説明

動物の飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置

【課題】触媒燃焼システムを利用することにより、動物飼育実験施設から出る汚染された空気および汚水の加熱分解を同一単一設備で同時処理して、殺菌し、無毒化し、脱臭することを可能とする汚染物質の処理装置を提供すること。熱エネルギーおよび水資源の浪費を最も経済的に解消すること。
【解決手段】動物の飼育実験施設2から排出される汚染空気が導入される導入口と、加熱空気の排出口が設けられたハウジング17内に触媒燃焼処理部18が配置され、ハウジング17内において触媒燃焼処理部18に近接して、動物の飼育実験施設から排出される汚水の処理管19が配置されている、動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の飼育実験施設から排出された汚染空気および汚水を加熱分解することにより、滅菌および脱臭処理する触媒燃焼処理部を備えた汚染物質の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノム時代を迎え、感染・免疫を始めとした様々な生命現象の解明が進み、創薬やテーラメード医療への国際的な競争が本格化している。
【0003】
このような研究開発の中で遺伝子改変動物の重要性が高まり、急増する高規格の実験動物を一定条件下で飼育・実験するために新たな動物飼育実験施設の必要性が求められている。
【0004】
しかし、動物飼育実験施設では、病原生物(バクテリア、ウイルス、寄生虫、真菌等)や試験用ワクチン・試薬・創薬・発癌や環境汚染などの有害化学物質(例えば、発癌性物質、ホルムアルデヒド、水銀など)、あるいは実験動物の排泄物、消毒液、培養液、薬液等種々の化学物質あるいは生物の集塵を含む汚染物質が空気中に放出され、また汚水として排出される。
【0005】
このような汚染物質を大気中に放出したり汚水として排出すると、人や生態系に悪影響を及ぼし、また悪臭や大気汚染公害の原因となり、危険でもある。
【0006】
そこで、従来より、例えば、図10に示すような、動物の飼育実験施設から排出された汚染空気および汚水の処理システムが提案されている。
【0007】
図中、2は飼育実験施設であり、外気がこの飼育実験施設2内へ、空気調和器21、給気フィルター22を介して供給される。飼育実験施設2から排出された汚染空気および汚水は処理システム50によって処理される。この処理システム50は、粗塵フィルター51、高性能排気フィルター52、脱臭装置53、中和装置54、および排気ファン55を備え、汚染空気がこれらの機器によって外部へ排気される。飼育実験施設2からの汚水57は、蒸気滅菌器56によって滅菌された後、外部へ放出される。なお、図中58は蒸気滅菌器に接続された蒸気ボイラーである。
【0008】
このような処理システムにおいて、飼育環境の洗浄度を高め維持するには、実験施設全体を視野に入れ、飼育動物から出る多量の排泄物を周囲に拡散することなく、処理・搬出する工夫が必要で、特に、排泄物処理を行う洗浄室を如何に効率よく清潔環境を維持できるかがキーポイントとなる。
【0009】
国立大学を始めとする昭和40年代後半から昭和50年代半ばに建築された多くの動物施設では、従来の手法でこれらの要求を満たすには多額の経費を必要とするだけでなく、運用面でも柔軟性に欠け、充分な対応ができない状態にあった。
【0010】
一例として、ある施設では、実験用マウス約1万5千匹を約3千個の飼育ケージ(樹脂製の透明な容器)に収容し、汚れた飼育ケージは週1回のペースで清潔な飼育ケージへと交換する必要があり、年間約15万個の飼育ケージの洗浄・蒸気滅菌と飼育清掃に年間約5千時間を費やしている。その結果、年間約57,000Nmの都市ガスを消費し、年間水量80万リットルの資源を消費している。
【0011】
また、薬剤処理を必要とするので薬剤を定期的に補充するなどの管理に手間がかかり、また比較的広い敷地面積を必要とする。
【0012】
