説明

包装シート

【課題】本発明の課題は、服用者が薬剤等を手に触れることなく直接的に経口することができる包装シートを提供することにある。
【解決手段】本発明に係る包装シート100,100A,100B,100C,100Dは、本体シート110および密着シート120を備える。本体シートは、凹部111,111c,111dを有する。密着シート120は、凹部の開口を覆うように本体シートに密着する。そして、この包装シートでは、凹部の少なくとも底壁を除去して形成した開口を介して密着シートに、密着シートに直交する方向の荷重を加えた場合において、0.098N以上9.8N以下の範囲内の荷重で密着シートが本体シートから剥離して外縁に開口が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬剤や食品などを包装するための包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、薬剤や食品などの包装シートとして「プレス・スルー・パックシート(以下「PTPシート」と略する)」が知られている。従前のPTPシートは、主に、凹部(薬剤や食品などの被包装物を収容する部分)を有する本体シートと、その凹部の開口を覆うように本体シートに密着するアルミニウム箔とから構成されている。そして、服用者等は、指で凹部の底壁を押し、被包装物をアルミニウム箔に向かって押し付けてアルミニウム箔を破ることによりPTPシートから被包装物を取り出す。
【0003】
しかし、このようなPTPシートでは、通常、25N程度の荷重がかからないと、アルミニウム箔が破れず、最近、老齢者が薬剤等を取り出すことができないという不具合が生じている。
【0004】
そこで、このような問題を解消するために、近年、アルミニウム箔をイージーピールシートに置き換えた包装シートが提案されている(例えば、特開2007−217014号公報や、特開2009−262935号公報等参照)。このような包装シートは、上述のPTPシートよりも被包装物の取り出しが行いやすいように設計されている。したがって、このような包装シートには、老齢者が薬剤を取り出すことができないという不具合が生じることは想像し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217014号公報
【特許文献2】特開2009−262935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、同包装シートも、PTPシートと同様に、服用者が薬剤を一旦手のひらの上に置いた後に服用することを前提としており、必ずしも衛生的とは言えない。
本発明の課題は、服用者が薬剤等を手に触れることなく直接的に経口することができる包装シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
本発明の一局面に係る包装シートは、本体シートおよび密着シートを備える。本体シートは、凹部を有する。なお、この凹部には、薬剤や食品等の被包装物が充填される。密着シートは、凹部の開口を覆うように本体シートに密着する。なお、密着シートは、樹脂製のシートである。そして、この包装シートでは、凹部の少なくとも底壁を除去して形成した開口を介して密着シートに、密着シートに直交する方向の荷重(以下「直交荷重」という)を加えた場合において、0.098N以上9.8N以下の範囲内の荷重で密着シートが本体シートから剥離して外縁に開口が形成される。
【0008】
この包装シートでは、凹部の底壁および薬剤等を介して密着シートを軽微な力(0.098N〜9.8N)で押すことにより、凹部開口近傍の密着シート部分が剥離して外縁に開口が形成される。このため、この包装シートを利用すれば、服用者等は、外縁に開口を形成した後、その開口を介して薬剤等を口内に送り込むことができる。したがって、この包装シートを利用すれば、服用者等は、薬剤等を手に触れることなく直接的に経口することができる。
【0009】
また、本願発明者の鋭意検討の結果、上記範囲内の直交荷重で密着シートが本体シートから剥離するように包装シートを設計すると、包装シート製造時や、包装シート落下時、包装シート搬送時にかかる荷重により密着シートが本体シートから剥がれ落ちることを防止することができると共に、薬剤等を取り出しやすくすることができ、また、密着シートが柔らかい場合(密着シートにかかる荷重が分散しやすい場合)や、密着シートが薄い場合(密着シートが伸びやすい場合)であっても密着シートを本体シートから剥離しやすい状態に維持することができることが明らかとなった。
【0010】
このため、この包装シートは、製造時や、落下時、搬送時にかかる荷重により密着シートが本体シートから剥がれ落ちることを防止することができると共に、薬剤等を取り出しやすくすることができ、また、密着シートが柔らかい場合や、密着シートが薄い場合であっても密着シートを剥離しやすい状態に維持することができる。
【0011】
