説明

動物用コルセット

【課題】装着が容易で、異なる体型(例えば胴体の太さや長さ)を有する動物にも調整でき、効果的に脊椎などの動きを制限したり歪みを矯正したりすることができる。
【解決手段】背部などをほぼ覆って筒状にされるシート状のコルセット本体1と、前足を受け入れる前足受入れ部2とを備え、コルセット本体1には端部を着脱自在に連結する係合部材13,23が形成され、ほぼ前端部から後端部に至るように心材12,22が配置され、コルセット本体1が、前躯部分に配置されるコルセット本体前躯部10と、後躯部分に配置されるコルセット本体後躯部分20とに分割され、コルセット本体前躯部分10及びコルセット本体後躯部分20には両者を着脱自在に連結する係合部材28a,28bが形成され、後ろ足が受け入れられる後ろ足受入れ部3が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫などの四足歩行の動物を対象とした、胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり歪みを矯正したりするために使用される動物用コルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
動物の胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり歪みを矯正したりするためにコルセットを着用させるということは考えられてはいない。したがって、動物の胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり歪みを矯正したりするコルセットのような器具も存在しない。
【0003】
これに対し、人間に対して胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり、歪みを矯正したりするコルセットは種々提案されている。
【0004】
このような人間用のコルセットの例としては、特許文献1に示すように、人間の腰部に巻き付けて装着する全体が横長の帯状に形成されたコルセット本体と、このコルセット本体の左右両側部に設けられた互いに係止させられる係止手段とからなり、コルセット本体を腰部に装着した状態で、係止手段を用いて腹部側にて連結して人体に装着するようにしている。コルセット本体の上縁部がウエスト部分まで位置し、コルセット本体の下縁部は腹部側が少なくとも足の付け根部分よりも上部に位置し、臀部側が臀部のトップラインよりも下方に位置するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−181057号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の人間用のコルセットは、人間の体型を元に考案されているので、動物用のコルセットとして適用した場合には、次のような問題がある。
【0007】
(1)動物の立位状態では、腹部が床面に向いているので、腹部に係止手段がある上述した人間用コルセットを動物の飼育人が装着しようとした場合、飼育人が動物の腹部の下に回りこまなければならず面倒である。動物が装着することを嫌がって体を伏せてしまった場合は、腹部に回り込むことができずさらに面倒であり、装着不能となる場合も多い。
【0008】
(2)動物の後ろ足の付け根は、人間に比べてより頭側方向に付いているので、上述した人間用コルセット本体ではその腹部側の下縁部と後ろ足の付け根が干渉したり接触したりしてぶつかりやすい。
【0009】
(3)このような動物の後ろ足の付け根との干渉を防止するためには、上述した人間用のコルセット本体における腹部側の下縁部を大きくカットすることが考えられるが、腹部側の下縁部をカットしてしまうと骨盤を覆う面が少なくなり、骨盤部のサポートが不十分になり、コルセットにより胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり歪みを矯正したりする効果が低下してしまう。
【0010】
(4)雄動物の陰茎は、人間に比べてより頭側方向にあり、また陰茎よりも尾側方向には骨盤が位置することが多いので、上述した人間用のコルセット本体で骨盤を覆うと陰茎も同時に覆われるように配置されることになり、特に雄動物が放尿をすると尿がコルセット本体にかかってしまい不衛生である。
【0011】
(5)人間用のコルセット本体の上縁部はウエスト部分までのものが多いが、これでは動物のウエスト部分は脊椎疾患が発生しやすい部位であることから、動物のウエスト部分を十分に覆う長さにしなければならないが、上述した人間用のコルセット本体では上縁部の長さが短く固定力が弱い。
【0012】
(6)動物の性格的気質上、コルセットのような体の動きを制限するものは装着することを嫌がり、コルセットを脱ぐことを試みることが多く、上述した人間用のコルセットでは動物の動作により外れたり位置ずれが生じたりしやすい。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、動物への装着が容易で、動物の体型などにも適合し、効果的に胸椎、腰椎、骨盤の動きを制限したり歪みを矯正したりすることができる動物用コルセットを提供することにある
