説明

劣悪な品質の受信による表示乱れを防止するための方法およびシステム

本発明は、デジタル番組放送の間に帯域幅または信号品質の乱れが起こって現在放送中の通常番組の放送品質が所定の値より低くなったときに、広告のような、特定の放送品質をもつあらかじめ用意された番組が挿入される方法を提供する。あらかじめ用意された番組とは、現在放送中の通常番組に対して正規の関係をもつものであってもよく、それによりユーザーは乱れた画面に煩わされたり番組が通常の視聴に耐える良好な条件に戻るのを待ったりするのではなく、何らかの番組を鑑賞することになる。本発明はさらに、挿入されたあらかじめ用意された番組の統計を取る方法を提供する。その統計情報は課金に使われることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル番組の放送のための方法およびシステムに、特にIP放送のための方法/システムおよび地上波デジタルビデオ放送(DVB-T: terrestrial digital video broadcasting)のための方法/システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
MPEG-2(Motion Picture Experts Group[動画像専門家グループ])規格(ISO/IEC131818-1)は近年デジタルビデオ放送において使用される比較的広まった規格である。その規格はセットトップボックス(STB:set top box)、デジタルテレビ(DTV: digital television)、対話的デジタルテレビ(iDTV: interactive digital television)、パソコン、ハンドヘルド機器およびその他の対話的機器などにデジタルデータストリームを提供するための規格である。
【0003】
MPEG-2 over IP[IP利用のMPEG-2伝送]はMPEG-2規格に準拠するデータストリームをTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol[伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル])パケットまたはUDP(User Datagram Protocol[ユーザーデータグラムプロトコル])/IPパケットのようなパケットにパケット化してそれをインターネットを通じて伝送する方法である。この方法はIP放送の好ましい方法である。
【0004】
近い将来、ブロードバンドインターネットを通じたデジタルテレビ放送が現実となり、広まるであろう。そうなればユーザーにとって新しい娯楽サービスが提供され、またサービスプロバイダーにとっても付加価値サービスを提供する新しい機会が提供されるであろう。しかし、ネットワークのサービス品質(QoS: quality of service)は常に保証できるわけではない。たとえば、ネットワーク帯域幅の変動の結果、放送が一時的に中断し、テレビ画面のようなユーザーインターフェース上で静止画像やぶれたりぼやけたりした画像になったり、あるいはコンテンツが全く表示されないといったことさえあり、こうしてユーザーに不快な印象を与えることになる。
【0005】
さらに、既存の地上波デジタルテレビ番組の放送でも、ある地域である期間に放送信号の品質変動が生じることがある。特に移動するユーザーについては信号品質変動は移動速度の効果または建物の遮蔽のためより重要で、よって放送が一時的に中断し、テレビ画面のようなユーザーインターフェース上で静止画像やぶれたりぼやけたりした画像になったり、あるいはコンテンツが全く表示されないといったことさえあり、こうしてユーザーに不快な印象を与えることになりうる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、現在放送中の通常番組の放送品質が帯域幅変動または信号品質変動のためある所定の値より低くなっているときに、広告のような特定の放送品質のあらかじめ用意された番組を挿入すること(のための方法)を提供する。ここで、前記あらかじめ用意された番組は、現在放送中の番組とある関連を有したものでもよく、よってユーザーはぶれたりぼやけたりした画像を辛抱したり、通常の番組が視聴に耐えるレベルを取り戻すのを単に待ったりすることなく何らかの番組を見ることができる。
【0007】
IP放送については、前記あらかじめ用意された番組は、特定のサービス品質をもつローカルサーバーまたはローカル記憶装置からくるものがありうる。前記ローカル記憶装置に保存された前記あらかじめ用意された番組は、放送されるべき通常番組の放送に先立って前もって保存されていてもいいし、あるいは通常番組の放送の間に保存される通常番組に付随する別の番組であってもいいし、あるいは通常番組の放送の間でネットワーク帯域幅に余裕があるときにネットワーク放送サーバーまたはローカルサーバーからダウンロードされるものでもよい。さらに、本発明は、通常番組の失われたセグメントを再取得してそれを後続の番組につなぐことによってユーザーをわずらわしい帯域幅変動から解放することもできる。
