包装体
【課題】フィルム材を重ね合わせて形成した包装体に関し、容易に開封できるようにする。
【解決手段】重ね合わされたフィルム材2,3の周縁同士を密着された密着部4,5,6の内側に収容部9が形成され、前記密着部4,5,6には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材2,3同士が剥離されることにより開封される包装体1Aにつき、その周縁の一部に、前記密着部6の外側に前記フィルム材2,3同士が密着されずに相互に分離した開封開始部10を設ける。
【解決手段】重ね合わされたフィルム材2,3の周縁同士を密着された密着部4,5,6の内側に収容部9が形成され、前記密着部4,5,6には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材2,3同士が剥離されることにより開封される包装体1Aにつき、その周縁の一部に、前記密着部6の外側に前記フィルム材2,3同士が密着されずに相互に分離した開封開始部10を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わされたフィルム材を相互に剥離させて開封する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部材を重ね合わせ、その周縁同士を密着させて密着部を形成し、この密着部の内側を物品の収納部として構成した包装体がある。この包装体は、密着された部材を相互に分離することで開封する。即ち、この包装体では、密着部に易剥離処理が施されており、重ね合わされた部材を相互に分離すれば密着部が剥離されるように構成されている。
【0003】
その代表例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された包装体は、開口部の形成された容器と、この容器の開口部を密閉する蓋とから構成されている。開口部の周縁には外側方へ張り出すフランジが形成されており、蓋は、その周縁がフランジに密着される。そして、両者を密着させる手段として、一定の力で両者を引き離せば蓋が容器から剥離する、易剥離処理を施している。
【0004】
また、フィルム材を重ね合わせ、その周縁同士を密着させて密着部を形成し、この密着部の内側を物品の収納部として構成する包装体も従来から知られている。この包装体を開封する場合、一般には包装体を切り裂いて開封していた。
【0005】
【特許文献1】特開平6−48468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、内部に収容される物品の大きさに対応させて包装体の大きさ自体をも小さくすると、開封しずらくなる。特に、手の大きな人が開封する場合や、濡れた手で開封する場合に開封しずらい。
【0007】
他方、包装体を切り裂いて開封する場合には、包装体の内部に収納された物品も同時に切り裂いてしまい破損させる恐れもあった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、フィルム材を重ね合わせて形成した包装体に関し、内容物を破損させることなく、しかも、容易に開封することができる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記の課題を解決するために、重ね合わされたフィルム材の周縁同士が密着されてなる密着部を有し、この密着部の内側が物品を収容させる収容部として形成され、前記密着部には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材同士が剥離されることにより開封される包装体であって、この包装体の周縁の一部には、前記フィルム材が相互に独立した状態で前記密着部の外側に張り出してなる開封開始部が設けられている包装体を採用した。
【0010】
このような包装体は、2枚の別個のフィルム材を相互に重ね合わせ、これらフィルム材の周縁に前記密着部を形成してもよいし、1枚のフィルム材をその中央部で折り畳んで重ね合わせ、折り畳みにより形成される折り線の縁部以外の周縁部に前記密着部を形成し、前記開封開始部を前記折り線と対辺をなす部分に設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開封の取りかかりとなる開封開始部を設けることによって、重ね合わされたフィルム材を両手でそれぞれ個別に指で摘み易くすることができる。これによりフィルム材の分離を容易に行えるようにしている。
【0012】
また、開封を容易に行えることに伴い、密着部の剥離強度を大きくして、密閉性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる包装体1Aを示している。
