説明

加速電子の反射装置

本発明は、電子源から対象物(2)の表面に放出された加速電子を反射することのできる装置に関するものであり、この装置は、少なくとも1つの誘電性本体(30)を有し、該誘電性本体上の少なくとも1つの表面領域(A、B)には少なくとも1つの導電性層(39)が取り付けられており、少なくとも1つの導電性コンタクトエレメント(31)が、前記導電性層(39)から前記誘電性本体(30)を通って延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に電子を反射する装置に関するものであり、この対象物には特性を変化させるために加速された電子が打ち込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、対象物の表面、対象物の周縁層、または対象物体積全体に、対象物の特性を変化させるために加速された電子を打ち込む多数の適用が公知である。たとえば加速された電子は、種物に付着した菌および微生物を殺す際に、医学的製品または薬学的製品を殺菌する際に、またはプラスチックおよびオイルの特性を変化させる際に使用される。
【0003】
多くの適用事例で、変化すべき対象物は剛性に配置された電子源の前を通過し、その間に電子源から放出された加速電子が打ち込まれる。とりわけ対象物の体積が大きい場合、対象物が一回だけ通過したのでは表面領域のすべてまたは対象物体積のすべてに電子が打ち込まれない。したがって対象物が複数回、位置を変化しながら少なくとも1つの電子源を通過する装置と、複数の電子源が対象物体積の周囲に配置されており、これにより対象物の全面に位置変化せずに一回の通過で電子を打ち込むことのできる装置とが公知である。
【0004】
同様に、対象物に衝突した電子線を対象物表面の方向に反射するために、および/または電子源の直接作用領域内にない対象物の表面領域に電子を反射するために、電子線プロセスで反射器を使用することが公知である。
【0005】
特許文献1には、対象物に施与されたラッカー層に加速電子を打ち込む装置が記載されている。対象物は90°の角度を有し、したがって対象物の一方の面が電子源の電子出射窓に対して平行に、他方の面が垂直に配向される。電子出射窓の側方にはフラップすることのできる反射器が配置されており、この反射器によって窓から出射した電子の一部が電子出射窓に対して垂直に配向された対象物表面に反射される。しかしこの刊行物には、反射器の構造および材料についてのさらなる記載がない。
【0006】
特許文献2から、殺菌のために形状部材を2つの平面型線発生器の間に通過させ、その間に加速電子を打ち込むことのできる装置が公知である。この装置は金からなる複数の反射器を有し、これらの反射器により平面型線形成器から放出された周辺線が、平面型線発生器の直接作用領域にない形状部材の表面領域に反射される。反射器は同時にセンサシステムの構成部分でもある。測定装置と関連して、反射器により電子流を検出し、それに基づいて電子流密度分布についての記述がなされる。この刊行物から公知の反射器は金製であるから、この種の装置は非常に高価であり、したがって採算性を損なう。反射器に衝突する電子の反射と透過の割合を調整できるのか、またどのようにして調整するのかという解決手段については、この刊行物には記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第19816246号
【特許文献2】特許国際公開第2007/107331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の基礎とする技術的課題は、従来技術の欠点をとりわけその採算性に関して克服することのできる、加速電子の反射装置を提供することである。とりわけ本発明の装置により、電子源から放出された電子を、加速電子により修正すべき対象物の表面に反射することができるようにする。さらに電子流および電子流密度分布を検出するためのセンサシステムの構成部分としてこの装置が使用可能であるようにする。同様に解決手段は、反射器に衝突する電子の反射と透過の割合をどのように調整できるのかを記述する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術的課題の解決手段は、請求項1の特徴を備える客体によって明らかとなる。本発明のさらなる有利な改善形態は従属請求項から明らかとなる。
【0010】
