動力付き二輪車の転倒防止装置
【課題】強固に動力付き二輪車を固定することができる転倒防止装置を提供する。
【解決手段】本発明は駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置3に係るものである。本発明は、揺動可能な下方保持部19と、動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部43と、を有し、下方保持部は、一方の揺動端において前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部31を備え、かつ前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成される。
【解決手段】本発明は駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置3に係るものである。本発明は、揺動可能な下方保持部19と、動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部43と、を有し、下方保持部は、一方の揺動端において前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部31を備え、かつ前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力付き二輪車の駐車時における転倒を防止する転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駐車違反に対する取締りが強化され、動力付き二輪車についても駐車違反が適用される場合が増加している。駐車違反の取締りを強化するには、その一方で動力付き二輪車の駐車場が整備されていることが求められるが、都心部等の土地価格が高騰している地域では、新たに動力付き二輪車用の駐車場を確保することが容易ではない。
そこで、都心部等に多く設置されている空間を有効に利用することができるために都心部等に多く設置されている機械式立体駐車場を、動力付き二輪車用の駐車場として活用することが考えられる。
【0003】
しかし、動力付き二輪車は、4輪自動車と比べて駐車時の安定性が悪く、機械式立体駐車場にそのまま駐車したのでは、駐車装置の緊急停止時における衝撃または地震による振動等により転倒し落下する危険がある。そのため、動力付き二輪車を、機械式立体駐車場に安定に駐車するための二輪車固定装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された二輪車固定装置は、動力付き二輪車の前輪を前方向からおよび後輪を後ろ方向から挟み込むように、それぞれいずれも断面V字状の前輪保持部材および後輪保持部材によって押圧して拘束保持する。また、特許文献1に記載された二輪車固定装置は、同時に、シートを上方からシート押さえ部材により押し込み、前輪保持部材、後輪保持部材およびシート押さえ部材の3部材による3箇所で動きを制限して、動力付き二輪車をパレットまたは留置台に固定する。
【0006】
しかし、動力付き二輪車のシートは、通常発泡ポリウレタン等の弾性変形し易い素材で製作されている。そのため、シート押さえ部材が強固にシートを押さえ込むことが難しく、揺れの大きな地震が発生した場合、シート押さえ部材がシートから外れて動力付き二輪車が転倒、落下するおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、強固に動力付き二輪車を固定することができる転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る動力付き二輪車の転倒防止装置は、駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置であって、揺動可能な下方保持部と、前記動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部と、を有し、前記下方保持部は、一方の揺動端において前記前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前記前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部を備え、かつ前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成される。
【0008】
好ましくは、前記下方保持部の揺動を前記他方の揺動端において制限する揺動防止部を有する。
好ましくは、前記前方係止部は、収容する前記前輪に向けて移動または揺動するように形成される。
好ましくは、前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能な前記下方保持部を、その移動における任意の位置で移動不能にする固定手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、強固に動力付き二輪車を固定することができる転倒防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は転倒防止装置の正面図である。
【図2】図2は前輪保持装置の斜視図である。
【図3】図3は前輪移動部の斜視図である。
【図4】図4は台座固定部の周辺の斜視図である。
【図5】図5は揺動防止部の周辺の斜視図である。
【図6】図6は前輪固定部の斜視図である。
【図7】図7は前輪保持装置が前輪を保持した斜視図である。
【図8】図8はハンドル保持装置の斜視図である。
【図9】図9はグリップ押圧部の周辺の斜視図である。
【図10】図10は他の形態の前輪保持装置の斜視図である。
【図11】図11は前輪固定部の斜視図である。
【図12】図12は前輪保持装置が二輪車を固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は転倒防止装置1の正面図、図2は前輪保持装置3の斜視図、図3は前輪移動部9の斜視図、図4は台座固定部18の周辺の斜視図、図5は揺動防止部20の周辺の斜視図、図6は前輪固定部10の斜視図、図7は前輪保持装置3が前輪を保持した斜視図、図8はハンドル保持装置4の斜視図、図9はグリップ押圧部54周辺の斜視図である。
図1において、転倒防止装置1は、フレーム2、前輪保持装置3およびハンドル保持装置4からなる。
【0012】
フレーム2は、転倒防止装置1を立体駐車場等の留置台またはパレットに固定するためのものである。フレーム2は、いずれも角型鋼で形成された基部5、支柱6,6および加重アーム支持部7からなる。基部5は、角型鋼がコ字状となるように溶接されて形成される。転倒防止装置1においては、基部5が留置台またはパレットに固定されて転倒が防止される。支柱6は、基部5のコ字状における直交する角(かど)から垂直に2本立てられている。2本の支柱6,6の間隔は、平均的な動力付き二輪車の車幅(ハンドル幅)程度である。
【0013】
以下、動力付き二輪車を「二輪車」ということがある。
加重アーム支持部7は、2本の支柱6,6の上端間に渡された梁と、梁から基部5が伸びた方向と同じ方向に伸びた部材とで形成される。加重アーム支持部7は、その先端部分で後に説明する加重アーム56を回動可能に支持する。
フレーム2には、前輪保持装置3およびハンドル保持装置4が取り付けられている。
【0014】
前輪保持装置3は、台部8、前輪移動部9および前輪固定部10からなる。
以下の説明において、前輪保持装置3は、前輪固定部10が設けられた側(図2における左側)を前とし、前輪移動部9が設けられた側を後とする。
台部8は、前輪移動部9および前輪固定部10を支持し、これらをフレーム2と一体化するものである。台部8は、形状が略長方形の前輪移動部用基台11、および前輪移動部用基台11の前側の端に設けられ上方に伸びた短柱状の前輪固定部用基台12からなる。
【0015】
以下、前輪移動部用基台11が置かれた面(通常水平面)における、前後方向に直交する方向を幅方向というものとする。
前輪移動部用基台11は、幅方向の両端における後方側に、いずれも前後方向に伸びる肉厚の板状の案内板13,13を有する。案内板13,13は、いずれも一方の表面にその長手方向に伸びた幅広の溝14が設けられ、それぞれの溝14,14が対向するように内側を向けてかつ互いに平行に配されている。
【0016】
一方の案内板13の外側には、案内板13に沿うように前輪移動部用基台11の前後方向に、ラック15が歯を案内板13の上方に位置させて固定されている。なお、ラック15は、断面が矩形の棒の1つの面が歯切りされたものである。
他方の案内板13の外側には、前輪移動部用基台11の前後方向長さに略等しい長さの丸棒16が長手方向に配されている。丸棒16は、後に説明するスライダ23を貫通して、前輪移動部用基台11にその両端が固定されている。
