説明

包埋ブロック加湿装置、自動薄切片作製装置及び自動薄切片標本作製装置

【課題】包埋ブロックの表面温度に極力影響を与えずに短時間で包埋ブロックを加湿すること。
【解決手段】生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックBを加湿する装置であって、所定温度に加熱された水蒸気Eを発生させる水蒸気発生機構20と、発生した水蒸気が予め決められた待機位置(矢印Pで示す位置)にセットされた包埋ブロックの表面に当たるように、該水蒸気を包埋ブロックまで案内する案内機構21と、を備えている包埋ブロック加湿装置11を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを加湿する包埋ブロック加湿装置、加湿された包埋ブロックを薄切して薄切片を自動的に作製する自動薄切片作製装置、及び、作製された薄切片を基板上に固定して薄切片標本を自動的に作製する自動薄切片標本作製装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、新薬開発において臨床試験に先立ち、実験動物による毒性試験や病理検査等が行われている。これらの試験や検査は、スライドガラス等の基板上に、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片が固定された薄切片標本を用いて行われるものである。薄切片としては、薬物を投与したネズミやウサギ等の実験動物を剖検し、病理検査のために薄切りしたものが使用されている。また、種々の部位(例えば、脳や肺等)毎に作製されている。
【0003】
このような薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが知られている。ここで、ミクロトームを利用して薄切片試料を作製する一般的な方法について説明する。
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックを可能な限り薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より品質の高い薄切片標本を得ることができる。よって、可能な限り厚さが薄い薄切片を作製することが求められている。なお、この本削りは、必要枚数の薄切片が得られるまで連続して行う。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。次に、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や丸みを取ることができる。
【0006】
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。その結果、薄切片標本を作製することができる。
【0007】
ところで、薄切片を作製する際に、包埋ブロックの表面が乾燥していると切断面に皺や変形等が生じる恐れがあるので、包埋ブロックの表面が乾燥しないように対策を施す必要がある。つまり、包埋ブロックを適度に加湿して、乾燥を防止する必要がある。
そこで、包埋ブロックを加湿する装置の1つとして、超音波振動によって霧状の水滴(以下、ミストと称する)を発生させて、該ミストにより包埋ブロックを加湿する装置が既に知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−28507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の装置では、まだ以下の課題が残されていた。
始めに、包埋ブロックについて簡単に説明すると、生体材料を包埋している包埋剤は、通常撥水性を有するパラフィンが使用されている。また、生体材料自体もパラフィン置換されているため、表面は撥水性を有している。ところが、図12に示すように、パラフィン置換されている生体試料Sには、表面に微小な罅(ひび)S1が無数に空いている。よって、包埋ブロックを加湿するためには、この無数の罅S1を利用して生体試料Sの内部から加湿する必要がある。
【0009】
ところが、この無数の罅S1は、直径が数百nm〜1μm程度の微小な罅である。そのため、図13に示すように、ミストMを発生させて包埋ブロックの表面に付着させたとしても、表面張力の影響を受けてミストMが罅S1の入り口で弾かれて易かった。よって、罅S1の中までミストMを容易に侵入させることが難しく、多大な時間が必要であった。
一方、加湿に費やす時間を短縮するため、ミスト量を増やした場合には、新たな不都合が生じてしまうものであった。つまり、ミスト量を増やした場合には、包埋ブロックの表面に過度のミストMが付着することになる。すると、過度のミストMが蒸発する際の蒸発潜熱によって、包埋ブロックの表面温度が低下(2℃程度)し、包埋ブロックが熱収縮してしまう不都合があった。その結果、包埋ブロックを薄切することで得られる薄切片の厚みにばらつきが生じてしまう恐れがあった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、包埋ブロックの表面温度に極力影響を与えずに短時間で包埋ブロックを加湿することができる包埋ブロック加湿装置、該包埋ブロック加湿装置を有する自動薄切片作製装置、及び、自動薄切片作製装置を有する自動薄切片標本作製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを加湿する包埋ブロック加湿装置であって、所定温度に加熱された水蒸気を発生させる水蒸気発生機構と、発生した前記水蒸気が予め決められた待機位置にセットされた前記包埋ブロックの表面に当たるように、該水蒸気を包埋ブロックまで案内する案内機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、包埋ブロックが待機位置にセットされているときに、案内機構が水蒸気発生機構によって発生した水蒸気を包埋ブロックまで案内して、該水蒸気を包埋ブロックの表面に当たるように吹き付ける。特に、従来のミストとは異なり、気体である水蒸気を包埋ブロックに当てているので、パラフィン置換されている生体試料の表面に空いている微小な罅の中に水蒸気が容易に入り込む。この際、水蒸気は、所定温度に加熱されているので、罅の中に入り込んだ後に生体試料に接すると罅の内部で結露した状態となる。これにより、生体試料を内部から湿らせることができる。その結果、包埋ブロックを加湿することができる。
【0013】
特に、気体である水蒸気を利用するので、罅が微小であっても水蒸気を確実に罅の中に入り込ませることができる。従って、短時間で加湿することができる。しかも、罅の中に水蒸気が入り込むので、少量の水蒸気で十分に加湿行うことができる。よって、従来のように過度のミストの蒸発によって引き起こされていた包埋ブロックの温度低下が生じ難い。よって、包埋ブロックが熱収縮してしまうことを防止できる。その結果、包埋ブロックを最適な状態に加湿することができ、高品質な薄切片の作製に貢献することができる。
【0014】