電子源から放出された加速電子を対象物の表面領域に反射することのできる本発明の装置は少なくとも1つの誘電性の本体を有し、この本体の表面領域には少なくとも1つの導電性層が塗布されており、電子源から放出され導電性層へ衝突する加速電子をこの導電性層で反射することができる。導電性層に接触接続するために、導電性層から少なくとも1つの導電性コンタクトエレメントが誘電性の本体を通って延在している。導電性層に加速電子が打ち込まれるので、この導電性層の上には過剰電荷担体が形成され、したがって電気アースに対して電圧を有する。したがってコンタクトエレメントと電気アースとの間には、電子流を検出する測定装置を接続することができる。電子源(電子加速器とも称される)から導電性層に加速される電子は、第1の割合で導電性層から反射され、第2の割合で電流が導電性層からコンタクトエレメントを通って流れる。後でさらに説明するように、この2つの割合の比は変更または調整することができる。
【0011】
反射される電子の割合が一度調整され固定されれば、検出された電流に依存して、どの程度のエネルギーまたはエネルギー線量が対象物の表面領域に打ち込まれ、加速電子が導電性層からこの表面領域に反射されるのかを量的に記述することができる。検出される電流が高ければ高いほど、対象物の表面領域に打ち込まれるエネルギーまたはエネルギー線量も大きい。
【0012】
したがって本発明の装置により、一方では電子源から放出される加速電子を反射することができ、他方では本発明の装置は、対象物に打ち込まれるエネルギーについて記述することのできるセンサシステムまたは測定システムの構成部分として使用することができる。
【0013】
通常、導電性層が存在する誘電性本体の表面領域も平坦に構成されており、誘電性本体自体はプレート状に構成されている。しかし適用事例に応じて、および/または電子エネルギーにより変化すべき対象物の形態に応じて、この表面領域も別の幾何形状を有することができる。したがってこの表面領域は、たとえば対象物が凸形の場合には凹形に構成することができ、反対も当てはまる。
【0014】
複数の本発明の装置が三次元空間内に並んで配置されており、それぞれの導電性層から所属のコンタクトエレメントを通って流れる電流を各装置で検出すれば、検出された個々の電流に依存して、この三次元空間内にある対象物に打ち込まれるエネルギーの分布について量的に記述することができる。この量的記述はもちろん、三次元空間内に並置される本発明の装置が多ければ多いほど、したがって検出される電流が多ければ多いほど正確になる。
【0015】
誘電性本体が導電性層を備える1つの表面領域だけを有するこの実施形態とは択一的に、誘電性本体が複数の表面領域を有し、その中に導電性層が形成されていることも可能である。この場合、個々の導電性層領域は互いに絶縁して構成されており、各導電性層領域は少なくとも1つのコンタクトエレメントを有し、このコンタクトエレメントは所属の導電性層領域から誘電性本体を通って延在している。各コンタクトエレメントは、電流を検出するための所属の測定装置と接続されている。このような実施形態では、任意の多数の導電性層領域を一次元または二次元に、誘電性本体の表面上に並置することができる。
【0016】
誘電性本体の平坦な表面上に二次元でそれぞれ少なくとも2つの導電性層領域が形成されている本発明の装置により、導電性層領域を介して流れる電流を検出して評価することにより、変化すべき対象物に打ち込まれる電子エネルギーの分布について二次元の記述をすることができる。ここでも前記の記載が当てはまる。すなわち、導電性層領域が三次元空間により多くより密に並置されていれば、それだけ電子線の流束密度の位置分解能がより高く、対象物の表面に打ち込まれるエネルギーの分布についてより正確な記述を行うことができる。
【0017】
誘電性本体は実質的に導電性層または導電性層領域の支持体として機能し、装置に必要な機械的安定性を付与する。誘電性本体に対する材料に関しては、所要の強度の他にイオン化線に対しても耐久性がなければならないという要求がある。セラミック材料はそのための非常に良く適した例であり、ここで酸化アルミニウムまたは酸化ジルコンのようなセラミックを挙げておく。しかし他の公知のすべてのセラミックもそのために使用することができる。しかしセラミック材料の他に、ガラス材料も誘電性本体に使用することができる。
【0018】
少なくとも1つの導電性層に対しては導電性を有するすべての材料を使用することができる。電子線が導電性層に衝突すると、線電子の運動エネルギーが層材料の原子と交互作用し、部分的に熱または原子の励起エネルギーに変換される。線電子と層材料の原子との多数の弾性および非弾性の衝突は、エネルギー損失の他に線電子の方向変化も引き起こす。したがって線電子の一部が後方散乱され、導電性層から反射される。反射された電子の立体角についての強度分布は野球バット形に形成され、最大強度の方向は光学的反射則(入射角=反射角)に対応する。後方散乱または反射される電子の割合は、実質的に電子線の衝突角および層構造物に関与する元素の原子番号により決定される。導電性層への電子線の衝突角が平坦であればあるほど、かつ層構造物に関与する元素の原子番号が高ければ高いほど、反射される線電子の割合も大きくなる。本発明の装置では線電子の反射が主要な課題であるから、導電性層に対してはとくに高い電子番号を有する元素または複数の元素からなる導電材料が適する。したがって一実施形態では、導電性層は、原子番号が40から79までの元素の群からの1つまたは複数の元素からなる。