【0014】
本発明の第2の目的は、1つの動物用コルセットで複数の大きさ(例えば胴体太さや長さ)を有する動物に対応することができる動物用コルセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、以下のような手段を採用した。
(1)動物の腹部、背部、骨盤部をほぼ覆って筒状にされるシート状のコルセット本体と、動物の前足を受け入れる前足受入れ部とを備え、コルセット本体には、隣接させられる端部を着脱自在に連結する連結部が形成されるとともに、動物に装着した場合に動物の背骨に沿うようにほぼ前端部から後端部に至るように心材が配置されている動物用コルセットにおいて、コルセット本体が、動物の前躯部分に配置されるコルセット本体前躯部分と、動物の後躯部分に配置されるコルセット本体後躯部分とに分割され、当該コルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分の隣接させられる部分には両者を着脱自在に連結する連結部が形成されている。
(2)動物の後ろ足を受け入れる後ろ足受入れ部を備えている。
(3)コルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分の少なくとも一方が動物の背部に配置される背部覆い体と動物の腹部に配置される腹部覆い体とに分割され、当該背部覆い体及び腹部覆い体の隣接する部分には両者を着脱自在に連結する連結部が形成されている。
(4)前足受入れ部及び後ろ足受入れ部の少なくとも一方がコルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分とは別部材から形成されるとともに、コルセット本体前躯部分又はコルセット本体後躯部分に着脱自在に連結される連結部が形成されている。
(5)後ろ足受入れ部が、動物の左右に配置される左右部分と、当該左右部分の中間位置を動物に装着した場合に動物の内股に対応する部分において架橋して連結する連結部とを備える。
(6)コルセット本体後躯部分には動物の後ろ足を持ち上げるための吊り部が形成されている。
(7)コルセット本体前躯部分には動物に力を付与する場合に手がかりとして使用する手がけ部が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
(1)動物の背骨に沿うようにほぼ前端部から後端部に至るように配置された心材により、背骨の動きを制限したり脊椎の歪みを矯正したりすることができる。さらに、前足受入れ部に動物の前足を受け入れさせることにより、動物がコルセット本体を排除しようと動作した場合でもコルセット本体がずれたり外れたりすることが防止できる。しかも、コルセット本体前躯部分とコルセット本体後躯部分とに分割されたコルセット本体を用いているので、コルセット本体を装着する動物の大きさが各種あってもコルセット本体前躯部分とコルセット本体後躯部分との重合代を調整して連結部により連結することにより、1つの動物用コルセットで複数の大きさを有する動物に対応することができる。
(2)後ろ足受入れ部に動物の後ろ足を挿受け入れさせることによりコルセット本体を確実に動物に装着することができる。前足受入れ部及び後ろ足受入れ部に動物の四肢を通せば、前足受入れ部及び後ろ足受入れ部が四肢の付け根に引っ掛かり胴体から前後左右にずれる心配がなく、動物がコルセット本体の装着を嫌がって脱ぐことを試みても、四肢が届かずに脱ぐことができず、コルセットの装着を長時間持続することができる。
(3)背部覆い体と腹部覆い体とを連結部で着脱自在に連結して装着することができ、連結部における重合代を変えることにより背部覆い体及び腹部覆い体により形成されるコルセット本体前躯部分又はコルセット本体後躯部分の巻き径を調整することができ、1つの動物用コルセットで異なる胴体太さを有する複数の動物に対応することができる。
(4)前足受入れ部や後ろ足受入れ部をコルセット本体と別部品により形成すれば、コルセット本体をおおよそ動物に装着した後に前足受入れ部及び後ろ足受入れ部を装着することができ、本動物用コルセットの装着を嫌がる動物に対しても容易に装着することができる。
(5)後ろ足受入れ部において、左右部分を架橋して連結する連結部を動物に装着した場合に動物の陰のうと肛門との間に対応する部分になるようにしたものでは、陰茎と陰のうとの間の敏感な局部を避けて連結部を配置することができ、動物への負担を軽くすることができる。さらに、敏感な場所を避けるようにしているので、後ろ足受入れ部を取り付ける際の調整が容易になる。行うことができる。
(6)コルセット本体後躯部分に形成した吊り部に動物の後ろ足を持ち上げるための吊り具を取り付け、当該吊り具を牽引することにより動物の胴体にしっかり固定されたコルセット本体を介して動物の後ろ足を持ち上げて主として前足のみで歩行させることができる。本コルセットを装着しなければならないような症状を発症した動物には往々にして後ろ足に障害が出ることが多いが、吊り具で牽引することにより動物の歩行を助けることができる。
