説明

包装用箱

【課題】複合画像で構成される下絵の上で、フィルムゲージをスライド移動させることで、絵が動いているかの如き視覚的効果を与える装飾要素を備えた包装用箱を用いて、販促効果を高める。
【解決手段】
複合画像で構成される下絵26に対して、対応するフィルムゲージ70を相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる装飾要素を備える包装用箱。包装用箱は、内容物を収容する収容本体10と、当該収容本体を相対スライド可能に内側に保持する外装体60とを備える。下絵26が収容本体の壁面11に表示され、これと対向する外装体の壁面61にフィルムゲージ70が保持されている。収容本体10と外装体60が相対スライドしたときに、内容物と関連した動画を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合画像で構成される下絵の上で、フィルムゲージをスライド移動させることで、絵が動いているかの如き視覚的効果を与える装飾要素を備えた包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
「下絵」と「フィルムゲージ」を利用して、パラパラ漫画とよく似た原理で、あたかも絵が動いているかのような視覚的効果を与える技術は、従来から知られている(例えば、特許文献1、2)。その原理を簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
≪画素が2つの場合:図1、図2≫
図1は、「複合画像で構成される下絵」の作成原理を示している。ここでは、複合画像は、2つの画素から構成される。まず、画素1、2をそれぞれ等間隔“α”で間引いて、「残像」と「欠け」が繰り返す中間画素を作成する。次に、中間画像1の「欠け」部分に、中間画像2の「残像」部分が一致するようにして、両者を組み合わせて複合画像を作成する。
【0004】
一方、図2に示したフィルムゲージは、透明の基材上に「黒塗りの細長い帯状領域」を等間隔で印刷したものであって、「帯状領域の幅」と「各帯状領域間の間隔」とが等しい(共に“α”)。
このフィルムゲージを複合画像上に重ね合わせて、両者を相対的にスライドさせると、図2に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。
一方、中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。
【0005】
以上の相対スライド動作を適度な速度で行うと、人間の目には、あたかも星形模様と丸形模様が動的に変化しているかのように視認される。
【0006】
≪画素が3つの場合:図3、図4≫
以上に説明した画素が2つの場合は、(i)画素を間引く際の「残像」と「欠け」の幅寸法を等しくし(“α”)、かつ、(ii)フィルムゲージ上の「帯状領域の幅」および「各帯状領域間の間隔」を共にこの“α”と等しくしている。
【0007】
画素が3つの場合は、図3、図4に示したように、(i)画素を間引く際に、「欠け」の幅寸法“β”を「残像」の幅寸法“γ”の2倍とし、(ii)フィルムゲージ上における「帯状領域の幅」を「欠け」の幅寸法“β”に等しく、「各帯状領域間の間隔」を「残像」の幅寸法“γ”に等しくする。
「欠け」の幅寸法“β”が「残像」の幅寸法“γ”の2倍であるため、中間画素1の「欠け」部分に他の2つの中間画素2、3の「残像」を収めることができ、したがって、3つの画素からなる複合画像を作成することができる。
【0008】
そして、図4に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。中間画素3の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに菱形模様が視認される(C)。
【0009】
同様の考え方で、画素が4つ、5つの場合にも、複合画像および対応するフィルムゲージを作成できる。
【0010】
以上に説明した例では、ストライプ状のフィルムゲージを使用しているが、格子状のフィルムゲージと、これと対応する下絵とを利用して、同様の視覚的効果を与える構成も知られている。
ストライプ状のフィルムゲージの場合には、視覚的効果を得るために「下絵」と「フィルムゲージ」を相対移動させる方向は、ストライプに直交する1方向に限られる。これに対して、格子状のフィルムゲージの場合には、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対移動させた場合であっても、視覚的効果を得ることができる。
【0011】
【特許文献1】特表2007−526500号
【特許文献2】実用新案登録第3095265号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、上記視覚的効果によって得られる動画を利用した包装用箱を提供し、これにより、販売促進効果を高めることである。
また、「フィルムゲージ」と「下絵」を重ね合わせて相対スライドさせることで動画を生じさせる場合、相対スライドする「フィルムゲージ」および「下絵」は、適度に密着していることが好ましい。両者の隙間が大きいと、視覚的効果として得られる動画もボヤケたものとなってしまう。