【0019】
加速電子が導電性層に衝突する際の熱的作用があるので、導電性層に対して使用される材料が1000℃以上の融点を有すると有利である。しかしたとえば小さな電子線出力しか使用されない場合、および/または導電性層に冷却措置が執られている場合には、200℃までの融点の低い材料も導電性層に使用することができる。たとえば導電性層の熱を排熱するために、誘電性本体に冷却チャネルを貫通させ、冷却媒体を通流させることができる。
【0020】
本発明の装置の導電性層には、金、チタン、モリブデン、タングステンのような材料またはそれらの2つまたはそれ以上の合金がとくに適する。これらの材料は良導電体であり、かつ高い融点を有し、付加的な冷却コストを必要としないからである。
【0021】
導電性層に格別に適するのは金である。比較的融点が高く、非常に良導電性であり、原子番号が比較的高いため反射される電子の割合が大きいことの他に、金は電子が打ち込まれる薬学的製品または医学的製品で使用することのできる層材料である。
【0022】
本発明の装置において導電性層から誘電性本体を通って延在するコンタクトエレメントも同様に導電性材料からなる。コンタクトエレメントは直接的な電子打ち込みには曝されないから、耐熱性に関して高い要求は課せられない。したがってコンタクトエレメントに対しては、金、プラチナ、チタン、モリブデン、鉄、クロム、タンタルのような材料またはそれら元素の少なくとも2つの合金が適する。コンタクトエレメントは好ましくはスティック状のコンタクトピン(コンタクトスティックとも称する)として構成されており、任意の形状の断面を有することができる。コンタクトピンが標準的な断面を有する場合、たとえば差込み接続のような標準的な接続手段をコンタクトピンの接続に使用することができる。
【0023】
コンタクトピンを誘電性本体に嵌め込むことに注目すべきである。とりわけ本発明の装置が製造時または加工時に薬学的製品または医学的製品で使用される場合、誘電性本体とコンタクトエレメントとの間の継目個所の密閉性に関してはとくに高い要求が課せられる。この種の適用事例では、本発明の反射器が同時に、無菌性の高い空間と無菌性の低い空間との間の壁としてもしばしば構成されており、無菌性の高い空間は導電性層に、無菌性の低い空間は反射器の裏面に、すなわち誘電性本体に境を接する。この場合、無菌性の低い空間からの菌が、誘電性本体とコンタクトエレメントとの間の継目個所を通過することができないことを保証しなければならない。ガス圧テストの比較的簡単な手段により、継目個所が気密に構成されているか否かを検査することができる。継目個所が気密に構成されていれば、菌が継目個所を通過できないことも保証される。したがって本発明の実施形態では、誘電性本体とコンタクトエレメントとの間の継目個所が気密に構成されている。
【0024】
コンタクトエレメントを誘電性本体に気密に嵌め込むためには、種々の方法が適する。すべての方法で、まず誘電性本体の全厚を通って延在する穴をコンタクトエレメントの断面に対応して誘電性本体に穿ち、この穴にコンタクトエレメントを取り付けなければならない。この穴は本体の全厚を通して一定の断面を有することができるが、本体の裏面に向かって拡大する断面を有することもできる。この拡大する断面は、本体の厚い領域では後の加工工程でのコンタクトエレメントのための膨張空間として機能する。コンタクトエレメントは、誘電性本体の全厚を通って延在し、誘電性本体の裏面でさらに突き出る長さを有しなければならない。これはたとえば差込み接続のような接続手段により接続することができるようにするためである。導電性層が施与される側(本明細書では前側と称される)の誘電性本体では、コンタクトエレメントが少なくとも本体の表面に達していなければならないが、誘電性本体の取付け時にわずかだけこれから突き出ていても良い。
【0025】
コンタクトエレメントの材料は、部分的に嵌め込み方法によっても決定される。たとえばコンタクトエレメントは、ロウ付け法によってセラミック製の誘電性本体に気密に嵌め込むことができる。この嵌め込み方法が適用されるなら、セラミック・金属・ロウ接合を形成することのできる公知の金属または金属合金がコンタクトエレメントの材料として適する。別の要求は、誘電性本体に使用されるセラミックとコンタクトエレメントの材料とが少なくとも近似的に類似の熱膨張率を有することである。これはロウ接合の加熱時および引き続く冷却時に継目個所に割れ目を形成するような機械的応力が発生しないようにするためである。
