説明

動揺台装置及び動揺・安定台装置

【課題】 動揺台装置及び動揺・安定台装置の高さを低く設定できるとともに、装置全体の小型化を図ることを目的としている。
【解決手段】 ピッチ軸20とロール軸22を交差させた十字軸23を支持するベース12と、ベース12と対向し、十字軸23上に形成してピッチ軸20またはロール軸22の各軸回りを回動可能なトッププレート14と、一方をベース12に接続し、他方をトッププレート14に傾斜させて自在継手28を介して接続し、ピッチ軸20及びロール軸22の各軸に対し軸対称となるようにピッチ軸20とロール軸22の交点を中心としてベース12からトッププレート14へ放射状に伸縮可能なアクチュエータ16と、を備えた動揺台装置(動揺・安定台装置)30である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に移動体で発生する動揺の吸収あるいは動揺対象に動揺を与えるのに効果的な動揺台装置及び動揺・安定台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両・船舶・航空機などの移動体は移動時にピッチング(前後揺れ)・ローリング(横揺れ)・ヨーイング(垂直軸回りの揺れ)などの動揺が発生する。このような動揺を発生させて、航海練習あるいは運転シミュレーションを行う動揺台装置がある。
【0003】
動揺台装置は、地盤に設置された操縦または運転シミュレータなどのトッププレート(プラットフォーム)をX軸及びY軸を中心とした回転運動、すなわちローリング及びピッチングを発生させる。
【0004】
このような動揺台装置には、6自由度のリニアアクチュエータをパラレルに配置したパラレルモーションベース方式と、あるいはローリングとピッチングの2軸を同時に駆動する機構として外部ジンバルと内部ジンバルを組み合わせたジンバル方式に大別される。
【0005】
パラレルモーションベースは、特許文献1または特許文献2に示すように複数のアクチュエータを用い、6自由度の制御が可能である。このためパラレルモーションベースは、ローリング、ピッチング、ヨーイングの高精度の制御が可能となる。またパラレル動作の特徴として剛性の強化が図れるという利点がある。
【0006】
一方、ジンバル方式の一例として図6にジンバル方式の動揺台の側面図を示す。図示のようにジンバル方式の動揺装置1は、建屋などの床面に載置するベースプレート2と、ベースプレート2と対向するトッププレート3の中央を球面軸受けを介して支持するジンバル部4と、プレートの4隅に配置し、一方をベースプレート2に接続し、他方をトッププレート3に継ぎ手を介して接続し、垂直方向に伸縮可能な4本のアクチュエータ5を備えている。これによりトッププレート3の中央を支持するジンバル部4を支点とし、長手方向あるいは幅方向に配置したアクチュエータ5を押したり引いたりして伸縮させることにより、トッププレート3を傾斜してピッチングあるいはローリングさせることができる。
【特許文献1】特開平09−160478号公報
【特許文献2】特開2003−236254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらパラレルモーションベースの場合、剛性を備えているが装置構成が大型化するとともに高価格になるという問題がある。したがってピッチング、ローリングの2自由度の制御のみを対象とする場合には、ジンバル方式の動揺装置の方が製作コスト及びサイズともに有利である。
【0008】
一方、従来のジンバル方式の動揺台装置は、トッププレートの傾斜角を大きく取るため、アクチュエータ5のストロークを長くしなければならない。ベースプレート2に対し垂直に形成したアクチュエータ5は上下の直線方向に伸縮するため、装置全体の高さが高くなる。このため狭い船内又は車両内部等に設置する場合、高さ制限がありアクチュエータ5のストロークも制限されてしまう。ストロークが制限されるとトッププレートの傾斜角も同時に制限されてしまう。
【0009】
また特許文献1及び2は動揺台に接続するアクチュエータを支持する固定台が動揺台よりも大きいため、広い設置スペースが必要となる。また、トッププレートの移動範囲を大きくするため、いずれも6本のアクチュエータを2本一組みに組み合わせた構成としアクチュエータの制御が複雑化するという問題がある。
【0010】
そこで本発明は上記従来技術の問題点を改善するため、動揺台装置及び動揺・安定台装置の高さを低く設定できるとともに装置全体の小型化を図ることを目的としている。