したがって、本発明の第2の目的は、包装用箱に設けた「フィルムゲージ」と「下絵」の適度な密着性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の包装用箱は、複合画像で構成される下絵に対して、対応するフィルムゲージを相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる装飾要素を備える。当該包装用箱は、内容物を収容する収容本体と、当該収容本体を相対スライド可能に内側に保持する外装体とを備える。
上記下絵が収容本体の壁面に表示され、これと対向する外装体の壁面に形成した開口部にフィルムゲージが保持されている。そして、収容本体と外装体が相対スライドしたときに、上記内容物と関連した動画が生じる。
【0014】
「下絵」は、例えば図1〜4で説明したような「残像」と「欠け」で構成される複数の画素から作成される複合画像である。また、下絵に「対応するフィルムゲージ」とは、複合画像の「残像」および「欠け」に対応した「透明領域」および「不透明領域」を含み、相対スライドによって動画を生じさせるフィルムゲージを意味する。
また、フィルムゲージは、ストライプ状および格子状のいずれであってもよく、対応する下絵(複合画像)と相対スライドすることで動画を生じさせる。
【発明の効果】
【0015】
菓子等の内容物を収容する包装用箱において、「フィルムゲージ」および「下絵」による上述の視覚的効果で得られる動画を、「内容物と関連する」ものとすることで、宣伝効果あるいは販売促進効果を高めることができる。
【0016】
「内容物と関連する」とは、内容物自体の内容と関連するものに限られず、当該商品を提供するメーカーと関連するもの等、広い意味で、何らかの関連があればよい。
【0017】
また、本発明の包装用箱においては、外装体の内側に収容本体をスライド可能に保持しているので、外装体に設けた「フィルムゲージ」が収容本体の壁面に表示した「下絵」に対して適度に密着し、相対スライドにより得られる動画がクリアなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
≪第1実施形態:図5〜図7≫
図5は、本発明の第1実施形態に係る包装用箱の分解斜視図である。この包装用箱は、内容物を収容する収容本体10と、これを内側にスライド可能に保持する外装体60とで構成されている。
収容本体10は、代表的には1枚のブランクから組み立てることができ、全体が六面体形状の箱体である。収容本体10の壁面11には、内容物を振り出すための取出口20が形成されるとともに、下絵26が表示されている。
【0019】
外装体60も代表的には1枚のブランクから組み立てることができ、図示した例では、両端が開口する筒状体として構成されている。外装体60の一方の開口端に沿って、離脱防止フラップ65が設けられている。なお、外装体60は、必ずしも両端が開口している必要はなく、一端のみが開口している構成であってもよい。
離脱防止フラップ65は、収容本体10が外装体60の内側にスライド可能に保持されたときに、収容本体10側の離脱防止フラップ15と係合して、両者が不用意に離脱するのを防止する。
【0020】
外装体60の壁面61に、フィルムゲージ70が設けられている。具体的には、壁面61に開口部を形成し、この開口部を塞ぐようにしてフィルムゲージ70が内面側に貼り付けられている。
【0021】
図6は、組み立てられた包装用箱と動画との関係を示している。外装体60の内側で収容本体10を相対スライドさせると、視覚的効果を利用した動画が現れる。図6では、3つの画素から構成される動画の一例を示しているが、具体的な図柄や画素の数は、任意に設定することができる。
収容される商品あるいは製造メーカと関連付けた動画を採用することで、宣伝効果あるいは販売促進効果を高めることができる。
【0022】
図7は、取出口20を露出させた状態を示している。すなわち、取出口20は、外装体60に覆われることで閉止されるが、収容本体10を外装体60に対してスライド移動させて取出口20を露出させることによって、内容物を取り出すことができる。
このような構成を採用すると、内容物の取出し動作と連動して、動画が生じるので、喫食に際して視覚的な変化を提供することができる。このようにして、消費者の遊び心を満足させることで、購買意欲が高まり、販売促進効果が期待できる。
また、内容物の取出動作とは無関係に単に両者を相対スライドさせて動画を楽しむことも、勿論可能である。
【0023】
≪格子状のフィルムゲージ≫
本発明においては、ストライプ状のフィルムゲージ70に限らず、格子状のフィルムゲージ70’を採用することも可能である(図5中の円内)。勿論、その場合には、下絵26は、これに対応して動画を生じさせるものが採用される。
ストライプ状のフィルムゲージ70の場合、一方向の相対スライドによって動画が生じるが、格子状のフィルムゲージ70’の場合、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対スライドした場合でも動画が生じる。これは、箱の組み立て精度が高くなく、相対スライド方向が予定の一方向から逸れた場合でも動画に変化が生じるという点で有効である。
【0024】
≪壁面上の下絵とフィルムゲージとの密着性を高めるための構成≫
下絵26とフィルムゲージ70を重ねて相対スライドさせることで動画を生じさせる場合、両者の隙間が大きいと、動画がボヤケて見えることがある。動画をクリアにするためには、下絵26とフィルムゲージ70を、適度に圧接させることが好ましい。