【0008】
地上波デジタルビデオ放送については、前記あらかじめ用意された番組はローカル記憶装置からくる。前記ローカル記憶装置に保存された前記あらかじめ用意された番組は、放送されるべき通常番組の放送に先立って前もって保存されていることもできるし、また通常番組の放送の間に保存される通常番組に付随する別の番組であることもできる。
【0009】
本発明はさらに、挿入されたあらかじめ用意された番組の統計を収集する方法を提供する。放送サービスプロバイダーは、その統計情報に従って当事者に課金するのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ネットワーク変動または信号品質変動の生起中、ユーザーが全く番組を見られない、あるいはぶれたりぼやけたりした画像しか見られないといった問題を解決したのみならず、放送サービスプロバイダーによって提供される有意な付加価値サービスを技術的に可能にした。
【0011】
付属の図面との関連でなされる以下の記述および請求項を参照することによって、本発明のその他の目的および成果が明らかとなり、本発明のより十全なる理解が得られるであろう。
【0012】
これから本発明について、実施形態の形で付属の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
付属の図面を通じて、同様の参照符号は同様または同一の特徴および機能を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入するためのシステムを示す概略図である。既存の放送システムに含まれる番組放送装置に加えて、当該デジタルビデオ放送システムはさらに、現在放送中の通常番組の放送品質を検出するための検出装置と、前記検出された放送品質がある所定の値よりも低いときにあらかじめ用意された番組、すなわち別番組を挿入するための切り換え装置とを有する。ここで、前記別番組の放送品質はユーザーが認容できるレベルより上のものである、すなわち、ある所定のレベルには達している。当該番組放送装置は通常さらに、ネットワークインターフェース112、プロトコルパーサー114、ネットワークバッファ116、PIDフィルタ121、通常番組バッファ123、デマルチプレクサ127およびデコーダ129を有する。まず、ネットワークデジタル放送番組ストリームがネットワークインターフェース112を通じてユーザーのローカル領域にダウンロードされる。放送番組がローカルユーザーとの双方向機能を提供する場合、番組ストリームは通常UDP/IPパケットからなる。放送番組がローカルユーザーとの双方向機能を提供しない場合には、番組ストリームは通常TCP/IPパケットからなる。放送番組ストリームは、プロトコルパーサー114によって処理されてIPパケットヘッダおよびUDPもしくはTCPパケットヘッダが除去されたのち、MPEG-2規格に従う番組伝送ストリームになり、ネットワークバッファ116に送られる。
【0015】
番組伝送ストリームが複数番組伝送ストリームである場合、ユーザーの番組選択情報に従って選択された番組の伝送ストリームはPID(Packet Identifier[パケット識別子])フィルタ121を通じて通常番組バッファ123に送られ、前記選択された番組伝送ストリームはさらにバッファ切り換え手段142を通じてデマルチプレクサ127に送られて多重化解除されてPES(Packetized Element Stream[パケット化基本ストリーム])になり、最終的にこのPESがデコーダ129によって復号されてディスプレイへのオーディオ/ビデオ信号出力となる。当該デジタルビデオ放送システムにおける、ユーザーが番組を選択するためのユーザーコントローラおよびユーザーによる番組へのアクセスを制御するための条件アクセスコントローラは本発明の焦点ではないので、これらについてはここでは詳細に記述することはせず、関連図面でも示されていない。
【0016】
パケット紛失現象および番組パケットの遅着は、ネットワークの帯域幅変動が生じるとき、特にネットワークのサービス品質がある所定の値まで劣化するときに起こる。遅れて到着したパケットはそのPCR(Program Clock Reference[番組クロック基準])に基づいてネットワークバッファによって破棄され、通常番組バッファの充填レベルは大きく下がり、よって静止画像またはぶれた画像が現れる。遅着パケットの復号といったその後の処理を正しく実行することは不可能だからである。
【0017】
