説明

包装容器

【課題】花等の包装に適した従来の包装容器は装飾性に乏しく、美観に優れたものとは言いがたい。
【解決手段】内側に物品を保持することのできる内筒(2)と、該内筒に対し所定範囲内で軸方向に摺動自在に被着された外筒(3)とを備え、内筒(2)と外筒(3)とは、一方の端部から軸方向に沿って伸び出し先端部で折り返されて他方の端部に達する弾性変形可能な複数の帯状の連結片(5)によって連結一体化されていることを特徴とする包装容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花、菓子、装身具等の物品を包装するために使用するに適した包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花、菓子、装身具、ワイン等の物品を販売したり、他人に贈呈したりする場合は、これらの物品を紙箱に入れたり、美麗な包装用紙で包んで取り扱うのが一般的である。なかでも、花や菓子等は、紙箱に入れるのが一般的であり、この種の箱については、種々の形状のものが考えられている。
【0003】
例えば花を包装するための包装容器としては、下記特許文献に記載のようなものが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載のものは、水分を通さない箱の開口部に、必要に応じて、取り外しができる色付きシートを取り付け、持ち運び用のひもを付けたもので、花瓶と包装箱を兼用できるものとされている。また、特許文献2に記載のものは、所定形状に打ち抜かれた1枚の板紙で組み立てられた三角錐状四面体からなる包装箱である。
【0005】
さらに、特許文献3に記載のものは、天面の蓋板が開閉する横長の直方体の紙箱であって、長方形の底板の相対する短辺に連接された短側板の一方に固定板が連接され、長方形の底板の固定板の上縁近傍の位置に相対する長辺から内方に向いた一対の対向する鉤状切込が形成されたものである。また、特許文献4に記載のものは、展開状態では一枚の厚紙となる台紙に対して、四方の側面部と底面部と手提げ部を含めた上面部とを所定の折り曲げによって構成できる組立式の収納箱であって、底面部が二重構造をなし、第一上面部における第一手提げ部との境界部分の近傍には、箱内部と連通する少なくとも一つの空気孔を備えたものである。
【特許文献1】特開2007−84145号公報
【特許文献2】特開2004−276992号公報
【特許文献3】特開平08−244868号公報
【特許文献4】実用新案登録第3114249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1ないし4に開示されているものは、花等の包装に適した箱体ではあるが、いずれも装飾性に乏しく、美観に優れたものとは言いがたい。なお、上記特許文献のうち、特許文献1に開示されているものは、透明色付きシートを通して内部の花を見ることができるので、そのまま装飾に使用することができるとされているが、箱そのものはありきたりの形状であるから、面白みに欠けるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を考慮して、花等の包装に使用する包装容器であって、それ自体が変化に富んだ美的な形状で、装飾性を備えた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成を採用した。
【0009】
すなわち、本発明に係る包装容器は、内側に物品を保持することのできる内筒と、該内筒に対し所定範囲内で軸方向に摺動自在に被着された外筒とを備え、前記内筒と外筒とは、一方の端部から軸方向に沿って伸び出し先端部で折り返されて他方の端部に達する弾性変形可能な複数の帯状の連結片によって連結一体化されていることを特徴としている。
【0010】
また、上記本発明の包装容器において、上記帯状の連結片が弾性変形した場合、前記折り返された先端部は、前記弾性変形する前の前記外筒の周囲より外側に広がる構成であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明の包装容器において、内筒の胴部に係止用窓を設け、外筒には、内筒と外筒を所定量相対移動させた状態で前記係止用窓に係合することにより、その位置で両者を固定することのできる係止片を設けておくのが好ましい。
【0012】
また、上記本発明の包装容器において、複数の帯状の連結片が軸方向に沿って伸びる閉状態において、該連結片の外周部に被せて複数の連結片を筒状にまとめて保持することのできる着脱自在なキャップを設けておくのが好ましい。
【0013】
