説明

包装食品用鮮度保持剤

【課題】野菜、果物、魚介類、食肉などの生鮮食品や冷凍食品など水分を含有する包装食品の品質保持効果が高く、しかも無害かつ安価で、使用後は水のカルキ吸着剤、炊飯補助剤、肥料などとして再利用が可能な包装食品用鮮度保持剤を提供する
【解決手段】生鮮食品や冷凍食品などの食品包装内に同封される鮮度保持剤であって、椰子殻を賦活処理して得られた顆粒状の活性炭をガス透過性を有しかつ水に対して不溶性の偏平な包装材に封入している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は鮮度保持剤、詳しくは生鮮食品、冷凍食品などの小分け包装中に同封して内容物の鮮度やうまみを保持させるための保持剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品の吸湿防止のための乾燥剤、酸化防止のための酸化防止剤が包装食品に同封され使用されていた。
【0003】
【考案が解決しようする問題点】
前者としては通常硫化カルシウムやシリカゲルが用いられ、後者には硫化鉄やアスコルビン酸などが使用されているが、いずれも菓子、即席めん、のりなどで代表される乾燥食品にはそれなりの効果はあるものの、生鮮食品や冷凍食品などの水分の存在する食品については効果がなく、また、誤って食されると危険であり、さらに使用後の廃棄に処理についても問題があった。
【0004】
この対策として、備長炭を粒状化したものを使用することが提案されているが、備長炭は燃料としてはすぐれた特性を有しているものの、多孔性の表面積が少ない。このため、乾燥食品の吸湿と酸化防止には適用が可能であっても、生鮮食品や冷凍食品などの水分の存在する食品については実効が乏しく、効果を上げるには大量に使用しなければならなくるので、コスト高になるとともに、小分けした包装食品の嵩が大きくなってしまう問題があった。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、生鮮食品や冷凍食品など水分を含有する包装食品の品質保持効果が高く、しかも無害かつ安価で、使用後は水のカルキ吸着剤、炊飯補助剤、肥料などとして再利用が可能な包装食品用鮮度保持剤を提供することにある。
生鮮食品とは、魚介類、食肉、海草類、野菜、果実など新鮮であることを必要とする食料品のすべてを含む。また、本考案は、生鮮食品や冷凍食品のほか、豆腐やその製品、すし、弁当、サンドイッチ、ハム、ソーセージ、かまぼこ、はんぺんなどの各種加工食料品の鮮度やうま味の保持剤としても有効である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本考案は、生鮮食品や冷凍食品などの食品包装内に同封される鮮度保持剤において、椰子殻を賦活処理して得られた顆粒状の活性炭をガス透過性を有しかつ水に対して不溶性の偏平な包装材に封入したことを特徴としている。
【0007】
前記包装材は、不織布からなる内層と、該内層を被覆しかつ多数の細孔を有する高分子シート層を有しているものを含んでおり、高分子シート層は、中間に印刷面を有する2層からなっているものを含んでいる。
前記椰子殻活性炭は、好適には1000℃以下で活性化されたものであり、粒径1〜5mm、比表面積1500m2/g以上の特性のものである。
【0008】
【考案の実施の形態】
以下本考案の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1と図2は本考案による包装食品用鮮度保持剤の第1実施例を示している。
1は椰子殻活性炭であり、椰子殻を原料とし、これを炭化し賦活処理した平均粒径1〜5mm、好適には1〜3mmの顆粒状をなしており、比表面積1500〜2000m2/gを有している。粒径を細かくすることにより、空気との接触面積が増大されることができる。
【0009】
かかる椰子殻活性炭は、たとえば、椰子殻を乾燥後、焼成し、所定の粒度に粉砕した後、賦活炉にて活性化することにより作られる。本考案の椰子殻活性炭は、この賦活炉での処理時にミネラル分が除去されぬよう温度調整を行なったもので、すなわち、1000℃以下で賦活処理を行なって活性化されたものからなる。
【0010】
2は前記椰子殻活性炭1を適量たとえば2〜5g程度充填した被包体であり、この例では、内層3と中層4と外層5の3層構造からなっている。
内層3は、ガス透過性を有しかつ水に対して不溶性を示す材料たとえば有機高分子化合物(たとえばポリエステル系やポリプロピレン系)で作られた不織布からなり、これの内部に椰子殻活性炭1が充填されている。
中層4は有機高分子化合物シートからなり、外層5は透明な有機高分子化合物シートからなり、中層4と外層5の間には商品名、取り扱い注意事項、製造元などの所要事項の表示印刷面6が設けられている。前記中層4と外層5には前記内層3に通じるように微細な通孔7が所要間隔で配設されている。
【0011】
前記内層3と中層4と外層5は長方形状のシート部材からなっていて、中間位置で2つ折りし周縁の3辺を重ねて熱または超音波を重畳することによってシール部8が形成されている。
【0012】
第1実施例において、前記内層4はこれより外側の中層4と外層5と独立していてもよい。すなわち、内層4が椰子殻活性炭1を充填、封入した袋体からなっていてもよい。また、必ずしも3層である必要はなく、内層3の表面に印刷を施し、その外側に透明な1層だけの外層を被覆していてもよい。