また、本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置において、前記水蒸気発生機構が、液体が貯留されたタンクと、前記液体を加熱する液体用ヒータと、該液体用ヒータの温度を調整するヒータ温度調整器と、前記液体に浸かるように前記タンク内に挿し込まれた配管を有し、該配管にエアーを供給して配管の先端から無数の気泡を液体中に発生させる気泡発生機構と、前記エアーの供給量を調整するエアー調整器と、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、気泡発生機構の配管にエアーを供給すると、配管の先端から無数の気泡がタンクに貯留された液体中に発生する。そして、これら無数の気泡は、周囲の液体と接触するので、両者の間には気液界面が形成される。この際、液体は液体用ヒータによって加熱されているので、液体は気液界面を通して気泡の内部の気体内に蒸発し、該気体を加湿する。特に、気泡は小さく体積に対して表面積が大きくなるので、気泡内の気体は短時間でほぼ飽和蒸気圧まで加湿される。そのため、無数の気泡が液体の上面に達した時点で弾けると、タンク内に所定温度に加熱された水蒸気が発生する。このように、簡単な構成で水蒸気を確実に発生させることができる。しかも、ヒータ温度調整器によって、液体用ヒータの温度を調整できるので、液体の温度を自在にコントロールして水蒸気の温度を所望する温度に調整できる。よって、水蒸気を利用して包埋ブロックを確実に加湿することができる。
また、エアー調整器によって配管に供給するエアーの供給量を調整できるので、発生する水蒸気の量を適宜調整することができる。よって、包埋ブロックの表面温度変化をできるだけ抑えながら、加湿を確実に行うといったことが可能である。
【0016】
また、本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置において、前記包埋ブロックの表面温度を測定するセンサを備え、前記ヒータ温度調整器が、発生する前記水蒸気の温度が、前記センサで測定された前記包埋ブロックの温度よりも予め決められた温度だけ高くなるように、前記液体用ヒータの温度を調整することを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、センサを備えているので、加湿されている包埋ブロックの表面温度を正確に知ることができる。そして、ヒータ温度調整器は、包埋ブロックの表面温度に基づいて液体用ヒータの温度を調整し、水蒸気の温度が包埋ブロックの温度よりも予め決められた温度だけ高くなるように調整することができる。これにより、包埋ブロックの温度よりも過度に高い温度の水蒸気を包埋ブロックに当ててしまうことがない。従って、包埋ブロックが温度変化してしまうことを最小限に抑えながら、水蒸気を利用して該包埋ブロックを確実に加湿することができる。
【0018】
また、本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置において、前記エアー調整器が、前記センサで測定された前記包埋ブロックの温度に基づいて、前記エアーの供給量を調整することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、エアー調整器が、包埋ブロックの表面温度に基づいて配管に供給するエアーの供給量を調整するので、包埋ブロックに過度の水蒸気が当たりすぎて温度が変化してしまうことを防止することができる。従って、包埋ブロックが温度変化してしまうことをさらに確実に抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置において、前記案内機構が、前記水蒸気を前記包埋ブロックまで案内する案内管と、該案内管を加熱する案内管用ヒータと、該案内管用ヒータの温度を調整する案内管温度調整器と、を備えていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、水蒸気発生機構によって発生した水蒸気が、案内管の内部を通って包埋ブロックまで案内される。この際、案内管は、案内管用ヒータによって加熱されているので、内部を通過している水蒸気を加熱することができる。よって、仮に案内管が長い管路であったとしても、包埋ブロックに案内されるまでの間に、水蒸気の温度が包埋ブロックの温度よりも低くなってしまうことがない。
よって、案内管を自由に設計することができるうえ、包埋ブロックの加湿を確実に行うことができる。しかも、案内管温度調整器によって、案内管用ヒータの温度を自在に調整できるので、水蒸気の温度を所定温度に保ったまま、包埋ブロックまで確実に案内することができる。
【0022】
また、本発明に係る包埋ブロック加湿装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置において、前記案内機構が、前記水蒸気を一旦溜め込む蓄積部と、溜め込んだ水蒸気を蓄積部の外部に一度に放出させる放出機構と、を備え、放出した前記水蒸気を前記包埋ブロックに案内することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る包埋ブロック加湿装置においては、案内機構が水蒸気発生機構によって発生した水蒸気を包埋ブロックまで案内する際に、一旦蓄積部に水蒸気を溜め込んで蓄積する。そして、水蒸気が所定量蓄積された後、案内機構は放出機構により溜め込んだ水蒸気を蓄積部の外部に一度に放出させると共に、この放出した水蒸気を包埋ブロックまで案内する。これにより、ある程度まとまった量の水蒸気を包埋ブロックに供給できるので、より短時間で加湿を行うことができる。従って、スループットを向上でき、より効率の良い薄切片の作製に貢献することができる。
【0024】
また、本発明に係る自動薄切片作製装置は、上記本発明の包埋ブロック加湿装置と、前記包埋ブロックを載置固定する固定台と、前記待機位置から離間した位置に配置された切断刃を有し、待機位置と切断刃との間で前記固定台を移動させ、前記包埋ブロックを所定の厚みで切断して薄切片を切り出す切断機構と、切り出された前記薄切片を搬送する薄切片搬送機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る自動薄切片作製装置においては、まず、手動或いはロボット等により、包埋ブロックを載置台上に載置固定する。そして、切断機構により固定台が移動して、載置された包埋ブロックが待機位置にセットされると、包埋ブロック加湿装置が包埋ブロックを加湿し始める。これにより、包埋ブロックは、待機位置にいる間、温度変化がほとんどない状態で最適に加湿される。
次に、切断機構は、固定台を切断刃に向けて移動させて、包埋ブロックを所定の厚み(例えば、5μmの極薄)でシート状に切断(スライス)する。これにより、薄切片を切り出して作製することができる。そして、作製された薄切片は、薄切片作製装置により搬送される。このように、薄切片を自動的に次々と作製して次工程に受け渡すことができる。
【0026】
特に、包埋ブロックは、上述したように温度変化がない状態で最適に加湿されているので、厚みのばらつきを抑えて、できるだけ均一な厚みの薄切片を作製することができる。よって、高品質な薄切片を作製することができる。また、包埋ブロックを短時間に加湿できるので、加湿に費やす時間を短縮してスループットを向上することができる。
【0027】