また本発明は動揺台及び安定台の制御を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の動揺装置は、ベースと、前記ベースに設けた支持部に支持され、直交した2軸の回りに傾動自在なトッププレートと、前記ベースと前記トッププレートとの間に傾斜して設けられるとともに、前記トッププレートの中心に対して放射状に配置され、自在継手を介して一端が前記ベースに、他端が前記トッププレートに接続された複数のアクチュエータと、前記直交する一方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第1回動信号を出力する第1信号発生部と、前記第1信号発生部の出力した前記第1回動信号を前記一方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第1回動信号の反転信号を前記一方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第1信号出力部と、前記直行する他方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第2回動信号を出力する第2信号発生部と、前記第2信号発生部の出力した前記第2回動信号を前記他方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第2回動信号の反転信号を前記他方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第2信号出力部と、を有することを特徴としている。
【0012】
この場合において、前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、正弦波状の回動信号を発生可能であることを特徴としている。
この場合において、前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、制御信号を微調整する出力調整部を備えたことを特徴としている。
【0013】
本発明の動揺・安定台装置は、ベースと、前記ベースに設けた支持部に支持され、直交した2軸の回りに傾動自在なトッププレートと、前記ベースと前記トッププレートとの間に傾斜して設けられるとともに、前記トッププレートの中心に対して放射状に配置され、自在継手を介して一端が前記ベースに、他端が前記トッププレートに接続された複数のアクチュエータと、前記直交する一方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第1回動信号を出力する第1信号発生部と、前記第1信号発生部の出力した前記第1回動信号を前記一方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第1回動信号の反転信号を前記一方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第1信号出力部と、前記直行する他方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第2回動信号を出力する第2信号発生部と、前記第2信号発生部の出力した前記第2回動信号を前記他方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第2回動信号の反転信号を前記他方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第2信号出力部と、前記トッププレートの傾動を検出する傾斜センサと、前記傾斜センサの出力する検出信号と前記第1回動信号とを加算する第1加算部と、前記傾斜センサの出力する検出信号と前記第2回動信号とを加算する第2加算部と、を有することを特徴としている。
【0014】
この場合において、前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、正弦波状の回動信号を発生可能であることを特徴としている。また前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、制御信号を微調整する出力調整部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上記のごとくなっている本発明は、直交した2軸の回り、すなわちロール軸あるいはピッチ軸の軸回りを回動自在に形成したトッププレートに接続するアクチュエータを傾斜させてベース上に配置してある。このため装置全体の高さを低く設定することができる。
【0016】
またアクチュエータはベースの中心から放射状に配置しているため装置全体の小型化を図ることができる。したがって高さ制限があり、設置スペースが限られている狭い船内等であっても十分に設置することができる。
【0017】