また、過去に、廃棄問題を解決するためにアルミニウム箔を樹脂製のシートに置き換えることが試みられたが、樹脂製のシートは、薬剤等を押し出す際にアルミニウム箔よりも高い押出し力が必要とされ、アルミニウム箔のような押出し性が得られなかった。しかし、この包装シートでは、密着シートを突き破る必要がない。このため、この包装シートであれば、廃棄問題も解決することができる。さらに、この包装シートであれば、従来の包装シート製造ラインをほぼそのまま利用して製造することができ、また、この包装シートであれば、使用者は現行のPTPシートと同様の取り出しイメージで薬剤等を取り出すことができる。このため、この包装シートは、消費者へのスムーズな普及が期待される(従来のイージーピールタイプの包装シートは、薬剤等の取り出しイメージが従前のPTPシートとは全く相違するため、消費者へ普及しにくいと感じられる。)。
【0012】
(2)
本発明の一局面に係る包装シートにおいて、本体シートは、凹部を複数有するのが好ましい。かかる場合、密着シートには、平面視において、凹部それぞれを孤立させるように、スリット及び難剥離領域の少なくとも一方が形成されているのが好ましい。難剥離領域は、剥離領域よりも剥離強度が高く、荷重付加時に凝集破壊されるほど剥離強度が高いのが好ましい。
【0013】
このため、この包装シートでは、服用者等が一つの凹部から薬剤等を取り出すときに、他の凹部内の薬剤等を開封してしまうことを防止することができる。
【0014】
(3)
本発明の一局面に係る包装シートにおいて、凹部は、第1傾斜壁を有する。第1傾斜壁は、第1外縁に向かうに従って本体シート側に向かって傾斜するのが好ましい。なお、この第1傾斜壁は、湾曲していてもかまわない。
【0015】
このため、この包装シートでは、服用者が第1傾斜壁を押すと、凹部の第1外縁側の反対側の壁面に薬剤等を押し付けようとする荷重成分(以下「水平荷重成分」という)と、薬剤等を密着シートに押し付けようとする荷重成分(密着シートに直交する方向に沿った荷重成分)とが生じる。したがって、この包装シートを利用すれば、服用者等は、密着シートを本体シートから剥離しつつ、薬剤等を外縁に導くことができる。よって、この包装シートを利用すれば、服用者等は、より容易に包装シートから薬剤等を取り出すことができる。
【0016】
(4)
上記(3)に係る包装シートにおいて、凹部は、第2傾斜壁を有するのが好ましい。第2傾斜壁は、第1外縁の反対側の外縁に向かうに従って密着シート側に向かって傾斜する。なお、この第2傾斜壁は、湾曲していてもかまわない。
【0017】
このため、この包装シートでは、服用者が第1傾斜壁を押して薬剤等を第2傾斜壁に押し付けたとき、水平荷重成分から、薬剤等を介して第2傾斜壁を押し上げようとする荷重成分と、密着シートを押し下げようとする荷重成分とがさらに生じる。したがって、この包装シートを利用すれば、服用者等は、さらに容易に包装シートから薬剤等を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るプレス・スルー・パックシートの平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】剥離荷重測定装置を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るプレス・スルー・パックシートから被包装物を取り出す方法を説明する図である。
【図5】変形例(A)に係るプレス・スルー・パックシートの平面図である。
【図6】変形例(B)に係るプレス・スルー・パックシートの平面図である。
【図7】変形例(C)に係るプレス・スルー・パックシートの平面図である。
【図8】変形例(C)に係るプレス・スルー・パックシートの凹部の斜視図である。
【図9】変形例(D)に係るプレス・スルー・パックシートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係るプレス・スルー・パックシート(以下「PTPシート」という)100は、図1および図2に示されるように、主に、本体シート110および密着シート120から構成される。以下、本体シート110及び密着シート120について詳述する。
【0020】
<PTPシートの構成要素の詳細>
【0021】
(1)本体シート
本体シート110は、図1および図2に示されるように、主に、基層110aおよび酸素バリア層110bから構成される。
【0022】
基層110aは、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂から形成され得る。なお、この基層110aの厚みは、特に限定されるものではないが、100〜800μmである。
【0023】
なお、基層110aを形成する樹脂には、本発明の趣旨が著しく損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料、顔料、難然剤、可塑剤、結晶造核剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0024】
酸素バリア層110bは、大気中の酸素が収容空間SPに浸入するのを防止する役目を担う層であって、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などの樹脂層であってもよいし、有機珪素化合物、金属または金属酸化物の蒸着膜層であってもよい。なお、酸素バリア層110bが前者である場合、その厚みは、特に限定されるものではないが、50μm〜100μmであり、酸素バリア層110bが後者である場合、その厚みは、特に限定されるものではないが、0.5nm〜400nmである。
