説明

動作アシスト装置及び装着具

【課題】アシスト力を発生させるためのアクチュエータが不要で、利用者が装着している状態においてもアシスト機能の遮断が可能な動作アシスト装置を提供する。
【解決手段】互いに揺動可能な複数の背骨部材3を連結してなり、利用者の背中に装着される背骨ユニット2と、利用者の前屈姿勢時に復元力を発生させる作用状態と復元力を発生させない非作用状態とに切り換え可能で、背骨ユニット2に取り付け可能な弾性部材7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が前屈姿勢からの復元を伴う動作を行う場合に、その動作を補助するための動作アシスト装置、及び動作アシスト装置とともに用いられる装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置として、特許文献1に記載されている筋力補助装置がある。この筋力補助装置は、利用者の背中に装着される背中パッドと、一端が前記背中パッドの上部に固定され、他端が前記背中パッドの下部に固定され、固定された両端間距離を伸縮するアクチュエータとを備えている。前屈姿勢において両端間距離が縮められると、背中や腰部がアクチュエータの伸縮力により伸展され、前屈姿勢から立位への姿勢変化において、筋力の補助がなされる。この筋力補助装置は、リュックサックを背負うようにして背中パッドを背中に装着できるよう構成されているので、比較的簡単に装着できるものとされている。
【0003】
他に類似の装置として、例えば特許文献2に記載されている腰痛プロテクターがある。この腰痛プロテクターは、腰部を保護するため腰部に固定装着される腰部プロテクト板と、腰部プロテクト板と一体的に背骨に沿うように形成され、弾性機能を有する上体サポート板とからなる。このような構成により、腰部プロテクト板により単に腰部を固定して保護するだけでなく、上体サポート板により前屈姿勢からの復元動作を補助可能な腰痛プロテクターとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−339号公報
【特許文献2】特開2004−283423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の筋力補助装置においては、利用者が比較的簡単に装置を装着できるものとされているが、装着状態を維持したまま、アシスト機能を遮断できる構成とはなっていない。これは、特許文献2に記載の腰痛プロテクターにおいても同様である。従って、これらの装置を装着している利用者がアシスト機能を必要としない場合にも、所定の姿勢になるとアシスト力が働き、わずらわしく感じると同時に、逆に動作の妨げとなる場合があった。
【0006】
又、特許文献1に記載の筋力補助装置のように、アクチュエータやアクチュエータを制御する制御部を設けると、装置が大型化・重量化してしまい、装置を装着すること自体が利用者の負担となるおそれがある。さらに、アクチュエータを用いた場合、利用者の動作スピードにアクチュエータがついていけずに、アシストのタイミングが間に合わないおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、アシスト力を発生させるためのアクチュエータが不要で、利用者が装着している状態においてもアシスト機能の遮断が可能な動作アシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る動作アシスト装置の第1特徴構成は、互いに揺動可能な複数の背骨部材を連結してなり、利用者の背中に装着される背骨ユニットと、利用者の前屈姿勢時に復元力を発生させる作用状態と復元力を発生させない非作用状態とに切り換え可能で、前記背骨ユニットに取り付け可能な弾性部材と、を備えた点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、背骨ユニットに取り付け可能な弾性部材を非作用状態に切り換えることにより、動作アシスト装置の装着状態を維持したままアシスト機能を遮断することができる。従って、利用者が一時的にアシスト機能を要しない場合等に、所定の姿勢になるとアシスト力が働いてしまうわずらわしさや、アシスト力が利用者の動作の妨げとなることを回避することができる。
【0010】
又、本特徴構成によれば、背骨ユニットが複数の背骨部材で構成されているので、背骨部材の個数を調整することも可能であり、身長の異なる幅広い利用者に適した動作アシスト装置とすることができる。さらに、複数の背骨部材は互いに揺動可能に構成されているので、利用者の姿勢変化に柔軟に対応することが可能である。
