説明

動物用飼料、及び同動物用飼料の製造方法

【課題】低コストで生産でき、高い栄養価を有する動物用飼料を提供する。
【解決手段】鶏などの家禽の卵を殻ごと粉砕してなる動物用飼料とし、同動物用飼料の製造方法として、原料となる殻付きの卵を丸ごと粉砕する粉砕工程と、粉砕した原料を加熱する加熱工程と、加熱された原料を乾燥させる乾燥工程とを有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜や家禽及び養殖魚等の飼料として供することのできる動物用飼料、及び同動物用飼料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BSE(牛海綿状脳症)問題発生以来、牛等の反芻動物由来肉骨粉を含む家畜飼料・肥料の製造・販売が法律によって禁止されており、この影響を受けて日本の配合飼料業界は、家畜・家禽の飼料について、反芻動物以外の肉骨粉の使用も控えている状態であった。このような状況によって、肉骨粉によって摂取していた動物性タンパク質の確保が困難となっていたため、この動物性タンパク源の代替として、大豆粕等の植物性タンパク源を用いた飼料が種々提案され、投与されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平07−313070 上記特許文献1に係る飼料は、大豆またはその抽出物もしくは酵素分解物により植物性タンパク質を得、さらにトチュウまたはその抽出物もしくは酵素分解物と、ウコギ科植物またはその抽出物もしくは酵素分解物とを含有してなることを特徴とする動物用飼料である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したような植物性タンパク質を用いた飼料を養鶏などに与えた場合、動物性タンパク質の飼料を与えた養鶏と比較すると、排泄物の水分量が高くなって産卵の生産性が低下するという問題が生じていた。従って、飼料に含まれる動物性タンパク源の確保が強く望まれていたが、反芻動物由来肉骨粉の回避上、有効な動物性タンパク質の入手が困難となり、原料費の相場が高くなってコストがかさんでいた。
【0004】
一方、養鶏・採卵業界においてみると、検卵して販売不可能であると判断された大量の不良卵の処理が大きな問題となっており、放置すると卵が腐敗して硫化水素が生成され、悪臭を放ち公害の源となっていた。一般にこの不良卵の定義は、採卵養鶏場やGPセンター(鶏卵選別包装施設)等で検卵の際判別される血卵等の異常卵や、破卵、孵化中止卵、軟卵等のことを指標する。
【0005】
しかしながら、鶏卵は栄養分に富み、蛋白源として食品群における重要な位置を占めており、前述の不良卵においても、腐敗前の適正な時期に所定の処理をして加熱さえ行なえば栄養価の面で食用卵に比して遜色のない原料となるため、かかる不良卵の高栄養価を利用した有効なリサイクル資源としての活用が模索されていた。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであって、上記した動物性タンパク源を必要とする配合飼料業界、及び不良卵の有効な処理が望まれている養鶏業を含む採卵・選卵業界における課題を同時に解決することのできる、動物用飼料及び同動物用飼料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、鶏などの家禽の卵を殻ごと卵白・卵黄と共に粉砕し、次いで粉砕した卵を加熱、乾燥させてなることを特徴とする動物用飼料に係るものである。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の動物用飼料において、原料となる卵は、木酢酸を投与して飼育した鶏などの家禽より産卵された卵であることを特徴としたものである。
【0009】
請求項3記載の本発明は、鶏などの家禽の卵を殻ごと卵白・卵黄と共に粉砕する粉砕工程と、粉砕した原料を加熱する加熱工程と、加熱された原料を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする動物用飼料の製造方法に係るものである。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の動物用飼料の製造方法において、原料となる卵を産卵させる鶏などの家禽は、家禽飼育中に木酢酸を投与しておくことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、鶏などの家禽の卵を殻ごと卵白・卵黄と共に粉砕し、次いで粉砕した原料を加熱し、加熱された原料を乾燥させて動物用飼料を得るようにしたため、従来産業廃棄物と同等な扱いで廃棄処理されていた不良卵などを、安全性を高めた有効な資源として活用する事ができる。また、殻ごと粉砕するため殻と卵白・卵黄等の中身を分離する作業を行なう必要がないため製造工程を簡略化して低コストにて飼料化する事ができ、同時に、カルシウム等の栄養分を含んだ卵の殻部分が飼料の一部を構成するため、各種の栄養素を含んだ動物用飼料とすることができ、飼料業界及び不良卵処理に苦慮する、養鶏業を含む採卵・選卵業界に大きく貢献する事ができる。
