説明

包括固定化担体及び廃水処理装置並びに廃水処理方法

【課題】ポンプで生物処理槽に返送しても破損しにくいので、活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の生物処理槽を改造する必用がなく、しかも粒径を小さくすることができるので処理効率を格段に向上させることができる。
【解決手段】包括固定化担体12は、(A)圧縮しない前の担体厚さをH0 とし、圧縮により破壊する時の担体厚さをH1 としたときに、(H0 −H1 )/H0 で表される変形率が70%以上であること、(B)粒径が0.1〜1.0mmの範囲であること、の条件を満足している。そして、この包括固定化担体12をスクリーンを有しない生物処理槽14に投入し、処理水に同伴して固液分離槽16に流出した包括固定化担体12はポンプ20移送で生物処理槽14に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括固定化担体及び廃水処理装置並びに廃水処理方法に係り、特に活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の装置を改造することなく、包括固定化担体を生物処理槽に投入するだけで処理効率の高い運転を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性汚泥による廃水処理は数多くの廃水処理場で採用されている。この活性汚泥による廃水処理方法は、活性汚泥が浮遊すると共にエアー(又は酸素)が曝気される生物処理槽内に廃水を流入させ、活性汚泥と廃水とを接触させることで廃水中の被処理成分(例えばアンモニア)を生物学的に処理する。しかし、活性汚泥による廃水処理は、生物処理槽内に廃水中の被処理成分を処理するための有用微生物濃度を高濃度に維持できないため、高負荷運転を行うことができず、処理効率が悪いという問題がある。
【0003】
このことから、近年、微生物を包括固定した包括固定化担体を生物処理槽に投入することで生物処理槽内の有用微生物濃度を高め、これにより処理効率を上げることが行われている。
【0004】
図6は、生物処理槽1に包括固定化担体2を投入した従来の廃水処理装置3の一般的な装置構成である。図6に示すように、原水配管4を介して廃水が流入する生物処理槽1内には、包括固定化担体2が投入されると共に、生物処理槽1の処理水出口には、包括固定化担体2が処理水に同伴して流出するのを防止するスクリーン5が設けられる。また、スクリーン5の下方には整流板6が設けられ、処理水の流れの向きや流速を調整することによりスクリーン5に包括固定化担体2が目詰まりすることを抑制している。また、包括固定化担体2は、粒径を小さくし過ぎると、スクリーン5で目詰まりしてしまうため、目詰まりしにくいように通常3〜10mm程度の粒径に形成される。スクリーン5の目開きを小さくすれば、粒径の小さい包括固定化担体2の流出は防止できるが、廃水中の微粒子や微生物によって生産される粘性生産物がスクリーン5に付着し易くなるだけでなく、処理水の流出抵抗が大きくなる。従って、スクリーン5の目開きを小さくすることは現実的でない。
【0005】
スクリーン5で包括固定化担体2が分離された処理水は固液分離槽7で処理水中の活性汚泥が沈降分離され、沈降した活性汚泥の一部はポンプ8により返送配管9を介して生物処理槽1に戻される。符号の1aはブロアーであり、1bはエアー(又は酸素)を曝気する曝気管である。スクリーンを備えた生物処理槽としては、例えば特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−148154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)しかしながら、活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の生物処理槽1を、包括固定化担体2でも使用できるようにするには、上記したようにスクリーン5や整流板6のようにスクリーン5の目詰まりを防止する部材を設ける必用があり、装置を改造しなくてはならないという問題がある。整流板6だけでは目詰まりが防止できない場合には、スクリーン5の下方に、スクリーン洗浄用のエア曝気手段を設ける場合もあり、装置の改造が大がかりになる。
【0007】
(2)また、包括固定化担体2は、固定化材料である親水性ゲルの中に微生物(活性汚泥等)を包括固定するものであり、粒径が小さいほど廃水と接触する表面積を大きくできるので、包括固定化担体2の本来の長所である処理効率を上げることができる。
【0008】
このような背景から、生物処理槽1内にスクリーン2を設けずに、包括固定化担体2を処理水に同伴させて固液分離槽7に流出させ、流出した包括固定化担体2をポンプ8により返送配管9を介して生物処理槽1に戻すように装置を構成すれば、既設の装置をそのまま使用できるので装置の改造も必用ない。しかも、粒径の小さな包括固定化担体を使用することが可能となり、上記した(1)と(2)の問題を一度に解決することができる。
【0009】
