説明

包装容器詰め野菜の製造方法および変色防止材

【課題】野菜の変色を防止し、長期間の保存中に外観を良好に保つことのできる装容器詰め野菜の製造方法および変色防止材を提供する。
【解決手段】本発明に係る包装容器詰め野菜の製造方法は、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させる工程と、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を前記野菜に接触させる工程と、前記野菜を包装容器詰めする工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の変色を防止する包装容器詰め野菜の製造方法および変色防止材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアーやスーパーの野菜売り場や惣菜売り場には、カップや袋に入った包装容器詰め野菜やサラダが数多く並んでおり、これらの野菜は既に洗浄されていることから、開封後そのまま食べられるものとして需要が高まっている。
【0003】
しかしながら、包装容器詰め野菜は、包装容器に詰められてから、時間の経過とともに変色してしまうため、食卓に並ぶ際に外観上良好な野菜を得ることは困難であった。
【0004】
そこで、野菜の外観を良好に保つために、従来から種々の工夫がなされている。たとえば、特開2001−120169号公報(特許文献1)は、生鮮野菜を所定の温度の温水および冷水に、それぞれ所定の時間接触させて加温および冷却することで、生鮮野菜の洗浄を行い、表面に付着する微生物数を減らし、そしてその鮮度を保持することができる方法を開示している。しかしこの方法では、加温処理や野菜をブラッシングする工程があるため、野菜にダメージを与えてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−120169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、野菜の変色を防止し、長期間の保存中に外観を良好に保つことのできる包装容器詰め野菜の製造方法および変色防止材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る包装容器詰め野菜の製造方法は、
(a)亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させる工程と、
(b)平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を前記野菜に接触させる工程と、
(c)前記野菜を包装容器詰めする工程と、
を含む。
【0007】
上記包装容器詰め野菜の製造方法において、前記微粉砕化卵殻の含有量は、前記分散液に対して0.005〜5%であることができる。
【0008】
上記包装容器詰め野菜の製造方法において、前記工程(c)は、前記包装容器内の酸素濃度が15容量%以下になるように、前記野菜を包装容器詰めすることができる。
【0009】
上記包装容器詰め野菜の製造方法において、前記工程(a)と(b)との間に、前記溶液を前記野菜の表面から除去する工程をさらに含むことができる。
【0010】
本発明に係る変色防止材は、包装容器詰め野菜の変色を防止するために用いられる変色防止材であって、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る包装容器詰め野菜の製造方法によれば、野菜の変色を防止し、長期間の保存中に外観を良好に保つことのできる包装容器詰め野菜を製造することができる。これにより、卵殻の有効利用、ならびに、包装容器詰め野菜の需要の拡大が期待される。
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る包装容器詰め野菜の製造方法および変色防止材について説明する。なお、本実施形態において、「%」は「質量%」を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.包装容器詰め野菜の製造方法
本実施の形態に係る包装容器詰め野菜の製造方法は、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させる工程と、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を野菜に接触させる工程と、野菜を包装容器詰めする工程とを含む。
【0014】
以下、本実施の形態に係る包装容器詰め野菜の製造方法を工程順に説明する。
【0015】
(1)まず、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させる。