(7)コルセット本体前躯部分に形成した手がかり部に指などを挿入して動物に荷重を付加させて、気ままな動作をしようとする動物の動きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図4】図3に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図6】図5に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図8】図7に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図10】図9に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する一部品を表面(外面)から見た状態を示す図である。
【図12】図11に示す部品を裏面(内面)から見た状態を示す図である。
【図13】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図14】図13に示す状態を動物の背側から見た図である。
【図15】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図16】図15に示す状態を動物の腹側から見た図である。
【図17】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図18】図17に示す状態を動物の背側から見た図である。
【図19】図17に示す状態を動物の腹側から見た図である。
【図20】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図21】図20に示す状態を動物の背側から見た図である。
【図22】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図23】図22に示す状態を動物の腹側から見た図である。
【図24】本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の側面から見た図である。
【図25】図24に示す状態を動物の背側から見た図である。
【図26】図24に示す状態を動物の腹側から見た図である。
【図27】本発明の実施の他の形態に係る動物用コルセットを構成する部品を動物に装着した状態を動物の腹側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態の動物用コルセットについて、詳細に説明する。本動物用コルセットは主として犬に装着して使用されるものである。使用例としては、例えば椎間板ヘルニアを患った犬に使用する場合が考えられ、更に椎間板ヘルニアになりそうな犬に予防的に使用したり、椎間板ヘルニアの手術後に骨が安定するまでの約8週間に使用したりするものである。
【0019】
図1〜図12は、本実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品を示す図であり、図13〜図26は、当該各部品を動物に装着する手順(装着状態)を示す図であり、図27は本実施の他の形態にかかる部品の装着状態を示す図である。
【0020】
本実施の一形態の動物用コルセットは、図24に示すように、動物の腹部、背部、骨盤部をほぼ覆って筒状にされるシート状のコルセット本体1と、動物の前足を受け入れる前足受入れ部2と、動物の後ろ足を受け入れる後ろ足受入れ部3を備えて概略構成される。
【0021】
コルセット本体1は、動物の前躯部分に配置されるコルセット本体前躯部分10と、動物の後躯部分に配置されるコルセット本体後躯部分20とに分割され、当該コルセット本体前躯部分10及びコルセット本体後躯部分20の隣接させられる部分には両者を着脱自在に連結する連結部(係合部材28a,28b)が形成されている。
【0022】
コルセット本体前躯部分10は、動物の前躯の背部を覆う背部覆い体10aと、動物の前躯の腹部を覆う腹部覆い体10bとに分割され、背部覆い体10a及び腹部覆い体10bの両端には隣接する部分を着脱自在に連結する連結部(係合部材13)が形成されている。
【0023】
コルセット本体後躯部分20は、動物の後躯の背部を覆う背部覆い体20aと、動物の後躯の腹部を覆う腹部覆い体20bとに分割され、背部覆い体20a及び腹部覆い体20bの両端には隣接する部分を着脱自在に連結する連結部(係合部材23)が形成されている。
【0024】
コルセット本体前躯部分10及びコルセット本体後躯部分20には、動物に装着した場合に動物の背骨に沿うようにほぼ前端部から後端部に至るように心材12及び心材22が配置されている。
【0025】
前足受入れ部2及び後ろ足受入れ部3は、コルセット本体前躯部分10及びコルセット本体後躯部分20とは別部材から形成されており、コルセット本体前躯部分10又はコルセット本体後躯部分20に着脱自在に連結する連結部(係合部材14a,14b又は係合部材24など)が形成されている。
【0026】