しかしながら、ポンプ8により返送配管9を介して包括固定化担体2を生物処理槽1に戻す際に、ポンプ8での圧縮や返送配管9での磨耗等により包括固定化担体2が破損してしまい、現状では不可能である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ポンプで生物処理槽に返送しても破損しにくいので、活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の生物処理槽を改造する必用がなく、しかも粒径を小さくすることができるので処理効率を格段に向上させることができる包括固定化担体及び廃水処理装置並びに廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、微生物を混合した固定化材料を重合することにより、前記微生物を前記固定化材料内に包括固定化した廃水処理用の包括固定化担体において、前記包括固定化担体は、(A)圧縮しない前の担体厚さをH0 とし、圧縮により破壊する時の担体厚さをH1 としたときに、(H0 −H1 )/H0 で表される変形率が70%以上であること、(B)粒径が0.1〜1.0mmの範囲であること、の条件を満足していることを特徴とする廃水処理用の包括固定化担体を提供する。
【0012】
本発明者は、生物処理槽内にスクリーンを設けずに、生物処理槽から固液分離槽に処理水に同伴して流出した包括固定化担体を、ポンプにより返送配管を介して生物処理槽に戻す構成の廃水処理装置に好適な包括固定化担体を鋭意研究した結果、上記(A)及び(B)の条件を備えた包括固定化担体により目的を達成できるとの知見を得た。
【0013】
即ち、圧縮しない前の担体厚さをH0 とし、圧縮により破壊する時の担体厚さをH1 としたときに、(H0 −H1 )/H0 ×100で表される変形率が70%以上になるように包括固定化担体を設計し、且つ包括固定化担体の粒径を0.1〜1.0mmの範囲の小粒にすることで、ポンプでの圧縮や返送配管での磨耗等により破損しにくい包括固定化担体を得ることができる。また、一般的な包括固定化担体内において硝化菌のような好気性の有用微生物が生存する領域は、ゲル(固定化材料を重合してゲル化したもの)の拡散抵抗のために担体表面から500μmの担体内部までである。従って、包括固定化担体の粒径を0.1〜1.0mmの範囲の小粒にすることで、ポンプにより破壊しにくくなるだけでなく、包括固定化担体の全体に有用微生物を生存させることができる。これにより、担体負荷を高負荷にして生物処理を行うことが可能となるので、処理効率を飛躍的に向上できる。尚、包括固定化担体の変形率は80%以上であればより好ましい。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記包括固定化担体の比重が1.01〜1.06の範囲であることを特徴とする。
【0015】
これは、包括固定化担体をポンプで生物処理槽に返送するには、包括固定化担体を効率的に沈降させる必用があり、包括固定化担体の比重が1.01〜1.06の範囲に設計することで沈降効率を向上できるからである。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、前記固定化材料として、分子量が4000〜12000の範囲のプレポリマを使用すると共に該プレポリマの担体当たりの濃度が3〜10重量%の範囲であることを特徴とする。
【0017】
請求項3は、包括固定化担体の変形率を70%以上にするための好ましい一例であり、固定化材料の分子量と含有量を規定することで達成するようにしたものである。尚、分子量が7000〜11000の範囲がより好ましく、担体当たりの濃度は4〜8重量%の範囲がより好ましい。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記微生物は活性汚泥であることを特徴とする。
【0019】
これは、固定化材料中に溶解している酸素は重合を阻害するが、活性汚泥を包括固定化することで、活性汚泥が酸素を消費し重合反応を順調に進行させるので、強度の強い包括固定化担体を得易くなるためである。特に、請求項3のように、プレポリマ濃度が低い場合には酸素の影響を受け易く、活性汚泥を使用することにより影響を軽減できるので、包括固定化担体の変形率を一層高めることが可能となる。また、活性汚泥を包括固定化することで、包括固定化担体の比重調整も可能となる。従って、包括固定化する微生物は純粋培養したものでもよいが、活性汚泥を包括固定化することがより好ましい。
【0020】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、請求項1〜4の何れか1に記載された包括固定化担体が投入されると共に、該包括固定化担体と廃水とを接触させることにより廃水中の被処理成分を生物学的に処理する生物処理槽と、前記生物処理槽から流出した包括固定化担体を沈降分離する固液分離槽と、前記固液分離槽と前記生物処理槽とを繋ぐ返送配管に設けられたポンプとを備え、前記生物処理槽から前記固液分離槽に処理水に同伴して流出した包括固定化担体を、前記ポンプにより前記返送配管を介して前記生物処理槽に戻すことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0021】