【0013】
図3は本考案による包装食品用鮮度保持剤の第2実施例を示している。
この実施例では、被包体2’はガス透過性でかつ水に対して不溶性の材料たとえば有機高分子化合物(たとえばポリエステルやポリプロピレン)で作られた不織布からなり、これの内部に椰子殻活性炭1が充填され、被包体2’の周縁部にシール部8が形成されている。被包袋2’の外表面には不溶水性インクによる表示印刷が施されている。
この第2実施例は干物など比較的水分の少ない食品に好適である。
【0014】
【実施例の作用】
本考案の作用を説明すると、図4は本考案による鮮度保持剤の使用状態を例示しており、Cは包装食品である。9は発泡ウレタンなどで作られたトレイであり、該トレイ9には刺し身などの生鮮食品Aが配され、そのトレイの適所に本考案鮮度保持剤Bが同封されこの状態で、全体がフイルム状包装材10によって被包されている。
【0015】
前記鮮度保持剤Bとして第1実施例のものを使用した場合、被包体2の外層5が生鮮食品Aと接触する。鮮度保持剤Bには商品名や効能、取り扱い注意事項などの表示が不可欠であるが、これを表示した印刷面6が被包体2の外表面に露出していないため、印刷インキがダイレクトに生鮮食品Aと接触せず、印刷インキが生鮮食品Aに転写されて商品価値を下げたりする恐れがない。
【0016】
外層5と内層4は多数の通孔7によって内層3と通じており、内層3はガス透過性であり、内部に椰子殻活性炭1が充填されている。したがって、包装食品Cおよび生鮮食品Aからの雰囲気や水分は、通孔7を通して椰子殻活性炭1と接触する。
【0017】
椰子殻活性炭1は表面積が極めて大きくかつ極めて無数の空隙を有する多孔質構造からなっている。このため、包装食品C内にガスや臭気が発生したり、水分の汚損が生ずると、表面吸着力と微細孔による毛管吸着力とによって効率よく吸着除去することができる。
椰子殻活性炭1の主成分である炭素は酸化した物質にマイナスイオンを放出する特性があるため、酸化防止と還元作用によりうま味も増すことができる。しかも本考案の椰子殻活性炭1は賦活時に1000℃以下の温度で処理しており、鉄、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどのミネラル分が多く含有されている。このため、かかるミネラル分が溶出して生鮮食品Aに添加されることになるため、うま味を保持することができる。また、椰子殻活性炭1はアルカリ性であるから、食品に繁殖しやすい細菌の殺菌効果も得ることができる。
【0018】
また、椰子殻活性炭1は表面積が極めて大きくかつ極めて無数の空隙を有する多孔質構造からなっており、水分を一定量を蓄積した状態で外部の水分が減少すると、蓄積している水分を放出する。このため、生鮮食品や冷凍食品が乾き過ぎることがなく、良好な商品価値を維持することができる。
【0019】
そして、使用後は、包装食品Cから取出し、水洗いし、乾燥させれば機能が再生するので、小型な脱臭剤として手軽に利用することができるばかりでなく、やかん、ポットなどの収容水や炊飯器に装入することによりカルキ臭を除去するとともに包含しているミネラル分の溶出によりおいしい水や米飯を作ることができる。
【0020】
本考案による鮮度保持剤Bの性能を調べた結果を次に示す。
透明なコップに180ccの水を収容したものを用意し、備長炭を顆粒状にしたもの(比較品)と、本考案による鮮度保持剤をおのおの3gづつ包装から取出し、それぞれコップに装入し、目視測定した。
その結果、比較品炭化物から3秒間に数個の泡が立ち上った。これに対して、本考案による鮮度保持剤は、装入の瞬間からあたかも炭酸水のように炭化物から無数の泡が勢いよく泡立った。この結果から、本考案による鮮度保持剤は極めて多孔質度合いが高く、表面積が大きいことがわかる。
【0021】
本考案による鮮度保持剤の成分分析試験を行なった。その結果は次のとおりである。
鉄:729ppm(o−フェナントロリン吸光光度法による)、カリウム:5.16%(過マンガン酸カリウム容量法による)、ナトリウム:725ppm(原子吸光光度法による)、マグネシウム:3410ppm(原子吸光光度法による)。この結果から、本考案による鮮度保持剤は単に吸着性があるだけでなく、ミネラル分が多く含まれ、食品包装内に同封したときに食品のうま味を保持する効果のあることがわかる。
【0022】
本考案による鮮度保持剤による塩素除去性能を試験した。
残留塩素濃度を1.0mg/Lに設定した水を調製し、2lペットボトルに、図1に示す本考案による鮮度保持剤約20g分を入れ、調製水1.8lを加えて静置し、5分後に上下方向に激しく20回振動したものを2本用意し、試料水a,bとした。また2lペットボトルに調製水1.8lを加えて同様に操作したものを作成し対照水とした。試料水および対照水を恒温器内(5±1℃)にそれぞれ静置した。1次間経過後、試料水および対照水からそれぞれ100mlずつ採取し、濾紙で吸引ろ過したものについて、オルト・トリジン法により残留塩素を測定(検出限界0.01mg/l)した。その結果、対照水は0.85mg/Lであったのに対し、試料水a.b.については残留塩素は検出されなかった。
この結果から、本考案による鮮度保持剤はすぐれた吸着性能を有していることがわかる。
【0023】