またピッチ軸あるいはロール軸の各軸を挟んで複数のアクチュエータを配置し、このアクチュエータごとに伸縮動作を同期させている。このため装置の剛性を保持するとともにトッププレートのロール角およびピッチ角の傾斜角を大きくとることができる。直交した2軸の回りの傾斜角を測定し、信号出力部で測定値が0となるように回動信号を出力しているので装置外部で発生した動揺を吸収することができる。また予め設定したローリング及びピッチングを発生させることができる。さらに外部で発生した動揺を吸収するとともに、装置のトッププレートに設定した動揺を発生させることができる。これにより航海中の船舶内であっても、航海練習または運転シミュレーションを行うことができる。
信号発生部にオフセット信号を付加することにより、入力信号の微調整(0調整)を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る動揺台装置及び動揺・安定台装置の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は実施形態に係る動揺台装置及び動揺・安定台装置のブロック図を示す。図2は実施形態に係る動揺台及び動揺・安定台の平面図を示し、図3は動揺台及び動揺・安定台の側面図を示し、図4は動揺台及び動揺・安定台の正面図を示す。
【0019】
動揺台(動揺・安定台)10のベース12は図3、図4に示すように後述するトッププレート14を支持する剛性を備えたプレートであり、中央部に一対の支持部18を垂直方向に立設させてある。支持部18は軸受け19を介して後述する十字軸23の一対の両端部を回動自在に支持している。
【0020】
十字軸23はピッチ軸20とロール軸22を直交させて一体に形成した軸である。十字軸23は上下の支持板間に回転自在に装着してある。本実施形態では説明の便宜上、支持部18がピッチ軸20を支持する構成について説明する。なお支持部18が支持する軸受け19はピッチ軸20またはロール軸22のどちらでもよい。
【0021】
トッププレート14は、任意の剛性を備えたプレートであって、前記ベース12と対向するように、十字軸23の上方に配置してある。トッププレート14は実施形態の場合、強度を保つため格子状に形成してある。トッププレート14は中央部の格子を形成する桟が設けられておらず、傾動したときにピッチ軸20を支持している軸受け19と干渉しないようにしてある。トッププレート14の下面側に配置した軸受け15a,15bはロール軸22の両端部を回動自在に支持している。
【0022】
アクチュエータ16は、シリンダロッド17を直線方向に伸縮可能な構成としている。アクチュエータ16の両端は、一方(下端)をベース12に、他方(上端)を前記トッププレート14に自在継手28を介して傾斜させて接続してある。本実施形態ではアクチュエータ16に例えばリニアアクチュエータを用いることができる。
【0023】
自在継手28は例えばボール軸受けなどの回動可能な構成とするとよい。実施形態に係るベース12の自在継手28はプレートの中央部であって、ピッチ軸20とロール軸22の中心(交点)60から放射状に4つ配置してある。一方トッププレート14の自在継手28はプレート中心から4隅方向に4つ配置してある。
【0024】
前記自在継手28にアクチュエータ16を設置すると、アクチュエータ16の配置はロール軸22とピッチ軸20の各々の軸に対し軸対称となり、ロール軸22とピッチ軸20の図2に示す中心60を中心としてベース12からトッププレート14へ放射状に4本(16a,16b,16c,16d)傾斜させて配置した構成となる。アクチュエータ16を傾斜させて接続することにより、ストロークが斜めに伸長する。よって十分な傾斜角が得られるように設定したストロークの長さを有するアクチュエータ16を配置でき、動揺台10の高さを低く設定することができる。
【0025】
上記構成により動揺台(動揺・安定台)10のトッププレート14は4本のアクチュエータ16の伸縮動作によってピッチ軸20及びロール軸22のそれぞれの軸回りを回動する。すなわちトッププレート14は図3に示すようにピッチ軸20を介して矢印24方向にピッチングし、また図4に示すようにロール軸22を介して矢印26方向にローリングする。
【0026】
次に上記動揺台(動揺・安定台)10を備えた動揺台装置(動揺・安定台装置)30について説明する。動揺台装置30の各アクチュエータ16a〜16dには、図示しない油圧ポンプが一体に設けられたモータ34a〜34dが配置してある。モータ34a〜34dにはそれぞれ増幅器38a〜38dを介して加算器36a〜36dが接続してある。
【0027】
動揺台(動揺・安定台)10はピッチ軸20回りの回動を検知するピッチ角度センサ40と、ロール軸22回りの回動を検知するロール角度センサ44を取付けてある。
【0028】
ピッチ角度センサ40はトッププレート14が水平のとき、出力値は0を示す。そして例えばトッププレート14が図3の反時計回りに回動したとき、ピッチ角度センサ40の出力値はマイナスの値を示す。
【0029】