また、本発明に係る自動薄切片作製装置は、上記本発明の自動薄切片作製装置において、前記包埋ブロックが前記待機位置に位置しているか否かを検出する位置センサと、前記包埋ブロックが前記待機位置に位置していると前記位置センサが検出したときに、前記水蒸気発生機構を作動させる制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る自動薄切片作製装置においては、包埋ブロックが待機位置に位置すると、位置センサがその旨を制御部に知らせる。すると、制御部は、これを受けて、水蒸気発生機構を作動させる。これにより、待機位置に来た包埋ブロックを速やかに加湿することができる。特に、包埋ブロック加湿装置を無駄に作動させることがないので、省電力化を図ることができるうえ、ランニングコストを抑え易い。
【0029】
また、本発明に係る自動薄切片作製装置は、上記本発明の自動薄切片作製装置において、前記切断機構が、前記水蒸気発生機構が作動してから所定時間経過後に、前記固定台を移動させることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る自動薄切片作製装置においては、切断機構は、水蒸気発生機構が作動してから所定時間経過後に、固定台を移動させて薄切片の作製を行わせるので、常に最適な加湿状態となった包埋ブロックから薄切片を作製することができる。従って、高品質な薄切片をより安定して作製することができる。
【0031】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置は、上記本発明の自動薄切片作製装置と、前記包埋ブロックを前記固定台上に搬送するブロック搬送機構と、前記薄切片搬送機構によって搬送された前記薄切片を、少なくとも液体に浮かべて伸展させる伸展機構と、伸展された前記薄切片を、基板上に転写させて薄切片標本を作製する転写機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る自動薄切片標本作製装置においては、ブロック搬送機構を備えているので、複数の包埋ブロックを簡単且つ容易に、順々と固定台上に搬送することができる。また、薄切片搬送機構によって搬送された薄切片は、伸展機構が有する、例えば水等の液体に浮かばされて伸展される。これにより薄切片は、表面張力によって切断時に生じた皺や丸みが取れて伸びた状態となるので、伸展される。そして、伸展された薄切片は、転写機構によってスライドガラス等の基板上に転写される。これより、基板上に薄切片が転写された薄切片標本を作製することができる。
【0033】
特に、自動薄切片作製装置によって作製された薄切片は、厚みができるだけ均一で高品質な薄切片であるので、薄切片標本に関しても高品質なものを作製することができる。よって、この薄切片標本を用いた各種の試験や検査等の精度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る包埋ブロック加湿装置によれば、包埋ブロックの表面温度に極力影響を与えずに、短時間で該包埋ブロックを最適な状態に加湿することができる。
また、本発明に係る自動薄切片作製装置によれば、上述した包埋ブロック加湿装置を備えているので、厚みのばらつきを抑えて、できるだけ均一な厚みの薄切片を包埋ブロックから作製することができる。よって、高品質な薄切片を作製することができる。また、包埋ブロックを短時間に加湿できるので、加湿に費やす時間を短縮して全体のスループットを向上することができる。
また、本発明に係る自動薄切片標本作製装置によれば、上述した自動薄切片作製装置を備えているので、薄切片標本に関しても高品質なものを作製することができる。よって、この薄切片標本を用いた各種の試験や検査等の精度をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、生体試料として、鼠等の実験動物から採取した生体組織Sを例に挙げて説明する。
本実施形態の自動薄切片標本作製装置1は、生体組織Sが包埋剤に包埋された包埋ブロックBから作製された薄切片B1を、スライドガラス(基板)G上に転写させて薄切片標本Hを作製する装置である。
【0036】
自動薄切片標本作製装置1は、図1に示すように、包埋ブロックBを固定台10上に搬送するブロックハンドリングロボット(ブロック搬送機構)2と、搬送された包埋ブロックBから薄切片B1を作製する自動薄切片作製装置3と、該自動薄切片作製装置3の切片ハンドリング機構(薄切片搬送機構)14によって搬送された薄切片B1を、少なくとも水(液体)W1に浮かべて伸展させる伸展機構4と、伸展された薄切片B1を、スライドガラスG上に転写させて薄切片標本Hを作製するスライドガラスハンドリングロボット(転写機構)5と、を備えている。
【0037】
上記自動薄切片作製装置3は、包埋ブロックBを所定の厚みで切断して、シート状の薄切片B1を切り出して作製する装置である。
即ち、自動薄切片作製装置3は、上記ブロックハンドリングロボット2によって搬送された包埋ブロックBを載置固定する固定台10と、該固定台10上に固定された包埋ブロックBを待機位置(矢印Pで示す位置)で加湿する包埋ブロック加湿装置11と、待機位置から離間した位置に配置された切断刃12を有し、待機位置と切断刃12との間で固定台10を移動させ、包埋ブロックBから上記薄切片B1を切り出す切断機構13と、切り出された薄切片B1を搬送する上記切片ハンドリング機構14と、を備えている。
【0038】
包埋ブロックBは、図2に示すように、ホルマリン固定された生体組織S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤によってブロック状に固めたものである。これにより、生体組織Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。
このように構成された包埋ブロックBは、図1に示すように、後述するZステージ52上に固定されたカセット15上に載置固定されている。そして、包埋ブロックBは、後述するXステージ51の移動によって、待機位置と切断刃12との間で往復移動するようになっている。
【0039】
包埋ブロック加湿装置11は、所定温度に加熱された水蒸気Eを発生させる水蒸気発生機構20と、発生した水蒸気Eを待機位置にセットされた包埋ブロックBの表面に当たるように、該水蒸気Eを包埋ブロックBまで案内する案内機構21と、を備えている。
【0040】
水蒸気発生機構20は、水(液体)W2が貯留されたタンク25と、タンク25内の水W2を加熱するヒータ(液体用ヒータ)26と、該ヒータ26の温度を調整する温度調整器(ヒータ温度調整器)27と、水W2に浸かるようにタンク25内に挿し込まれた配管28を有し、該配管28にエアーを供給して配管28の先端から無数の気泡を水中に発生させる気泡発生機構29と、エアーの供給量を調整するエアー調整器30と、を備えている。
【0041】
タンク25は、上部に密閉部材25aが取り付けられており、内部が密閉された状態となっている。このタンク25は、上記ヒータ26が内蔵されたラバーヒータ31によって周囲が囲まれている。このヒータ26は、上記温度調整器27に電気的に接続されており、発熱量がコントロールされている。温度調整器27は、タンク25内に取り付けられた温度センサ32からの測定結果を受けて、ヒータ26の発熱量を調整している。これにより、タンク25内に貯留されている水W2の温度を、一定の温度(例えば、40℃)に設定することが可能とされている。