また、上記本発明の包装容器において、このようなキャップを設ける代わりに、または該キャップとともに、二重構造の複数の連結片の先端部に挿通して巻回すことにより、該複数の連結片を束ねた状態で固定することのできる紐体を設けておいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、花等の包装に使用する包装容器であって、それ自体が変化に富んだ美的な形状で、装飾性を備えるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る包装容器の一例である包装容器の組み立て状態を表すもので、この包装容器1は、内筒2と外筒3を備えた本体1aとキャップ20とで構成される。外筒3は、内筒2に対し軸方向に摺動自在であり、この摺動によって両者の重なり度合いが変化する。
【0017】
図2は、本実施の形態の包装容器のキャップ20の斜視図である。また、図3は、本実施の形態の本体の連結片を伸長させた閉状態を表す斜視図である。
【0018】
なお、これら内筒2と外筒3は、円等状でもよく、角型(図示例では8角形)でもよい。包装容器1の材質としては、紙、合成樹脂、金属等を採用することができるが、経済性や公害防止の観点から紙を採用するのが最も好ましい。
【0019】
内筒2と外筒3は、図3に示すように、複数の帯状の連結片5によって互いに連結一体化されている。連結片5は内筒2と外筒3の円周方向に沿って複数個(図示例では8個)が均等に配置されており、展開図である図5からわかるように、その両端部は内筒2と外筒3にそれぞれ連結一体化されている。換言すれば、帯状連結片5は、一方の端部が内筒2の端部に一体であり、中間部の折り目6で折り返されて他方の端部が外筒3の端部と一体になっている。そして、帯状連結片5の突出する先端部には折り目6が位置している。図示例では、折り目6に近い部分の外縁部は、先端側がしだいに細くなるような曲線6aとなっていて、花びらの先端部のような形状となっている。尚、図5中の点線は、折り目の位置を表している。
【0020】
内筒2の上記連結片5と反対側の端部は、底板7によって閉塞されている。図5に示されているように、底板7の外周部には複数の切り欠き8が入れられて、複数の折り曲げ片9が形成されている。これら折り曲げ片9を内側に90度折り曲げた状態で、内筒2の内壁面に貼り付けることにより、内筒2の底部が底板7によって閉塞される。図中の2a,3aは、内筒2と外筒3を筒状に折り曲げて糊で固定するための糊代である。
【0021】
なお、図示例では、内筒2に底板7が設けられ、内部の物品が逸脱しないようになっているが、場合によっては、内筒2の内部に物品を保持することのできる他の保持手段を設けておくことにより、底板7を省略することも可能である。
【0022】
また、ワイン等の瓶類を包装する場合、瓶の底部を除く周囲のみを包むことにより、きれいに包装出来るので、必ずしも底板7は必要としない。
【0023】
図3、図5に示す様に、外筒3の胴部には切り起こし式の係止片10が形成されている。係止片10は、一方の端部に突起11が形成されており、ユーザがキャップ20を外した後、係止片10を折り目10aを中心として矢印Aの方向に折り曲げることにより外筒3の外周面から立ち上げると、突起11が内筒2側に突出するようになっている。なお、係止片10が切り起こされた空間部の周縁部には、ユーザが指先を挿入し易いようにするための爪掛け用の切り欠き12が形成されている。
【0024】
一方、内筒2の所定位置には、係止片10の突起11が係合する小窓13が設けられている。小窓13の位置は、外筒3を底板7の方向にスライドさせて、内筒2に最も深く被せた状態における係止片10の突起11の位置である。小窓13を矢印Bの方向に押し込むと小窓13が開く。開いた小窓13の上側の縁13aに係止片10の突起11が係合する。これら係止片10と小窓13は、外筒3を十分に開いた状態で内筒2に固定するためのストッパとなっている。すなわち、係止片10が小窓13の位置に達するまで外筒3を引き下げ、係止片10の突起11を小窓13の上側の縁13aに係合させると、図4に示すように、外筒3と内筒2とが開状態で固定される。図4は、本実施の形態の包装容器1の開状態を表す斜視図である。
【0025】
尚、本実施の形態では、小窓13は蓋付きの窓として説明したが、これに限らず例えば、蓋の無い窓、即ち単なるスリットでも良い。
【0026】
この包装容器1のキャップ20は、複数の連結片5が直伸方向に伸びた状態(閉状態)で、これらに被せることができるものである。キャップ20は、図6の展開図でも示すとおり、外筒3と同様な断面形状(図示例では八角形)の筒状であり、その一方の端部は開口しており、他方の端部は天板21によって閉塞されている。天板21は、キャップ20の胴部端部に設けた糊代22を内側に折り曲げて、その上から糊付けすることにより固定される。図中の20aは、キャップ20を筒状に固定するための糊代である。キャップ20の深さは、前記帯状連結片5の長さとほぼ同じであるが、これより短くてもよく長くてもよい。尚、図6中の点線は、折り目の位置を表している。