さらに、例えば特開2004−65307号公報(特許文献1)には、フィルター収納ボックスと、脱臭用ボックスよりなり、フィルター収納ボックス内には病原性微生物用のフィルターが設けられ、脱臭用ボックス内には滅菌用のホルムアルデヒド蒸気注入手段と、中和用のアンモニア蒸気注入手段が設けられ、さらに脱臭用ボックスには触媒フィルターが介挿され、触媒フィルターの気体導入側にはオゾン注入手段または酸素クラスターが設けられた気体の滅菌、脱臭装置が開示されている。
【0013】
しかし、上記装置では、従来型フィルターを基調とした排気処理で、酸素クラスターの効果を高めるために設けられており、細菌類の殺菌、脱臭は、酸素クラスターからのオゾンに依っている。触媒フィルターは、過剰なオゾンの中和に用いている。そのため、使用後の従来型フィルターの消毒、滅菌および取替えが必要である。フィルターは設置スペースを必要とし、また圧損も大きい。さらに、湿度、水分によってフィルターの細孔が収縮するため、フィルターの孔が開きそのため防塵効率が低下するという欠点がある。
【0014】
また、このような滅菌、脱臭装置は取り扱いが不便であり、また上記したように薬剤を定期的に補充するなどのメンテナンスを必要とし、さらにこのような除菌方法ではプリオンなどは消滅しない。また、汚水処理を対象としていない。
【0015】
さらに、特開平11−277040号公報(特許文献2)には、ガスバーナー、石油バーナー、電気ヒーターなどの燃焼具を備えた生ごみ脱臭装置が開示され、特開2001−17449号公報(特許文献3)には、発熱体および脱臭触媒を有する脱臭装置を備えた生ごみ処理装置が開示されている。
【0016】
しかし、これらは、動物を飼育する実験施設からの汚染物質を対照とするものではなく、またガスバーナー、石油バーナーなどの燃焼具を備えた装置は、取り扱いが不便で、メンテナンスにも問題がある。特許文献2においては、加熱は、生ごみの発酵分解を促進するための乾燥空気作りである。また、脱臭は発酵分解による、高温熱処理でない。
【特許文献1】特開2004−65307号公報
【特許文献2】特開平11−277040号公報
【特許文献3】特開2001−17449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、動物飼育実験施設に費やされる上記業務の大幅改善だけでなく、同時に多量に消費される都市ガスや水の資源を節減でき、また環境アセスメントの立場から洗浄汚水の処理やガス消費による二酸化炭素や窒素酸化物の排出を削減でき、さらに高規格実験動物の清浄環境を乱す要因になる清掃作業や、排泄物中に含まれる飼育動物尿蛋白アレルゲン等の拡散・暴露を抑制等、多額の経費を要せず、既存施設の機能を高めることにある。
【0018】
本発明の他の目的は、薬剤処理を必要とせず、管理が容易であり、さらに広い敷地面積を必要ともしない動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、取り扱いが容易であり、プリオンなどでも完全に消滅できる汚染物質の処理装置を提供することを目的とする。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、施設の運営維持経費の大幅な軽減を可能とする汚染物質の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置は、動物の飼育実験施設から排出される汚染空気が導入される導入口と、加熱空気の排出口が設けられたハウジング内に触媒燃焼処理部が配置され、該ハウジング内において該触媒燃焼処理部に近接して、動物の飼育実験施設から排出される汚水の処理管が配置されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0022】
一つの実施形態では、前記汚水処理管の排出口が前記汚染空気の排出口に連通されている。
【0023】
一つの実施形態では、前記汚水処理管の排出口から気化された汚染空気が排出され、前記汚染空気の排出口に送られる。
【0024】
一つの実施形態では、前記触媒燃焼処理部によって処理された加熱空気の温度が、
350℃以上である。
【0025】