また、温度調整器27には、後述する温度センサ(センサ)80から包埋ブロックBの表面温度が送られてくるようになっている。そして、温度調整器27は、タンク25内に発生する水蒸気Eの温度が、送られてきた包埋ブロックBの表面温度よりも予め決められた温度だけ高くなるように(例えば、+2℃だけ高くなるように)、ヒータ26の温度を調整してタンク25内の水W2の温度を調整するようになっている。
【0042】
上記配管28は、先端が密閉部材25aを突き抜けてタンク25内に貯留されている水W2の中に浸かっていると共に、基端側がタンク25から離れた位置に配置されたコンプレッサー等のエアー供給源35に接続されている。これら配管28及びエアー供給源35は、気泡発生機構29として機能する。
エアー供給源35とタンク25との間における配管28には、開閉制御器36によって開閉する電磁バルブ37が介在されている。つまり、開閉制御器36の信号を受けて、電磁バルブ37が開閉することで、エアー供給源35から供給されるエアーの供給量を調整できるようになっている。即ち、これら電磁バルブ37及び開閉制御器36は、上記エアー調整器30として機能する。
また、開閉制御器36には、温度調整器27と同様に、温度センサ80から包埋ブロックBの表面温度が送られてくるようになっている。そして、開閉制御器36は、包埋ブロックBの表面温度に基づいてエアーの供給量を調整している。なお、エアーの供給量に比例して、タンク25内に水蒸気Eが発生するようになっている。
【0043】
上記配管28の先端は、丸みを帯びた略球形に形成されており、表面に微小開口28aが無数に空いている。そのため、配管28を通ってきたエアーは、先端に達した時点で無数の微小開口28aを通って外側に漏れ出す。これにより、水中に無数の気泡Vを発生させることができるようになっている。しかも、タンク25内の水W2はヒータ26によって加熱されているので、無数の気泡Vが水面に浮上するまでの間に加熱された状態となる。よって、気泡Vの内部の気体は、加熱された状態となる。これより、無数の気泡Vが水面で弾けた時点で、タンク25内に所定温度に加熱された水蒸気Eが発生するようになっている。
このように構成された水蒸気発生機構20のエアー供給源35及び開閉制御器36は、後述する制御部82によって作動が制御されている。
【0044】
ここで、タンク25には、上記配管28とは別に案内管40の基端が密閉部材25aを突き抜けて挿し込まれている。この際、案内管40は、タンク25内に貯留された水W2に触れないように挿し込まれている。そして、案内管40は、先端が待機位置にセットされた包埋ブロックBの近傍に位置するように延出されている。この際、案内管40の先端は、末広がり形状に形成されており、待機位置にセットされた包埋ブロックBに上方から被されるようにセットされている。
このように、タンク25と包埋ブロックBとの間に案内管40がセットされているので、タンク25内に発生した水蒸気Eは、案内管40を通って包埋ブロックBまで案内された後、包埋ブロックBの表面に吹き付けられるようになっている。
【0045】
ところで、案内管40の途中には、該案内管40を加熱するヒータ(案内管用ヒータ)41が内蔵されたラバーヒータ42が案内管40の周囲を覆うように取り付けられている。このヒータ41は、温度調整器(案内管温度調整器)43に電気的に接続されており、発熱量がコントロールされている。温度調整器43は、案内管40の内部に取り付けられた温度センサ44からの測定結果を受けて、ヒータ41の発熱量を調整している。これにより、案内管40を通過する水蒸気Eの温度をタンク25内で発生させたときの温度のままで、包埋ブロックBまで案内できるようになっている。
上述した案内管40、ヒータ41及び温度調整器43は、上記案内機構21として機能する。
【0046】
ところで、包埋ブロックBを固定する固定台10は、切断刃12に向かうX方向に伸びたガイドレール50に沿って移動可能なXステージ51と、該Xステージ51上に取り付けられ、鉛直方向に向かうZ方向に移動可能なZステージ52とから構成されている。
ガイドレール50は、切断刃12を越えた反対側にまで延びた状態で取り付けられている。Xステージ51は、図示しないモータ等によって、ガイドレール50上を往復運動するようになっている。また、Zステージ52には、内部に図示しないピエゾ素子等が組み込まれており、電圧が印加されることでZ方向に一定量毎上昇するように高さ制御されている。この際、Zステージ52は、Xステージ51がガイドレール50を1往復する毎に、一定量だけ上昇するように制御されている。
【0047】
これにより、Zステージ52上にカセット15を介して載置固定された包埋ブロックBは、Xステージ51の移動に伴って切断刃12に向けて移動して、該切断刃12によって切断されるようになっている。この際、Zステージ52によって高さ制御されているので、所定の厚み(例えば、5μm)で表面が切断される。その結果、シート状の薄切片B1が作製される。これについては、後に詳細に説明する。なお、Xステージ51の往復運動と、該往復運動に同期したZステージ52の上昇とによって、包埋ブロックBから複数毎の薄切片B1が次々と作製されるようになっている。上述したガイドレール50、Xステージ51、Zステージ52及び切断刃12は、上記切断機構13を構成している。
【0048】
固定台10の上方には、ガイドレール50と同じX方向に延びる水平ガイドレール55が図示しない支持部によって取り付けられている。また、この水平ガイドレール55の下方には、ガイドレール50側から順に水(液体)W1を貯留した水槽56と、未使用のスライドガラスGを収納するスライドガラス収納棚57と、作製された薄切片標本Hを収納する収納棚58とが設けられている。
【0049】
また、水平ガイドレール55には、該水平ガイドレール55に沿って移動可能な水平ステージ60が取り付けられている。そして、この水平ステージ60には、Z方向に移動可能であると共に、包埋ブロックBから切り出された薄切片B1を、例えば静電気を利用して先端に吸着可能なアーム部61が取り付けられている。なお、静電気に限られず、吸引力や接着剤等を利用して薄切片B1を捕らえても構わない。
アーム部61は、吸着した薄切片B1を水槽56まで搬送し、貯留された水W1に浮かべるようになっている。即ち、水平ガイドレール55、水平ステージ60及びアーム部61は、上記切片ハンドリング機構14を構成している。
【0050】
また、水平ガイドレール55には、上記水平ステージ60、65に加え、該水平ガイドレール55に沿って移動可能な別の水平ステージ65が取り付けられている。なお、この水平ステージ65は、単に水平方向に移動するだけでなく、Z軸回りに回転可能とされている。この水平ステージ65には、Z方向に直交する一軸回りに回転可能な状態でスライドガラス把持ロボット66が取り付けられている。また、スライドガラス把持ロボット66は、一定距離離間した状態で平行に配されると共に互いの距離を接近離間自在に調整可能な一対のアーム部66aを備えている。
【0051】
そしてこれら水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66をそれぞれ適宜作動させることで、スライドガラス収納棚57から未使用のスライドガラスGを把持すると共に、水槽56内に浮いている薄切片B1を、把持したスライドガラスG上に転写して薄切片標本Hを作製することができるようになっている。更には、作製した薄切片標本Hを収納棚58に収納することもできるようになっている。これについては、後に詳細に説明する。
