説明

包皮食品の自動成形方法

【課題】麺皮の折り付け工程を含む包皮食品の自動成形方法として、麺皮の折り付け部分の戻り変形を防止し、後工程での成形操作に支障をきたさず、安定した成形性を確保でき、崩れのない均一な成形形態が得られる手段を提供する。
【解決手段】麺皮1上に具材2を乗せ、機械的に麺皮1で具材2を包み込んで包皮食品を成形する方法であって、麺皮1の折り付け工程よりも前工程において、展開状態の麺皮1の表面に、折り付け工程での折り目に沿って麺皮軟化用の液剤を付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、春巻き等の具材を麺皮で包み込んだ包皮食品の自動成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、春巻き等の種々の包皮食品について、その量産のために、麺皮及び具材の供給から具材の包み込みまでの一連の工程を機械的に行う自動成形方式が広く普及している。その成形手順と各工程での操作は製品形態及び具材の種類によって自ずと異なるが、例えば春巻きとして同様の製品形態でも、メーカーが目指す食感や調理性等より麺皮の折り方や巻き方に違いがある(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−253918号公報
【特許文献2】特開平7−213261号公報
【特許文献3】特開2004−121035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上述のような自動成形方式において麺皮の折り付けを行った場合に、その折り付け部分が往々にして戻り変形し、後工程の成形操作に支障をきたしたり、成形形態の崩れや不揃いを生じることが多々あった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて、麺皮の折り付け工程を含む包皮食品の自動成形方法において、麺皮の折り付け部分の戻り変形を防止し、後工程での成形操作に支障をきたさず、安定した成形性を確保できると共に、崩れのない均一な成形形態が得られる手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る包皮食品の自動成形方法は、麺皮上に具材を乗せ、機械的に該麺皮で具材を包み込むことによって包皮食品を自動的に成形する方法であって、麺皮の折り付け工程を含み、この折り付け工程よりも前工程において、展開状態の麺皮の表面に、折り付け工程での折り目に沿って麺皮軟化用の液剤を付着させることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、前記請求項1の包皮食品の自動成形方法において、具材を乗せる前の麺皮に対して前記液剤を付着する構成としている。
【0008】
請求項3の発明は、前記請求項1又はの包皮食品の自動成形方法において、液剤として水を用いる構成としている。
【0009】
更に、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの包皮食品の自動成形方法において、液剤の付着は、昇降可能な液含浸性パッドに該液剤を含浸させ、該液含浸性パッドを下降させて麺皮表面に接触させることによって行う構成としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る包皮食品の自動成形方法によれば、折り付け工程よりも前工程において、展開状態の麺皮の表面に折り付け工程での折り目に沿って麺皮軟化用の液剤を付着させることにより、折り目付近の麺皮生地が液剤吸収で柔らかくなるから、折り付け工程で該麺皮を折り付けた際に、折り目で折り返す両側の麺皮生地が押し潰れるように可塑変形して密着し、もって折り目付近に折りを戻す弾性歪みが残りにくく、後工程で該折り目部分を更に折り曲げたり巻き付けたりする際に支障を生じず、安定した成形性を確保できると共に、崩れのない均一な成形形態が得られる。
【0011】
請求項2の発明によれば、具材を乗せる前の麺皮に対して前記液剤を付着するようにしているから、一般的に多段階の成形操作を要する具材の包み込み過程の途中に液剤付着工程を挟むことによる煩雑化を回避でき、それだけ装置構成上の制約が少なくなる。