【0017】
前輪固定部用基台12は、その上端に前輪固定部10が固定されている。
前輪移動部9は、台座部17、台座固定部18、下方保持部19および揺動防止部20からなる。
台座部17は、図3に示されるように、幅方向に伸びた2つの角パイプ21,21、および角パイプ21,21に直交してそれぞれの角パイプ21,21の端を連結する板状の2つの被案内部22a,22bにより矩形状に形成されている。被案内部22a,22bは、いずれも外側に回転自在な車輪を複数有する。車輪の外径は案内板13,13に設けられた溝14,14の幅よりも小さい。被案内部22a,22bが、それぞれの車輪が溝14,14に嵌め入れられて、車輪が溝14,14の下方側面を走行することにより、台座部17は、前輪移動部用基台11の前後方向に自在に移動する。
【0018】
丸棒16側に配された被案内部22bには、その上部の外側の面に、スライダ23が取り付けられている。スライダ23は、前後方向に貫通する孔を備えており、孔に丸棒16を摺動可能に貫通させている。したがって、台座部17は、車輪が溝14,14に案内されるのに加えてスライダ23が丸棒16に案内されるので、極めて円滑に前後に移動することができる。
【0019】
台座固定部18は、ラック15側に配された被案内部22aに固定されている。図4によく示されるように、台座固定部18は、トグルクランプ24、小ラック部25およびハンドルロック26からなる。トグルクランプ24は、ベース27を介して被案内部22aの上部に固定される。トグルクランプ24は、ハンドル28を押し下げると作用端が下降する型式のもので、例えばインターネット(URL:http://www.kakutakogyo.com/clamp/type_b.html)に掲載されているように公知のものである。
【0020】
小ラック部25は、トグルクランプ24の作用端であり、その先端にラック15に噛み合う歯を有する。小ラック部25は、ハンドル28が引き上げられると、その先端の歯とラック15の歯との噛み合わせが解除され、台座固定部18が一体化された台座部17は、前輪移動部用基台11の長手方向への移動が可能となる。その逆に、ハンドル28が押し下げられたときには、小ラック部25の歯がラック15の歯と噛み合わされることにより、台座部17の移動が制限される。
【0021】
ハンドルロック26は、ハンドル28の両側に設けられた1対の棒支持部29,29および丸棒であるロック棒30で形成される。棒支持部29,29は、ロック棒30が貫通可能な孔を有する。それぞれの孔は、その中心がハンドル28の伸びた方向に直交する同一の線上にある。ハンドルロック26は、ハンドル28が押し下げられた状態で、ハンドル28よりも上方にある棒支持部29,29の孔にロック棒30を貫通させることにより、ハンドル28が上方に回動するのを妨げ、小ラック部25の歯とラック15の歯との噛み合わせが解除されるのを防止する。
【0022】
下方保持部19は、後方係止部31、車輪支持部32および1対の側方部33,33からなる。
後方係止部31は、長方形の板状部材が、長手方向を略3つに等分割するように曲げられ、それぞれ隣り合う面が鈍角をなす形状を有する。つまり、後方係止部31は、長手方向に直行する断面が、台形から下底辺を除いた形状である。
【0023】
車輪支持部32は、後方係止部31と略同一の形状を有する。
側方部33は、側面視の(図3において左側(又は右側)から見た)形状が、鈍角三角形における斜辺を凹状の曲線に置き換え、斜辺を除く2辺を一方の辺の長さが他方の辺の長さよりも長くした形状を有する側方面部34と、側方面部34の2つの斜辺を折り線として側方面部34と鋭角を形成して連続する底面部78とからなる。底面部78は、側方面部34における一方の斜辺に鋭角を形成して連続する部分と他方の斜辺に鋭角を形成して連続する部分とからなり、この2つの部分は、鈍角を形成して折り線により連続する。
【0024】
1対の側方部33,33は,側方面部34と底面部78とで形成される折り線を外側にして、間隔を空けて平行に並び、2つの折り線の長さの長い方の先端近傍には車輪支持部32が開放側を上にして固定されている。2つの折り線の短い方の先端近傍には、後方係止部31が開放側を上にして固定されている。また、1対の側方部33,33は、底面部78,78の折り線で分けられた2つの部分のうち幅方向に互いに向き合う部分は、いずれも同一の面内にあるように、構成されている。
【0025】
下方保持部19において、1対の側方部33,33は、その底面部78における2つの部分間の折り線が1つの直線上になく、その延長が後方係止部31側において鈍角で交差する。それぞれのこの折り線には、揺動軸35,35が固定されている。下方保持部19は、車輪支持部32を前側に位置させて、揺動軸35,35により台座部17における後側の角パイプ21に揺動可能に一体化されている。
【0026】
下方保持部19は、後方係止部31の中央の面36の後側端縁が、前輪保持装置3が置かれた面(以下「載置面」という)に接する程度にまで後側に揺動可能となっている。このとき、後方係止部31の中央の面36が載置面と平行または若干の角度を有するように、揺動軸35,35の位置および揺動軸35,35から後方係止部31までの距離が決定される。下方保持部19の前側への揺動は、車輪支持部32の下面が前側の角パイプ21に当接することにより制限される。また、揺動軸35,35から車輪支持部32の後側端までの距離は、2つの角パイプ21,21の間の空間距離よりも大きい。
【0027】
車輪支持部32におけるスライダ23側の面には、矩形板状の係止板37が溶接により固定されている。係止板37は、下方保持部19がその前側への揺動を前側の角パイプ21により係止されたとき、載置面と略平行となるように取り付けられている。
揺動防止部20は、前側の角パイプ21における被案内部22bに直近の内側に固定され、トグルクランプ38およびハンドルロック39からなる。
【0028】
トグルクランプ38は、ハンドル40を水平位置と垂直位置との間で回動させて作用端を回動させる公知のものである。トグルクランプ38は、ハンドル40の回動面(回動させるときの軌跡の面、以下の「回動面」も同意である)が幅方向(丸棒16に直行する方向)となるように配され、ハンドル40が水平位置のときハンドル40が前輪移動部用基台11の外に位置する。また、トグルクランプ38は、ハンドル40が垂直位置になったときに、作用端が前側に揺動した下方保持部19の係止板37の上面を下方に押圧するように取り付けられている。係止板37の上面がトグルクランプ38作用端に押圧されているとき、下方保持部19は、後側への揺動が制限される。
【0029】
ハンドルロック39は、ハンドル40の回動軸の両側に設けられた1対の棒支持部41,41および丸棒であるロック棒42で形成される。棒支持部41,41は、ロック棒42が貫通可能な、軸心を共通する孔を有する。ハンドルロック39は、ハンドル40が垂直位置にあるときに、それぞれの孔にロック棒42を貫通させることによりハンドル40が水平位置方向に回動するのを妨げ、トグルクランプ38による下方保持部19に対する揺動の制限を維持させる働きをする。
【0030】
前輪固定部10は、前方係止部43および前方押圧部44からなる。
前方係止部43は、長方形の板状部材が、断面形状が凹状台形となるように2つの折り線で曲げられて形成されている。2つの折り線に挟まれた部分を底部45、底部45を挟む折り線から互いに離れるように斜めに拡がる2つの部分をいずれも側面部46,46という。
【0031】
前方押圧部44は、トグルクランプ47、誘導部48およびハンドルロック49からなる。
トグルクランプ47は、ハンドル52を水平位置と垂直位置との間で回動させて作用端を押し出し、引き戻す往復移動させる公知のものである。トグルクランプ47は、作用端が載置面に平行に移動するように前輪固定部用基台12の上端に取り付けられている。
【0032】
誘導部48は、断面が矩形の棒状の連結棒50、および連結棒50を摺動可能に取り囲む案内部51で形成される。連結棒50は、一端がトグルクランプ47の作用端に結合されている。連結棒50の他端は、前方係止部43における底部45の外面に、前輪固定部10の2つの折り線が載置面に垂直になるように固定されている。図6に示される形態では、前輪固定部10はその上部で連結棒50に固定されるが、その固定位置は、前輪固定部用基台12の高さによって、任意に変更することができる。
【0033】
前方係止部43は、ハンドル52を垂直位置から水平位置に回動させることにより、載置面から特定の高さを後方に向けて水平に移動する。
ハンドルロック49は、台座固定部18におけるハンドルロック26および揺動防止部20におけるハンドルロック39と略同一のものであり、ハンドル52を水平位置に維持させるように構成されている。