コルセット本体後躯部分20には動物の後ろ足を持ち上げるための吊り部25が形成されている。また、コルセット本体前躯部分10には動物に力を付与する場合に手がかりとして使用する手がけ部15が形成されている。
【0027】
以下に、本発明の実施の一形態に係る動物用コルセットを構成する部品について説明する。
【0028】
図1及び図2に、コルセット本体前躯部分10の背部覆い体10aを示す。背部覆い体10aは、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では起毛部が表面になるようにしてある。背部覆い体10aの周縁部には、縁取りテープ(例えば、バイアステープ)を縫い付けて縫製されている。
【0029】
背部覆い体10aの前端部には、動物の首部の付け根に沿う緩やかに湾曲する湾曲部16aと、動物の前足の付け根に沿う緩やかに湾曲する湾曲部16bとが形成されている。背部覆い体10aの後端部には、背部中間部に位置してコルセット本体後躯部分20が重合させられる、緩やかに湾曲する湾曲部16cが形成されている。
【0030】
背部覆い体10aの両側縁部の裏側には、鍵形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材13が縫製により縫い付けられている。背部覆い体10aの湾曲部16aの両側表面には、同様に鍵形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材14aが縫製により縫い付けられている。
【0031】
背部覆い体10aに形成された心材12はプラスチックなどの合成樹脂材料や鉄などの金属材料からなる板材を被覆材で覆って当該被覆材の周縁を縫製により縫い付けることにより、背部覆い体10aに固定されている。本例では、被覆材としてはループ状の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)を用い、ループ状の係合素子が表面に露出した状態で縫製しているが、ほぼ平滑な表面を持つ布地を被覆材として用いてもよい。
【0032】
背部覆い体10aに形成された手がけ部15は、一部で分断された長さが長短の2部材から形成されている。長部材の一端には着脱自在なファスナーの雄部材15aが取り付けられており、他端は心材12を覆う被覆材を縫製する時に同時に縫製されて背部覆い体10aに固定されている。短部材の一端にはファスナーの雄部材15aと着脱自在に係合するファスナーの雌部材15bが取り付けられており、他端は心材12を覆う被覆材を縫製する時に同時に縫製されて背部覆い体10aに固定されている。
【0033】
図3及び図4に、コルセット本体前躯部分10の腹部覆い体10bを示す。腹部覆い体10bは、背部覆い体10aと同様に、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では、起毛部が表面となるようにしてある。背部覆い体10aの周縁部には、縁取りテープ(例えば、バイアステープ)を縫い付けて縫製されている。
【0034】
腹部覆い体10bの前端部には突出部16dが形成され、突出部16dの端部の表面には、鍵形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)からなる係合部材14bが縫製により縫い付けられている。腹部覆い体10bの後端部には切欠部16eが形成されている。この切欠部16eは、腹部覆い体10bを動物の腹部に配置した場合に、湾曲させやすくして動物にフィットさせ易くしたり、動物が雄の場合には陰茎の根元がぶつからないように避けたりするために設けたものである。
【0035】
腹部覆い体10bに形成された心材12は、背部覆い体10aと同様に、プラスチックなどの合成材料からなる板材を被覆材で覆って当該被覆材の周縁を縫製により縫い付けることにより、腹部覆い体10bに固定されている。同様に、本例では被覆材としてループ状の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)を用いている。
【0036】
図5及び図6に、前足受入れ部2を示す。前足受入れ部2は、背部覆い体10aや腹部覆い体10bと同様に、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では、起毛部が表面になるようにしてある。
【0037】
前足受入れ部2は、Y字形の形状をなしており、基端部2eの周縁部には、縁取りテープ(例えば、バイアステープ)を縫い付けて縫製されているが、二股に分岐された分岐部2fの周縁部には縁取りテープは縫製されていない。また、分岐部2fに柔らかくて伸縮性のあるストレッチ素材を用いてもよい。当該部分は動物の首周りに配置されるものであるので、柔軟性を確保するためである。
【0038】
基端部2eの裏側の先端部分には鉤形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材2aが縫製により縫い付けられており、この係合部材2aよりも内側の基端部2eには、ループ状の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材2bが縫製により縫い付けられている。この係合部材2bは腹部覆い体10bの係合部材14bと係合させるために設けたものである