【0015】
この包装体1Aは、錠剤、コンタクトレンズ、避妊具等の小さな固体物品、シャンプー、ゼリー状又は液状の流体物品、並びに薬品や調味料等の粉体物品を収容するものである。
【0016】
包装体1Aは、矩形状の2枚のフィルム材2,3を重ね合わされて構成されたものである。この包装体1Aは、包装体1Aの底縁部、両側縁部及び上縁部よりやや内方の位置にて、両フィルム材2,3同士が一定の幅で密着されてなる密着部4,5,6を有し、この密着部4,5,6の内側が、物品Mを収容する収容部9として形成されている。
【0017】
また、包装体1Aの4辺の内、その一部をなす上縁には、包装体1Aを開封させるための開封開始部10が設けられている。この開封開始部10は、包装体1Aを構成しているフィルム材2,3の一部であり、密着部6より包装体1Aの外側に張り出させて構成したものである。この包装体1Aは、両手で開封開始部10を構成するフィルム材2,3をそれぞれ摘み、この開封開始部10からフィルム材2,3相互に引き離して密着部4,5,6を剥離させることで開封させる。このため、開封開始部10では、フィルム材2,3は密着されることなく相互に独立している。
【0018】
このように、この包装体1Aではフィルム材2,3を分離させて開封するため、密着部4,5,6は、易剥離処理が施されている。なお、易剥離処理は、フィルム材2,3同士が密着状態にあるときには、包装体1Aの密閉性を確保でき、しかも容易にフィルム材2,3同士を剥離させることができるものであれば、その手法に特に限定はなく、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプをも採用することができる。
【0019】
なお、従来から知られている包装体では、重ね合わされるフィルム材のうち一方にのみ易剥離処理がなされるが、この包装体1Aでは、かかる易剥離処理が重ね合わされるフィルム材2,3のいずれにもなされている。但し、一方のフィルム材のみに易剥離処理を施すことを妨げるものではない。なお、このようにして、重ね合わされるフィルム材の双方に易剥離処理を施すことは、以下のいずれの実施形態にかかる包装体についても同様である。
【0020】
凝集剥離タイプとは、図4に示すように、シール層7自体が破壊されて分離するタイプであり、双方のフィルム材2,3にシール材がそれぞれ残る。層間剥離タイプとは、図5に示すように、共押し出しで積層フィルム(2,3)を形成し、サポート層8とシール層7の接着強度を低くし、フィルム材2,3が分離される時に、サポート層8とシール層7とが分離されるものである。そして、界面剥離タイプとは、図6に示すように、シール層7全体が一方のフィルム材2にのみ付着され、他方のフィルム材3から分離されるタイプである。かかる界面剥離タイプとしては、EVAなどの易接着性樹脂を用いる。
【0021】
もっとも、当該包装体1Aには、以下に列挙する特性が要求される。
1.無味、無臭、無毒であること。
2.機械適性がよいこと。特に、ヒートシール性(温度・圧力・時間)の適性範囲が広い
こと。
3.トリミング、カット性に優れていること。
4.ゼリー状の物質を含めた流体用の包装体1Aに適用する場合には、夾雑物シール性が
よいこと。
5.寸法の変化が少ないこと。特に、張りが要求される場合には収縮追従性があること。
6.物品Mを包装体1Aの外部から見せたい場合には、透明性があること。
7.剥離強度が500〜2000g/15mmの範囲で、しかも、用途に応じて個別対応できるように設計できること。
8.剥離強度が加熱殺菌条件や、使用条件などの変化に対しても安定しており、しかも、経時変化しないこと。
9.耐物品性に優れていること。即ち、加熱殺菌時に、物品Mに含まれる油脂により、オレンジピール(柚肌)状にならないこと。
10.開封時にノッキング、ピール音(ピピッという剥離音)がなく、円滑に剥離させることができること。
11.剥離面に糸引きや薄い膜が残留するフェザリングが起こらず、剥離面がきれいなこと。
といった特性である。
【0022】
この他にも、印刷フィルムとのラミネートにより、カール発生、ピッチ不良といった不都合な点も避ける必要がある。さらには、包装時における、シール形状・シーラーとの相性についても考慮する必要がある。
【0023】
かかる包装体1Aに使用するフィルム材2,3としては、PET12μm/Al20μm/PET12μm/CPP60μmとなる積層フィルムを使用する。CPP60μmは、易剥離処理としてフィルム材2,3の内面に貼り合わされたフィルムである。
【0024】
以上の包装体1Aは、図7に示すようにして開封させる。
【0025】
