説明

動物用滴下式処理剤

【課題】 動物の畜体に直接処理する液体製剤に関し、殺菌・消臭効力に優れ、より簡便で安全性の高い動物用滴下式処理剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明者らは、液体製剤中の基剤に溶剤を用いることで、殺菌および/または消臭成分などを滴下式形状でも畜体皮膚表面全体へ効率よく拡散することが可能になり、しかも使用方法を滴下式にしたことで薬剤が空間に飛散することがなく、より簡便で安全性にも優れた動物用滴下式処理剤を見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基剤に溶剤を用いることにより、殺菌成分および/または消臭成分を滴下式形状でも畜体へ効率よく拡散することが可能であり、より簡便で消臭効力が高く、しかも安全性が高い動物用滴下式処理剤に関する。
【特許文献1】特開平7−322786
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームにより、犬、猫などペットの飼育が増加しており、ペットの屋内での飼育状況屋も増加している。そのために、ペットの排泄行為も室内にて行われるようになり、畜体臭や排泄物の臭気拡散が問題となっている。そのような問題の解決方法として、ペット用のトイレ砂に活性炭やゼオライトなどの吸着剤を混合したものや、トイレ用シーツなどが提供されている。また、環境への対策としては、ゲル状タイプの消臭剤や環境に噴霧するスプレータイプの消臭剤が提供されている。しかし、ペット本来の臭気である畜体臭を消臭する方法としては、一般に、殺菌成分および/または消臭成分を水へ溶解させ畜体に直接噴霧するスプレー型のみが使用されているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状の畜体用消臭剤(動物用医薬部外品)では、薬液を畜体に処理するため噴霧型スプレーが使用されており、畜体に直接噴霧した成分が被毛表面に付着し皮膚表面に作用するため、有効成分の皮膚表面への付着効率が悪く、十分な効果を得るために必要量以上の液量が噴霧されている。また、空間に噴霧することにより、薬剤が空間に飛散し、ペットや使用者が薬剤を吸入するなど、安全性の問題もあげられる。
【0004】
また、上述スプレー製剤を畜体に直接滴下しても、有効成分が畜体全体に拡散しないという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、液体製剤の基剤として溶剤を使用することにより有効成分を畜体全体に均一に拡散することが可能となり、効率的に殺菌・消臭効果を得ることができた。さらに、液体製剤を滴下式容器に充填することにより、薬剤が空間に飛散することなく安全かつ簡便に使用できる動物用滴下式処理剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明品は、皮膚表面全体へ、殺菌および/または消臭成分などがすばやく均一に広がり、効率よく殺菌・消臭効果が得られる。また、形状を滴下式にすることにより、直接作用部位に殺菌および/または消臭成分などが広がり、さらに従来のスプレー式と違い、ペットや使用者の薬剤の吸入や空間への無駄な薬剤の飛散がなく安全かつ簡便に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の動物用滴下式処理剤は、上述の課題点を改良すべく検討を重ねた結果、基剤を従来のスプレー剤に多く見られる水ベースから溶剤ベースに変更することにより、滴下式での使用においても有効成分を畜体全体に効率よく拡散することができ、より安全で効率よく殺菌・消臭効果が得られる。
【0008】
本発明の動物用滴下式処理剤は、滴下式容器に液体製剤を充填した形状である。
【0009】
本発明の動物用滴下式処理剤に配合される溶剤(A)としては、グリコール系、グリコールエーテル系、アルコール系、炭化水素系、エーテル系、エステル系、ケトン系、シリコン系、芳香族炭化水素系、水があげられ、代表例としては、グリコール系ではプロピレングリコールやブチレングリコールなど、グリコールエーテル系ではジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど、アルコール系ではエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭化水素系では流動パラフィンなどがあげられる。また、上述溶剤(A)は、1種類のみを用いるだけでなく、2種類以上の組み合わせで配合してもよい。
【0010】
