説明

包装用容器

【課題】ラップフィルムにシワが入りにくく、しかも、周壁部の強度も向上した包装用容器を提供する。
【解決手段】発泡樹脂シート、もしくは前記発泡樹脂シートの少なくとも一面に非発泡樹脂フィルムを積層したシートを熱成形した包装用容器であって、底面部10と、前記底面部10の外周から上方に起立する周壁部20と、前記周壁部20の上端に設けられ、外方へ突出したフランジ部30とを備え、前記フランジ部30は、上面31aが上方へと突出する曲面形状に形成された突状部31と、容器の最外周縁に位置するように形成された水平端部32と、前記突状部31に隣接して形成され、前記突状部31よりも肉厚に形成された補強部33とを備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂シート、もしくは発泡樹脂シートの少なくとも一面に非発泡樹脂フィルムを積層したシートを熱成形した包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
肉、刺身や調理した食品などを収容して、スーパーマーケットなどの商品棚に陳列するための包装用容器が広く普及している。これらの容器は発泡樹脂を素材として含むシートを熱成形したもので、断熱性を備え、かつ、軽量の容器として好適に使用されている。
【0003】
この包装用容器の使用方法の一つとして、前記食品などを収容した上で、ラップ包装機などを用い、緊張状態にしたラップフィルムを容器における周壁部の上端に設けられたフランジ部に掛け回して、容器の上端開口を閉鎖するように包装するものがある。このようにラップフィルムを掛け回して包装する際には、緊張状態にしたラップフィルムにより生じる、周壁部の内方または外方にかかる曲げ応力に対する強度が不十分であることによる、周壁部及びフランジ部のズレが起こりやすく、さらに、フランジ部にラップフィルムが引っ掛かることにより、フランジ部に均等にラップフィルムを掛け回すことができず、ラップフィルムにシワが入る(ラップ不良)という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331790号公報
【特許文献2】特開2009−67476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の、ラップフィルムにシワが入るという問題に対して、特許文献1には、フランジ部の上面に周方向に沿って伸びた凹筋を設けた食品包装容器が開示されている。この、特許文献1が開示する発明は、ラップフィルムがフランジ部に引っ掛かることでシワを生じさせるという知見に基づきなされたものであり、フランジ部上面に設けた凹筋によりフランジ部とラップフィルムとの接触面積を減らすことで、フランジ部上面とラップフィルムとの接触抵抗を小さくし、これにより、ラップフィルムをフランジ部上面に引っ掛かりにくくして、ラップフィルムにシワを生じさせないものとされている。
【0006】
しかしながら、フランジ部上面にこのように凹筋を設けると、フランジ部による周壁部の補強が弱くなることから、周壁部の内方または外方にかかる曲げ応力に対する強度が不十分となりやすく、フランジ部が内方向もしくは外方向へズレることで、ラップフィルムを支持する位置にばらつきが生じ、ラップフィルムにシワが発生する場合がある。よって、このように凹筋を設けてフランジ部上面とラップフィルムとの接触抵抗を小さくするだけでは、ラップフィルムがフランジ部に引っ掛かることとは別の原因でシワが生じてしまうため、シワの発生を十分に防止することができない。また、前記のようにフランジ部が内方向もしくは外方向へズレることで、容器の全体がいびつな形に変形してしまい、ラップ掛けした商品の見栄えが悪くなり、商品価値を低下させてしまう。
【0007】
一方、特許文献2には、図3(A)に示すように、フランジ部101と周壁部102との間に段部103を設けることによって薄肉部104を形成して、フランジ部101に亀裂が入ることを防止した包装用容器100が開示されている。
【0008】
しかしながら、このようにフランジ部101と側壁部102との間に薄肉部104を形成した場合には、薄肉部104の強度が小さくなるため、ラップフィルムをフランジ部101に掛け回す際に発生する応力による薄肉部104の変形が大きくなり、これにより、フランジ部101が内方向もしくは外方向へズレる。例えば、ラップフィルムFを掛ける前に図3(A)に示す状態であったものが、ラップフィルムFを掛けた後には、緊張状態とされていたラップフィルムFが収縮することで、フランジ部101など、薄肉部104よりも外側の部分が内方向にズレて、図3(B)に示すように、薄肉部104を境として持ち上がるように変形する場合がある。このため、包装用容器100の全体がいびつな形に変形してしまい、ラップ掛けした商品の見栄えが悪くなり、商品価値を低下させてしまう。さらには、フランジ部101自体が前記のようにズレることが原因でラップフィルムFにシワが発生する場合もある。よって、このように薄肉部104を形成してもラップフィルムFにシワが発生することを有効に防止できない。