また、本考案による鮮度保持剤の安全性をみるため、水分含有下で水質試験を行なった。2lペットボトルに図1に示す本考案による鮮度保持剤約20g分を入れ、水道水1.8lを加え、上下方向に激しく20回振動したのち、恒温器内(5±1℃)にて静置し、24時間経過後、濾紙で吸引ろ過して試料水とした。
この試料水について、食品添加物等の規格基準の第1食品D各条にしたがってカドミウム等について試験した。
その結果、カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、六価クロムのいずれも検出されなかった。この結果から、本考案による鮮度保持剤は無害で安全性が高いことがわかる。
【0024】
本考案による鮮度保持剤の脱臭効果について試験した。
本考案による鮮度保持剤(3g入り)2袋をデシケーターに入れ、メチルメルカプタンをガス濃度が約50ppmとなるように添加し、これを室温下で放置し、2,5,10および30分後にガス検知管によりデシケーター内のガス濃度を測定した。あわせて検体を入れずに同様な操作を行い、これを空試験とした。
その結果、空試験においては、2分後:61ppm、5分後:50ppm、10分後:50ppm、30分後:50ppmであった。これに対して、本考案品は、2分後:30ppm、5分後:20ppm、10分後:9ppm、30分後:1ppm以下であった。 この結果から、本考案による鮮度保持剤は極めて良好な脱臭効果があることがわかる。
【0025】
【考案の効果】
以上説明した本考案の請求項1によるときには、生鮮食品や冷凍食品などの食品包装内に同封される鮮度保持剤であって、椰子殻を賦活処理して得られた顆粒状の活性炭をガス透過性を有しかつ水に対して不溶性の偏平な包装材に封入したので、生鮮食品や冷凍食品などの水分が存在する食品包装内に配すだけで、表面積が極めて大きくかつ極めて無数の空隙を有する多孔質構造により、包装食品C内に発生するガスや臭気、汚濁分などを、表面吸着力と微細孔による毛管吸着力とによって効率よく吸着除去することができ、生鮮食品や冷凍食品などの品質を長く保持することが可能になるというすぐれた効果が得られる。また、無害であるから安全性が高く、使用後も水のカルキ吸着剤、炊飯補助剤、肥料などとして再利用ができ、廃棄物処理が不要になるというすぐれた効果が得られる。
【0026】
請求項2によれば、包装材は不織布からなる内層と、該内層を被覆しかつ多数の細孔を有する高分子シート層を有し、高分子シート層は、中間に印刷面を有する2層からなっているものを含んでいるので、生鮮食品や冷凍食品に包装材が直接接触してもそれらに印刷インクを付着させる懸念がなく、細孔を通してガスや臭気、汚濁分などを、表面吸着力と微細孔による毛管吸着力とによって効率よく吸着除去することができるというすぐれた効果が得られる。
【0027】
請求項3によれば、椰子殻活性炭が粒径1〜3mm、比表面積1500m2/g以上であるため表面吸着力と微細孔による毛管吸着力を高いものとすることができ、かつ1000℃以下で活性化されたものであるため、ミネラル分を含有しており、それらが溶出することにより生鮮食品や冷凍食品のうま味を増加ないしは維持することができるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による包装食品用鮮度保持剤の第1実施例を示す部分切欠斜視図である。
【図2】図1の部分的拡大断面図である。
【図3】本考案による包装食品用鮮度保持剤の第2実施例を示す部分切欠斜視図である。
【図4】本考案による包装食品用鮮度保持剤の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 椰子殻活性炭
2,2’ 被包体
3 内層
4 中層
5 外層
6 表示印刷面
7 細孔

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】生鮮食品や冷凍食品などの食品包装内に同封される鮮度保持剤であって、椰子殻を賦活処理して得られた顆粒状の活性炭をガス透過性を有しかつ水に対して不溶性の偏平な包装材に封入したことを特徴とする包装食品用鮮度保持剤。
【請求項2】包装材が、不織布からなる内層と、該内層を被覆しかつ多数の細孔を有する高分子シート層を有し、高分子シート層が、中間に印刷面を有する2層からなっているものを含む請求項1に記載の包装食品用鮮度保持剤。
【請求項3】椰子殻活性炭が1000℃以下の温度にで活性化されたものであり、粒径1〜5mm、比表面積1500m2/g以上である請求項1または2のいずれかに記載の包装食品用鮮度保持剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】実用新案登録第3080380号(U3080380)
【登録日】平成13年7月4日(2001.7.4)
【発行日】平成13年9月21日(2001.9.21)
【考案の名称】包装食品用鮮度保持剤
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2001−1416(U2001−1416)
【出願日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願人】(501105923)株式会社九州フーズ (1)
【出願人】(501107019)