説明

動物除け

【課題】田畑や家等の周りに鳥や獣等の動物が近寄らないようにするための動物除けであり、永久磁石によって動物が嫌う人工的な磁界を広範囲に形成することのできる新規な動物除けを提供する。
【解決手段】永久磁石20を有する本体10と、着磁性を有する鋼線材によって環状に形成され、前記本体10に突設された環状体30とを備える。また、前記環状体30は、前記本体10に対して角度調節可能に回動自在に支持されている。また、前記環状体30は、複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物除けに関するものであり、詳しくは、田畑や家等の周りに鳥や獣等の動物が近寄らないように、動物が嫌う磁界を広範囲に形成することのできる動物除けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物を荒らす鳥やネズミ等の動物が田畑に近寄らないようにするため、生ゴミを荒らすカラスや猫等の動物がゴミの収集所に近寄らないようにするため、或いは、庭木や洗濯物等に糞害を及ぼす猫やコウモリ等の動物が家の周りに近寄らないようにするために、従前より、種々の動物除けが案出されている。
【0003】
例えば、案山子や大きな目玉を模した飾り等の動物除け、定期的に音を発する動物除け、定期的に光を発する動物除け等である。
【0004】
しかしながら、このような動物除けは、動物を脅かして忌避させるものであり、動物が慣れてしまうと、動物を脅かして忌避させる効果を十分に発揮できなくなってしまう。また、音や光を発する動物除けでは、動力源を必要とし、恒久的に使用するのには不経済である。
【0005】
また、動物が嫌う臭いを発する薬剤を散布して動物を忌避させることもあるが、頻繁に薬剤を散布するのは、やはり不経済であり、しかも、田畑や家の周りに薬剤を散布することは、自然環境を破壊することにもなりかねないため好ましくない。
【0006】
ところで、渡り鳥や鳩等に代表されるように、動物の中には、地磁気を敏感に感じ取る動物がおり、自然界にない人工的な磁界を嫌う動物がいる。そこで、人工的な磁界を嫌う動物の性質を利用して、永久磁石によって動物を忌避させる動物除けも案出されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
【0007】
永久磁石を用いた動物除けによれば、動力源を必要とせず、経済的である。また、動物にとって磁界は慣れ難く、動物が嫌う磁界を形成して動物を忌避させるといった機能を恒久的に発揮させることができると考えられる。しかも、薬剤を散布するよりも自然環境を破壊することがなく、環境に悪影響を与え難い点でも好ましいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の永久磁石を用いた動物除けは、その永久磁石周りに人工的な磁界を形成することができるだけのものであり、広範囲に渡って動物が嫌う人工的な磁界を形成することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、永久磁石によって動物が嫌う人工的な磁界を広範囲に形成することのできる新規な動物除けを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「永久磁石を有する本体と、
着磁性を有する鋼線材によって環状に形成され、前記本体に突設された環状体と
を備えることを特徴とする動物除け」
である。
【0011】
ここで、「着磁性を有する鋼線材」とは、鉄鋼を材質とする線状の材料であり、磁石に吸着される性質を有する鋼線材を示すものである。
【0012】
上記構成の動物除けでは、着磁性を有する鋼線材から環状に形成された環状体が、永久磁石を有する本体から突設されている。よって、上記構成の動物除けによれば、永久磁石を有する本体の周りばかりでなく、環状体の周りにも磁界を形成することができ、広い範囲に人工的な磁界を形成することができる。
【0013】
上述した手段において、
「前記環状体は、前記本体に対して角度調節可能に回動自在に支持されている
ことを特徴とする動物除け」
とするのが好適である。
【0014】
動物によっては、特に忌み嫌う磁界の形態があるものと考えられる。
【0015】
上記構成の動物除けでは、環状体の角度が調節可能であることから、本体に対して環状体の角度を調節することで、対象の動物が最も嫌う形態の磁界を的確に形成することができる。
【0016】
また、例えば、水平に対して所定の角度で環状体が傾いているのが理想である場合、本体を水平に置けない場合でも、本体に対する環状体の角度を調節することで、水平に対する理想的な角度の環状体を実現することができる。
【0017】
上述した手段において、
「前記環状体は、複数設けられている
ことを特徴とする動物除け」
とするのが好適である。
【0018】