【0011】
第2特徴構成は、前記弾性部材が引張ばねとして構成され、前記引張ばねが利用者の背中に対して前記背骨部材の揺動軸よりも外側に設けられている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、利用者が前屈姿勢の時に、引張ばねが伸長して復元力が発生することによりアシスト機能が発揮される。このように構成すると、引張ばねの配置や個数によって、どの程度のアシスト力をどの部位に対して重点的に発生させるかといった調整が可能となり、動作アシスト装置の汎用性が向上する。
【0013】
第3特徴構成は、前記引張ばねは、利用者が直立姿勢の場合に自然長となるよう構成されている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、利用者が直立姿勢の時には引張ばねに復元力が発生しないため、直立姿勢時に利用者に負担が生じることがない。又、作用状態と非作用状態とを切り換えるために引張ばねの着脱を行う場合、引張ばねが直立姿勢で自然長であれば、直立姿勢における作用状態と非作用状態の切り換えが容易となり、動作アシスト装置の操作性が向上する。
【0015】
第4特徴構成は、前記引張ばねの少なくともいずれか一方の端部と、前記背骨ユニットに着脱可能な係合部材との係脱により、前記作用状態と前記非作用状態とに切り換え可能に構成されている点にある。
【0016】
作用状態と非作用状態とを切り換えるために引張ばねを背骨ユニットに着脱する場合、引張ばねを利用者が直接着脱しなければならないとすると、例えば引張ばねのフック部の先端が手に引っ掛かる等するおそれがある。本特徴構成によれば、利用者は係合部材を操作することにより作用状態と非作用状態に切り換えることができるので、引張ばねを直接操作する必要がなく、安全性や操作性の向上を図ることができる。
【0017】
第5特徴構成は、前記係合部材を作動させるアクチュエータを備えている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、アクチュエータを作動させるだけで引張ばねの端部と係合部材との係脱が可能となるので、より容易に作用状態と非作用状態との切り換えができる。アクチュエータとしては電磁ソレノイド、モータ等を用いることができ、これらを作動ボタンで駆動するようにしたり、利用者の体の傾きを検出する角度センサや加速度センサの検出値に応じて自動的に駆動させたりすることが考えられる。尚、本構成におけるアクチュエータは、特許文献1のアクチュエータとは異なり、係合部材を引張ばねと係脱させるために動かすだけのものであるので、アクチュエータは小型且つ安価なものでよい。
【0019】
第6特徴構成は、前記背骨部材は、利用者が直立姿勢から後方に伸展することを規制する当接部を有している点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、利用者が前屈姿勢から直立姿勢に戻る際に、弾性部材の復元力により直立姿勢を越えて後方に伸展することを回避でき、より適切なアシストを行うことができる。又、一の背骨部材が当接部にて他の背骨部材と当接することにより、背骨部材同士が相互に支持し合うことになるので、直立姿勢を維持するための利用者の負担を軽減できる。
【0021】
本発明に係る動作アシスト装置とともに用いられる装着具の第1特徴構成は、利用者の膝に装着される膝当て部材と、前記動作アシスト装置の下端部と前記膝当て部材との間、及び前記膝当て部材と利用者の足裏との間に亘る非伸縮性のベルト部材と、を備える点にある。
【0022】
例えば、特許文献2の腰痛プロテクターにおいては、弾性機能を有する上体サポート板によるサポート力の反作用を、腰部プロテクト板に設けた取付バンドによって支えている。この取付バンドは腹部に固定されるため、上記サポート力の反作用として腹部に圧迫力が作用し、利用者に圧迫力による痛みや不快感を与えるおそれがあった。
【0023】
そこで、本特徴構成を備えた装着具を用いれば、動作アシスト装置によるアシスト力の反作用を非伸縮性のベルト部材が突っ張ることにより支持することができる。ベルト部材が突っ張ると、膝及び足裏における圧迫力として利用者に負荷がかかるが、これらの部位は比較的圧迫力に強いため、利用者に与える痛みや不快感を低減することができる。従って、本装着具を用いて動作アシスト装置を装着することにより、快適な動作アシスト装置の利用が実現される。
【0024】
第2特徴構成は、前記ベルト部材に少なくとも1つの長さ調整機構を設けてある点にある。
【0025】