【0034】
前輪保持装置3は、前輪固定部10側(前側)をコ字状の基部5の角側に配し、基部5における対向する2つの角形綱の間に配されて、台部8がフレーム2に固定される。
以下、前輪保持装置3における前後を、転倒防止装置1においても前後というものとする。
ハンドル保持装置4は、押圧アーム53、グリップ押圧部54、シート押圧部55および加重アーム56等からなる。
【0035】
押圧アーム53は、途中で屈曲した2つの角型鋼57,57が適度な間隔を空けて平行に並べられ、角型鋼57,57の両端および中間部分が鋼材により連結されて形成される。押圧アーム53における角型鋼57,57の適度な間隔は、平均的な動力付き二輪車における両グリップ間の距離である。押圧アーム53は、角型鋼57,57の屈曲部が上になるようにして、その一端部が支柱6,6に、回動軸77,77を介して回動可能に支持されている。また、押圧アーム53は、支柱6,6と複数のバランスバネ58,58で結ばれ、自重により先端側が載置面に向けて回動するのを回避している。
【0036】
グリップ押圧部54は、支持回動部59、1対のグリップ保持部60,60およびグリップ保持部間調節部61からなる。
支持回動部59は、円管で形成された軸部材62、角管で形成された1対の押圧部材63,63および調整棒支持材64からなる。
軸部材62は、前後方向に直交して配置され、押圧アーム53(それぞれの角型鋼57,57)の下側に回動可能に支持される。
【0037】
押圧部材63,63は、軸部材62の互いに異なる端に回動可能に接続されている。押圧部材63,63は、回動面が同一面内にあり、軸部材62となす角度が変更されるように回動する。押圧部材63,63は、中間部分に丸棒が円形に曲げられたリング65,65が取り付けられている。
調整棒支持材64は、押圧部材63よりも短い角管で形成されている。調整棒支持材64は、軸部材62の略中央に一端が溶接され、押圧部材63の回動面と同一面上において軸部材62に直交する方向に伸びている。
【0038】
グリップ保持部60は、二輪車のハンドルグリップを内部に収容可能な大きさの円筒66が、押圧部材63の軸心回りに回転可能であってかつ押圧部材63,63に直交する軸廻りに回動可能に形成された部分である。
グリップ保持部間調節部61は、軸部材62よりも長い棒材であって、全長に渡り雌ネジが設けられている。グリップ保持部間調節部61は、調整棒支持材64の先端に、軸部材62と平行に固定されている。グリップ保持部間調節部61は、その両側がそれぞれ押圧部材63,63のリング65,65を貫通し、貫通部分よりも先端側にそれぞれ高ナット67,67が螺合されている。
【0039】
シート押圧部55は、2つの角形鋼が平行に間隔を空けてそれぞれの中間部分が鋼材により連結されて形成されている。2つの角形鋼の間隔は、押圧アーム53における2つの角形鋼57,57の間隔に略等しい。シート押圧部55は、それぞれの角形鋼の一端が押圧アーム53のそれぞれの角形鋼57,57の先端に回動可能に連結されている。シート押圧部55におけるそれぞれの角形鋼の他端は、たるみの程度が調節可能なスリングベルト68で連結されている。
【0040】
加重アーム56は、細長い長方形の枠として形成される。3辺は角形鋼が使用され、短辺の一方には円管が使用されている。加重アーム56は、その長手方向が前後方向になるようにして、その前側の鉛管で形成された辺が、加重アーム支持部7の後方端に回動可能に支持されている。また、加重アーム56は、長手方向(前後方向)の中間部分が、押圧アーム53の後方端の上部に、押圧アーム53に対して揺動および前後移動可能に支持されている。加重アーム56の後方端の下側には、リング69が取り付けられている。
【0041】
押圧アーム53の下方には、後輪誘導部70が配されている。後輪誘導部70は、2つの山形鋼が平行になるようにして前後方向に並べて形成されている。2つの山形鋼の間隔は、動力付き二輪車の平均的な後輪の接地面近傍の幅より若干大きい。
後輪誘導部70の後方側の端には、ワイヤ71の一端および他端が固定されている。ワイヤ71は、十分に長くかつ長さの調節が可能となっており、その中間部分には、フックがワイヤ71に沿って移動可能に取り付けられている。
【0042】
次に、二輪車を転倒防止装置1に固定する手順を説明する。
はじめに、前輪移動装置9を後ろ側の移動端に移動させ、台座固定部18のトグルクランプ24をクランプ状態とする、つまり台座部17が移動しないように小ラック部25の先端の歯とラック15の歯とを噛み合わせておく。
また、前輪保持装置3の前方押圧部44におけるトグルクランプ47、および揺動防止部20におけるトグルクランプ38のクランプ動作を解除した状態とする。
【0043】
下方保持部19を後側に揺動させ、二輪車の前輪を後方係止部31に乗り上げさせて、2つの角パイプ21,21間まで押し入れる。このとき、前輪が後輪誘導部70を通過するようにすると、円滑に後方係止部31に導くことができ、かつ円滑に後輪が後輪誘導部70の2つの山形鋼間に導かれる。下方保持部19は、進入した前輪により前方側に揺動する。
【0044】
この段階で、二輪車は、下方保持部19の側方部33,33に前輪の両側方が支持されるので、やや不安定ではあるが自立する。
続いて、台座固定部18におけるトグルクランプ24のクランプを解除し、二輪車を前方に押して移動させる。このとき、前輪は、2つの角パイプ21,21間にあって、クランプが解除された前輪移動部9を前方に移動させる。前輪移動部9の前方への移動は、台座部17における被案内部22a,22bの車輪が案内板13,13の溝14,14を転動し、かつスライダ23が丸棒16に案内されることにより、安定して行われる。
【0045】
前輪が前輪固定部10の前方係止部43に当接して前輪移動部9の移動が停止されると、台座固定部18のトグルクランプ24をクランプ状態にして前輪移動部9の移動を制限する。また、このとき、係止板37は載置面と平行になるので、揺動防止部20のトグルクランプ38をクランプ状態にし、下方保持部19の揺動を制限する。
次に、前方押圧部44のトグルクランプ47をクランプ状態とする。このとき、トグルクランプ47の作用端は後方に移動し、前方係止部43を前輪側に押し出す。前輪が前方係止部43の凹状部分に収容された後に行われるトグルクランプ47による一押しが前輪を底部45側に押し入れ、前方係止部43が前輪をより強く固定するのに効果的である。また、この一押しにより押し出された前方係止部43は、前輪を後方に押し戻す。その結果、前輪は、前方係止部43と後方係止部31とにきつく挟まれ、二輪車の自立がより安定化する。なお、台座固定部18のトグルクランプ24、揺動防止部20のトグルクランプ38および前方押圧部44のトグルクランプ47のクランプ状態が振動等により解除されることがないように、それぞれのロック棒30,42を棒支持部の2つの孔に貫通させ、ハンドル28等の回動によるクランプの解除を防止する。
【0046】
以上の作業により、二輪車は、前輪が保持されることによって転倒防止装置1に固定される。
続いて、グリップ保持部60,60の円筒66,66内に、二輪車のハンドルグリップを収容する。このとき、グリップ保持部60,60間の距離がハンドルグリップを収容できないほどに長いまたは短い場合は、押圧部材63,63を回動させてグリップ保持部60,60間の距離を適当に距離に調節する。ハンドルグリップを円筒66,66内に収容した後、押圧部材63,63が外方に向け回動しないように、グリップ保持部間調節部61の両端の高ナット67,67を移動させて、ハンドルグリップが円筒66,66から抜け出るのを防止する。
【0047】
なお、グリップ保持部60,60は、2つの回転軸が直交して2自由度回転が可能なため、円筒66,66内に容易にハンドルグリップを収容することができる。
グリップ保持部60の円筒66を他の形態とすることができる。例えば、円筒を軸心を含む面で2分割し、分割端同士を蝶番で接続して開閉可能とする。この形態では、蝶番が取り付けられていない側の端に、突き合わされた状態を維持できる留め具を備える。このようにすることで、ハンドルガードが取り付けられたハンドルグリップにも対応することができる。グリップ保持部60は、ハンドルグリップを押さえ込んだときにハンドルグリップから外れることのない形態であれば、任意のものを使用することができる。
【0048】
さて、シート押圧部55のスリングベルト68は、グリップ保持部60,60の円筒66,66内にハンドルグリップが収容された状態で、シート押圧部55が回動自在な程度にゆるめられている。
シート押圧部55の先端を二輪車のシート上の適当な位置に保ちながら、加重アーム56の後方の端を引き下ろす。そうすると、押圧部材63,63がハンドルを押圧して前輪の衝撃緩衝装置(フロントフォーク)を収縮させ、スリングベルト68がシートを押圧して後輪の衝撃緩衝装置(リアフォーク)を収縮させる。この状態で、後輪誘導部70のワイヤ71のフックを加重アーム56の後方端のリング69に結合する。ワイヤ71の長さは、このように前後の衝撃緩衝装置を収縮させたままで維持できるように、事前に調節しておく。