【0012】
請求項3の発明によれば、麺皮軟化用の液剤として水を用いるから、得られる包皮食品の味や食感の変化を回避できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、液含浸性パッドを降下させて麺皮表面に接触させることにより、該麺皮表面に麺皮軟化用の液剤を所要パターンで確実に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に使用する海老春巻の自動成形機の概略平面図である。
【図2】同自動成形機の概略側面図である。
【図3】同自動成形機による海老春巻の成形動作を示す模式平面図である。
【図4】同自動成形機における液剤付着機構部を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る包皮食品の自動成形方法として、包皮食品が海老春巻である場合の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、この海老春巻は、図3で示すように、具材として頭を落して尾2aが残る剥き海老2を用い、これを尾2aが外に出る状態で麺皮1で包み込んで包皮成形物3としたものである。
【0016】
図1及び図2に示す自動成形機は、基台11上に、各々円板状をなす成形テーブル12と具材供給テーブル13とが後者を高位として一部で上下に重なる形で水平配置すると共に、成形作業テーブル12の側方には麺帯導入部14と成形品搬出コンベア15とが設けてある。その麺帯導入部14上は、前処理ステーションS0として、図示省略した麺帯製造装置から送られてくる麺帯10の前端部が載るようになっている。
【0017】
成形テーブル12上には、その回転方向に沿って順次に、第1〜第4ステーションS1〜S4が相互に角度90°の位相差で固定的に設定されている。そして、該成形テーブル12は、その板面位置が1ステーションずつ進行してゆくように、1/4回転ずつ間欠的に回転駆動するようになっている。また、第1ステーションS1は前処理ステーションS0に隣接しており、該第1ステーションS1と前処理ステーションS0との間には切断装置4の上下傾動する切断刃4aが配置すると共に、前処理ステーションS0には昇降用シリンダー53によって昇降動作する液剤付着装置5が配置している。
【0018】
図1の符号6は第4ステーションS4に配置した転動送出装置であり、弧状の押さえ板6aを枢軸6bを中心として水平回動させることにより、該押さえ板6aと成形テーブル12との間に挟んだ麺皮半巻き状態の被成形物を転動させ、残りの麺皮巻き付けと成形品搬出コンベア15への送り出しを行う。また、符号7はコントローラーである。なお、図示を省略しているが、第1ステーションS1には麺皮引込み装置と尾側折り付け装置が、第3ステーションS3には頭側折り込み装置と片側巻き付け装置が、それぞれ配置している。
【0019】
具材供給テーブル13は、その板面の周方向に沿って一定間隔置きに、多数の半径方向に沿うスリット13aが形成されており、各スリット13aの位置に、具材の剥き海老2を尾2aが内側に来る向きで載置した状態で、スリット13aのピッチで間欠的に回転駆動するようになっている。また、この具材供給テーブル13の一部は成形テーブル12に対して第2ステーションS2上で重なるように配置し、第2ステーションS2の中央位置にくるスリット13aに臨んで、具材排出装置8の落とし込みバー8aが上方に配置している。
【0020】
液剤付着装置5は、図4に示すように、下向きコ字形の支持枠51の前後の垂下片51a,51bの外側に、それぞれねじ55a及び蝶ナット55bと押さえ板55cを介して、不織布マットからなる液含浸性パッド50A,50Bが下縁を突出した状態で止着されると共に、両液含浸性パッド50A,50Bには麺皮軟化用の液剤として各々チューブ56から導出される水が含浸してゆくようになっている。しかして、前部側の液含浸性パッド50Aの下縁は第3ステーションS3で折り込む麺皮1のヘの字形の折り目に、後部側の液含浸性パッド50Bの下縁は第1ステーションS1で折り付ける麺皮1の直線状の折り目に、それぞれ沿う位置と長さ及び形に設定されている。なお、52は支持枠51を昇降用シリンダー53の伸縮ロッド端に保持させる支承アームであり、ボルト・ナット54を介して該支持枠51に連結されている。