上記構成の動物除けでは、本体に対する角度を調節可能な環状体が複数設けられていることから、各環状体の角度を個別に調節して各環状体によって形成される磁界を複雑に干渉させることで、より一層、多様な形態の磁界を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述した通り、本発明によれば、永久磁石によって動物が嫌う人工的な磁界を広範囲に形成することのできる新規な動物除けを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る動物除けの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した動物除けの縦断面図である。
【図3】本発明に係る動物除けの別の例を示す斜視図である。
【図4】動物除けの他の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る動物除けの実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に、動物除け100の一例を示す。
【0023】
この動物除け100は、円柱状の本体10と、着磁性を有する鋼線材から環状に形成され、本体10から突出する二つの環状体30とを有するものであり、本体10には、永久磁石20が内蔵されている。
【0024】
なお、具体的に、本体10は、直径60mm、高さ37mmの円柱状に形成されている。また、環状体30は、直径4mmの鋼線材を直径250mmの円形にループさせたものである。
【0025】
本体10は、夫々、磁気による影響を受けない金属や樹脂等、すなわち、着磁性を有しない材料(非着磁性の材料)によって形成された基台部材11及び蓋部材12を有しており、基台部材11の内部に直方体形状の永久磁石20が収容されている。また、基台部材11に収容された永久磁石20は、基台部材11に被せた蓋部材12によって隠蔽されている。また、基台部材20には、本体10内に侵入した水が永久磁石20を収容する凹部に溜まらないように、底面に貫通する水抜き穴(図示省略)が設けられている。
【0026】
なお、本例では、基台部材11及び蓋部材12が、非着磁性の材質であるアルミニウム合金によって形成されている。また、永久磁石20として、0.4T(テスラ)(4000G(ガウス))程度のネオジウム磁石を採用している。
【0027】
本体10を構成する基台部材11と蓋部材12とは、夫々に設けられたボルト孔に挿通したボルト13と、このボルト13の先端に螺着されたナット14とによって堅固に一体化されている。
【0028】
また、互いに当接する基台部材11の上面と蓋部材12の底面とには、夫々溝11a,12aが設けられており、基台部材11の溝11aと蓋部材12の溝12aとの間にて、環状体30を構成する一本の鋼線材の両端が挟持されている。
【0029】
ここで、基材部材11の溝11a及び蓋部材12の溝12aは、環状体30を構成する鋼線材の直径よりもわずかに小さい寸法となっている。また、基台部材11の溝11aと蓋部材12の溝12aとの間で挟持された環状体30は、挟持部分が鋼線材の軸線回りに回動自在となっている。よって、ボルト13を緩めることで、本体10に対する各環状体30の角度を自由に調節することができ(図1の矢印A,B参照)、ボルト13を締めることで、本体10に対する環状体30の姿勢を堅固に維持させることができる。
【0030】
ところで、本例の動物除け100では、基台部材11と蓋部材12とを、夫々のボルト孔に挿通されたボルト13によって一体化していることから、例えば、本体10とは別途の支持台に本体10を取付ける場合には、基台部材11及び蓋部材12の各ボルト孔にボルト13を挿通し、このボルト13を用いて支持台にボルト止めすることができる。
【0031】
なお、本例では、上記ボルト13の他に、基台部材11または蓋部材12の一方に設けられた雌ネジに螺合するロックボルト15によって、基台部材11と蓋部材12とが一体化されている(図示省略するが、本例では、蓋部材12にロックボルト15のボルト孔が設けられ、基台部材11にロックボルト15の雌ネジが設けられている)。そして、ロックボルト15は、その先端が基台部材11または蓋部材12の一方に設けられた雌ネジを貫通して突出しており、突出した先端部分を潰すことで、ロックボルト15が外れないようにしてある。これにより、環状体30の角度を調節するためにボルト13を緩めたり、本体10を別途の支持台に取付けるためにボルト13を外したとしても、本体10が分解してしまわないような配慮がなされている。
【0032】
本例の動物除け100では、着磁性を有する環状体30周りに磁界が形成されることから、広範囲に磁界を形成することができる。特に、本例では、環状体30を構成する鋼線材の両端部を本体10に内蔵された永久磁石20に接触させており、環状体30周りに効率よく磁界が形成されるようにしてある。よって、人工的な磁界を嫌うカラス等の鳥類、猫等の獣類、サメ等の魚類等、種々の動物を、この動物除け100周りから良好に忌避させることができる。
【0033】
