説明

動物飼料用シルクアミノ酸栄養補助食品

【課題】 動物飼料用としてのシルクアミノ酸栄養補助食品を提供すること。
【解決手段】 繭を等量体積のお湯で煮た後、規定量の塩酸を加えて加水分解し、これから得られたシルクアミノ酸溶液を水酸化ナトリウムで中和・濃縮し、この濃縮液を透析してシルクアミノ酸溶液を分離・抽出し、これを凍結乾燥して粉末のシルクパウダーを作製し、他方上記工程で加水分解されなかったさなぎをすり潰して再度上記工程により酸加水分解し、粉末化した後、上記シルクパウダーと該さなぎ粉末を混合し、これを顆粒状あるいは一定形状のタブレットに加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物飼料用としてのシルクアミノ酸栄養補助食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シルクアミノ酸栄養補助食品は、人間の食用としての開発が進み、シルクアミノ酸パウダーに加工したものがいろいろの食品に添加されて食されるようになった。
しかし、動物飼料用としては、その実用化はまだ実験段階にある。
【0003】
シルクアミノ酸を人間の食用として提案したものとしては、例えば下記の文献がある。
【特許文献1】 特許第2737784号
【特許文献2】 特許第2737790号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第2737784号及び特許第2737790号は、いずれも人間の食用として開発されたものであり、動物の飼料用としては考えられていない。
本発明においては、シルクアミノ酸を人間の食用ではなく、牛、馬、豚、鶏等の動物の飼料用として提供しようとするものである
【課題を解決するための手段】
【0005】
繭を等量体積のお湯で煮た後、規定量の塩酸を加えて加水分解し、これから得られたシルクアミノ酸溶液を水酸化ナトリウムで中和・濃縮し、この濃縮液を透析してシルクアミノ酸溶液を分離・抽出し、これを凍結乾燥して粉末のシルクパウダーを作製する。他方上記工程で加水分解されなかったさなぎをすり潰して再度上記工程により酸加水分解し、中和・脱塩後粉末化する。上記シルクパウダーと該さなぎ粉末を混合し、これを顆粒状あるいは一定形状のタブレットに加工する。
【発明の効果】
【0006】
本発明を動物の飼料に混入して与えることにより、動物がより健康になり毛艶がよくなり、発育が良くなる。それによって、例えば豚では肉質がよくなり、鶏では卵の質が向上する等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(イ)繭と等量体積(外観体積)のお湯で繭を煮る。これにより、繭の中の空気の一部とお湯が入れ替わり、繭が水中に沈む。
(ロ)上記お湯の中に規定量の塩酸を加え、105℃で30時間位放置する。
(ハ)繭の糸の部分は加水分解され、アミノ酸溶液となり、さなぎは一部分解されるが、大部分は下に残る状態となるので、加水分解されなかったさなぎを取り出す。
(ニ)アミノ酸溶液を水酸化ナトリウムで中和し、これを濃縮すると、食塩とアミノ酸溶液の混合物となる。これを透折して食塩とアミノ酸溶液を分離し、アミノ酸溶液を抽出する。
(ホ)アミノ酸溶液を凍結乾燥し、粉末のシルクパウダーを作製する。
(ヘ)上記加水分解によって分解されずに残ったさなぎをすり潰し、再度お湯で加熱し、規定量の塩酸を加えて酸加水分解する。
(ト)加水分解されたさなぎを上記と同様に中和・脱塩し、これを凍結乾燥してさなぎ粉末とする。
(チ)シルクパウダーとさなぎ粉末とを混合し、顆粒状又は一定形状のタブレットに加工する。
尚、飼料の状態によっては粉末で与えることも可能である。
【0008】
財団法人日本食品油脂検査協会による、シルクアミノ酸溶解液の平均分子量の分布は、下表の通りである。