装着具のベルト部材がすぐに突っ張るような長さだと、利用者が単に歩行する場合等にもベルト部材による拘束を受け、動作に支障をきたすおそれがある。そこで、本特徴構成のごとく、ベルト部材に長さ調整機構を設けておけば、歩行時等には足の動きを拘束しない程度にベルト部材が緩んだ状態であり、利用者が前屈した場合にはベルト部材が突っ張るような長さに適宜調整することが可能となる。その結果、1つの装着具を体格の異なる複数の利用者で利用することも可能となる。
【0026】
第3特徴構成は、前記ベルト部材は、前記動作アシスト装置の下端部から前記膝当て部材を経由して利用者の足裏に至り、さらに利用者の足裏から前記膝当て部材を経由して前記動作アシスト装置の下端部に至る単一の部材からなる点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、片足につき1本のベルト部材が存在するだけなので、例えば膝から上と下とでベルト部材を別に設けている場合等と比べ、装着具の構成が簡易なものとなる。又、長さ調整機構を設ける場合にも、ベルト部材が上下で別部材となっている場合等は、各ベルト部材に長さ調整機構を設けなければ、ベルト部材全体に亘る長さを調整することができない。しかし、本特徴構成のごとく、ベルト部材が単一の部材で構成されていれば、1つの長さ調整機構を設けるだけで足全体に亘る長さの調整が可能となるので、長さ調整も容易に行うことができる。
【0028】
第4特徴構成は、前記ベルト部材は、前記膝当て部材にて摺動可能に構成されている点にある。
【0029】
本特徴構成によれば、利用者の動作に応じてベルト部材が自在に膝当て部材において摺動するので、ベルト部材が利用者の足の動きに柔軟に対応することができ、装着具を装着した状態においても利用者の動作の自由度を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】動作アシスト装置を装着した利用者の直立姿勢時の側面図である。
【図2】動作アシスト装置を装着した利用者の直立姿勢時の背面図である。
【図3】動作アシスト装置を装着した利用者の前屈姿勢時の側面図である。
【図4】動作アシスト装置の断面図である。
【図5】動作アシスト装置の分解斜視図である。
【図6】動作アシスト装置の組立斜視図である。
【図7】別実施形態に係る背骨部材の斜視図である。
【図8】動作アシスト装置及び装着具を装着した利用者の直立姿勢時の正面図である。
【図9】動作アシスト装置及び装着具を装着した利用者の直立姿勢時の背面図である。
【図10】動作アシスト装置及び装着具を装着した利用者の直立姿勢時の側面図である。
【図11】動作アシスト装置及び装着具を装着した利用者の前屈姿勢時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る動作アシスト装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1〜図3に示すように、本発明に係る動作アシスト装置1は、利用者が肩ベルト5を肩部に固定し、腰ベルト6を腰部に固定することにより、背骨ユニット2を背負うようにして装着できるように構成されている。又、背骨ユニット2には、上下方向に伸縮可能な引張ばね7を取り付けることができるように構成されている。
【0033】
図3に示すように、利用者が動作アシスト装置1を装着した状態で前屈姿勢をとると、引張ばね7が伸長して復元力が生じる。この復元力が背中を支点として作用することにより、前屈姿勢から直立姿勢に戻る際のアシスト力(図3のトルクT)となる。従って、物体Bを持ち上げる動作を行う場合に、動作アシスト装置1のアシスト力により利用者の負担が軽減されることになる。尚、このような動作アシスト装置1を取り付けることができる装着ウェアを用意すれば、動作アシスト装置1をより容易に着脱することができる。
【0034】
背骨ユニット2の詳細な構成を説明する。背骨ユニット2は、上から順に配置される背骨部材3A〜3Eを備えてなる。このうち、最上部に配置される背骨部材3Aに肩ベルト5が取り付けられ、最下部に配置される背骨部材3Eに腰ベルト6が取り付けられる。背骨部材3A及び3Eは側面視にてL字状に形成されており、背中や腰部に接する部分が比較的長く構成されているので、動作アシスト装置1を安定的に装着することができる。背骨部材3A及び3Eの間に配置される背骨部材3B〜3Dは略直方体形に形成されている。以降、背骨部材3A〜3Eを総括的に示す場合には単に背骨部材3と表記する。
【0035】