これら上述した水平ガイドレール55、水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66は、上記スライドガラスハンドリングロボット5を構成している。なお、本実施形態では、水平ガイドレール55が、切片ハンドリング機構14及びスライドガラスハンドリングロボット5を共に構成する兼用部品となっている。
【0052】
また、水槽56とは反対側には、図1、図3及び図4に示すように、ガイドレール50に隣接して、Z方向に延びるZ軸ガイドレール70が取り付けられている。このZ軸ガイドレール70には、該Z軸ガイドレール70に沿って移動可能な昇降ステージ71が取り付けられている。また、昇降ステージ71には、水平方向に延びた水平ガイドレール72が取り付けられている。そして、この水平ガイドレール72に、該水平ガイドレール72に沿って移動可能な水平ステージ73が取り付けられている。なお、水平ステージ73は、単に水平方向に移動するだけでなく、Z軸回りに回転可能とされている。
【0053】
また、水平ステージ73には、一定距離離間した状態で平行に配されると共に、互いの距離を接近離間自在に調整可能な一対のアーム部74aを有する把持ロボット74が取り付けられている。そして、昇降ステージ71、水平ステージ73及び把持ロボット74をそれぞれ適宜作動させることで、包埋ブロックBを固定台10上に搬送することができるようになっている。これについては、後に詳細に説明する。上述したZ軸ガイドレール70、昇降ステージ71、水平ガイドレール72、水平ステージ73及び把持ロボット74は、上記ブロックハンドリングロボット2として機能する。
【0054】
ところで、図1に示すように、案内管40の先端側には、包埋ブロックBが待機位置に位置しているときに、該包埋ブロックBの表面温度を測定する温度センサ80が設けられている。この温度センサ80は、例えば包埋ブロックBの表面温度を非接触で測定するセンサであり、測定結果を温度調整器27、43にそれぞれ出力している。
また、ガイドレール50には、包埋ブロックBが待機位置に位置しているか否かを検出する位置センサ81が設けられている。この位置センサ81は、例えば光学的に位置を検出するセンサであり、測定結果を制御部82に出力している。一方、制御部82は、位置センサ81から包埋ブロックBが待機位置に位置しているとの信号を受けたときに、水蒸気発生機構20を作動させるようになっている。即ち、エアー供給源35及び開閉制御器36を作動させるようになっている。
【0055】
また、制御部82は、水蒸気発生機構20を作動させた際、所定時間経過した後に、固定台10を待機位置から移動させるように切断機構13を制御するようになっている。これにより、包埋ブロックBの加湿を確実に行った後に、薄切片B1の作製を行うことが可能とされている。
【0056】
次に、このように構成された自動薄切片標本作製装置1により、包埋ブロックBから数枚の薄切片標本Hを作製する場合について、以下に説明する。
まず、作業者は、包埋ブロックBをブロックハンドリングロボット2の把持ロボット74が有する一対のアーム部74a間に位置させる。すると、把持ロボット74は、図4に示すように、包埋ブロックBが載置されているカセット15を一対のアーム部74aで挟持し、包埋ブロックBを作業者から受け取る。そして、ブロックハンドリングロボット2は、包埋ブロックBを受け取った後、カセット15を挟持したまま昇降ステージ71及び水平ステージ73を適宜作動させて、図3に示すように、包埋ブロックBを固定台10まで搬送して該固定台10上に載置する。
【0057】
固定台10上に包埋ブロックBが載置されると、Xステージ51が移動して包埋ブロックBを待機位置にセットする。これと同時に、切片ハンドリング機構14の水平ステージ60が水平ガイドレール55に沿って移動して、アーム部61の先端が包埋ブロックBの切断開始位置近傍に待機した状態となる。
ところで、包埋ブロックBが待機位置にセットされると、位置センサ81が待機位置にセットされたことを検出して、その旨を制御部82に知らせる。制御部82は、これを受けて、エアー供給源35及び開閉制御器36を作動させる。
【0058】
すると、エアー供給源35が配管28の内部にエアーを供給し始めると共に、開閉制御器36が電磁バルブ37を開状態にして、供給されたエアーを配管28の先端に向かって送り込む。そして、供給されたエアーが配管28を通って先端側まで達すると、無数の微小開口28aを通って外部に放出される。これにより、タンク25内に貯留された水中には、無数の気泡Vが発生する。これら無数の気泡Vは、周囲の液体W2と接触するので、両者の間には気液界面が形成される。この際、液体W2はヒータ26によって加熱されているので、液体W2は気液界面を通して気泡Vの内部の気体内に蒸発し、該気体を加湿する。特に、気泡Vは小さく体積に対して表面積が大きくなるので、気泡V内の気体は短時間でほぼ飽和蒸気圧まで加湿される。そのため、無数の気泡Vが水面で弾けることで、タンク25内に所定温度に加熱された水蒸気Eが発生する。
【0059】
一方、タンク25内に発生した水蒸気Eは、案内管40を通って該案内管40の先端に向かって進み、包埋ブロックBまで案内される。これにより、図5に示すように、水蒸気Eを包埋ブロックBの表面に当たるように吹き付けることができる。特に、従来のミストとは異なり、気体である水蒸気Eを包埋ブロックBに当てているので、図6に示すように、パラフィン置換されている生体組織Sの表面に空いている微小な罅S1の中に水蒸気Eが容易に入り込む。この際、水蒸気Eは、所定温度に加熱されているので、罅S1の中に入り込んだ後に生体組織Sに接すると、罅S1の内部で結露した状態となる。これにより、生体組織Sを内部から湿らせることができる。その結果、包埋ブロックBを加湿することができる。
【0060】
特に、気体である水蒸気Eを利用するので、罅S1が微小であっても水蒸気Eを確実に罅S1の中に入り込ませることができる。従って、短時間で包埋ブロックBを加湿することができる。しかも、罅S1の中に水蒸気Eが入り込むので、少量の水蒸気Eで加湿を十分に行うことが可能である。よって、従来のように過度のミストの蒸発によって引き起こされていた包埋ブロックBの温度低下が生じ難い。従って、包埋ブロックBの熱収縮を防止しながら、該包埋ブロックBを最適な状態に加湿し続けることができる。
【0061】
特に、上述した加湿を行っている間、温度センサ80が包埋ブロックBの表面温度を正確に測定しており、その旨を温度調整器27、43にそれぞれ出力している。温度調整器27は、包埋ブロックBの表面温度に基づいて、ヒータ26の発熱量をコントロールして水蒸気Eの温度が包埋ブロックBの温度よりも2℃程度高い温度になるようにタンク25内の水W2の温度を調整している。これにより、包埋ブロックBの温度よりも過度に高い温度の水蒸気Eを包埋ブロックBに当ててしまうことがない。従って、包埋ブロックBが温度変化してしまうことを抑えつつ、水蒸気Eを利用して包埋ブロックBを確実に加湿することができる。
【0062】
また、同様にエアー調整器30を構成する開閉制御器36は、温度センサ80から送られてくる包埋ブロックBの表面温度に基づいて、電磁バルブ37の開閉度を調整することで、エアーの供給量をコントールしている。つまり、水蒸気Eの発生量を調整している。そのため、包埋ブロックBに過度の水蒸気Eが当たりすぎて温度が変化してしまうことを防止することができる。従って、この点においても包埋ブロックBが温度変化してしまうことを効果的に抑えることができる。