【実験例1】
【0009】
蛋白質含量を下げてシルクアミノ酸オリゴペプチドと脂肪を添加した飼料を与えることにより、運動による馬の乳酸生成を減少することができるかどうか検討した。
アラブ種の馬を用い、2×2(低・高脂肪、低・高CP)要因計画を実施し、秒速7mで1分間の全力疾走を、4分間の歩行をはさんで6回繰返す標準の運動(A)と、全力疾走の速度のみを秒速10mとした運動(B)を行った。
その結果、低蛋白飼料給与群で運動(A)により運動中の馬の静脈のpHは、高蛋白飼料給与群より高い結果が得られた。
この結果は、飼料の蛋白質を制限し、シルクアミノ酸オリゴペプチドと脂肪を添加すると、馬の運動による乳酸生成が減少することを示している。
【実験例2】
【0010】
牛などの反芻動物では、摂取した蛋白質を第1胃(ルーメン)で蛋白質分解酵素によりペプチドやアミノ酸に分解し、アミノ酸は脱アミノ化され、アンモニアが生産される。
第1胃(ルーメン)の微生物は、アンモニアを体内に取り込んで菌体蛋白質を合成するが、微生物は飼料中に含まれる蛋白質だけでなく、尿素や遊離アミノ酸などの非蛋白質態窒素化合物もアンモニアに分離して菌体蛋白質の合成を行っている。この菌体蛋白質は、小腸でアミノ酸に分解される。さらに、反芻動物にとっては重要な蛋白源であり、小腸に達する全蛋白質の40〜80%を占めると言われている。
従って、牛に与えられたアミノ酸は、第1胃(ルーメン)で微生物の蛋白質合成に使われ、その結果、菌体蛋白質として小腸でアミノ酸に分解されることによって体内に吸収されていると考えられる。
ルーメン内の微生物は、アミノ酸の存在によって増殖が高まることが報告されている。20種類のアミノ酸混合物を添加したときには、アンモニアのみの場合と比べて約45%も増殖速度が高まっている。しかし、それぞれのアミノ酸を単体で投与した場合は、グルタミンでの10%程度の促進効果しか見られなかった。
反対にイソロイシンなどアミノ酸によっては増殖を阻害するものも見られた。
ここで、アミノ酸の組合せによって阻害アミノ酸の効果が緩和されるかどうかということを検討した。
その結果、イソロイシンによる阻害が他の分岐鎖アミノ酸によって、またフェニルアラニンによる阻害がチロシンによって緩和されることが分かった。
従って、アミノ酸の添加によって第1胃(ルーメン)内の微生物の増殖は促進されるが、そのためには多種類のアミノ酸がバランス良く含まれていることが条件であり、その条件が満たされた場合は、阻害アミノ酸による増殖低下も抑制することが判明した。
【実験例3】
【0011】
飼料にシルクアミノ酸オリゴペプチドを与えることによって、卵質及び生産性の向上をはかる目的で試験を行った。
ブロイラー種鶏の卵殻質について検討した。一羽の産卵鶏は、卵殻形成のために16時間の中において、毎時125mgのカルシウムを必要とする。鶏は他の養分(ビタミンD、シルクアミノ酸オリゴペプチド、リンなど)が消化システム内で不足していると、消化管からカルシウムを効果的に吸収できないし、骨のカルシウムを代謝できない。
採卵鶏の産卵初期の卵重増大を図るために、飼料のシルクアミノ酸オリゴペプチド含量を日本飼養標準量の2倍程度に強化して、その効果を検討した。
鶏卵取引規格のL+LL(64g以上76g未満)産出率は、リジン+メチオニン添加区71.1%、リジン+メチオニン+トリプトファン添加区68.2%であって、シルクアミノ酸オリゴペプチド無添加区の55.7%に比べて高く、トリプトファン単独添加区は44.9%で低かった。
鶏は白レグと赤玉を用い、シルクアミノ酸オリゴペプチド添加量0.3%添加区(第1区)、0.05%添加区(第2区)、無添加区(第3区)で行い検討した。
その結果、第1区が産卵率、生産卵量、飼料要求率とも最も良く、第3区が最も悪かった。また、卵殻強度は第1区が最も良い成績を示したが、季節による影響が大きく作用した。
以上の結果から、飼料に0.3%シルクアミノ酸オリゴペプチドを加えることにより、生産性の向上を図ることができ、卵質の向上を図ることができた。
【実験例4】
【0012】
母豚について、シルクアミノ酸を与えた群(A)と与えなかった群(B)とを各5頭づつ5ヶ月間飼育した結果を下表に示す。

産次は分娩回数を意味し、高くなると豚が高齢になっていくが、産次が上がっているのにも関わらず子豚の生時体重に差はなく、生時〜3週齢(離乳まで)の1日平均増体量(DG)は、シルクアミノ酸を飼料添加したA群が飼料添加しなかったB群に比べて有意に高い値を示した。離乳頭数もA群がB群よりも高い値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繭を等量体積のお湯で煮た後、規定量の塩酸を加えて加水分解し、これから得られたシルクアミノ酸溶液を水酸化ナトリウムで中和・濃縮し、この濃縮液を透析してシルクアミノ酸溶液を分離・抽出し、これを凍結乾燥して粉末のシルクパウダーを作製し、他方上記工程で加水分解されなかったさなぎをすり潰して再度上記工程により酸加水分解し、粉末化した後、上記シルクパウダーと該さなぎ粉末を混合し、これを顆粒状あるいは一定形状のタブレットに加工した、動物飼料用シルクアミノ酸栄養補助食品。
【請求項2】
請求項1のシルクアミノ酸栄養補助食品において、シルクパウダーの平均分子量が300以下である、動物飼料用シルクアミノ酸栄養補助食品。

【公開番号】特開2006−333853(P2006−333853A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185683(P2005−185683)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(399130061)ロード・ニジュウイチ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】