説明

動電型エキサイタ

【課題】垂直壁面に垂直状態で搭載しても電気/音響変換特性の劣化や、接触による破損が生じ難く、同時に、電気/音響特性上の低周波特性が改善できる動電型エキサイタを提供する。
【解決手段】椀状のアウターヨークと、この椀状のアウターヨークに囲まれて配置された磁石とインナーヨークとを含む磁気回路部と、この磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設したコイルと、このコイルが固定された振動板と、この振動板と磁気回路部とが所定の隙間を有するよう、振動板と磁気回路部とを弾性的に連結する弾性体とを備えた動電型エキサイタにおいて、弾性体は、第一の弾性体と第二の弾性体との少なくとも2つの弾性体で構成されており、第一の弾性体と第二の弾性体とが、振動板の振動方向である軸方向に互いに相反する押圧力を発生させるように、アウターヨークの外周近傍と振動板の外周近傍とを連結するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テレビやパーソナルコンピュータなどの各種電子機器の薄型化を図るために活用されている薄型パネルスピーカに適用したり、電動車両などに取り付けて報知音発生に応用したりする動電型エキサイタの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型液晶テレビ、薄型プラズマテレビ、薄型パーソナルコンピュータ等の家電製品や産業用工作機械の各種モニタ機器などに搭載される薄型パネルスピーカには、動電型エキサイタが多く採用されている。すなわち、従来の動電型エキサイタは、椀形状のインナーヨーク、永久磁石、アウターヨーク、ボイスコイル、振動板、接着部材にて構成されており、インナーヨークとアウターヨーク側壁との空隙にボイスコイルが配設され、振動板はボイスコイルと一体的に固定されている。永久磁石とインナーヨークとアウターヨークとで構成される磁気回路中のボイスコイルに所定信号からなる電流を流すことにより、ボイスコイルが軸方向に振動し、ボイスコイルが一体的に固定された振動板を励振することにより音波を発する。
【0003】
例えば、特許文献1による動電型エキサイタは、インナーヨーク、マグネット、アウターヨークからなる磁気回路の軸方向端面に、発泡ウレタンなどの適宣な弾性を有する弾性保持体によって、ボイスコイルと一体的に固定された振動板からなる振動部材を貼着した構造となっている。
【0004】
また、特許文献2による動電型エキサイタは、椀形状のアウターヨークと、このアウターヨークの内部に順次積み重ねられた板状のマグネット及びインナーヨークとから構成される磁気回路と、この磁気回路のアウターヨークの側壁の内周部とインナーヨークの外周部との間に形成される空隙内に配置されるボイスコイルと、磁気回路の前方においてボイスコイルを保持する振動板に相当するサブパネルとを備え、磁気回路の厚み方向重心近傍とサブパネルとを複数の円弧形状の帯状薄板弾性保持体により保持した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−243491号公報
【特許文献2】特開2003−143690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来の動電型エキサイタは、薄型テレビや薄型パーソナルコンピュータなどの電子機器などに、幅広く利用されている。特に、これらの薄型家電製品用スピーカは小型、軽量、薄型、低価格による市場競争が激化しており、製品差別化の観点から低周波域の音響性能向上が必須であり、上述の先行技術文献などによって、その改善提案がなされている。
【0007】
特許文献1に開示された動電型エキサイタの振動板が水平状態で装着された場合、何等問題は発生しないが、振動板を直立状態で装着した場合、エキサイタの磁気回路の全重量が弾性保持体のせん断方向に作用する。このため、弾性保持体の弾性定数が低いほどボイスコイルの軸心と磁気回路の軸心ズレ及び軸心の傾きが大きくなり、ボイスコイル周辺のエアギャップが変化するため、磁気回路の電気/音響特性が変化し、必要な周波数特性が
得られなくなるという課題があった。
【0008】
また、テレビやパソコン等の家電品では、本体振動が非常に小さいため、家電品用スピーカに要求される振動耐久性は殆ど問題にならない。しかし、自動車等の振動の大きい移動体に搭載される車載用スピーカの場合、エキサイタの振動板を直立状態で装着すると、弾性保持体は、磁気回路の重量よる静的なせん断応力のみでなく、エキサイタ装着部の振動による動的な交番せん断応力も付加されるため、家電品へのエキサイタ搭載時に比べ、車載用のせん断応力が大幅に大きくなり、弾性保持体が破壊されるなど、エキサイタの装着方向によっては信頼性が大幅に乏しくなるという課題があった。