【0039】
分岐部2fの裏側の先端部分には鉤形の係合素子を多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材2cが縫製により縫い付けられており、この係合部材2cよりも内側の分岐部2fの裏側には、ループ状の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材2dが縫製により縫い付けられている。この係合部材2dも、係合部材2bと同様に、背部覆い体10aの係合部材14aと係合させるために設けたものである。
【0040】
図7及び図8に、コルセット本体後躯部分20の背部覆い体20aを示す。背部覆い体20aは、コルセット本体前躯部分10と同様に、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では起毛部が表面になるようにしてある。
【0041】
背部覆い体20aは、立体裁断されたパーツにより縫製されており、動物の背中にフィットするように、動物の背中の形状に対応して左右対象線が稜線となるように表側に凸状に湾曲させられた形状をしている。背部覆い体20aの周縁部には、縁取りテープ(例えば、バイアステープ)を縫い付けて縫製されている。
【0042】
背部覆い体20aの前端部には緩やかに湾曲する湾曲部26aが形成されている。湾曲部26aの裏面には鉤形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)からなる係合部材28aが縫製により縫い付けられている。
【0043】
背部覆い体20aの後端側には、後方に延びる延長部26bが形成され、延長部の後端には、湾曲部26cが形成されている。延長部26bの後端の表面には、鉤形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材24が縫製により取り付けられている。
【0044】
腹部覆い体20aに形成された心材22は、コルセット本体前躯部分10と同様に、プラスチックなどの合成材料からなる板材を被覆材で覆って当該被覆材の周縁を縫製により縫い付けることにより、背部覆い体20aに固定されている。本例では、被覆材としてループ状の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)を用い、当該係合素子を表に出した状態で縫製しているが、平滑な表面を有する布地を被覆材として用いてもよい。
【0045】
コルセット本体後躯部分20の背部覆い体20aに形成された吊り部25は、一部で分断された長さが長短の2部材から形成されている。長部材の一端には着脱自在に係合するファスナーの雄部材25aが取り付けられ、他端は心材22の縫製と同時に縫製されて背部覆い体20aに固定されている。短部材の一端にはファスナーの雄部材25aと着脱自在に係合するファスナーの雌部材25bが取り付けられており、他端は心材22の縫製と同時に縫製されて背部覆い体10aに固定されている。
【0046】
図9及び図10に、コルセット本体後躯部分20の腹部覆い体20bを示す。腹部覆い体20bは、背部覆い体20aと同様に、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では、起毛部が表面になるようにしてある。
【0047】
腹部覆い体20bは基端部から左右にそれぞれ2つの突出片26aが突出して形成されている。腹部覆い体20bの後端部26dには縁取りテープの縫い付けは行われてはいないが、その他の周縁部には縁取りテープ(例えば、バイアステープ)を縫い付けて縫製されている。後端部26dの部分に柔軟性を持たせてフィット性を高めるなどの理由からである。
【0048】
腹部覆い体20bの前端部は、極めて緩やかに湾曲する湾曲部26bが形成され、湾曲部26bの裏面には鉤形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)からなる係合部材28bが縫製により縫い付けられている。
【0049】
突出片26aの先端の裏側には、鉤形の係合素子を多数有するマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材23が縫製により取り付けられている。腹部覆い体20bの後端部には切欠部26cが形成されている。この切欠部26cは、腹部覆い体10bを動物の腹部に配置した場合に、変形しやすくして動物にフィットするように設けたものである。腹部覆い体20bの後端部の表面には、後ろ足受入れ部3の左右部分3aの一端が挿入されて案内されるループ状のガイド部29が縫製により取り付けられている。
【0050】