【0026】
したがってコンタクトエレメントをロウ付け法によって嵌め込む場合、コンタクトエレメントに対してはモリブデンまたはNiCoSil合金のような材料を使用することができる。
【0027】
コンタクトエレメントをセラミック製誘電性本体に嵌め込む際の択一的な方法は焼成である。すなわちコンタクトエレメントは、セラミックのバーニングの際に同時に誘電性本体の中に嵌め込まれる。コンタクトエレメント用の材料としてこの嵌め込み方法の場合では、たとえばプラチナ、タングステン、チタンまたはそれら元素の合金を使用することができる。
【0028】
コンタクトエレメントを嵌め込むための別の択一的手段として接着法を選択することができる。接着法では、前に述べたコンタクトエレメント用のすべての材料を使用することができる。ここで誘電性本体とコンタクトエレメントとの間に気密な接着結合を形成すべき場合、純粋な有機接着剤を使用するだけでは十分でない。なぜなら有機接着剤はイオン化線の影響の下で分解し、そのため一方では継目個所の強度が失われ、他方ではガスまたは菌に対して透過性になることがあるからである。
【0029】
したがって接着剤に、たとえばセラミック粒子のような固体粒子を混合するのが有利である。有機接着剤の構成成分が継目個所内でイオン化線の影響で分解しても、残った固体粒子がコンタクトエレメントの所要の付着も、継目個所の所要の気密性も保証することが示された。
【0030】
少なくとも1つのコンタクトエレメントが誘電性本体に嵌め込まれる場合、導電性層が施与され、コンタクトエレメントが嵌め込み後にわずかだけ突き出る側の誘電性本体は、誘電性本体の表面がコンタクトエレメントの端部と平坦な面を形成し、この面上に後で少なくとも1つの導電性層が施与されるように滑らかに研磨される。研磨が細かければ細かいほど、被覆エラーが最小になるので導電性層はより良く保持される。実施形態では、この研磨された表面は0.05以下の粗度を有する。導電性層およびコンタクトエレメントは、導電性層の施与後に導電性接続を形成する。
【0031】
少なくとも1つの導電性層を施与するために種々の方法を使用することができる。化学的または物理的蒸気析出の真空法は、たとえば導電性層を完全な厚さで施与する場合、または導電性層の部分層だけまず施与し、これを電気メッキ析出法により補強する場合に適する。しかし導電性層は電着法により完全に析出することもできる。導電性層を施与するための別の択一的方法は、セラミック誘電性本体の焼成の前に、導電性粒子が混合されたペーストを誘電性本体に塗布することである。焼成過程後には、導電性粒子からなる層が誘電性本体の表面に残る。そのためにたとえば金含有ペーストを使用することができ、焼成過程後にはそのペーストから金層が誘電性本体の表面に残る。別の択一的実施形態では、導電性粒子を有するペーストを焼成後に誘電性本体上に塗布することができる。
【0032】
すでに前に述べたように、本発明の装置では導電性層から反射される電子の割合を調整することができる。塗布される導電性層(以下、反射層とも称する)の層厚の選択により層材料の選択と関連して、反射される電子の割合と透過の割合を正確に調整することができる。反射層の全層厚が少なくとも加速電子の最大浸透深度と同じ大きさであれば、最大の割合で電子が反射されることを保証できる。測定信号に使用される電子の割合は対応して少なくなる。反射層の層厚(電子の最大浸透深度に対応する層厚を前提にする)が小さくなると、反射される電子の割合も小さくなり、これに対して透過の割合、すなわち測定信号に使用される電子の割合は大きくなる。念のため、加速電子が導電性層に衝突すると、電子が後方散乱または反射され、導電性層からコンタクトエレメントを介して測定装置へ電流が流れる他に、二次電子ならびに熱電子が溶出し、熱線およびX線が形成されることを述べておく。しかし本発明の装置に関しては、反射される電子と電流の事実関係だけを詳細に考察する。
【0033】
加速電子がその運動エネルギーにより材料に最大で浸透する深度は種々の要因に依存しているが、既知の式にしたがって、または既知のテーブルおよび一覧表から求めることができる。したがって課題に応じて、すなわちより多くの電子が反射されるべきであるか、またはより多くの電子を測定信号に使用すべきであるかに応じて、反射の厚さが主に求められ、それにより使用される電子の反射と透過の割合が調整される。
【0034】
加速電子の大部分を反射するための一実施形態では、反射層の層厚dが、電子の最大浸透深度より大きな領域で調整され、これは以下の式から得られる。
【数1】

【0035】
Ub=加速電圧
ρ=水の密度
ρ=反射層の密度
ρ=電子加速器の窓シートの密度