請求項5は、本発明の包括固定化担体を使用することで、生物処理槽内にスクリーンを設けずに、生物処理槽から固液分離槽に処理水に同伴して流出した包括固定化担体を、ポンプにより返送配管を介して生物処理槽に戻すように構成した廃水処理装置である。これにより、活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の生物処理槽を改造する必用がなく、しかも粒径を小さくすることができるので処理効率を格段に向上させるこができる。
【0022】
請求項6は請求項5において、前記生物処理槽には前記包括固定化担体と活性汚泥とを混在させ、処理水に同伴されて前記固液分離槽に流出する包括固定化担体と活性汚泥との両方を前記ポンプで生物処理槽に戻すことを特徴とする。
【0023】
これは、包括固定化担体と活性汚泥との両方を混在させた状態でポンプで返送することにより、活性汚泥が包括固定化担体を圧縮や磨耗から保護する役目を果たすので、包括固定化担体を破損しにくくできる。
【0024】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、アンモニア含有廃水を生物学的に硝化処理する廃水処理方法において、硝化菌が包括固定化されると共に粒径が0.1〜1.0mmの範囲の包括固定化担体を、担体負荷が300〜600(mg−N/L・h)の範囲になるように前記アンモニア含有廃水と接触させることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0025】
上記したように、包括固定化担体の粒径を0.1〜1.0mmの範囲の小粒にすることで、包括固定化担体の全体に有用微生物を高濃度に生存させることができるので、担体負荷を高負荷にして生物処理を行うことが可能となる。請求項7は、アンモニア含有廃水の硝化処理に適用したもので、硝化菌が包括固定化されると共に粒径が0.1〜1.0mmの範囲の包括固定化担体を、担体負荷が300〜600(mg−N/L・h)の範囲になるようにアンモニア含有廃水と接触させるようにした。担体負荷が300〜600(mg−N/L・h)の範囲であれば、略100%の硝化率で硝化処理することができ、これにより処理効率を飛躍的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の包括固定化担体はポンプ移送しても破損しにいので、生物処理槽に担体流出防止用のスクリーンを設けない廃水処理装置を構成することが可能となるだけでなく、粒径を小さくすることができるので処理効率を格段に向上させことができる。従って、活性汚泥により廃水処理を行っていた既設の生物処理槽に本発明の包括固定化担体を投入するだけで高効率な廃水処理装置や方法を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下添付図面に従って本発明に係る包括固定化担体及び廃水処理装置並びに廃水処理方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0028】
図1は、本発明の廃水処理装置の概略図であり、廃水中の窒素成分(例えばアンモニア)を好気性条件下で生物学的に硝化処理する廃水処理装置の一例である。
【0029】
図1に示すように、廃水処理装置10は、主として、多数の包括固定化担体12と廃水とを接触させることにより廃水中の被処理成分を生物学的に処理する生物処理槽14と、生物処理槽14から流出した包括固定化担体12を沈降分離する固液分離槽16と、固液分離槽16と生物処理槽14とを繋ぐ返送配管18に設けられたポンプ20とで構成される。この廃水処理装置10の生物処理槽14には、包括固定化担体12の流出を防止するスクリーンは設けない。
【0030】
生物処理槽14には、原水配管22を介して窒素成分を含む廃水が流入し、硝化菌が包括固定された包括固定化担体12と接触する。また、生物処理槽14の底部には曝気管24が設けられ、曝気管24はエア配管26を介してブロア28に接続される。これにより、曝気管24から曝気されるエアーにより生物処理槽14内に好気性条件が形成される。かかる好気性条件下で包括固定化担体12と廃水とが接触することにより、廃水中の窒素成分が包括固定化担体12に包括固定化されている硝化菌(微生物)により硝化(酸化)される。生物処理槽14で処理された処理水は、送液管30を介して固液分離槽16に送られると共に、一部の包括固定化担体12が処理水に同伴して固液分離槽16に流出する。固液分離槽16では、上澄水が処理水として処理水配管32を介して次の工程に送られると共に、重力沈降した包括固定化担体12が固液分離槽16の底部に堆積される。そして、ポンプ20を稼働することにより、固液分離槽16の底部に堆積した包括固定化担体12は、返送配管18を介して生物処理槽14に戻される。固液分離槽16内の中心部には、縦方向に上下が解放された筒体31が設けられ、送液管30の先端が筒体31まで延設される。これにより、生物処理槽14から固液分離槽16に流出した包括固定化担体12は、固液分離槽16内で散乱することなく、固液分離槽16の底部に沈降する。