本発明の他の動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置は、動物の飼育実験施設から排出された汚染空気を加熱処理する触媒燃焼処理部と、該触媒燃焼処理部に近接して配設されており、動物の飼育実験施設から排出される汚水の処理管と、該触媒燃焼処理部から排気される熱風を利用した熱交換器と、該触媒燃焼処理部によって処理された加熱空気を熱湯にて洗浄する熱湯洗浄装置と、該熱湯洗浄装置から送られた汚水を沈殿させる沈殿槽と、沈殿槽から送られた水を濾過する濾過器と、該濾過器内の水を該熱交換器へ供給する第1の供給管、とを有し、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
本発明の汚染物質の処理装置は、汚染空気が導入される導入口と、加熱空気の排出口が設けられたハウジング内に触媒燃焼処理部が配置され、該ハウジング内において該触媒燃焼処理部に近接して、汚水の処理管が配置されている。
【0027】
本発明の汚染物質の処理システムは、上記汚染物質の処理装置と、該汚染物質の処理装置から排出される加熱空気と熱交換する熱交換器と、該熱交換器にて熱交換された熱水の循環システムと、を有する。
【0028】
なお、本発明で、動物飼育実験施設からの排出される汚染空気とは、空気・接触・経口等の手段により人体に感染し、重篤な疾患・奇形や死に至らしめる病原生物や試験用ワクチン・試薬・創薬・発癌や環境汚染などの有害化学物質を接種あるいは暴露させた実験動物の呼気、汗腺や糞尿から排泄される各種危険因子や、実験動物が保有する病原生物や人に鼻炎や重篤な喘息疾患を及ぼすマウスの抜け毛、尿蛋白アレルゲンや動物排泄物による悪臭等の人や生態系に悪影響を及ぼす危険因子を含有する気体をいう。
【0029】
また、本発明で動物飼育実験施設からの排出される汚水とは、空気・接触・経口等の手段によって人体に感染し、重篤な疾患、奇形や死に至らしめる病原生物、試験用ワクチン・試薬・創薬や有害化学物質、等を接種あるいは暴露させた実験動物の飼育実験中に派生する動物用飲料水の残水や消毒液、培養液、薬液等の人や生態系に悪影響を及ぼす危険因子を含有する液体をいう。
【発明の効果】
【0030】
本発明の効果は以下の通りである。
(1)本発明の汚染物質の処理装置を利用することにより、動物飼育実験施設から出る汚染された空気および汚水を高熱にて分解することにより殺菌し、また有毒化学成分を分解して無害化し、また同時に脱臭することができる。このような処理を同一でかつ単一の設備で同時に処理できる。
(2)触媒燃焼処理部を利用し、汚染空気および汚水を加熱分解処理することにより、殺菌分解および脱臭を同一でかつ単一設備で同時処理することができ、排気空気は完全に清浄化され、環境汚染を解決する。
(3)触媒燃焼システムによる同時処理中に発生するエネルギーを熱交換システムにより完全に熱回収再利用することにより、施設の運営維持経費の大幅な軽減を可能とする。
(4)触媒燃焼システムによる同時処理中に、発生するエネルギーを熱交換システムにより完全に熱回収再利用することにより、必要な水を還流させ、何度も再利用することを可能とし、エネルギーおよび水資源の大幅な削減、節水を可能とする。
(5)以上のとおり、動物飼育、汚染処理、熱回収及び再利用、水資源節約、維持管理、作業工程、縮小化等を目的とする環境保全型動物飼育実験施設トータルシステムは、動物飼育実験施設の小型化、安全化、隔離化、環境保全化、投資軽減化、運営、管理、維持費のコスト削減化、資源節約化等を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0032】
本発明の動物の飼育実験施設から排出された汚染空気および汚水の処理システムAを図1に示す。
【0033】
図1中、2は飼育実験施設であり、外気がこの飼育実験施設2内へ、空気調和器21および給気フィルター22を通って供給される。飼育実験施設2から排出された汚染空気および汚水は汚染物質の処理システムAによって処理される。
【0034】
この処理システムAは、汚染空気および汚水を共に加熱処理する触媒燃焼処理装置1、この触媒燃焼処理装置1から排気される加熱空気の下流側に接続された熱交換器3を備えている。
【0035】
該熱交換器3では、触媒燃焼処理装置1から送られた高温熱風を利用して熱水あるいは温水を得、この熱水あるいは温水は、例えば、次のように使用することができる。
【0036】