図4〜図6に示すように、背骨部材3A〜3Dの下端部且つ背中側の両側面には下方に延出する一対の規制部3aが形成されている。一の背骨部材3の規制部3aの先端は、下方に隣接する背骨部材3と揺動軸4によって連結され、互いに揺動可能となるように構成されている。従って、図3に示すように利用者が前屈姿勢をとった場合にも、各背骨部材3が背中側に設けた揺動軸4周りに揺動し、背骨ユニット2が背中に沿うように変形することができる。又、各一対の規制部3aの間に、下方に隣接する背骨部材3が入り込むように構成されているので、背骨部材3が背幅方向にずれたり、傾いたりすることが抑制される。
【0036】
図5及び図6に示すように、各背骨部材3には引張ばね7を収納するばね収容部3bが形成されている。本実施形態では、引張ばね7を背幅方向に2本設けているので、ばね収容部3bも背幅方向に2つずつ形成されている。ばね収容部3bに収容される引張ばね7の上フック部7aは、背骨部材3Aに挿入固定される係止部材8に係止され、引張ばね7の下フック部7bは、背骨部材3Eに着脱可能な係合部材9に係合できるように構成されている。係合部材9はピン状の部材であり、背骨部材3Eの側面から容易に着脱することができる。
【0037】
ばね収容部3bは利用者の背中に対して揺動軸4よりも外側に設けられているので、前屈姿勢の時に各背骨部材3が揺動軸4周りに揺動することにより、ばね収容部3bに収容されている引張ばね7は直立姿勢の時よりも伸長する(図3参照)。その結果、引張ばね7に復元力が発生し、この復元力が利用者が前屈姿勢から直立姿勢に戻る際のアシスト力となる。
【0038】
図4は、利用者が直立姿勢の時の動作アシスト装置1の断面図を示したものである。各ばね収容部3bが連なって、1つの長い空間が形成され、その中に引張ばね7が配置される。尚、図4では、各ばね収容部3bが連なって側面視で直線状の空間となっているが、必ずしも直線状の空間である必要はなく、引張ばね7の伸縮に支障がなければ、円弧状等の他の形状であってもよい。
【0039】
各背骨部材3の上下面のうち、隣接する背骨部材3と対向する面は当接部3cとして構成されている。当接部3cは、利用者が直立姿勢の時には、対向する当接部3cが当接状態となって、直立姿勢から後方に伸展することを規制する。又、一の背骨部材3が当接部3cにて他の背骨部材3と当接することにより、背骨部材3同士が相互に支持し合うことになり、直立姿勢を維持するのが容易となる。
【0040】
引張ばね7は、利用者が直立姿勢の時に自然長であり、且つ下フック部7bが係合部材9の挿入箇所に位置するよう構成されている。従って、利用者が直立姿勢の時には、係合部材9を背骨部材3Eに着脱するだけで、引張ばね7(下フック部7b)と係合部材9とを係脱することができる。
【0041】
即ち、係合部材9を背骨部材3Eに挿入し、引張ばね7(下フック部7b)と係合部材9とを係合状態とすることにより、利用者が前屈姿勢の場合に引張ばね7の復元力によりアシスト可能な作用状態とすることができる。一方、係合部材9を背骨部材3Eから引き抜くと、引張ばね7の下フック部7bが遊び状態となり、利用者が前屈姿勢になっても引張ばね7が伸長しないので、復元力が発生することがなく、アシスト機能を発揮しない非作用状態となる。
【0042】
以上のごとく、動作アシスト装置1を装着したままでも、係合部材9を背骨部材3Eから引き抜くだけでアシスト機能を遮断することができる。従って、利用者が一時的にアシスト機能を要しない場合等に、所定の姿勢になるとアシスト力が働いてしまうわずらわしさや、アシスト力が利用者の動作の妨げとなることを回避することができる。
【0043】
尚、本実施形態においては、引張ばね7は背骨を間に挟むようにして、左右1本ずつ配置されている。しかし、引張ばね7の数や配置はこれに限らない。引張ばね7を背中に沿った方向に複数に分割して、各引張ばね7を作用状態と非作用状態に切り換え可能に構成すれば、アシストする部位を調整することも可能である。
【0044】
又、背幅方向に複数設けた引張ばね7のうち、係合部材9と係合する引張ばね7の数を調整できるようにすれば、アシスト力を適宜変更することも可能である。例えば、本実施形態において、係合部材9を半分まで背骨部材3Eに挿入して、1本の引張ばね7のみを作用状態とすれば、アシスト力を半分にすることができる。尚、係合部材9が背骨部材3Eから脱落することを防止するため、係合部材9と背骨部材3Eとの間に適当な脱落防止機構を設けると好適である。
【0045】
次に図8〜図11に基づいて、装着具20を用いて動作アシスト装置1を装着した実施形態について説明する。図8〜図10はそれぞれ利用者が直立姿勢の場合の時の正面図、背面図、側面図であり、図11は利用者が前屈姿勢の場合の側面図である。