ロール角度センサ44はトッププレート14が水平のとき、出力値は0を示す。例えばトッププレート14が図4の反時計回りに回動したとき、ロール角度センサ44の出力値はマイナスの値を示す。
【0030】
ピッチ角度センサ40の出力側は、第1信号出力部32に接続している。第1信号出力部32は第1加算器36pと増幅器38pと付号反転器42pを備えている。
【0031】
第1加算器36pは、ピッチ角度センサ40の検出信号と、第1信号発生部46の信号が入力し、これらを加算して増幅器38pに出力する。増幅器38pは第1加算器36pから入力した信号を増幅して出力する。
【0032】
増幅器38pの出力側は、符号反転器42pが接続してなるとともに加算器36a、36bが接続してある。付号反転器42pは増幅器38pの出力を反転させて加算器36c、36dに入力している。
【0033】
一方ロール角度センサ44の出力側は第2信号出力部33に接続している。第2信号出力部33は第2加算器36rと増幅器38rと符号反転器42rを備えている。
【0034】
第2加算器36rはロール角度センサ44の検出信号と、第2信号発生部48の信号が入力し、これらを加算して増幅器38rに出力する。増幅器38rは第2加算器36rから入力した信号を増幅して出力する。
【0035】
増幅器38rの出力側は、符号反転器42rが接続してなるとともに加算器36a、36cが接続してある。付号反転器42rは増幅器38rの出力を反転させて加算器36b、36dに入力している。
【0036】
加算器36aは、増幅器38rの出力信号と増幅器38pの出力信号が入力し、これらを加算して増幅器38aに出力する。
加算器36bは、符号反転器42rが反転した増幅器38rの出力信号と増幅器38pの出力信号が入力し、これらを加算して増幅器38bに出力する。
【0037】
加算器36cは、増幅器38rの出力信号と符号反転器42pが反転した増幅器38pの出力信号が入力し、これらを加算して増幅器38cに出力する。
加算器36dは、符号反転器42rが反転した増幅器38rの出力信号と符号反転器42pが反転した増幅器38pの出力信号が入力し、これらを加算して増幅器38dに出力する。
【0038】
次に上記構成による本発明の動揺台装置30の作用について以下説明する。
まず建屋内などに設置した動揺台装置30に動揺を発生させる制御方法について説明する。実施形態では例えば水平のトッププレート14をピッチ軸20回りに反時計方向に20度回動させる場合について説明する。
【0039】
第1信号発生部46から反時計方向に20度傾動させるプラスの回動信号を第1信号出力部32の第1加算器36pに入力する。第1加算器36pはピッチ角度センサ40の出力値0と、第1信号発生部46の信号がそのまま増幅器38pに入力される。増幅器38pでは入力信号を増幅して符号反転器42pに入力するとともに加算器36a,36bに与える。
【0040】
加算器36a,36bでは第2信号出力部33からの出力信号はなく、増幅器38pの出力信号をそのまま増幅器38a,38bによって増幅してモータ34a,34bに与える。モータ34a,34bは図示しない油圧ポンプを作動し、ピッチ軸20の一側となるアクチュエータ16a,16bのシリンダロッドを伸長する。
【0041】
一方、加算器36c,36dは符号反転器42pによって反転された増幅器38pの出力信号が与えられ、この出力信号を増幅器38c,38dによって増幅してモータ34c,34dに与える。モータ34c,34dは図示しない油圧ポンプを作動し、ピッチ軸20の他側のアクチュエータ16c,16dのシリンダロッドを縮小する。これによりトッププレート14は図3の反時計方向に傾動(回動)する。
【0042】
トッププレート14が図3の反時計方向に回動するとピッチ角度センサ40が回動角に対応したマイナスの検出信号を第1加算器36pに出力する。第1加算器36pは第1信号発生部46の出力信号にピッチ角度センサ40の出力値を加算する。そしてトッププレート14が20度回動すると第1信号発生部46の出力信号がピッチ角度センサ40の出力(検出信号)によって相殺されて第1加算器36pの出力が0となる。これによりトッププレート14はピッチ軸20回りを反時計方向に20度回動した状態を保持することになる。
【0043】
なおトッププレート14を図3の時計方向に傾動させる場合、第1信号発生部46からマイナスの回動信号を第1加算器36pに与える。これによりアクチュエータ16a,16bのロッドがシリンダに引き込まれて縮小し、アクチュエータ16c,16dのロッドが伸長する。トッププレート14が時計方向に傾動して、ピッチ角度センサ40が傾動角に対応したプラスの検出信号を第1加算器36pに入力する。
【0044】
次に水平のトッププレート14をロール軸22回りに反時計方向に20度回動させる場合について説明する。