なお、前記した腹部覆い体10bには、心材12を形成しているが、本コルセット本体後躯部分20の腹部覆い体20bには、心材22は設けていない。これは、腹部覆い体20bは動物の腹部に配置されるものなので、心材22による矯正効果は期待できず、腹部に心材22のような堅いものが当たることは動物にとって好ましくないからである。
【0051】
図11及び図12に、後ろ足受入れ部3を示す。後ろ足受入れ部3は、コルセット本体前躯部分10やコルセット本体後躯部分20などと同様に、例えばネオプレーン(登録商標)などのような少なくとも一面に起毛部が形成されたシート状の材料から形成されている。本例では、前記したコルセット本体前躯部分10などとは異なり、起毛部が裏側になるようにしてある。
【0052】
後ろ足受入れ部3はH字形の形状をなしている。すなわち、細長い帯状の左右部分3aと、左右部分3aを中間部で架橋して連結する連結部3bとを備えた形状となっている。前記した前足受入れ部2においては、周縁部に縁取りテープを縫い付けて縫製したが、本後ろ足受入れ部3においては、縁取りテープの縫製は一切行っていない。後ろ足受入れ部3には、柔らかくて伸縮性のあるストレッチ素材を使用することが好ましい。当該後ろ足受入れ部3は動物の内股に触れる可能性があるので伸縮性を確保するためである。
【0053】
左右部分3aの前端部には、鉤形の係合素子が多数形成されたマジックテープ(登録商標)などからなる係合部材3cがその鉤形の係合素子を裏面にして先端部に縫製により取り付けられている。係合部材3cは左右部分3aの前端から突出した状態で取り付けられている。係合部材3cは後ろ足受入れ部3を形成するシート状の材料よりも薄い材料となっている。
【0054】
左右部分3aの後端部には、前端部と同様に、係合部材3cと同一の材料からなる係合部材3dがその鉤形の係合素子を裏面側にして先端部に縫製により取り付けられている。係合部材3dは左右部分3aの前端から突出した状態で取り付けられている。
【0055】
なお、後ろ足受入れ部3の強度や耐久性が不足する場合には、左右部分3aの表面に補強用のテープ部材や布地を縫製により取り付けるようにしてもよい。
【0056】
次に、図13〜図26に基づいて、本実施の形態に係る物用コルセットの使用方法(使用手順)について説明する。
【0057】
図13又は図14に示すように、動物の前躯部分の背中側にコルセット本体前躯部分10の背部覆い体10aを載せる。
【0058】
図15又は図16に示すように、コルセット本体前躯部分10の腹部覆い体10bを動物の前躯部分の腹側に配置し、背部覆い体10aの端部に形成された係合部材13を腹部覆い体10bの表面に形成された起毛部に係合させて、背部覆い体10aに腹部覆い体10bを合体させる。
【0059】
図17、図18又は図19に示すように、前足受入れ部2をコルセット本体前躯部分10に取り付ける。すなわち、前足受入れ部2の分岐部2fの先端に取り付けられた係合部材2cを背部覆い体10aの表面の起毛部に係合させて取り付けるとともに、係合部材2dを背部覆い体10aに設けた係合部材14aに係合させて取り付ける。さらに、前足受入れ部2の基端部2eの先端に取り付けられた係合部材2aを腹部覆い体10bの表面の起毛部に係合させて取り付けるとともに、係合部材2bを腹部覆い体10bに設けた係合部材14bに係合させて取り付ける。
【0060】
動物の胴体の大きさに応じて、係合部材2c又は係合部材2aの背部覆い体10a又は腹部覆い体10bの起毛部との係合位置を調整して、前足受入れ部2を動物にフィットさせる。係合部材2d又は係合部材2bと係合部材14a又は係合部材14bとを係合させ、前足受入れ部2を背部覆い体10及び腹部覆い体10bにしっかりと取り付けられる。
【0061】
図20又は図21に示すように、動物の後躯体部分の背中側に、コルセット本体後躯部分20の背部覆い体20aを配置し、その係合部材28aを既に動物に装着されたコルセット本体前躯部分10の背部覆い体10aの表面に形成された起毛部に係合させて取り付ける。動物の胴体の長さ寸法に応じて係合部材28aの係合位置を調整する。通常は、背部覆い体20aの後端部が動物の尾の付け根よりも若干前端側になるように調整する。
【0062】
図22又は図23に示すように、動物の後躯体の腹側にコルセット本体後躯部分20の腹部覆い体20bをあてがい、係合部材28bをコルセット本体前躯部分10の腹部覆い体10bの表面の起毛部に係合させ、延長部26aの先端の係合部材23をコルセット本体後躯部分20の背部覆い体20aの表面の起毛部に係合させて取り付ける。
【0063】
係合部材28bの係合位置を調整することにより腹部覆い体20bのコルセット本体前駆部分10に対する位置調整を行う。切欠部26cが陰部と干渉しないように調節する。係合部材23の係合位置を調整して、動物の胴体にフィットさせる。
【0064】
図24、図25又は図26に示すように、後ろ足受入れ部3をコルセット本体後躯部分20に取り付ける。すなわち、図25に示すように、後ろ足受入れ部3の左右部材3aの一端に設けた係合部材3cをコルセット本体後躯部分20の背部覆い体20aの表面の起毛部に係合させて取り付ける。さらに、図26に示すように、左右部分3aの他端に設けた係合部材3dをコルセット本体後躯部分20の腹部覆い体20bの表面の起毛部に係合させて取り付ける。この際、係合部材3dを腹部覆い体20bに形成されたループ状のガイド部材29を通してから腹部覆い体20bに係合させる。これにより、係合部材3dの近傍の左右部分3aが外れたりよじれたりすることが防止でき、安定した取付状態を得ることができる。