【0049】
なお、シート押圧部55の先端の適当な位置とは、転倒防止装置1が二輪車を固定したときに、シート押圧部55(スリングベルト68)がシートを真下にまたはわずかに前側に押す位置である。
転倒防止装置1は、二輪車が固定されたとき、押圧部材63,63が垂直方向に対して二輪車のキャスター角と同一方向に傾斜するように構成される。つまり、押圧部材63,63は、前輪を前輪固定部10の前方係止部43の方向に押圧する。このことにより、前輪はより強固に前方係止部43に保持される。さらに、シート押圧部55は、略真上からシートを押圧するので外れにくく、振動等によってもシートを保持する状態が維持される。
【0050】
このように、転倒防止装置1は、二輪車を、前輪、ハンドルおよびシートの3箇所で強固に保持し、地震等の大きな振動が加えられた場合にも、安定して転倒を防止することができる。
図10は他の形態の前輪保持装置3Bの斜視図、図11は前輪保持装置3Bにおける前輪固定部10Bの斜視図である。
【0051】
図10において、前輪保持装置3Bは、台部8B、下方保持部19、揺動防止部20Bおよび前輪固定部10Bからなる。
なお、前輪保持装置3Bにおいて先に説明した前輪保持装置3におけるものと同一の構成を有する部分については、図10、図11および以下の説明において前輪保持装置3におけるものと同一の符合を付し、またはその説明を省略する。
【0052】
台部8Bは、下方保持部19および前輪固定部10Bを支持し、フレーム2と一体化させるものである。台部8Bは、角形鋼および角パイプ21Bで製作され、架台72Bおよび前輪固定部用基台12B等からなる。
架台72Bは、載置面に載せられる長方形の枠73Bを有する。
下方保持部19は、後方係止部31、車輪支持部32および1対の側方部33,33からなる。下方保持部19の構成は、先に説明した前輪保持装置3におけるものと同一である。下方保持部19は、枠73Bにおける長方形の短辺の一方を形成する角パイプ21Bに、この角パイプ21Bの長さ方向に直交して揺動するように取り付けられている。
【0053】
以下の説明において、前輪保持装置3Bにおける架台72Bの下方保持部19が取り付けられた側を後とし、その逆側を前とする。また、前後方向に直交しかつ載置面に平行な方向を幅方向という。
前輪固定部用基台12Bは、形状が短柱状であって前側の端の中央から上方に伸びている。前輪固定部用基台12Bは、幅方向両側に、先端近傍から後方斜め下に向けて伸びる揺動支持部74B,74Bを有する。
【0054】
前輪固定部用基台12Bは、その上端で前輪固定部10Bを保持する。
揺動防止部20Bは、枠73Bにおける長方形の長辺の一方を形成する角型鋼75Bに固定され、トグルクランプ38およびハンドルロック39からなる。トグルクランプ38およびハンドルロック39は、前輪保持装置3の揺動防止部20におけるトグルクランプ38およびハンドルロック39と同一のものである。
【0055】
前輪固定部10Bは、前方係止部43Bおよび前方押圧部44Bからなる。
前方係止部43Bは、その形状が前輪保持装置3の前輪固定部10における前方係止部43と略同一である。前方係止部43Bは、底部45の外面の設置時下方となる端縁近傍に、底部45と平行でかつ載置面に平行に揺動軸76Bが固着されている。前方係止部43Bは、揺動軸76Bが揺動支持部74B,74Bに揺動可能に支持されて、前輪固定部用基台12Bに取り付けられている。
【0056】
前方押圧部44Bは、トグルクランプ47、誘導部48Bおよびハンドルロック49からなる。
トグルクランプ47およびハンドルロック49は、前輪固定部10の前方押圧部44におけるものと略同一である。
誘導部48Bは、断面が矩形の棒状の連結棒50B、および連結棒50Bを摺動可能に取り囲む案内部51で形成される。連結棒50Bは、一端がトグルクランプ47の作用端に結合され、他端が、前方係止部43Bにおける底部45の上方の端縁近傍を枢支している。
【0057】
前輪保持装置3Bは、前輪固定部10Bを前側にして、基部5における対向する2つの部分の間に配されて、台部8Bがフレーム2に固定される。
次に、二輪車を前輪保持装置3Bに固定する手順を説明する。
図12は前輪保持装置3Bが二輪車を固定した状態を示す図である
前輪保持装置3Bは、前方押圧部44Bにおけるトグルクランプ47、および揺動防止部20Bにおけるトグルクランプ38のクランプ動作を解除した状態としておく。
【0058】
下方保持部19を後側に揺動させ、二輪車の前輪を後方係止部31に乗り上げさせて、前方係止部43Bに当たるまで押し入れる。下方保持部19は、進入した前輪により前方側に揺動する。
このとき、係止板37は載置面と平行になるので、揺動防止部20Bのトグルクランプ38をクランプ状態にし、下方保持部19の揺動を制限する。
【0059】
次に、前方押圧部44Bのトグルクランプ47をクランプ状態とする。このとき、トグルクランプ47の作用端は後方に移動し、前方係止部43Bの上端を前輪に向けて押し出して前方係止部43Bを揺動軸76B廻りに回動させる。回動した前方係止部43Bは、その上端を二輪車の前輪に食い込ませるとともに、前輪を後方係止部31側に押し戻し、前輪は、前輪保持装置3Bに保持される。
【0060】
また、回動後の前方係止部43Bの底部45は、回動前よりも後方係止部31における車輪を係止する面36に向き合う(平行に近づく)状態となる。そのため、対向する前方係止部43Bと後方係止部31とが押し合う力が前輪に有効に作用し、前輪は、前方係止部43Bと後方係止部31との間に強固に保持され、二輪車の自立が安定化する。
続いて、揺動防止部20Bのトグルクランプ38および前方押圧部44Bのトグルクランプ47のクランプ状態が振動等により解除されることがないように、それぞれのロック棒42をそれぞれの棒支持部41,41の2つの孔に貫通させ、ハンドル40等の回動を防止する。
【0061】
二輪車の転倒を防止するために続いて行われる、ハンドル保持装置4に二輪車のハンドル等を固定する手順は、先に説明した前輪保持装置3を備える転倒防止装置1におけるものと同じである。
上述の形態において、転倒防止装置1およびその前輪保持装置3,3Bを構成する部材を特定して説明を行った。しかし、使用される部材は、例えば角パイプ、角形鋼、および円管等に限られず、使用可能な他の部材を用いることができ、他の部材を用いても、上記転倒防止装置1と同様の機能を発揮することができる。
【0062】
前輪保持装置3,3Bは、フレーム2に固定されるのではなく、ハンドル保持装置4と特定の位置関係でフレーム2が固定される載置面に固定されていてもよい。
その他、転倒防止装置1、および転倒防止装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、動力付き二輪車の駐車時における転倒を防止する転倒防止装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
3 転倒防止装置(前輪保持装置)
18 固定手段(台座固定部)
19 下方保持部
20 揺動防止部
31 後方係止部
43 前方係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力付き二輪車の駐車時における転倒を防止する転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駐車違反に対する取締りが強化され、動力付き二輪車についても駐車違反が適用される場合が増加している。駐車違反の取締りを強化するには、その一方で動力付き二輪車の駐車場が整備されていることが求められるが、都心部等の土地価格が高騰している地域では、新たに動力付き二輪車用の駐車場を確保することが容易ではない。
そこで、都心部等に多く設置されている空間を有効に利用することができるために都心部等に多く設置されている機械式立体駐車場を、動力付き二輪車用の駐車場として活用することが考えられる。
【0003】
しかし、動力付き二輪車は、4輪自動車と比べて駐車時の安定性が悪く、機械式立体駐車場にそのまま駐車したのでは、駐車装置の緊急停止時における衝撃または地震による振動等により転倒し落下する危険がある。そのため、動力付き二輪車を、機械式立体駐車場に安定に駐車するための二輪車固定装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された二輪車固定装置は、動力付き二輪車の前輪を前方向からおよび後輪を後ろ方向から挟み込むように、それぞれいずれも断面V字状の前輪保持部材および後輪保持部材によって押圧して拘束保持する。また、特許文献1に記載された二輪車固定装置は、同時に、シートを上方からシート押さえ部材により押し込み、前輪保持部材、後輪保持部材およびシート押さえ部材の3部材による3箇所で動きを制限して、動力付き二輪車をパレットまたは留置台に固定する。