一方、本実施形態は、通常番組バッファ123の充填レベルに基づいて通常番組が保証された品質で放送できないことを判定する。この判定はバッファ制御装置140のような検出装置によってなされる。次いで、バッファ制御装置140が、切り換え情報をバッファ切り換え装置142のような切り換え装置に送り、この切り換え装置が別番組バッファ130をデマルチプレクサ127に接続する。前記別番組バッファ130は広告番組ストリームのような別番組ストリームを、別番組保存用ローカル記憶装置132から取得して通常番組ストリームを置き換え、それをデマルチプレクサに送り、そこで処理されたものが最終的にユーザーに提示される。
【0018】
別番組を挿入するのと同時に、通常番組ストリームのほうもネットワークバッファ116およびPIDフィルタ121を通じて通常番組バッファ123に充填されることができ、該通常番組バッファ123の充填レベルがバッファ制御装置140によって検出される。通常番組バッファの充填レベルが所定の値を回復したら、それは通常番組の利用可能な放送品質がユーザーに認容可能なレベルを回復したことを示す。一方、バッファ制御装置140は切り換え情報をバッファ切り換え装置142に送り、このバッファ切り換え装置がデマルチプレクサ127を再び通常番組バッファ123をつなぐ状態に切り換え戻す。こうして通常番組の放送が再開されるのである。切り換えフローについてはのちに詳細に述べる。
【0019】
本発明はさらに、通常番組についてのタイムシフト機能を提供する。この機能は別番組を挿入している間に通常番組の紛失セグメントを取得してそれらのセグメントを後続の放送番組につなぐことができるものである。これによりユーザーは帯域幅変動に気づかないこともありうる。
【0020】
タイムシフト機能を実装するために、別番組を挿入している間に、プロトコルパーサー114は通常番組を放送するネットワークサーバーのようなサーバー(図示せず)に要求を送りうる。この要求は通常番組の紛失セグメントについての情報を含んでおり、ネットワークサーバーに通常番組のその紛失セグメントを再送信するよう要求する。その後、受信された通常番組のその紛失セグメントおよびその後続の通常番組のセグメントが順番に通常番組保存用ローカル記憶装置160に保存される。ローカル記憶装置に保存されたこうした番組はさらに通常番組バッファ123に送られる。このタイムシフト機能はのちに詳細に述べる。
【0021】
本実施形態のデジタルビデオ放送システムはさらに、挿入されたあらかじめ用意された別番組の時間およびコンテンツ種別の統計をとるための統計装置148を有する。この統計装置はバッファ切り換え装置142に含められることもでき、放送のコンテンツ種別、放送の時間期間などといった別番組の放送情報の統計を取ることができる。こうした情報はファイルの形でローカル記憶装置150に保存される。あるいはリアルタイムでネットワークを通じてネットワーク放送サーバーのようなネットワークサーバーに送信されてもよい。ネットワーク放送サービスプロバイダーは前記ファイル中の統計情報に基づいて当事者に課金しうる。そして別番組の内容が広告である場合、広告主に課金することもできる。
【0022】
統計機能は、前記別番組ストリームの伝送小パケットのPID値によって実装されうる。MPEG-2規格の仕様によれば、規格によって定義されている値の部分のほかに、ユーザーによって定義されるべき値の領域のセグメントが残っている。ストリーム種別とPIDとの間の対応付け関係は番組対応付けテーブルに記録される。そこではストリーム種別の値0x80〜0xFFがユーザー自身によって定義されることになっている。たとえば、ストリーム種別0x88は広告種別番組と定義でき、対応するPID=0x30は広告主Aの番組伝送ストリームと定義できる。よって、統計装置148はPID=0x33をもつ全放送情報を集めて広告主Aに課金するのに使うことができる。
【0023】
本発明で言及されているローカル記憶装置はハードディスクドライブ(HDD)、光ディスクドライブ(CDまたはDVD)、磁気テープドライブまたはその他の種類の磁気式/光学式記憶装置でありうる。本発明で言及される複数の記憶装置は、同じ機能を達成できる限り、一つの記憶装置に組み合わされてもよい。
【0024】
図2は、本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入することの、概略的なフローチャートである。このフローは、通常番組とあらかじめ用意された番組すなわち別番組との間の放送の切り換えのフローである。第一に、ネットワークを通じてネットワーク放送番組ストリームが受信される(ステップS210)。IPパケットヘッダおよびUDPパケットヘッダが除去されて番組伝送ストリームがMPEG-2に従うようにされる(ステップS212)。次いでPID値がユーザーの選択に従ってフィルタにかけられ(ステップS214)、ユーザーによって選ばれた番組に関係する全伝送小パケットがさらなる処理のために選択される。
【0025】
第二に、通常番組の放送がIP放送プロトコルに従って完了しているかどうかが判定される(ステップS220)。そうでなければ、通常番組バッファの充填レベルが検出される(ステップS230)。
