説明

劣化診断装置、発電システム、及び劣化診断方法

【課題】発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断する、ことを目的とする。
【解決手段】劣化診断装置22は、回転軸12に発電機20が接続され、起動時に発電機20を電動機として用いることによって起動するガスタービン18の起動時に、発電機20へ供給される電力量の総量に基づいて、ガスタービン18の劣化を判断する。具体的には、劣化診断装置22は、ガスタービン18が起動する毎に、発電機20へ供給される電力量の総量を記憶し、記憶している電力量の総量に基づいて、該電力量の総量が増加している場合に、ガスタービン18が劣化していると判断する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化診断装置、発電システム、及び劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービン(一例として、ガスタービン)は、停止状態から定格状態に至る起動時に加速される。しかし、ガスタービンが劣化していると、その加速性能は低下する。そのため、ガスタービンの加速度及び加速時間を一定にして運用させたい場合には、起動時にガスタービンへ供給する燃料を増加させる必要がある。すなわち、燃料消費量を増加させる。なお、この運用は、一般的に、ガスタービンのコントローラによって自動的に行われる。
【0003】
特許文献1には、ガスタービンエンジンの性能を監視する方法であって、エンジンの加速中に、エンジン制御装置からの調整器指数及び加速調整器に累積した時間を蓄積し、定常状態テークオフ出力に達した後に、少なくとも1つのエンジンセンサ値を監視し、現在のエンジン調整器使用量を以前のテークオフデータから得たエンジン調整器使用量の過去の値と比較し、該比較の結果を利用してエンジンに対する事前予防メンテナンスを行うか否かを指示する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−170189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転軸に発電機を接続させて発電を行うためのガスタービンでは、ガスタービンの起動時に電力を発電機に供給することで、発電機を電動機として用いてガスタービンを加速させる。しかし、特許文献1に記載の技術では、発電機に供給される電力量から、ガスタービンの劣化の有無を判断することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発電機に供給される電力量から、ガスタービンの劣化の有無を判断することができる、劣化診断装置、発電システム、及び劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の劣化診断装置、発電システム、及び劣化診断方法は以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係る劣化診断装置は、回転軸に発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの劣化診断装置であって、前記タービンの起動時に、前記発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、前記タービンの劣化を判断する判断手段、を備える。
【0009】
本発明によれば、回転軸に発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの起動時に、発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、タービンの劣化を判断する。
なお、上記タービンは、ガスタービン及び蒸気タービンの何れでもよい。
タービンが劣化すると、例えば回転軸の摩擦力が大きくなるため、それに伴い、タービンの起動時に発電機を電動機として用いることによって消費される電力量も増加する。
【0010】
このため、本発明は、発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断することができる。
【0011】
また、本発明の劣化診断装置は、前記タービンを起動する毎に、前記発電機へ供給される電力量の総量が記憶される記憶手段を備え、前記判断手段が、前記記憶手段に記憶されている前記電力量の総量に基づいて、該電力量の総量が増加している場合に、前記タービンが劣化していると判断する。
【0012】
本発明によれば、タービンを起動する毎に、発電機へ供給される電力量の総量が記憶され、電力量の総量が増加している場合に、タービンが劣化していると判断するので、容易かつ正確に、発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断することができる。
【0013】
一方、本発明に係る発電システムは、発電機と、回転軸に前記発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンと、請求項1又は請求項2に記載の劣化診断装置と、を備える。
【0014】
本発明によれば、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの起動時に、発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、タービンの劣化を判断するので、発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る劣化診断方法は、回転軸に発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの劣化診断方法であって、前記タービンの起動時に、前記発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、前記タービンの劣化を判断する。
【0016】