【0025】
なお、本体シート110の厚みは、特に限定されるものではないが、100〜800μmであるのが好ましく、150〜400μmであるのがより好ましい。本体シート110の厚みが下限値より下回らないことで防湿性や耐カール性が良好となり、上限値より上回らないことで開封性や成形性が良好となるためである。
【0026】
そして、この本体シート110には、図1および図2に示されるように、凹部111、平板部112、横スリット113および縦スリット114が形成されている。
【0027】
凹部111は、医薬品等の包装対象物Tを収容するために形成される凹み部分である。そして、この凹部111には、略円筒形の収容空間SPが形成されている。
【0028】
横スリット113は、図1及び図2に示されるように、ミシン目状のスリットであって、本体シート110の幅方向W(図1参照)に沿って平板部112に等間隔に5本形成されており、外力が加えられると割れるように設計されている。また、この横スリット113は、密着シート120の剥離時において、意図しない凹部111に収容される被包装物Tの開封を防止する役目も担っている。
【0029】
縦スリット114は、図1に示されるように、ミシン目状のスリットであって、本体シート110の幅方向W(図1参照)中央部の平板部112に、本体シートの長さ方向L(図1参照)に沿って1本形成されており、外力が加えると割れるように設計されている。また、この縦スリット114は、密着シート120の剥離時において意図しない凹部111に収容される被包装物Tの開封を防止する役目も担っている。
【0030】
(2)密着シート
密着シート120は、図2に示されるように、主に、密着層120aおよび酸素バリア層110bから構成される。
【0031】
密着層120aは、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これらの金属架橋物、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の樹脂から形成され得る。
【0032】
なお、密着層120aを形成する樹脂には、本発明の趣旨が著しく損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料、顔料、難然剤、可塑剤、結晶造核剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0033】
酸素バリア層120bは、本体シート110の酸素バリア層110bと同様に、大気中の酸素が収容空間SPに浸入するのを防止する役目を担う層であって、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂やエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などの樹脂層であってもよいし、有機珪素化合物、金属または金属酸化物の蒸着膜層であってもよい。なお、酸素バリア層110bが前者である場合、その厚みは、特に限定されるものではないが、50μm〜100μmであり、酸素バリア層110bが後者である場合、その厚みは、特に限定されるものではないが、0.5nm〜400nmである。
【0034】
そして、密着シート120は、凹部111の開口を覆うように本体シート110に剥離容易に密着している。なお、このとき、密着層120aが本体シート110に密接している。なお、この密着シート120の厚みは、特に限定されるものではないが、10〜1000μmであるのが好ましく、20〜500μmであるのがより好ましい。密着シート120の厚みが下限値より下回らないことで開封時の密着シート120の破断や伸びが抑制されると共に開封性が良好となり、上限値より上回らないことで密着シート120の剛性が適度な状態となり開封性が良好になるためである。
【0035】
また、この密着シート120は、図3に示されるように凹部111の少なくとも底壁を除去して形成した開口OPを介して平面部112に直交する方向の荷重が加えられた場合において、0.098N以上9.8N以下の荷重で本体シート110から剥離して外縁に開口が形成されるように設計されている。なお、この設計荷重は、0.196N以上7.84N以下の範囲であることが好ましく、0.294N以上4.9N以下の範囲であるのがより好ましい。
【0036】
なお、上記の荷重測定は、図3に示されるような剥離荷重測定装置200を用いて行われる。この剥離荷重測定装置200は、図3に示されるように、主に、支持部材220、ピストン230およびロードセル(図示せず)から構成されている。測定サンプルであるPTPシート100は、支持部材220によって支持される。なお、PTPシート100は、測定領域外において支持部材220により上下方向に沿って挟持されてもよいし(かかる場合、図示しない下部支持部材が必要となる)、本体シート110の上面が支持部材220の下面に接着されることにより支持されてもよい。そして、ピストン230が一定速度で下降し、ロードセルがピストン230にかかる荷重を計測する。なお、本実施の形態では、外縁に開口が形成されるまでの荷重が連続的に計測される。また、本実施の形態において、ピストン230の下降速度は10mm/分である。ピストン230は、直径5mmの円柱体である。
