向を示している。
【0010】ケース1は、底部101と、その全周に連続して起立する側壁面102とを有しており、底部101の平面形状が実質的に円形となっている。図示では、底部101の内面は凹面状となっているが、平面状であってもよい。ケース1は従来と同様に、アルミニュウムまたはプラスチック等の非磁性材料を用いて構成する。マグネット2はケース1の内部に配置され磁性流体4によって支持されて底部101の内面111上に浮上している。マグネット2は上下方向または径方向に着磁されている。磁性流体4は、コバルト、鉄、ニッケル等の微粒子磁性粉を比較的粘性の低い液体、例えばケロシン、水等に分散させたものであって、一般には界面活性剤を微粒子に吸着させ、安定分散させてある。
【0011】磁気応動スイッチ3は、ケース1に対して固定した関係となるように配置されている。図示では縦方向に設置されているが、横方向に設置する場合もある。また、単数に限らず、複数であってもよい。磁気応動スイッチ3は、マグネット51の位置に関して、有感領域S1と不感領域S2とを有する。有感領域S1は磁気応動スイッチ3がマグネット51の磁界の作用を受けてスイッチ動作する領域であり、不感領域S2は磁気応動スイッチ3がマグネット51の磁界の影響を実質的に受けない領域である。磁気応動スイッチ3は、有感領域S1でオンとなれば、不感領域S2ではオフになる。
【0012】支持装置5は、それが傾斜したときに、非磁性ケース1が傾斜前の水平位置を保つように、非磁性ケースを支持している。図示の支持装置5は、支持ケース51と軸受とを有する。支持ケース51は非磁性ケース1との間に必要な空間を確保できる容積を持ち、非磁性ケース1を内蔵している。軸受は、磁性流体52と、マグネット53とを含み、マグネット53が支持ケース51の底面に取付けられ、磁性流体52がマグネット53に付着し非磁性ケース1を支持している。磁性流体52及びマグネット53で構成される軸受は、非磁性ケース1の安定支持のために必要な個数、例えば3〜4組程度設けるとよい。
【0013】上述のように、マグネット2は、非磁性ケース1の内部に配置され磁性流体4によって支持されて底部101の内面上に浮上しており、磁気応動スイッチ3はマグネット2の位置に応動するように、非磁性ケース1の底部101の下方外部に配置されているから、矢印aまたはbの方向の加速度を受けた場合、マグネット2が自己の慣性により、磁性流体4によって支持されながら、ケース1の底部101の内面上を同方向aまたはbに移動し、磁気応動スイッチ3との相対位置が変化する。そして、マグネット2が有感領域S1から不感領域S2に入るように移動した場合、磁気応動スイッチ3がマグネット2の磁界に応動してオンまたはオフの動作をし、加速度が検出される。
【0014】また、図2に示すように、加速度センサを取付けてある対象物が地盤沈下等、何等かの原因によって傾斜し、または対象物に対する加速度センサの取付け状態が変化したために、支持装置5の支持ケース51が水平方向に対して角度θだけ傾斜した場合、支持ケース51は磁性流体52とマグネット53とによる潤滑軸受作用を受けながら、非磁性ケース1が傾斜前と同じ位置を保つように滑動する。従って、支持装置5の傾斜の影響を受けることなく、所定の加速度検知特性を維持することができる。
【0015】図3は本発明に係る加速度センサの別の実施例を示す図である。図において、図1及び図2と同一の参照符号は同一性ある構成部分を示している。支持装置5は、支持体となる支持ケース51と、吊糸54とを有し、支持ケース51が非磁性ケース1を内蔵し、吊糸54が非磁性ケース1の蓋103と支持ケース51の蓋との間に連結されている。吊糸54は金属線または非金属線によって構成できる。
【0016】この実施例の場合も、上述した実施例と同様の基本的な加速度検知動作が得られる。また、図4に示すように、支持装置5の支持ケース51が傾斜した場合、非磁性ケース1は吊糸54によって吊下げられて傾斜前と同じ水平位置を保つから、支持装置5の傾斜の影響を受けることなく、加速度を検知することができる。
【0017】図5は本発明に係る加速度センサの更に別の実施例を示す図である。支持装置5は、支持ケース51の内部に軸受となる液体55を有し、液体55によって非磁性ケース1を浮上させてある。液体55としては、各種の液体の他に、磁性流体等も使用できる。この実施例においても、上述した各実施例と同様の基本的な加速度検知動作が得られる。また、図6に示すように、支持装置5の支持ケース51が傾斜した場合、非磁性ケース1は液体55の潤滑軸受作用を受けて傾斜前と同じ位置を保つから、支持装置5の傾斜の影響を受けることなく、加速度を検知することができる。