=電子加速器の窓シートの厚さ
=1*V−1
=1*(g/m・m−1
s=安全係数(s≧1.5)。
【0036】
本発明の装置では、導電性層が2つまたはそれ以上の部分層からなることができる。本来の反射層として作用するカバー層の付着性を改善するために、反射層の下にたとえば1つまたは複数の部分層を配置することができる。この部分層は誘電性本体と反射層との間で付着介在層として作用する。さらに少なくとも1つの部分層をバリア層として構成し、粒子が付着層および/または誘電性本体から反射層に拡散するのを阻止することができる。しかし付着介在層およびバリア層として機能する部分層は、電流が反射層からコンタクトエレメントに流れることができるように導電性でなければならない。したがって付着介在層として構成される導電性層の部分層は、クロム、マンガン、鉄、コバルトからなる群の1つまたは複数の元素からなり、バリア層として構成された部分層に対してはプラチナ含有、タンタル含有、金含有、またはチタン含有の材料を使用することができる。
【0037】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図面が異なっていても同じ参照符合を有する要素は、機能または構造が同じである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】対象物を加速電子により打ち込むための装置の概略図である。
【図2】図1の装置の反射器群の概略図である。
【図3】図2の反射器群の反射器の構造を示す概略図である。
【図4】図2の反射器群の反射器の択一的構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には装置1の断面が示されており、この装置により形状部材2の表面に、形状部材2の表面を殺菌するため加速電子を打ち込むことができる。形状部材2は、階段状の断面を有する長手の物体である。装置1は、平面型線形成器として構成された2つの電子加速器3a、3bからなり、これらはそれぞれ1つの電子加速室4a、4bと電子出射窓5a、5bを有する。ここで電子出射窓はそれぞれ11μm厚のチタンシートとして構成されている。電子加速器3a、3bは、平坦に形成された電子出射窓5a、5bが互いに平行に対向するよう配置されている。2つの電子出射窓5a、5bの間で、電子出射窓5bの高さで中断され、図1に破線で示したベルトコンベアシステム6上で形状部材2が連続的に図面垂直方向に通過され、その際に形状部材2の表面全体に電子エネルギーが打ち込まれる。その際、形状部材2の斜めの側面では、電子出射窓からもっとも離れた点に最小のエネルギー線量が伝達されることになるが、このことは反射器7a1、7b1、7a2、7b2(以下、反射器とだけ称する)の配置によって補償される。これは、2つの電子加速器3a、3bのそれぞれの電子線の使用されない周辺線8a1、8a2、8b1、8b2がそれぞれ次の反射器に衝突しそこで反射され、反射器の角度配置により形状部材の低線量の領域に導かれることによって行われる。この種の全体配置により形状部材の表面全体または縁部層では、過線量要因が最小であり、電子流が最大に利用され、空気区間に発生する反応性オゾンが最小になる。
【0040】
図2には、反射器群7a1、7b1がやや詳細な概略図で示されている。反射器群7a1、7b1は一方では互いに離間しており、したがって互いに電気接触せず、他方ではそれらの裏側にそれぞれコンタクトエレメント20が設けられており、これらのコンタクトエレメントには電気線路21が接続されていることが分かる。さらにこの電気線路21は図2に図示しない測定装置に接続されている。この測定装置により、反射器7a1と7b1を通って所属のコンタクトエレメント20に流れる電流に対する値を検出することができる。ここでは各コンタクトエレメント20に別個の測定装置を配設することもできるが、複数のコンタクトエレメント20は、複数の測定入力端を有する1つの測定装置に接続されている。
【0041】
図1の反射器7a1、7a2、7b1、7b2の構造は同じであり、図3には反射器7a1を例として拡大して図示されている。反射器7a1の基部は、少なくとも純度99.5%であり、少なくとも99.5%の高密度である無孔性Alからなる誘電性本体30である。セラミック本体30は反射器7a1に機械的安定性を与える。本体はプレート状に構成されており、12mmのプレート厚を有する。図3での反射器7a1の水平方向広がりは、反射器7a1が図1および図2で図面垂直方向に有する広がりに相当する。さらに図3から、図2のコンタクトエレメント20が2つの個別の構成部材、すなわちプラチナ製のコンタクトピン31とコンタクトブッシュ32とからなることが分かる。各本体30には2つのコンタクトピン31が設けられており、これらはそれぞれ本体30の全プレート厚を通って延在している。このことは図3の本体30の左半分の断面に示されている。コンタクトピン31はすでに本体30の焼成の前にその材料中に嵌め込まれている。すなわちコンタクトピン31は、本体30の全プレート厚を通って完全に延在して本体の裏側でさらに突き出ており、突き出たコンタクトピン31の端部にはコンタクトブッシュ32を差し込むことができる。択一的にコンタクトブッシュ32をコンタクトピン31に締付け、ネジ留め、または他の公知のやり方で固定することもできる。