第2信号発生部48から反時計方向に20度傾動させるプラスの回動信号を第2信号出力部33の第2加算器36rに入力する。第2加算器36rはロール角度センサ44の出力値0と、第2信号発生部48の信号がそのまま増幅器38rに入力される。増幅器38rでは入力信号を増幅して符号反転器42rに入力するとともに加算器36a,36cに与える。
【0045】
加算器36a,36cでは第1信号出力部32からの出力信号はなく、増幅器38rの出力信号をそのまま増幅器38a,38cによって増幅してモータ34a,34cに与える。モータ34a,34cは図示しない油圧ポンプを作動し、ロール軸22の一側のアクチュエータ16a,16cのシリンダロッドを伸長する。
【0046】
一方、加算器36b,36dは符号反転器42rによって反転された増幅器38rの出力信号が与えられ、この出力信号を増幅器38b,38dによって増幅してモータ34b,34dに与える。モータ34b,34dは図示しない油圧ポンプを作動し、ロール軸22の他側のアクチュエータ16b,16dのシリンダロッドを縮小する。これによりトッププレート14は図4の反時計方向に傾動(回動)する。
【0047】
トッププレート14が図4の反時計方向に回動するとロール角度センサ44が回動角に対応したマイナスの検出信号を第2加算器36rに出力する。第2加算器36rは第2信号発生部48の出力信号にロール角度センサ44の出力値を加算する。そしてトッププレート14が20度回動すると第2信号発生部48の出力信号がロール角度センサ44の出力(検出信号)によって相殺されて第2加算器36rの出力が0となる。これによりトッププレート14はロール軸22回りを反時計方向に20度回動した状態を保持することになる。
【0048】
なおトッププレート14を図4の時計方向に傾動させる場合、第2信号出力部48からマイナスの回動信号を第2加算器36rに与える。これによりアクチュエータ16a,16cのロッドがシリンダに引き込まれて縮小し、アクチュエータ16b,16dのロッドが伸長する。トッププレート14が時計方向に傾動して、ロール角度センサ44が傾動角に対応したプラスの検出信号を第2加算器36rに入力する。
【0049】
なお第1信号発生部46と第2信号発生部48に正弦波状の回動信号を入力することもできる。この場合動揺台装置30として用いるときは前記傾斜センサを用いる必要がない。例えばトッププレート14を±5度傾動させるための所定の周期で正弦波状に変化する回動信号を第1信号発生部46に入力すると、トッププレート14はピッチ軸20回りを図3の時計方向に5度傾動した後、反時計方向に5度傾動する。この動作を一定の周期で連続して繰り返すことにより、トッププレート14はピッチングする。
また第2信号発生部48についても同様に操作することができる。さらに第1信号発生部46と第2信号発生部48の両方に回動信号を入力することもできる。
【0050】
次に上記構成による本発明の動揺・安定台装置30の作用について以下説明する。動揺・安定台装置30を船体などの移動体に設置して、移動体から発生する動揺を吸収しトッププレート14を水平に保持する方法について説明する。
【0051】
まずトッププレート14を水平に保持する場合、第1信号発生部46及び第2信号発生部48には傾斜角度が水平となる回動信号0を入力する。
実施形態では例えばトッププレート14が図3のピッチ軸20回りを時計方向に回動(傾動)すると、ピッチ角度センサ40が、回動角度に対応したプラスの回動検出信号を検出して第1加算器36pに入力する。第1加算器36pはピッチ角度センサ40の出力信号を増幅器38pに入力する。増幅器38pで増幅された出力信号は、符号反転器42pと加算器36a,36bに入力される。加算器36a,36bから増幅器38a,38bを介してモータ34a,34bに出力信号が入力され、アクチュエータ16a,16bのロッドが伸長する。
【0052】
一方、加算器36c,36dから符号反転器42pで反転した出力信号が増幅器38c,38dを介してモータ34c,34dに入力され、アクチュエータ16c,16dのロッドが縮小する。これによりトッププレート14は反時計方向に回動し、水平に戻される。
【0053】
またトッププレート14が図3のピッチ軸20の反時計方向に回動すると、ピッチ角度センサ40がマイナスの検出信号を第1加算器36pに入力する。これにより加算器36a,36bには増幅器38pを介してマイナスの回動信号が入力される。このためモータ34a,34bはアクチュエータ16a,16bのロッドを縮小する。一方符号反転器42pによりプラスの検出信号が加算器36c,36dに入力され、モータ34c,34dはアクチュエータ16c,16dのロッドを伸長する。これによりトッププレート14は時計方向に回動させられて水平に戻される。これによりトッププレート14は水平に維持される。
【0054】
またトッププレート14がロール軸22回りに動揺した場合もピッチ軸20回りと同様に制御され、トッププレート14は水平に維持される。