【0009】
特許文献2は特許文献1の課題を改善するための一手段を開示している。特許文献2では、薄い金属板からなる弾性保持体にて磁気回路の厚み方向重心近傍を支持する構造とすることで、振動板を直立状態で装着した場合においても、電気/音響変換特性の劣化や、接触による破損が生じ難く、車載用などの振動環境のもとでも動作可能な耐震性に優れるエキサイタ(スピーカ)が開示されている。
【0010】
この構造によると、振動板を直立状態で装着した場合、磁気回路の重量による回転モーメントを小さくすることはできるが、帯状薄板弾性保持体には機密保持機能が無いため防水構造が取れなくなる欠点がある。従って、このような構造のエキサイタを車室外に設置した場合、水分がボイスコイル部分まで進入することにより、ボイスコイルが破損することがある。
【0011】
本発明は、以上のような従来の薄型スピーカとして利用されている動電型エキサイタの問題点を解消するためになされたものであり、垂直壁面に垂直状態で搭載しても電気/音響変換特性の劣化や、接触による破損が生じ難く、同時に、電気/音響特性上の低周波特性が改善できる動電型エキサイタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、椀状のアウターヨークと、この椀状のアウターヨークに囲まれて配置された磁石とインナーヨークとを含む磁気回路部と、この磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設したコイルと、このコイルが固定された振動板と、この振動板と磁気回路部とが所定の隙間を有するよう、振動板と磁気回路部とを弾性的に連結する弾性体とを備えた動電型エキサイタにおいて、弾性体は、第一の弾性体と第二の弾性体との少なくとも2つの弾性体で構成されており、第一の弾性体と第二の弾性体とが、振動板の振動方向である軸方向に互いに相反する押圧力を発生させるように、アウターヨークの外周近傍と振動板の外周近傍とを連結するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、垂直壁面に垂直状態で搭載しても電気/音響変換特性の劣化や、接触による破損が生じ難く、同時に、電気/音響特性上の低周波特性が改善できる動電型エキサイタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1による動電型エキサイタの構成を示す模式的な断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による動電型エキサイタを垂直壁面に敷設した状態の模式的な断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1による動動電型エキサイタ全体の外観を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1による動電型エキサイタの構成のバネ定数の関係を示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態2による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図である。
【図9】この発明の実施の形態5による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図である。
【図10】この発明の実施の形態6による動電型エキサイタ全体の外観を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態7による動電型エキサイタの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による動電型エキサイタの構成を示す模式的な断面図である。図2は、図1の動電型エキサイタを垂直壁面に敷設した状態の模式的な断面図、図3は、本発明の実施の形態1による動電型エキサイタの模式的な断面図を示した図1中の破線円内を図2と同様垂直状態で拡大して示す部分断面図である。また、図4は、本発明の実施の形態1による動電型エキサイタ全体の外観を示す斜視図である。図1、図2、及び図3において、磁性体からなるインナーヨーク1、希土類等からなる扁平形状のマグネット2、お椀形状をした磁性体からなるアウターヨーク3で磁気回路を構成している。アウターヨーク3のお椀形内底面にはマグネット2の片面が接触し、また、マグネット2の他面は磁性体からなるインナーヨーク1が接触している。アウターヨーク3とマグネット2とインナーヨーク1とは夫々図示しない接着材にて接合され、インナーヨーク1の径方向外周面とアウターヨーク3のお椀形状縁部内周壁面との間にギャップ(隙間)を持たせて磁気回路を構成している。