【0021】
上記構成の自動成形機では、図3に示すように、まず前処理ステーションS0において、送られて来た麺帯10の前端部の表面に、下降した液剤付着装置5の両液含浸性パッド50A,50Bの下縁を接触させることにより、含浸されていた水を付着させる。次いで、切断装置4の切断刃4aが上方へ退避した状態で、図示省略した麺皮引込み装置によって該麺帯10の水を付着した前端部を第1ステーションS1側へ引き込み、切断刃4aの下動にて該麺帯10を正方形の麺皮1枚分に切り取ったのち、該麺皮1を更に該切断刃4aから離れるように僅かに引き込んで第1ステーションS1上に位置決め配置する。この引き込んだ麺皮1は、前処理ステーションS0で付着した水が麺皮生地に吸収された浸潤部9a,9bを有している。
【0022】
そして、この第1ステーションS1において、図示省略した尾側折り付け装置により、該麺皮1における成形テーブル12周縁側のコーナー部1aが矢印aの如く内側へ三角に折り付けられる。この折り付けは浸潤部9bで行われることになる。次に、コーナー部1aの折り付けが済んだ麺皮1は、成形テーブル12の1/4回転により、第2ステーションS2へ移動する。
【0023】
第2ステーションS2では、その中央位置にある具材供給テーブル13のスリット13a上に載っている具材の剥き海老2が、具材排出装置8の落とし込みバー8aの下動により、該スリット13aを通して麺皮1上に落とし込まれる。この落とし込まれた剥き海老2は、その尾2aが麺皮1の折り付けたコーナー部1aから外側へはみ出した状態で、頭側の先端がへの字形に曲折した浸潤部9aのやや内側に配置するように設定されている。かくして剥き海老2を載せた麺皮1は、次の成形テーブル12の1/4回転により、第3ステーションS3へ移動する。
【0024】
第3ステーションS3では、まず図示省略した頭側折り込み装置により、麺皮1の成形テーブル12中央側に臨む幅広の頭側折り返し部1bが矢印Bの如くへの字形の折り目で内側へ折り返され、その中央部分で剥き海老2の頭側を包み込むと共に、その両側部分は当該麺皮1の残部上に折り付けられる。この折り付けは浸潤部9aで行われることになる。次いで、図示省略した片側巻き付け装置により、麺皮1の成形テーブル12回転後方側にある側片部1cが、先の尾側及び頭側の折り付け部分と一体に矢印cの如く剥き海老2上に巻き付けられると共に、その余剰の先端側が反対側の展開している側片部1d上に重なる形になる。かくして麺皮1の側片部1cの巻き付けを終えた被成形物は、次の成形テーブル12の1/4回転により、第4ステーションS4へ移動する。
【0025】
第4ステーションS4では、被成形物は、成形テーブル12と転動送出装置6の弧状の押さえ板6aとの間に挟まれ、この状態で該押さえ板6aが回動することにより、図3の矢印dの如く成形テーブル12上を転動する。この転動により、麺皮1の展開していた側片部1dが重なっていた側片部1cの余剰部分と一緒に剥き海老2を包むように巻き込まれ、剥き海老2が尾2aを残して麺皮1で包まれた包皮成形物3として成形品搬出コンベア15上へ送り出される。得られた包皮形成物3は、以降の冷凍処理による一次調理品や油ちょう処理による二次調理品として出荷販売される。
【0026】
このような自動成形方法では、第1ステーションS1における麺皮1のコーナー部1aの折り付け、ならびに第3ステーションS3における該麺皮1の頭側折り返し部1bの折り付けの際、その折り目に沿う麺皮生地が水の浸潤部9a,9bとして軟化しているから、折り返す両側の麺皮生地が押し潰れるように可塑変形して密着し、もって折り目付近に折りを戻す弾性歪みが残りにくくなる。従って、第3ステーションS3での側片部1cの巻き付けや、第4ステーションS4での側片部1dの巻き込みにおいて、先の折り付けによる折り目部分が膨らむように戻り変形して支障を生じることはなく、安定した成形性を確保できる。また、成形後の包皮形成物3においても、同様の戻り変形による形崩れを生じる懸念がなく、均一な成形形態が得られる。
【0027】