さらにトッププレート14がピッチングとローリングの組み合わさった動揺をした場合、加算器36a〜36dには第1信号出力部32と第2信号出力部33とからピッチ角度センサ40及びロール角度センサ44の検出信号に基づいた信号が入力し、加算器36a〜36dごとにそれぞれ加算された回動信号によってトッププレート14は水平に維持される。
【0055】
次に動揺・安定台装置30を船体などの移動体に設置し、この動揺・安定台装置30に任意に設定した動揺を発生させる制御方法について説明する。
実施形態では例えば水平に維持したトッププレート14に対し、任意に設定した回動を与える場合について説明する。
【0056】
トッププレート14を水平に保持するため、第1信号発生部46及び第2信号発生部48には傾斜角度が水平となる回動信号0を入力する。ピッチ角度センサ40及びロール角度センサ44により検出された検出信号が0となるようにアクチュエータ16を制御する。これによりトッププレート14の水平が維持される。
【0057】
そして第1信号発生部46及び第2信号発生部48に任意に設定した回動信号を入力する。第1加算器36p及び第2加算器36rには信号発生部の回動信号とピッチ角度センサ40及びロール角度センサ44の検出信号が入力される。第1加算器36p及び第2加算器36rでは、回動信号及び検出信号を加算して増幅器38p,38rに入力する。増幅器38p,38rから加算器36a〜36dに増幅した信号が入力され、加算器36a〜36dでは増幅器38r及び38pの信号をそれぞれ加算してモータ34a〜34dを介してアクチュエータ16a〜16dが伸縮及び縮小し、トッププレート14は信号発生部の設定値の回動に維持される。
なお動揺台装置と同じく動揺・安定台装置においても、第1信号発生部46及び第2信号発生部48に正弦波状の回動信号を入力してもよい。
【0058】
図5にオフセット信号の説明図を示す。第1信号発生部46は図示のようにピッチ角度の回動信号が入力される信号生成部52と、加算器54と、出力調整部56を備えている。加算器54には信号生成部52の出力信号と、出力調整部56の出力信号が入力する。信号生成部52から加算器54に入力した回動信号に対して抵抗によって分割した直流電源の出力電圧を入力し0調整を行い、第1加算器36pに入力する。例えば動揺台装置(動揺・安定台装置)30のトッププレート14が水平のとき、ピッチ角度センサ40の出力と、第1信号発生部46の出力とが一致する、すなわち出力値が0となるように出力信号を調整することができる。
なお第2信号発生部48についても同様に構成し、0調整した回動信号を第2加算器36rに出力することができる。
【0059】
またピッチング及びローリングの2自由度を制御可能な動揺台装置(動揺・安定台装置)30は、トッププレート14上に回転台を載置する構成とすることもできる。回転台はトッププレート上を水平方向に回転可能な構成とし、回転台上でヨーイングの制御を行うことができる。このため衛生の追尾、GPS測位による方位、位置、高度情報を、移動体の動揺の影響を受けることなく測定することができる。
【0060】
なお実施形態に係る傾斜センサはピッチ角度センサ及びロール角度センサの2つを用いて説明したが、1台でピッチ軸及びロール軸の2軸回りの傾斜を測定可能な傾斜センサを用いることもできる。
【0061】
また実施形態に係るアクチュエータ16は例えば電動機の回転運動をボールねじで直線運動に変換する方式の電動アクチュエータ、電動油圧アクチュエータ、油圧シリンダなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態に係る動揺台装置及び動揺・安定台装置のブロック図を示す。
【図2】実施形態に係る動揺台及び動揺・安定台の平面図を示す。
【図3】実施形態に係る動揺台及び動揺・安定台の側面図を示す。
【図4】実施形態に係る動揺台及び動揺・安定台の正面図を示す。
【図5】オフセット信号の説明図である。
【図6】従来の動揺台を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1………動揺台、2………ベースプレート、3………トッププレート、4………ジンバル部、5………アクチュエータ、10………動揺台(動揺・安定台)、12………ベース、14………トッププレート、15………軸受け、16………アクチュエータ、17………シリンダロッド、18………支持部、19………軸受け、20………ピッチ軸、22………ロール軸、23………十字軸、28………自在継手、30………動揺台装置(動揺・安定台装置)、32………第1信号出力部、34………モータ、36………加算器、38………増幅器、40………ピッチ角度センサ、42………符号反転器、44………ロール角度センサ、46………第1信号発生部、48………第2信号発生部、52………信号生成部、54………加算器、56………出力調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに設けた支持部に支持され、直交した2軸の回りに傾動自在なトッププレートと、