まず、図7(a)に示すように、開封開始部10を構成しているフィルム材2,3をそれぞれ指で摘み、フィルム材2,3を相互に引き離す。フィルム材2,3を引き離すにつれ、図7(b)に示すように、密着部5,6が剥離され、物品Mが表出される。さらに、フィルム材2,3を引き離していくと、図7(c)に示すように、すべての密着部4,5,6が剥離され、フィルム材2,3が完全に分離され、開封が終了する。
【0026】
ここで、密着部の剥離強度について説明する。
【0027】
突起部11,12を設けない包装体では、開封時のことをも考慮して、約500〜1500g/15mmの強度で剥離されるように密着させなければならい。これに対し当該実施形態にかかる包装体1Aでは、突起部11,12を設けて摘み易くしたことで、開封自体の容易化を図ることに成功している。このため、約2000g/15mmで剥離される程度まで剥離強度を高めることができる。このように、剥離強度を高めることにより、高い密閉性を備えた包装体を得ることができる。
【0028】
さらに、開封し易くなったことにより、開封開始部10の根元の密着部6から張り出させる長さを短くすることができる。このため、収容部9の容量を維持しつつも、包装体1Aの長さを短くコンパクトに形成できる。そして、一つの包装体1Aを完成させるために必要な材料の量を軽減できる。
【0029】
以上、2枚のフィルム材を重ね合わせて構成した包装体を例に説明したが、図8及び図9に示すように、1枚のフィルム材を折り重ねて包装体を構成してもよい。
【0030】
この包装体1Bは、矩形状の1枚のフィルム材20をその中央部分で二つ折りして構成したものである。二つ折りの際に形成される折り線21の部分を包装体1Bの底部とし、これと対辺をなす部分を包装体1Bの上部としている。そして、この包装体1Bは、両側縁部及び上縁部よりやや内方の位置にて、フィルム材の内面同士が一定の幅で密着されてなる密着部22,23を有し、折り線21とこれら密着部22,23で囲まれた部分の内側が、物品Mを収容する収容部25として形成されている。
【0031】
そして、包装体1Bの上縁部には、包装体1Bを開封させるための開封開始部30が設けられている。この開封開始部30も、フィルム材20の一部であり、密着部23より包装体1Bの外側に張り出させて構成したものである。そして、開封開始部においては、対向するフィルム材20が密着されることなく相互に独立している。かかる態様の包装体1Bについても、密着部22,23は、上述のように易剥離処理が施されている。
【0032】
以上、包装体の外形が矩形に形成されたものを例に説明したが、包装体の外形は、矩形状に形成されたものに限定されない。
【0033】
例えば、図10に示すように、包装体1Cの底部41及び上縁をなす開封開始部45を円弧状に形成させてもよい。また、図11に示すように、包装体1Dの上部に設けられた開封開始部50をその中心が先細り状となるように形成してもよい。
【0034】
以上、フィルム材を直線的に張り出させて開封開始部を構成したものを例に説明したが、図12に示すように、反りを形成しても良い。
【0035】
この図12に示す包装体60は、これまでに説明した包装体と同様に2枚のフィルム材を重ね合わせるか、又は一枚のフィルム材を二つ折りして重ね合わせ、その周縁同士を密着せしめて構成されたものである。開封開始部70は、重ね合わされたフィルム材61,62が密着部63よりも外側に向け張り出して形成される。この開封開始部70ではフィルム材61,62同士は、密着されることなく相互に独立している。そして、この包装体60の開封開始部70では、これらフィルム材61,62の先端部71,72が相互に遠ざかるように逆方向に向けて湾曲するように反られている。
【0036】
このように開封開始部70の先端部71,72に反りが設けられることで、開封開始部70を構成するフィルム材61,62をそれぞれ摘みやすく構成することができ、包装体60を容易に開封することができる。
【0037】
また、図13は、開封開始部90の先端部91,92を相互に逆方向に向けて折り曲げた折り曲げ部が設けられたものを示している。この包装体80についても、開封開始部90は、包装体80を構成するフィルム材81,82が密着部83より外側に張り出して、相互に密着されることなく独立している。そして、開封開始部90を構成しているフィルム材81,82は、その先端部91,92が相互に逆向きに向けほぼ直角に折り曲げられている。このため、折り曲げられた先端部91,92を摘むことで、開封開始部90にてフィルム材81,82を分離させやすくなり、よって、包装袋80の開封を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包装体の斜視図。