【0012】
また、原料となる卵を採集する鶏などの家禽には飼育中に木酢酸を投与することとすれば、通常の飼料により飼育した鶏などから採集される卵と比較して、高ビタミン、低脂質、低コレステロールである栄養バランスを向上させた卵を採集する事ができ、これらの卵を用いた飼料とすることにより、高栄養価の良質な飼料を製造する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態に係る動物用飼料は、鶏などの家禽から採集した卵を、殻付きのまま卵白・卵黄と共に丸ごと粉砕し、次いで加熱、乾燥させて得るようにしたものである。特に、前記鶏などの家禽は、木酢酸を投与して飼育したものとする事が好ましい。
【0014】
前記木酢酸は、粗木酢液を蒸留精製することにより有害物質を除去して得られたものであって、その薬理作用としては、体脂肪代謝に関係の深い肝機能を強化し、TCA回路の活性化、脂肪代謝の円滑化等により筋繊維の発達を増進し、脂肪蓄積を減少させる。
【0015】
係る木酢酸を飼料に配合して飼育した家禽、これが例えば鶏であれば、通常の飼料により飼育された鶏と比較して、筋肉中アミノ酸の含有量、不飽和脂肪酸の含有量などが増加して栄養価の面で大きく向上する。
【0016】
そして、係る木酢酸を投与した鶏から採集された卵は、通常の飼料により飼育された鶏から採集した卵と比べて、卵黄中のビタミン含有量の増加、脂肪及びコレステロール含有量の減少などの栄養バランスの向上が認められており、高い栄養価の良質な飼料となり得るのである。また、木酢酸粉末を添加した飼料を鶏に給与することで、サルモネラ感染防御効果があることが明らかになっており、サルモネラ対策としても有効である。
【0017】
なお、木酢酸を鶏に投与する場合、木酢酸を木炭粉末に吸着させた木酢酸粉末を餌に添加すると良い。木酢酸粉末を用いると、木酢酸液を直接飼料に配合するよりも鶏の腸肝機能亢進に効果的である事が実験的に判明しており、したがって、この鶏から採集される卵を高栄養価の卵とする事ができる。
【0018】
また、卵白・卵黄を含む殻付きの全卵が丸ごと原料となるので、殻と内容物を分離させて殻を取除く作業を行なう必要がなく、製造工程を簡略化して低コストにて飼料化する事ができる。
【0019】
卵の卵白・卵黄は、ビタミンCと繊維以外の栄養素をバランスよく併せ持っており、完全栄養食品と言われるほど栄養価に富んだ食品である。なかでも、アミノ酸をバランスよく含む良質なタンパク質を持っており、卵黄はビタミンAや鉄、カルシウム等のミネラルも豊富に含んでいる。
【0020】
他方、鶏の卵の殻は、98%が炭酸カルシウムから成って、また殻の内側に付着している卵殻膜はコラーゲンを含むタンパク質からなり、その他にもミネラルなどを多く含む等、殻自体も高い栄養価を有するものである。
【0021】
したがって、鶏卵をこれらの卵白・卵黄・卵殻と共に丸ごと粉砕して飼料化する事で、さらに栄養価を高めた飼料とする事が可能である。
【0022】
さらに、卵白・卵黄は加熱乾燥されることにより微細卵殻の外周面を被覆した状態で硬化し、卵殻をコーティングした状態となるため、卵殻の粉砕形状を隠し飼料として家畜や家禽が食する場合の食感を滑らかにして家畜・家禽の食欲増進にも貢献する。
【0023】
また、原料となる鶏卵は鶏卵加工・処理場等に運ぶ手間がなく、直接飼料製造工場へ運搬すれば良いので輸送コストも軽減される。
【0024】
上記した動物用飼料を製造するには、下記工程を含む製造工程とすればよい。
【0025】
図1は、同製造工程中の処理を示す説明図であって、図1に示すように、原料となる殻付き卵2を原料ホッパー4に投入する貯蔵工程(イ)と、殻付き卵2を原料ホッパー4から粉砕機5に投入して丸ごと直接粉砕する粉砕工程(ロ)と、粉砕した原料を加熱機6に投入して加熱する加熱工程(ハ)、及び加熱した原料を乾燥機7に投入して乾燥させる乾燥工程(ニ)とを有する。
【0026】
乾燥工程(ニ)において乾燥機7は、攪拌・粉砕の機能を有する乾燥機とすれば、乾燥工程(ニ)を経た後そのまま製品となすことができて製造ラインを簡略化する事ができる。その後製品は、製品タンク10内に貯蔵された後出荷される。
【0027】
また、乾燥工程(ニ)の後に、粉砕機8により粉砕する粉砕工程(ホ)と、粉砕した処理物を篩い機9にかける分別工程(へ)とを経るようにすれば非常に粒の細かいエッグミールとなす事ができ、これらにおいても製品タンク11内に貯蔵した後出荷する。
【0028】
ここで、本実施形態における製造ラインAは、原料を攪拌しながら加熱と乾燥を並行して行なう加熱乾燥機12を使用し、加熱工程(ハ)と乾燥工程(ニ)を同時進行として製造工程を簡略化した製造ラインAとしている。
【0029】
以下、本実施形態に係る製造ラインAについて図2を参照しながら説明する。
【0030】
原料である殻付き卵2は、前処理を施すことなく殻付きのままの全卵の状態で原料ホッパー4内に投入する。この、原料となる殻付き卵2は、木酢酸を投与して飼育した鶏などの家禽より産卵された卵である。
【0031】
