説明

動力伝達装置の継手構造

【課題】本発明は動力伝達装置の継手構造に係り、コンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトのガタをなくし、併せてコンパニオンフランジやドライブピニオンシャフト、その他周辺部品の摩耗、破損状況を容易に把握することができる継手構造を提供する。
【解決手段】ドライブピニオンシャフト11の雄スプライン29とコンパニオンフランジ21の雌スプライン31をスプライン嵌合すると共に、ドライブピニオンシャフト11の丸軸部とコンパニオンフランジ21の内周との間に、ドライブピニオンシャフト11の先端側へ順次縮径するテーパ面が外周に形成されたインナーリング35と、当該テーパ面と接合可能なテーパ面が内周に形成されたアウターリング37を、ナット23の締め付けに伴い、リング状のプレッシャスリーブ33を介してドライブピニオンシャフト11の軸方向に圧入したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置(終減速装置)の継手構造に係り、詳しくは動力伝達装置のドライブピニオンシャフトとコンパニオンフランジとの結合に改良を加えた動力伝達装置の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両における動力伝達装置のドライブピニオンシャフトとコンパニオンフランジの結合方法は、スプラインによる結合が一般的である。
【0003】
即ち、車両駆動系にはプロペラシャフトがトランスミッションと動力伝達装置との間に接続され、エンジンの動力がトランスミッションからプロペラシャフトを介して動力伝達装置へ伝達され、更に、動力伝達装置を経て車両後部の駆動輪側へ伝達されるようになっている。そして、プロペラシャフトと動力伝達装置の入力軸となるドライブピニオンシャフトとを連結しているのがコンパニオンフランジである。
【0004】
特許文献1または図6、図7に示すように、従来、ドライブピニオンシャフト1に対するコンパニオンフランジ3の取付けは、ドライブピニオンシャフト1の先端側外周に雄スプライン5を軸方向に設け、当該雄スプライン5に対応してコンパニオンフランジ3の内周に雌スプライン7を設けて、コンパニオンフランジ3をドライブピニオンシャフト1にスプライン嵌合させた構造となっている。
【0005】
そして、ドライブピニオンシャフト1の先端側端部にコンパニオンフランジ締付け用のフランジロックナット9を螺着して、ドライブピニオンシャフト1の軸方向にコンパニオンフランジ3を締め付け固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−36322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来、ドライブピニオンシャフト1とコンパニオンフランジ3の結合方法はスプラインによる結合が一般的であった。
【0008】
しかし、このスプラインによる結合は、図7に示すように雄スプラインと雌スプライン間のバックラッシ(ガタ)Lによって、ドライブピニオンシャフト1とコンパニオンフランジ3とフランジロックナット9との接触面に摩耗が発生してしまう不具合があった。そして、摩耗が進むと、ドライブピニオンシャフト1とコンパニオンフランジ3を固定するフランジロックナット9が緩んでしまう虞があり、フランジロックナット9が緩んでしまうと、継手部が脱落してしまう虞がある。
【0009】
また、コンパニオンフランジ3には、プロペラシャフト側のフランジヨークが接続されるが、フランジヨークがフランジロックナット9を隠してしまうため、フランジロックナット9の緩みの確認が困難であった。
【0010】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、コンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトのガタをなくし、併せてコンパニオンフランジやドライブピニオンシャフト、その他周辺部品の摩耗、破損状況を容易に把握することができる動力伝達装置の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に丸軸部を、後端側外周に雄スプラインを設け、コンパニオンフランジの後端側内周に、前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、前記ドライブピニオンシャフトの丸軸部とコンパニオンフランジの内周との間に、ドライブピニオンシャフトの先端側へ順次縮径するテーパ面が外周に形成されたインナーリングと、当該テーパ面と接合可能なテーパ面が内周に形成されたアウターリングを、前記ナットの締め付けに伴い、リング状のプレッシャスリーブを介してドライブピニオンシャフトの軸方向に圧入したことを特徴とする。
【0012】
そして、請求項2に係る発明は、ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面を、後端側外周に雄スプラインを設け、コンパニオンフランジの後端側内周に、前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、前記ドライブピニオンシャフトのテーパ面とコンパニオンフランジの内周との間に、当該テーパ面と接合可能なテーパ面が内周に形成されたアウターリングを、前記ナットの締め付けに伴い、リング状のプレッシャスリーブを介してドライブピニオンシャフトの軸方向に圧入したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面を、後端側外周に雄スプラインを設け、コンパニオンフランジの先端側内周に前記テーパ面に接合可能なテーパ面を、コンパニオンフランジの後端側内周に前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、前記両テーパ面を接合させて、前記ナットでコンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトに締め付け固定したことを特徴とする。
【0014】
更に、請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置の継手構造に於て、前記テーパ面間の接合力を、前記プレッシャスリーブの軸方向の長さで調節することを特徴とする。