【0016】
野菜としては、例えば、レタス類、ベビーリーフ、ほうれん草、キャベツ、大根、ごぼう、きゅうり、小松菜、枝豆等が挙げられ、なかでもレタス類が好ましい。レタス類には、レタス、ロメインレタス、サニーレタス、サラダ菜、サンチュ、コスレタスが含まれる。なかでもレタス類は、時間経過とともにその表面が茶褐色に変色しやすい特性が強いため、より明白な効果を得ることができ、好適である。
【0017】
野菜は、上記種類の野菜を適当な大きさに切ったもの等であってもよい。また野菜は、生の状態であることが好ましい。
【0018】
亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液としては、たとえば亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムの1つまたは複数を含有する水溶液であることが安定性の観点から好ましい。また、上記溶液の有効塩素濃度は、好ましくは25〜500ppm、より好ましくは50〜300ppmであるとよい。前記濃度より低い濃度であると、殺菌および変色防止効果が十分ではない場合があり、前記濃度より高い濃度であると、野菜にダメージを与え保存中に食感を損なう場合があるからである。
【0019】
「有効塩素」とは、溶液中の「亜塩素酸」、「亜塩素酸イオン」、「次亜塩素酸」、「次亜塩素酸イオン」に相当し、溶液中で酸化力のある塩素を有するイオンまたは分子をいう。「有効塩素濃度」とは、溶液中で酸化力のある塩素の濃度であり、溶液中の酸化力を測定し、測定した酸化力と当量の塩素の量を換算することにより求められる。
【0020】
溶液を野菜に接触させる方法としては、野菜の表面に溶液を接触させることができれば特に限定されるものではないが、たとえば野菜をザル等に入れた状態で溶液中に浸漬する方法、野菜を溶液で洗浄する方法、野菜に溶液を噴霧またはシャワーする方法、溶液を含ませた媒体を野菜の表面に接触させる方法等を挙げることができる。この工程では、野菜の表面全体に溶液を付着させることが好ましい。
【0021】
溶液を野菜に接触させる時間は、1分〜20分、より好ましくは3分〜15分である。前記時間より短いと十分な殺菌効果が得られず、前記時間より長いと、溶液が野菜に染み込み過ぎ野菜にダメージを与え、保存中に外観を損なう場合があるからである。
【0022】
なお、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液の温度は、30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましい。野菜自体の温度を上げずに鮮度を保ち、生の食感を維持しながら変色防止効果を得ることができるからである。また分散液の温度は、野菜が凍るのを防ぐために0℃以上であることが好ましい。
【0023】
(2)次に、野菜に接触させた上記溶液を野菜の表面から除去する。具体的には、野菜の表面に付着している溶液を他の液体で置換することにより、上記溶液を野菜の表面から除去することができる。たとえば野菜を水洗いして、上記溶液を野菜の表面から除去する。水洗いとしては、たとえば野菜を流水中もしくは清水中に浸漬する方法、野菜にシャワー水をかける方法等を適用することができる。水洗いの後に水切りをしてもよい。水切りとしては、たとえば野菜を遠心分離機にかける方法、ザル上に野菜を5分〜30分程度放置する方法等を適用することができる。
【0024】
(3)次に、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を前記野菜に接触させる。微粉砕化卵殻を含有する分散液とは、分散媒に微粉砕化卵殻を分散させたものである。分散媒としては、通常、水が適用されるが、本発明の効果を損なわない範囲で食塩水等も使用することができる。
【0025】
本発明における「微粉砕化卵殻」の「卵殻」とは、鳥類の卵の殻、特に鶏卵の殻をいう。卵殻はその主成分が炭酸カルシウムであり、2%程度のタンパク質を含む。このタンパク質の存在が、変色防止効果に大きく寄与するものと考えられる。
【0026】
本実施形態に係る包装容器詰め野菜の製造方法で使用される卵殻(「微粉砕化卵殻」ともいう。)は、原料卵殻そのものあるいは原料卵殻を粗く粉砕した卵殻粉末を、微粉砕化したものである。
【0027】
微粉砕化卵殻の平均粒径は、1μm以下であり、好ましくは0.01μm〜0.6μmである。微粉砕化卵殻の平均粒径が1μm以下であることにより、卵殻中に含まれるタンパク質が卵殻の表面に効率的に露出し、変色防止効果を著しく向上させることができる。特に、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.6μm以下であることにより、野菜の外観を良好にすることができる。また、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.01μm未満であると、凝集しやすく、分散性に劣る場合があるため、野菜表面の全体に付着させることが困難となる。
