説明

動物用水中歩行装置

【課題】外部に水位調整装置を必要としない新規な動物用水中歩行装置を提供すること。
【解決手段】本発明による動物用水中歩行装置10は、水槽12と、この水槽内に上下動可能に配置されたベルトコンベヤ14と、ベルトコンベヤを上下動させる上下動機構56と、水槽内に貯められる水と接しない位置に配置され、ベルトコンベヤを駆動させる駆動源72と、ベルトコンベヤの上下動に追随可能であり、駆動源の駆動力をベルトコンベヤのベルトプーリに伝える伝動機構74と、ベルトコンベヤの上下動に追随可能であり、伝動機構を覆うカバー94とを備えることを特徴としている。この構成によれば、ベルトコンベヤの高さ位置を調整することが可能であるため、動物の大きさに応じて水位を調整する必要がない。その結果、水位調整装置が不要となり、設備全体を小型化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上動物、主として犬のリハビリテーションや肥満解消、運動機能向上等を目的とした水中歩行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームにより、家庭で飼育される陸上動物、特に犬の数が増加傾向にある。このため、犬の高齢化に伴って併発する様々な病気や怪我にも対応する必要性が増加し、治療後に使用されるリハビリテーション設備の充実の要請も強まっている。また、室内で飼育されることも多いため、運動不足や肥満も問題となっている。
【0003】
かかる事情から、従来においては、下記の特許文献1,2に開示されているような動物用の水中歩行装置が提案されている。
【0004】
特許文献1,2に開示の水中歩行装置は共に、基本的には人間用のものと同様に、水槽内の底部にベルトコンベヤを配置したものであり、使用する際には、水槽に水を張り、そこに犬を入れてベルトコンベヤ上を歩かせるというものである。
【特許文献1】特開2007−151894号公報
【特許文献2】米国特許第6746375号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、動物用の水中歩行装置においては、様々な大きさの犬その他の動物が使用することが一般的である。このため、上述したような従来装置では、ベルトコンベヤの高さが一定であるため、例えば大型犬の使用後に小型犬の水中歩行を開始する場合には、小型犬のサイズに合わせた水位に調整する必要がある。そこで、例えば特許文献1に開示の水中歩行装置では、その外部に水位調整装置を設けている。この水位調整装置は、水中歩行装置の水槽から抜いた水を一時的に貯めるためのタンクを備えるが、このタンクは水中歩行装置の水槽と同等の大きさであるため、水中歩行装置及び水位調整装置を設置するために多大なスペースが必要となる。また、水位調整のための水の出し入れにも時間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、外部に水位調整装置を必要としない新規な動物用水中歩行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による動物用水中歩行装置は、水槽と、この水槽内に上下動可能に配置されたベルトコンベヤと、ベルトコンベヤを上下動させる上下動機構と、水槽内に貯められる水と接しない位置に配置され、ベルトコンベヤを駆動させる駆動源と、ベルトコンベヤの上下動に追随可能であり、駆動源の駆動力をベルトコンベヤのベルトプーリに伝える伝動機構と、ベルトコンベヤの上下動に追随可能であり、伝動機構を覆うカバーとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明による動物用水中歩行装置においては、ベルトコンベヤの高さ位置を調整することが可能であるため、動物の大きさに応じて水位を調整する必要がない。その結果、水位調整装置が不要となり、設備全体を小型化することが可能となる。
【0009】
また、電動モータのような駆動源を水槽内の水から離れた位置に配置しているため、水中モータのような特殊で高価な駆動源を用いる必要がなく、安価な駆動源を使用することが可能となる。
【0010】