【0042】
本体30の焼成の際に、本体の原材料に挿入されたコンタクトピン31が本体の材料にしっかりと嵌め込まれ、そのときにコンタクトピン31と本体との間の継目個所に気密な接合が生れる。焼成の後、本体30の前側が平滑に研磨され、元のコンタクトピン31の端部と本体30の前側は平坦な面を形成する。
【0043】
本体の前側が滑らかに研磨された後、その上の表面領域AとBに2つの同じ層積層体が施与される。しかし2つの層積層体は互いに電気的に絶縁されている。この構成は、たとえば1つまたは複数の層を全面で前側に施与し、続いてたとえばエッチング法により2つの層領域を分離することと置換することができる。択一的に互いに絶縁された層領域を、本体の前側上にマスクを設け同時に別個に施与することができる。
【0044】
すでに上に述べたように、本発明の反射器は、コンタクトピンが埋め込まれた誘電性本体の他に導電性層を有する。実施例では、導電性層39は上下に重ねて析出された複数の部分層からなる。本来の反射層として機能する層積層体のカバー層は、実施例では金層として構成されている。Alからなるセラミック本体上の金層は非常に良好な付着性を有するから、本体30の平滑に研磨された前側に上に、クロムからなる100μm厚の導電性付着層33が真空被覆法によってまず析出される。しかしクロム粒子は付着層33から隣接する金層へ、そして金層を通って拡散することができ、金層の表面で参加する。このことは医学領域および薬学領域で適用する場合には不利な作用を有することがある。したがって付着層33の上に、チタンからなる200nm厚の導電性拡散バリア層33がまず析出され、続いてプラチナからなる500nm厚の導電性拡散バリア層35が同様に真空被覆法によって析出される。付着性が改善されるので、引き続き真空被覆法によってプラチナ層35の上に1000nm厚の金層36が再度施与される。この金層は続いて少なくとも22μm厚の金層37により電気メッキで補強される。なぜなら電気メッキ析出法により、閉じた表面構造を備える迅速な層厚成長が実現されるからである。したがって本発明の装置で誘電性本体上に存在する導電性層39は実施例では、部分層33、34、35、36、37を有し、ここで金からなる部分層36と37は合同して本来の反射層として機能する。
【0045】
領域AまたはBで(部分層37と36からなる)金層に衝突する電子線38の電子の一部は、金層でまたは金層内で部分的に反射される。反射されなかった電子の一部は、金層から同様に導電性の層35、34、33を通ってコンタクトピン31に流れる電流となる。この電流はさらにコンタクトブッシュ32を介し、これに接続された電気線路21を通って図示しない測定装置に流れ、この測定装置で流れる電流に対する値が検出される。
【0046】
金層に衝突する電子線38の電子は、その運動エネルギーにより金層に最大深度zまで浸透することができる。線電子が対象物の表面に反射されることが重要な実施例では、(部分層37と36からなる)金層の厚さが、最大浸透深度zより大きくなるよう選定される。これにより線電子の大部分が金層から反射される。
【0047】
金層の厚さが浸透深度zより小さく形成されていれば、線電子の一部は金層の下にある導電性層35、34、33から誘電性本体30まで達することができる。この電子成分の運動エネルギーはもはや反射には十分でないから、この電子成分は導電性層33を介してコンタクトピン31に流れ、コンタクトブッシュ32を介し、これに接続された電気線路21を通って図示しない測定装置まで流れる。そしてこの測定装置で流れる電流に対する値が検出される。したがってこの実施形態では反射される電子の割合が、金層の厚さが浸透深度zより大きい前の実施形態の場合よりも小さい。
【0048】