熱交換器3内に導管31が通され、熱水が蒸気ボイラー32の補給水として使用され、また洗浄機33へ送られ洗浄温水として使用される。この洗浄機33では、例えば飼育実験施設内で使用された飼育ケージ等が洗浄される。
【0037】
洗浄機33からの水は、次に沈殿槽34に送られ、濾過された水が導管35を介して上記熱交換器3内の導管31へ循環されるように構成されている。この導管31へは水道水が適宜補充される。
【0038】
上記触媒燃焼処理装置1は、図1に示すように、ハウジング17と、このハウジング17内に配設された触媒燃焼処理部18と、触媒燃焼処理部18に近接して配置された汚水の処理管19と、を有している。
【0039】
触媒燃焼処理部18として、具体的には種々の実施形態のものを使用することができる。
【0040】
図2aに示したものは、ハウジング17内に円筒状の触媒燃焼処理部18を配置し、触媒燃焼処理部18の周囲に汚水処理管19をコイル状(あるいは蛇腹状)に巻いて配置したものであり、汚染空気の入口41と出口42は、ハウジング17の両端部にそれぞれ形成されている。なお、図中Aは汚染空気を、Lは汚水を示す。
【0041】
図2bに示したものは、ハウジング17内に円筒状の触媒燃焼処理部18を配置し、触媒燃焼処理部18の内側に汚水処理管19を螺旋状に通したものである。
【0042】
図2cのものは、ハウジング17内に板状の触媒燃焼処理部18を複数配置し、その触媒燃焼処理部18の前面および後面に汚水処理管19を螺旋状に配置したものである。
【0043】
図2dおよび図9のものは、ハウジング17内に矩形状の触媒燃焼処理部18を配置し、その触媒燃焼処理部18内に汚水処理管19を蛇腹状に通したものである。
【0044】
上記のいずれの触媒燃焼処理部18においても、汚染空気および処理管を通る汚水は約350℃以上に加熱されるので、汚染空気および汚水中の病原性物等や無機物は分解され殺菌され無害化される。
【0045】
上記触媒燃焼処理部18としては、ワイヤメッシュ、ハニカム状あるいはペレット状の金属製担体に、触媒を担持させたもので構成することができる。
【0046】
担体としては、ステンレス、鉄などの通電性を有するもので構成でき、触媒としては、ニッケル、パラジウム、ロジウムなどの1種または2種以上の白金族金属又はその金属塩を使用することができる。上記担体上にアルミナ、ゼオライト、シリカなどのセラミック素材をコーティングするとともに、触媒を複合状態で担持させて構成することができる。
【0047】
上記担体に通電することによって触媒を加熱でき、有機物などが燃焼により分解され殺菌が行われる。触媒の燃焼温度は、350℃以上が好ましい。触媒反応器を備えた脱臭装置が特開2003−62429号公報に開示されている。この脱臭装置を本発明にも用いることができる。
【0048】
また、本発明の処理装置は、化石燃料を使用せず、環境アセスメントの立場から熱源を電力のみとし、触媒燃焼で350℃以上の高温下で、汚染空気と汚水を同時に分解することにより、除菌、脱臭し、200℃以上の熱風気化として排気するものである。
【0049】
上記ハウジング17内に配置した汚水処理管19をコイル状に形成した理由は、液体の気化熱量が気体より大きいため、ハウジング17内の汚水の滞留時間を長くし、汚水に必要な熱量を吸収させるためである。高温のハウジング17内に液体を直接取り込む場合は、ハウジング17内の破裂や触媒燃焼処理部等の破損を防ぐおそれがある。さらに、熱源を電力とする触媒燃焼処理部の漏電を防ぐためである。
【0050】
触媒燃焼でハウジング内の温度は、典型的には350℃が好ましく、熱風排気温度は200℃が好ましい。
【0051】
汚水処理管19としては、例えば、内径12mmのステンレス製管で形成することができ、その処理風量は24Nm/h程度が好ましく、その汚水量は5リットル以上が好ましく、汚水処理管の長さは、処理量に応じて適宜設定することができる。
【0052】
なお、図3は他の実施形態を示したものである。
【0053】
図3に示すように、動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置は、動物の飼育実験施設2から排出された汚染空気を加熱処理する触媒燃焼処理装置1と、該動物の飼育実験施設2から排出された汚水を通して加熱殺菌する該触媒燃焼処理装置1に設けた熱交換器3と、を備えている。