【0031】
上記の如く、生物処理槽14内の処理水出口に担体流出防止のためのスクリーン(図6の符号5)を設けずに、処理水に同伴して固液分離槽16に流出する包括固定化担体12を生物処理槽14にポンプ20で生物処理槽14に返送する場合には、ポンプ移送により包括固定化担体12が破損しにくいことが重要になる。そこで、生物処理槽14には、本発明の包括固定化担体12が投入される。
【0032】
本発明の包括固定化担体12は、微生物を混合した固定化材料を重合することにより、微生物を固定化材料内に包括固定化したものであり、包括固定化担体12の変形率が70%以上で且つ粒径が0.1〜1.0mmの範囲の条件を満足することが重要である。包括固定化担体12の変形率とは、次式(1)で表された値を言う。
【0033】
包括固定化担体の変形率(%)=(H0 −H1 )/H0 ×100…(1)
ここで、H0 :圧縮しない前の担体厚さ(mm)
1 :圧縮機、例えばレオメータを使用して一定の力で包括固定化担体12を圧縮し、担体ゲルが破壊する時の担体厚さ(mm)とする。例えば、変形率70%とは、包括固定化担体12の初期の厚みの70%まで圧縮可能であり、それ以上圧縮すると破損することを意味する。
【0034】
このように、包括固定化担体12の変形率を70%以上にすること、更に好ましくは80%以上にすることで、ポンプ20での圧縮や返送配管18での磨耗等により破損しにくい包括固定化担体12を得ることができる。
【0035】
変形率70%以上の包括固定化担体12を得る方法としては、固定化材料として、分子量が4000〜12000の範囲のプレポリマを使用すると共に該プレポリマの担体当たりの濃度が3〜10重量%の範囲にする方法が好適である。
【0036】
図2はプレポリマの分子量と変形率との関係を示したものであり、図3は担体当たりのプレポリマ濃度と変形率との関係を示したものである。
【0037】
図2から分かるように、プレポリマの分子量を大きくしていくと変形率が次第に上昇して弾力性が増すが、分子量が約10000でピークになり、その後は変形率が急激に低下する。これは、プレポリマの分子量を大きくすると変形率が大きくなる傾向にあるが、分子量が大きくなり過ぎるとゲル化し難くなるために担体強度が低下して壊れ易くなるので、変形率が低下するものと考察される。そして、分子量が4000〜12000の範囲で変形率70%以上を確保することができる。
【0038】
また、図3から分かるように、プレポリマ濃度を大きくしていくと変形率が次第に上昇して弾力性が増すが、プレポリマ濃度が6〜7重量%でピークとなり、その後は変形率が次第に低下する。これは、プレポリマ濃度3重量%未満ではゲル化が十分に行われず、変形率が低くなる。また、プレポリマ濃度が8重量%を超えると、ゲル中の架橋点の数が多くなることにより重合が強固に成り過ぎて堅いが脆くなるために、変形率が低下するものと考察される。
【0039】
このように、包括固定化担体12の変形率を大きくするには、プレポリマの分子量と担体当たりの濃度を適切に調整する必用があり、これによりゲル中の架橋点の数を適切に形成することができ、これにより、弾力性に富んだ包括固定化担体12を得ることができる。そして、分子量が4000〜12000の範囲のプレポリマを使用すると共に該プレポリマの担体当たりの濃度が3〜10重量%の範囲にすることで、変形率70%以上を確保することができる。また、包括固定化担体12の粒径を0.1〜1.0mmの範囲にすることで、後述する処理性能の向上だけではなく、ポンプ移送において包括固定化担体12が破損されにくくなる。
【0040】
固定化材料である母剤プレポリマや、架橋剤としては、以下のものを好適に使用できる。
【0041】
(モノメタクリレート類)ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート等。
【0042】
(モノアクリレート類)2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0043】
(ジメタクリレート類)1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0044】
(ジアクリレート類)エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0045】
(トリメタクリレート類)トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0046】
(トリアクリレート類)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等。
【0047】
(テトラアクリレート類)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0048】
(ウレタンアクリレート類)ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0049】