【0046】
本実施形態における動作アシスト装置1はジャケット状の胴衣具10を備えており、通常のジャケットのように着衣することによって、利用者は容易に動作アシスト措置1の装着ができる。背骨ユニットや弾性部材を備えた動作アシスト装置1の中核部分はケーシング11に収容され、胴衣具10の背面に一体的に取り付けられている。ケーシング11を設けることにより、背骨部材間の間隙や弾性部材に異物が挟まって、動作アシスト装置1の作動に支障が生じることを防止することができる。尚、動作アシスト装置1の中核部分の構成は前実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0047】
胴衣具10のうち、背面中央部10a、背面中央部10aから両肩に亘る肩周囲部10b、及び腰部10cには、動作アシスト装置1の重量や利用者の動作に応じた大きな負荷がかかりやすい。従って、これらの部位においては、高強度繊維材を用いたり、補強布を設けることにより、胴衣具10に補強を施しておくことが望ましい。
【0048】
動作アシスト装置1を利用することにより、前屈姿勢の利用者の上体をサポートし、主に腰部にかかる負担を軽減することができるが、腰部にて軽減できた負荷を何れかの部位で支持する必要がある。本実施形態における装着具20は、このような負荷を主に膝と足裏で支持することにより、利用者の痛みや不快感を抑制することができるものである。
【0049】
装着具20は非伸縮性のベルト部材21と膝当て部材22とからなる。ベルト部材21は片足ごとに1本ずつ設けられており、ベルト部材21の両端は胴衣具10の腰部10c(動作アシスト装置1の下端部)に取り付けられている。膝当て部材22は左右のベルト部材21に1つずつ設けられており、固定ベルト22aにより膝に固定される。膝当て部材22の裏面には、ベルト部材21を挿通するための図示しない挿通孔が形成されている。ベルト部材21は挿通孔に通した状態において、膝当て部材22に対して摺動できるように構成されている。
【0050】
装着具20は、ベルト部材21が胴衣具10の腰部10cから膝当て部材22を経由して利用者の足裏に至り、さらに利用者の足裏から膝当て部材22を経由して胴衣具10の腰部10cに至るように装着される。ベルト部材21は、直立姿勢において少したるみが生じる程度の長さにしておけば、歩行時等にベルトが突っ張って利用者の動作に支障をきたすことを回避できる。このため、利用者が装着具20を装着した後に、ベルト部材21を適度な長さに調整するための長さ調整機構23があると好適である。長さ調整機構23としては、一般的なベルト留め具やマジックテープ(登録商標)等を用いることができる。
【0051】
利用者が動作アシスト装置1を装着した状態において前屈を行うと、利用者を直立姿勢に戻そうとするアシスト力が働く。この時、図11に示すように、動作アシスト装置1の下端部、すなわち胴衣具10の腰部10cに上方への引っ張り力Aが発生するため、動作アシスト装置1が利用者の背中から離れてしまうことを防止するために、引っ張り力Aに対抗する力が必要となる。
【0052】
そこで、本実施形態のごとく非伸縮性のベルト部材21を備えた装着具20を装着しておけば、ベルト部材21が突っ張って発生する引っ張り力Bにより引っ張り力Aを相殺することができる。又、ベルト部材21は膝を支点としているため、膝から斜め上方に引っ張り力Cが、膝から斜め下方に引っ張り力Dが作用し、これらの合力として膝押し力Eが働く。さらに、ベルト部材21は足裏を支点としているため、足裏押し力Fが働く。
【0053】
以上のごとく、装着具20を装着することよって、引っ張り力Aによって動作アシスト装置1が利用者の背中から離れることを防止し、利用者には膝押し力Eと足裏押し力Fが作用する。膝も足裏も圧迫力に対して比較的強い部位であるので、例えば引っ張り力Aを利用者の腹部、大腿、脛などで支える場合と比べて、利用者の負担を軽減し、痛みや不快感を与えにくい。又、上述のように、ベルト部材21を直立姿勢において少したるみが生じる程度の長さにしておけば、歩行時等にベルト部材21が突っ張って利用者の動作に支障をきたすことを回避できる。
【0054】
尚、本実施形態においては、ベルト部材21を片足ごとに1本ずつ設ける構成としたが、ベルト部材21をどのように構成するかは適宜変更が可能である。例えば、胴衣具10の腰部10cから膝当て部材22を経由して胴衣具10の腰部10cに戻るものと、膝当て部材22から利用者の足裏を経由して膝当て部材22に戻るものとの2部材に分割するなど、他の形態もとり得る。
【0055】
[別の実施形態1]