前記ベースと前記トッププレートとの間に傾斜して設けられるとともに、前記トッププレートの中心に対して放射状に配置され、自在継手を介して一端が前記ベースに、他端が前記トッププレートに接続された複数のアクチュエータと、
前記直交する一方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第1回動信号を出力する第1信号発生部と、
前記第1信号発生部の出力した前記第1回動信号を前記一方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第1回動信号の反転信号を前記一方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第1信号出力部と、
前記直行する他方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第2回動信号を出力する第2信号発生部と、
前記第2信号発生部の出力した前記第2回動信号を前記他方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第2回動信号の反転信号を前記他方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第2信号出力部と、
を有することを特徴とする動揺台装置。
【請求項2】
前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、正弦波状の回動信号を発生可能であることを特徴とする請求項1記載の動揺台装置。
【請求項3】
前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、制御信号を微調整する出力調整部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動揺台装置。
【請求項4】
ベースと、
前記ベースに設けた支持部に支持され、直交した2軸の回りに傾動自在なトッププレートと、
前記ベースと前記トッププレートとの間に傾斜して設けられるとともに、前記トッププレートの中心に対して放射状に配置され、自在継手を介して一端が前記ベースに、他端が前記トッププレートに接続された複数のアクチュエータと、
前記直交する一方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第1回動信号を出力する第1信号発生部と、
前記第1信号発生部の出力した前記第1回動信号を前記一方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第1回動信号の反転信号を前記一方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第1信号出力部と、
前記直行する他方の軸の回りに前記トッププレートを回動させる第2回動信号を出力する第2信号発生部と、
前記第2信号発生部の出力した前記第2回動信号を前記他方の軸の一側に配置された前記アクチュエータに与えるとともに、前記第2回動信号の反転信号を前記他方の軸の他側に配置された前記アクチュエータに与える第2信号出力部と、
前記トッププレートの傾動を検出する傾斜センサと、
前記傾斜センサの出力する検出信号と前記第1回動信号とを加算する第1加算部と、
前記傾斜センサの出力する検出信号と前記第2回動信号とを加算する第2加算部と、
を有することを特徴とする動揺・安定台装置。
【請求項5】
前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、正弦波状の回動信号を発生可能であることを特徴とする請求項4記載の動揺・安定台装置。
【請求項6】
前記第1信号発生部と前記第2信号発生部とは、制御信号を微調整する出力調整部を備えたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の動揺・安定台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−10878(P2007−10878A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189953(P2005−189953)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(591038185)第一電気株式会社 (9)
【出願人】(000144049)株式会社三井造船昭島研究所 (27)