【0027】
この包装容器1は、図5、図6に示すように、台紙Pに表示された図形を切り出して組み立てることにより製作することができる。
【0028】
また、量産時には、打ち抜き型を用いることにより、台紙Pから図5,6に示す図形に沿った形状を容易に抜くことが可能であるため、低コストであり、且つ、量産性にも優れている。更に、この包装容器は組み立ても容易である。
【0029】
尚、図5は内筒2と外筒3を含む本体1aの展開図であり、図6はキャップ20の展開図である。それぞれの部分に付記された記号は、組み立て状態における各部の記号と同じである。
【0030】
この包装容器1は、外筒3を内筒2に対し上向きに相対移動させた状態では、各連結片5が上向きに伸び出した状態となり、折り目6が最上端部に位置することになる。この状態では、複数の連結片5が筒状を呈する状態となるので、内部に物品を入れていても、当該物品の外周部が連結片5によっても包まれた状態となる。この場合、キャップ20を複数の連結片5の上部に被せておけば、各連結片5が直立状態で拘束されるので、該連結片5を筒形状に維持することができる。
【0031】
図7は、この包装容器1に花50を収納した状態を表すものである。図示例では、内筒2の内部に発泡スチロール等で作った保持具30を嵌め込み、この保持具に形成した孔31に花の茎を差し込むことにより、花50が起立状態で保持される。内筒2の内部に適量の土を入れ、この土に花50の茎を差して保持してもよい。また、他の保持手段として、例えば、紙を材料とするものによって保持しておけば、そのままゴミとして捨てることも可能である。場合によっては、物品50を単に内筒2内に入れただけで保持することも可能である。また、内筒2及び底板7は水が漏れない様に処理されていても良い。
【0032】
物品50を収納した包装容器1は、図1に示すように、内筒2に対する外筒3の嵌合長さを短くした状態、すなわち連結片5が伸び出した状態で、該連結片5の上からキャップ20を被せておけばよい。このキャップ20により、上述のように、複数の連結片5が筒状にまとめられ、物品50の上部を保護する。この状態では、持ち運びに便利であり、内部の花も保護されていて、傷つきにくい。
【0033】
つぎに、この包装容器1のキャップ20を取り外し、外筒3を下向きにスライド移動させると、二重となっている連結片5の外側の部分が外筒3によって下向きに引っ張られるので、各連結片5が次第に下向きにたわみ、図4に示すように、折り目6が最も外側に位置するように、横方向(外筒3の径方向)に突出した開状態となる。連結片5に上記折り目6が形成されていない場合は、外筒3を下向きに移動させても、連結片5が丸まった状態となり図4のようには開きにくいが、折り目6を形成しておくことにより、外側の部分が下向きに引っ張られると花びら状にうまく開くのである。連結片5は複数個(図示例では8個)が等間隔で配置されているので、これらが横向きに伸び出すと、さながら開いた花のようになる。
【0034】
上記開状態では、図7に示すように、内部に保持されている物品(花等)50の上部が露出するので、物品50を外から観察することができる。このため、物品が花や人形等の装飾品である場合は、この包装容器1ごとそのまま飾ることができる。しかも、包装容器1そのものが開いた花のような形状となるので美的である。すなわち、この包装容器1は、物品の包装ができるだけではなく、そのままディスプレイ用にも使用することができるのである。
【0035】
なお、包装容器1を開いた状態で維持するには、外筒3に設けられている係止片10の突起11を内筒2の小窓13に係止させておけばよい。この場合、外筒3を所定位置まで引き下げて係止片10を起こすと、係止片10の突起11が小窓13に係合する。この係合により、内筒2と外筒3との相対移動が規制され、包装容器1が開状態で固定されるのである。再度閉状態とするには、係止片10の突起11を小窓13から引き抜いて、外筒3を上向きにスライド移動させればよい。上記開閉操作は簡単である。
【0036】
上述した様に、本発明に係る包装容器は、内筒の内部に花等の物品を保持することができるもので、その外側に外筒が嵌合した二重構造となっているので、強度的にも優れている。
【0037】
また、内筒と外筒の端部同士が、弾性変形可能な複数の帯状連結片でつながっていて、該帯状連結片は、内筒と外筒の先端部から軸方向に伸び出した状態となっているので、通常の収納状態では、ほぼ外径が等しい一つの筒状を呈し、コンパクトな形状となっている。
【0038】
一方、外筒を内筒に対し前記連結片の設けられている側と反対側に摺動させると、一端部が外筒に固定されている連結片が伸び出し方向と逆方向に引っ張られるため、直径方向に広がった状態となる。
【0039】