(その他)アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド。
【0050】
また、本発明での重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25%がよく、アミン系の重合促進剤を0.001〜0.5%添加するとよい。アミン系の重合促進剤としてはβジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ソーダなどがよい。
【0051】
また、プレポリマ内に包括固定化する微生物としては、純粋培養したものでもよいが、活性汚泥を包括固定化することがより好ましい。この理由は、プレポリマに溶解している酸素は重合を阻害するが、活性汚泥を包括固定化することで、活性汚泥が酸素を消費し重合反応を順調に進行させるので、強度の強い包括固定化担体12を得易くなるためである。特に、本発明のように、プレポリマ濃度が3〜10重量%と低い場合には酸素の影響を受け易く、活性汚泥を使用することにより影響を軽減できるので、包括固定化担体12の変形率を一層高めることが可能となる。また、活性汚泥を包括固定化することで、包括固定化担体12の比重調整も可能となる。
【0052】
包括固定化担体12の比重としては、1.01〜1.06の範囲であることが好ましい。これは、包括固定化担体12の粒子径が0.1〜1.0mmと小さい場合でも、比重を1.01〜1.06にすることで、固液分離槽16で重力により容易に処理水から沈降分離することができるからである。包括固定化担体12の比重調整剤としては、活性汚泥、マグネタイト、フライアッシュ、鉄粉、活性炭、シリカ等を好適に使用することができる。
【0053】
また、包括固定化担体12の粒径を0.1〜1.0mmの範囲に粒子径を小さくすることで、包括固定化担体12の中心部まで基質や酸素が透過し硝化菌(有用微生物)が増殖し易くなるので、担体当たりの反応速度を著しく速くすることができる。これにより、担体負荷を高くした状態で廃水中の窒素成分を処理することが可能となる。
【0054】
図4は、上記した図1の廃水処理装置10をスケールダウンした実験装置を使用して、硝化菌が包括固定された粒径が1.0mmの包括固定化担体12(本発明)でアンモニア濃度100mg/Lの廃水を硝化処理したときの、担体負荷と硝化率との関係を調べたものである。合わせて、固液分離槽16から生物処理槽14に包括固定化担体12をポンプ移送したときの包括固定化担体12の破損状態を調べた。
【0055】
比較試験として、図6のスクリーンを有する従来の廃水処理装置3をスケールダウンした実験装置を使用して、硝化菌が包括固定された粒径が3.0mmの包括固定化担体2(従来例)でアンモニア濃度100mg/Lの廃水を硝化処理したときの、担体負荷と硝化率との関係を調べた。
【0056】
本発明の包括固定化担体12は、ポリエチレングリコール分子量が9500で、材料濃度が5重量%である。一方、従来例の包括固定化担体2は、ポリエチレングリコール分子量が4000、材料濃度が10重量%である。尚、生物処理槽14へ投入時における包括固定化担体中の硝化菌濃度は本発明及び比較例ともに同じとし、比重は、本発明及び従来例ともに1.015とした。
【0057】
また、生物処理槽14の容量は本発明及び従来例ともに2Lとし、生物処理槽12には活性汚泥を添加せずに包括固定化担体12のみを充填量5容量%になるように充填した。そして、生物処理槽14に通水する通水量を増加させることにより、担体負荷を大きくした。
【0058】
図4から分かるように、本発明の包括固定化担体12は、担体負荷を大きくしていっても500(mg−N/L・h)までは硝化率が約100%であった。更に担体負荷を大きくすると、硝化率は次第に低下するが、それでも担体負荷600(mg−N/L・h)で硝化率94%、担体負荷700(mg−N/L・h)で硝化率80%と高い水準を維持することができた。また、ポンプ移送による包括固定化担体12の破損も認められず、処理を続けることができた。従って、廃水中の窒素成分を好気性条件下で生物学的に硝化処理する廃水処理方法において、本発明の包括固定化担体12を、担体負荷が300〜600(mg−N/L・h)の範囲になるように廃水と接触させることにより、高濃度の窒素成分を短時間で処理することができる。
【0059】
一方、従来例の包括固定化担体2は、担体負荷が200(mg−N/L・h)までは100%の硝化率を維持していたが、担体負荷が200(mg−N/L・h)を超えると硝化率が急激に低下し、担体負荷が500(mg−N/L・h)で硝化率約20%となった。
【0060】
図4の結果から、包括固定化担体12の粒径が0.1〜1.0mmの範囲の条件を満足することにより、包括固定化担体の処理能力(この場合は硝化能力)を最大限に発揮でき、且つ変形率が70%以上にすることで包括固定化担体の変形率を大きくできるので、ポンプによる返送が可能となり、従来必用であったスクリーンのない廃水処理装置10を構成することが可能となる。
【0061】