また、上述のような構造によって、本体10に対して角度を調節可能に環状体30が回動自在に支持されており、磁界の形態を自由に変化させることができる。よって、本例の動物除け100によれば、忌避の対象となる動物が嫌う磁界の形態を探って、最も嫌がる磁界を形成することができ、この点からも、動物を良好に忌避させることができる。
【0034】
また、本体10に対して環状体30が回動自在であることから、本体10の姿勢に関わらず、動物が嫌う形態の磁界が形成されるように環状体30の角度を調節することができ、本体10の設置場所の自由度を向上させることができる。
【0035】
さらに、回動自在な環状体30が複数設けられていることから、各環状体30の角度を個別に調節することで、各環状体30周りの磁界を干渉させて複雑な形態の磁界を形成することもできる。よって、忌避の対象となる動物が最も嫌う磁界の形態を、的確に探り出すこともできる。
【0036】
次に、実証結果を以下に説明する。
【0037】
<実証結果1>
パン屑や米によって餌付けされた鳩が多数飛来する公園にて、上述例の動物除け100を1m間隔で複数設置したところ、全ての鳩が即座に各動物除け100から離れ、その後、動物除け100周りに近寄ることはなかった。
【0038】
特に、環状体30の角度を水平としたところ、全ての鳩は、動物除け100を中心に1m以内に近づくことはなかったのであるが、環状体30の角度を水平に対して45°としたところ、全ての鳩は、動物除け100を中心に2m以内に近づくことはなかった。
【0039】
<実証結果2>
民家周りの猫の通り道に、上述例の動物除け100を、環状体30の角度を水平に対して45°として一つ設置したところ、その後、その通り道を猫が通ることはなくなった。
【0040】
<実証結果3>
コウモリの糞害が激しい民家の軒先に、上述例の動物除け100を、各環状体30を水平として一つを設置したところ、設置後は、コウモリの糞害がなくなった。
【0041】
以上、本発明に係る動物除け100の一例を説明したが、本発明に係る動物除け100は、上述の例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更が可能である。
【0042】
例えば、本体10の大きさ、環状体30の大きさや永久磁石20の磁力の強さについては、適宜の変更が可能である。また、環状体30の形状としては、環状であればよく、円状に限らず、三角形や矩形等、種々の形状を採用することができる。
【0043】
また、環状体30は、本体10に対して二つに限らず、図3に示すように、四つとして、各環状体30を、夫々、本体10に対して個別に回動できるようにしてもよい(図3の矢印A,B,C,D参照)。
【0044】
また、動物除け100の使用態様としては、設置場所に本体10を置くことに限らず、支持台等を用いて竿先に取付けて、竿を立てて空中に設置したり、図4に示すように、連結具101を用いて複数の動物除け100を連結してぶら下げる等、種々の態様で使用することができる。
【0045】
また、サメも人工的な磁界を嫌う性質があると思われることから、本発明の動物除け100をロープでぶら下げる等して海中に設置することで、サメ除けとしての効果も期待することができる。
【0046】
また、本発明の動物除け100を浮き等を用いて水面に浮かべることにより、水面近くの魚類を忌避させたり、水面に飛来する鳥類を忌避させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 本体
11 基台部材
11a 溝
12 蓋部材
13 ボルト
14 ナット
15 ロックボルト
20 永久磁石
30 環状体
100 動物除け
101 連結具
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開平7−67513号公報
【特許文献2】特開平8−23863号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有する本体と、
着磁性を有する鋼線材によって環状に形成され、前記本体に突設された環状体と
を備えることを特徴とする動物除け。
【請求項2】
前記環状体は、前記本体に対して角度調節可能に回動自在に支持されている
ことを特徴とする請求項1に記載の動物除け。
【請求項3】
前記環状体は、複数設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の動物除け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−30458(P2011−30458A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177650(P2009−177650)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(392028848)クマクラ工業株式会社 (21)
【Fターム(参考)】