本発明では、相対スライドする2つの要素として、収容本体10とその周囲に巻き付くように係合する外装体60を採用し、収容本体10の壁面11に下絵26を表示し、これと対向する外装体60の壁面61にフィルムゲージ70を設けている。その結果、壁面11上の下絵26に対して、外装体60側のフィルムゲージ70が適度に密着し、相対スライドにより得られる動画がクリアなものとなる。
【0025】
≪第2実施形態:図8、図9≫
図8は、第2実施形態に係る包装用箱を示している。第1実施形態と比べて、収容本体30の構造が異なる。
【0026】
第2実施形態においては、収容本体30は、トレー状の底部32と、その一端縁に対してヒンジ式に連接されてなる上部壁面31で構成されている。下絵26は、この壁面31に表示されている。
上部壁面31の自由端側には、折罫31aを介して回動可能に連接された取出フラップ33が設けられている。また、取出フラップ33の端縁には、消費者が内容物を取り出す際に指を掛けるための切欠34が形成されている。
【0027】
なお、図8中には現れないが、トレー状底部32の裏面側には、第1実施形態の収容本体10に設けた離脱防止フラップ15(図5)と同様のフラップが設けられていて、両者の不用意な離脱を防止している。
【0028】
図9は、組み立てられた包装用箱と動画との関係を示しており、取出口40が露出した状態にある。収容本体30を外装体60から部分的に引き出すと、取出フラップ33が露出する。消費者が切欠34に指を掛けて取出フラップ33を引き上げると、取出口40が現れ、ここから内容物を取り出すことができる。
逆に、取出フラップ33を下げて、収容本体30を外装体60内に戻すと、取出フラップ33が外装体60に覆われた封止状態となる。
【0029】
以上のスライド動作に伴って、下絵26とフィルムゲージ70とが相対スライドして、動画が生じる。また、内容物の取出動作とは無関係に単に両者を相対スライドさせて動画を楽しむことも、勿論可能である。
【0030】
≪変形例:不図示≫
本発明は、図示した具体的な形態に限定されるものではない。収容本体とそれを覆う外装体との相対スライドを利用するものである限り、収容本体や外装体の具体的構成は任意に変更することができる。
また、図示した例では、内容物の取出口20、40は、外装体60のスライドと関連して外装体60で封止されたり、外部に露出したりする構成を採用しているが、別途の開閉機構を設けて、収容本体と外装体の相対スライド位置とは無関係に適宜内容物を取り出せる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図2】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図3】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図4】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る包装用箱を示す分解斜視図。
【図6】図5の包装用箱の機能を説明する斜視図。
【図7】図6の包装用箱の取出口を露出させた状態を示す斜視図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る包装用箱を示す分解斜視図。
【図9】図8の包装用箱の機能を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0032】
10 収容本体
11 壁面
15 離脱防止フラップ
20 取出口
26 下絵(複合画像)
30 収容本体
31 壁面
32 トレー状底部
33 取出フラップ
34 切欠
40 取出口
60 外装体
61 壁面
65 離脱防止フラップ
70 フィルムゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合画像で構成される下絵(26)に対して、対応するフィルムゲージ(70)を相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる装飾要素を備える包装用箱であって、
当該包装用箱は、内容物を収容する収容本体(10、30)と、当該収容本体を相対スライド可能に内側に保持する外装体(60)とを備え、
上記下絵(26)が収容本体の壁面(11、31)に表示され、これと対向する外装体の壁面(61)に形成した開口部にフィルムゲージ(70)が保持されていて、
収容本体(10、30)と外装体(60)が相対スライドしたときに、上記内容物と関連した動画が生じることを特徴とする、包装用箱。
【請求項2】
上記収容本体(10、30)の取出口(20、40)は、外装体(60)に覆われることで閉止され、
収容本体(10、30)を外装体(60)に対してスライド移動させて取出口(20、40)を露出させると、内容物を取り出すことができる、請求項1記載の包装用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−13121(P2010−13121A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172084(P2008−172084)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】