更に、伝動機構にはカバーが取り付けられるため、水中歩行をしている動物が伝動機構に巻き込まれる心配がない。加えて、動物の種類によっては多量の抜け毛を生じるものがあるが、このカバーによって毛等の異物が伝動機構に悪影響を与える事態をも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明による動物用水中歩行装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明による動物用の水中歩行装置の一実施形態を示す側方から見ての概略断面図である。図示するように、本発明の水中歩行装置10は、水槽12と、水槽12内に配置されたベルトコンベヤ14とを備えている。
【0013】
図示実施形態に係る水中歩行装置10は犬用であり、水槽12は、大型犬も余裕を持って内部のベルトコンベヤ14上で歩行運動を行うことができる寸法の直方体形状となっている。水槽12の前後左右の側板15〜17は、水槽12内の犬の様子を外部から観察し、また水槽12内から犬が飼い主を見ることができるよう、覗き窓18を備えていることが好適である。水槽12の底板20には排水管22が接続されており、水槽12の側板の一つ(側板16)には給水管24が接続されている。また、図示しないが、水の無駄を極力少なくするために、水槽12内の水を浄化して再び水槽12内に戻すための浄水装置が、排水管22と給水管24との間に設けられることが有効である。なお、図1において、符号はヒータ26であり、水槽12内の水を加温することが可能となっている。また、後部の側板17は開閉扉28を有しており、メンテンナンス時等に開放可能となっている。
【0014】
ベルトコンベヤ14は、水槽12の左右の側板16に沿って配置される左右一対のサイドフレーム30を含むコンベヤフレーム31と、これらのサイドフレーム30間の前端部と後端部とに設けられたベルトプーリ32,34と、前後のベルトプーリ32,34間に巻き掛けられた無端状のベルト36とを備えている。図2に明示するように、ベルト36の張り側には犬が載せられるため、その部分が下方に撓まないよう、左右のサイドフレーム30間にはベルト36の張り側の下面を受けるベルト受け板38が設けられている。
【0015】
なお、ベルト36に適正なテンションを加えるため、テンション調整機構40が設けられることが望ましい。図示のテンション調整機構40は、サイドフレーム30に揺動可能に取り付けられたレバー42と、レバー42の一端に取り付けられベルト36の弛み側を押さえ付けるテンション用ローラ44とから構成されている。レバー42の他端には、レバー42の支点を中心とした円弧状のスロット46が形成されたL字状部分48が設けられており、そのスロット46にサイドフレーム30から延びるボルト50の軸部が通されている。このボルト50の軸部にナット52を締め付けてレバー42を固定することで、ベルト36に適正なテンションを加えた状態が維持される。
【0016】
また、前後のベルトプーリ32,34及び左右のサイドフレーム30と、水槽12の前後左右の側板15〜17との間には隙間が形成されるため、犬の足がその隙間に挟まれないよう、安全カバー54をコンベヤフレーム31に取り付けて前記隙間をなくすことが好ましい。
【0017】
本発明においては、ベルトコンベヤ14は水槽12内を上下動可能となっている。図3に示すように、ベルトコンベヤ14を上下動させる上下動機構56は、本実施形態では、水槽12の左右いずれかの側板16に沿って、水槽12の内部に垂直に配置されたねじロッド58と、このねじロッド58に螺合され一方のサイドフレーム30に固定されためねじ部材60とから構成されている。ねじロッド58は、その上部と下部とが水槽12の側板16の内面に取り付けられた軸受62によって、回転可能であるが、上下動不能に支持されている。ねじロッド58の上端には、回転方向変換機構(例えば歯車機構)64を介してハンドル66が接続されており、このハンドル66を回すことで、ねじロッド58を回転させることができる。また、水槽12の内部には、側板16に沿ってガイドロッド68が垂直に取り付けられており、このガイドロッド68はサイドフレーム30に固定された円筒状の摺動部材70を摺動可能に貫通している。このような構成においては、ガイドロッド68と摺動部材70によってベルトコンベヤ14の回転が阻止されるので、ハンドル66をいずれかの方向に回してねじロッド58を回転させると、めねじ部材60、ひいてはベルトコンベヤ14が上下いずれかに移動することとなる。なお、図1の実線で示すベルトコンベヤ14の位置が最低位置であり、二点鎖線の位置が最上位置となる。水槽12内の水位は、この最上位置よりも所定高さだけ上方の位置(一点鎖線の位置)で一定に維持されるものとする。