【0028】
微粉砕化卵殻は、例えば、振動ミル、ボールミル、シェカーやハンマーミル、ターボミル、ファインミル、ジェットミル、バンタムミル、グラインダーミル、カッターミル、ビーズミルなどの粉砕機を使用する機械的粉砕により得ることができ、これらの粉砕機を単独もしくは2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
平均粒径が1μm以下であり、かつ、粒度分布が狭い微粉砕化卵殻を得ることができる点で、微粉砕化卵殻は特に、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものであることが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、スターミルLMZ(アシザワ・ファインテック株式会社製)、OBミル(ターボ工業株式会社製)、スーパーアペックスミル(寿工業株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
ビーズミルを使用して卵殻を平均粒径1μm以下(好ましくは0.01μm〜0.6μm)に湿式粉砕することにより、クリーム状の微粉砕化卵殻含有スラリーが得られる。上記スラリーをそのまま食品等に添加することにより、微粉砕化卵殻の凝集を防止したまま使用することができる。
【0031】
また、上記スラリーを乾燥させて得られた微粉砕化卵殻を使用してもよい。乾燥方法としては特に限定されるものではなく、噴霧乾燥や凍結乾燥など、一般的に行われる方法で実施することができる。また、デキストリン等の賦形剤や、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を、上記スラリーに適宜添加してから乾燥を行ってもよい。
【0032】
微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であることが好ましく、変色防止効果により優れている点で、平均粒径が0.6μm以下であって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、微粉砕化卵殻の粒度の分布状態を示す変動係数は0.1〜0.8であるのが好ましく、0.1〜0.7であるのがより好ましい。微粉砕化卵殻の変動係数が0.1〜0.8であることにより、凝集しにくいため分散性に優れ、かつ、変色防止効果に優れている。
【0034】
微粉砕化卵殻の含有量は、野菜の外観を良好に維持するためには、分散液に対して0.005%以上であるのが好ましく、変色防止効果をより高めるには、0.05%以上であることが好ましい。なお、微粉砕化卵殻の含有量の上限は分散性が良好な範囲であれば特に限定されないが、生産性を考慮し、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0035】
分散液を野菜に接触させる方法としては、野菜の表面に分散液を接触させることができれば特に限定されるものではないが、たとえば野菜をザル等に入れた状態で分散液中に浸漬する方法、野菜を分散液で洗浄する方法、野菜に分散液を噴霧またはシャワーする方法、分散液を含ませたスポンジ等の媒体で野菜に塗布する方法等を挙げることができる。この工程では、野菜の表面全体に分散液を付着させることが好ましい。
【0036】
分散液を野菜に接触させる時間は、十分な変色防止効果を得るためには、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、分散液を野菜に接触させる時間の上限としては、その野菜の鮮度および生産性を考慮し、20分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましい。
【0037】
なお、分散液の温度は、30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましい。野菜自体の温度を上げずに鮮度を維持しながら変色防止効果を得ることができるからである。また分散液の温度は、野菜が凍るのを防ぐために0℃以上であることが好ましい。
【0038】
(4)次に、野菜に接触させた分散液の脱液処理を行う。脱液処理を行うことによって、野菜表面に付着した分散液を除去することができる。脱液処理としては、たとえば野菜を遠心分離機にかける方法を適用することができる。
【0039】