【図2】図1に示す包装体の縦断面図。
【図3】図2のA部を拡大した拡大断面図。
【図4】凝集剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図5】層間剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図6】界面剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図7】包装体を開封させる手順を示す説明図。
【図8】フィルム材を2つ折りして形成した包装体の斜視図。
【図9】図8に示す包装体の縦断面図。
【図10】上部と底部が円弧状に形成された包装体の斜視図。
【図11】開封開始部が先細り状に形成された包装体の斜視図。
【図12】先端部に反りが設けられた開封開始部の拡大断面図。
【図13】先端部に折り曲げ部が設けられた開封開始部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B,1C,1D・・・包装体
60,80・・・・・・・・・包装体
2,3,20・・・・・・・・フィルム材
61,62,81,82・・・フィルム材
4,5,6・・・・・・・・・密着部
22,23・・・・・・・・・密着部
63,83・・・・・・・・・密着部
9,25・・・・・・・・・・収容部
10,30,45,50・・・開封開始部
70,90・・・・・・・・・開封開始部
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わされたフィルム材を相互に剥離させて開封する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部材を重ね合わせ、その周縁同士を密着させて密着部を形成し、この密着部の内側を物品の収納部として構成した包装体がある。この包装体は、密着された部材を相互に分離することで開封する。即ち、この包装体では、密着部に易剥離処理が施されており、重ね合わされた部材を相互に分離すれば密着部が剥離されるように構成されている。
【0003】
その代表例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された包装体は、開口部の形成された容器と、この容器の開口部を密閉する蓋とから構成されている。開口部の周縁には外側方へ張り出すフランジが形成されており、蓋は、その周縁がフランジに密着される。そして、両者を密着させる手段として、一定の力で両者を引き離せば蓋が容器から剥離する、易剥離処理を施している。
【0004】
また、フィルム材を重ね合わせ、その周縁同士を密着させて密着部を形成し、この密着部の内側を物品の収納部として構成する包装体も従来から知られている。この包装体を開封する場合、一般には包装体を切り裂いて開封していた。
【0005】
【特許文献1】特開平6−48468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、内部に収容される物品の大きさに対応させて包装体の大きさ自体をも小さくすると、開封しずらくなる。特に、手の大きな人が開封する場合や、濡れた手で開封する場合に開封しずらい。
【0007】
他方、包装体を切り裂いて開封する場合には、包装体の内部に収納された物品も同時に切り裂いてしまい破損させる恐れもあった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、フィルム材を重ね合わせて形成した包装体に関し、内容物を破損させることなく、しかも、容易に開封することができる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記の課題を解決するために、重ね合わされたフィルム材の周縁同士が密着されてなる密着部を有し、この密着部の内側が物品を収容させる収容部として形成され、前記密着部には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材同士が剥離されることにより開封される包装体であって、この包装体の周縁の一部には、前記フィルム材が相互に独立した状態で前記密着部の外側に張り出してなる開封開始部が設けられている包装体を採用した。
【0010】
このような包装体は、2枚の別個のフィルム材を相互に重ね合わせ、これらフィルム材の周縁に前記密着部を形成してもよいし、1枚のフィルム材をその中央部で折り畳んで重ね合わせ、折り畳みにより形成される折り線の縁部以外の周縁部に前記密着部を形成し、前記開封開始部を前記折り線と対辺をなす部分に設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開封の取りかかりとなる開封開始部を設けることによって、重ね合わされたフィルム材を両手でそれぞれ個別に指で摘み易くすることができる。これによりフィルム材の分離を容易に行えるようにしている。