【0054】
この実施形態では、触媒燃焼処理装置1の周囲に熱交換器3が設けられている。
【0055】
該触媒燃焼処理装置1によって処理された加熱空気は第2の熱交換器25へ送られる。第2の熱交換器25から熱湯洗浄装置4へ加熱空気は送られ、ここで熱湯にて洗浄される。熱湯洗浄装置4内で生じた汚水は、次に沈殿槽5へ送られて沈殿物が沈殿し、表面水Wは濾過器6へ送られる。濾過器6内には中空繊維よりなるフィルターが配設されている。
【0056】
濾過器6内で濾過された清浄水は、上記熱交換器3へ供給管7にて供給される。この熱交換器3にて熱交換された熱湯は、第2の供給管8にて前記熱湯洗浄装置4へ送るように構成されている。
【0057】
汚水の処理管19は、上記供給管7に接続しても良く、あるいは気化した後放出するようにしてもよい。図3において、9は動物施設のラック、10はケージ、11は空気孔、13は配管である。
【0058】
上記触媒燃焼処理装置1は、処理する汚染物質の量によって、その運転条件、処理速度、触媒の種類等を変更することができる。触媒燃焼処理装置1のランニングコストは、熱回収率に依存する。触媒燃焼処理装置1の触媒の寿命は、典型的には40,000〜100,000時間である。よって、本発明の装置は24時間/365日、連続運転が可能である。また触媒燃焼であるため炎は出ないので安全である。
【0059】
なお、図4〜図7に示すように、触媒燃焼処理装置1は、基本的に以下の二つのタイプに分類することができる。
【0060】
図4〜図5に示すパイプ状タイプと図6〜図7に示す仕切り型タイプである。
【0061】
図4に示すものは、ワイヤメッシュにて円筒状に形成し、触媒を担持させたものである(パイプ状単層タイプ)。汚染空気は、その筒内を通過する際に分解され、同時に殺菌と脱臭が行われる。
【0062】
図5示すものは、ワイヤメッシュにて円筒状に形成した内側の筒体14と、同じく外側の筒体15とで構成し、内側筒体14および15に触媒を担持させたものである(パイプ状多層タイプ)。汚染空気は、両側の筒体14および15内を通過する際に分解される。
【0063】
図6に示すものは、筒体16内にワイヤメッシュにて形成した円板26を配置し、その円板に触媒を担持させたものである(仕切り型単層タイプ)。汚染空気は、その円板を通過する際に分解される。
【0064】
図7に示すものは、筒体16内にワイヤメッシュにて形成した円板26を空気の流れ方向に複数配置し、その円板に触媒を担持させたものである(仕切り型多層タイプ)。汚染空気は、各円板を通過する際に分解される。
【0065】
図8に示した装置は、触媒燃焼処理装置1の前部に熱交換器3を配置して汚染空気を加熱処理し、触媒燃焼処理部1の後部に汚水管19を配置して汚水を加熱処理するようにしたものである。
【0066】
このような殺菌方法によれば、触媒を用いて有機成分を燃焼させて殺菌を行うので、特に触媒燃焼処理装置1内の温度を350℃以上にすると、完全に殺菌でき、また臭気成分を脱臭できる。触媒燃焼処理装置1内を通過する汚染空気の滞留速度、滞留時間は汚染物質や目的に応じて適宜設定することができる。
【0067】
なお、従来の熱発生装置として、蒸気発生ボイラーなどのボイラーの点火方式を用いる場合は、自動車に用いられる点火プラグと同様、スパークによる着火が主流である。ボイラーは屋外に設置されるため、梅雨時の湿気や冬季の結露によりスパークしないことが起こり、その都度プラグを乾燥させなければならず、着火回数が増えれば、プラグの寿命が短くなる。しかし、電気を熱源とする触媒燃焼方式は、上記課題が解決されるとともに、ボイラー装置の小型化、取り扱いが容易であり、また保守修理が容易であるという利点があり、さらにガス工事の必要もなく、設置も容易である。
【0068】
このように、触媒燃焼システムを利用することにより、動物飼育実験施設2から出る汚染された空気を加熱分解して殺菌および無害化し同時に脱臭することができ、これらの処理を同一単一設備で同時に実施できる。
【0069】
また、触媒燃焼による有害生物及び物質の無害化と、触媒燃焼の再利用が提供できる。また、窒素酸化物、炭素酸化物を排出しない有害気体及び流体の無害化処理方法が提供できる。