この様な帯状連結片のダイナミックな動きが、まず見る者に驚きを与え、感動が広がる。更に、このように、複数の帯状連結片が直径方向に広がると、さながら開いた花のような形状となり、美観がいちじるしく向上する。また、これによって内部の物品の露出度が大きくなるので、物品の観察にも便利である。
【0040】
尚、以上の説明では、閉状態にある連結片5の束を、キャップ20を被せることにより、開かないように保持したが、このようなキャップ20を設ける代わりに、図8に示すように、二重構造の連結片5の内側にリボン等の紐体40を挿通し、端部同士を結んでおいてもよい。このようにすると、複数の連結片5の先端部が花の蕾のように絞られた状態となり、キャップ20が無くても内部の物品の逸脱を防止する。また、ワイン等の先端部が胴部より細くなっている瓶類を包装する場合にも図8の構成が適しており、連結片5の先端部を保持するリボンが装飾的役割をも果たし、店頭でも展示効果も高い。
【0041】
また、この包装容器1は、上記のとおり紙のほかに樹脂や金属シートを用いて製作することができるが、紙を用いて製作すると、経済的であり、使用後は簡単に焼却することができるので、環境保全上にも優れている。この包装容器1の外面に種々の模様、色彩、文字、図柄等を印刷等で表示しておくと、美観がさらに向上する。
【0042】
また、包装容器の一部、例えば、花びら状に開いた連結片5の表面にメッセージなどを記載したり、メッセージカードを簡単に張り付ける事が可能であり、贈り物や病院へのお見舞い等に使用する場合に適している。
【0043】
また、図示例では、連結片5を隙間なく設けているが、場合によっては、連結片と連結片の間に隙間を形成しておいてもよい。この場合は、連結片5の数を8個よりも少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る包装容器は、紙等を用いて工業生産的に製作することができ、花、菓子等の物品の包装材として効果的に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態の包装容器の組み立て状態を表す斜視図
【図2】本実施の形態の包装容器のキャップの斜視図
【図3】本実施の形態の本体の連結片を伸長させた閉状態を表す斜視図
【図4】本実施の形態の包装容器の開状態を表す斜視図
【図5】本実施の形態の包装容器の本体の展開図
【図6】本実施の形態の包装容器のキャップの展開図
【図7】本実施の形態の花を収納した開状態を表す斜視図
【図8】本発明の別の実施の形態の包装容器であって、キャップを用いずリボンで連結片を束ねた例を表す斜視図
【符号の説明】
【0046】
1 包装容器
2 内筒
3 外筒
5 連結片
6 折り目
7 底板
10 係止片
11 突起
13 小窓
20 キャップ
50 物品(花等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に物品を保持することのできる内筒と、
該内筒に対し所定範囲内で軸方向に摺動自在に被着された外筒とを備え、
前記内筒と外筒とは、一方の端部から軸方向に沿って伸び出し先端部で折り返されて他方の端部に達する弾性変形可能な複数の帯状の連結片によって連結一体化されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記帯状の連結片が弾性変形した場合、前記折り返された先端部は、前記弾性変形する前の前記外筒の周囲より外側に広がることを特徴とする請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
内筒の胴部に係止用窓が設けられ、外筒には、内筒と外筒を所定量相対移動させた状態で前記係止用窓に係合することにより、その位置で両者を固定することのできる係止片が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
複数の帯状の連結片が軸方向に沿って伸びる閉状態において、該連結片の外周部に被せて複数の連結片を筒状にまとめて保持することのできる着脱自在なキャップを備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の包装容器。
【請求項5】
二重構造の複数の連結片の先端部に挿通して巻回すことにより、該複数の連結片を束ねた状態で固定することのできる紐体が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の包装容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−297007(P2008−297007A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148175(P2007−148175)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(507184041)
【Fターム(参考)】