【0006】
しかし、動力付き二輪車のシートは、通常発泡ポリウレタン等の弾性変形し易い素材で製作されている。そのため、シート押さえ部材が強固にシートを押さえ込むことが難しく、揺れの大きな地震が発生した場合、シート押さえ部材がシートから外れて動力付き二輪車が転倒、落下するおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、強固に動力付き二輪車を固定することができる転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る動力付き二輪車の転倒防止装置は、駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置であって、揺動可能な下方保持部と、前記動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部と、を有し、前記下方保持部は、一方の揺動端において前記前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前記前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部を備え、かつ前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成される。
【0008】
好ましくは、前記下方保持部の揺動を前記他方の揺動端において制限する揺動防止部を有する。
好ましくは、前記前方係止部は、収容する前記前輪に向けて移動または揺動するように形成される。
好ましくは、前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能な前記下方保持部を、その移動における任意の位置で移動不能にする固定手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、強固に動力付き二輪車を固定することができる転倒防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は転倒防止装置の正面図である。
【図2】図2は前輪保持装置の斜視図である。
【図3】図3は前輪移動部の斜視図である。
【図4】図4は台座固定部の周辺の斜視図である。
【図5】図5は揺動防止部の周辺の斜視図である。
【図6】図6は前輪固定部の斜視図である。
【図7】図7は前輪保持装置が前輪を保持した斜視図である。
【図8】図8はハンドル保持装置の斜視図である。
【図9】図9はグリップ押圧部の周辺の斜視図である。
【図10】図10は他の形態の前輪保持装置の斜視図である。
【図11】図11は前輪固定部の斜視図である。
【図12】図12は前輪保持装置が二輪車を固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は転倒防止装置1の正面図、図2は前輪保持装置3の斜視図、図3は前輪移動部9の斜視図、図4は台座固定部18の周辺の斜視図、図5は揺動防止部20の周辺の斜視図、図6は前輪固定部10の斜視図、図7は前輪保持装置3が前輪を保持した斜視図、図8はハンドル保持装置4の斜視図、図9はグリップ押圧部54周辺の斜視図である。
図1において、転倒防止装置1は、フレーム2、前輪保持装置3およびハンドル保持装置4からなる。
【0012】
フレーム2は、転倒防止装置1を立体駐車場等の留置台またはパレットに固定するためのものである。フレーム2は、いずれも角型鋼で形成された基部5、支柱6,6および加重アーム支持部7からなる。基部5は、角型鋼がコ字状となるように溶接されて形成される。転倒防止装置1においては、基部5が留置台またはパレットに固定されて転倒が防止される。支柱6は、基部5のコ字状における直交する角(かど)から垂直に2本立てられている。2本の支柱6,6の間隔は、平均的な動力付き二輪車の車幅(ハンドル幅)程度である。
【0013】
以下、動力付き二輪車を「二輪車」ということがある。
加重アーム支持部7は、2本の支柱6,6の上端間に渡された梁と、梁から基部5が伸びた方向と同じ方向に伸びた部材とで形成される。加重アーム支持部7は、その先端部分で後に説明する加重アーム56を回動可能に支持する。
フレーム2には、前輪保持装置3およびハンドル保持装置4が取り付けられている。
【0014】
前輪保持装置3は、台部8、前輪移動部9および前輪固定部10からなる。
以下の説明において、前輪保持装置3は、前輪固定部10が設けられた側(図2における左側)を前とし、前輪移動部9が設けられた側を後とする。
台部8は、前輪移動部9および前輪固定部10を支持し、これらをフレーム2と一体化するものである。台部8は、形状が略長方形の前輪移動部用基台11、および前輪移動部用基台11の前側の端に設けられ上方に伸びた短柱状の前輪固定部用基台12からなる。
【0015】
以下、前輪移動部用基台11が置かれた面(通常水平面)における、前後方向に直交する方向を幅方向というものとする。
前輪移動部用基台11は、幅方向の両端における後方側に、いずれも前後方向に伸びる肉厚の板状の案内板13,13を有する。案内板13,13は、いずれも一方の表面にその長手方向に伸びた幅広の溝14が設けられ、それぞれの溝14,14が対向するように内側を向けてかつ互いに平行に配されている。
【0016】
一方の案内板13の外側には、案内板13に沿うように前輪移動部用基台11の前後方向に、ラック15が歯を案内板13の上方に位置させて固定されている。なお、ラック15は、断面が矩形の棒の1つの面が歯切りされたものである。
他方の案内板13の外側には、前輪移動部用基台11の前後方向長さに略等しい長さの丸棒16が長手方向に配されている。丸棒16は、後に説明するスライダ23を貫通して、前輪移動部用基台11にその両端が固定されている。
【0017】
前輪固定部用基台12は、その上端に前輪固定部10が固定されている。
前輪移動部9は、台座部17、台座固定部18、下方保持部19および揺動防止部20からなる。
台座部17は、図3に示されるように、幅方向に伸びた2つの角パイプ21,21、および角パイプ21,21に直交してそれぞれの角パイプ21,21の端を連結する板状の2つの被案内部22a,22bにより矩形状に形成されている。被案内部22a,22bは、いずれも外側に回転自在な車輪を複数有する。車輪の外径は案内板13,13に設けられた溝14,14の幅よりも小さい。被案内部22a,22bが、それぞれの車輪が溝14,14に嵌め入れられて、車輪が溝14,14の下方側面を走行することにより、台座部17は、前輪移動部用基台11の前後方向に自在に移動する。
【0018】
丸棒16側に配された被案内部22bには、その上部の外側の面に、スライダ23が取り付けられている。スライダ23は、前後方向に貫通する孔を備えており、孔に丸棒16を摺動可能に貫通させている。したがって、台座部17は、車輪が溝14,14に案内されるのに加えてスライダ23が丸棒16に案内されるので、極めて円滑に前後に移動することができる。
【0019】
台座固定部18は、ラック15側に配された被案内部22aに固定されている。図4によく示されるように、台座固定部18は、トグルクランプ24、小ラック部25およびハンドルロック26からなる。トグルクランプ24は、ベース27を介して被案内部22aの上部に固定される。トグルクランプ24は、ハンドル28を押し下げると作用端が下降する型式のもので、例えばインターネット(URL:http://www.kakutakogyo.com/clamp/type_b.html)に掲載されているように公知のものである。
【0020】
小ラック部25は、トグルクランプ24の作用端であり、その先端にラック15に噛み合う歯を有する。小ラック部25は、ハンドル28が引き上げられると、その先端の歯とラック15の歯との噛み合わせが解除され、台座固定部18が一体化された台座部17は、前輪移動部用基台11の長手方向への移動が可能となる。その逆に、ハンドル28が押し下げられたときには、小ラック部25の歯がラック15の歯と噛み合わされることにより、台座部17の移動が制限される。
【0021】
ハンドルロック26は、ハンドル28の両側に設けられた1対の棒支持部29,29および丸棒であるロック棒30で形成される。棒支持部29,29は、ロック棒30が貫通可能な孔を有する。それぞれの孔は、その中心がハンドル28の伸びた方向に直交する同一の線上にある。ハンドルロック26は、ハンドル28が押し下げられた状態で、ハンドル28よりも上方にある棒支持部29,29の孔にロック棒30を貫通させることにより、ハンドル28が上方に回動するのを妨げ、小ラック部25の歯とラック15の歯との噛み合わせが解除されるのを防止する。