【0016】
磁気回路のギャップ部(隙間)に位置するよう、絶縁材からなるボビン4に巻回されたコイル5が配設され、コイル5が巻回されたボビン4は薄い平板状の振動板6によって一体的に保持されている。
【0017】
なお、アウターヨーク3は外壁面の、動電エキサイタの軸方向(以下単に軸方向と記載する)中央部に径方向に突出する段付き部31を有し、段付き部31の振動板6に対面する側は凸部32を有している。また、振動板6は外周部近傍に、アウターヨーク3の段付き部31に設けた凸部32に対面するよう軸方向へ突出する枠部61を有している。
【0018】
リング状の弾性体(第一の弾性体)7が、アウターヨーク3の段付き部31と振動板6の径方向端部と間に挟み込まれる状態で配設されている。更に、第一の弾性体7は、軸方向両端面に所定の幅及び深さからなる溝部が成形されたH型形状をしており、アウターヨーク3の段付き部31に設けられた凸部32と、振動板6の外周部近傍に設けられた枠部61とが第一の弾性体7の軸方向両端面に形成された溝部とそれぞれ噛み合う形で勘合されている。
【0019】
コの字形断面形状を有するリング状の弾性体(第二の弾性体)8が、アウターヨーク3の段付き部31と振動板6の径方向端部を接近させる方向に押圧するよう勘合されている。なお、アウターヨーク3の段付き部31、及び、振動板6の外周部との勘合部は、第二の弾性体8が離脱し難いよう、図示しない抜け止め防止を図ることがより好ましい。
【0020】
なお、本実施の形態1のアウターヨーク3、及び、第二の弾性体8の外観は、図4に示すように何れも円筒状であるが、本発明を適用できる動電型エキサイタは、円筒形状に限定されるものではない。
【0021】
このように構成された動電型エキサイタは、磁気回路を構成するアウターヨーク3と、コイル5への通電により励振される振動板6とを、第一の弾性体7及び第二の弾性体8にて弾性支持され、第一の弾性体7の軸方向押圧力と第二の弾性体8の押圧力が所定値にて均衡するよう、双方の弾性部材のバネ定数が夫々設定されている。
【0022】
図5は、双方の弾性体のバネ定数の関係を説明するための略図であり、図中Kcは圧縮方向に変形することで押圧力が生じる第一の弾性体7のバネ定数を示し、また、Keは引っ張り方向に変形することで押圧力が生じる第二の弾性体8のバネ定数を示している。また、第一の弾性体7及び第二の弾性体8を具備した状態において、磁気回路部を構成するアウターヨーク3の軸方向端面と振動板6との間に所定の隙間Lを有している。
【0023】
この状態で、動電型エキサイタを駆動すると、アウターヨーク3に対して振動板6は相対的に変位するため、図5に示した隙間Lは振動板6の動的な振幅変化分だけ増減する。従って、隙間Lは動電型エキサイタの最大供給電力駆動時でも振動板6とアウターヨーク3とが接触しないよう所定範囲の隙間に設定する必要がある。そのために、第一の弾性体7の軸方向押圧力と第二の弾性体8の軸方向押圧力とが均衡状態にある位置にて所定隙間Lを確保するために、第一の弾性体7の軸方向バネ定数Kcと第二の弾性体8の軸方向バネ定数Keとの差を極力小さくすることが望ましい。
【0024】
更に、第一の弾性体7の軸方向バネ定数Kcと、これに直交する径方向バネ定数KvはKc≪Kvの関係にあることが望ましく、その差は振動板6の振動を妨げない範囲内で極力大きく設定する。動電型エキサイタの軸線が重力軸に対して傾いた状態、もしくは水平状態に装着された際に、動電型エキサイタの大半の重量割合を占める磁気回路部の重量、すなわち、インナーヨーク1、マグネット2、及びアウターヨーク3の合計重量が重力方向に作用するため、第一の弾性体7の径方向バネ定数が低すぎると磁気回路部の軸線が振動板6の軸線に対して傾き、磁気回路のエアーギャップが変化することになる。その結果、動電型エキサイタの駆動力低下に繋がる電気特性への悪影響が生じる。更には、この動電型エキサイタを例えば電気自動車等の接近報知装置として使用する場合、車両の走行振動、特に低周波振動が印加されるため、ボビン4やコイル5がアウターヨーク3やインナーヨーク1に接触し易くなり、振動の厳しい環境ではコイル5の断線等による致命的な不具合を誘発する恐れもある。従って、このような不具合を起こさないようにするため、Kc≪Kvの関係が必要になってくる。
【0025】