原料ホッパー4に投入された殻付き卵2は、所定量ごとに次工程である粉砕工程(ロ)に速やかに移されて、粉砕機5によって丸ごと細かく粉砕される。
粉砕機5は、内部周辺に環状に多数配置した一定間隔(約0.7〜0.8mm)のブレードと、環状配置のブレードの内部で原料を攪拌する3枚のロータを有し、環状配置のブレードの内部に投入された原料は、3,600r.p.mの高速回転でロータにより攪拌されてブレードにより粉砕され、その結果卵殻は1mm以下に粉砕され、卵白・卵黄は液状のまま粉砕卵殻と混合された黄色状の液卵となる。この液卵状態の原料は含水率約70%であり、かさ密度は1.0kg/Lとなる。この粉砕機5は、1tの殻付き卵2を微粉砕するまでに要する時間が約60分の処理能力であり、企業ペースとして採用可能な粉砕機である。
【0032】
かかる粉砕機5により粉砕された鶏卵の液卵は、次工程の乾燥工程へ搬送される。
【0033】
すなわち、細かく粉砕され液状となった原料は、加熱熱源がスチームで、ゲージ圧0.2MPa程である加熱乾燥機12に投入してサイクロン方式で攪拌しながら加熱する。70分程度加熱すると含水率6%ほどの乾燥動物用飼料1となす事ができる。
【0034】
すなわち、サイクロンドライヤーが使用される加熱乾燥機であり、回転周壁のシャケット内にスチームを圧入して加熱壁を形成し、加熱壁内部における回転翼で液状卵を掻き上げると原料の液状卵は内壁面に薄膜状に押圧されて乾燥し、固形化すると同時に回転する周壁の遠心力によって含水率の高い未乾燥の液状卵は同壁面に圧着され優先的に加熱面に接触して乾燥され、脱水乾燥された原料の液卵は、含水率が低くなり上方に押しやられて更に上方の蒸発壁面に接触して更なる乾燥がなされて回収される。
【0035】
このような乾燥工程を経ることにより、粉砕卵と共に卵白・卵黄も乾燥凝固されて粉末状の飼料が形成される。
【0036】
特に卵白・卵黄は加熱乾燥されることにより微細卵殻の外周面を被覆した状態で硬化し、卵殻をコーティングした状態となるため、卵殻の粉砕形状を隠し飼料として家畜や家禽が食する場合の食感を滑らかにして家畜・家禽の食欲増進にも貢献する。
【0037】
サイクロン方式であるフィンで攪拌しながら加熱・乾燥するため、乾燥後に粉砕機を使用せずとも一定粒の乾燥動物用飼料1と成す事ができる。そしてこれらは製品タンク10内に貯蔵され、その後出荷される。図2に示すように、加熱乾燥機12から廃出される蒸気は冷却して凝縮水として取り出せば、臭気を逃さず処理する事ができる。
【0038】
ここで、粉砕機及び加熱乾燥機は上記のような構成のものに限られず、粉砕機は処理能力が粉砕機5と同等以上で微粉砕が可能なもの、加熱乾燥機は原料を乾燥させて少なくとも粗粒状に形成する事ができるものであれば良い。
【0039】
出来上がった動物用飼料1は、淡黄色の粉末状となり、原料重量と比較した減量率は1/3.2、原料容積と比較した減容率は1/2.5であった。すなわち、原料の状態と比較して重量・容積共に減ずることができて貯蔵を容易にしている。
【0040】
また、表1は、本実施形態の動物性飼料の製造方法にて製造した動物用飼料の成分分析表であり、表1に示すように、たんぱく質、粗脂肪の含有率が高く、アミノ酸、脂肪酸組成に富んでおり、卵由来の動物性タンパク源飼料として、非常に優れた動物用飼料とする事ができた。
【0041】
【表1】

なお、本実施形態において、卵を採集する家禽は鶏としており特にこれが好ましいが、家禽であればよくこれに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】製造工程の処理を示す説明図である。
【図2】製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
A 製造ライン
1 動物用飼料
2 殻付き卵
4 原料ホッパー
5 粉砕機
6 加熱機
7 乾燥機
8 粉砕機
9 篩い機
10 製品タンク
11 製品タンク
12 加熱乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏などの家禽の卵を殻ごと卵白・卵黄と共に粉砕し、次いで粉砕した卵を加熱、乾燥させてなることを特徴とする動物用飼料。
【請求項2】
原料となる卵は、木酢酸を投与して飼育した鶏などの家禽より産卵された卵であることを特徴とする請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項3】
鶏などの家禽の卵を殻ごと卵白・卵黄と共に粉砕する粉砕工程と、
粉砕した原料を加熱する加熱工程と、
加熱された原料を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする動物用飼料の製造方法。
【請求項4】
原料となる卵を産卵させる鶏などの家禽は、家禽飼育中に木酢酸を投与しておくことを特徴とする請求項3に記載の動物用飼料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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