【0026】
通常番組バッファの充填レベルが十分、たとえば60%超である場合、その通常番組が放送される。もし放送中の番組が通常番組に付随する別番組であれば、(ステップS240)、付随する別番組は将来の挿入のために放送と同時にローカル記憶装置に保存されうる(ステップS242)。
【0027】
通常番組バッファの充填レベルが不十分、すなわちバッファがアンダーフローである場合、ローカル記憶装置から別番組ストリームが取得されて放送のために挿入される(ステップS250)。別番組ストリームはローカル領域からのものなので、この番組ストリームの放送品質はユーザーの要求を確実に満たす所定の基準に達しうる。もちろん、ローカルネットワークがそのサービス品質が保証される特定のサービス品質のものである場合、挿入するための別番組ストリームはローカルサーバーから直接取得することもできる。ローカル記憶装置に保存される別番組ストリームについては三つの主要なソースがある:
(1)通常番組の放送に先立ってローカル記憶装置に前もって保存された別番組ストリーム;
(2)通常番組の放送の間に、ネットワークサーバー、特にローカルエリアネットワークサーバーから帯域幅に余裕があるときに取得されてローカル記憶装置に保存された別番組ストリーム
(3)通常番組の放送の間に、あるセグメントが通常番組に付随する別番組であるかどうかが、伝送小パケットのPID値が特定の値であるかどうかを判定することによって判定でき(ステップS240)、別番組ストリームは通常番組ストリームの一部分である。もしそうなら、それはローカル記憶装置に保存され、同時にさらなる処理のために転送される(ステップS242)。もしそうでなければ、それはさらなる処理のために直接転送される。
【0028】
最後に、通常番組または別の番組が多重化解除され(ステップS260)、さらに復号され(ステップS270)、その後ある形でユーザーに提示される(ステップS280)。
【0029】
上述した切り換え手続きの間、通常番組および前記別番組の番組クロック基準が異なるので、番組切り換え手続きにおいて番組クロックを調整することが必要であるが、この調整方法はMPEG-2規格によって規定されている。この目的を達成するため、対応する番組クロック基準および伝送符号レートが、別の番組をローカル記憶装置に保存している間に保存されるべきである。
【0030】
同時に、上述した切り換え手続きにおいて、前記別番組の完全なセグメントを確実に放送するため、前記別番組のセグメントは固定長に設定されることができ、あるいは放送されるべきセグメントを示すために前記別番組に特定のラベルを挿入することができる(米国特許出願公開第US20020065678A1、公開日2002年5月30日参照;該出願の開示はここに参照によって組み込まれる)。ステップS220とステップS230の間に、前記別番組が完全に放送されたかどうかを判定するための判定ステップが追加される。もしそうでなければ、通常番組バッファの充填レベルを検出することなく、別番組ストリームがローカル記憶装置から直接取得される。もし別番組が完全に放送され終わっていれば、通常番組バッファの充填レベルがさらに検出される。
【0031】
本発明において言及される別番組とは、当該番組に関連する広告であってもよい。たとえば、「007」シリーズの映画の放送中、主演男優が演ずる広告セグメントが挿入されてもよい。
【0032】
図3は、本発明のある実施形態に基づくIPデジタル放送の間のネットワークサービス品質の変動を示す概略図である。時刻t1までは、図1の通常番組バッファ123の充填レベルは100%である。これはネットワークは完全に平常であることを示している。t1からt2までの期間に通常番組バッファ123の充填レベルは100%から75%に低下する。これはネットワークにおいて帯域幅変動が起こり始めており、ネットワークサービス品質が劣化し始めているが、まだ放送の要求を満たしていることを示す
時刻t2とt3の間では、通常番組バッファの充填レベルは75%から50%に減少する。これはネットワークサービス品質はさらに悪化したがそれでも放送を続けることはできることを示している。ただし、ひとたび通常番組バッファ123の充填レベルが閾値75%を割ると、図1のバッファ制御装置140が、別番組バッファ130をあらかじめ充填しておくよう、あらかじめ用意された番組、すなわち別番組を別番組保存用ローカル記憶装置132から読み始めさせる命令を発する。そのようにする目的は、ひとたび図1のデマルチプレクサ127がバッファ切り換え装置142によって前記別番組バッファ130につながれたときに、別番組がすぐ放送できるようにすることである。時刻t3の直後に通常番組バッファの充填レベルが所定の値50%未満にまで減少する。これはネットワークサービス品質が放送の要求を満たすことができず、よってバッファ制御装置140は時刻t3において、バッファ切り換え装置142によってデマルチプレクサ127を別番組バッファ130につながせる命令を発する。ここで別番組の放送が始まる。