また、動電型エキサイタを例えば電気自動車等の接近報知装置用発音体など屋外で使用する場合、外気に曝されるため防水機能も必要となる。従って、第一の弾性体7及び第二の弾性体8の少なくともどちらか一つはリング状であり、動電型エキサイタの内部空間と外部とを遮断する機能を有する必要がある。本実施の形態1では、第一の弾性体7と第二の弾性体8はゴム系のリング状弾性体を用いており、例えば第一の弾性体7の軸方向一端面がアウターヨーク3の段付き部31の軸方向端面に圧接し、他端面が振動板6に圧接されており、更に、第二の弾性体8の軸方向両端部はアウターヨークの段付き部31と振動板6の端部を抱え込む形で夫々に圧接されている。
【0026】
これにより、動電型エキサイタの内部空間は、第一の弾性体7と第二の弾性体8の軸方向両端部の圧接によって完全に機密性が確保され大気と遮断状態になることから、屋外使
用の動電型エキサイタであっても、内部に水が進入する危険性は無い。このため、コイル5の絶縁不良やインナーヨーク1及びアウターヨーク3の腐食も発生し難い。従って、車両外部や床下等の厳しい環境に装着される接近報知装置用発音体として必要な耐環境信頼性を著しく向上させることができる。
【0027】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図であり、実施の形態1の図3に相当する図である。図6において、図3と同一符号は同一または相当する部分を示す。本実施の形態2が実施の形態1と異なる部分は、第一の弾性体7の断面形状であり、その断面を長方形としたものである。第一の弾性体7の断面長手方向はアウターヨーク3の段付き部31と振動板6との間で挟まれるように配設されており、図3のバネ定数Kcで示されるバネに相当するバネの役割を担う。また、振動板6の外周端部を、アウターヨーク3の外周面を囲むように枠状に折り曲げて、枠部62が形成されている。この枠部62のアウターヨーク3の外周面に対向する面とアウターヨーク3の外周面との間で挟まれるように、第一の弾性体7の断面短手方向が配設されており、図3のバネ定数Kvで示されるバネに相当するバネの役割を担う。これにより動電型エキサイタの磁気回路部を軸方向に支持するバネ定数は、第一の弾性体7の断面長手方向のバネ定数によって決定され、一方、動電型エキサイタの軸方向と直交する方向、つまり、径方向に支持するバネ定数は、第一弾性体7の断面短手方向のバネ定数によって決定される。
【0028】
よって、第一の弾性体7の断面長手方向のバネ定数をより低く設定することで、動電型エキサイタの低周波数領域の振動特性を改善することができる。また、動電型エキサイタの軸線が重力軸から傾いた状態、もしくは垂直壁面に動電型エキサイタを装着した状態で使用する場合、第一の弾性体7の断面短手方向のバネ定数をより高く設定することで、インナーヨーク1、マグネット2及びアウターヨーク3から構成される磁気回路部を高いバネ定数で弾性支持することができる。このため、動電型エキサイタの軸線に対し、全体重量の大半を占める磁気回路の軸線が傾斜することを阻止でき、コイル5とアウターヨーク3との接触等による断線不具合などの発生を防止することができる。したがって、垂直壁面装着時の動電型エキサイタの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0029】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3による動電型エキサイタの構成を示す部分断面図であり、実施の形態1の図3に相当する図である。図7において、図3および図6と同一符号は同一または相当する部分を示す。本実施の形態3が実施の形態1及び実施の形態2と異なる部分は、第一の弾性体7を2つの弾性体に分割し、図7中の第一の弾性体A72と、第一の弾性体B73を配設したことにある。
【0030】
ここで、第一の弾性体A72は磁気回路部を軸方向に弾性支持し、第一の弾性体B73は磁気回路部を径方向に弾性支持している。すなわち、第一の弾性体A72は、振動板6とアウターヨーク3の段付き部31との間に挟まれるように配設され、アウターヨーク3の外周面と振動板6の端部を折り曲げた部分との間にはバネ力が働かないよう、径方向には隙間を持たせて配設している。また、振動板6の外周端部を、アウターヨークの段付き部31の突起32の周囲を囲むように折り曲げて枠部62が形成されている。第一の弾性体B73は、この枠部62のアウターヨーク3の段付き部の突起の周囲に対向する面とアウターヨーク3の段付き部31の突起32の外周面との間で挟まれるように配設されており、図3のバネ定数Kvで示されるバネに相当するバネの役割を担う。また、第一の弾性体B73は、振動板6およびアウターヨーク3の段付き部31に対して軸方向にバネ力が働かないよう、軸方向には隙間を持たせて配設している。
【0031】
第一の弾性体A72による軸方向バネ定数より低く、また、第一の弾性体B73による