麺皮1の生地材料としては、特に制約はなく、小麦粉、米粉、コーンスターチ、これらの混合物等の穀物粉を使用できる。また、これらの生地材料には、澱粉を始めとする多糖類、油脂、食物繊維、香料、栄養剤、調味料、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。また、麺皮軟化用の液剤としては、上記実施形態では水を用いているが、麺皮1の表面に付着することで生地が吸収して軟化し得るものであればよく、生地材料の種類に応じて油類やアルコール等の水以外の液剤も採用可能である。だだし、水の場合は、得られる包皮食品の味や食感等の変化を生じにくいという利点がある。
【0028】
包皮食品の具材としては、例示した剥き海老2に限らず、一般的な春巻用具材を始めとして、極めて多種多様な食物類を特に制約なく使用できる。しかして、包皮食品における麺皮の包み込み形態は具材の種類と形状及びサイズによって自ずと異なり、また同様の具材でも様々な包み方があるが、本発明の自動成形方法は特に麺皮の折り付け操作を含む場合に適用される。この折り付けとは、折り目の少なくとも近傍で具材を挟まずに麺皮同士が重なる形を意味する。
【0029】
なお、本発明では、複数の折り付け工程を含む場合に、麺皮軟化用の液剤を全ての折り目に対応して付着するのではなく、特に成形手順や折り重なり状態から折りの戻り変形による悪影響が大きい折り目のみに該液剤を付着するようにしてもよい。例えば、前記実施形態の海老春巻の成形では、最終的に多重の折り重なり状態となる幅広の頭側折り返し部1bの折り目に対して液剤(水)を付着し、麺皮1のコーナー部1aの折り目については液剤の付着を省略するようにしてもよい。
【0030】
麺皮軟化用の液剤の付着操作は、折り付け工程よりも前工程で行えばよいが、実施形態における前処理ステーションS0のように具材を乗せる前の麺皮に対して行うようにすれは、具材の包み込み過程の途中に液剤付着工程を挟むことによる煩雑化を回避でき、それだけ装置構成上の制約が少なくなる。また、該液剤の付着には様々な方式を採用できるが、実施形態のように昇降する液含浸性パッドを利用する方式によれば、該液剤を麺皮表面に所要パターンで確実に付着させることができる。
【0031】
前記実施形態では前処理ステーションS0と成形テーブル12上での第1〜第4ステーションS1〜S4を順次経て海老春巻の包皮成形物3を得るようにしているが、本発明を適用する自動成形方法は、麺皮上に具材を乗せて機械的に該麺皮で具材を包み込む方法であればよい。従って、該自動成形における工程段階及び単位操作は包皮食品の種類に応じて種々異なるものとなり、また各単位操作に要する装置仕様も様々に設定できる。
【符号の説明】
【0032】
1 麺皮
1a コーナー部(折り付け部分)
1b 頭側折り返し部(折り付け部分)
10 麺帯
2 剥き海老(具材)
3 包皮成形物
5 液剤付着装置
50A 液含浸性パッド
50B 液含浸性パッド
9a 浸潤部
9b 浸潤部
S0 前処理ステーション(液剤付着工程)
S1 第1ステーション(折り付け工程)
S2 第2ステーション(具材を載せる工程)
S3 第3ステーション(折り付け工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺皮上に具材を乗せ、機械的に該麺皮で具材を包み込むことによって包皮食品を自動的に成形する方法であって、
麺皮の折り付け工程を含み、この折り付け工程よりも前工程において、展開状態の麺皮の表面に、折り付け工程での折り目に沿って麺皮軟化用の液剤を付着させることを特徴とする包皮食品の自動成形方法。
【請求項2】
具材を乗せる前の麺皮に対して前記液剤を付着する請求項1に記載の包皮食品の自動成形方法。
【請求項3】
前記液剤として水を用いる請求項1又は2に記載の包皮食品の自動成形方法。
【請求項4】
前記液剤の付着は、昇降可能な液含浸性パッドに該液剤を含浸させ、該液含浸性パッドを下降させて麺皮表面に接触させることによって行う請求項1〜3の何れかに記載の包皮食品の自動成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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