【0033】
時刻t4まで、すなわち通常番組バッファ123の充填レベルがもう一つの所定の値80%に上昇するまでは、別番組がずっと挿入される。通常番組バッファ123の充填レベルが80%に上昇したとき、すなわち、ネットワークサービス品質が完全に回復して利用可能な放送品質が放送の要求に達したとき、バッファ制御装置140はバッファ切り換え装置142によってデマルチプレクサ127を通常番組バッファ123につながせる命令を発し、通常番組の放送が再開される。通常番組放送へ切り換え戻すネットワークサービス品質の要求が別番組放送への切り換え時の値より高い理由は、偶然の変動ではなく確実にネットワークサービス品質が回復したことを保証するためである。
もちろん、ネットワークのサービス品質は、ネットワークの出口におけるネットワークバッファ116の充填レベルに基づいて決定することもできる。特に、単一の番組放送ストリームの場合には、ネットワークバッファ116の充填レベルは実質的にその場合の通常番組バッファ123の充填レベルに等しい。
【0034】
図4は、本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間に、紛失した通常番組を後続の番組につなぐことの概略的なフローチャートである。このフローは、通常番組のタイムシフトのフローである。第一に、あらかじめ用意された番組、すなわち別番組を挿入するのと同時に、図1のプロトコルパーサー114がネットワークサーバーに、通常番組の紛失についての情報を含む要求を発する(ステップS420)。この要求は、紛失した通常番組セグメントの開始時刻および終了時刻などを含む。この要求は、現在通常番組を放送しているネットワーク放送サーバーに対して発されることができ、該ネットワーク放送サーバーはネットワークサービス品質が回復したときに前記紛失した通常番組ストリームを送り返すことを優先する。あるいはまた、前記要求は、サービス品質を保証できるローカルサーバーに対して発され、現在通常番組を放送しているネットワーク放送サーバーは通常番組ストリームを前記ローカルサーバーに伝送することを保証することを優先する。
【0035】
紛失した通常番組ストリームのセグメントが受信されたとき(ステップS430)、それはプロトコルパーサーによってIPおよびTCPパケットヘッダが除去されたのちに通常番組保存用ローカル記憶装置に直接保存される(ステップS440)。同時に、その後の通常番組ストリームが受信され(ステップS450)、ネットワークバッファとPIDフィルタを通過したのち、当該番組の時間的順序において前記紛失した通常番組ストリームのセグメントのあとに保存される(ステップS460)。
【0036】
最後に、ひとたび通常番組バッファの充填レベルが通常番組の放送に切り換え戻すのに必要な条件を満たしたら、通常番組が、通常番組保存用ローカル記憶装置から通常番組バッファに読み込まれ(ステップS470)、通常番組の放送がすぐに再開される(S480)。
【0037】
別番組は決まった長さなので、このプロセスの間、別番組の残りの放送時間は予測できる。図1のバッファ制御装置140はその残り放送時間に基づいて、通常番組バッファ130をあらかじめ充填しておくよう、通常番組ストリームを通常番組保存用ローカル記憶装置から読み込ませる命令を発しうる。
【実施例】
【0038】
図5は、本発明のもう一つの実施形態に基づく、地上波デジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入するためのシステムを示す概略図である。このシステムは図1に示したシステムと実質的に同じであり、信号源が異なり、そのため番組受信手段に若干の違いがあるだけである。たとえば、ネットワークインターフェース112、プロトコルパーサー114およびネットワークバッファ116はフロントエンドデコーダ/チャネルデコーダ512およびチャネルバッファ516によって置き換えられている。同時に、このシステムにはタイムシフト機能はない。同様の部分は改めて説明はせず、違っている部分だけを以下に説明する。
【0039】
地上波デジタル放送番組ストリームは、まずフロントエンドデコーダ/チャネルデコーダ512によって処理されて、MPEG-2規格に従う番組伝送ストリームを形成する。これはチャネルバッファ516に転送される。この番組伝送ストリームはさらに、さらなる処理のためにPIDフィルタ121に転送される。その後のシステムは図1のシステムと実質的に同様である。地上波デジタルビデオ放送システムにはタイムシフト機能はなく、よってこのシステムでは、通常番組保存用のローカル記憶装置はなくてもよい。
【0040】