本発明の動物用滴下式処理剤には、消臭成分(B)としてポリフェノール、タンニン、カテキンなどを成分として含む植物抽出液などの天然系消臭剤、界面活性剤系などの合成系消臭剤や臭気吸着性のある多孔質物質などがあり、代表例としては、天然系消臭剤として緑茶抽出液、柿抽出液など、合成系消臭剤としてベタイン系界面活性剤など、臭気吸着性のある多孔質物質として、シリカゲル、焼結金属、ゼオライト、ベントナイトや炭などがあげられる。その中でも、使用用途から考えペットへの安全性を考慮して、天然系消臭剤である緑茶抽出液、柿抽出液などが望ましい。また、上述消臭成分(B)は、1種類のみを用いるだけでなく、2種類以上の組み合わせで配合可能であり、液体製剤への配合量としては、0.01〜20.0%が望ましい。
【0011】
本発明の動物用滴下式処理剤には、殺菌成分(C)として天然系殺菌剤や合成系殺菌剤などがあり、代表例は、天然系殺菌剤として竹酢液、木酢液やプロポリスなど、合成系殺菌剤としてアルコール類、アルデヒド類、塩素化合物、ビグアニド剤、フェノール類、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤やヨウ素化合物などがあげられる。その中でも、人間用皮膚製剤として用いられている、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジンやイソプロピルメチルフェノールなどが望ましい。また、上述殺菌成分(C)は、1種類のみを用いるだけでなく、2種類以上の組み合わせで配合可能であり、液体製剤への配合量としては、0.01〜5.0%が望ましい。
【0012】
本発明の動物用滴下式処理剤には、直接畜体皮膚上に処理することから保湿成分(D)や美容成分(E)などを液状製剤中に配合することも有用だと考えられる。保湿成分(D)として、多価アルコール類であるグリセリンやプロピレングリコールなど、天然オイルであるスクワラン、ホホバオイルやマカデミアンナッツオイルなど、その他として、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲンやエラスチンがあげられ、美容成分(E)としては、ビタミン類、植物エキスやミネラルなどがあげられる。
【0013】
また、本発明品である液体製剤中には、上述必要成分の他に、必要に応じて他の添加剤を配合することが可能である。例えば、香料、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、着色剤や増粘剤などがあげられる。
【0014】
本発明の動物用滴下式処理剤の形状は、使用量を測定することが可能である容器や、一回使用量のみを容器に充填した形状である。
【0015】
上述容器としては、1プッシュで規定量しか吐出しない容器や、1回使いきりのスポット容器などがあげられる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)試料の調整
以下に示す動物用滴下式処理剤を作製し、犬(犬種:ビーグル)に対する殺菌・消臭効果について評価をおこなった。実施例(本発明品)の調製過程としては、各有効成分を各基剤溶剤に溶解させたものを用いた。比較例1では、基剤溶剤を水のみにした以外は上記調製過程と同様におこなった。また、比較例2として、市販品の殺菌消臭スプレー(動物用医薬部外品)も用いた。さらに、プラセボ試験として有効成分を配合していない検体を作製した。処方を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
(2)試験方法
検体処理前の畜体(犬種:ビーグル)の臭気を官能試験により評価した後、各検体3.0mLを畜体に直接処理し、1時間後、1日後及び7日後に畜体の臭気を官能評価した。官能評価試験は3名で行い、評価基準は芳香消臭脱臭協議会より引用した。また、評価数値に関しては評価実施者3名の評価数値を平均し評価した。評価基準を表2、その結果を表3に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
表3の結果から明らかにわかるように、本発明の動物用滴下式処理剤は基剤を溶剤にすることより、殺菌・消臭効力に明らかな向上がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製剤中に基剤として溶剤(A)、有効成分として消臭成分(B)および/または殺菌成分(C)を配合した、動物の畜体に直接滴下して使用する動物用滴下式処理剤。
【請求項2】
液体製剤中に保湿成分(D)および/または美容成分(E)も配合可能な請求項1記載の動物用滴下式処理剤。
【請求項3】
1回の使用量を計測することが可能である容器に液体製剤を充填した請求項1および2記載の動物用滴下式処理剤。

【公開番号】特開2007−106731(P2007−106731A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302121(P2005−302121)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000149181)株式会社大阪製薬 (14)
【Fターム(参考)】