(5)次に、野菜を包装容器詰めする。包装容器詰め後の包装容器内の酸素濃度は、15容量%以下であることが好ましく、12容量%以下であることが特に好ましい。前記濃度より高い濃度であると、野菜の呼吸が進み易くすぐに外観を損なうためである。たとえば野菜を包装容器詰めした後に包装容器内を窒素置換することにより、包装容器内を所望の酸素濃度とすることができる。
【0040】
包装容器としては、ポリプロピレン製袋や、PET製プラスチック容器等が挙げられるが、充填後密封し保存できれば特に限定するものではない。
【0041】
以上の工程により、包装容器詰め野菜を製造することができる。包装容器詰め後の保存温度は、特に限定されるものではないが、0〜15℃程度であれば野菜の生鮮状態が保たれやすく好ましい。
【0042】
2.変色防止材
本実施の形態に係る包装容器詰め野菜の変色防止材は、上記微粉砕化卵殻を含有する。本実施形態に係る包装容器詰め野菜の変色防止材における微粉砕化卵殻の含有量は通常0.01〜100%である。変色防止材の形態としては、上記湿式粉砕により得られる、クリーム状の微粉砕化卵殻含有スラリーそのもの、あるいはさらに防腐剤等を添加したものであってもよい。また、上記スラリーを乾燥させて得られた微粉砕化卵殻を使用してもよく、賦形剤や乳化剤等を適宜添加したものであってもよい。
【0043】
本実施形態に係る包装容器詰め野菜の変色防止材によれば、微粉砕化卵殻を含有することにより、包装容器詰め野菜の変色を効果的に防止することができる。また、変色防止材が野菜表面に残存してしまった場合であっても、該卵殻は苦味が少ないため、添加した際に食品の風味に及ぼす影響が少ない。したがって、本実施形態に係る変色防止材は、包装容器詰め野菜に使用することができる。
【0044】
なお、包装容器詰め野菜の変色防止材は、上記微粉砕化卵殻と組み合わせて用いるために、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含んでいてもよい。微粉砕化卵殻と、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方とを、異なる工程で組み合わせて用いることにより、微粉砕化卵殻の変色防止効果が向上する。
【0045】
また、本実施の形態に係る包装容器詰め野菜の変色防止材は、0〜30℃以下の温度に調整してから、使用されることが好ましい。これにより、生野菜の食感や外観を損ねずに、変色防止効果を維持することができるからである。
【0046】
3.作用効果
本実施の形態に係る包装容器詰め野菜の製造方法では、亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させた後に、微粉砕化卵殻を含有する分散液を野菜に接触させている。これにより、野菜の変色を防ぎ、外観の良好な野菜を長期間保存することができる。また、本実施の形態に係る製造方法を適用することにより、卵殻の有効利用が可能となる。
【0047】
4.実施例
次に、本発明を以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
4.1.微粉砕化卵殻の調製
本実施例においては、以下の条件にて所定の平均粒径および粒度分布を有するように微粉砕された微粉砕化卵殻を調製した。より具体的には、精製水に卵殻(以下、微粉砕化卵殻と区別するために、「原料卵殻」と表記する。)を分散させた原料卵殻分散液(スラリー)について、以下の条件で湿式ビーズミルを使用して、原料卵殻を湿式粉砕した。
【0049】
4.1.1.原料
(1)原料卵殻(平均粒径:11.0μm((株)全農・キユーピー・エツグステーシヨン製))
(2)精製水
【0050】
4.1.2.粉砕(湿式粉砕)条件
湿式ビーズミル:スターミルLMZ2(アシザワ・ファインテック(株)製)
ビーズ:ジルコニア製,Φ0.3mm
ビーズ充填率:85%(粉砕室容量に対し);空間率49%
ローター周速:12m/s
【0051】
4.1.3.微粉砕化卵殻の調製方法
精製水8kgをビーズミルに連結したミキシングタンクに仕込み、原料卵殻2kgを投入して、湿式ビーズミルの循環運転(ミルで粉砕されたスラリーをタンクにリターン)を行うことにより、微粉砕化卵殻含有スラリーを調製した。
【0052】
湿式ビーズミルによる粉砕処理を所定時間(5,15,60分)行うことにより、粒径の異なる微粉砕化卵殻(微粉砕化卵殻1〜3)を得た。
【0053】
4.1.4.平均粒径および粒度分布測定
試料(微粉砕化卵殻含有スラリー)0.3gを精製水10gに分散させて1分間超音波を照射した後、粒径分析計に供した。分散剤を添加する際は超音波照射前に2滴滴下した。
【0054】
また、原料卵殻の粒度分布を測定する場合、まず、原料卵殻0.1gを精製水10gに分散させ、この分散液4gを精製水20gに分散させた後、超音波を照射して供試検体とした。
【0055】