図6は、本発明のもう一つの実施形態に基づく地上波デジタルビデオ放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入することの、概略的なフローチャートである。このシステムは図2に示されたフローと実質的に同じであり、ただ、信号源が違っていて、番組ストリームを受信するフローが若干違っているだけである。同様の部分は改めて説明はせず、違っている部分だけを以下に説明する。
【0041】
第一に、地上波放送番組ストリームが地上波放送信号から受信され(ステップS610)、フロントエンド復調およびチャネル復号ののちにMPEG-2規格に従う番組伝送ストリームになる(ステップS612)。フロントエンド復調およびチャネル復号の間,ビット誤り率(BER: bit error ratio)および信号対雑音比(SNR: signal noise ratio)が計算される。ユーザーの選択に従って番組伝送ストリームのPID値がフィルタにかけられ(ステップS214)、ユーザーが選んだ当該番組に関連する全伝送小パケットがさらなる処理のために選択される。
【0042】
第二に、通常番組の放送が終了したかどうかが判定される(ステップS220)。たとえば、SNRがある期間(たとえば5分)にわたって定常的に所定の値(たとえば15dB)より低かったらその通常番組放送は終了したと考えることができる。
【0043】
通常番組の放送が終了していなかった場合には、さらにSNR/BERが認容可能な範囲内であるかどうかが判定される(ステップS630)。SNRが所定の値以上、たとえばSNR≧18dBであれば、通常番組放送が継続される。SNRが前記所定の値(18dB)未満であれば、現在の地上波放送信号は放送品質のある要求を満たさないということであり、あらかじめ用意された番組、すなわち別番組がローカル記憶装置から取得され、放送のために挿入されることができる(ステップS250)。もちろん、別の番組を挿入することの判定は、BERが所定の値(たとえば3.0×10-3)未満であるかどうかに基づいて行うこともできる。
【0044】
最後に、通常番組または別の番組が多重化解除され(ステップS260)、さらに復号され(ステップS270)、そして最後にある形でユーザーに提示される(ステップS280)。
【0045】
ローカル記憶装置に保存されている前記別番組ストリームには、二つの主要なソースがある:
(1)通常番組の放送に先立って前もって前記ローカル記憶装置に保存された別番組ストリーム;
(2)通常番組の放送の間に、あるセグメントが通常番組に付随する別番組であるかどうかが、伝送小パケットのPID値が特定の値であるかどうかを判定することによって判定できる。もしそうなら、前記セグメントはローカル記憶装置に保存され、さらなる処理のために伝送される。もしそうでなければ、それはさらなる処理のために直接伝送される。
【0046】
本発明は特定の実施形態を参照しつつ記載されてきたものの、数多くの変更、修正および変形を上記の記述に基づいて行うことは当業者には明らかなことである。したがって、そうした変更、修正および変形が付属の特許請求の精神および範囲にはいる場合には、本発明に含まれるものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入するためのシステムを示す概略図である。
【図2】本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入することの概略的なフローチャートである。
【図3】本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間のネットワークサービス品質変動を示す概略図である。
【図4】本発明のある実施形態に基づくネットワークデジタル放送の間に紛失した通常番組を後続の番組につなぐことの概略的なフローチャートである。
【図5】本発明の別のある実施形態に基づく地上波デジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入するためのシステムを示す概略図である。
【図6】本発明のさらに別のある実施形態に基づく地上波デジタル放送の間にあらかじめ用意された番組を挿入することの概略的なフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
112 ネットワークインターフェース
114 プロトコルパーサー
116 ネットワークバッファ
121 PIDフィルタ
123 通常番組バッファ
127 デマルチプレクサ
129 デコーダ
130 別番組バッファ
132 別番組保存用ローカルバッファ
140 バッファ制御装置
142 バッファ切り換え装置
148 統計装置
150 記憶装置
160 通常番組保存用ローカル記憶装置
S210 ネットワーク放送番組ストリームを受信
S212 UDP/IPパケットヘッダを除去
S214 PID値に基づいて番組をフィルタにかける
S220 放送終了?