【0012】
また、開封を容易に行えることに伴い、密着部の剥離強度を大きくして、密閉性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる包装体1Aを示している。
【0015】
この包装体1Aは、錠剤、コンタクトレンズ、避妊具等の小さな固体物品、シャンプー、ゼリー状又は液状の流体物品、並びに薬品や調味料等の粉体物品を収容するものである。
【0016】
包装体1Aは、矩形状の2枚のフィルム材2,3を重ね合わされて構成されたものである。この包装体1Aは、包装体1Aの底縁部、両側縁部及び上縁部よりやや内方の位置にて、両フィルム材2,3同士が一定の幅で密着されてなる密着部4,5,6を有し、この密着部4,5,6の内側が、物品Mを収容する収容部9として形成されている。
【0017】
また、包装体1Aの4辺の内、その一部をなす上縁には、包装体1Aを開封させるための開封開始部10が設けられている。この開封開始部10は、包装体1Aを構成しているフィルム材2,3の一部であり、密着部6より包装体1Aの外側に張り出させて構成したものである。この包装体1Aは、両手で開封開始部10を構成するフィルム材2,3をそれぞれ摘み、この開封開始部10からフィルム材2,3相互に引き離して密着部4,5,6を剥離させることで開封させる。このため、開封開始部10では、フィルム材2,3は密着されることなく相互に独立している。
【0018】
このように、この包装体1Aではフィルム材2,3を分離させて開封するため、密着部4,5,6は、易剥離処理が施されている。なお、易剥離処理は、フィルム材2,3同士が密着状態にあるときには、包装体1Aの密閉性を確保でき、しかも容易にフィルム材2,3同士を剥離させることができるものであれば、その手法に特に限定はなく、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプをも採用することができる。
【0019】
なお、従来から知られている包装体では、重ね合わされるフィルム材のうち一方にのみ易剥離処理がなされるが、この包装体1Aでは、かかる易剥離処理が重ね合わされるフィルム材2,3のいずれにもなされている。但し、一方のフィルム材のみに易剥離処理を施すことを妨げるものではない。なお、このようにして、重ね合わされるフィルム材の双方に易剥離処理を施すことは、以下のいずれの実施形態にかかる包装体についても同様である。
【0020】
凝集剥離タイプとは、図4に示すように、シール層7自体が破壊されて分離するタイプであり、双方のフィルム材2,3にシール材がそれぞれ残る。層間剥離タイプとは、図5に示すように、共押し出しで積層フィルム(2,3)を形成し、サポート層8とシール層7の接着強度を低くし、フィルム材2,3が分離される時に、サポート層8とシール層7とが分離されるものである。そして、界面剥離タイプとは、図6に示すように、シール層7全体が一方のフィルム材2にのみ付着され、他方のフィルム材3から分離されるタイプである。かかる界面剥離タイプとしては、EVAなどの易接着性樹脂を用いる。
【0021】
もっとも、当該包装体1Aには、以下に列挙する特性が要求される。
1.無味、無臭、無毒であること。
2.機械適性がよいこと。特に、ヒートシール性(温度・圧力・時間)の適性範囲が広い
こと。
3.トリミング、カット性に優れていること。
4.ゼリー状の物質を含めた流体用の包装体1Aに適用する場合には、夾雑物シール性が
よいこと。
5.寸法の変化が少ないこと。特に、張りが要求される場合には収縮追従性があること。
6.物品Mを包装体1Aの外部から見せたい場合には、透明性があること。
7.剥離強度が500〜2000g/15mmの範囲で、しかも、用途に応じて個別対応できるように設計できること。
8.剥離強度が加熱殺菌条件や、使用条件などの変化に対しても安定しており、しかも、経時変化しないこと。
9.耐物品性に優れていること。即ち、加熱殺菌時に、物品Mに含まれる油脂により、オレンジピール(柚肌)状にならないこと。
10.開封時にノッキング、ピール音(ピピッという剥離音)がなく、円滑に剥離させることができること。
11.剥離面に糸引きや薄い膜が残留するフェザリングが起こらず、剥離面がきれいなこと。
といった特性である。
【0022】
この他にも、印刷フィルムとのラミネートにより、カール発生、ピッチ不良といった不都合な点も避ける必要がある。さらには、包装時における、シール形状・シーラーとの相性についても考慮する必要がある。