【0015】
そして、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達装置の継手構造において、前記コンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトのスプライン嵌合部は、前記テーパ面間の接合力の低下時に、前記雄スプラインと雌スプラインとの衝突で異音が発生するようにバックラッシが設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、インナーリングとアウターリング、プレッシャスリーブを用いて、コンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトにガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることが可能である。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、アウターリングとプレッシャスリーブを用いて、コンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトにガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることが可能であり、請求項3に係る発明によれば、ナットの締め付けによって、コンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトにガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることが可能となった。
【0018】
従って、これらの発明によれば、ドライブピニオンシャフトとコンパニオンフランジとナットとの接触面の摩耗を減少させることが可能となる。
【0019】
そして、請求項4に係る発明によれば、仕様に応じプレッシャスリーブの軸方向の長さを代えることで、コンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトとの接合力を調節することができる。
【0020】
更に、請求項5に係る発明によれば、仮に何らかの原因でフランジロックナットが緩んでコンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトとの結合力が低下すると、雄スプラインと雌スプラインが衝突して大きな異音が発生するため、ドライバーはコンパニオンフランジやピニオンシャフト、その他周辺部品の摩耗、破損状況を容易に把握することができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】請求項1、請求項4及び請求項5の一実施形態に係る動力伝達装置の継手構造の要部断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】プレッシャスリーブとアウターリング、インナーリングの全体斜視図である。
【図4】スプライン嵌合部の雄スプラインと雌スプラインのバックラッシの説明図である。
【図5】請求項2、請求項4及び請求項5の一実施形態に係る動力伝達装置の継手構造の要部断面図である。
【図6】従来の動力伝達装置のコンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトのスプライン嵌合部の拡大断面図である。
【図7】スプライン嵌合部の雄スプラインと雌スプラインのバックラッシの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1乃至図4は請求項1、請求項4及び請求項5の一実施形態に係る動力伝達装置の継手構造を示し、図1において、11は動力伝達装置(終減速装置)13のキャリアケース15内にテーパローラベアリング17、19を介して回転自在に支持されたドライブピニオンシャフト(以下、「ピニオンシャフト」という)、21はピニオンシャフト11の外周に取り付くコンパニオンフランジ、23はピニオンシャフト11の先端側端部25に螺着したフランジロックナットで、フランジロックナット23によって、コンパニオンフランジ21がドライブピニオンシャフト11の軸方向に締め付け固定されるようになっている。そして、図示しないがコンパニオンフランジ21に、プロペラシャフトのフランジヨークが接続される。
【0024】
図2はピニオンシャフト11とコンパニオンフランジ21の結合構造の詳細を示し、コンパニオンフランジ21が取り付くピニオンシャフト11の先端側外周に丸軸部27が形成され、後端側外周に雄スプライン29が軸方向に形成されている。
【0025】
一方、コンパニオンフランジ21の後端側内周には、前記雄スプライン29に対応して雌スプライン31が設けられており、コンパニオンフランジ21の後端側とピニオンシャフト11の後端側は、雌スプライン31と雄スプライン29とでスプライン嵌合されている。
【0026】
尚、図4に示すように雄スプライン29と雌スプライン31間のバックラッシL1は、図7に示す従来のバックラッシLよりも大きく(L1>L)設定されている。
【0027】
そして、図2に示すようにドライブピニオンシャフト11の丸軸部27とコンパニオンフランジ21の先端側内周との間に、リング状のプレッシャスリーブ33を介して一組のテーパリング(インナーリング35とアウターリング37)がピニオンシャフト11の軸方向に圧入されている。
【0028】
図2及び図3に示すようにインナーリング35の外周には、ピニオンシャフト11の先端方向へ縮径するテーパ面39が形成されている。一方、アウターリング37の内周には、ピニオンシャフト11の先端方向へ縮径して前記テーパ面39に接合可能なテーパ面41が内周に形成されている。そして、プレッシャスリーブ33は、丸軸部27とコンパニオンフランジ21の先端側内周との間に圧入可能な均一な肉厚で形成されており、インナーリング35とアウターリング37、プレッシャスリーブ33の外径寸法は同一である。
【0029】
而して、インナーリング35とアウターリング37の取り付けは、先ず、コンパニオンフランジ21の後端側とピニオンシャフト11の後端側を、雌スプライン31と雄スプライン29とでスプライン嵌合する。