本発明によれば、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの起動時に、発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、タービンの劣化を判断するので、発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発電機に供給される電力量から、ガスタービンの劣化の有無を判断することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る発電システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る劣化診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る劣化診断プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るガスタービンの起動時における電力消費量の時系列を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る劣化診断装置、発電システム、及び劣化診断方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本実施形態に係るタービン(本実施形態では、一例としてガスタービン)を用いた発電システム10の構成を示す。
発電システム10は、回転軸12により駆動されることで、空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機14、燃料と圧縮機14によって生成された圧縮空気とを燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器16、燃焼器16によって生成された燃焼ガスにより駆動するガスタービン18、ガスタービン18の回転軸12に連結される発電機20、及びガスタービン18の劣化状態を診断する劣化診断装置22を備えている。
【0021】
そして、ガスタービン18に生じる回転駆動力は、回転軸12によって発電機20に伝達されるので、発電機20は、ガスタービン18の回転駆動力によって発電する。
また、発電機20は、起動盤24を介して系統電力からの電力の供給を受け、電動機として用いられることが可能とされている。なお、本実施形態に係る起動盤24は、一例としてサイリスタが用いられる。
【0022】
さらに、本実施形態に係るガスタービン18は、起動時に燃焼器16から燃焼ガスが供給されると共に、発電機20を電動機として用いることによって回転軸12を回転させることによる起動が行われる。
【0023】
ガスタービン18が劣化すると、回転軸12の摩擦力が大きくなるため、それに伴い、ガスタービン18の起動時に、発電機20を電動機として用いることによって消費される電力量も増加する。
このため、本実施形態に係る劣化診断装置22は、ガスタービン18の一連の起動シーケンスにおいて、燃焼器16へ供給される燃料量と共に、電動機として用いられる発電機20へ供給される電力量も監視することによって、ガスタービン18の劣化の有無を判断する。
なお、上記一連の起動シーケンスとは、停止状態のガスタービン18が加速を開始し、定格速度に達するまでのシーケンスをいう。
【0024】
図2は、本実施形態に係る劣化診断装置22の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る劣化診断装置22は、劣化診断装置22全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)30、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)32、CPU30による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)34、並びに各種プログラム及び各種データを記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)36を備えている。
【0025】
さらに、劣化診断装置22は、キーボード及びマウス等から構成され、各種操作の入力を受け付ける操作入力部38、各種画像を表示する、例えば液晶ディスプレイ装置等の画像表示部40、並びに通信回線42を介して各種データが入力される外部インタフェース44を備えている。
【0026】
これらCPU30、ROM32、RAM34、HDD36、操作入力部38、画像表示部40、及び外部インタフェース44は、システムバス46を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU30は、ROM32、RAM34、及びHDD36へのアクセス、操作入力部38に対する操作状態の把握、画像表示部40に対する画像の表示、並びに外部インタフェース44を介した各種情報の入力の受け付け等を各々行なうことができる。
【0027】
なお、劣化診断装置22は、外部インタフェース44を介して、起動盤24から、ガスタービン18の一連の起動シーケンスにおいて、発電機20へ供給(消費)される電力量の総量を示すデータ(以下、「電力消費量データ」という。)、及びが入力される。
また、劣化診断装置22は、ガスタービン18の一連の起動シーケンスにおいて、外部インタフェース44は、外部インタフェース44を介して、燃焼器16へ供給(消費)される燃料量の総量を示すデータ(以下、「燃料消費量データ」という。)が入力される。
そして、劣化診断装置22は、入力された電力消費量データ及び燃料消費量データを、これらデータが取得された日時で関連付けた運転記録データとしてHDD36に記憶する。
【0028】
図3は、劣化診断装置22が、電力消費量データを用いて劣化診断処理を行う場合に、CPU30によって実行される劣化診断プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、劣化診断プログラムはHDD36の所定領域に予め記憶されている。