粒度分布測定は、装置内蔵の超音波照射機(3分間、40W)を使用して行った。なお、平均粒径はメジアン径とした。粒度分布測定における測定装置および測定条件は以下の通りである。
【0056】
粒度分布計:マイクロトラックMT3300EXII(日機装(株));レーザ回折式
屈折率:1.68(重炭酸カルシウムの文献値);水(分散媒)1.33
分散剤:アロンA−6330(ポリカルボン酸系重合体、東亜合成(株)製)
微粉砕化卵殻1〜3の平均粒径はそれぞれ、0.12μm(粒径の実測範囲:0.03〜0.58μm)、0.59μm(粒径の実測範囲:0.19〜7.78μm)、0.94μm(粒径の実測範囲:0.45〜7.78μm)であり、これらの変動係数(CV)はそれぞれ0.70、0.67、0.57であった。
【0057】
また、これら微粉砕化卵殻の粒度分布はいずれも、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であった。なかでも、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.12μmである微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であった。
【0058】
以下、平均粒径が0.12μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻1とし、平均粒径が0.59μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻2とし、平均粒径が0.94μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻3として、実験を行った。
【0059】
4.2.包装容器詰め野菜の製造
4.2.1.実施例1〜3
40mm幅にカットしたレタス100gを、有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬した後、流水中で5分間水洗いした。次いで、微粉砕化卵殻を清水に分散させて15℃に調製した含有量0.5%の分散液に5分間浸漬させた。そして遠心分離機(大栄製作所、「DT−2S」、1100rpmで1分間)にかけて遠心脱水処理を行った後、ポリプロピレン製の袋に充填し、袋内の酸素濃度が10容量%となるよう窒素置換した後密封し、包装容器詰め野菜を製した。
【0060】
実施例1〜3において用いた微粉砕化卵殻は、表1に示すとおりである。
【0061】
4.2.2.比較例1,2
実施例1〜3において用いた分散液にかえて、比較例1では、原料卵殻を0.5%分散させた15℃の分散液を用い、比較例2では、炭酸カルシウムを0.5%分散させた15℃の分散液を用いて、実施例1〜3と同様に包装容器詰め野菜を製した。
【0062】
4.2.3.比較例3
40mm幅にカットしたレタス100gを、微粉砕化卵殻1を清水に分散させて15℃に調製した含有量0.5%の分散液に5分間浸漬させた後、流水中で5分間水洗いした。次いで、有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬した後、遠心分離機(大栄製作所、「DT−2S」、1100rpmで1分間)にかけて遠心脱水処理を行った後、ポリプロピレン製の袋に充填し、袋内の酸素濃度が10容量%となるよう窒素置換した後密封し、包装容器詰め野菜を製した。
【0063】
4.2.4.比較例4
40mm幅にカットしたレタス100gを、有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムと、含有量0.5%の微粉砕化卵殻1とを含有する15℃の分散液に10分間浸漬した後、流水中で5分間水洗いした。そして遠心分離機(大栄製作所、「DT−2S」、1100rpmで1分間)にかけて遠心脱水処理を行った後、ポリプロピレン製の袋に充填し、袋内の酸素濃度が10容量%となるよう窒素置換した後密封し、包装容器詰め野菜を製した。
【0064】
4.2.5.比較例5,6
比較例4において用いた分散液にかえて、比較例5では、有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用い、比較例6では、含有量0.5%の微粉砕化卵殻1を含有する15℃の分散液を用いて、比較例4と同様に包装容器詰め野菜を製した。
【0065】
4.3.試験例1
実施例1乃至3及び比較例1乃至6に係る包装容器詰め野菜の保存後の外観への影響について評価した。具体的には、得られた包装容器詰め野菜としてのレタスを10℃で5日間保存し、保存後のレタスの外観について、以下の4段階で評価した。
◎:外観が損なわれることなく大変良好な状態が保たれている。
○:外観がほとんど損なわれることなく良好な状態が保たれている。