【0023】
かかる包装体1Aに使用するフィルム材2,3としては、PET12μm/Al20μm/PET12μm/CPP60μmとなる積層フィルムを使用する。CPP60μmは、易剥離処理としてフィルム材2,3の内面に貼り合わされたフィルムである。
【0024】
以上の包装体1Aは、図7に示すようにして開封させる。
【0025】
まず、図7(a)に示すように、開封開始部10を構成しているフィルム材2,3をそれぞれ指で摘み、フィルム材2,3を相互に引き離す。フィルム材2,3を引き離すにつれ、図7(b)に示すように、密着部5,6が剥離され、物品Mが表出される。さらに、フィルム材2,3を引き離していくと、図7(c)に示すように、すべての密着部4,5,6が剥離され、フィルム材2,3が完全に分離され、開封が終了する。
【0026】
ここで、密着部の剥離強度について説明する。
【0027】
突起部11,12を設けない包装体では、開封時のことをも考慮して、約500〜1500g/15mmの強度で剥離されるように密着させなければならい。これに対し当該実施形態にかかる包装体1Aでは、突起部11,12を設けて摘み易くしたことで、開封自体の容易化を図ることに成功している。このため、約2000g/15mmで剥離される程度まで剥離強度を高めることができる。このように、剥離強度を高めることにより、高い密閉性を備えた包装体を得ることができる。
【0028】
さらに、開封し易くなったことにより、開封開始部10の根元の密着部6から張り出させる長さを短くすることができる。このため、収容部9の容量を維持しつつも、包装体1Aの長さを短くコンパクトに形成できる。そして、一つの包装体1Aを完成させるために必要な材料の量を軽減できる。
【0029】
以上、2枚のフィルム材を重ね合わせて構成した包装体を例に説明したが、図8及び図9に示すように、1枚のフィルム材を折り重ねて包装体を構成してもよい。
【0030】
この包装体1Bは、矩形状の1枚のフィルム材20をその中央部分で二つ折りして構成したものである。二つ折りの際に形成される折り線21の部分を包装体1Bの底部とし、これと対辺をなす部分を包装体1Bの上部としている。そして、この包装体1Bは、両側縁部及び上縁部よりやや内方の位置にて、フィルム材の内面同士が一定の幅で密着されてなる密着部22,23を有し、折り線21とこれら密着部22,23で囲まれた部分の内側が、物品Mを収容する収容部25として形成されている。
【0031】
そして、包装体1Bの上縁部には、包装体1Bを開封させるための開封開始部30が設けられている。この開封開始部30も、フィルム材20の一部であり、密着部23より包装体1Bの外側に張り出させて構成したものである。そして、開封開始部においては、対向するフィルム材20が密着されることなく相互に独立している。かかる態様の包装体1Bについても、密着部22,23は、上述のように易剥離処理が施されている。
【0032】
以上、包装体の外形が矩形に形成されたものを例に説明したが、包装体の外形は、矩形状に形成されたものに限定されない。
【0033】
例えば、図10に示すように、包装体1Cの底部41及び上縁をなす開封開始部45を円弧状に形成させてもよい。また、図11に示すように、包装体1Dの上部に設けられた開封開始部50をその中心が先細り状となるように形成してもよい。
【0034】
以上、フィルム材を直線的に張り出させて開封開始部を構成したものを例に説明したが、図12に示すように、反りを形成しても良い。
【0035】
この図12に示す包装体60は、これまでに説明した包装体と同様に2枚のフィルム材を重ね合わせるか、又は一枚のフィルム材を二つ折りして重ね合わせ、その周縁同士を密着せしめて構成されたものである。開封開始部70は、重ね合わされたフィルム材61,62が密着部63よりも外側に向け張り出して形成される。この開封開始部70ではフィルム材61,62同士は、密着されることなく相互に独立している。そして、この包装体60の開封開始部70では、これらフィルム材61,62の先端部71,72が相互に遠ざかるように逆方向に向けて湾曲するように反られている。
【0036】
このように開封開始部70の先端部71,72に反りが設けられることで、開封開始部70を構成するフィルム材61,62をそれぞれ摘みやすく構成することができ、包装体60を容易に開封することができる。
【0037】