なお、劣化診断処理は、例えば、劣化診断装置22に新たな電力消費量データが入力された場合に、実行される。
【0029】
まず、ステップ100では、HDD36に記憶されている運転記録データを読み出す。
【0030】
次のステップ102では、運転記録データとして記録されている、過去の電力消費量データと入力された電力消費量データとを照合する。
【0031】
次のステップ104では、ガスタービン18の起動時に消費される電力が増加しているか否かを判定し、肯定判定の場合は、ガスタービン18が劣化していると判断し、ステップ106へ移行する一方、否定判定の場合は、本プログラムを終了する。
【0032】
本実施形態に係る劣化診断装置22は、ガスタービン18の起動における電力消費量の変化量が予め定められた変化量以上の場合に、ステップ104において肯定判定となり、ガスタービン18が劣化していると判断する。
【0033】
本ステップ104で肯定判定となる場合の一例を、図4を参照して説明する。
図4は、横軸をガスタービン18の起動日時とし、縦軸をガスタービン18の起動時における電力消費量とすることによって、ガスタービン18の起動時における電力消費量の変化を時系列に示したグラフである。
そして、図4に示すように、ガスタービン18の起動時における電力消費量が増加し、入力された電力消費量データを含んだ複数回(図4の例では、4回)の値の近似式の傾きが、予め定められた傾き以上となった場合に、劣化診断装置22は、ガスタービン18が劣化していると判断する。
【0034】
なお、肯定判定とする場合を、これに限らず、例えば、入力された電力消費量データの値が、過去の電力消費量データの平均値に比較して予め定められた割合(例えば、10%)以上増加した場合としてもよい。
また、肯定判定とする場合を、入力された電量消費量データの値が、予め定められた消費量以上となった場合としてもよい。この場合は、入力された電量消費量と過去の電力消費量データとの照合が必要なくなる。
【0035】
次のステップ106では、ガスタービン18が劣化していることを報知する報知処理を行う。報知処理としては、例えば、ガスタービン18が劣化していることを示す画像を、画像表示部40に表示させる処理や、不図示のスピーカーを介して音声により報知する処理等が挙げられる。
なお、報知処理において、図4に示すようなグラフを画像表示部40に表示してもよい。発電システム10の運転者は、画像表示部40に表示されたグラフから、ガスタービン18の点検の時期を判断することができる。
【0036】
なお、劣化診断装置22は、上記近似式の傾きの大きさから、ガスタービン18の劣化の度合いを判定し、該度合いに基づいて、ガスタービン18の点検の時期を報知してもよい。
【0037】
また、劣化診断装置22は、入力された燃料消費量データ、及びHDD36に運転記録データとして記憶されている燃料消費量データを用いて、上記電力消費量データを用いた劣化診断処理と同様の処理を行ってもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る劣化診断装置22は、回転軸12に発電機20が接続され、起動時に発電機20を電動機として用いることによって起動するガスタービン18の起動時に、発電機20へ供給される電力量の総量に基づいて、ガスタービン18の劣化を判断する。
【0039】
従って、本実施形態に係る劣化診断装置22は、発電機へ供給される電力量からタービンの劣化の有無を判断することができる。
【0040】
また、本発明の劣化診断装置22は、ガスタービン18を起動する毎に、発電機20へ供給される電力量の総量がHDD36に記憶され、電力量の総量が増加している場合に、ガスタービン18が劣化していると判断するので、容易かつ正確に、発電機20へ供給される電力量からガスタービン18の劣化の有無を判断することができる。
【0041】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、発電システム10のタービンとしてガスタービン18を用いる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、タービンとして蒸気タービンを用いる形態としてもよい。
【0043】
また、上記実施形態で説明した劣化診断プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
10 発電システム
18 ガスタービン
20 発電機
22 劣化診断装置
30 CPU
36 HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの劣化診断装置であって、
前記タービンの起動時に、前記発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、前記タービンの劣化を判断する判断手段、
を備えた劣化診断装置。
【請求項2】
前記タービンを起動する毎に、前記発電機へ供給される電力量の総量が記憶される記憶手段、
を備え、
前記判断手段は、前記記憶手段に記憶されている前記電力量の総量に基づいて、該電力量の総量が増加している場合に、前記タービンが劣化していると判断する請求項1記載の劣化診断装置。
【請求項3】
発電機と、
回転軸に前記発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンと、
請求項1又は請求項2に記載の劣化診断装置と、
を備えた発電システム。
【請求項4】
回転軸に発電機が接続され、起動時に該発電機を電動機として用いることによって起動するタービンの劣化診断方法であって、
前記タービンの起動時に、前記発電機へ供給される電力量の総量に基づいて、前記タービンの劣化を判断する劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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