【0037】
また、上述のような設計荷重を実現する手法としては、例えば、密着層をブレンド樹脂で形成してそのブレンド比を適宜調節する手法や、包装シート製造時において本体シート110への密着シート120の押付圧力を調節する手法、包装シート製造時において本体シート110および密着シート120の少なくとも一方の熱融着温度を調節する手法等が挙げられる。
【0038】
<PTPシートの製造方法>
【0039】
本実施の形態に係るPTPシート100は、公知のPTPシート製造方法を利用して製造することができる。先ず、積層シートを加熱プレスすることにより積層シートに凹部111を形成して本体シート110を製造する。なお、この凹部111は、周知のPTP成形装置を利用することにより形成可能である。次いで、本体シート110の凹部111に包装対象物Tを投入した後、密着シート120を本体シート110に熱融着させ、被包装物Tを凹部111に密閉する。最後に、スリッタ刻印装置により横スリット部113および縦スリット部114を形成する。なお、この一連の作業は、連続的に実施することができる。
【0040】
基層110aや密着層120aを形成する樹脂に上述の添加剤を添加する場合は、公知の方法、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のバッチ式混練機や、単軸押出機、2軸押出機、カレンダーロール等の連続式混練機を使用する方法を利用することができる。なお、これらの方法の中でも、真空脱気装置を備えた2軸混練機を利用するのが好ましい。
【0041】
また、上述の積層シートや密着シート120は、上述の樹脂をT−ダイ押出し成形、インフレーション押出成形、カレンダー成形などの常法により製造することができる。
【0042】
<PTPシートから被包装物を取り出す方法>
本実施の形態に係るPTPシート100から被包装物Tを取り出すには、凹部111の底壁を押し、被包装物Tを介して密着シート120に荷重をかけ、密着シート120を本体シート110から剥離させて外縁に開口を形成させる。そして、服用者等は、その形成された開口まで被包装物Tを導き、その開口から被包装物Tを取り出す(図4の破線矢印参照)。
【0043】
なお、図4では被包装物Tを幅方向Wの外側に導き出しているが、PTPシート100が横スリット113や縦スリット114で分割されている場合には、自由な方向に被包装物Tを導き出すことができる。
【0044】
<本発明の実施の形態に係るPTPシートの特徴>
本発明の実施の形態に係るPTPシート100では、凹部111の底壁および被包装物Tを介して密着シート120を軽微な力(0.098N〜9.8N)で押すことにより、密着シート120が本体シート110から剥離して外縁に開口が形成される。そして、その被包装物Tの服用者等がその形成された開口まで被包装物Tを導き出すことができる。このため、このPTPシート100を利用すれば、被包装物Tの服用者等は、その被包装物Tを手に触れることなく直接的に経口することができる。
【0045】
<変形例>
【0046】
(A)
先の実施の形態では図1に示されるようなPTPシート100が採用されたが、図5に示されるようなPTPシート100Aが採用されてもかまわない。このPTPシート100Aでは、縦スリット114ではなく難剥離領域114aが形成されている。つまり、このPTPシート100Aでは、密着シート120の剥離時の幅方向Wへ剥離応力の伝播が難剥離領域114aによって遮断される。このため、このPTPシート100Aでは、先の実施の形態に係るPTPシート100と同様に、密着シート120の剥離時において、意図しない凹部111に収容される被包装物Tの開封が防止される。
【0047】
なお、このようなPTPシート100Aは、3列ローラの中央ローラの温度および圧力を高める等の方法で製造することができる。
【0048】
(B)
先の実施の形態では図1に示されるようなPTPシート100が採用されたが、図6に示されるようなPTPシート100Bが採用されてもかまわない。このPTPシート100Bでは、縦スリット114ではなく難剥離領域114bが形成されている。なお、本変形例における難剥離領域114bは、変形例(A)の難剥離領域114aとは異なり、図6に示されるように、平面視において幅方向Wの中央部から凹部111の中央付近まで広がっている。つまり、このPTPシート100Bでは、凹部111の開口OPの近傍の密着シート部分のうち幅方向Wの外側部分しか剥離することができないようになっており、非包装物Tの取り出し方向が規制されている。このため、このPTPシート100Bでは、先の実施の形態に係るPTPシート100と同様に、密着シート120の剥離時において、意図しない凹部111に収容される被包装物Tの開封が防止される。
【0049】
(C)
先の実施の形態では図1に示されるようなPTPシート100が採用されたが、図7に示されるようなPTPシート100Cが採用されてもかまわない。このPTPシート100Cでは、凹部111cが図7および図8に示されるような山形形状となっている。そして、この凹部111cには、縦スリット114に向かうに従って密着シート側に向かって傾斜する第1傾斜壁SL1と、外縁に向かうに従って密着シート側に向かって傾斜する第2傾斜壁SL2とが形成されている。このため、このPTPシート100Cでは、被包装物Tの服用者等が第1傾斜壁SL1を押すと、第2傾斜壁SL2に被包装物Tを押し付けようとする荷重成分(以下「水平荷重成分」という)と、被包装物Tを密着シート120に押し付けようとする荷重成分とが生じる。そして、さらに、被包装物Tが第2傾斜壁に押し付けられると、水平荷重成分から、被包装物Tを介して第2傾斜壁SL2を押し上げようとする荷重成分と、密着シート120を押し下げようとする荷重成分とがさらに生じる。したがって、このPTPシート100Cを利用すれば、被包装物Tの服用者等は、被包装物Tの取り出しを容易に行うことができる。
【0050】
なお、PTPシート100Cが縦スリット114で分割されている場合には、先の説明と逆方向に被包装物Tを押し出してもかまわない。
【0051】
(D)
先の実施の形態では図1に示されるようなPTPシート100が採用されたが、図9に示されるようなPTPシート100Dが採用されてもかまわない。このPTPシート100Dでは、凹部111dが四角錐形状とされている。
【0052】
この変形例に係るPTPシート100Dでは、変形例(C)に係るPTPシート100Cの作用・効果に加えて、横スリット113および縦スリット114で分割された場合に、幅方向Wのみならず長さ方向Lにも被包装物Tを押し出すことができる効果を享受することができる。
【0053】
(E)
先の実施の形態に係るPTPシート100では横スリット113および縦スリット114が「本体シート110まで貫通するミシン目のスリット」であったが、横スリットおよび縦スリットは「密着シート120のみを貫通する線状のハーフスリット」であってもかまわない。このようなPTPシートであっても、密着シート120の剥離時において、意図しない凹部111に収容される被包装物Tの開封を防止することができる。
【0054】
(F)
先の実施の形態に係るPTPシート100では本体シート110および密着シート120に酸素バリア層110b,120bが設けられたが、酸素バリア層110b,120bは、水蒸気バリア層に置きかえられてもかまわない。なお、水蒸気バリア層は、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂から形成される。
【0055】
(G)
先の実施の形態では特に言及していなかったが、本体シート110および密着シート120にさらに水蒸気バリア層を挿入してもかまわない。なお、水蒸気バリア層は、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂から形成される。
【0056】
(H)
先の実施の形態に係るPTPシート100では密着層が密着シート120に設けられたが、密着層は本体シート110に設けられてもよい。なお、かかる場合、密着シートは、単なる酸素バリアシートとなる。
【符号の説明】
【0057】
100,100A,100B,100C,100D プレス・スルー・パックシート
110 本体シート
110a 基層
110b 酸素バリア層
111,111c,111d 凹部
112 平板部
113 横スリット
114 縦スリット
114a,114b 難剥離領域
120 密着シート
120a 密着層
120b 酸素バリア層
F 荷重方向
T 被包装物
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る包装シートは、服用者が薬剤等を手に触れることなく直接的に経口することができるとの特徴を有しており、特に衛生面に厳しい薬剤等向けの包装体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する本体シートと、
前記凹部の開口を覆うように前記本体シートに密着する密着シートと
を備え、
前記凹部の少なくとも底壁を除去して形成した開口を介して前記密着シートに、前記密着シートに直交する方向の荷重を加えた場合において、0.098N以上9.8N以下の範囲内の荷重で前記密着シートが前記本体シートから剥離して外縁に開口が形成される
包装シート。
【請求項2】
前記本体シートは、前記凹部を複数有し、
前記密着シートには、平面視において、前記凹部それぞれを孤立させるように、スリット及び難剥離領域の少なくとも一方が形成されている
請求項1に記載の包装シート。
【請求項3】
前記凹部は、第1外縁に向かうに従って密着シート側に傾斜する第1傾斜面を有する
請求項1または2に記載の包装シート。
【請求項4】
前記凹部は、前記第1外縁の反対側の外縁に向かうに従って密着シート側に傾斜する第2傾斜壁を有する
請求項3に記載の包装シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−213387(P2011−213387A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83686(P2010−83686)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】