また、図13は、開封開始部90の先端部91,92を相互に逆方向に向けて折り曲げた折り曲げ部が設けられたものを示している。この包装体80についても、開封開始部90は、包装体80を構成するフィルム材81,82が密着部83より外側に張り出して、相互に密着されることなく独立している。そして、開封開始部90を構成しているフィルム材81,82は、その先端部91,92が相互に逆向きに向けほぼ直角に折り曲げられている。このため、折り曲げられた先端部91,92を摘むことで、開封開始部90にてフィルム材81,82を分離させやすくなり、よって、包装袋80の開封を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる包装体の斜視図。
【図2】図1に示す包装体の縦断面図。
【図3】図2のA部を拡大した拡大断面図。
【図4】凝集剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図5】層間剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図6】界面剥離タイプの易剥離処理をモデル的に示した説明図。
【図7】包装体を開封させる手順を示す説明図。
【図8】フィルム材を2つ折りして形成した包装体の斜視図。
【図9】図8に示す包装体の縦断面図。
【図10】上部と底部が円弧状に形成された包装体の斜視図。
【図11】開封開始部が先細り状に形成された包装体の斜視図。
【図12】先端部に反りが設けられた開封開始部の拡大断面図。
【図13】先端部に折り曲げ部が設けられた開封開始部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0039】
1A,1B,1C,1D・・・包装体
60,80・・・・・・・・・包装体
2,3,20・・・・・・・・フィルム材
61,62,81,82・・・フィルム材
4,5,6・・・・・・・・・密着部
22,23・・・・・・・・・密着部
63,83・・・・・・・・・密着部
9,25・・・・・・・・・・収容部
10,30,45,50・・・開封開始部
70,90・・・・・・・・・開封開始部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされたフィルム材の周縁同士が密着されてなる密着部を有し、この密着部の内側が物品を収容させる収容部として形成され、
前記密着部には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材同士が剥離されることにより開封される包装体であって、
この包装体の周縁の一部には、前記フィルム材が相互に独立した状態で前記密着部の外側に張り出してなる開封開始部が設けられていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
2枚の別個のフィルム材が相互に重ね合わされ、これらフィルム材の周縁に前記密着部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
1枚のフィルム材をその中央部で折り畳んで重ね合わせ、折り畳みにより形成される折り線の縁部以外の周縁部に前記密着部を形成し、
前記開封開始部を前記折り線と対辺をなす部分に設けたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項1】
重ね合わされたフィルム材の周縁同士が密着されてなる密着部を有し、この密着部の内側が物品を収容させる収容部として形成され、
前記密着部には易剥離処理が施されて、密着されたフィルム材同士が剥離されることにより開封される包装体であって、
この包装体の周縁の一部には、前記フィルム材が相互に独立した状態で前記密着部の外側に張り出してなる開封開始部が設けられていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
2枚の別個のフィルム材が相互に重ね合わされ、これらフィルム材の周縁に前記密着部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
1枚のフィルム材をその中央部で折り畳んで重ね合わせ、折り畳みにより形成される折り線の縁部以外の周縁部に前記密着部を形成し、
前記開封開始部を前記折り線と対辺をなす部分に設けたことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−197058(P2007−197058A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18730(P2006−18730)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
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