【0022】
下方保持部19は、後方係止部31、車輪支持部32および1対の側方部33,33からなる。
後方係止部31は、長方形の板状部材が、長手方向を略3つに等分割するように曲げられ、それぞれ隣り合う面が鈍角をなす形状を有する。つまり、後方係止部31は、長手方向に直行する断面が、台形から下底辺を除いた形状である。
【0023】
車輪支持部32は、後方係止部31と略同一の形状を有する。
側方部33は、側面視の(図3において左側(又は右側)から見た)形状が、鈍角三角形における斜辺を凹状の曲線に置き換え、斜辺を除く2辺を一方の辺の長さが他方の辺の長さよりも長くした形状を有する側方面部34と、側方面部34の2つの斜辺を折り線として側方面部34と鋭角を形成して連続する底面部78とからなる。底面部78は、側方面部34における一方の斜辺に鋭角を形成して連続する部分と他方の斜辺に鋭角を形成して連続する部分とからなり、この2つの部分は、鈍角を形成して折り線により連続する。
【0024】
1対の側方部33,33は,側方面部34と底面部78とで形成される折り線を外側にして、間隔を空けて平行に並び、2つの折り線の長さの長い方の先端近傍には車輪支持部32が開放側を上にして固定されている。2つの折り線の短い方の先端近傍には、後方係止部31が開放側を上にして固定されている。また、1対の側方部33,33は、底面部78,78の折り線で分けられた2つの部分のうち幅方向に互いに向き合う部分は、いずれも同一の面内にあるように、構成されている。
【0025】
下方保持部19において、1対の側方部33,33は、その底面部78における2つの部分間の折り線が1つの直線上になく、その延長が後方係止部31側において鈍角で交差する。それぞれのこの折り線には、揺動軸35,35が固定されている。下方保持部19は、車輪支持部32を前側に位置させて、揺動軸35,35により台座部17における後側の角パイプ21に揺動可能に一体化されている。
【0026】
下方保持部19は、後方係止部31の中央の面36の後側端縁が、前輪保持装置3が置かれた面(以下「載置面」という)に接する程度にまで後側に揺動可能となっている。このとき、後方係止部31の中央の面36が載置面と平行または若干の角度を有するように、揺動軸35,35の位置および揺動軸35,35から後方係止部31までの距離が決定される。下方保持部19の前側への揺動は、車輪支持部32の下面が前側の角パイプ21に当接することにより制限される。また、揺動軸35,35から車輪支持部32の後側端までの距離は、2つの角パイプ21,21の間の空間距離よりも大きい。
【0027】
車輪支持部32におけるスライダ23側の面には、矩形板状の係止板37が溶接により固定されている。係止板37は、下方保持部19がその前側への揺動を前側の角パイプ21により係止されたとき、載置面と略平行となるように取り付けられている。
揺動防止部20は、前側の角パイプ21における被案内部22bに直近の内側に固定され、トグルクランプ38およびハンドルロック39からなる。
【0028】
トグルクランプ38は、ハンドル40を水平位置と垂直位置との間で回動させて作用端を回動させる公知のものである。トグルクランプ38は、ハンドル40の回動面(回動させるときの軌跡の面、以下の「回動面」も同意である)が幅方向(丸棒16に直行する方向)となるように配され、ハンドル40が水平位置のときハンドル40が前輪移動部用基台11の外に位置する。また、トグルクランプ38は、ハンドル40が垂直位置になったときに、作用端が前側に揺動した下方保持部19の係止板37の上面を下方に押圧するように取り付けられている。係止板37の上面がトグルクランプ38作用端に押圧されているとき、下方保持部19は、後側への揺動が制限される。
【0029】
ハンドルロック39は、ハンドル40の回動軸の両側に設けられた1対の棒支持部41,41および丸棒であるロック棒42で形成される。棒支持部41,41は、ロック棒42が貫通可能な、軸心を共通する孔を有する。ハンドルロック39は、ハンドル40が垂直位置にあるときに、それぞれの孔にロック棒42を貫通させることによりハンドル40が水平位置方向に回動するのを妨げ、トグルクランプ38による下方保持部19に対する揺動の制限を維持させる働きをする。
【0030】
前輪固定部10は、前方係止部43および前方押圧部44からなる。
前方係止部43は、長方形の板状部材が、断面形状が凹状台形となるように2つの折り線で曲げられて形成されている。2つの折り線に挟まれた部分を底部45、底部45を挟む折り線から互いに離れるように斜めに拡がる2つの部分をいずれも側面部46,46という。
【0031】
前方押圧部44は、トグルクランプ47、誘導部48およびハンドルロック49からなる。
トグルクランプ47は、ハンドル52を水平位置と垂直位置との間で回動させて作用端を押し出し、引き戻す往復移動させる公知のものである。トグルクランプ47は、作用端が載置面に平行に移動するように前輪固定部用基台12の上端に取り付けられている。
【0032】
誘導部48は、断面が矩形の棒状の連結棒50、および連結棒50を摺動可能に取り囲む案内部51で形成される。連結棒50は、一端がトグルクランプ47の作用端に結合されている。連結棒50の他端は、前方係止部43における底部45の外面に、前輪固定部10の2つの折り線が載置面に垂直になるように固定されている。図6に示される形態では、前輪固定部10はその上部で連結棒50に固定されるが、その固定位置は、前輪固定部用基台12の高さによって、任意に変更することができる。
【0033】
前方係止部43は、ハンドル52を垂直位置から水平位置に回動させることにより、載置面から特定の高さを後方に向けて水平に移動する。
ハンドルロック49は、台座固定部18におけるハンドルロック26および揺動防止部20におけるハンドルロック39と略同一のものであり、ハンドル52を水平位置に維持させるように構成されている。
【0034】
前輪保持装置3は、前輪固定部10側(前側)をコ字状の基部5の角側に配し、基部5における対向する2つの角形綱の間に配されて、台部8がフレーム2に固定される。
以下、前輪保持装置3における前後を、転倒防止装置1においても前後というものとする。
ハンドル保持装置4は、押圧アーム53、グリップ押圧部54、シート押圧部55および加重アーム56等からなる。
【0035】
押圧アーム53は、途中で屈曲した2つの角型鋼57,57が適度な間隔を空けて平行に並べられ、角型鋼57,57の両端および中間部分が鋼材により連結されて形成される。押圧アーム53における角型鋼57,57の適度な間隔は、平均的な動力付き二輪車における両グリップ間の距離である。押圧アーム53は、角型鋼57,57の屈曲部が上になるようにして、その一端部が支柱6,6に、回動軸77,77を介して回動可能に支持されている。また、押圧アーム53は、支柱6,6と複数のバランスバネ58,58で結ばれ、自重により先端側が載置面に向けて回動するのを回避している。
【0036】
グリップ押圧部54は、支持回動部59、1対のグリップ保持部60,60およびグリップ保持部間調節部61からなる。
支持回動部59は、円管で形成された軸部材62、角管で形成された1対の押圧部材63,63および調整棒支持材64からなる。
軸部材62は、前後方向に直交して配置され、押圧アーム53(それぞれの角型鋼57,57)の下側に回動可能に支持される。
【0037】
押圧部材63,63は、軸部材62の互いに異なる端に回動可能に接続されている。押圧部材63,63は、回動面が同一面内にあり、軸部材62となす角度が変更されるように回動する。押圧部材63,63は、中間部分に丸棒が円形に曲げられたリング65,65が取り付けられている。
調整棒支持材64は、押圧部材63よりも短い角管で形成されている。調整棒支持材64は、軸部材62の略中央に一端が溶接され、押圧部材63の回動面と同一面上において軸部材62に直交する方向に伸びている。
【0038】
グリップ保持部60は、二輪車のハンドルグリップを内部に収容可能な大きさの円筒66が、押圧部材63の軸心回りに回転可能であってかつ押圧部材63,63に直交する軸廻りに回動可能に形成された部分である。
グリップ保持部間調節部61は、軸部材62よりも長い棒材であって、全長に渡り雌ネジが設けられている。グリップ保持部間調節部61は、調整棒支持材64の先端に、軸部材62と平行に固定されている。グリップ保持部間調節部61は、その両側がそれぞれ押圧部材63,63のリング65,65を貫通し、貫通部分よりも先端側にそれぞれ高ナット67,67が螺合されている。
【0039】