【0030】
次に、ピニオンシャフト11の丸軸部27とコンパニオンフランジ21の内周との間に、テーパ面39、41を接合させたインナーリング35とアウターリング37、そして、プレッシャスリーブ33を順次挿入した後、フランジロックナット23をピニオンシャフト11の先端側端部25に螺着して、フランジロックナット23を締め付けていけば、プレッシャスリーブ33を介してインナーリング35とアウターリング37が、ピニオンシャフト11の軸方向へ順次圧入されていくこととなる。
【0031】
インナーリング35とアウターリング37は断面クサビ状に形成されているから、図2に示すようにプレッシャスリーブ33が矢印B方向に押し込まれると、アウターリング37がテーパ面39、41に沿って軸方向へ押し込まれて、インナーリング35、アウターリング37間に強固な結合力が発生する。そして、クサビ作用によって、インナーリング35には矢印C方向(ピニオンシャフト11の丸軸部27方向)への力が作用し、アウターリング37には矢印D方向(コンパニオンフランジ21の内周方向)への力が作用して、コンパニオンフランジ21がピニオンシャフト11にインナーリング35とアウターリング37を介してガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付くようになっている。
【0032】
また、仮に、長期に亘る使用で何らかの原因によってフランジロックナット23が緩んでインナーリング35とアウターリング37との結合力が低下し、コンパニオンフランジ21とピニオンシャフト11の結合力が解除されると、コンパニオンフランジ21とピニオンシャフト11は、雄スプライン29と雌スプライン31とのスプライン嵌合に切り替わるようになっている。
【0033】
本実施形態はこのように構成されているから、ピニオンシャフト11へのコンパニオンフランジ21の取り付けは、先ず、コンパニオンフランジ21の後端側とピニオンシャフト11の後端側を雌スプライン31と雄スプライン29とでスプライン嵌合させる。
【0034】
そして、既述したようにピニオンシャフト11の丸軸部27とコンパニオンフランジ21の内周との間に、テーパ面39、41を接合させてインナーリング35とアウターリング37を挿入し、プレッシャスリーブ33を挿入した後、フランジロックナット23をピニオンシャフト11の先端側端部25に螺着すれば、フランジロックナット23の締め付けに伴い、プレッシャスリーブ33が矢印B方向へ押し込まれ、インナーリング35とアウターリング37がピニオンシャフト11の軸方向に順次圧入されていく。
【0035】
而して、インナーリング35とアウターリング37は断面クサビ状に形成されているため、プレッシャスリーブ33が矢印B方向へ押し込まれると、アウターリング37がテーパ面39、41に沿って軸方向に押し込まれて、インナーリング35、アウターリング37間に強固な結合力が発生すると共に、クサビ作用によってインナーリング35には矢印C方向への力が作用し、アウターリング37には矢印D方向への力が作用して、コンパニオンフランジ21が、ピニオンシャフト11にインナーリング35とアウターリング37を介してガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付くこととなる。
【0036】
このようにインナーリング35とアウターリング37のクサビ作用によってコンパニオンフランジ31がピニオンシャフト11に結合された構造上、雄スプライン29と雌スプライン31との接触面に多少の摩耗が発生しても、フランジロックナット23の軸力が低下することがない。
【0037】
尚、テーパ面39、41間の接合力は、仕様に応じプレッシャスリーブ33の軸方向の長さで調節すればよい。
【0038】
また、仮に何らかの原因によってフランジロックナット23が緩んでインナーリング35とアウターリング37との結合力が低下すると、コンパニオンフランジ21とピニオンシャフト11は雄スプライン29と雌スプライン31とのスプライン嵌合に切り替わるが、図4に示すように雄スプライン29と雌スプライン31間のバックラッシL1が図7に示す従来のバックラッシLよりも大きく(L1>L)設定されているため、雄スプライン39と雌スプライン41とが衝突して従来に比し大きな異音が発生する。
【0039】
この結果、ドライバーはこの異音の発生によってフランジロックナット23に緩みが生じたことが認識でき、継手部が脱落する前に不具合に気づくことができる。
【0040】
また、異音に気がつかなくても、点検した際にバックラッシL1が大きいため、継手部にガタがあり不具合を発見できることとなる。
【0041】
このように本実施形態によれば、
(1)インナーリング35と、アウターリング37、プレッシャスリーブ33を用いて、コンパニオンフランジ21をピニオンシャフト11にガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることが可能である。
【0042】
この結果、従来に比しピニオンシャフト11とコンパニオンフランジ21とフランジロックナット23との接触面の摩耗を減少させることが可能となった。
【0043】
(2)また、仮に何らかの原因でフランジロックナット23が緩んでインナーリング35とアウターリング37との結合力が低下すると、雄スプライン39と雌スプライン41とが衝突して大きな異音が発生するため、ドライバーはコンパニオンフランジ21やピニオンシャフト11、その他周辺部品の摩耗、破損状況を容易に把握することができる利点を有する。
【0044】
(3)更に、仕様に応じプレッシャスリーブ33の軸方向の長さを代えることで、テーパ面39、41間の接合力を調節することができる。
【0045】
図5は請求項2、請求項4及び請求項5の一実施形態に係る動力伝達装置の継手構造を示し、本実施形態は、前記インナーリング35に代え、恰も当該インナーリング35をピニオンシャフト11-1側に一体形成した如く、コンパニオンフランジ21が取り付くピニオンシャフト11-1の先端側外周に、軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面43を設けたもので、当該テーパ面43にアウターリング37のテーパ面41が接合可能である。
【0046】