【0018】図7は本発明に係る加速度センサの更に別の実施例を示している。支持装置5は支持体56と吊糸57とを含んでいる。この実施例でも、上述した各実施例と同様の基本的な加速度検知動作が得られる。また、図8に示すように、支持装置5の支持ケース51が傾斜した場合、非磁性ケース1は吊糸57によって吊下げられて傾斜前と同じ位置を保つから、支持装置5の傾斜の影響を受けることなく、加速度を検知することができる。
【0019】支持装置5としては、図示の実施例の他にバネで支持する構造等もあり得る。また、非磁性ケース1の揺動等を抑制する手段としてダンパ機構を付加することも有効である。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
(a)マグネットは、非磁性ケース内に配置され磁性流体によって支持されて底部の内面上に浮上しており、磁気応動スイッチはマグネットの位置に応動するように、非磁性ケースの底部の下方外部に配置されているから、磁気応動スイッチに対するマグネットの相対移動により加速度を検出する加速度センサを提供できる。
(b)支持装置は、それが傾斜したとき非磁性ケースが傾斜前の水平位置を保つように、非磁性ケースを支持しているから、加速度センサを取付けてある対象物が地盤沈下等、何等かの原因によって傾斜し、または対象物に対する加速度センサの取付け状態が変化したために、支持装置が傾斜した場合でも、傾斜の影響を受けることなく、所定の加速度検知特性を維持し得る加速度センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る加速度センサの構成を示す図である。
【図2】図1に示した本発明に係る加速度センサの動作を説明する図である。
【図3】本発明に係る加速度センサの別の構成例を示す図である。
【図4】図3に示した加速度センサの動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る加速度センサの別の構成例を示す図である。
【図6】図5に示した加速度センサの動作を説明する図である。
【図7】本発明に係る加速度センサの別の構成例を示す図である。
【図8】図7に示した加速度センサの動作を説明する図である。
【図9】従来の係る加速度センサの平面図である。
【図10】従来の係る加速度センサの部分断面図である。
【図11】従来の加速度センサの動作を説明する平面図である。
【符号の説明】
1 ケース
101 底部
2 マグネット
3 磁気応動スイッチ
4 磁性流体
5 支持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性ケースと、マグネットと、磁気応動スイッチと、支持装置とを有する加速度センサであって、前記マグネットは、前記非磁性ケース内に配置され磁性流体によって支持されて前記非磁性ケースの底部内面上に浮上しており、前記磁気応動スイッチは、前記マグネットの位置に応動するように、前記底部の下方外部に配置されており、前記支持装置は、それが傾斜したとき前記非磁性ケースが傾斜前の水平位置を保つように、前記非磁性ケースを支持していることを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】 前記支持装置は、支持ケースと、軸受とを有し、前記支持ケースが前記非磁性ケースを内蔵し、前記軸受が前記非磁性ケースを支持していることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】 前記軸受は、液体であることを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ。
【請求項4】 前記軸受は、磁性流体と、マグネットとを含み、前記マグネットが前記支持ケースの底面に取付けられ、前記磁性流体が前記マグネットに付着し前記非磁性ケースを支持していることを特徴とする請求項2に記載の加速度センサ。
【請求項5】 前記支持装置は、支持体と、吊糸とを有し、前記吊糸の一端が前記支持体に固定され、他端側が前記非磁性ケースに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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