シート押圧部55は、2つの角形鋼が平行に間隔を空けてそれぞれの中間部分が鋼材により連結されて形成されている。2つの角形鋼の間隔は、押圧アーム53における2つの角形鋼57,57の間隔に略等しい。シート押圧部55は、それぞれの角形鋼の一端が押圧アーム53のそれぞれの角形鋼57,57の先端に回動可能に連結されている。シート押圧部55におけるそれぞれの角形鋼の他端は、たるみの程度が調節可能なスリングベルト68で連結されている。
【0040】
加重アーム56は、細長い長方形の枠として形成される。3辺は角形鋼が使用され、短辺の一方には円管が使用されている。加重アーム56は、その長手方向が前後方向になるようにして、その前側の鉛管で形成された辺が、加重アーム支持部7の後方端に回動可能に支持されている。また、加重アーム56は、長手方向(前後方向)の中間部分が、押圧アーム53の後方端の上部に、押圧アーム53に対して揺動および前後移動可能に支持されている。加重アーム56の後方端の下側には、リング69が取り付けられている。
【0041】
押圧アーム53の下方には、後輪誘導部70が配されている。後輪誘導部70は、2つの山形鋼が平行になるようにして前後方向に並べて形成されている。2つの山形鋼の間隔は、動力付き二輪車の平均的な後輪の接地面近傍の幅より若干大きい。
後輪誘導部70の後方側の端には、ワイヤ71の一端および他端が固定されている。ワイヤ71は、十分に長くかつ長さの調節が可能となっており、その中間部分には、フックがワイヤ71に沿って移動可能に取り付けられている。
【0042】
次に、二輪車を転倒防止装置1に固定する手順を説明する。
はじめに、前輪移動装置9を後ろ側の移動端に移動させ、台座固定部18のトグルクランプ24をクランプ状態とする、つまり台座部17が移動しないように小ラック部25の先端の歯とラック15の歯とを噛み合わせておく。
また、前輪保持装置3の前方押圧部44におけるトグルクランプ47、および揺動防止部20におけるトグルクランプ38のクランプ動作を解除した状態とする。
【0043】
下方保持部19を後側に揺動させ、二輪車の前輪を後方係止部31に乗り上げさせて、2つの角パイプ21,21間まで押し入れる。このとき、前輪が後輪誘導部70を通過するようにすると、円滑に後方係止部31に導くことができ、かつ円滑に後輪が後輪誘導部70の2つの山形鋼間に導かれる。下方保持部19は、進入した前輪により前方側に揺動する。
【0044】
この段階で、二輪車は、下方保持部19の側方部33,33に前輪の両側方が支持されるので、やや不安定ではあるが自立する。
続いて、台座固定部18におけるトグルクランプ24のクランプを解除し、二輪車を前方に押して移動させる。このとき、前輪は、2つの角パイプ21,21間にあって、クランプが解除された前輪移動部9を前方に移動させる。前輪移動部9の前方への移動は、台座部17における被案内部22a,22bの車輪が案内板13,13の溝14,14を転動し、かつスライダ23が丸棒16に案内されることにより、安定して行われる。
【0045】
前輪が前輪固定部10の前方係止部43に当接して前輪移動部9の移動が停止されると、台座固定部18のトグルクランプ24をクランプ状態にして前輪移動部9の移動を制限する。また、このとき、係止板37は載置面と平行になるので、揺動防止部20のトグルクランプ38をクランプ状態にし、下方保持部19の揺動を制限する。
次に、前方押圧部44のトグルクランプ47をクランプ状態とする。このとき、トグルクランプ47の作用端は後方に移動し、前方係止部43を前輪側に押し出す。前輪が前方係止部43の凹状部分に収容された後に行われるトグルクランプ47による一押しが前輪を底部45側に押し入れ、前方係止部43が前輪をより強く固定するのに効果的である。また、この一押しにより押し出された前方係止部43は、前輪を後方に押し戻す。その結果、前輪は、前方係止部43と後方係止部31とにきつく挟まれ、二輪車の自立がより安定化する。なお、台座固定部18のトグルクランプ24、揺動防止部20のトグルクランプ38および前方押圧部44のトグルクランプ47のクランプ状態が振動等により解除されることがないように、それぞれのロック棒30,42を棒支持部の2つの孔に貫通させ、ハンドル28等の回動によるクランプの解除を防止する。
【0046】
以上の作業により、二輪車は、前輪が保持されることによって転倒防止装置1に固定される。
続いて、グリップ保持部60,60の円筒66,66内に、二輪車のハンドルグリップを収容する。このとき、グリップ保持部60,60間の距離がハンドルグリップを収容できないほどに長いまたは短い場合は、押圧部材63,63を回動させてグリップ保持部60,60間の距離を適当に距離に調節する。ハンドルグリップを円筒66,66内に収容した後、押圧部材63,63が外方に向け回動しないように、グリップ保持部間調節部61の両端の高ナット67,67を移動させて、ハンドルグリップが円筒66,66から抜け出るのを防止する。
【0047】
なお、グリップ保持部60,60は、2つの回転軸が直交して2自由度回転が可能なため、円筒66,66内に容易にハンドルグリップを収容することができる。
グリップ保持部60の円筒66を他の形態とすることができる。例えば、円筒を軸心を含む面で2分割し、分割端同士を蝶番で接続して開閉可能とする。この形態では、蝶番が取り付けられていない側の端に、突き合わされた状態を維持できる留め具を備える。このようにすることで、ハンドルガードが取り付けられたハンドルグリップにも対応することができる。グリップ保持部60は、ハンドルグリップを押さえ込んだときにハンドルグリップから外れることのない形態であれば、任意のものを使用することができる。
【0048】
さて、シート押圧部55のスリングベルト68は、グリップ保持部60,60の円筒66,66内にハンドルグリップが収容された状態で、シート押圧部55が回動自在な程度にゆるめられている。
シート押圧部55の先端を二輪車のシート上の適当な位置に保ちながら、加重アーム56の後方の端を引き下ろす。そうすると、押圧部材63,63がハンドルを押圧して前輪の衝撃緩衝装置(フロントフォーク)を収縮させ、スリングベルト68がシートを押圧して後輪の衝撃緩衝装置(リアフォーク)を収縮させる。この状態で、後輪誘導部70のワイヤ71のフックを加重アーム56の後方端のリング69に結合する。ワイヤ71の長さは、このように前後の衝撃緩衝装置を収縮させたままで維持できるように、事前に調節しておく。
【0049】
なお、シート押圧部55の先端の適当な位置とは、転倒防止装置1が二輪車を固定したときに、シート押圧部55(スリングベルト68)がシートを真下にまたはわずかに前側に押す位置である。
転倒防止装置1は、二輪車が固定されたとき、押圧部材63,63が垂直方向に対して二輪車のキャスター角と同一方向に傾斜するように構成される。つまり、押圧部材63,63は、前輪を前輪固定部10の前方係止部43の方向に押圧する。このことにより、前輪はより強固に前方係止部43に保持される。さらに、シート押圧部55は、略真上からシートを押圧するので外れにくく、振動等によってもシートを保持する状態が維持される。
【0050】
このように、転倒防止装置1は、二輪車を、前輪、ハンドルおよびシートの3箇所で強固に保持し、地震等の大きな振動が加えられた場合にも、安定して転倒を防止することができる。
図10は他の形態の前輪保持装置3Bの斜視図、図11は前輪保持装置3Bにおける前輪固定部10Bの斜視図である。
【0051】
図10において、前輪保持装置3Bは、台部8B、下方保持部19、揺動防止部20Bおよび前輪固定部10Bからなる。
なお、前輪保持装置3Bにおいて先に説明した前輪保持装置3におけるものと同一の構成を有する部分については、図10、図11および以下の説明において前輪保持装置3におけるものと同一の符合を付し、またはその説明を省略する。
【0052】
台部8Bは、下方保持部19および前輪固定部10Bを支持し、フレーム2と一体化させるものである。台部8Bは、角形鋼および角パイプ21Bで製作され、架台72Bおよび前輪固定部用基台12B等からなる。
架台72Bは、載置面に載せられる長方形の枠73Bを有する。
下方保持部19は、後方係止部31、車輪支持部32および1対の側方部33,33からなる。下方保持部19の構成は、先に説明した前輪保持装置3におけるものと同一である。下方保持部19は、枠73Bにおける長方形の短辺の一方を形成する角パイプ21Bに、この角パイプ21Bの長さ方向に直交して揺動するように取り付けられている。
【0053】
以下の説明において、前輪保持装置3Bにおける架台72Bの下方保持部19が取り付けられた側を後とし、その逆側を前とする。また、前後方向に直交しかつ載置面に平行な方向を幅方向という。
前輪固定部用基台12Bは、形状が短柱状であって前側の端の中央から上方に伸びている。前輪固定部用基台12Bは、幅方向両側に、先端近傍から後方斜め下に向けて伸びる揺動支持部74B,74Bを有する。
【0054】