上記実施形態においては、引張ばね7を背骨部材3に形成したばね収容部3bに上下方向から挿入するよう構成していたが、図7に示すように、背骨部材3の背面にカバー部3dを設けることも可能である。カバー部3dを取り外した状態では、引張ばね7を広い開口部を有する背面から背骨部材3の内部に配置することができるので、引張ばね7の取り付けが容易となる。
【0056】
[別の実施形態2]
上記実施形態においては、係合部材9を利用者が着脱することを前提としたが、係合部材9を電磁ソレノイドやモータ等のアクチュエータで作動するように構成すれば、より容易に作用状態と非作用状態との切り換えができる。アクチュエータは、作動ボタンで駆動するようにしたり、利用者の体の傾きを検出する角度センサや加速度センサの検出値に応じて自動的に駆動させたりすることが考えられる。
【0057】
[別の実施形態3]
上記実施形態においては、引張ばね7を利用者の背中に対して背骨部材3の揺動軸4よりも外側に設けることにより、利用者が前屈姿勢の時に復元力を発生させる構成としたが、他の構成を採用することもできる。例えば、背骨部材3と揺動軸4との間にねじりコイルばねを設けたり、利用者の背中に対して揺動軸4よりも内側に圧縮ばねを設けたりして、利用者が前屈姿勢の時に復元力を発生させることも可能である。又、引張ばね7の代わりにゴム等の弾性部材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、利用者が前屈姿勢からの復元を伴う作業を行う場合に、利用者の動作を補助可能な動作アシスト装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 動作アシスト装置
2 背骨ユニット
3A〜3E 背骨部材
3c 当接部
4 揺動軸
7 引張ばね(弾性部材)
7b 下フック部(引張ばねの端部)
9 係合部材
20 装着具
21 ベルト部材
22 膝当て部材
23 長さ調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに揺動可能な複数の背骨部材を連結してなり、利用者の背中に装着される背骨ユニットと、
利用者の前屈姿勢時に復元力を発生させる作用状態と復元力を発生させない非作用状態とに切り換え可能で、前記背骨ユニットに取り付け可能な弾性部材と、
を備えた動作アシスト装置。
【請求項2】
前記弾性部材が引張ばねとして構成され、前記引張ばねが利用者の背中に対して前記背骨部材の揺動軸よりも外側に設けられている請求項1に記載の動作アシスト装置。
【請求項3】
前記引張ばねは、利用者が直立姿勢の場合に自然長となるよう構成されている請求項2に記載の動作アシスト装置。
【請求項4】
前記引張ばねの少なくともいずれか一方の端部と、前記背骨ユニットに着脱可能な係合部材との係脱により、前記作用状態と前記非作用状態とに切り換え可能に構成されている請求項2又は3に記載の動作アシスト装置。
【請求項5】
前記係合部材を作動させるアクチュエータを備えている請求項4に記載の動作アシスト装置。
【請求項6】
前記背骨部材は、利用者が直立姿勢から後方に伸展することを規制する当接部を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の動作アシスト装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の動作アシスト装置とともに用いられる装着具であって、
利用者の膝に装着される膝当て部材と、
前記動作アシスト装置の下端部と前記膝当て部材との間、及び前記膝当て部材と利用者の足裏との間に亘る非伸縮性のベルト部材と、を備える装着具。
【請求項8】
前記ベルト部材に少なくとも1つの長さ調整機構を設けてある請求項7に記載の装着具。
【請求項9】
前記ベルト部材は、前記動作アシスト装置の下端部から前記膝当て部材を経由して利用者の足裏に至り、さらに利用者の足裏から前記膝当て部材を経由して前記動作アシスト装置の下端部に至る単一の部材からなる請求項7又は8に記載の装着具。
【請求項10】
前記ベルト部材は、前記膝当て部材にて摺動可能に構成されている請求項7〜9のいずれか一項に記載の装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−24557(P2012−24557A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45253(P2011−45253)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】