【0018】
本実施形態では、ベルトコンベヤ14の駆動源として一般的な電動モータ72が用いられ、水槽12の上部の外側に取り付けられている(図4参照)。一般的な電動モータではなく水中モータを使用することで、ベルトコンベヤ14をダイレクトドライブ式とすることも可能であるが、水中モータは高価であり、メンテナンスにも手間と費用がかかる。そこで、本実施形態では、電動モータ72を、水槽12の最高水位よりも上方となる位置であって、水の影響を受けにくい水槽12の外側に配置することとした。
【0019】
電動モータ72とベルトコンベヤ14の一方のベルトプーリ34との間には、電動モータ72の駆動力を伝えるための伝動機構74が設けられている。図示実施形態における伝動機構74は、水平方向に延びる電動モータ72の回転シャフトの回転方向を垂直に変換する歯車機構のような回転方向変換機構76と、回転方向変換機構76の出力側に接続された伝動ロッド78と、伝動ロッド78と共に回転する第1の傘歯車80と、この第1の傘歯車80と噛み合い、ベルトコンベヤ14におけるベルトプーリ34と一体の回転シャフト82に固定された第2の傘歯車84とから構成されている。
【0020】
伝動ロッド78は、その上部と下部が水槽12の側板16の内面に取り付けられた軸受86によって、回転可能であるが、上下動不能に支持されている。伝動ロッド78の外周面には、その回転軸線に平行な溝88が少なくとも1本形成されている。かかる伝動ロッド78は第1の傘歯車80の中心穴に摺動可能に挿入されるが、傘歯車80の中心穴の内周面には前記溝88と係合する凸部(図示せず)が形成されているため、傘歯車80は伝動ロッド78と共に回転する。第1及び第2の傘歯車80,84は、ベルトコンベヤ14のサイドフレーム30に設けられたギヤケース90の軸受92により回転可能に支持されている。
【0021】
ベルトコンベヤ14を上下させると、電動モータ72とベルトコンベヤ14のベルトプーリ34との間の距離が変化するが、上述したような伝動機構74はベルトコンベヤ14の上下動に追従することができる。すなわち、ベルトコンベヤ14が上下動しても、第1の傘歯車80は伝動ロッド78に沿って摺動することができるため、電動モータ72からの駆動力をベルトプーリ34まで確実に伝えることができる。
【0022】
本実施形態では、更に、犬が伝動ロッド78や傘歯車80,84と接することを防止するために、筒状のカバー94が設けられている。このカバー94は入れ子式の伸縮可能なものであり、図示実施形態では3本の筒状体94a,94b,94cからなっている。最外周の筒状体94aは回転方向変換機構76に固定されている。最外周の筒状体94aの下端には内向きのフランジ95が形成されており、その内側に配置された中間の筒状体94bの上端に形成された外向きのフランジ96と係合し、中間の筒状体94bが最外周の筒状体94aから脱落しないようになっている。また、筒状体94aのフランジ95の内周縁は筒状体94bの外周面と摺動可能に接し、或いは、筒状体94bの外向きのフランジ96の外周縁は筒状体94aの内周面と摺動可能に接している。最内周の筒状体94cは中間の筒状体94bの内側に摺動可能に嵌合されている。最内周の筒状体94cの下端はギヤケース90に取り付けられている。かかる構成により、カバー94はベルトコンベヤ14の上下動に追随して伸縮し、また、水槽12内の水に含まれる異物、例えば毛等がカバー94内に侵入することを防止している。
【0023】
上述したような構成において、本発明による動物用水中歩行装置10の作用について次に説明する。
【0024】
まず、水槽12に給水管24から所定の水位(図1の一点鎖線で示す位置)になるまで水を入れる。次いで、ヒータ26により水温を調整する。この後、水中歩行を行う犬のサイズに合わせ、ハンドル66を回してベルトコンベヤ14の高さを調整する。この際、カバー94はベルトコンベヤ14の上下動に追随して伸縮することとなる。犬を水槽12内に入れ、ベルトコンベヤ14上に載せたならば、電動モータ72を起動し、ベルトコンベヤ14を駆動すれば、犬は循環駆動するベルト36上を歩行することとなる。
【0025】
なお、ベルトコンベヤ14のベルト36の循環駆動の速度や方向(すなわち、電動モータ72の回転速度や方向)及び水温(すなわち、ヒータ26)は、図1において符号98で示す制御盤から制御することができる。