従って、活性汚泥により廃水処理を行っていたスクリーンを有しない既設の生物処理槽に、本発明の包括固定化担体12を投入して運転するだけで、立ち上がりが速く、負荷変動に強い廃水処理を行うことが可能となる。
【0062】
図5は、本発明の廃水処理装置10' の変形例であり、生物処理槽14内に本発明の包括固定化担体12と活性汚泥34(図5の黒い部分)の両方が共存する場合である。尚、その他は、図1の構成と同様であるので、説明は省略する。
【0063】
図5のように、生物処理槽14内に本発明の包括固定化担体12と活性汚泥34の両方が共存する場合、生物処理槽14から固液分離槽16に排出される処理水に同伴して、包括固定化担体12と活性汚泥34とが流出し、固液分離槽16の底部に沈降する。この沈降した包括固定化担体12と活性汚泥34との両方を混在させた状態でポンプ20で生物処理槽14に返送する。これにより、活性汚泥34が包括固定化担体12を圧縮や磨耗から保護する役目を果たすので、包括固定化担体12を破損しにくくできる。
【0064】
尚、本実施の形態では、窒素成分を処理するための包括固定化担体の例で説明したが、窒素成分以外の被処理成分を処理する有用微生物を包括固定化した包括固定化担体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の廃水処理装置の概要図
【図2】包括固定化の固定材料であるプレポリマの分子量と変形率との関係を示した関係図
【図3】担体当たりのプレポリマの濃度と変形率との関係を示した関係図
【図4】本発明の包括固定化担体と従来例の包括固定化担体における担体負荷と硝化率との関係を示した関係図
【図5】本発明の廃水処理装置の変形例の概念図
【図6】従来のスクリーンを備えた廃水処理装置の概念図
【符号の説明】
【0066】
10、10' …廃水処理装置、12…包括固定化担体、14…生物処理槽、16…固液分離槽、18…返送配管、20…ポンプ、22…原水配管、24…曝気管、26…エア配管、28…ブロア、30…送液管、32…処理水配管、34…活性汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を混合した固定化材料を重合することにより、前記微生物を前記固定化材料内に包括固定化した廃水処理用の包括固定化担体において、
前記包括固定化担体は、
(A)圧縮しない前の担体厚さをH0 とし、圧縮により破壊する時の担体厚さをH1 としたときに、(H0 −H1 )/H0 ×100で表される変形率が70%以上であること、
(B)粒径が0.1〜1.0mmの範囲であること、の条件を満足していることを特徴とする廃水処理用の包括固定化担体。
【請求項2】
前記包括固定化担体の比重が1.01〜1.06の範囲であることを特徴とする請求項1の廃水処理用の包括固定化担体。
【請求項3】
前記固定化材料として、分子量が4000〜12000の範囲のプレポリマを使用すると共に該プレポリマの担体当たりの濃度が3〜10重量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2の包括固定化担体。
【請求項4】
前記微生物は活性汚泥であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の包括固定化担体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1に記載された包括固定化担体が投入されると共に、該包括固定化担体と廃水とを接触させることにより廃水中の被処理成分を生物学的に処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽から流出した包括固定化担体を沈降分離する固液分離槽と、
前記固液分離槽と前記生物処理槽とを繋ぐ返送配管に設けられたポンプとを備え、
前記生物処理槽から前記固液分離槽に処理水に同伴して流出した包括固定化担体を、前記ポンプにより前記返送配管を介して前記生物処理槽に戻すことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項6】
前記生物処理槽には前記包括固定化担体と活性汚泥とを混在させ、処理水に同伴されて前記固液分離槽に流出する包括固定化担体と活性汚泥との両方を前記ポンプで生物処理槽に戻すことを特徴とする請求項5の廃水処理装置。
【請求項7】
廃水中の窒素成分を好気性条件下で生物学的に硝化処理する廃水処理方法において、
硝化菌が包括固定化されると共に粒径が0.1〜1.0mmの範囲の包括固定化担体を、担体負荷が300〜600(mg−N/L・h)の範囲になるように前記廃水と接触させることを特徴とする廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−192391(P2006−192391A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8075(P2005−8075)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】