【0009】
このような事情にかんがみ、本発明は、ラップフィルムにシワが入りにくく、しかも、フランジ部及び周壁部の内方または外方にかかる曲げ応力に対する強度も向上させるという「相反する」課題を解決できる包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発泡樹脂シート、もしくは発泡樹脂シートの少なくとも一面に非発泡樹脂フィルムを積層したシートを熱成形した包装用容器であって、底面部と、前記底面部の外周から上方に起立する周壁部と、前記周壁部の上端に設けられ、外方へ突出したフランジ部とを備え、前記フランジ部は、上面が上方へと突出する曲面形状に形成された突状部と、容器の最外周縁に位置するように形成された水平端部と、前記突状部に隣接して形成され、前記突状部よりも肉厚に形成された補強部とを備えたことを特徴とする包装用容器である。
【0011】
そして本発明は、前記補強部を、前記突状部と前記水平端部との間に設けたものとすることが好ましい。
【0012】
前記の各構成によると、フランジ部の突状部が曲面形状に形成されたことにより、突状部にてラップフィルムを良好に滑らせることができ、しかも、補強部が肉厚に形成されたことにより、フランジ部及び周壁部が内方向もしくは外方向へズレる、もしくは撓むことを防止できる。
【0013】
そして本発明は、容器の平面視形状が略長方形であり、前記補強部を、少なくとも、長辺側に位置するフランジ部の両端に設けることが好ましい。
【0014】
この好ましい構成によると、ラップフィルムを掛け回して包装する際に、最も大きな応力がかかり得る、長辺側に位置するフランジ部の両端を効果的に補強できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の包装用容器は、突状部にてラップフィルムを良好に滑らせることができることから、ラップフィルムにシワが入りにくく、しかも、フランジ部及び周壁部が内方向もしくは外方向へズレる、もしくは撓むことを防止できることから、フランジ部及び周壁部の内方または外方にかかる曲げ応力に対する強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る容器を示す斜視図である。
【図2】(A)は第1実施形態に係る容器、(B)は第2実施形態に係る容器の要部端面図である。
【図3】従来の容器を示す要部断面図であり、(A)はラップフィルムを掛ける前の状態を示し、(B)はラップフィルムを掛けた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施形態について、肉、刺身や調理した食品などを収容して陳列させるための包装用容器を例にとり、図を参照しつつ説明する。なお、以下における方向の説明は、図1に示した状態を基準としている。また、方向表記の「内外」とは、容器における食品などを収容する部分を基準とした平面視における方向を指す。
【0018】
本願の各実施形態に係る包装用容器1は、図1に示すように、食品を載せるための底面部10と、この底面部10の外周から上方に起立して設けられた周壁部20と、この周壁部20の上端に一体に設けられ、外方へ突出したものであって、先端が包装用容器1の外端縁となるフランジ部30とが設けられている。
【0019】
底面部10は、平面視形状が略矩形、より具体的には略長方形に形成されている。なお、「略矩形」とは、長方形及び正方形のように直角の角部を有するもののみに限定されるものではなく、例えば、角部に面取り部やアール部を有する形状も含んでいる。
【0020】
周壁部20は、当該周壁部20に囲まれた内側の空間が下方から上方に向けてテーパー状に拡大するように形成されている。包装用容器1の上端開口は、周壁部20の傾斜角度が全周にわたって略一定にされていることにより、底面部10と略相似形で、かつ、底面部10よりも大面積の略矩形となるように周壁部20によって画定されている。
【0021】
フランジ部30は、周壁部20の上端から外方へ突出しており、平面視における輪郭形状は、前記の上端開口及び底面部10と略相似形となっている。このフランジ部30は、周壁部20の上端に一体に設けられており、図2(A)(B)に示すように、突状部31、水平端部32、補強部33を備える。これらについての詳細は後述する。
【0022】
なお、周壁部20とフランジ部30との間に、図2(A)(B)に示すような内側段部40を設けても良い。この内側段部40は、周壁部20の傾斜角度よりも緩い傾斜で外方に延びる部分で、フランジ部30につながっている。この内側段部40は、包装用容器1の全周にわたり連続して形成されている。このように内側段部40を設けることで、フランジ部30(特に後述の補強部33)と共に周壁部20の上端を補強でき、ラップフィルムをフランジ部30に掛け回す際に発生する応力により、周壁部20が内方向もしくは外方向へズレてしまうことを効果的に防止できる。
【0023】
ここで、包装用容器1の組成について述べる。本願の各実施形態の包装用容器1は、発泡樹脂シートの片面側(より具体的には、包装用容器1の上面側)に樹脂フィルムが積層された、発泡層と表面フィルム層とを有する樹脂シートにより形成されている。なお、表面フィルム層は、包装用容器1の下面側となるように発泡層の片面側に設けられていてもよく、また、発泡層の両面側に設けられていてもよい。また、表面フィルム層が設けられずに発泡層単独で包装用容器1が形成されていても良い。
【0024】
前記の発泡樹脂シートとしては、特に限定されるものではなく、従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリスチレン、スチレンを主体としスチレンと共重合し得るブタジエン、無水マレイン酸、メタクリル酸などの共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどの樹脂、もしくは、これらを2種以上混合した樹脂などを、ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させてなる発泡シートを挙げることができる。なお、前記のスチレン系樹脂や共重合体にポリフェニレンエーテル系樹脂などを混合した混合樹脂を使用した発泡シートは、耐熱性に優れることから好適である。
【0025】
前記の発泡樹脂シートに積層される樹脂フィルムとしては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、耐熱ポリスチレンなどのスチレン系樹脂からなるフィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂からなるフィルム、ポリビニルアルコール樹脂、又は、ポリ塩化ビニリデン樹脂などの、ガスバリア性に優れた樹脂が用いられてなる非発泡樹脂フィルムの単独物を挙げることができる。そして、前記の非発泡樹脂フィルムどうしを複合させたフィルム(複合フィルム)も挙げることができる。
【0026】
前記の発泡層と表面フィルム層とを有する樹脂シートとしては、包装用容器1の全体が同じ材質で構成されたこと、つまり、発泡層に用いられる発泡樹脂シートと表面フィルム層に用いられる非発泡樹脂フィルムとが同じ材質であることが、包装用容器1のリサイクル性を向上させ得る点で好ましい。
【0027】
また、前記の発泡樹脂シートに積層される非発泡樹脂フィルムとしては、各種の印刷により模様が施され、印刷面を発泡樹脂シートとの間に設けた、いわゆるバックプリントされたものが好適である。
【0028】
食品などを収容するための包装用容器1を形成する場合には、通常、前記の発泡樹脂シートによって1〜5mmの厚みに発泡層が形成され、前記の非発泡樹脂フィルムによって3μm〜500μmの厚みに表面フィルム層が形成された樹脂シートを用いることができる。本願の各実施形態の包装用容器1は、前記の表面フィルム層が内表面側(図1における上面側)となるように前記の樹脂シートが熱成形されて形成されている。
【0029】
次に、フランジ部30について説明する。図2(A)(B)は包装用容器1の要部(周縁部分)の縦断面形状を示す端面図であり、図2(A)は第1実施形態を示したもので、図2(B)は第2実施形態を示したものである。このフランジ部30は、突状部31、水平端部32、補強部33を備えている。
【0030】
突状部31は、フランジ部30のうち最も内側寄り(周壁部20寄り)の部分であり、この突状部31は、図2(A)(B)に示すように、上面31aが上方へと突出する曲面形状に形成されており、包装用容器1の全周にわたり連続して形成されている。なお、全周にわたり連続して形成せず、突状部31を断続的に形成しても良い。また、この上面31aの曲率は、周方向にわたって一定である必要はなく、異なる曲率に形成されていても良い。一方、フランジ部30の下面31bは、上方に凹入する曲面形状に形成されている。図示したものは、内外方向において上面31aと下面31bとの間の距離が略一定、つまり、略同じ厚みに突状部31が形成されているが、これに限らず、内外方向において厚みを変化させたものであっても良い。
【0031】
このように突状部31が設けられたことにより、包装用容器1をラップフィルムで包装する際に、ラップフィルムが突状部31の上面31aの一部と接触する。前記のように突状部31の上面31aが曲面形状とされていることから、突状部31とラップフィルムとの接触抵抗を減らすことができ、上面31aにてラップフィルムを良好に滑らせることができる。そのため、突状部31への意図しないラップフィルムの張り付きを避けることができ、包装をする際又は包装後におけるラップフィルムのシワの発生が抑制され得る。
【0032】
水平端部32は、フランジ部30の最外周縁に位置するように形成された平板状の部分である。この水平端部32には、成形による細かな凹凸加工やエンボス加工を施すことにより、側面視にて波形(正弦波、三角波、台形波等)の外縁線、すなわち、直線ではない外縁線を備えるようにすることが望ましい(図示しない)。これにより、水平端部32における周縁のエッジが鋭利でなくなるため、例えば、包装用容器1に触れる際の指先を保護することができる。さらに、このような外縁線を備えることで、水平端部32の強度が増し、包装用容器1が裂断するのを防止する効果も発揮できる。
【0033】
補強部33は、前記の突状部31と水平端部32との間に形成され、かつ、突状部31の最も厚い部分に比べて肉厚に形成されたものであって、包装用容器1の全周にわたり連続して形成されている。本願の各実施形態において、この補強部33は、前記の水平端部32と共に、突状部31の外下方の位置に設けられている。そして、包装用容器1をラップフィルムで包装する際に、ラップフィルムは、突状部31、水平端部32、補強部33の各々一部に接触するようにして掛け回される。なお、この補強部33は、本願の各実施形態のものに限らず、突状部31に隣接して形成されていれば良い。つまり、突状部31に対し、少なくとも外周側または内周側につながるように形成されていれば良い。
【0034】
この補強部33の断面形状としては、図2(A)に示す第1実施形態のように、上面33aのみが上方へと突出する曲面形状に形成されたもの、図2(B)に示す第2実施形態のように、上面33aが上方へと突出する曲面形状に形成され、かつ、下面33bが下方へと突出する曲面形状に形成されたもの、そして、下面33bのみが下方へと突出する曲面形状に形成されたもの(図示しない)、が例示できるが、これらの断面形状に限定されるものではなく、種々の断面形状とすることができる。
【0035】
この補強部33の厚みについては、樹脂シートを構成している発泡層と表面フィルム層のうち、発泡層の厚みを大きくさせることで突状部31よりも肉厚に形成されている。この補強部33の厚みは、包装用容器1の強度を十分向上させるべく、周壁部20など、補強部33以外の包装用容器1の厚みより0.1mm以上厚く成形されていることが好ましい。このように肉厚に形成するための方法については、以下の製造方法の説明と共に述べることとする。
【0036】
このように補強部33が設けられたことにより、フランジ部30に突状部31と水平端部32だけが設けられた場合に比べ、フランジ部30の強度を向上させることができる。そのため、ラップフィルムをフランジ部30に掛け回す際に発生する応力により、フランジ部30及び周壁部20が内方向もしくは外方向へズレてしまうこと(撓むこと)を防止できる(なお、包装用容器1に加えられる外力との関係の詳細は後述する)。
【0037】
そのため、包装用容器1の全体がいびつな形に変形してしまい、ラップ掛けした商品の見栄えが悪くなり、商品価値を低下させてしまうことがない。そして、フランジ部30が内方向もしくは外方向へズレてしまうことが原因でラップフィルムにシワが発生することもない。また、包装用容器1の全体の厚みを大きくすることなく強度を向上できるため、包装用容器1の軽量化が可能である。
【0038】
なお、この補強部33は、必ずしも包装用容器1の全周にわたり連続して形成されていなくてもよく、フランジ部30のうち、ラップフィルムを掛け回す際に発生する応力が最も大きくなる部分にのみ形成されたものであっても良い。例えば、包装用容器の平面視形状が略長方形である場合、前記応力は長辺側の長手方向における両端部(図1に示した部分X)に最も大きくかかる。よって、補強部33を、少なくとも、長辺側に位置するフランジ部30の長手方向における両端に設けたものとすれば、効果的にフランジ部30の強度を向上させることができる。
【0039】
本願の各実施形態の包装用容器1は、例えば食品が収容された場合などにラップフィルムで包装され得るものであり、この包装は、例えば、実開昭56−113618号公報の第1図に示すようにしてなされる。その際に包装用容器1には、周壁部20やフランジ部30などを変形させる外力が加えられ得る。そこで、ラップフィルムで包装される際に包装用容器1に加えられる外力について、以下に説明する。
【0040】
ラップフィルムで包装を行う際においては、例えば、食品などが収容された状態の包装用容器1の上方に緊張状態のラップフィルムが配置され、次に包装用容器1の上面がラップフィルムに押し当てられつつ包装用容器1が上方へ突き上げられる。その際、ラップフィルムは包装用容器1の外側に向かって引き伸ばされる。これに伴い、包装用容器1の周壁部20及びフランジ部30には外側へズレようとする力が働く。そして、ラップフィルムが前記のように引き伸ばされたまま両端をカットされ、続いて、包装用容器1の底部に押し当てられて固定される。このとき、ラップフィルムにかけられていた緊張力が解放されることに伴い、それまで引き伸ばされていたラップフィルムが包装用容器1の内側に向かって収縮するため、周壁部20及びフランジ部30には内側へズレようとする力が働く。
【0041】
ここで、従来の包装用容器においては、ラップフィルムで包装される場合、周壁部に対する内方又は外方への力が加えられると同時に、フランジ部に対する上下方向および内外方向への力が加えられ、この力が周壁部と底面部との境界だけでなくフランジ部及び周壁部にも作用するものであった。そこで、従来の包装用容器のフランジ部においては、フランジ部を形成する樹脂シートの曲げ弾性の高さによって上記外力に対する主たる抗力を生じさせるべく、周壁部やフランジ部の変形に対する抑止力を備えさせるために、包装用容器を形成する樹脂シート全体の厚みを大きくするなどの手段を採用していた。
【0042】
これに対し、本願の各実施形態の包装用容器1においては、フランジ部30に補強部33が形成されており、補強部33が突状部31よりも肉厚に形成されていることから、ラップフィルムを包装する際にフランジ部30に対して上下方向又は内向きや外向きの力が作用したとしても、この補強部33によってフランジ部30の変形を防ぐ高い強度が発揮され得る。すなわち、前記のように外力が加えられた際において、補強部33を形成する樹脂シートの引張弾性又は圧縮弾性による対抗力を発生させることができ、フランジ部30に加えられた力に対抗できる優れた強度が補強部33によって発揮される。
【0043】
なお、本願の各実施形態においては、略長方形状をした包装用容器1の長辺側および短辺側全てにわたって、フランジ部30に補強部33が設けられた包装用容器1とされているが、本発明においては、補強部33が長辺側および短辺側全てにわたって設けられている必要はなく、略長方形状をした包装用容器1の少なくとも1つの長辺に相当する位置のフランジ部30に補強部33が形成されている態様も含まれる。さらには、前述したように、前記長辺に相当する位置のフランジ部30のうち、長手方向における両端にのみ補強部33が形成されている態様も含まれる。
【0044】
つまり、底面部10が平面視略長方形に形成された包装用容器1は、長辺側のフランジ部30の方が短辺側のフランジ部30よりスパンが長いことから、ラップフィルムなどによる締め付け力が同じであれば、長辺側のフランジ部30の方が変形しやすい。そして、ラップフィルムで包装される場合、包装用容器1に上方へ突き上げられる力が加えられる箇所(多くの場合、包装用容器1の底面部10の中央である)から遠い、長辺側のフランジ部30の長手方向における両端(図1に示した部分X)により大きな応力が働く。
【0045】
従って、底面部10が平面視略長方形に形成された包装用容器1の、少なくとも1つの長辺に相当する位置のフランジ部30に補強部33が形成されていることは、包装用容器1の変形が効率よく防がれ得るという点で好ましく、さらに、前記長辺に相当する位置のフランジ部30のうち、長手方向における両端にのみ補強部33が形成されていることもまた好ましい。
【0046】
また、本願の各実施形態の包装用容器1は、原材料の使用量を抑えるべく樹脂シートを軽量化するなどして原材料の量を少なくした場合であっても、フランジ部30に補強部33が形成されていることにより、フランジ部30の強度を上げることができ、ラップフィルムを包装する際において周壁部20やフランジ部30が変形するおそれを低減することができる。
【0047】
次に、本願の各実施形態の包装用容器1の製造方法について説明する。
【0048】
本願の各実施形態の包装用容器1は、発泡層を有する樹脂シートを熱成形することで容易に形成され得る。前記包装用容器1は、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂シートをオーブンなどで加熱して成形可能な状態に軟化させたのち、金型などによって所定形状に成形して冷却する熱成形、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形などによって製造することができる。なお、熱成形方法のうちでは、特に、両面真空成形法が好ましい。また、前記熱成形における軟化温度、及び、加熱時間としては特に制限はなく、従来から公知のものを採用することができる。
【0049】
熱成型のうち、雄型と雌型との間に樹脂シートを挟んで真空成形によって包装用容器1の形状を形成させる場合を例とすると、突状部31が形成される箇所においては雄型と雌型とを閉じた際に形成される成形のためのスペースが湾曲している。そして、補強部33が形成される箇所においては雄型と雌型とを閉じた際に形成される成形のためのスペースが、突状部31の形成される箇所よりも広い状態で樹脂シートと金型表面との間に空隙が形成されている。真空成形においては金型表面に形成された微細な吸気口から金型内部の空気が吸引されることとなり、樹脂シートは、加熱されて軟化された状態であることから、気泡の熱膨張ならびに真空引きによって発泡層の厚みが増大され、金型の表面形状に沿った補強部33が形成される。
【0050】
そして、この状態で冷却されることによって、突状部31に該当する箇所が、上面31aが上方へと突出する曲面形状に形成され、補強部33に該当する箇所が突状部31よりも肉厚に形成された包装用容器1を得ることができる。
【0051】
最後に、本発明の意図する範囲について述べる。本願の各実施形態においては、底面部10が平面視略長方形に形成されている包装用容器1を例示しているが、例えば、底面部10が平面視略正方形に形成された包装用容器も本発明の意図する範囲である。
【0052】
さらに、本発明は、底面部10の形状が平面視略長方形や平面視略正方形である場合に限定されるものではなく、多角形や円形など種々の形状の底面部10を有する場合も本発明の意図する範囲である。
【0053】
さらに、本発明の包装用容器は、収容物を食品に限定するものでなく、種々の用途に用いることができ、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において各用途に応じた種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 包装用容器
10 底面部
20 周壁部
30 フランジ部
31 突状部
31a 突状部の上面
32 水平端部
33 補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂シート、もしくは発泡樹脂シートの少なくとも一面に非発泡樹脂フィルムを積層したシートを熱成形した包装用容器であって、
底面部と、
前記底面部の外周から上方に起立する周壁部と、
前記周壁部の上端に設けられ、外方へ突出したフランジ部とを備え、
前記フランジ部は、
上面が上方へと突出する曲面形状に形成された突状部と、
容器の最外周縁に位置するように形成された水平端部と、
前記突状部に隣接して形成され、前記突状部よりも肉厚に形成された補強部とを備えたことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記補強部を、前記突状部と前記水平端部との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
容器の平面視形状が略長方形であり、
前記補強部を、少なくとも、長辺側に位置するフランジ部の両端に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158387(P2012−158387A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21413(P2011−21413)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】