径方向バネ定数はより高く設定することが望ましい。このように設定することで、実施の形態1や実施の形態2で説明したのと同じように、垂直壁面装着時の動電型エキサイタの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0032】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図であり、実施の形態1の図3に相当する図である。図8において、図3および図6と同一符号は同一または相当する部分を示す。本実施の形態4が図6に示した実施の形態2と異なる部分は、断面が略コの字状の第二の弾性体8の端面縁部が、アウターヨーク3の外周面に彫られた溝部32に嵌め込まれている点である。
【0033】
本実施の形態4においても、実施の形態2と同様、第一の弾性体7の断面長手方向のバネ定数をより低く設定することで、動電型エキサイタの低周波数領域の振動特性を改善することができる。また、動電型エキサイタの軸線が重力軸から傾いた状態、もしくは垂直壁面に動電型エキサイタを装着した状態で使用する場合、第一の弾性体7の断面短手方向のバネ定数をより高く設定することで、インナーヨーク1、マグネット2及びアウターヨーク3から構成される磁気回路部を高いバネ定数で弾性支持することができる。このため、動電型エキサイタの軸線に対し、全体重量の大半を占める磁気回路の軸線が傾斜することを阻止でき、コイル5とアウターヨーク3との接触等による断線不具合などの発生を防止することができる。したがって、垂直壁面装着時の動電型エキサイタの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0034】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5による動電型エキサイタの主要部の構成を示す部分断面図であり、実施の形態1の図3に相当する図である。図9において、図3、図6および図8と同一符号は同一または相当する部分を示す。本実施の形態5が図6に示した実施の形態2や図8に示した実施の形態4と異なる部分は、断面が略コの字状の第二の弾性体8の片端面縁部が、アウターヨークの頭部軸方向端面に覆いかぶさっている点である。
【0035】
本実施の形態5においても、実施の形態2や実施の形態4と同様、第一の弾性体7の断面長手方向のバネ定数をより低く設定することで、動電型エキサイタの低周波数領域の振動特性を改善することができる。また、動電型エキサイタの軸線が重力軸から傾いた状態、もしくは垂直壁面に動電型エキサイタを装着した状態で使用する場合、第一の弾性体7の断面短手方向のバネ定数をより高く設定することで、インナーヨーク1、マグネット2及びアウターヨーク3から構成される磁気回路部を高いバネ定数で弾性支持することができる。このため、動電型エキサイタの軸線に対し、全体重量の大半を占める磁気回路の軸線が傾斜することを阻止でき、コイル5とアウターヨーク3との接触等による断線不具合などの発生を防止することができる。したがって、垂直壁面装着時の動電型エキサイタの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0036】
実施の形態6.
図10は本発明の実施の形態6による動電型エキサイタ全体の外観を示す斜視図であり、実施の形態1の図4に相当する図である。図10において、図1および図4と同一符号は同一または相当する部分を示す。実施の形態1から実施の形態5では、第二の弾性体8をリング状として、アウターヨーク3と振動板6の外周を覆うように設けた。これに対し、本実施の形態6では、第二の弾性体81がリング状ではなく、動電型エキサイタの外周面の少なくとも3箇所に分割固定するようにした。図中62は振動板6の外周壁面であり、81はアウターヨーク3と振動板6とを部分的に弾性支持する第二の弾性体である。第二の弾性体81はコの字状の断面形状であり、アウターヨーク3と振動板6とを挟み込む形で装着され、例えば接着等の図示しない離脱防止措置が施されている。
【0037】
図10の外観構成の動電型エキサイタの第二の弾性体81を含む断面構成は、実施の形態5の図9に示した断面構成と同様の構成になっている。ただし、第二の弾性体81がアウターヨーク3と振動板6を固定する構造は、図10のものに限られず、実施の形態1〜3で示したように、アウターヨークの外壁面に径方向に突出する段付き部を設けたものや、実施の形態4で示したアウターヨーク3の外周面に溝部を設けたものであっても良い。また、第一の弾性体7の断面構成も、実施の形態1〜4に示したいずれの構成であっても良い。
【0038】
本実施の形態6の動電型エキサイタによれば、リング状の第二の弾性体8に比べ、分割された第二の弾性体81は組み付け性が大幅に向上し、かつ、コスト低減も可能となる。
【0039】
実施の形態7.