尚、発明部分を除くその他の構成は前記実施形態と同一であるため、同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
【0047】
本実施形態はこのように構成されているから、本実施形態によっても、前記実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能で、アウターリング37とプレッシャスリーブ33を用いて、コンパニオンフランジ21をピニオンシャフト11にガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることができると共に、異音の発生によって不具合を感知することができる利点を有する。
【0048】
また、本実施形態は、前記インナーリング35なくしたことで部品点数の削減が図られる利点を有する。
【0049】
また、図示しないが請求項3及び請求項5の一実施形態の如く、前記インナーリングをピニオンシャフト側に一体形成し、前記アウターリングをコンパニオンフランジの内周に一体形成して、ピニオンシャフトの先端側外周に軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面を設け、コンパニオンフランジの先端側内周に当該テーパ面に接合可能なテーパ面を一体形成し、両テーパ面を接合させて、フランジロックナットの締め付けでコンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトに固定してもよい。尚、この構造では、テーパ面を形成するに当たり、コンパニオンフランジにピニオンシャフトを挿入可能に構成することが必要である。
【0050】
而して、この実施形態によれば、インナーリングやアウターリング、プレッシャスリーブを用いることなく、フランジロックナットの締め付けによって、コンパニオンフランジをピニオンシャフトにガタ付きなくノンバックラッシで強固に取り付けることができると共に、前記各実施形態と同様、異音の発生によって不具合を感知することができる利点を有する。
【符号の説明】
【0051】
11、11-1 ピニオンシャフト
13 動力伝達装置(終減速装置)
15 キャリアケース
21 コンパニオンフランジ
23 フランジロックナット
27 丸軸部
29 雄スプライン
31 雌スプライン
33 プレッシャスリーブ
35 インナーリング
37 アウターリング
39、41、43 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、
前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に丸軸部を、後端側外周に雄スプラインを設け、
コンパニオンフランジの後端側内周に、前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、
前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、
前記ドライブピニオンシャフトの丸軸部とコンパニオンフランジの内周との間に、
ドライブピニオンシャフトの先端側へ順次縮径するテーパ面が外周に形成されたインナーリングと、当該テーパ面と接合可能なテーパ面が内周に形成されたアウターリングを、前記ナットの締め付けに伴い、リング状のプレッシャスリーブを介してドライブピニオンシャフトの軸方向に圧入したことを特徴とする動力伝達装置の継手構造。
【請求項2】
ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、
前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面を、後端側外周に雄スプラインを設け、
コンパニオンフランジの後端側内周に、前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、
前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、
前記ドライブピニオンシャフトのテーパ面とコンパニオンフランジの内周との間に、当該テーパ面と接合可能なテーパ面が内周に形成されたアウターリングを、前記ナットの締め付けに伴い、リング状のプレッシャスリーブを介してドライブピニオンシャフトの軸方向に圧入したことを特徴とする動力伝達装置の継手構造。
【請求項3】
ドライブピニオンシャフトの外周にスプライン嵌合するコンパニオンフランジを、当該ドライブピニオンシャフトの先端側端部に螺着するナットでドライブピニオンシャフトの軸方向に締め付け固定する動力伝達装置の継手構造において、
前記コンパニオンフランジが取り付くドライブピニオンシャフトの先端側外周に軸方向後端側へ順次拡径するテーパ面を、後端側外周に雄スプラインを設け、
コンパニオンフランジの先端側内周に前記テーパ面に接合可能なテーパ面を、コンパニオンフランジの後端側内周に前記雄スプラインに対応して雌スプラインを設け、
前記ドライブピニオンシャフトの雄スプラインとコンパニオンフランジの雌スプラインをスプライン嵌合すると共に、
前記両テーパ面を接合させて、前記ナットでコンパニオンフランジをドライブピニオンシャフトに締め付け固定したことを特徴とする動力伝達装置の継手構造。
【請求項4】
前記テーパ面間の接合力を、前記プレッシャスリーブの軸方向の長さで調節することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置の継手構造。
【請求項5】
前記コンパニオンフランジとドライブピニオンシャフトのスプライン嵌合部は、前記テーパ面間の接合力の低下時に、前記雄スプラインと雌スプラインとの衝突で異音が発生するようにバックラッシが設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達装置の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113376(P2013−113376A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260142(P2011−260142)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】