【0065】
後ろ足受入れ部3は動物の敏感な陰部に配置されるものであるので、動物が雄である場合には、図26に示すように、左右部分3aを連結する連結部3bが陰のうと肛門の間に位置する寸法に設定されている。後ろ足受入れ部3を取り付ける際に、係合部材3c及び係合部材3dの係合位置を調整して、連結部3bの位置の微調整を行う。
【0066】
図27に、後ろ足受入れ部3の他の例の使用例を示す。このものは、後ろ足受入れ部3の連結部3bが陰茎と陰のうとの間に位置するように寸法が設定されたものである。図26に示すものに比べて連結部3bの位置調整が多少は難しくなるが、装着の安定性などの利点がある。
【0067】
図26及び図27により動物の雄の場合について説明したが、動物の雌の場合には、後ろ足受入れ部3はその連結部が内股に位置するように寸法が設定される。具体的には、通常は雌の陰門の少し前方側の位置に連結部が位置するように寸法が設定されるが、陰門と肛門との間に連結部が位置するように寸法が設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 コルセット本体
2 前足受入れ部
2a,2c 係合部材
2d,2e 係合部材
3 後ろ足受入れ部
3a 左右部分
3b 連結部
3c,3d 係合部材
10 コルセット本体前躯体部分
10a 背部覆い体
10b 腹部覆い体
12 心材
13 係合部材
14a、14b 係合部材
15 吊り部
20 コルセット本体後躯部分
20a 背部覆い体
20b 腹部覆い体
23 係合部材
24 係合部材
25 手がけ部
28a,28b 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の腹部、背部、骨盤部をほぼ覆って筒状にされるシート状のコルセット本体と、動物の前足を受け入れる前足受入れ部とを備え、コルセット本体には、隣接させられる端部を着脱自在に連結する連結部が形成されるとともに、動物に装着した場合に動物の背骨に沿うようにほぼ前端部から後端部に至るように心材が配置されている動物用コルセットにおいて、
コルセット本体が、動物の前躯部分に配置されるコルセット本体前躯部分と、動物の後躯部分に配置されるコルセット本体後躯部分とに分割され、当該コルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分の隣接させられる部分には両者を着脱自在に連結する連結部が形成されていることを特徴とする動物用コルセット。
【請求項2】
動物の後ろ足を受け入れる後ろ足受入れ部を備えていることを特徴とする請求項1記載の動物用コルセット。
【請求項3】
コルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分の少なくとも一方が動物の背部に配置される背部覆い体と動物の腹部に配置される腹部覆い体とに分割され、当該背部覆い体及び腹部覆い体の隣接する部分には両者を着脱自在に連結する連結部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の動物用コルセット。
【請求項4】
前足受入れ部及び後ろ足受入れ部の少なくとも一方がコルセット本体前躯部分及びコルセット本体後躯部分とは別部材から形成されるとともに、コルセット本体前躯部分又はコルセット本体後躯部分に着脱自在に連結される連結部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の動物用コルセット。
【請求項5】
後ろ足受入れ部が、動物の左右に配置される左右部分と、当該左右部分の中間位置を動物に装着した場合に動物の内股に対応する部分において架橋して連結する連結部とを備えることを特徴とする請求項2記載の動物用コルセット。
【請求項6】
コルセット本体後躯部分には動物の後ろ足を持ち上げるための吊り部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の動物用コルセット。
【請求項7】
コルセット本体前躯部分には動物に力を付与する場合に手がかりとして使用する手がけ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の動物用コルセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−273922(P2010−273922A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130429(P2009−130429)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(505347983)
【Fターム(参考)】