図11は本発明の実施の形態7による動電型エキサイタの構成を示す断面図であり、図11(A)は動電型エキサイタの軸に垂直な面での断面図、図11(B)は軸を含む面での断面図である。図11(A)は、図11(B)に示すA−A位置での断面図、図11(B)は、図11(A)に示すB−B位置での断面図である。図11において、図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。実施の形態1から実施の形態5では、第一の弾性体7などをリング状として、アウターヨーク3の外周を囲うように設けた。これに対し、本実施の形態7では、第一の弾性体75がリング状ではなく、周方向に複数分割したものとした。図11では分割された第一の弾性体75を4個設けたが、少なくとも3個設ければ良い。
【0040】
図11(B)に示す断面における第一の弾性体75の形状、構成は、実施の形態1と同じ形状、構成であるが、第一の弾性体75の断面形状、断面構成は、図11(B)に示すものに限られない。第一の弾性体75の断面形状、断面構成は、実施の形態1〜5で示したいずれの断面形状、断面構成であっても良い。また、第二の弾性体8の構成も、実施の形態1〜5に示したいずれの構成であっても良い。さらに、実施の形態6で示したように、第二の弾性体も分割された構成であっても良い。ただし、第一の弾性体および第二の弾性体が共に分割されている場合、防水機能はないため、屋外の使用では支障が生ずる場合もある。
【0041】
本実施の形態6の動電型エキサイタによれっても、動電型エキサイタの軸線に対し、全体重量の大半を占める磁気回路の軸線が傾斜することを阻止でき、コイル5とアウターヨーク3との接触等による断線不具合などの発生を防止することができる。したがって、垂直壁面装着時の動電型エキサイタの信頼性を大幅に向上させることができ、かつ、コスト低減も可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1:インナーヨーク 2:マグネット
3:アウターヨーク 5:コイル
6:振動板 7、72、73,75:第一の弾性体
8、81:第二の弾性体 61、62:振動板の枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状のアウターヨークと、この椀状のアウターヨークに囲まれて配置された磁石とインナーヨークとを含む磁気回路部と、
この磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設したコイルと、
このコイルが固定された振動板と、
この振動板と前記磁気回路部とが所定の隙間を有するよう、前記振動板と前記磁気回路部とを弾性的に連結する弾性体と
を備えた動電型エキサイタにおいて、
前記弾性体は、第一の弾性体と第二の弾性体との少なくとも2つの弾性体で構成されており、前記第一の弾性体と前記第二の弾性体とが、前記振動板の振動方向である軸方向に互いに相反する押圧力を発生させるように、前記アウターヨークの外周近傍と前記振動板の外周近傍とを連結することを特徴とする動電型エキサイタ。
【請求項2】
前記第一の弾性体は、前記振動板の外周近傍における前記アウターヨークに対向する面と前記アウターヨークの外周近傍部分とによって挟み込まれ、前記軸方向に圧縮変形する弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の動電型エキサイタ。
【請求項3】
前記第二の弾性体は、前記振動板の外周端部と、前記アウターヨークの外周壁の一部とを挟み、前記軸方向に伸張変形する弾性体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動電型エキサイタ。
【請求項4】
前記第一の弾性体または前記第二の弾性体は、前記アウターヨークの周縁部と前記振動板の周縁部とを囲むリング状であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の動電型エキサイタ。
【請求項5】
前記第一の弾性体または前記第二の弾性体は、前記アウターヨーク及び前記振動板の周方向の少なくとも3箇所以上を部分的に弾性支持するように設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の動電型エキサイタ。
【請求項6】
前記振動板外周部近傍に前記振動板の面と垂直になるよう設けられ、少なくとも一部が前記アウターヨークの外周壁の一部と対向する枠部を有し、前記第一の弾性体は、前記振動板の枠部と前記アウターヨークの外周壁との間に挟み込まれ、前記第一の弾性体が前記軸方向と垂直な方向である径方向に圧縮変形することを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の動電型エキサイタ。
【請求項7】
前記第一の弾性体は、前記軸方向の弾性定数に比して、前記径方向の弾性定数が高く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の動電型エキサイタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−169901(P2012−169901A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29613(P2011−29613)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】