前輪固定部用基台12Bは、その上端で前輪固定部10Bを保持する。
揺動防止部20Bは、枠73Bにおける長方形の長辺の一方を形成する角型鋼75Bに固定され、トグルクランプ38およびハンドルロック39からなる。トグルクランプ38およびハンドルロック39は、前輪保持装置3の揺動防止部20におけるトグルクランプ38およびハンドルロック39と同一のものである。
【0055】
前輪固定部10Bは、前方係止部43Bおよび前方押圧部44Bからなる。
前方係止部43Bは、その形状が前輪保持装置3の前輪固定部10における前方係止部43と略同一である。前方係止部43Bは、底部45の外面の設置時下方となる端縁近傍に、底部45と平行でかつ載置面に平行に揺動軸76Bが固着されている。前方係止部43Bは、揺動軸76Bが揺動支持部74B,74Bに揺動可能に支持されて、前輪固定部用基台12Bに取り付けられている。
【0056】
前方押圧部44Bは、トグルクランプ47、誘導部48Bおよびハンドルロック49からなる。
トグルクランプ47およびハンドルロック49は、前輪固定部10の前方押圧部44におけるものと略同一である。
誘導部48Bは、断面が矩形の棒状の連結棒50B、および連結棒50Bを摺動可能に取り囲む案内部51で形成される。連結棒50Bは、一端がトグルクランプ47の作用端に結合され、他端が、前方係止部43Bにおける底部45の上方の端縁近傍を枢支している。
【0057】
前輪保持装置3Bは、前輪固定部10Bを前側にして、基部5における対向する2つの部分の間に配されて、台部8Bがフレーム2に固定される。
次に、二輪車を前輪保持装置3Bに固定する手順を説明する。
図12は前輪保持装置3Bが二輪車を固定した状態を示す図である
前輪保持装置3Bは、前方押圧部44Bにおけるトグルクランプ47、および揺動防止部20Bにおけるトグルクランプ38のクランプ動作を解除した状態としておく。
【0058】
下方保持部19を後側に揺動させ、二輪車の前輪を後方係止部31に乗り上げさせて、前方係止部43Bに当たるまで押し入れる。下方保持部19は、進入した前輪により前方側に揺動する。
このとき、係止板37は載置面と平行になるので、揺動防止部20Bのトグルクランプ38をクランプ状態にし、下方保持部19の揺動を制限する。
【0059】
次に、前方押圧部44Bのトグルクランプ47をクランプ状態とする。このとき、トグルクランプ47の作用端は後方に移動し、前方係止部43Bの上端を前輪に向けて押し出して前方係止部43Bを揺動軸76B廻りに回動させる。回動した前方係止部43Bは、その上端を二輪車の前輪に食い込ませるとともに、前輪を後方係止部31側に押し戻し、前輪は、前輪保持装置3Bに保持される。
【0060】
また、回動後の前方係止部43Bの底部45は、回動前よりも後方係止部31における車輪を係止する面36に向き合う(平行に近づく)状態となる。そのため、対向する前方係止部43Bと後方係止部31とが押し合う力が前輪に有効に作用し、前輪は、前方係止部43Bと後方係止部31との間に強固に保持され、二輪車の自立が安定化する。
続いて、揺動防止部20Bのトグルクランプ38および前方押圧部44Bのトグルクランプ47のクランプ状態が振動等により解除されることがないように、それぞれのロック棒42をそれぞれの棒支持部41,41の2つの孔に貫通させ、ハンドル40等の回動を防止する。
【0061】
二輪車の転倒を防止するために続いて行われる、ハンドル保持装置4に二輪車のハンドル等を固定する手順は、先に説明した前輪保持装置3を備える転倒防止装置1におけるものと同じである。
上述の形態において、転倒防止装置1およびその前輪保持装置3,3Bを構成する部材を特定して説明を行った。しかし、使用される部材は、例えば角パイプ、角形鋼、および円管等に限られず、使用可能な他の部材を用いることができ、他の部材を用いても、上記転倒防止装置1と同様の機能を発揮することができる。
【0062】
前輪保持装置3,3Bは、フレーム2に固定されるのではなく、ハンドル保持装置4と特定の位置関係でフレーム2が固定される載置面に固定されていてもよい。
その他、転倒防止装置1、および転倒防止装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、動力付き二輪車の駐車時における転倒を防止する転倒防止装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
3 転倒防止装置(前輪保持装置)
18 固定手段(台座固定部)
19 下方保持部
20 揺動防止部
31 後方係止部
43 前方係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置であって、
揺動可能な下方保持部と、
前記動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部と、を有し、
前記下方保持部は、
一方の揺動端において前記前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前記前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部を備え、かつ前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成された
ことを特徴とする動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項2】
前記下方保持部の揺動を前記他方の揺動端において制限する揺動防止部を有する
請求項1に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項3】
前記前方係止部は、
収容する前記前輪に向けて移動または揺動するように形成された
請求項1または請求項2に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項4】
前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能な前記下方保持部を、その移動における任意の位置で移動不能にする固定手段を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項1】
駐車時における動力付き二輪車の転倒防止装置であって、
揺動可能な下方保持部と、
前記動力付き二輪車の前輪の前部を収容可能な前方係止部と、を有し、
前記下方保持部は、
一方の揺動端において前記前輪の下部を収容可能であり他方の揺動端において収容した前記前輪の後側下方を前方に向けて押圧可能な後方係止部を備え、かつ前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能に形成された
ことを特徴とする動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項2】
前記下方保持部の揺動を前記他方の揺動端において制限する揺動防止部を有する
請求項1に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項3】
前記前方係止部は、
収容する前記前輪に向けて移動または揺動するように形成された
請求項1または請求項2に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【請求項4】
前記前方係止部に接近しまたは離れるように移動可能な前記下方保持部を、その移動における任意の位置で移動不能にする固定手段を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の動力付き二輪車の転倒防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−235897(P2011−235897A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191844(P2011−191844)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2008−61826(P2008−61826)の分割
【原出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(592227243)株式会社キタコ (5)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2008−61826(P2008−61826)の分割
【原出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(592227243)株式会社キタコ (5)
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