【0063】
更に、水蒸気Eを包埋ブロックBまで案内する案内管40は、ヒータ41によって加熱されているので、内部を通過する水蒸気Eを加熱することができる。よって、仮に案内管40が長い管路であったとしても、包埋ブロックBに案内されるまでの間に、水蒸気Eの温度が包埋ブロックBの温度よりも低い温度になってしまうことがなく、タンク25内で発生した温度のまま包埋ブロックBに導くことができる。よって、案内管40を自由に設計することができるうえ、包埋ブロックBの加湿を確実に行うことができる。
【0064】
また、位置センサ81からの信号を受けて、水蒸気発生機構20を作動させて加湿を開始しているので、待機位置に来た包埋ブロックBを速やかに加湿することができると共に、水蒸気発生機構20を無駄に作動させることがない。よって、省電力化を図ることができるうえ、ランニングコストを抑え易い。
【0065】
上述したように、包埋ブロックBは、待機位置にいる間、包埋ブロック加湿装置11によって温度変化がほとんどない状態で最適に加湿されている。
そして、制御部82は、水蒸気発生機構20が作動してから所定時間経過後に、Xステージ51をガイドレール50に沿って待機位置から切断刃12に向かって移動させ、該切断刃12によって包埋ブロックBを所定の厚み(例えば、5μm)でシート状にスライスする。これにより、包埋ブロックBから薄切片B1が切り出される。
【0066】
一方、包埋ブロックBの切断開始位置近傍に先端が待機したアーム部61は、切断刃12によって包埋ブロックBから切り出され始めた薄切片B1を静電気によって吸着する。そして、Xステージ51の移動に合わせて、アーム部61が取り付けられた水平ステージ60が水平ガイドレール55に沿って動く。これにより、薄切片B1に外力を加えることなく、アーム部61の先端に、薄切片B1を確実に吸着させることができる。
【0067】
切片ハンドリング機構14は、アーム部61の先端に薄切片B1を吸着した後、水平ステージ60を移動させて薄切片B1を搬送する。そして、伸展機構4が有する水槽56の上方にアーム部61が達したときに、該アーム部61をZ方向に下降させて先端を水W1の中に入れる。これにより、アーム部61の先端に吸着されていた薄切片B1は、吸着が解かれて水W1に浮かんだ状態となる。水W1に浮かんだ薄切片B1は、表面張力により切断時に生じた皺や丸みが取れて伸び、伸展した状態となる。
【0068】
一方、上述した薄切片B1の切り出し及び搬送に合わせて、スライドガラスハンドリングロボット5は、水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66を適宜作動させて、スライドガラス収納棚57から未使用のスライドガラスGを1枚取り出し、水槽56の上方にて待機している。
即ち、まず水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66を適宜作動させて、スライドガラス把持ロボット66の一対のアーム部66aをスライドガラス収納棚57に挿し込ませる。次いで、一対のアーム部66aを互いに接近させるように作動させて、未使用のスライドガラスGを1枚挟み込んで挟持固定する。そして、スライドガラスGを挟持したまま、再度水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66を適宜作動させて、スライドガラスGを引き出し、水槽56の上方に移動させる。そしてこの状態のまま、水槽56に薄切片B1が搬送されてくるまで待機する。
【0069】
そして、上述したように水槽56内に薄切片B1が搬送されて、水W1に浮かんだ状態が一定時間経過した後、図1に示すように、スライドガラスハンドリングロボット5は、水平ステージ65及びスライドガラス把持ロボット66を適宜作動させて、把持しているスライドガラスGを用いて水W1に浮かんでいる薄切片B1を掬い上げる。これにより薄切片B1は、スライドガラスG上に転写された状態となる。その結果、薄切片標本Hが作製される。最後にスライドガラスハンドリングロボット5は、作製した薄切片標本Hを収納棚58まで搬送し、該収納棚58に入れて保管する。
【0070】
上述したように、本実施形態の自動薄切片標本作製装置1によれば、包埋ブロックBから薄切片標本Hを自動的に作製して、作製した薄切片標本Hを収納棚58に保管させることができる。よって、作業者の負担を軽減することができる。また、Xステージ51をXガイドレール50に沿って往復運動させることで、1つの包埋ブロックBから必要な枚数の薄切片B1を自動で作製して、薄切片標本Hを作製することができる。
なお、ブロックハンドリングロボット2は、必要枚数の薄切片B1の作製が終了すると、使用済みの包埋ブロックBを固定台10上から搬送する。これにより作業者は、使用済みの包埋ブロックBを、新しい次の包埋ブロックBに取り替えることができる。そして、上述した各工程を繰り返すことで、次の包埋ブロックBから必要枚数の薄切片標本Hを自動的に作製することができる。
【0071】
特に、本実施形態の自動薄切片標本作製装置1によれば、包埋ブロック加湿装置11を有する自動薄切片作製装置3を備えているので、温度変化がほとんどない状態で最適に加湿された包埋ブロックBから薄切片B1を作製することができる。そのため、厚みのばらつきを抑えて、できるだけ均一な厚みの薄切片B1を作製することができる。よって、高品質な薄切片B1を作製することができる。また、包埋ブロックBを待機位置で短時間に加湿できるので、加湿に費やす時間を短縮でき、スループットを向上することができる。
また、上述した高品質な薄切片B1を利用して薄切片標本Hを作製するので、該薄切片標本Hに関しても高品質なものを作製することができる。よって、この薄切片標本Hを用いた各種の試験や検査等の精度をより高めることができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図7から図11を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、水蒸気発生機構20で発生した水蒸気Eを常時包埋ブロックBまで案内する構成であったが、第2実施形態では、水蒸気発生機構20で発生した水蒸気Eを一旦溜め込んで蓄積した後、ある程度まとまった量の水蒸気Eを一気に案内することができるように構成されている点である。
【0073】
即ち、本実施形態の包埋ブロック加湿装置90は、図7及び図8に示すように、水蒸気Eを一旦溜め込む蓄積部92と、溜め込んだ水蒸気Eを蓄積部92の外部に一度に放出させる放出機構93と、を備えた案内機構91を備えている。
蓄積部92は、円筒状に形成されたシリンダーであり、案内管40の途中に介在した状態で取り付けられている。具体的には、蓄積部92の一端側に、タンク25に挿し込まれた側の案内管40と、包埋ブロックBの近傍まで延出している側の案内管40と、がそれぞれ接続されている。つまり、水蒸気発生機構20によって発生した水蒸気Eは、タンク25側から蓄積部92の内部に流入して溜め込まれるようになっている。そして、溜め込まれた水蒸気Eは、放出機構93によって蓄積部92の内部から包埋ブロックBの近傍まで延出している案内管40に押し出されることで、包埋ブロックBに向けて案内されるようになっている。