△:外観がやや損なわれている場合がある。
×:外観が大変損なわれている。
試験例1の評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

以上の結果により、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を接触させ、その後に平均粒径が1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を接触させるという2段階の接触工程によって、野菜の外観を良好に保持できることが確認された。特に、平均粒径が0.6μm以下の微粉砕化卵殻を用いることによって、外観を大変良好な状態に保つことができることが確認された。なお、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のみを接触させた場合や、分散液のみを接触させた場合と比べても、2段階の接触工程による変色防止効果が高いことが確認された。
【0067】
4.4.試験例2
表2に示すように、微粉砕化卵殻1の含有量の異なる実施例1,4〜6および比較例7に係る包装容器詰め野菜の外観を評価した。
【0068】
具体的には、実施例1において用いた分散液にかえて、実施例4〜6では、それぞれ含有量1.0%、0.05%、0.005%の微粉砕化卵殻1を含有する15℃の分散液を用い、比較例7では、微粉砕化卵殻1を含まない清水を用いて実施例1と同様に包装容器詰め野菜を製した。
【0069】
そして試験例1と同様に、実施例1、4〜6及び比較例7に係る包装容器詰め野菜の保存後の外観への影響について評価した。具体的には、試験例1と同様に、得られた包装容器詰め野菜としてのレタスを10℃で5日間保存し、保存後のレタスの外観について、4段階で評価した。評価結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

以上の結果により、微粉砕化卵殻の含有量を分散液に対して0.005%以上とすることによって、外観を良好な状態に保つことができることが確認された。特に、微粉砕化卵殻の含有量を分散液に対して0.05%以上とすることによって、外観を大変良好な状態に保つことができることが確認された。
【0071】
4.5.試験例3
表3に示すように、酸素濃度の異なる実施例1,7〜12に係る包装容器詰め野菜の外観を評価した。
【0072】
具体的には、実施例1においては、包装容器内の酸素濃度が10容量%となるよう窒素置換したが、これにかえて、実施例7〜11では、それぞれ酸素濃度が0.1容量%、0.5容量%、5容量%、12容量%、15容量%、20容量%となるように窒素置換した。
【0073】
そして試験例1と同様に、実施例1,7〜11に係る包装容器詰め野菜の保存後の外観への影響について評価した。具体的には、試験例1と同様に、得られた包装容器詰め野菜としてのレタスを10℃で5日間保存し、保存後のレタスの外観について、4段階で評価した。評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

以上の結果により、包装容器内の酸素濃度を15容量%以下に保持することによって、野菜の外観を良好に保つことができ、特に酸素濃度を12容量%以下にすることにより、外観を大変良好に保つことができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)亜塩素酸塩及び次亜塩素酸塩の少なくとも一方を含有する溶液を野菜に接触させる工程と、
(b)平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する分散液を前記野菜に接触させる工程と、
(c)前記野菜を包装容器詰めする工程と、
を含む、包装容器詰め野菜の製造方法。
【請求項2】
前記微粉砕化卵殻の含有量は、前記分散液に対して0.005〜5%である、請求項1に記載の包装容器詰め野菜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)は、前記包装容器内の酸素濃度が15容量%以下になるように、前記野菜を包装容器詰めする、請求項1又は2に記載の包装容器詰め野菜の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)と(b)との間に、
前記溶液を前記野菜の表面から除去する工程をさらに含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の包装容器詰め野菜の製造方法。
【請求項5】
平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する、包装容器詰め野菜の変色防止材。