S230 通常番組バッファの充填レベルを検出
S240 付随する別番組?
S242 付随する別番組をローカル記憶装置に保存
S250 挿入するための別番組ストリームをローカル記憶装置から取得
S260 番組を多重化解除
S270 番組を復号
S280 番組を提示
S420 通常番組の紛失情報を含む要求を発する
S430 紛失した通常番組セグメントを受信
S440 紛失した通常番組セグメントをローカル記憶装置に保存
S450 後続の通常番組ストリームを受信
S460 受信した後続の通常番組ストリームを当該番組の順序中でローカル記憶装置に保存
S470 ローカル記憶装置から通常番組を取得してそれを通常番組バッファに送る
S480 通常番組放送の再開
S610 地上波放送番組ストリームを受信
S612 フロントエンド復調/チャネル復号
S630 SNR/BERが認容可能な範囲かどうかを検出

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル番組を放送する方法であって:
a.放送されている通常番組の放送品質を検出し、
b.前記検出された放送品質が所定の値より低い場合にはあらかじめ用意された番組を挿入し、このあらかじめ用意された番組の放送品質は所定のレベルに達するものである、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、さらに:
c.前記あらかじめ用意された番組を放送しているときに前記通常番組の利用可能な放送品質を検出し、
d.前記利用可能な放送品質がもう一つの所定の値にまで戻ったときに前記通常番組の放送を再開する、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、前記ステップdの前にさらに:
e.前記挿入されたあらかじめ用意された番組の放送が終了したかどうかを検出する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記あらかじめ用意された番組が前もってローカル記憶装置に保存されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記あらかじめ用意された番組が、放送されている通常番組に付随する別番組からくることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、さらに:
g.前記挿入されたあらかじめ用意された番組の時間およびコンテンツ種別の統計情報を取得し、該統計情報が課金のために使われる、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、前記ステップbがさらに:
前記検出された放送品質がある閾値より低かった場合に前記あらかじめ用意された番組を別番組保存用キャッシュに充填する、
ことを有しており、前記検出された放送品質がある所定の値より低かった場合に前記キャッシュから放送するために前記あらかじめ用意された番組を取得することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記通常番組がネットワークを通じて送信されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、前記ステップaが:
通常番組保存用キャッシュの充填状態を検出する、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記あらかじめ用意された番組が、特定の放送品質をもつローカルサーバーからくることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記あらかじめ用意された番組が前もってローカル記憶装置に保存されるもので、このあらかじめ用意された番組がネットワークからダウンロードされるものであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項12】
請求項8記載の方法であって、さらに:
前記挿入されたあらかじめ用意された番組の放送のために紛失した通常番組のセグメントを要求するための要求を送り、
通常番組の前記紛失セグメントを受信し、
通常番組の前記紛失セグメントをその後の通常番組と連続的に組み合わせる、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、前記組み合わせるステップが:
前記受信された通常番組の紛失セグメントをローカル記憶装置に保存し、
前記その後の通常番組をローカル記憶装置に保存し、
前記受信された通常番組の紛失セグメントを、前記保存されたその後の通常番組から、再生のための通常の再生順序において読む、
ことを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
デジタル番組を放送するためのシステムであって:
放送されている通常番組の放送品質を検出するための検出装置と、
前記検出された放送品質が所定の値より低い場合に、所定のレベルに達する放送品質をもつあらかじめ用意された番組を挿入するための切り換え装置、
とを有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14記載のシステムであって、前記検出装置が通常番組の利用可能な放送品質を検出するためにも使われることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14記載のシステムであって、前記切り換え装置が、前記あらかじめ用意された番組が放送されているときに検出された前記通常番組の利用可能な放送品質がもう一つの所定の値にまで戻ったときに前記通常番組の放送を再開するためにも使われる、ことを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項14記載のシステムであって、さらに:前記挿入されたあらかじめ用意された番組の時間およびコンテンツ種別の統計情報を取得するための統計装置を有することを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記検出装置がキャッシュ制御装置を含むことを特徴とする、請求項14記載のシステム。
【請求項19】
前記切り換え装置がキャッシュ切り換え装置を含むことを特徴とする、請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記通常番組がネットワークを通じて伝送されることを特徴とする、請求項14記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−515108(P2007−515108A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540759(P2006−540759)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052542
【国際公開番号】WO2005/053313
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】