【0074】
この際、蓄積部92と案内管40との接続部分には、水蒸気Eの流れを一方向に規制する弁94、95がそれぞれ設けられている。このうち、タンク25に挿し込まれた側の案内管40と蓄積部92との接続部分に設けられた弁94は、蓄積部92の内部に水蒸気Eが流入することを許容すると共に、蓄積部92からタンク25側に水蒸気Eが流出することを規制するように取り付けられている。これにより、水蒸気Eを蓄積部92内に確実に流れ込ませることができると共に、蓄積した水蒸気Eを放出する際にタンク25側に逆流してしまうことを防止することができるようになっている。
一方、包埋ブロックBの近傍まで延出した側の案内管40と蓄積部92との接続部分に設けられた弁95は、蓄積部92から包埋ブロックB側に水蒸気Eが流出することを許容すると共に、外部から蓄積部92の内部に水蒸気Eが流入することを規制するように取り付けられている。これにより、水蒸気Eを蓄積部92内に確実に溜め込むことができると共に、蓄積した水蒸気Eを包埋ブロックB側に確実に放出することができるようになっている。
【0075】
このように構成された蓄積部92の内部には、ピストン軸96aが蓄積部92の他端側から挿し込まれたピストン96が移動可能に収容されている。ピストン軸96aには、図8及び図9に示すように、モータMによって回転軸L回りに回転するプーリー97に巻回されたワイヤ98が接続されている。これにより、モータMを回転駆動することで、ピストン96を引き込んで蓄積部92の内部に水蒸気Eを溜め込むことができるようになっている。なお、蓄積部92は、内部に1Lから5L程度の水蒸気Eを溜め込むことが可能とされている。
【0076】
ところで、モータMとプーリー97との間には、両者の連結を解除可能なクラッチ99が取り付けられており、任意のタイミングでプーリー97をモータMから切り離すことができるようになっている。また、ピストン96と蓄積部92との間にはコイルバネ100が設けられており、ピストン96を蓄積部92の一端側に向けて常時付勢している。よって、プーリー97をモータMから切り離すことで、ピストン96をコイルバネ100によるバネ力を利用して蓄積部92の一端側に押し出すことができるようになっている。これにより、蓄積部92の内部に溜め込んだ水蒸気Eを、蓄積部92の外部に一度に放出することが可能とされている。
つまり、上述したピストン96、プーリー97、ワイヤ98、モータM、クラッチ99及びコイルバネ100は、溜め込んだ水蒸気Eを蓄積部92の外部に一度に放出させる放出機構93として機能する。
【0077】
また、本実施形態の制御部82は、モータMの作動タイミングや、クラッチ99によるモータMとプーリー97との切り離しタイミングを制御している。
【0078】
このように構成された包埋ブロック加湿装置90を備えている場合には、包埋ブロックBが待機位置にセットされる前に、制御部82がエアー供給源35及び開閉制御器36を作動させる。すると、エアー供給源35が配管28の内部にエアーを供給し始めると共に、開閉制御器36が電磁バルブ37を開状態にして、供給されたエアーを配管28の先端に向かって送り込む。これにより、図7に示すように、タンク25内に水蒸気Eが発生し、案内管40に流れ込む。
また、これと同時に制御部82はモータMを駆動させてプーリー97を回転させる。すると、ワイヤ98が巻かれるので、ピストン軸96aを介してピストン96が引き込まれ、蓄積部92の他端側に移動する。この際、ピストン96を引く速さは、水蒸気Eが発生して流れる流量(例えば、1〜5L/min)に略一致させることが好ましい。
【0079】
ピストン96が引き込まれると、タンク25内に挿し込まれた案内管40から蓄積部92内に水蒸気Eが流れ込む。これにより、蓄積部92内に水蒸気Eを一旦溜め込んで蓄積することができる。そして、蓄積部92の容積までピストン96を引き終わったら、制御部82はモータMを停止すると共に電磁バルブ37を閉じさせる。なお、蓄積部92の内部は若干負圧になっているので、弁95は閉じている。そのため、蓄積されている水蒸気Eが、漏れてしまうことがない。
【0080】
このような状態において、包埋ブロックBが待機位置にセットされると、制御部82はクラッチ99を切ってモータMとプーリー97との連結を切り離す。すると、ピストン96は、コイルバネ100によるバネ力によって付勢されるので、蓄積部92の一端側に向けて一気に押し出される。これにより、蓄積された水蒸気Eは、弁95を通過して蓄積部92の外部に一度に放出される。なお、この際、弁94は閉じているので、タンク25側に水蒸気Eが逆流してしまうことはない。
そして、放出された水蒸気Eは、案内管40を通って包埋ブロックBに案内される。これにより、ある程度まとまった水蒸気Eを包埋ブロックBに供給できるので、より短時間で加湿を行うことができる。従って、スループットを向上することができ、第1実施形態の場合よりも効率良く薄切片を作製することができる。
【0081】
なお、本実施形態において、蓄積部92を熱導電性の低い材料で形成したり、断熱材で蓄積部92を覆う等の工夫をしたりして、蓄積部92をできるだけ断熱することが好ましい。こうすることで、水蒸気Eを溜め込んでいる際に、水蒸気Eの温度が低下してしまうことを極力防止することができる。
【0082】
なお、上記第2実施形態において、第1実施形態と同様に案内管40の途中(蓄積部92とタンク25との途中)にヒータ41が内蔵されたラバーヒータ42等を設けても構わない。
【0083】
また、上記第2実施形態では、蓄積部92の一例としてシリンダータイプを例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、蓄積部92が可撓性の収容体であっても構わない。この場合であっても、内部に水蒸気Eを溜め込むことができる。また、この場合には、収容体である蓄積部92を挟み込んで押し潰すことができるように放出機構93を構成すれば良い。こうすることで、やはり溜め込んだ水蒸気Eを一度に放出することができる。よって、同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
更には、図11に示すように、蓄積部92を、軸方向に伸張可能な蛇腹状に構成しても構わない。この場合には、蓄積部92の他端側をワイヤ98で引っ張ることで水蒸気Eを内部に蓄積することができる。そして、クラッチ99を切ってモータMとプーリー97との連結を切り離すと、蓄積部92は蛇腹の収縮力によって自然と縮まるので、やはり溜め込んだ水蒸気Eを一度に放出することができる。よって、同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加える
【0086】
例えば、上記各実施形態では、伸展機構4として水W1を貯留する水槽56を設けただけの構成にしたが、この場合に限られるものではない。例えば、水槽56に隣接して、お湯を貯留する水槽と、ホットプレートとを設けた伸展機構4としても構わない。
この場合には、スライドガラスハンドリングロボット5によって、水伸展が終了した薄切片B1をスライドガラスG上に載置した後、該薄切片B1をお湯が貯留されている別の水槽に搬送してお湯に浮かべる。このお湯伸展によって、薄切片B1が伸び易くなるので、水W1による伸展では取り切れなかった残りの皺や丸み等を取ることができる。よって、さらに高品質な薄切片標本Hを作製することができる。