ここで、有害物質とは飼育中の臭気・アレルゲン(飼育動物の尿淡白)、飲料水の残水、薬剤(消毒液、暴露剤)などがある。有害生物とは、飼育動物由来の細菌、ウイルス、寄生虫、真菌などがある。温水製造、汚水処理には、触媒燃焼の熱回収として、伝導熱、排気熱利用がある。
【0070】
なお、本発明は、以下の無臭・クリーンな空気の供給も可能である。
(1)病院の手術室やワクチンなどの薬剤製造
(2)家畜飼育産業、食品加工業、ペット飼育業、バイオ産業
(3)半導体素子の製造組立
(4)化粧品・香料調合等の無臭実験室など
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は本発明の一実施形態の汚染物質の処理装置の全体図である。
【図2】図2は触媒燃焼処理部の一実施形態の概略図である。
【図3】図3は汚染物質の処理装置の他の実施形態の全体図である。
【図4】図4は触媒燃焼処理部のさらに他の実施形態の概略図である。
【図5】図5は触媒燃焼処理部のさらに他の実施形態の概略図である。
【図6】図6は触媒燃焼処理部のさらに他の実施形態の概略図である。
【図7】図7は触媒燃焼処理部のさらに他の実施形態の概略図である。
【図8】図8は処理装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図9】図9は触媒燃焼処理部の概略図である。
【図10】図10は従来の汚染物質の処理装置の全体図である。
【符号の説明】
【0072】
1 触媒燃焼処理装置
2 動物の飼育実験施設
3 熱交換器
4 熱湯洗浄装置
5 沈殿槽
6 濾過器
7 第1の供給管
8 第2の供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の飼育実験施設から排出される汚染空気が導入される導入口と、加熱空気の排出口が設けられたハウジング内に触媒燃焼処理部が配置され、該ハウジング内において該触媒燃焼処理部に近接して、動物の飼育実験施設から排出される汚水の処理管が配置されている、動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置。
【請求項2】
前記汚水処理管の排出口が前記汚染空気の排出口に連通されている請求項1に記載の汚染物質の処理装置。
【請求項3】
前記汚水処理管の排出口から気化された汚染空気が排出され、前記汚染空気の排出口に送られる請求項1又は2に記載の汚染物質の処理装置。
【請求項4】
前記触媒燃焼処理部によって処理された加熱空気の温度が、350℃以上である請求項1乃至3のいずれかの項に記載の汚染物質の処理装置。
【請求項5】
動物の飼育実験施設から排出された汚染空気を加熱処理する触媒燃焼処理部と、該触媒燃焼処理部に近接して配設されており、動物の飼育実験施設から排出される汚水の処理管と、該触媒燃焼処理部から排気される熱風を利用した熱交換器と、
該触媒燃焼処理部によって処理された加熱空気を熱湯にて洗浄する熱湯洗浄装置と、該熱湯洗浄装置から送られた汚水を沈殿させる沈殿槽と、沈殿槽から送られた水を濾過する濾過器と、該濾過器内の水を該熱交換器へ供給する第1の供給管、とを有する動物飼育実験施設から排出される汚染物質の処理装置。
【請求項6】
汚染空気が導入される導入口と、加熱空気の排出口が設けられたハウジング内に触媒燃焼処理部が配置され、該ハウジング内において該触媒燃焼処理部に近接して、汚水の処理管が配置されている汚染物質の処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の汚染物質の処理装置と、該汚染物質の処理装置から排出される加熱空気と熱交換する熱交換器と、該熱交換器にて熱交換された熱水の循環システムと、を有する汚染物質の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−135402(P2007−135402A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329086(P2005−329086)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(505422578)有限会社イートロン (1)
【Fターム(参考)】