図4には、反射器7a1の択一的な構造が概略的に示されている。この変形実施形態も、コンタクトピン31が埋め込まれた酸化アルミニウムからなる誘電性本体30と、コンタクトピン31に装着されたコンタクトブッシュ32と、図示しない測定装置に至る電気線路21とを有する。本体30の焼成の前に、本体の領域AとBに金含有ペーストが塗布される。このペーストは金粒子および焼成可能な接合剤からなる。焼成過程の間に、ペーストに含まれる金粒子が本体30の表面にしっかりと植え込まれるか、または本体30の表面上に結合剤によって結合され、金含有層43を形成する。この金含有層の上に後続の方法ステップで、少なくとも22μm厚の金層が電気メッキで析出される。この金層は本体上で高い付着性を有する。電気メッキで金層を析出する前に本体表面の前側を、図3で説明したように滑らかに研磨することができる。これにより本体から突き出るコンタクトピンが本体の平坦な面の高さに短縮される。しかしこの場合、研磨により表面の粗度をできるだけ小さくしても、本体の表面に焼成中に焼き付けられた金粒子は除去しないことに注意すべきである。なぜならそうでないと、後で電気メッキにより析出される金層の付着性に不利に作用するからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から対象物(2)の表面に放出された加速電子を反射することのできる装置であって、
少なくとも1つの誘電性本体(30)を有し、該誘電性本体上の少なくとも1つの表面領域(A、B)には少なくとも1つの導電性層(39)が取り付けられており、
少なくとも1つの導電性コンタクトエレメント(31)が、前記導電性層(39)から前記誘電性本体(30)を通って延在している装置。
【請求項2】
前記誘電性本体(30)はセラミックまたはガラスからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記セラミックは酸化アルミニウムまたは酸化ジルコンである、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記導電性層(39)の少なくとも表面は、金、タンタル、モリブデン、タングステンの元素の少なくとも1つを有する材料からなる、ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記導電性層は少なくとも5μm厚の金層として構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記導電性層(39)は、前記誘電性本体(30)の表面上に複数の層領域(A、B)に分割されており、該層領域は互いに電気的に絶縁されており、
各層領域(A、B)には少なくとも1つのコンタクトエレメント(31)が配設されており、該コンタクトエレメントは導電性層(39)のそれぞれの層領域(A、B)から前記誘電性本体(30)を通って延在している、ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記導電性層(39)は、上下に重ねて析出された少なくとも2つの部分層(33、34、35、36、37)からなる、ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの部分層(33)は、付着介在層として構成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記付着介在層は、クロム、マンガン、鉄、コバルトの群からの少なくとも1つの元素を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの部分層(34、35)は、バリア層として構成されている、ことを特徴とする請求項7から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記バリア層は、プラチナ、チタン、タンタル、金の群からの少なくとも1つの元素を有する、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コンタクトエレメント(31)はコンタクトピンとして構成されており、
該コンタクトピンの材料は、金、プラチナ、チタン、モリブデン、鉄、クロム、タンタルの群からの少なくとも1つの元素を有する、ことを特徴とする請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
誘電性本体(30)とコンタクトピン(31)との間の継目個所は気密に構成されている、ことを特徴とする請求項1から12までのいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−509567(P2013−509567A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535641(P2012−535641)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005217
【国際公開番号】WO2011/050875
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany