説明

包装体及び給湯機製品

【課題】本発明は、給湯機から取り外された後に、給湯機の設置の作業性を向上させるために有効に利用することができる包装体及び給湯機製品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、給湯機を覆う包装体本体部と、前記給湯機を持ち上げるべく給湯機の底面部に宛がわれる持ち上げ部とを有し、前記持ち上げ部は、前記包装体本体部から分離可能な状態で該包装体本体部と一体的に設けられ、前記持ち上げ部は、前記給湯機の底面部に宛がった際に、該底面部から反対方向に突出する大きさに設定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体及び給湯機製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートポンプや電気ヒータ(加熱手段)を熱源とした給湯機(タンク装置)の開発が進められている。このような給湯機は、輸送時の傷つきを防止する包装体を備えている。
【0003】
給湯機は、例えば、特許文献1に示すように、包装体に包装されて運搬される。この包装体は、給湯機の設置の際に取り外されるものであり、一般的には、設置場所の手前で包装体を取り外してから、給湯機を設置場所まで移動させる。例えば、従来の給湯機の運搬方法は、図7に示すように、2人の作業者の一方が給湯機の支持脚を持ち、他方が給湯機の上部に設けられた取っ手を持ち、給湯機を横に倒した状態で運搬する。そして、取り外された包装体は、そのまま廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−149347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、給湯機は、重量物であり、また、通常の使用状態では移動させるものではないことから、移動に適した構造とはなっておらず、給湯機単体では移動させる作業が容易でないという問題がある。
【0006】
一方で、包装体は、専ら包装のみの機能を有するものであり、現状では、取り外された包装体を有効に利用できていないという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、給湯機から取り外された後に、給湯機の設置の作業性を向上させるために有効に利用することができる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、給湯機を覆う包装体本体部と、前記給湯機を持ち上げるべく給湯機の底面部に宛がわれる持ち上げ部とを有し、前記持ち上げ部は、前記包装体本体部から分離可能な状態で該包装体本体部と一体的に設けられ、前記持ち上げ部は、前記給湯機の底面部に宛がった際に、該底面部から反対方向に突出する大きさに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給湯機から取り外された後に、給湯機の設置の作業性を向上させるために包装体を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】給湯機包装体の構成を示す図である。
【図2】包装体本体部及び持ち上げ部の構成を示す図である。
【図3】持ち上げ部を給湯機の底部に宛がう例を示す図である。
【図4】給湯機を支える支持脚の構成を示す図である。
【図5】包装体の持ち上げ部を示す図である。
【図6】包装体の持ち上げ部を用いた給湯機の運搬作業を示す図である。
【図7】従来の給湯機の運搬作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る給湯機の包装体は、図1に示すように、固定台40に固定された状態の給湯機10を包装するものである。なお、給湯機を梱包した時の製品寸法は、例えば幅70cm×奥行き80cm×高さ200cm程度となるのが一般的である。
【0013】
ここで、給湯機10は、図1や図3に示されるように、戸建ての狭い通路にも設置ができるように、一般的に幅・奥行き方向に比べ、高さ方向に長い直方体をしている。よって、図3によく示されるとおり、給湯機10の底面部11は、長方形の形をしている。また、給湯機10は、底面部11に支持脚が設けられる。具体的には、給湯機10には、前記底面部11の正面側幅方向中央部に正面側支持脚12が一つ設けられ、背面側幅方向中央部を対称に、背面側支持脚13が両側に二つ設けられることで給湯機10の重量を支える構造となっている。
【0014】
<包装体の構成>
また、図1に示されるように、包装体は、給湯機を覆う包装体本体部1と、給湯機10を持ち上げるべく給湯機10の底面部11(図3参照)に宛がわれる持ち上げ部50とを有する。また、持ち上げ部50は、包装体本体部1から分離可能な状態でこの包装体本体部1と一体的に設けられる。持ち上げ部50は、給湯機10の底面部11に宛がった際に、この底面部11から反対方向に突出する大きさに設定される。
【0015】
<包装体本体部>
包装体本体部1は、図1及び図2に示されるように、給湯機10の鉛直方向に沿う鉛直面を覆う鉛直面部30と、給湯機10の上面を覆う上面部20とで構成される。また、上述したように、前記包装体本体部1は容易に分離可能な持ち上げ部50を有し、給湯機製品開梱後の運搬作業に持ち上げ部50を使用することで運搬作業性を向上することができる。
【0016】
具体的には、持ち上げ部50は、鉛直面部30に設けられる。より具体的には、包装体本体部1の鉛直面部30は、直方体形状を有する給湯機10の正面と対向するように配置される正面部31と、給湯機10の背面と対向するように配置される背面部32と、正面部31及び背面部32と隣り合う側面部33とで構成され、持ち上げ部50は、鉛直面部30の側面部33に設けられる。
【0017】
また、包装体には、包装体本体部1と持ち上げ部50とを分離するための分離手段が設けられている。分離手段は、具体的には、ミシン目51によって構成される。これにより、包装体開梱後には、包装体本体部1から容易に分離可能な構造となっている。なお、分離手段は、ミシン目51以外にも、外力を加えると力が集中的に作用するように構成されたもの(例えば、溝,ハーフカット等)であっても良い。
【0018】
<支持脚>
正面側支持脚12及び背面側支持脚13は、給湯機10を支える十分な強度を有する必要がある。正面側支持脚12及び背面側支持脚13の構造は、図4に示すように、底面部11と支持脚を接続する底面接続部14,給湯機10の重量を支える支持部15,支持脚を地面に固定する地面接続部16に分かれている。なお、図4では、上から順に、上面図,側面図,底面図が示される。
【0019】
<持ち上げ部>
持ち上げ部50は、給湯機10の底面部11の中央部を間にして対向するように位置する底面部11の一端縁部17と他端縁部18との間隔よりも長い寸法に設定される。従って、持ち上げ部50を給湯機10の正面側から背面側に向かって底面部11に宛がい、給湯機10を持ち上げることができる。
【0020】
また、持ち上げ部50のうち給湯機10の底面部11に宛がった際に一端縁部17及び他端縁部18から突出する部分には、把持部が設けられる。これにより、持ち上げ部50を給湯機10の底部に宛がった際に作業者の作業性が向上する。具体的には、持ち上げ部50には、前記把持部として、作業者がつかむための正面側取っ手部60,背面側取っ手部70が各2つづつ設けられている。持ち上げ部50の幅方向の大きさは、底面部11の両端に設けられた背面側支持脚13との接触を避けるため、背面側支持脚の内側に収まるようにし、奥行き方向の大きさは、正面側取っ手部60,背面側取っ手部70が給湯機10の正面側及び背面側から出るための十分な長さを有する。
【0021】
また、持ち上げ部50には、給湯機10の支持脚を逃げる逃げ部52が設けられる。これにより、正面側支持脚12及び背面側支持脚13と干渉することなく給湯機10を持ち上げることができる。持ち上げ部50の形状を具体的に説明すると、図5に示すように、正面側支持脚12との接触を避けるために逃げ部52と、正面側支持脚12と同じ間隔をおいて正面側取っ手部60まで伸びる突出部53を有している。例えば、正面側支持脚12及び背面側支持脚の幅寸法は、7cmであり、正面側支持脚12の幅寸法に合わせ、逃げ部52の幅寸法は7cmとなる。
【0022】
例えば、底面部11の両端に設けられた背面側支持脚13は50cm間隔で設けられており、これに合わせ、持ち上げ部50の幅は50cmとなる。
【0023】
さらに、底面部11の奥行きが60cmとすると、底面部11と持ち上げ部50が接触する長さは、60cmとなり、正面側取っ手部60,背面側取っ手部70が作用するための十分な長さを確保するため、持ち上げ部50の奥行きは120cm必要となる。
【0024】
そのとき、持ち上げ部50が底面部11の正面側及び背面側より突出する長さは、それぞれ30cmとなり、逃げ部52の奥行きは、30cmと正面側支持脚12の長さを加えた長さとなる。
【0025】
<持ち上げ部の構造・材質>
持ち上げ部50は、給湯機10を支える強度を有した構造となっている。具体的には、包装体に用いる材質は、具体的にはダンボール80である。ダンボール80の構造は、図5に示すとおり、表ライナ81,B段中しん82,中ライナ83,A段中しん84及び裏ライナ85で構成される。ダンボール80は、これら表ライナ81,B段中しん82,中ライナ83,A段中しん84及び裏ライナ85の各構造及び紙の繊維方向で全体の引張り強度が決まる。
【0026】
包装体本体部1から分離された持ち上げ部50は、Y方向に引張り力がかかる。ライナは、X方向及びY方向に強度を発揮するが、中しんはY方向の方がX方向よりも強度を発揮する。よって、ダンボールの段目方向(中しんの山又は谷の稜線に沿う方向)は、Y方向に合わせることで強い引張り力にも対応できる構造となる。
【0027】
また、正面側取っ手部60及び背面側取っ手部70は局所的に力がかかる部位である。正面側取っ手部60及び背面側取っ手部70より紙の繊維の方向に沿って起こる局所的な亀裂を防止するため、紙の繊維方向はX方向にとる。
【0028】
<作業形態>
まず、上記構成からなる包装体によって給湯機を包装して完成された給湯機製品は、トラック等によって給湯機の設置場所近くまで運搬される。次に、給湯機から包装体を取り外すことにより、この給湯機製品を給湯機と包装体とに分解する。そして、ミシン目51に沿って包装体本体部1と持ち上げ部50とを分離する。
【0029】
次に、図6に示すように、分離された持ち上げ部50は、給湯機10の下面部に宛がい、正面側取っ手部60は、給湯機10の正面より、背面側取っ手部70は給湯機10の背面から出るようになっている。作業者は給湯機10の正面側と背面側に別れ、各取っ手部を持って給湯機10の運搬をすることにより、給湯機10を横に倒さずに運搬することが可能になる。その結果、従来運搬することが困難だった戸建の狭い通路の移動が容易になると同時に、給湯機10に対して局所的大きな力が加わることがなくなり、給湯機の不良を低減することができる。一方で、取り外された包装体を有効に利用することができる。
【0030】
上記構成からなる包装体によれば、給湯機から取り外された後に、給湯機の設置の作業性を向上させるために有効に利用することができる。
【0031】
また、上記構成からなる包装体を用いれば、給湯機を横にしないでも運搬することができ、狭い通路であっても給湯機を搬入することができる。また、給湯機の取っ手部が上部にネジ止めなどで固定されている場合、給湯機を横にすると大きな力が加わって、給湯機の上部の鉄板が変形するおそれがあるが、上記構成からなる包装体を用いれば、そのような状況を防ぐことができる。
【0032】
なお、本発明に係る包装体及び給湯機製品は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態においては、持ち上げ部は、鉛直面部に設けられるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、持ち上げ部が給湯機の上面を覆う包装体本体部の上面部に設けられるものであってもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、包装体本体部の鉛直面部と上面部とが別体として設けられるものであったが、これに限定されるものではなく、鉛直面部と上面部とが一体的に設けられるものであってもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、給湯機が直方体形状を有し、包装体本体部は、直方体形状の給湯機を包装するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、給湯機が例えば円筒形状を有し、包装体本体部は、円筒形状の給湯機を包装するものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 包装体本体部
10 給湯機
11 底面部
12 正面側支持脚
13 背面側支持脚
14 底面接続部
15 支持部
16 地面接続部
20 上面部
30 鉛直面部
40 固定台
50 持ち上げ部
51 ミシン目
52 逃げ部
53 突出部
60 正面側取っ手部
70 背面側取っ手部
80 ダンボール
81 表ライナ
82 B段中しん
83 中ライナ
84 A段中しん
85 裏ライナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯機を覆う包装体本体部と、前記給湯機を持ち上げるべく給湯機の底面部に宛がわれる持ち上げ部とを有し、
前記持ち上げ部は、前記包装体本体部から分離可能な状態で該包装体本体部と一体的に設けられ、
前記持ち上げ部は、前記給湯機の底面部に宛がった際に、該底面部から反対方向に突出する大きさに設定されることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記持ち上げ部は、前記給湯機の底面部の中央部を間にして対向するように位置する底面部の一端縁部と他端縁部との間隔よりも長い寸法に設定されることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記持ち上げ部のうち前記給湯機の底面部に宛がった際に前記一端縁部及び他端縁部から突出する部分には、把持部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記包装体本体部は、前記給湯機の鉛直方向に沿う鉛直面を覆う鉛直面部と、前記給湯機の上面を覆う上面部とを備えて構成され、
前記持ち上げ部は、前記鉛直面部に設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記包装体本体部は、直方体形状の給湯機を包装するものであり、
前記包装体本体部は、直方体形状を有する給湯機の正面と対向するように配置される正面部と、前記給湯機の背面と対向するように配置される背面部と、前記正面部及び背面部と隣り合う側面部とを有し、
前記持ち上げ部は、前記側面部に設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体本体部は、底面部に支持脚が設けられる給湯機を包装するものであり、
前記持ち上げ部には、前記給湯機の支持脚を逃げる逃げ部が設けられることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の包装体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の包装体によって給湯機を包装して完成された給湯機製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166828(P2012−166828A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30356(P2011−30356)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】