【0026】
一匹の犬の水中歩行訓練が終了し、別のサイズの犬を次に水槽12に入れる場合には、ベルトコンベヤ14を上下させて高さ調整すればよく、本実施形態では水位調整する必要がないことは理解されよう。更に、本発明の水中歩行装置10においては、小型犬でも大型犬でも、頭は水槽12上部の概ね一定の高さに保たれるため、飼い主の顔を近くに見ることができ、犬は不安を感じずに水中歩行を続けることができるという効果も奏する。
【0027】
また、伝動機構74にはカバー94が取り付けられているため、多量の毛が抜けてもカバー94内への毛の侵入を防止ないしは抑制することができ、伝動機構74の故障を防止することができる。
【0028】
更に、電動モータ72は水と接しない水槽12の外部に設けられているため、一般的な安価なものを使用することが可能であり、故障した場合にも修理や交換が容易となる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、手動でベルトコンベヤ14の高さを調整することとしているが、ねじロッド58に電動モータを接続して電動でベルトコンベヤ14を上下動させてもよい。この場合、犬毎に、その犬の情報(サイズや病歴、訓練記録等)を記憶させたRFID等の識別タグを装着させ、制御盤98にその識別タグの情報の読取り機能を持たせておけば、犬を水中歩行装置10の近くに配置した段階で、その犬に適正な高さ位置となるよう、自動的に電動モータを駆動させることも可能である。勿論、このような識別タグを用いることで、歩行速度も自動調整することができ、犬毎の運動プログラムを実行することも可能となる。
【0030】
また、上記実施形態に係る水中歩行装置は犬用であるとしたが、他の陸上動物にも適用可能である。
【0031】
更に、伝動機構としては図5に示すようなチェーン機構等、他の型式のものでもよい。図5のチェーン機構100を用いた場合、チェーン102とチェーン104にはそれぞれを覆うカバー106,108が設けられ、これらのカバー106,108がベルトコンベヤ14に追随して動作するよう支点110を中心に枢動可能に且つ液密に互いが結合されるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による動物用水中歩行装置の一実施形態を示す概略断面側面図である。
【図2】図1の水中歩行装置におけるベルトコンベヤの一部を示す詳細図である。
【図3】図1の水中歩行装置におけるベルトコンベヤの上下動機構を示す詳細図である。
【図4】図1の水中歩行装置におけるベルトコンベヤへの伝動機構を示す詳細図である。
【図5】伝動機構の他の実施形態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10…水中歩行装置、12…水槽、14…ベルトコンベヤ、15,16,17…側板、26…ヒータ、28…開閉扉、32,34…ベルトプーリ、36…ベルト、38…ベルト受け板、40…テンション調整機構、54…安全カバー、56…上下動機構、58…ねじロッド、60…めねじ部材、66…ハンドル、68…ガイドロッド、70…摺動部材、72…電動モータ(駆動源)、74…伝動機構、76…回転方向変換機構、78…伝動ロッド、80,84…傘歯車、88…溝、94…カバー、94a,94b,94c…カバーの筒状体、98…制御盤、100…チェーン機構(伝動機構)、102,104…チェーン、106,108…カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽(12)と、
前記水槽(12)内に上下動可能に配置されたベルトコンベヤ(14)と、
前記ベルトコンベヤ(14)を上下動させる上下動機構(56)と、
前記水槽(12)内に貯められる水と接しない位置に配置され、前記ベルトコンベヤ(14)を駆動させる駆動源(72)と、
前記ベルトコンベヤ(14)の上下動に追随可能であり、前記駆動源(72)の駆動力を前記ベルトコンベヤ(14)のベルトプーリ(34)に伝える伝動機構(74)と、
前記ベルトコンベヤ(14)の上下動に追随可能であり、前記伝動機構(74)を覆うカバー(94)と
を備える動物用水中歩行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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