【0087】
更に、このお湯伸展後、薄切片B1を載置したスライドガラスGをホットプレート上に載置することで、スライドガラスGを通して薄切片B1にさらに熱を加えることができる。これにより、お湯伸展で取り切れなかった皺や丸み等をさらに取ることができる。このように、お湯が貯留された水槽及びホットプレートを設けることで、より高品質な薄切片標本Hを作製できるので、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る第1実施形態の自動薄切片標本作製装置を示す構成図である。
【図2】図1に示す自動薄切片標本作製装置で使用される包埋ブロックの斜視図である。
【図3】図1に示す自動薄切片標本作製装置のブロックハンドリングロボットを示す側面図である。
【図4】図3に示すブロックハンドリングロボットの上面図である。
【図5】図1に示す自動薄切片標本作製装置を構成する包埋ブロック加湿装置により、包埋ブロックの表面に水蒸気を当てている状態を示す図である。
【図6】図5に示す包埋ブロックの表面を拡大した図であって、生体組織の表面に空いた微小な罅の中に水蒸気が入り込んでいる状態を示す図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の自動薄切片標本作製装置を示す構成図である。
【図8】図7に示す自動薄切片標本作製装置を構成する包埋ブロック加湿装置の一部拡大図である。
【図9】図8に示す包埋ブロック加湿装置を構成するプーリーとクラッチとモータとの関係を示す図である。
【図10】図8に示す包埋ブロック加湿装置の変形例を示す図である。
【図11】図8に示す包埋ブロック加湿装置の別の変形例を示す図である。
【図12】包埋ブロックの表面を拡大した図である。
【図13】従来の加湿方法を説明するための図であって、図12に示す包埋ブロックの表面にミスト(霧状の水滴)を付着させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
B…包埋ブロック
E…水蒸気
G…スライドガラス(基板)
H…薄切片標本
S…生体組織(生体試料)
W1…水槽内の水(液体)
W2…タンク内の水(液体)
1…自動薄切片標本作製装置
2…ブロックハンドリングロボット(ブロック搬送機構)
3…自動薄切片作製装置
4…伸展機構
5…スライドガラスハンドリングロボット(転写機構)
10…固定台
11、90…包埋ブロック加湿装置
12…切断刃
13…切断機構
14…切片ハンドリング機構(薄切片搬送機構)
20…水蒸気発生機構
21、91…案内機構
25…タンク
26…ヒータ(液体用ヒータ)
27…温度調整器(ヒータ温度調整器)
28…配管
29…気泡発生機構
30…エアー調整器
40…案内管
41…ヒータ(案内管用ヒータ)
43…温度調整器(案内管温度調整器)
80…温度センサ(センサ)
81…位置センサ
82…制御部
92…蓄積部
93…放出機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋剤に包埋された包埋ブロックを加湿する包埋ブロック加湿装置であって、
所定温度に加熱された水蒸気を発生させる水蒸気発生機構と、
発生した前記水蒸気が予め決められた待機位置にセットされた前記包埋ブロックの表面に当たるように、該水蒸気を包埋ブロックまで案内する案内機構と、を備えていることを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の包埋ブロック加湿装置において、
前記水蒸気発生機構は、液体が貯留されたタンクと、
前記液体を加熱する液体用ヒータと、
該液体用ヒータの温度を調整するヒータ温度調整器と、
前記液体に浸かるように前記タンク内に挿し込まれた配管を有し、該配管にエアーを供給して配管の先端から無数の気泡を液体中に発生させる気泡発生機構と、
前記エアーの供給量を調整するエアー調整器と、を備えていることを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項3】
請求項2に記載の包埋ブロック加湿装置において、
前記包埋ブロックの表面温度を測定するセンサを備え、
前記ヒータ温度調整器は、発生する前記水蒸気の温度が、前記センサで測定された前記包埋ブロックの温度よりも予め決められた温度だけ高くなるように、前記液体用ヒータの温度を調整することを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項4】
請求項3に記載の包埋ブロック加湿装置において、
前記エアー調整器は、前記センサで測定された前記包埋ブロックの温度に基づいて、前記エアーの供給量を調整することを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の包埋ブロック加湿装置において、
前記案内機構は、前記水蒸気を前記包埋ブロックまで案内する案内管と、
該案内管を加熱する案内管用ヒータと、
該案内管用ヒータの温度を調整する案内管温度調整器と、を備えていることを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項6】
請求項1項に記載の包埋ブロック加湿装置において、
前記案内機構は、前記水蒸気を一旦溜め込む蓄積部と、溜め込んだ水蒸気を蓄積部の外部に一度に放出させる放出機構と、を備え、
放出した前記水蒸気を前記包埋ブロックに案内することを特徴とする包埋ブロック加湿装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の包埋ブロック加湿装置と、
前記包埋ブロックを載置固定する固定台と、
前記待機位置から離間した位置に配置された切断刃を有し、待機位置と切断刃との間で前記固定台を移動させ、前記包埋ブロックを所定の厚みで切断して薄切片を切り出す切断機構と、
切り出された前記薄切片を搬送する薄切片搬送機構と、を備えていることを特徴とする自動薄切片作製装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動薄切片作製装置において、
前記包埋ブロックが前記待機位置に位置しているか否かを検出する位置センサと、
前記包埋ブロックが前記待機位置に位置していると前記位置センサが検出したときに、前記水蒸気発生機構を作動させる制御部と、を備えていることを特徴とする自動薄切片作製装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の自動薄切片作製装置において、
前記切断機構は、前記水蒸気発生機構が作動してから所定時間経過後に、前記固定台を移動させることを特徴とする自動薄切片作製装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の自動薄切片作製装置と、
前記包埋ブロックを前記固定台上に搬送するブロック搬送機構と、
前記薄切片搬送機構によって搬送された前記薄切片を、少なくとも液体に浮かべて伸展させる伸展機構と、
伸展された前記薄切片を、基板上に転写させて薄切片標本を作製する転写機構と、を備えていることを特徴とする自動薄切片標本作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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